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2018年7月27日(金)
この猛暑は異常気象か 元環境副大臣×専門家

ゲスト

北川知克
自由民主党環境・温暖化対策調査会長 元環境副大臣
木本昌秀
東京大学大気海洋研究所教授
江守正多
国立環境研究所地球環境研究センター副センター長

『猛暑』『豪雨』と異常気象 進む『地球温暖化』への解
生野キャスター
「連日暑い日が続いています。今週、埼玉県熊谷市では観測史上初めて41.1℃を記録しました。異次元と言われる今年の暑さや、西日本に大きな被害をもたらした記録的な豪雨を専門家はどう見ているのでしょうか。何が要因なのでしょうか。じっくりと聞いていきます。記録的な暑さが続く日本列島ですが、まずはこちら、昨日は全国927ある観測地点のうち645地点で30℃以上の真夏日を観測、また、このうち153地点で最高気温が35℃以上の猛暑日となりました。一方、総務省・消防庁によりますと熱中症により亡くなった方は16日から22日までの1週間で65人。また、熱中症により救急搬送された方は2万2647人にのぼっています。猛暑が続いている原因ですけれども、図を使って説明していただきたいのですけれど、木本さん、現在日本の上空でどういったことが起こっているのでしょうか?」
木本教授
「日本は中緯度にありまして偏西風が吹いております。こちら側が夏、こちら側が春、これがだんだん季節の進行とともに高気圧に押し上げられて梅雨が明けるのですが、実際は、この偏西風というのはまっすぐではなくて、常に蛇行しております。今回は、小笠原高気圧、この太平洋高気圧の端の部分、これを強めるような形で蛇行が固定されて、こちらが気圧の谷、気圧の嶺、高気圧・低気圧、これで関東が異例の梅雨明け。この間に梅雨前線が非常に強い形で横たわっておって、気圧配置がほんのわずか位置をずらしたがために、西日本の上に強い梅雨前線の活動がかかって大雨をもたらした。さらに言いますと、これが、少し雨が終わったかと思ったら、今度は高気圧が西の方に勢力を強めて猛暑・酷暑をもたらした。この時、偏西風も少し位置を変えてこんな感じになっています。とにかく上空の偏西風がこの気圧配置を非常に持続性の高いものにして一連の現象が起こったと考えております」
松山キャスター
「先ほど、梅雨前線が、この真ん中あたりで固定されるような状況が続いていたという話がありましたけれども…」
木本教授
「はい」
松山キャスター
「これはあれですか、周りの高気圧が例年に比べて、かなりその勢力が強いということも影響しているのですか?」
木本教授
「そうですね、はい。1つの原因は上空のジェット気流の蛇行。ちょっと先ほど言い漏らしましたけれども、もう1つの原因は、南の方のフィリピンの沖の、たくさんの雲の活動、台風7号ができたり、8号ができたり、10号ができたり。それがこの高気圧を押さえる形で強める。両方重なったので非常に強い高気圧が西の方に勢力を伸ばしてきて、猛暑をもたらしたということになります」
松山キャスター
「フィリピン周辺で積乱雲などが発生するという話をよく聞きますけど、その積乱雲の活動自体も活発化しているということなのですか?」
木本教授
「そうですね、この時期、非常に活発です。それは海の温度が高いとか、そういうことに影響を受けているわけですね」

世界各地で気温上昇 影響は
生野キャスター
「異常とも言える暑さですけれども、日本だけでなく世界各地でも観測されています。今月、アメリカ・カリフォルニア州デスバレーでは7月の平均気温が39℃のところ、52℃観測しました。また、ロサンゼルス近郊のチノでは、月の平均が24.4℃のところ、48.9℃。アルジェリアのサハラ砂漠では、月の平均が35.7℃のところ、51.3℃。さらに、ノルウェーのバルドゥフォスでは、月の平均が10.3℃ですけれども、33.5℃°ということで。江守さん、この場所は北緯69℃の北極圏ですけれども、この33.5℃、これは異常なことなのでしょうか?」
江守氏
「異常気象というのは、極端な高温というのは、ある意味いつでも毎年どこかで起きていて、逆に低温の場所もあったりする、非常に不規則なランダムなものですけれど。それを気象的なメカニズムで、今年の場合はこうなっていましたというのを解説すると、先ほどの木本先生の話みたいになるわけですよね。そこに地球温暖化というのが加わっていると。地球温暖化というのは、基本的に人間活動によって大気中のCO2(二酸化炭素)などの濃度が増え、地球が宇宙に赤外線というのを逃がしにくくなっていることによって、地球全体の平均的な気温が長期的な傾向として徐々に上がっているわけですよね。平均が上がりながら、そのうえで変動しているものですから記録的な暑さというのが起きやすいと。それが基本的には各地で起きているように見えるというふうに見たらいいのではないかと思います」
松山キャスター
「木本さんにもう一度聞きたいのですけれども、先ほど説明いただいた日本周辺での動きというのは、先ほどありましたけれども…このユーラシア大陸あたりでも別の高気圧が張り出していたりとか、そういうことも今回見られる?」
木本教授
「今年は、全般にこのジェット気流は少し北に寄っているので、これの南は夏と言いましたが、大陸で熱いところが多いです。それでノルウェーという話もありましたけれども、欧米の方がちょっと隠れていますけれど、こちらの方でも結構、偏西風の蛇行が大きいので、蛇行が、北へ大きく蛇行をしているところでは猛暑というか、高温の記録が出ているということになっております」
松山キャスター
「あとチベット高気圧ですか、そういった動きもある?」
木本教授
「あぁ、そうですね。先ほど、猛暑の時にこれが勢力を増したと言いましたが、これは別の言葉で言いますと、このモンスーンに伴うチベット高気圧の端の方が勢力を増して、これが上から高気圧をつくろうとする。下の方は、この対流がつくろうとすると。両方重なったので、この高気圧が非常に強くなって記録的な猛暑をもたらしたということになります」
松山キャスター
「この構図というのは、ある程度、その長い期間こういう形で居座るという形になっていくのですか?」
木本教授
「そうですね。これは対流が続く間は続きますし、こちらの方も偏西風上空が、そういう高気圧になっている間中続いて、それが結構持続性が高かったものですから、長続きしたということになります」
松山キャスター
「なるほど」
生野キャスター
「気温が下がらない状況というのは、都市化の影響があったりもするのですか?」
木本教授
「ええ。江守さんがおっしゃったように、暑い夏と、少し涼しい夏を繰り返しながら地球温暖化が徐々に全体を上げていく。そうしますと、一般の方々はまた記録更新、また記録更新、という形で感じることになります。その気温の上昇ですが、日本付近では100年あたり1℃以上の割合・ペースで上がって、ゆっくりと上がってきております。ところが、東京は記録を調べますと、100年で3℃ぐらい上がっているんですね」
生野キャスター
「そんなに上がっているのですか?」
木本教授
「他の町とか、あるいは都市化のない海の温度は100年に1℃ぐらいですから。ですから、東京、すごく暑いと感じられる方が多いと思いますが、その3分の2は都市化の影響、残り3分の1は地球温暖化の影響。今年は、特に暑いのはこの気圧配置の影響もあって、全部が重なり合って非常に記録的な猛暑になったということになります」
松山キャスター
「北川さん、都市化の影響もかなり大きいようですけれど、そういったことに対する対策というのは急務ということなのですか?」
北川議員
「そうですね。都市化を、これを止めるわけにもいきませんので、省エネ対策とか、様々な対策を練りながら都市におけるこの排熱も含めて、どう熱を吸収していくかということも考えていかなければいけないでしょうし、極力、緑を増やすとか、公園化をしていくとか、そういう観点も必要ではないかなと思います」
松山キャスター
「ヒートアイランド現象と言う場合に、アスファルトで覆われていたり、あるいはビルがたくさんできあがって、それが日中、熱を吸収してしまい、それが夜までずっと発散されるという話がありますけれども、対策として、たとえば、あまり熱を直接吸収しないような素材に道路を変えるとか、いろいろと取り組みはあるようですけれども。なかなかこれが進まないというのはどういうことですか?」
北川議員
「弥縫策と言ったらおかしいのですけれども、小手先だけの取り組みではなかなか難しいというのがあると思うんですよ。だから、都市まちづくりの中で総合的に風の抜ける道をつくるとか、要するに、ビルを建てるところの配置を考えていく、そういう大々的な計画も今後必要ではないかなと思いますが。大手町あたりはそういう形で風が抜けるようにはしているのですけれども、それでもこれだけ東京の温度が上がるということは、なかなか厳しいなという感じは抱いています」

雨が降り続いたメカニズム
生野キャスター
「先月28日から今月8日にかけて、こちら高知県安芸郡馬路村魚梁瀬で1852.5ミリを記録。また、岐阜県郡上市ひるがので、1214.5ミリを記録するなど、西日本各地で平年値を大きく上回る降水量が観測されました。木本さん、あらためてですけれど、豪雨の原因について、こちらの図で説明していただけますでしょうか?」
木本教授
「はい。上空のジェット気流や偏西風が蛇行しておる。この高気圧を強めるとともに朝鮮半島の上空に上空の低気圧をつくる。低気圧と高気圧の間にたくさんの水蒸気が流れ込んで梅雨前線を活発化する。この拮抗した状態がわずかにずれて、西日本の上空に停滞してしまった、長続きした。3日間もこんな量の雨が続くというのは前代未聞ですね。と言うことで、非常に酷い状況になってしまったというわけですね」
松山キャスター
「偏西風よりも、さらに北にあるジェット気流みたいなものも影響を与えている?」
木本教授
「はい…。実はもう少し細かく言いますと、夏の主役の小笠原高気圧、偏西風、西からの蛇行、それに超えてオホーツク海高気圧というのもこの時期強くて、この気圧の谷を強めるのに働いております。オホーツク海高気圧というのは、この亜熱帯気流の北の方にある、極前線ジェット気流の蛇行に伴ったものです。ですので、今回は夏の主役全部揃い踏みみたいな形で重なってしまったということで、記録的なことになったというわけですね」
松山キャスター
「まさに被害が激甚になった1つの原因が、河川の氾濫、洪水など…」
木本教授
「そうですね」
松山キャスター
「…が原因になっていますけれども。西日本豪雨の時には、洪水警報の危険度分布ということで、これは7月6日の夜8時に広島県、岡山県、鳥取県に大雨特別警報が発表された直後にこういう危険度分布というのが示されていたということですけど。こういった情報というのは、気象庁のホームページでもたぶん見ることができるものだと思うのですけれども…」
木本教授
「はい、これは少し前から気象庁が発表しているものですが。ちょうど6月の20日頃にホームページをリニューアルして、皆さんがいつも見ておられるようなレーダーの画像を高解像度、降水ナウキャスト、そのページからすぐにこのページに行けるように改良されました。ただ、川がすごく細かいですよね…」
生野キャスター
「この図の見方としては…」
木本教授
「…かなり拡大しないと1つ、1つの川までいけないのですけれど。ただ、この今回の、川のほとんど全てに色がついて、黄色い色がついている、紫の色がついている、こんな図柄はもうこの先、何年かはお目にかからないぐらい珍しい図だと思います」
生野キャスター
「何もない場合は青で川が示されているわけですよね?」
木本教授
「ええ、ですから、現在ご覧になっていただければ、ほとんどが青で、水色で何もない、危険はないというような状況になっているのではないかなと思います」
松山キャスター
「その豪雨の当時のこの図ですけれども、これはかなりの部分は赤や紫になっていますけれども、これは本当に氾濫の危険性が高いと」
木本教授
「いつ氾濫してもおかしくない状態ですね」
松山キャスター
「では、こんなに真っ赤になる事態はかなり珍しい?」
木本教授
「はい。ですから、一般の方はもちろん、この図をチェックしていただきたいのですが、この図をチェックして、こういう色が出ている時というのはもう即座に逃げていただきたい。それでその前にレーダーの画像を見て、それで今日、現在から何時間か後にどうなるのか、危なそうだと思ったら、この図にいって、本当に逃げなくてはいけないかどうかをチェックしていただく。もちろん、避難命令も、勧告も出ますけれども、その前に、自主的に避難していただくというのが大事だと思います」

地球温暖化と日本の対応 先月成立『気候変動適応法』
生野キャスター
「猛暑や豪雨など気候変動によって農業ですとか、それから防災もこれまでと違う対応を迫られていますけれども。先月、気候変動による影響に適応させるため計画策定等を求める法律が成立しました。どのような法律かと言いますと、国・地方公共団体・事業者・国民が気候変動適応の推進のため担うべき役割を明確化。国は気候変動適応計画を策定。気候変動影響評価をおおむね5年ごとに行い、その結果などを踏まえて計画を改定となっています。北川さん、この法律のどのような背景でできたのでしょう?」
北川議員
「これまで地球温暖化に関しましては、いわゆる緩和策と言って、先ほど江守さんがおっしゃったように、CO2をいかに排出を少なくしていくかという、こういう緩和策というものが温暖化対策推進法という法律の裏づけの中にあったのですけれども。それと同時に、生態系に及ぼす影響とか、我々の口にする農産物、また海洋、様々なところに影響が今後、温暖化の影響が出てくれば、それに対してどう適応していくかということに関してまだ国の方とすれば閣議決定の計画しかなかったものですから、法律の中でキチッと裏づけをつくっていく必要性が内外からもありましたし。昨年来、春から自民党の方でも、その議論を調査会でしてまいりまして、昨年の7月に政府に対しまして、この適応法の必要性という提言を出させていただいて。これまでは緩和策については、厚生労働省は入っていなかったのですが、適応となると、今回多くの方が亡くなっています、こういう熱中症、それから、感染症のリスクが高まるということで、こういう厚生労働省も一緒になった中で、国土交通省、経済産業省、農水省、環境省と入って関係省庁が一体となって適応法をまとめていく必要があるということで昨年提言をして、昨年の秋から準備をして、今国会でこの法律が出てきたということですので。計画から法律に位置づけられたことによって、ここにありますように、それぞれの地方公共団体、また事業者、国民の皆さんが担うべき役割を中心として、江守さんに来ていただいていますけれど、国立環境センターなどがプラットホームづくりと言うか、中心の組織として活動していただくと、国が率先してやるということが今回の法律の肝と言うか、重要なところです。これまで地方自治体が独自に対応してきたところ、適応計画を立ててきたところはあるのですけれども、日本全国で一律というのはなかなかできなかったものですから。今回も地方自治体においても、努力義務にしておりまして、もっと義務化させろとか、強い意見もあったのですが、自治体においては人員とか、役所の持つ機能の中でなかなか無理もある部分もありますので、そういう現実を踏まえた中で、まず国立環境研究所が中心になって、こういう各自治体や事業者の方々の、また、国民の皆さんの役割を明確にして温暖化に適応していこうということでこの法律ができたわけでありまして」
松山キャスター
「気候変動適応法に、
「国は気候変動適応計画を策定する」
とありますが、具体的には気候変動適応計画というのはどういう内容のものが盛り込まれるのですか?」
北川議員
「江守さんのところの国立環境研究所がプラットホーム、中心となって、自治体の意見、各自治体でこれまでやってこられた適応策、良い事例を積み上げた中で、国としてはこういう計画をつくっていくと。農産物の品種改良とか、それから、国民の皆さん方には現在、環境省が言っているクールチョイスというか、温暖化に資する製品を買っていただきたいとか、こういう計画を現在、策定中でありまして。政府の方もそういう会議というのを、近々発足をするということですので。そういうものに基づいてキチッとした計画を立てて、法律が施行されるのが12月1日からですので、それから、自治体も含め、動き出すということになっていくと思います」
松山キャスター
「たとえば、よく聞く、日本で獲れる果物が、たとえば、リンゴとかがありますけれども、だんだんここまでが北限と言われていたリンゴがもっともっと北の方でも獲れるようになってきたということもよく聞きますけれど。そういったことに対する対応策というのも、こういう計画の中に入ってくるのですか?」
北川議員
「もちろん、農産物などについては特に我々の食生活に直接影響を及ぼしますので、白濁をした米が獲れてきている、こういう地域については品種の改良で米の質を上げていくとか。現在の北海道の米が非常に美味しいとか、新潟よりも美味しいと言われるような銘柄もありますけれど、そういう品種改良も含め、各地域で取り組んでいただいております。1つの例として、今回、雨の被害を受けた宇和島などではこれまで温州ミカンを中心につくっておられたのが、2℃、3℃温度が上がることによって、その温州ミカンが腐ってしまうとか、様々な被害が5、6年前ぐらいから起きたのかな。ですから、温州ミカンではなくて、バレンシアオレンジに切り替えていくとか、そういう対応をされているので。これは農協とか、自治体単位でやっていると、なかなかコストとか、研究費も大変なので、今回のこういう法律ができれば、国が率先してそういう研究開発に支援していくと、農林水産省とも協力をしていくと、こういうことが可能になってきますので。日本全国のそういう知見とか、様々な取り組みを集めた中で、江守さんに申し訳ないですけれども、そういうふうに言って申し訳ないのですが、国立環境研究所が今回は中心になってやりますという、法律ですので。是非、機能を発揮していただいて良い方向に進めていただきたいなと我々は思っています」

温室効果ガス削減に向けて
生野キャスター
「ここからは地球温暖化を抑えるために日本がとるべき対策について聞いていこうと思います。このVTRですが、こちらは地表・気温変化について、左は温暖化対策をした場合、右は温暖化対策をしなかった場合のシミュレーションの映像ですけれど、シミュレーションはだんだん赤くなっていきますけれど、江守さん、このあともずっと赤くなっていくんですよね?」
江守氏
「そうですね。赤は基準に比べて温度が上がる状態を赤から黄色にかけて表しているのですけれども。左側は2050年ぐらいの赤さで踏みとどまってゆらゆら変動しているのに比べて、右側はドンドン、赤から黄色、白になっていっている、これは2100年ですね」
生野キャスター
「これは2100年までのシミュレーション…」
江守氏
「…シミュレーションですね」
生野キャスター
「…ということですけれども」
松山キャスター
「途中から真っ赤になっていましたね、右側は?」
江守氏
「…」
生野キャスター
「そうですよね。ずっと気温が上がり続けますとどういうことが起こるのですか?」
江守氏
「えっと、暑い日が増えたり、大雨が増えたり、海面が上昇したり、そういったことがさらに続いていくと。それで、もしかすると、たとえば、現在、グリーンランドの氷というのは溶けているわけですけれども、それが溶けるのが止まらなくなるというか、ある温度を超えるとそれまでの連続的な変化と何か違う状態にいってしまうのではないか、みたいな、そういった議論もあります。アマゾンの熱帯雨林がある温度を超えると枯れ始めるとか、そういう、我々はティッピングというふうに呼んでいるのですけれども、ある温度を超えると地球規模の特異現象が起きるような可能性もあると。右側は2100年には4℃ぐらい世界平均気温が上がっているのですけれども、その間には何かそういうことももしかしたら起こるかもしれない。これは科学的にはまだよくわかってない部分もあるのですけれども」
生野キャスター
「地球温暖化対策をした場合でも赤くなっていっていますけれど、気温が上がり続けるということなのですか?」
江守氏
「これは2℃ぐらい、産業革命前に比べて2℃ぐらいで温度上昇が止まった場合を表していますね。ですので、これはあとで議論があると思いますけれど、パリ協定の長期目標というのがあって、それを目指して、うまくいくと、ある程度温暖化したところで止まってくれると、そういう可能性がまだあるということです」
松山キャスター
「ある程度対策を施したとしても2℃未満…、数度の上昇というのは、避けられないトレンドとしてあるということなのですか?」
江守氏
「現在既に1℃、産業革命前に比べ上がっているわけなので。仮に今、CO2の排出量を世界でパッと止めたとしても、これは、暫くは上がってしまうんですね。これは海が時間をかけてジワジワと、時間の遅れがあって上がってきていますので」
松山キャスター
「なるほど」
江守氏
「それで、すごく急げば、1.5℃というのがパリ協定では努力目標になっていますけれども、それが無理でも2℃よりも低いところで止めましょうというのが世界の国際的な合意に現在なっているということですね」
生野キャスター
「パリ協定なのですが、2016年に発効した気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定です。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えるという取り決めが交わされました。目標を『2℃未満』と設定したのはどういうことなのでしょうか?」
江守氏
「これは、いろいろな説明があるのですけれど、先ほど言ったように、2℃越えると様々な悪影響が、許容できない限界になるというような言い方があるのですけれども。ただ、これは科学的に、2℃とはっきり決まるようなものではないと思っていて。それは受ける影響、被害というのはいろいろな国によって違いますし、同じ国の中でもいろいろな立場の方によって違って。特にその深刻な被害を途上国の方とかは受けるわけですよね。そういう人達はほとんど原因に責任がない。自分達が温室効果ガスをたくさん出したわけではないのに、温暖化することによって非常に深刻な、たとえば、島が沈んでしまうとか、そういう被害を受けるという人達はなるべく低くしてくれということですよね。もう1℃上がってしまっている。1℃と言うわけにいかないので、言ってみれば、2℃で止めましょうと、そういうことかなと思います」
松山キャスター
「当然、海水面の温度と陸上の温度はまた違うわけで、それをトータルで入れた形での目標ということだと思うのですが…」
江守氏
「そうですね」
松山キャスター
「たとえば、陸上の方が単純に考えるとちょっと温度は高いかなという印象があるのですけれども。たとえば、日本周辺に限った場合、世界的な温度の上昇と比べて日本だけやや高いとか、そういう傾向はあったりするのですか?」
江守氏
「海も全部含めて4℃上昇と言った時には、先ほどのシミュレーションで、4℃上がっている状態を思い出していただくと陸は海よりも平均的にはたくさん上がっていって、特に北極の方が、北極というのは北極海の氷が減って非常に温度上昇が増幅されますので、陸の上も雪が減ったところは温度上昇が増幅されるので、すごく温度が上がっている色をしているわけですけれども…」
松山キャスター
「上がっていますね」
江守氏
「日本は幸いにして海に囲まれていて、中緯度にありますので、世界平均よりもちょっとプラスぐらい、世界平均で4℃上がったら5℃とか。ただ、内陸で北極に近い方はもっと上がるところもあるということですよね」
松山キャスター
「木本さんのこのシミュレーションを見て率直な感想はいかがですか?」
木本教授
「ええ、現在2℃とか、3℃とか、4℃とか、平気で数字が出ていますけれども、これは世界平均、年平均ですね。今回、猛暑ですごく、東日本の7月の平年偏差というのですが、普通の7月と比べて、これはまだ2℃を超えたことがないんですよ。ところが、現在話をしている2℃とか、3℃というのは、全部、地球全部を平均して2℃。と言うことは、毎年この有様ということを意味しているんです。ですので、数字が何か小さいように思うかもしれませんが、非常に大変なことで、とてもではないけれど、私はシミュレーションの右側の世界には住みたくないです、というか、住めないですね」
生野キャスター
「そうですね…」
木本教授
「それぐらい大変なことだと思います」
生野キャスター
「温室効果ガスの削減というのも地球温暖化対策の1つだと思うのですが、各国の目標を見てみますと、2030年までに中国は2005年と比べて60%から65%削減、EU(欧州連合)は1990年と比べて40%削減、インドは2005年と比べて33%から35%削減、日本は2013年と比べて26%削減、ロシアは1990年と比べて70%から75%に抑制という目標を立てています。江守さん、日本や、各国の削減目標についてどのように見ていますか?」
江守氏
「それは、中国のその数字はGDP(国内総生産)あたりだと思うんですよね」
北川議員
「この中国とインドというのが…」
江守氏
「インドもそうですよね」
北川議員
「…すごく削減するように見えるのですが、この60%から65%削減というのはGDP比ですよ。だから、経済がグンと伸びたら60%から65%の削減というのはそれほど意味がないと」
松山キャスター
「それほど大きくはない?」
北川議員
「だから、中国、インドもそうですね。ロシアもこれはすごい削減というふうに見えるのですが、これは抑制なので、逆に削減幅から言えば、25%から30%という意味なんです。だから、そういう数字のマジック…、見せ方にパッとこう飛びついてしまうと、日本はけしからんという意見になるのですが、日本の場合は、国民生活とか、産業の国際競争力とか、現実に即した中では現時点ではこれが精一杯だろうと。パリ協定では、5年に一度見直した中で、より良い方向が出ればそれを示し、今後より一層、削減目標を高めていくとかいうような方法がありますので。いずれにしても、こういう数字だけ見て判断をすることもちょっと考えなければいけない…」
江守氏
「大事なことは、これを他の国も含めて、全て足した時にどれぐらいの削減効果になっているかということですよね」
生野キャスター
「そうですよね」
江守氏
「それで言いますと、パリ協定で2℃より十分低く1.5℃というのは、どれぐらい温室効果ガスの排出を削減するとできるかと言うと、今世紀後半に世界の人間活動による温室効果ガスの排出を正味でゼロにするということが、これもパリ協定の中に書いてあります」
松山キャスター
「CO2をまったく出さない?」
江守氏
「そう、まったく出さない、ええ。遅くとも今世紀末までに、CO2を、温室効果ガスをなんですけれども、主にCO2を出さないような状態をつくらなくてはいけないと。そのペースに乗っているかと言うと、これはまったく乗っていなくて、残念ながら現在のペースだと3℃前後上がってしまうということですので。先ほど、北川さんがおっしゃったように、パリ協定の中で5年ごとに目標を見直して、全体でまだ全然足りないですね、ということを国際的に認識をしたうえで、目標の見直しを、各国の目標見直しをしていくということがこれから始まります」
松山キャスター
「そうした中で、大国の1つであるアメリカが、トランプ政権の方針としてパリ協定からの離脱というのを表明したということで。これはかなりその目標達成、各国の目標はいろいろありますけれども、まずアメリカの目標というのが事実上なきに等しいものになってしまうということだと思うのですけれども。かなり今後、悪影響というのが出てくると考えますか?」
江守氏
「それはもちろん、悪影響はあるのですけれども、ある意味では限定的だと思います。1つ事実関係として、トランプ大統領は離脱を宣言したのですけれども、離脱をするためには4年かかると言われていまして。離脱を始めるのにバリ協定が始まってから手続きを始めるまでに3年経ってからでないとできなくて、始めてから1年かかるというふうに言われているので、トランプ大統領の任期中はアメリカはパリ協定に入っていまして、毎年の会議にもちゃんと代表団は来ているんですよ。形式的に離脱していないのですが。そうは言ってもアメリカの連邦政府の政策としてドンドン、オバマ大統領の時につくった規制を後退させたり、石炭産業を保護したり、それから、お金を出さなくなったりとか、そういうことをしています。これはもちろん、後退だと思います。ただ、良かったことは、トランプ大統領の離脱宣言があった時に、どの国も追従しなかったんですね。アメリカがやらないのだったらウチもやらないということはまったくなかったです。特に中国はアメリカが抜けるのだったら、これ幸いと大国としての存在感を見せるチャンス、みたいな、というふうに考えているのではないかなんていうことも言われるぐらいで。他の国は皆、アメリカが抜けてもやると言っていると。もう1つは、アメリカ国内ですけれども、多くの企業、それから、大きな州政府、カリフォルニアとか、ワシントンとか、ニューヨークとか、あと非常に経済規模の大きな州が、連邦政府がやらなくても我々はパリ協定はやるのだと」
松山キャスター
「目標数値を目指すと?」
江守氏
「はい、…というふうに言っているんですよね。『We Are Still In Paris Agreement』というのですけれども、我々はまだあのパリ協定にとどまると言う人達、ビジネスとか、自治体とか、そういう人達がアメリカの中で人口でも、経済規模でも、半分ぐらいいると言われていますので。アメリカも半分はパリ協定をやっているのだと、そう思って見ると、まだ、希望はあるというか、そういう気がいたします」
松山キャスター
「木本さん、いかがですか?そのアメリカのパリ協定離脱表明、この悪影響をどういうふうに?」
木本教授
「アメリカの科学者は特に反トランプで、誰1人温暖化を信じない人はいないし、そういう意味では、50年も大統領をやられるわけではないと思いますので、私はその点については若干楽観的なのですけれども。ただ、先ほどから、パリ協定、温室効果ガス削減と言うのですけれども、先ほど、江守さんが言われたように、あまり私、一般に普及していないのではないかと思うのだけれど。温度上昇が2℃であれ、1.5℃であれ、止めるにはゼロエミッションが必須であるということが、あまり一般によく知られていないのではなかろうか?」
松山キャスター
「先ほど、江守さんも話されていましたよね?」
木本教授
「ゼロエミッションというのは、江戸時代ということですよね」
松山キャスター
「なるほど…」
木本教授
「一切エネルギーを…」
松山キャスター
「まったく…、機械工業化する前ということですよね?」
木本教授
「ええ、化石燃料をつくっちゃいけないということなので。これはよほど一生懸命やらないと実現は難しいですね。そういう意味で、パリ協定にもゼロエミッションを達成させるのだという目標が書いてあるというのは非常に大事なことだと思います」

個人の意識を変えるために
松山キャスター
「北川さん、ゼロエミッション、日本はこれを達成することは可能だと思いますか、将来?」
北川議員
「将来的にそれこそ核エネルギーも含め、革新的なイノベーションというか、そういうのが起これば別なのでしょうけど、現実の問題としてなかなか難しいなと思いながらも、しかし、世界で共通にこういう、今世紀末にはゼロエミッションという目標を掲げていますので、日本もそれに合わせた中で最大限の努力はしていくべきだと思います。エネルギー全体の脱炭素化というのは、これはもうやっていかなければいけない課題だと思いますね。それと同時に、民間におきましても省エネに向けての取り組みとか、そういうことも積極的にやっていただかなければいけないでしょうし、2050年に向けて80%の削減ということで、我々、現在、党内でも議論をしているところなのですが、政府も近々、そういう会議を立ち上げるようでありますので、そういう点を踏まえて有識者の方々の意見も参考にしながら、政治の中で何ができるかというのを今後考えていく必要性があるとは思っています」
江守氏
「これは2015年6月なので、ちょうどパリ協定が合意された半年前に世界で一斉に行われた世界市民会議という調査がありまして。その中にこういう質問があったんですね。あなたにとって気候変動対策はどのようなものですかと、世界平均ですとこの下側の、3分の2ぐらいの人達が生活の質を高めると答えています、温暖化対策…。日本は3分の2ぐらいの人達が生活の質を脅かすと答えています。つまり…」
松山キャスター
「ネガティブに捉えているんですね?」
江守氏
「はい。温暖化対策をすればするほど生活が良くなると思っている人は世界には多いのだけれども、生活が悪くなると思っている人が日本には多いと」
生野キャスター
「何かを我慢したりしなければいけないと思ってしまう?」
江守氏
「我慢したり、そういうことを、何時代の生活に戻ったらいいのだとか」
松山キャスター
「先ほどの江戸時代みたいな話だと、恐怖があるなということですね?」
江守氏
「はい。あるいはその負担、経済的な、電気が高くなったりするのではないか、みたいなこと含めてだと思いますけれども」
生野キャスター
「世界市民会議にはどういった方達が集まっているものなのですか?」
江守氏
「これは普通の人です。えっと…」
生野キャスター
「一般の方々?」
江守氏
「ええ。日本でしたら、日本の人口構成男女比とだいたい合うように100人の人を集めてきて、その人達が、普通の市民が議論をして、単純なアンケートではなく、グループでディスカッションをしながら答えていくという熟議型の世論調査というふうに言うのですけれども、そういった形で、世界中で調べたものですね」
松山キャスター
「温暖化対策をすることを非常にネガティブに見ている人が日本人には多いという結果だと思うのですけれど、なぜですか?日本人がこういうふうに考える傾向になってしまうのは?」
江守氏
「日本人は真面目なので、何か節約だというふうに、これまで言われ過ぎてきたのではないかという。我慢だ、辛抱だ、どうしてもは暑いのに、ダラダラ汗を流しながら、エアコンをつけないで我慢していたり、車に乗れば楽なのだけど、ヘトヘトになりながら歩いているみたいな、そういうイメージが、人々の中にこびりついてしまっているのではないかなという気がするんですよね。ですが、多くの方は真面目なので、がんばりますと、努力しますと、だけど、どれだけ我慢したらいいのですかという、そういう発想になってしまっているのではないかという気がします」
生野キャスター
「その意識を変えるにはどうしたらいいのですか?」
江守氏
「僕自身は、これから何十パーセントも、最終的に100%減らさなくてはいけないということを考えると、言ってみれば、ちょっとやそっと我慢しても数パーセントですので、それよりこの問題は基本的にはエネルギー転換、化石燃料を使わない、社会に必要なエネルギーを全て供給するのにどうやったらいいかと、化石燃料をもし使っても、CCSと言って、地中に、大気に出さないで地中に封じ込めればいいのですけれども、それ以外の方法では化石燃料は使わない、CO2を出さないやり方で全ての社会に必要なエネルギーをつくるというふうにエネルギーシステムが変わっていくということが1番重要で、その時に人々の生活は何ら不便になる必要ないということだと思うんですよね。無駄なエネルギーは使わない方がいいですけれども、これからはそういったことも全て、AI(人工知能)とか、IoT(モノのインターネット)とかが自動でやってくれるようになりますので、基本的には、これからより快適で便利な社会になりながらゼロエミッションに向かっていくということを考えるんだと思います」
松山キャスター
「木本さん、日本人の意識の転換が必要だという話ですけれども。実際、日本人がそういう温暖化対策をやることが逆に生活を豊かにするというところまで意識が変えられるかどうか、そのあたりはどう見ていますか?」
木本教授
「いや、私は典型的なネガティブな人間ですので、なかなか…現在、江守さんがおっしゃったように、とにかく単純に、電気をつくる、化石燃料以外で電気をつくる、素晴らしい発明・イノベーションができたらもうOKなので。私はなるべく早く子供達に理科を勉強していただいて、私には発明できませんので、何とか私を助けていただきたい。だけど、それには、イノベーションにはリスクも伴いますので、政府の後押しやら、皆がそれを理解して助けるというのも必要だと思います」

北川知克 自由民主党環境・温暖化対策調査会長の提言:『認め合い、思いやり、分かち合い』
北川議員
「『認め合い、思いやり、分かち合い』という言葉ですけれども、温暖化防止というのは日本だけではできませんし、世界各国が協力をし合っていかなければいけないと思います。そういう中においてそれぞれの国々の事情もあると思います。そういうことをお互いの国々が認め合って、自分達の国ができることは何かということを考えていただいて、それぞれ協力をしあっていくことが大事だと思うので、こういう言葉で表わせていただきました。国内においても個人、個人、皆さん方がそれぞれの立場も認め合いながら、思いやりの気持ちを持って自分の持つものは何か、それを分かち合いながら協力をしていくということが温暖化防止、また、共生社会と言いますか、自然と共生したり、世の中全体、社会全体に言えることではないかなと思っています」

木本昌秀 東京大学大気海洋研究所教授の提言:『みんなで知恵を絞りましょう』
木本教授
「『みんなで知恵を絞りましょう』ということ。温暖化の問題、現在、北川先生がおっしゃったように、政府だけがやればいいというものではない、どこかの会社だけがやればいいというものではない、どこかの国だけがやればいいというものではない。皆が問題を理解して、しかし、いろいろと不確実性もある中で、結局、イノベーションが出てこなければ解決しないと思いますので、ここでこそ知恵を絞るべきではないかと思います」

江守正多 国立環境研究所地球環境研究センター副センター長の提言:『卒炭素』
江守氏
「『卒炭素』というふうに言っているのですけれども」
松山キャスター
「活炭素ではなく、卒炭素ですね?」
江守氏
「ええ、卒炭素です。人類は化石燃料文明を卒業しようとしている。これは化石燃料がなくなったら卒業しようと思っていたので、いつか卒業することになっていたのですけれども、地球温暖化という問題が出てきたことによって予定より早く、思っていたより早く、今世紀中に化石燃料文明を卒業しようと、することになった。どうやったら卒業ができるかと言うと、化石燃料よりも安くて便利で豊富にあるエネルギーを手に入れた時に卒業します。世界はそれを目指しているのだと思います」
松山キャスター
「将来、実現可能だというふうに?」
江守氏
「絶対できるかはわかりませんけれども、それを目指そうというのがパリ協定の意味だと思っています」