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2018年7月12日(木)
小野寺防衛相×森本敏 日本防衛『新地平線』

ゲスト

小野寺五典
防衛大臣 自由民主党衆議員議員
森本敏
防衛大臣政策参与 元防衛大臣

『非核化協議』の行方
生野キャスター
「歴史的な米朝首脳会談後、初めてとなる米朝高官協議が先週、平壌で行われました。会談のあと、北朝鮮側がアメリカの対応を非難するなど両者の思惑のズレがあらためて浮き彫りとなっています。今後の東アジア情勢と日本の防衛戦略について聞いていきます。先月行われた米朝首脳会談を受けて、先週アメリカのポンペオ国務長官と金英哲統一戦線部長による米朝高官協議が初めて行われました。主な議題をまとめました。アメリカ側からは『完全な非核化』『安全の保証』『アメリカ兵の遺骨返還』などを提起。北朝鮮側は『米朝の交流』『朝鮮戦争終戦宣言』『CBMエンジン試験発射場廃棄』等を議題として挙げたとされています。小野寺さん、初の実務者協議でこれらのテーマを優先議題として挙げた米朝のそれぞれの思惑をどう見ていますか?」
小野寺防衛相
「首脳間では一定のフワッとした合意があるという、非核化についてそういうイメージがありますが、実際にこれが核、非核化、それから、弾道ミサイル等の破棄、こういうことをするためには具体的に何をどういう手順でやっていくかということ、これが進まなければいけないと思うんです。それが大事なこの高官級の協議ということになります。そういう意味で、私どもはこれを注視していますし、実は今日はちょうど6月12日から1か月経っている、まだ1か月であります。その段階でどこまで詰めた議論ができるか、それは私どもも注視をしておりますし、1回目のこの協議ではそう簡単ではないという印象は持っております」
松山キャスター
「北朝鮮側の方から出された議題では朝鮮戦争の終戦宣言というものも議題のテーマとして挙げられているという話なのですけれども。これは前回の6月12日の米朝首脳会談では結局、終戦宣言というところまでは至らなかったということですけれど、これは北朝鮮側としては終戦宣言を早い段階で発表したいという意向がここに表れていると感じますか?」
小野寺防衛相
「終戦ということになりますと、その時の当事者、国連軍もありますし、中国もありますし、そういうところの合意というのが1つは必要になるんだと思います。もう1つ、私どもが、北朝鮮が意識しているのは当然、戦争が終わるんだ、終わったんだということになれば、朝鮮半島からある面ではもう戦争が終わったのだから、なぜ国連軍が、あるいは在韓米軍がまだいるのだとか、次のそういう議論に移りやすい議論になるのだろうなと、そういう意識は持っているのかなと私は推察をしております。米側にとって、その話というのはまだ非核化は全然動いていない、弾道ミサイルも何も動いていない中で、それだけが初めに動くということ、これは米側も当然警戒していると思うので。そういう意味で、お互いに言っている内容のその裏にあることというのはそれぞれ深く見なければいけないと思います」
松山キャスター
「森本さん、ここまでの段階をどう見ていますか?」
森本氏
「本当のところ、アメリカは完全な非核化のための米朝の交渉を始めたいのですがなかなか北朝鮮側はその準備のための体制を整えてくれない。たとえば、ポンペオ国務長官の相手もわからない。どこで交渉をやるかわからない。どういうアジェンダで、どういう順序でやるのか、それはどういう会議の枠組みになるのか、誰が経費を出すのかと、つまり、会議を行う必要な枠組みというのがいつまでたっても整わないので。はっきり申し上げるとちょっとしびれを切らして北朝鮮側に乗り込んで、それを促進させる働きかけを国務長官はしたのだろうと思います。実際には、北朝鮮はそれには答えず、このICBM(大陸間弾道ミサイル)のエンジンの試験場の廃棄だとか、核実験サイトの廃棄だとか、そういう北朝鮮がやったことをアメリカに示し、アメリカがその見返りとして何をやってくれたんだ、何をやってくれるつもりなのだということを、つまり、主張する、求めるということなので、なかなか非核化のための交渉が始まらない。アメリカは、そこは、少しいらだっているのではないかと思います。つまり、問題は、非核化交渉はまだ全然進んでなく、枠組みづくりに現在、苦労しているというステージではないかと思います」
松山キャスター
「なるほど。この高官協議、米朝の高官協議が行われたあとに、今度、ポンペオ国務長官は日本に来て、日米韓の外相会談というのに臨み、そこで河野外務大臣などにもこの説明を行ったということなのですけれども。小野寺さん、ある程度その内容について報告を受けていると思うのですけれども。このアメリカのスタンス、きちんとCVIDということをどうも言っているようだと聞こえるのですけれど、そのあたりどういう報告を受けているのですか?」
小野寺防衛相
「報告については当然、両国間のやりとりでありますので私が言う話ではないと思いますが。このお互いの発表のところを見ると、北朝鮮の外務省がかなり強くCVIDとか、検証ということ、非核化要求ということについて反応しています。と言うことは当然、ポンペオ長官はこのことについてかなりしっかり言ったのだと思います。言っていて、おそらくポンペオ長官からしたら相当言っている。北朝鮮の担当者はもしかしたらそれは聞いていたということだと思います。ただ、もしかしたら北朝鮮でまだ、森本先生がおっしゃったように、本当に交渉相手がしっかりできていなければ、ここにすぐに打ち返せないではないですか。こう聞いていると。ですが、そのあと政府内、北朝鮮の中で考えた時に、いやいや、勝手に言っていただけではないかというふうにそのあとにこういう報道が出てくるという。そういう流れから考えると、かなり強くポンペオ長官は言ったのだと思います。今後それを北朝鮮が中でどう受けとめて、対応していくのかということ、これは私どももしっかり見ていく必要がありますし。大切なのは日米とか、日米韓とか、こういう関係の国が一枚岩になって対応していく。今回、ですから、良かったのは、ポンペオ長官が日本に来て、そこで日米韓の外相会談ができて、その連携が確認できたということは、むしろ北朝鮮に対してもしっかりとしたメッセージになっているのだと思います」

『米韓演習中止』の余波は
生野キャスター
「ここからは米朝の非核化交渉をめぐり、アメリカが発表した米韓合同軍事演習中止の余波について聞いていきます。マティス国防長官は『米韓合同軍事演習の中止の判断は、朝鮮半島において平和的な解決をもたらすための展望を高めるためにくだされた決定』と発言。小野寺大臣は『演習中止は外交の後押しをするという意味で米韓が選択したことだが、この演習は地域の安定にとって重要』と発言しています。小野寺さん、米韓合同軍事演習を中止することについてマティス国防長官からは具体的にはどのような説明があったのでしょうか?」
小野寺防衛相
「これは事前にこういう理由で、こういう形でというような、当然お話がありました。まだ米朝の首脳会談が終わって1か月ということになります。現在、外交の様々な圧力で北朝鮮を何とか非核化、弾道ミサイルの問題、そういう方向に持っていこうとしている最中ですから、その中で政策判断として様々のことは当然ありますので、現在、この瞬間だけを切り取って解釈する必要はないのだと思いますが。ただ私どもが、これはマティス長官も同じですが、米韓の演習、日米韓の演習もそうでありますが、部隊というのは演習があって初めて実際の時に動ける。また、演習というのは、することもそれなりに意味がありますので、対外的に。そういう意味で、重い演習を今回は外交の1つの過程の中で中止を判断したということなのだと思います」
松山キャスター
「森本さん、今回の米韓合同軍事演習の当面の停止、この判断についてはどう考えていますか?」
森本氏
「6月12日の記者会見で大統領が言及をして、4日間、米韓の調整が行われて、最終的にこのいくつかの演習の中止が決まったのですが。大統領の説明の中には、1つは、演習がとても高過ぎるということと、しかし、もう1つ重要なことを言っていて、それはこの演習が挑発的だということを言っているんですよね。おカネだけだと考えるのは、私は間違いだと思うんですね。おカネだけで判断したものではないと思います。もう1つは、6月12日の首脳会談の拡大会談の中、金正恩委員長が、いわゆる相手方に挑発をするとか、脅威を与えるような軍事行動というのは戒めるというか、控えるという英断をすべきだということを言っているんです。つまり、これは推測ですが、米韓がこの演習をしている、この演習の中身が半島全体のウォーゲーム的な内容を持っている際に、その戦力を最大限にしてそのまま北に攻めてくるのではないかという恐れを持っているとすれば、そういう性格を持っている演習をやめることによって米朝交渉をやりやすくする環境づくりをするという、それが大事という政治判断を大統領が瞬間にしたとも考えられるので。そういう意味では、おカネだけで説明されていますが、そういうことではないのではないかと」
松山キャスター
「一部の有識者からは今回、米朝首脳会談が実現した背景にはアメリカの軍事的圧力、経済的圧力もありますけれども、軍事的な背景があって北朝鮮の方が降りてきて交渉が実現したという部分もある一方、今回、軍事演習の中止ということを言ってしまうと、これまでアメリカの力を背景として非核化交渉におびき出してくるという戦略が崩れるのではないかと。要するに、軍事的な力という背景がなくなると非核化交渉自体もうまくいかなくなってしまうのではないかという懸念も一部の有識者から出ていますけど、そのあたりはどういうふうに?」
小野寺防衛相
「今回アメリカが言っているのは、対話のフェーズがある、交渉が続いている間の演習の中止であって、もし対話や交渉がうまくいかなかったら、いつでも演習をしっかりやるということですから。圧力はいつでも最大限グンと上げられるということになります。そういう意味では、むしろ北朝鮮の出方を見ていると思いますので、北朝鮮がもしこのまま時間稼ぎのようなことになれば、アメリカはアメリカで…北朝鮮に対しての信用がないとすれば、それはアメリカの判断はまた別のところにあるのだと思います」

『在韓米軍撤退』のリスク
生野キャスター
「北朝鮮の非核化を進めるため、米韓合同軍事演習の中止を決めたアメリカですが、在韓米軍のあり方については、このように発言しています。トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で『朝鮮戦争は間もなく終結する。将来的に在韓米軍を本国に帰還させればいい』と発言。一方、マティス国防長官は米韓国防相会談で『現在の在韓米軍の兵力を維持する』と述べています。小野寺さん、在韓米軍の縮小・撤退については、先の日米防衛相会談でマティス国防長官から何か言及はあったのでしょうか?」
小野寺防衛相
「いえ、当然ありませんし、それから、トランプ大統領も当然、現在の北朝鮮の状況を考えれば、この段階で、在韓米軍の縮小というのはすぐには、想定はないと思います。私どもとして、まず求めていることは核・ミサイルの放棄をしっかり北朝鮮にさせるということ、これが防衛当局のしっかりとしたスタンスですから、そこはトランプ大統領も揺るがないと思っています」
松山キャスター
「アメリカ軍が韓国からいなくなった時の想定シナリオというのは日本の防衛当局としては実際には進めていることなのですか」
小野寺防衛相
「まだ実際そのような動きもありません。当然それを想定してということも必要ないんだと思います。今現在の状況を見れば、これはマティス長官もそうですし、それから、韓国の宋長官も在韓米軍の重要性というのはお話をされていますので。少なくても現時点で、まだ北朝鮮が何も具体的な動きをしていない、そういう中での在韓米軍というのはしっかり維持されるものと思います」
松山キャスター
「森本さんは今回のトランプ大統領のこの発言、将来的にはその可能性があるという趣旨で発言したようですけれども」
森本氏
「実際、在韓米軍というものの存在は朝鮮戦争後の北東アジアの情勢下において決められた同盟を、同盟関係を象徴する抑止機能なので。それが要るとか、要らないとかというのは半島全体の安全保障構造が相当、ドラスティックに変わってしまうということでなければ議論できないので。一足飛びにこういう議論をやっても、国際政治とか、安全保障の感覚から言うと少し現実的でないなという印象を持ちますね」
松山キャスター
「トランプ大統領の頭の中には先ほどの米韓合同軍事演習と同じように、どこかで経済的に何かそろばんを弾いてこういう計算をしているという、そういう部分というのは見受けられたりしますか?」
森本氏
「これは、NATO(北大西洋条約機構)も、そうですし、在韓米軍もそうなのかもしれないのですけれども、安全保障というのは経済感覚だけでは論じられないです。だいたい地域の安定とか、抑止というものを、おカネで計算するということは本来できないんです。演習もそうです。つまり、軍事的なプレゼンスというのはそのプレゼンスすることに地域の安定とか、あるいは安全というものに非常に深くかかわるわけですから。これを間違うと、たとえば、アメリカが在比米軍から退いたあと、中国が南シナ海に入ってくる、力の空白がつくられると出てくるわけですから。もちろん、在比米軍は、これはおカネで計算したのではないです、フィリピン上院が米比基地協定の延長を拒否したのでこういうことになったのですけれども。しかし、地域だとか、国家の安定とか、同盟関係の維持というものを金銭感覚で計算上できるという考え方は安全保障の目から見るとリーズナブルでないと、合理的でないということだと思います」

『南北統一』の先のリスク
松山キャスター
「米朝首脳会談より前に行われていた南北首脳会談のあとまとめられた板門店宣言の中では、将来の南北の統一に向けた話というのはかなり盛り込まれていますけれども。実際に統一というものが現実味を帯びてきた場合、在韓米軍の存在意義、在韓国連軍かもしれませんけれど、存在意義が問われてくるということにはなると思うのですけれど、その場合の日本への影響というのをどう見ていますか?」
森本氏
「南北統一という話がパッと出るのですけれど、実は現在の米朝交渉というのは最初の話に戻りたいのですが、非核化のための交渉が1つあって、それに必要な北朝鮮の安全の保証というものが1つあるのですが。それとはまったく別でこちらに、平和体制の構築という大きなテーマで括られる一連の活動があるんです。その中身は何かと言うと、たとえば、休戦状態はやめる、休戦協定を平和協定にする。それから、在韓米軍の扱い方をどうする、それから、現在の話のように朝鮮国連軍をどうする、これは自動的には出てこないのですけれど、国連安保理でできたものですから。ただ、政治的に言うと、半島で平和協定ができて、敵対関係がなくなってしまうと、安保理決議に基づいて1950年に派兵された国連軍が必要か、必要ではないのかということは当然、問われるので、間接的ですけれど、波及していきますね。全てのプロセスが進んでから、こちらで核もなくなったという状態が起こって初めて南北の統一をどういう形でするかということが現実政治の中で論じられることができるようになるので。一足飛びに南北統一と言っても、それに必要な諸環境が整わなければできないので、架空の話で、現実政治の中でこれを想定することは難しいです」
松山キャスター
「韓国の世論を見ていると、すぐにでも現実化するかのような錯覚を持っている、幻想を持っている意見もかなり多いようですけれど。小野寺さん、このあたり、休戦協定から平和協定への、いわゆる平和構築のプロセス、これがすぐに進むという見方はされていないのですか?」
小野寺防衛相
「特に非核化の問題が進まない限りはまずその議論のスタートに立てないんだと思います。それから、よく南北の統一という議論をされますが、ふとこれは単純な興味として私は見ているのですが、では、統一の国で誰が大統領になるのだろうと、本当に選挙をやるのだろうか。文さんと金正恩さんがそれぞれ大統領に立候補し、どちらかが大統領になるなんていう、そういう政治体制が起こり得るのだろうか。そう考えていくとおそらく両国の政治体制があれだけ違う中で、どういう形で統一なのだとあまりイメージがわきません。少なくともまずその議論の前に、核・ミサイルが進むこと、これがまず何らかの前に進むことだと思います。ただ、すごく長いスタンスで見ると、個人的にはもともと同じ民族が朝鮮戦争を1つの契機に、2つの国に別れてしまったと。お互いの国に当然親戚もいれば、そういう中で不幸な現在の状況にある。これは、大きな目で見れば、1つの国家になり、同じ民族が一緒になって平和になることは、これは大事だと思うのですが。そこに行く過程にはまだまだ様々の障壁があって、それを1つ、1つ解決しなければ、一足飛びにそれにいくこともないし、また、いってもいけないのだと思います」

『防衛大綱』で目指すものは
生野キャスター
「朝鮮半島情勢の行方が見通せず、中国の海洋進出も続く中、年末にも今後の日本の防衛力のあり方と防衛力整備の方針を示します防衛大綱中期防衛力整備計画を作成予定です。初年度分の予算の概要が来月と迫り内容と方向性が注目される中、自民党はこのような提言を発表しました。『次世代に通用する積極的な防衛体制、アクティブ・ディフェンスの実現』を基本方針とした上で『陸海空のみならず宇宙・サイバー・電磁等の領域も活用した多次元横断的、クロス・ドメインな防衛力を整備・統合運用する』『列島線防衛の観点をはじめ、必要な防衛力の質・量を拡充」
』『NATOの防衛費、対GDP(国内総生産)比2%目標を参考に十分な予算を確保』などとなっています。小野寺さん、提言にあります積極的な防衛体制、アクティブ・ディフェンスについてはどのように評価されていますか?」
小野寺防衛相
「具体的なちょっと言葉がまだよくわかりませんが、ただそこの中にあります宇宙・サイバー・電磁領域、こういうところをしっかり守るというのが大事で、実は現在の装備、防衛装備というのは昔みたく大砲を、向こうの的を狙って撃って当てるとか、もうそういった装備体系はあまりありませんので。現在は逆に、発射して正確にその的にしっかり当たる。しかも、かなり長射程ということになります。あるいは飛んでくるものを相当遠くから察知して、近寄れないように撃ち落とすという、そういう能力もあります。ですから、言ってみれば相手を察知する、相手に当てる、こういうことというのは様々な、たとえば、レーダーを使ったり、様々な電磁波を含め、いろいろな能力を使って現在維持されています。もちろん、宇宙の衛星も使って対応をしています。ですから、これを安定して使うということは相手に対してしっかり攻撃できるということ。逆に言うと、これをしっかり安定的に使わせなければ逆に攻撃されないということになります。そういう意味では、この領域を守れるか、あるいはこの領域が相手にとって攻撃の重要な要素であれば、それをむしろ妨害できるか。これによって、守れるか、守れないかが決定的に違います。そういう意味で、多次元的な、横断的な、いろいろな領域をこれからはしっかりと整備をしなければ、まったく防衛装備の体系は変わっていますので、対応できません。そういう考え方を、もしアクティブ・ディフェンスという言葉にしたのであれば、たぶんそういう理解なのだと思います」
松山キャスター
「アクティブ・ディフェンスにも絡んでくるとは思うのですけれども、自民党の提案では過去からずっと敵基地反撃能力というのが言われていましたけれども、政府としてそれに対してどういう見解を示すかというのはまた別な話だと思うのですが、今後どういう方向にこの議論は進んでいくべきだと考えますか?」
小野寺防衛相
「まず現在、政府としてはこの役割、相手の領土に対して攻撃するというのは同盟国アメリカが日本の盾と矛の関係の中でやってくれるというのが基本的な整理ということになります。ただ、この反撃能力という言葉をある面で使ったのは、私が大臣になる前、むしろ党として提言する時に議論させていただいたことですが、弾道ミサイルを撃ち落とす時、弾道ミサイルというのは相手の領土から飛んできます。現在は飛んできて1番高いところで撃ち落とす。これは高いところですから撃ち落としにくい。逆にもう1回撃ち落とすのは、そこから下降してすごいスピードで来た時にもう1回撃ち落とす。この二段構えでやっています。実はこれは大変な能力が必要になります。1番確実なのは、ミサイルがまだ撃ち上がる直前、あるいは撃ち上がってゆっくり上がっている、ボボボボッと上がっている、この初めのブーストフェーズ、ここで撃ち落とせば1番確実に、ゆっくりですから当てられるんです。ただ、これはどこにあるかと言うと、相手の領土内、領空内にあります。日本を守るために1番効率的な防衛として、この議論はしなくていいのですかというところからこの話はスタートしたのですが。少なくとも現在の政府として、安倍総理の考え方は、こういう役割というのは、まず同盟国米国にやってもらおうと。日本としては従前からの考えは変わらないというのが現在の政府のスタンスです」
松山キャスター
「森本さん、アクティブ・ディフェンスという概念についてはどういう意見を?」
森本氏
「大事なのはもちろん、クロス・ドメインな防衛力、つまり、縦割りで陸海空の防衛力を持っていればいいというのではなくて、つまり、本当にトータルな防衛力を統合運用して使えないといけないのですが。ただ、その際、ドンドンと周りの国の兵器体系が近代化し強力になり、そういうものに対応できるためには、極めてコンパクトな打撃力の強い防衛力を集中的に使って、確実に撃破できるという能力を持っていないとダメなので。そういうことを考えると、日本の防衛力を、『質・量を拡充』というところで、特に私は質というのが大事なので、質を強化した防衛力を、積極的な防衛体制というシステムの中で読み込む、そういう防衛力ですから。具体的に言うと、相手の、周りの防衛力に対し非常に強力なこの警戒監視の能力を持って、全てのことが事前にわかる。我が国に対する脅威が実現するというか、顕在化するというのであれば確実にこれに対応できる、極めて強力な打撃力を持っている防衛力を、装備をして、それが確実に運用できる。そういうトータルな防衛体制をここで『積極的な防衛体制』と言っているのであれば、この基本的なワード、ワーディングというのは、こういうことなのかなと思います」
松山キャスター
「具体的な装備としてはどういうものが想定されるのですが?たとえば、多用途型母艦とか、いろいろ新しい概念が出てきているようですけれども…」
森本氏
「たとえば、島嶼防衛に必要な防衛力として新しい水陸両用船の能力、それから、洋上における打撃の能力、それから、長距離、相手よりも長距離に到達できる、たとえば、地対空のミサイル、艦対空のミサイル、あるいは艦対地のミサイルといった各種ミサイル。それから、航空優勢を維持するために必要な第5世代以上の戦闘機。それから、たぶん、これからもう少し柔軟に運用できるような潜水艦や艦艇、それも高度にミサイル化された艦艇、そういう点で、打撃力の非常に強い防衛力をトータルで持つということを意味するのだろうと思います」
松山キャスター
「小野寺さん、これに関連して、自民党の提言の中には具体的に、たとえば、巡航ミサイルの拡充ですとか、導入という話も提言の中に入っていますけれども。政府としてはこれについてはどういう姿勢で臨まれるのですか?」
小野寺防衛相
「まだ私ども内部で議論しているということでありますので、そこは党の提言も参考にしつつ、必要なものをしっかり揃えていきたいと思っています」
松山キャスター
「クロス・ドメインということでは多元的横断的な防衛力ということで、陸海空のこれまでの人員配置ですね、たとえば、陸上自衛隊が14万人ぐらいだと思いますけれど、海と空を合わせて9万人ぐらいと、この人員規模等についても柔軟な運用で配置を変えたり、そこまでも検討されていく可能性はありますか?」
小野寺防衛相
「まずなぜいろんな領域が大事かと言うと、たとえば、日本は日本を守るためにしっかりこの国を維持していくわけですが、攻めてくる相手というのは遠くから攻めてきます。遠くから攻めてくる国が、たとえば、本国と連絡をとるとか、あるいはいろいろな装備を共通に動かすとすると、衛星を使った形でないと地球は丸いですから、連絡がつかない。逆に言えば、ここが遮断されれば、連絡がつきませんから、あるいは撃ったミサイルも誘導できませんから、それは使えなくなる。と言うことは、ここをどうするか。あるいは当然いろいろな領域を使って現在、装備は動いていきますから、そういう意味で、そこをどうするのかということがとても大事。守ることが大事だし、逆にそこを使えなくするということが大事、こういうことで役割をやっています。当然そうなると、私どもは部隊の中でどこの陸海空の部隊がそのことを担うのかということで、必要な限られた人員の中で、そこをうまく効率的にはかっていくということですから、それは、私どもの中でどこの部隊が1番担任するのがいいのかということは詰めてやっていきたいと思います」
生野キャスター
「そうした中、イージス・アショアが導入される方向ですけれど、これは防衛体制を整えるための一環だとは思うのですが、半島情勢が昨年とは一変しまして、非核化交渉が進む中で、日本がこのイージス・アショアを配備する必要性についてはどのように考えますか?」
小野寺防衛相
「まずよく皆様に知っていただきたいのは、まだ北朝鮮は核・ミサイルの何の動きもしていません。ですから、この段階で議論すること自体、私はとても不安に思います。たとえば、仮にこれが本当にスタートして、非核化や弾道ミサイルの廃棄が進むということが具体的なスケジュールとして動き出したとしても、実際にそれが廃棄されていかない限りは、私どもは安心しきれません。1番大切なのは、実は政策というのは一瞬にして変わります。ですが、防衛装備を準備するのには、たとえば、イージス・アショアは、最低5年はかかります。と言うことは私ども、ある一瞬で急に米朝の会談が逆の方向に変わり一気に安全保障のテンションが上がった時に、その時、慌てて装備をしても間に合いません。では、防衛当局としてはどうするか、当然、外交当局がこの問題を平和裏に解決するために一生懸命がんばっていただく、これは大事だと思いますが、少なくとも万が一の時、日本人を守れるように、そこは私どもは必要なことをやっていくということが大切です。ましてや、まだ核もミサイルも何も動いてない段階でこの議論が行われること自体が、私ども、むしろ防衛当局はそういう立場には立っていないということです」
松山キャスター
「イージス・アショアに加え、通常のイージス艦を増やすという話も進んでいますけれど、これも予定通り北朝鮮の脅威についてはまったく変わってないという認識のもとでイージス艦8隻体制ということを目指しているようですけれども、そのままの体制で続けるということですか?」
小野寺防衛相
「まずイージス艦というのは弾道ミサイル防衛のためにあるわけではないんです。日本全体をしっかり守るために必要な様々な装備を持っているので、イージス艦、盾ですから、そういう役割を持っています。本来であれば、これが、たとえば、今後緊張感が高まる可能性もあります南西地域とか、いろいろなところに船ですから展開してこの国を守るのが本来の役目なのですが。北朝鮮の弾道ミサイルが24時間365日もう危険だということになれば、イージス艦は必要な隻数をずっとそこに張りつけさせます。張りつくということは、そこにいる乗組員は24時間365日ずっと勤務をします。船ですから当然、補給も必要です、修理も必要です。その度にかなり負担をかけて、現在、この貴重な1隻数千億するような船をそこに振り向けているわけです。であれば、24時間365日体制で北朝鮮からミサイルで守るのであれば、むしろ船ではなくて、この撃ち落とす、ミサイルの部分だけを陸上に置いて、そうすれば、船の部分は要らないではないですか。予算がその分要らない。いわゆるミサイルの部分だけを置けば対応できると。しかも、陸上ですから補給は要らないわけですよ。隊員が普通のレーダーサイトのようにシフト制でずっと勤務すれば対応できます。そういう意味では、より効率的な装備。これがあることによって、むしろ現在いるイージス艦が本来、私どもが必要な時に速やかに、特に南西地域も含めて展開できるような役割を果たせるので、むしろ効率的な装備ではないかと思います」

『対GDP1%』防衛費の今後
生野キャスター
「日本の防衛費についてですけれど、自民党の提言では『NATO防衛費を対GDP比2%目標参考に十分な予算を確保』とあります」
松山キャスター
「そうした中、アメリカのトランプ大統領は、NATOの首脳会議に出席していましたけれども、NATO加盟国の国防費支出の目標について、2024年までに対GDP比で2%にするという目標がありますけれども、これに関連して対GDP比4%、国防費を拠出すべきだと言って、従来の主張よりもまたハードルを上げて各国に4%、対GDP比で4%の負担というのを求めたということなのですけれど。小野寺さん、アメリカが各国への防衛負担の増大・増加を求めている動き、だんだん現実味を帯びてきたという印象があるのですけれど、日本としてはこれまで対GDP比でおよそ1%の防衛費でずっとやってきたということですけれど、今後アメリカ側からこういう要求がくる可能性もゼロでないと思うのですが、このあたりはどう考えていますか?」
小野寺防衛相
「あまり防衛費をGDP比という形で積み上げるということはどうなのかなということは思います。でも、日本の現在の防衛費というのは米軍再編の予算を除けば、対GDP比0.875%ですから、0.9%にもなっていません。実はそういう予算の中で私どもはこの国を守るためにしっかりいろいろな形で効率的に節約をして行っているというのが日本の防衛体制だと思っています。必要なものを積み上げ、その中で最終的にこの金額でということで要求させていただきますので、私どもとしては必要な額を予算として認めていただいていると思っております」
松山キャスター
「自民党の提言の中にあるような、NATOの2%というのも1つの参考にするという文言がありますけれど、それについてはそんなにそれには影響を受けないで、必要な経費をキチッと計上していくという、そういうスタンスということですか?」
小野寺防衛相
「たくさんあれば、それはありがたいと思いますし、これは応援のためにたぶん言っていただいていることだと思います。ただ、私どもは政府として当然、必要なものを積み上げていく中で、このぐらいのことで、国会でお認めくださいと言いますので。結果として、それがGDPでどうなるかということなので、目標というよりはむしろ必要なものを積み上げていくというのが防衛予算だと思います」
松山キャスター
「森本さん、この防衛費の議論をどう見ていますか?」
森本氏
「まずNATOというのは、もともと現在29か国の集団安全保障体制、集団防衛体制の中で、それぞれの国がそれぞれの役割を果たしてトータルで地域の安全を維持しているんですね。だから、共通の目標を設定しても意味があるわけですね。アジアのように、たとえば、アメリカとの2国間の同盟関係になっている国に、NATOの論理を当てはめるのはだいたい安全保障の論理から言うとあまり正しい論理ではないんですよね。防衛費というのは、置かれている安全保障環境、つまり、脅威の認識、もう1つは、それに必要な我が国に必要な防衛力をトータルで積み上げた結果として出るものであって、数字を基準にして議論するというのは適切ではないです。ただ、アメリカがなぜ、昨年もそうだったのですが、2%を非常に強く主張し、今回は急に4%と言い出しているのか、理由が私は2つあると思うんですね。1つは、もともとNATOの全防衛費の中でアメリカが1か国で負っている防衛費というのはだいたい7割ぐらい、67%…68%と圧倒的にアメリカが負っているわけです。たとえば、ヨーロッパとの貿易インバランスを考えても、つまり、果たすべき役割を果たしてないということなので非常に不満を持っている、ドイツなんかに特に不満を持っているということなんですね。それが出ているということと。もう今週の週末には米露の首脳会談があるので、現在のNATOの防衛費の基本は冷戦後にもう一度ロシアの脅威というものに立ち返って北大西洋条約第5条の任務、本来任務に戻ろうとしているNATOの性格から見て、ここで米露の首脳会談の前に、こういうのを打ち出してロシアを牽制しておくという政治的な意味合いもあったのだろうと。アメリカがもともとGDPで3%しか出していないので、自分で4%を言うというのは、自分でアメリカの国防費の首を自分で絞めるようなものなので、どういう感覚で4%の数字が出てきたかはよくわからないのですけれども…」
松山キャスター
「アメリカでも3.5%ぐらいという話ですからね?」
森本氏
「そうですね」
松山キャスター
「それ以上のものをヨーロッパ各国に求めているということですよね?」
森本氏
「だから、アメリカは4%にすると、すごく厳しいという話になるので。現在でもGDP2%は29か国の中で5か国しか達成してないです。今年の年末で8か国いくかどうかぐらいの感じなので。それぞれの国にとったら、少しこれはちょっと達成できない目標を何か挙げられているという感じを受けるのだろうと思う。少し唐突感が私にはあります」
松山キャスター
「小野寺さんに聞きたいのですけれども、総額としての防衛費、日本の防衛費ですけれども、増額というのが必要になってくるような気もするのですけれども、そのあたりはどうですか?」
小野寺防衛相
「私どもは必要な装備を効率よく備えるため、隊員がしっかり活動できる、訓練費も含めて、予算ということで積み上げさせていただきますので。そこは国の財政ということもあります。国民の皆様に対して税金を使わせていくいただくわけですから、そこは効率的な整備にしていきたいと思っています」

小野寺五典 防衛大臣の提言:『自立と同盟』
小野寺防衛相
「私は『自立と同盟』ということですが。まず自らの国をしっかり自分で守るということ、それから、同盟関係をしっかり結ぶということ、このバランス、これをどうとっていくかということが大事です。相手の国が守ってくれるから自分は何もしなくていいという、そういう国際社会ではありませんし。逆に1国だけで国を守るということでもありませんので。両方のバランスをとった防衛力整備と、それから、外交的努力が必要だと思います」

森本敏 防衛大臣政策参与の提言:『打撃力と即応体制を万全にして対応』
森本氏
「私は、これからの国際社会の中で宣誓布告をして戦争が起こるという蓋然性は低いと思いますが、しかし、何かよくわからない平和状態が、徐々にグレーゾーン事態に変化をして、いろいろな、たとえば、サイバー攻撃が起こったり、見知らぬいろいろな様相が変化をして脅威を受けるという、そういう状態に、1番大事なことは直ちにこれに対して確実に相手の脅威というか、リスクというものを撃破できる圧倒した打撃力、いつでもこれに対応できる即応態勢、この2つを整えて日本の国家の防衛体制を整備するという必要があるのではないかと思っているので、こういう表現にしたわけです」