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2018年7月16日(月)
対立!トランプvs欧州 安倍政権の立ち位置は

ゲスト

佐藤正久
外務副大臣 自由民衆党参議院議員
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
鈴木一人
北海道大学公共政策大学院教授

勢い増す『トランプ旋風』 米EU対立と各国の思惑
竹内キャスター
「アメリカのトランプ大統領が、先週からヨーロッパ諸国を訪問をしています。防衛費の問題でドイツを批判したり、イギリスではEU(欧州連合)離脱を巡ってメイ首相との関係がギクシャクするなど様々な波紋が広がっています。日本時間の今夜、もう間もなく、ロシアのプーチン大統領との初の正式首脳会談が行われる予定です。トランプ大統領は世界を相手にどんな旋風を巻き起こそうとしているのか、今夜は専門家の皆さんに分析をしていただきます。トランプ大統領ですが、先週10日にアメリカを出発し、1週間にわたって欧州諸国を歴訪しています。まずはその主な外交日程を見ておきます。11日にベルギーで開かれたNATO、北大西洋条約機構の首脳会談に出席しました。合間に、ドイツ、フランスとの首脳会談を実施しています。次の訪問国イギリスへ、13日、メイ首相とエリザベス女王に謁見しています。週末はスコットランドに移動し、自身が持つゴルフリゾートで息抜きを。15日、フィンランド・ヘルシンキへ移動し、トランプ大統領は16日、今日、現在、ロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨んでいます。旧ソ連時代からスタートしたNATOは現在の29か国に至るまで一貫してロシアの脅威と向き合っている国々の集まりです。その首脳会談を先にやってから、プーチン大統領と会談をするということなのですが、この日程の組み方、意図的な調整があるのか、宮家さんどのように?」
宮家氏
「本来であれば、ちゃんとNATOで立場を固めて、それから、イギリスとの特別関係によって、しっかりとした米英同盟、特別関係を確認したうえで、ドーンとロシアと対峙していくというのは普通なのだけれども、どうもそうではなさそうですよね。それが最近の、私は欧州の英語のしか見ていませんけれども、いろいろな話を読んだり、見たり、聞いたりしていると、それはすごく危機感、それから、懸念、これが必要以上に大きいと思うのだけれども、非常に強く渦巻いている感じがしますけれども、その理由は十分あるんですね。トランプさんの動き方というのは善い意味でも悪い意味でもこれまでまったく例がないことばかりやっているので、おそらくそれに慣れていた欧州の首脳達からすれば、本当にひっくり返っている人達が多いのではないかなと思います」
松山キャスター
「鈴木さん、この一連の日程をみてどういうふうに?」
鈴木教授
「本来であれば、もうちょっとキチッと、足元を固めるというところもあるとは思うのですけれども。ただ一方で、面白いなと思うのは、では、NATOをぶっ壊しに行っているのかというとそんなことはないですし、NATO自身、ヨーロッパ諸国がこの防衛費の支出を増やすということは対露関係から見ればある意味、対露防衛を強化するというニュアンスもあるわけで、そういう意味で、NATOは強化しようというようなメッセージ、トランプ流のメッセージを発しているんですよね。ところが、やり方があまりにもむちゃくちゃなので全然共感を得られないまま、まったく噛み合わないで、空中分解をしている感じがあるのと。他方で、米露会談は何かしっかりとしたアジェンダがあって、これを何か1つ絶対決めるぞというような、そういうアジェンダがあるとも思えないんですよね。何か、あれもやる、これをやると、シリアの話もやる、北朝鮮の話もやる、核軍縮もやると言っていますけれども、どれ1つ、現在、トランプさんにとって大事なことというのがはっきりわからない。だから、NATOで固めるということをする必要がない。なぜならば、米露で決めなければいけないこともあまりないという、結局のところトランプ大統領から見ると世界はどうでもいい問題で、他の国に対する関心がすごく薄いのではないかということをすごく感じさせられる日程だなと思います」
佐藤議員
「長男坊的なアメリカではもうない感じですよね。つまり、NATOとの関係でも、どうしても防衛費の7割はアメリカが負担して、残りの3割を、残りのNATO加盟国、欧州が払っていて、その分で、欧州が大学無償化とか、あるいは福祉の方にまわしていたわけですけれども。そういう、これまでアメリカが損してもNATOの安定強化がアメリカの国益になるというような感覚はたぶんトランプ大統領はとらずに、我々はもう財布ではないと、財布はやらないと、お互いに責任分担とかもしっかりやろうという、そういう舵をドンドン切っていると。これまでのアメリカの価値観とは、また違った、応分の負担をやらないといけないし、当然リスクも共有しないといけない。よく同盟というのは価値観と負担とリスク、この3つを共有して初めて同盟が成り立つと言われているのですけれど。どうしてもNATOを見る時に、負担という部分ではアメリカが過度の負担があったので、そこを、もう少し分担をお互いにもう少し良くしようという思いが非常に強いし、また、貿易面でも、NATOでないのですが、EUとの貿易赤字というのが年間17兆円もありますから。こんなに貿易赤字があるのに、17兆円もあるのに、ウチの方がNATOの7割の防衛費負担はおかしいと。これは彼なりの貿易とか、エネルギーの問題を安全保障に絡めて、何かディールをしようというのがあるのでしょうけれど。そこにはこれまで違って、もう1回、言いますけれども、負担という部分についてもう少し公平という部分の思いも強いのだろうと思います」

NATO防衛費めぐる確執
竹内キャスター
「今回のNATO首脳会議で論点となったのが、トランプ大統領が、強く要求した防衛費の増額です。加盟国それぞれGDP(国内総生産)比2%が目標なのですが、クリアしているのは3.57%のアメリカをはじめ28か国のうち5か国のみ、ポーランドまでです。主要国のドイツでも対GDP比で1.24%。トランプ大統領は『アメリカが欧州を守るため出費しているのに、ドイツはロシアから天然ガスを買っている。まるでロシアの捕虜だ。各国の防衛支出をGDP比の4%にするべき』と提案もしています。ここまでこのドイツを責める理由について、鈴木さんはどのように見ていますか?」
鈴木教授
「貿易の問題というのがトランプ大統領にとっては非常に重要な問題で。米欧の間での貿易赤字、これをとにかく解決しなければいけないというのがトランプ大統領の意識の中で非常に強くあると。なので、防衛費の支出が増えれば、当然ながら米国の武器です、これを欧州に売ることができるという側面もあるので、こういう側面で多少、防衛費の支出が貿易赤字を解消するという側面もありますし。また、感情的に不公正感ですね。トランプ大統領が持っている、何で俺達だけこんなに負担しなければいけないのだということをちょっと和らげないとNATOの他の国々もなかなかアメリカに頼ることができなくなるという、こういうメッセージを発しているのではないかと。価値観・負担・リスクのこの3つのうち、いざとなったらお前達、助けないよ。つまり、リスクを引き受けないよ、みたいな、そういう脅しですらあるのではないかなというふうに感じます」
松山
「宮家さんは、ドイツを特に批判しているようですけれども、昔だったら、第一次大戦とか、第二次大戦の教訓からドイツをヨーロッパの中で何とか封じ込めようというのが、アメリカと他の国との共通見解だと思うのですけれども」
宮家氏
「うん。NATO、EUであれば、ドイツを封じ込めるとおっしゃるけれども、独仏の枢軸があれば、これはNATO…、EUは続くので、それはそれで良いと思う。むしろ私は現在、議論されていないけれども、1番大事だと思うのは、アメリカの国内問題ですよね。これはアメリカの選挙が、中間選挙があって、トランプさんがお金のことをやたら言う、話で不公平だと言うのは別に、だから、ドイツが嫌いだとか、NATOが嫌いとかいうよりも、選挙戦術的に行った場合、国内で、とにかくこんな不公平なアイツらに、俺達はあそこに言ってちゃんと金を出させたんだぞ、どうだと、こういう何とも言えない国内の戦術、これを国際的にやっている部分があって。これはシンガポールの大ビッグショーも同じ…」
松山キャスター
「米朝首脳会談…」
宮家氏
「ええ、米朝首脳会談も。その意味では、関心がないだけではなくて、国内的な利益というものの方に、むしろ重きを置いているのではないかという気もしないでもないです」
松山キャスター
「これは現在、ヨーロッパ諸国に対して対GDP比2%、もともと目標としてあるものですけれども、今回はトランプ大統領、それに上乗せして4%までもっていけということまで言っていると。これは翻ってみるとアジアで日本はまだ1%以内ということで、だいたいそれぐらいで推移していますけれども、日本に対してもこういう応分の負担を求めてくる可能性というのはありませんか?」
宮家氏
「うん、あるかもしれませんね。私が1980年代の後半だったけれども、北米局にいた時には現在とまったく同じ言葉で、バードンシェアリングという言葉があって、負担の分かち合いという言葉。これは別にトランプさんが初めて言い出したことではなくて、アメリカにはそういう声が常にあるんですよ」
佐藤議員
「外交というのは、どこの国も大かれ少なかれ内政の延長線上にあるのは間違いありませんから、それで中間選挙を意識すれば強いリーダーというイメージを出さないといけないというのはあると思います。ヨーロッパの中で経済力が1番あるのは、ドイツというイメージありますから。そこはドイツというのは非常にそういうイメージからすると、一般論から言うと、強いアメリカを演出するためには良い交渉相手ということは一般論で言えるのでしょう。特に、欧州全体でも17兆円ぐらいの赤字がアメリカはあるのですけれども、ドイツ1つとっても7兆円から8兆円の赤字があるんですよ。その割に1番、経済力があるドイツがアメリカにおいての赤字、貿易赤字も7兆円も8兆円もあって、GDP比で1.24%と非常に少ない、という印象が非常にアメリカ国民にとってもわかりやすい、たぶん今回のこの攻め口で。しかも、エネルギー…、今回は貿易の問題、エネルギー問題という新しい分野を入れてきたんですね。まさに天然ガスはこのままいくと6割から7割をロシアからドイツは買う。まさにノルド・ストリーム2というのを現在つくっていますけれども、これは極めて欧州にとっては実は痛い部分で。これは、アメリカはロシア関係で制裁をかけています。その原因が、欧州が問題視したウクライナ問題ですけれど。そのパイプラインに出資しているのは、ロシアが半分ですけれど、残り半分は欧州の企業ですよ。イギリスとか、オランダとか、まさにドイツ。なので、エネルギーのパイプラインの話を持ち出されると、非常に欧州にとっても自分がロシアに制裁をかけろと言って、皆、制裁をかけているのに、実はパイプラインの方にも出資しているというのがあるので、極めて非常に痛いところを突いているという部分はあるし、極めてわかりやすい、今回の攻め口だということを言う人がいます」
松山キャスター
「ドイツのメルケル首相は、トランプ大統領に『ドイツはロシアは捕虜みたいになっている』と言われて、逆に『私はソ連の影響下にあったドイツで育っているから知っている。だけど、今のドイツは自分の判断をしている国なんだ』ということを言っていましたけれど、そこはドイツ側から見ても、アメリカから、トランプ大統領がいろいろ批判されていますけれど、その点について痛いところを突かれたということですか?」
佐藤議員
「そうですね」

英EU離脱にこだわる背景
松山キャスター
「続いてトランプ大統領、このあとにイギリスも訪問したのですけれど、その話についてちょっと…」
竹内キャスター
「トランプ大統領の主な発言を日程に沿って見てみます。首脳会談の前に現地メディアの取材を受け、メイ首相のEUとの協調路線について聞かれると『彼女の政策で米英の貿易協定協議は潰れる。EUとの交渉の仕方を教えたが耳を貸さなかった』とイギリスの政策方針を批判しました。しかし、首脳会談が終わったあとの共同会見で一転して『メイ氏は素晴らしい仕事をしている。米英は、高いレベルの特別な関係だ。優れた貿易協定合意を期待している』と述べました。さらに、エリザベス女王を謁見したあとには『女王は、EU離脱はとても複雑な問題だと語った。彼女の言う通りだと思う』と会話の内容を報道陣に暴露しました。佐藤さん、この会談前に相手国の首相を批判したり、女王の発言を話すというのは外交上のルールとしてはいかがなのでしょうか?」
佐藤議員
「普通はやらないですよね」
松山キャスター
「ですよね…」
佐藤議員
「特に、これから会う相手に対し、こういう形で駆け引きなのかもしれませんけれども、普通はやらないし。特に女王とのプライベートな会話というのは、これは外に出してはいけないというルールがありますから」
松山キャスター
「イギリスとの関係というのはある意味、EU離脱の方針から、トランプ大統領はそのこと自体はかなり支持していた時期があったと思うのですけれども、現在の米英関係を宮家さんはどのように見ていますか?」
宮家氏
「うーん、昔のような関係にはもう戻らないでしょうね。イギリスもこういう形でどうやってこれからブレグジッドを、ソフトだか、ハードだか知らんけれども、大変なエネルギーを使っているわけですよね。それから、おそらくトランプさんも昔のような、イギリスとアメリカ…、もともとはイギリスというのはアメリカの敵国だったのですからね。そういういろいろな長い経緯もあるイギリスを、少なくともトランプさんが重視して、自分達と価値を共有する、しかも、先兵としてというふうな考え方はまったくないのではないですか、残念だけれど」
松山キャスター
「鈴木さんはいかがですか?」
鈴木教授
「イギリスはアメリカから見ると、イギリスはそれまではイギリス連邦という英領、植民地も含めた世界のリーダーであり、またそれ以降はヨーロッパの中のアメリカが最も近しい国家ということで、英米間の特別な関係というのはたぶんイギリス1国ではなくて、イギリスがその後ろに抱えているものというものともすごく密接に関連していたと思うんですね。ところが、ブレグジットというのはそれを断ち切るわけですから、イギリス1国になってしまうと、アメリカとの釣り合いという意味では、言ってしまえば非常に軽くなってしまうわけで。その意味でのイギリスの魅力というのは、アメリカから見ると格段に小さくなる。しかも、現在トランプ大統領はブレグジットを非常に支持しているわけですけれども、それはEUのめんどくさい連中と付き合うぐらいだったら、メイ首相とか、イギリス単独で付き合う方が楽であるという、こういう発想にたぶん近く、NATOが嫌いとか、多国間交渉が嫌いというものの延長にあるような話であるように思うんです。アメリカの場合は、トランプ大統領の支持者であった、たとえば、スティーブン・バノンさんみたいな、こういう人達は、ポピュリスト的なムーブメントですね、ブレグジットの動きもそうですし、イタリアの現在の政権もそうですけど、そういうようなポピュリストを支援するという立場でずっといたので。EUがバラバラになってしまう方が、アメリカにとって、トランプ大統領にとっては望ましいというような、そういうニュアンスも若干含んでいて。このへんはトランプ大統領が最終的にどういう世界を求めているのかというのがわからないのですけれども、少なくとも昔のようにイギリスも含め、価値観で団結しているEUと言うよりは、ブレグジットでとにかくイギリスから…、EUから出ていくようなイギリスの方がトランプ大統領にとっては良いということなのかなと」
松山キャスター
「2国間でやる?」
鈴木教授
「はい」
佐藤議員
「2国間で新たな経済協定ということを考えた時は非常にやりやすいでしょうし、しかも、おそらくイギリスにとっても現在アメリカを頼らないといけない部分が結構あると思うので…」
松山キャスター
「EUから距離を置き始めたイギリスにとっては、ということですね?」
佐藤議員
「そう。この前のシリアへの、いろいろ化学攻撃を、化学兵器を使ったということについて武力行使をしましたよね。あの時に、前回と違ってイギリスは、メイ首相は議会の承認も得ずに、アメリカと一緒に武力行使をやると決断したんですよ。これは今回のEUから出るという時にアメリカとの関係をこれまで以上に強化しないとやばいという思いが人一倍あったので。そう考えると、アメリカにとっても非常に交渉しやすい環境にはあるのかなという感じはします」

イラン核合意離脱の真意は?
竹内キャスター
「ここからはアメリカのイラン核合意からの離脱について話を聞きます。まず合意そのものの経緯から見ていきます。2006年にイランによる核兵器開発の動きに対して初めての国連制裁決議が行われました。その後、制裁強化の決議が重ねられて、アメリカやEUは独自制裁も行ってきました。大きな転機はアメリカがオバマ政権の時です。2015年7月に、米英仏中露の国連常任理事国にドイツが変わった6か国、イランとの間で合意が成立。核兵器開発の停止と経済制裁の解除が約束されました。今年5月にトランプ大統領が合意からの離脱を表明しました。アメリカの独自制裁を再開するとしています。トランプ大統領はこの合意は『腐った体制で根本的に欠陥があった。イランは原油収入で中東全体の脅威になるテロを支援している』と批判しています。鈴木さん、この『根本的に欠陥があった』とトランプ大統領は言っているのですが、どのように…?」
鈴木教授
「これはオバマ大統領の考え方とトランプ大統領の考え方というのはまったく違う根拠に立っているのだ、という理解からスタートすべきだと思うんですね。つまり、オバマ大統領の考え方は、核兵器が世界に散らばっていく、拡散していく、ということをとにかく止めなければいけない。なので、イランに核兵器があることがよくない。だから、核兵器さえなくなれば、イランという国家は普通の国家として認めていこうと。だから、普通の国家だったら武器を輸出するというのも、ミサイルをつくるというのも、平和的な原子力の利用というのも認められるということで、その範囲で、イラン核合意というのをやったと。ところが、トランプ大統領は、イラン核合意というのは、イランをやっつける制裁中のチャンスであったはずだと。つまり、これを機にイランを徹底的に叩きのめして二度と立ち上がれないようにする。1979年の時にイラン・イスラム革命というのがあって、その時にアメリカ大使館の占拠事件というのがありましたし、1983年にはアメリカ海兵隊の宿舎が爆発されるというようなテロ事件もありましたし、アメリカから見れば、イランというのは悪魔みたいな国なわけですよね。イランをやっつける最大のチャンスがあったのにオバマ大統領はそれをできなかったと。だから、腐っているのだというのがトランプ大統領の見方なので。この両者はまったく違うフィロソフィーに立っていて。故にオバマ大統領が合意したこと、これはP5プラス1です、米英仏中露、それから、ドイツとイランも含めて、これは皆で合意できた。けれど、トランプ大統領の考え方というのはアメリカ独自の考え方なので、他の国とは共有されていないですよね、故に今回、離脱という形。核合意はなくさないけれども、アメリカはこれを気に入らない、だから、出ていくという、こういう理屈であったと見ることができると思います」
松山キャスター
「実際、アメリカはそれによって、核合意から離脱することによって、独自の制裁をもう一度かけるという方向に行っているわけですけれども、鈴木さんは国連のイラン制裁を管理するパネリストもされていたということですけれども…」
鈴木教授
「はい」
松山キャスター
「核合意が成立する前の経済政策、これについてはどういう効果が実際にあったと思いますか?」
鈴木教授
「現在、アメリカは、この核合意から離脱するとかけられるのが2次制裁と言われるヤツで、これはイラン核合意のあとも実はアメリカ企業はイランと取引をすることがほとんどできなかったんですね。ごく例外を除く、一部の例外はありましたけれども。しかし、ヨーロッパや日本の企業はイランと取引をすることができるようになった。ところが、この2次制裁というのはイランと取引をする米国企業以外の企業、つまり、日本の企業やヨーロッパの企業であってもイランと取引をすることができない。もし取引をしたならばアメリカの市場から追い出すぞ、アメリカの市場で活動するライセンスを与えないというふうなことになるので。イランの市場よりはアメリカの市場の方が大きいですから、アメリカ市場に入れないということになると多くの日本企業やヨーロッパ企業は、さすがにイランのためにアメリカ市場を犠牲にするわけにはいかないなということで、イランとの取引をやめようとするとする。こういう機能が働いてしまう。これが実際に核合意以前にもこの次2制裁というのはかけられていたわけです。ただ、もう1つ加えて言うならば、核合意前はEUの制裁もあったんですね。EUの制裁というのも、これもかなりイランには効いていて。イランに対してEUとアメリカが国連と共に、この制裁をかけていたということで、これが結果的には核合意に至ると、この交渉を導き出したわけですけれど。今回の2次制裁は、核合意以前の制裁を思い起こさせるような、シビアなものになるだろうというふうに見られているので、イランとしては、俺達は何も悪いことはやっていないのにという、こういう気になっているのではないかなと思います」
松山キャスター
「なるほど。まさにトランプ政権が離脱を表明した、そのイラン核合意の前と後で、実際に制裁がどういう内容になっていたのかということを、ちょっとここでおさらいしておきたいと思うのですけれども…」
竹内キャスター
「核開発については核兵器やミサイルに関する物品や技術の移転を禁止し、通常兵器などの武器の強肩を禁止していました。これが合意のあとは原子力活動が認められることになり10年間、濃縮ウランの削減など国際機関の査察を受けることが条件とされました。ミサイルや武器については禁止とされながらも厳しい査察などは科されない緩やかな縛りになります。経済制裁については国連による資産凍結や投資の抑制、EUが行っていた原油の輸入禁止など全て制裁は解除されました。アメリカの独自制裁はイランと取引をした場合どこの国の企業でも罰則がかけられていたのですが、これが合意のあとはアメリカの企業だけが対象となり外国企業については対象外となりました。イラン製品の輸入も同時に一部解禁されました。これがイラン核合意の前と後の違いということですね」
松山キャスター
「宮家さんは前にこちらの番組にいた時に…」
宮家氏
「はい」
松山キャスター
「トランプ大統領の政策はいろいろと変わった政策もとっているけれど、イラン核合意からの離脱についてはある程度理解できるという話をされていましたが」
宮家氏
「理解できるというよりもこういうことですよね。コップが半分、エンプティか、空なのか、つまり、コップに半分水が入っているのか、空なのかという議論ですね。鈴木さんがおっしゃったことは、これは間違いではないのだけれど、私から言わせれば、そのパネルを見ればわかる通り、10年間制約がある、10年後はどうなるのだ。これはミサイルについても査察がないので、これは非常に甘いんですよね。本来、イランはすごく能力がある国ですから、その気になればできるんですよ、つくれるんです。だいたい核の技術というのは1940年代の技術ですから、ミサイルの技術だって1960年代の技術ですから当然つくれるんです。だけれども、その核合意自体をよく読めば読むほど、違うとおっしゃるかもしれないけれども、イランは最終的に皮1枚で残っているんです。ですから、それをもって、トランプ政権は批判的、私も実は非常に批判的だったんです、内容については。ただし、国際社会、アメリカのオバマ政権も含めて、もうこれ以上は無理だと、イランがこれ以上だったら合意できない、だから、ギリギリのところである程度譲歩をして、8年、10年もしくは20年、いろいろな数字があるのだけれど、いろいろな形で最後の皮1枚を残すような形の合意をせざるを得なかったんです。それを私は横で見ていて、と言っても直接見ていたわけではないけど、あっ、これは負けたな、やられたな、少なくともイランが核兵器を絶対つくれないように、未来永劫つくれないよう、もしくは破棄と同じぐらいもう2度とないというようなことには全然なっていないんですよ。と言うことは、これは必ずどこかで問題が起こると思っていました。ただトランプさんが出てきて、、いろいろな形で反発が出てくるはずだったんです。ですから、その意味で、私はトランプさんが言っていることは、彼はハーフ・エンプティだと言っているんですね。他の人達はハーフ・フルだと言っているのだけれども、私に言わせれば、どっちみち半分しかできていないでしょうと、全部できていないでしょうと、だったらもっと厳しくやったらよかったのではないかのというのが当時の意見。ただし、現在は、だけれども、1回サインしたものを、それをまたチャラにする、それは法的安定性の観点から言って、それはダメなので。ですから、トランプさんの現在の決定について私は批判的なのだけれども。その前の時点での合意が良かったかと言われたらとんでもない、酷い合意だと思いますよ」
鈴木教授
「おっしゃる通り、多くのこのイラン核合意への批判というのは、10年とか、限られた、年限が決められていて、イランに民生用であれ核開発というものが可能になるというような状況を残したというのは、その前のブッシュ政権の時に、いわゆる『ゼロ・エンリッチメント』と言って、要するに、濃縮ゼロの状態をつくれという、かなり過激なことをやって、2005年に破綻しているんですね。イランとの交渉がうまくいかなかったという、その教訓から引き出された1つの答えだったと思っているのと。もう1つはイランの核合意の中で、ここには書かれていないのですけれども、追加議定書を採択することになっていて、日本もそうなのですけれども、追加議定書というのはIAEA(国際原子力機関)の査察を未来永劫ずっと続けるということを前提にしていて、これはサンセットとあまり…、サンセットというのは年限とあまり関係なく、これはずっと続くので。そういう意味では、普通の国家としてイランを見る。イランが普通の国家として民生用の核開発というものは一応OK、原子力開発をOKというふうにするのがもともとの核合意の考え方だったというふうに私は思っているので。そういう意味では、イランは特別な国だから全部ダメだというふうにしろと言うことが、アメリカのサイドから見れば、そうだろうと思いますし、そういう気持ちは私も制裁をやっている側としてはすごくよくわかるのですけれども。ただ、そういう合意に至った背景というか、ロジックとしてはイランを普通の国家として扱う限りは民生用の原子力の部分というのは認めざるを得なかったという、こういう妥協だったとは思います」
松山キャスター
「佐藤さん、アメリカはかなり今回トランプ政権になって、このイラン核合意についてはかなり厳しい態度で臨んでいるようですけれども。日本は核合意の当事国ではないですけれども、ただ、アメリカからは日本に対してもその制裁に協力するようにという圧力がかかっていると。1つの話としてはイランからの原油の輸入、これについても、日本だけではないですけれども、他の国も含めてやめてほしいということを言われていると。これは日本としてはどう対応するのですか?」
佐藤議員
「我々としては基本線、基本的に立場はこのイランの核合意、これは支持するという立場であるということはまず言ったうえで、今回の制裁については先ほど言われたような2次制裁という形で、日本企業がイランと、制裁が解除されたことに伴って、いろいろと経済協力を高めようとして、実際そういう方向できたという中においてどうやって日本企業に影響が出ないように、これを持っていこうか、極めてこれは難しい問題。要は、イランの中央銀行と取引をしたらもう制裁かかってしまうわけですから。そうなるともう石油取引をやろうと思っても、ウチのメガバンクあたりがドル建ての決済が一切できなくなったらもう…」
松山キャスター
「商売に…」
佐藤議員
「…商売になりませんから。極めて実際、これから日本政府としては少しでも影響が出ないよう、例外というものを、ポンペオ国務長官も例外というのは認めるような発言もしていますので、できるだけ次の180日に、石油関係のものの期限が来ますので、11月4日ですけれども、そこに向かってとりあえず我々としては日本企業に影響が出ないように交渉努力を続けるということが大事だと思います」
松山キャスター
「それはアメリカに実際にそういう働きかけを現在されている?」
佐藤議員
「当然…、当然アメリカも1回説明に来ましたので、我々の立場は当然伝えています。ただ、この全体については国際約束ですから、これを一方的に破棄するということについてはいろいろな国に影響が出ますから、これは普通だとなかなかこういうやり方はしないのですけれど、トランプ大統領のこれまでと違う、アメリカがこれまで持っていたアメリカの価値観とは違う価値観外交をされているので。実際に、でも、イランの方が、これは現在、ロウハニ大統領とか、穏健派が政権を担っているのですけれども、本当に今回の破棄よって、これが穏健派ではなく、保守強硬派の方に政権が移った場合、当然この核合意から離脱をして核開発を進めるというような状況になれば、かなり中東はより不安定になりますから。そういうことをさせないためにも、これから日本を含めて、国際社会がどうやってイランをこの核合意の中にとどまってもらうような形をつくっていくかと。まさに欧州諸国、あるいはロシア・中国がカードを握っているかもしれませんけれど、イランをどういう形で、イランのこの核合意の枠組みの中にとどめるかというのは極めてこれから難しいたぶん交渉が始まると」

日本が取るべき対応は?
松山キャスター
「中東諸国とは独特の良好な関係を築いてきた日本というのがまた片方にあるわけで。日本として今後、どうトランプ政権、またイランとの関係を構築していくのかというあたり、佐藤さんはどう考えますか?」
佐藤議員
「私は現在、日米同盟も同じなのですけれど、アメリカがこれまでのアメリカの価値観とは違いますので。長男坊で全部やってくれるということはもうあまり考えない方がいいと思うんですね。これまで以上に責任分担という部分をやりながら、しっかりとバランスをとっていくと。向こうもバランス、バランスをとりながらトランプ大統領も求めてきますので。そこはこれまで以上に自分の責任分担というものをしっかりやりながら、行くという方向に行かないといけない。これまでアメリカがいつも傍にいると、これまでにアメリカが自分の割を食ってまで、欧州の安定とか、中東の安定、あるいは日本のためというのではなく、これまで以上にそれぞれの国が責任分担をやりながら、しっかりアメリカと、連携をしながら、さらにアメリカとの関係ではできるだけの価値観・リスク共有は難しいかもしれませんけれど、そこの同盟の基本の価値観と負担とリスクを共有する形の方を我々が踏ん張っていくということが求められるのではないかという感じがします」
松山キャスター
「宮家さん、この日本独特の外交の道、このままキープしていけるのかどうか、そのあたりはどういうふうに?」
宮家氏
「現在、トランプさんが出てきているのは、これは偶然ではないのかもしれない。アメリカの社会が、国内が少しずつ変わってきて、七十数年のこれだけの責任負担というものが、もうそろそろ1人の、アメリカが生み出せる政治家の力では維持できないようになってしまっているのでないか。それを私は現在非常に心配しています。であれば、我々の安全保障環観は基本的にはアメリカと同じなのだけれど、佐藤さんがおっしゃる通りで、これまでと同じような形のものが前提にあるという安全保障観、もしくは政策ではダメだという時代がおそらく近いうちにくると思います」
松山キャスター
「トランプ政権が行っている数々の政策、中東政策もそうですけれども、うがった見方をすれば、アメリカ国内の選挙のための政策、国内でうけるための政策を世界全体で繰り広げているという、そういう印象も受けるのですけれども?」
宮家氏
「それはその通りですよ。世界でキャンペーンをやっているのですから」
松山キャスター
「となると、あれだけの超大国のリーダーが、そういう国内政治の方に目を向けてやるという、その危険性というのは?」
宮家氏
「それは普通の国になっていくということですよね。普通の国は皆そうではないですか。だから、アメリカがこれまでのような特別のものではなくなりつつあって、普通の国により近づいている状況というものを我々は直視しなければいけないのではないか」
松山キャスター
「鈴木さんはいかがですか?」
鈴木教授
「現在の話をもう少し言うと、アメリカの人達がそういうことを求めるようになったということだと思うんですね。つまり、アメリカのリーダーは世界に燦然たる知性溢れる、そういうリーダーシップを発揮するような人物である必要はなく、むしろドイツや同盟国にギャーギャー文句を言って、金払え、金払えと言うような、リーダーを求めているわけですよね。これはアメリカの政治家の問題だけではなく、たぶんアメリカの国民自体がそういう人達を何らかの形で求めていると。故にトランプさんは大統領選に勝ったわけですし、現在、FOXニュースですとか…」
松山キャスター
「実際、支持層の間では支持率がまた上がっていたりしますからね」
鈴木教授
「そうですよね。そういう40%近くの人達が、少なくともそのくらいの人達が、現在アメリカの大統領というのは、ああいう人がいいのだというふうに思っている側面はあるわけで。これは仮に現在トランプ大統領が任期を終えて辞めるとしても、たぶん次にくるのは、もしかしたら、ちょっとタイプは違うかもしれないけれど、似たような、外国に文句を言い、同盟よりは自国ファーストで、自分達のこのことについてだけ考えてればいいという、こういうリーダーが出てくる可能性というのはおおいにあると思うんですね」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『現実を直視する!』
宮家氏
「現実を直視ということに尽きます。要するに、現在日本を取り巻く状況は急変している、我々が見えないところでもおそらく急変しているんです。大きくこれから物事が変わっていく可能性があるので。これはあまり理念・夢ばかりだけではなくて、これも大事なのだけれども、同時に現実をちゃんと直視して、それに合った形で自分達を変えていかないといけないという思いを持っています」

鈴木一人 北海道大学公共政策大学院教授の提言:『自立外交』
鈴木教授
「自立外交ということにさせていただきました。アメリカはこれまでのようなリーダーで居続けるわけではないと。1番のお兄ちゃんで居続けないということは、日本がこれまでアメリカに依存してきた部分や、アメリカ側がこうしてくれるだろうという期待ですとか、そういったものにかなり寄りかかっていた部分があると思うんです。そういう部分を少しでも減らしていくということが大事で。自分達で何をしていくのか、どういうふうに判断していくのか。自らの判断力を持った自立的な外交をやるということが大事だなと思っています」
松山キャスター
「しかも、比較的短期間で、これを真剣に考えなければいけないということですよね?」
鈴木教授
「そうですね」

佐藤正久 外務副大臣の提言:『責任分担+多国間 連携』
佐藤議員
「責任分担と多国間連携。アメリカの国民が現在、鈴木先生が言われたように、サンダース氏があれほど大統領選挙で票を獲ると…」
松山キャスター
「善戦しましたね」
佐藤議員
「基本的に言うと、自分さえ良ければいい、現在さえ良ければいいという風潮がドンドン強くなっている、長男坊のアメリカではない。となれば、日本もこれまで以上に役割を含めた、責任分担の量を増やす、増やさないといけないと。アメリカは大事ですけれども、いつもアメリカ側が傍にいると思ったらもう間違いで、そこはしっかりとアメリカが傍にいるような関係をつくらないといけない。さらに、石油の取引問題もあります。リスクを下げるためには多国間と連携して、そういうリスクをいかに減らして、日本企業を守るということも大事だというふうに思います」