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2018年7月5日(木)
文科省局長逮捕の衝撃 ▽ 元将官に問う非核化

ゲスト

宗像紀夫
元東京地検特捜部長 弁護士(前半)
寺脇研
元文部科学省審議官 京都造形芸術大学教授(前半)
渡部悦和
元陸将 元東部方面総監(後半)
倉本憲一
元海将 元自衛艦隊司令官(後半)
織田邦男
元空将 元航空支援集団司令官(後半)


前編

『現役』局長逮捕の衝撃! 文科省で何が起きているのか?
生野キャスター
「歴史的な米朝首脳会談以降、非核化をめぐる米朝の駆け引きが活発化する中、米韓合同軍事演習中止など、アメリカの決断と各国の思惑は日本の防衛にどんな影響を及ぼすのでしょうか。陸海空自衛隊の元将官をゲストに迎えて、半島情勢の行方と日本の防衛が目指すべき姿を聞いていきます。その前に、松山さん、昨日、文部科学省の現役局長が受託収賄容疑で、東京地検特捜部に逮捕されました。逮捕された局長が、官房長だった昨年5月、私立大学に補助金を出す支援事業をめぐって、東京医科大学に便宜をはかる見返りにこの大学を受験した自分の息子を不正に合格させた疑いが持たれています。今日前半は、この問題について文科省と東京地検特捜部のOBの方々に聞いていきたいと思います。今回、逮捕されました佐野容疑者は官房長だった昨年5月、東京医科大学関係者から文科省の支援事業の対象校選定の依頼を受けて、11月に支援事業の対象校に選定。その見返りとして、今年2月にこの大学を受験した佐野容疑者の子供を不正に合格させた疑いが持たれています。まずは寺脇さん、文科省の現役局長が受託収賄で逮捕という事件、これをどう受け止めていますか?」
寺脇氏
「もちろん、現役の局長が収賄で逮捕されるというのは大変なことですけれども。それより大ショック、これは文部科学省にとって大打撃なのは、これに入試が絡んでいるということです。しかも、どうやら昔ふうに言う裏口入学、それを自分のお金で裏口入学するのだってよくないけれども、税金を使って裏口入学をしたのではないか。文科省の幹部だから医科大学に合格できたのではないか。これは全ての入試の、大学も高校も中学も公平性・公正性を疑われても仕方がない、文部科学省の。だから、これまで入試というのはこういうものですよと言ってきたことを、全部台無しにしてしまう、信用失墜、最たるものだと思いますね」
松山キャスター
「寺脇さんの過去の経験からして、文科省の、中央官庁の職員がそれに関与していたというケースというのは、僕はあまり記憶ないですけれども、実際は?」
寺脇氏
「いや、それは全然ないですよ。私も実は、私学の担当をしていた時があります。そうすると、いろいろな政治家さんから言ってくるんですよ。何とかしてくれないかと、中学受験から小学校受験に至るまで言ってくるのだけれども、これだけは、文部科学省はいくら政治家から言われ、どんな大政治家から言われても、これだけはできません、そういうことはやりませんと言ってきたんですよ。それを自分が破っているのではもうお話にならないんですよ」
生野キャスター
「宗像さん、今回は特捜が動きましたが、それについてはどうですか?」
宗像氏
「特捜部というのは、もともと独自捜査をやるためにつくられたところで、高級官僚とか、中央政界の政治家など、そこに犯罪があれば立件するという仕事をやってきていたのですが。最近ちょっとそういう関係の事件が摘発することが少なくなってきたので、また、原点回帰のような感じで、こういう中央官庁の高級幹部などに目を向けて、そこに不正があれば摘発するという姿勢に向かってきたかなと。今回の件は、私としては公正な行政を歪める、ある特定の大学に補助金付の事業を渡す。寺脇さんもおっしゃられた、入試について本来公正であるべきものに、点数の至らない人をかさ上げして合格させると。これもとんでもない話で、社会的にすごく大きな事件だと。ですから、摘発する価値はある、やらねばいけない事件だなと受け止めています」
生野キャスター
「佐野容疑者はどういった人物なのか、こちらに経歴をまとめました。主な経歴です。寺脇さん、佐野容疑者のことは知っていましたか?」
寺脇氏
「人としては知っているのですけれども、個人的にあまり付き合いがあるわけではない、私は旧文部省の方の入省なので。この経歴というのは非常に大きな点が3つあるんですね。1つは、これは王道です。事務次官に行くコースです。官房総務課長、それから、官房長、その両方。それは、国会対策ができないとやれないポストですから、総務課長と官房長の両方をやるということは王道、かつ科学技術学術政策局長というのは、旧科学技術庁の筆頭局、1番重要な局。旧文部省だと初等中等教育局と高等教育局がある。その御三家をやるというのは次官への道。これは単なる候補ではなく、もうなることが既定事実のように思われている。もう1つは、この方が私学部参事官という、これが実は、学校法人の監督をするところです。私学助成をやるのは私学助成課というところがやるのですけれど、これは学校法人の監督をする。実は東京医科大学というのはかなり監督を受けなければいけないような状況が過去にあった。実は私学助成というのは、だいたい自動的に学生数や教員数に応じて出るのですけれども、それは不祥事があると、それを止めたり、減額したりするということがあります。確かだいぶ前に減額を受けるようなことがあったりしました。そこらへんからひょっとすると何か関係があったようなことにも見える。かつ官房長という立場で、政治家との関連が非常に強い中で、なかなか国会議員さん達と付き合うようになると、国会議員さんからの紹介の人と会わないというわけにはいかなくなってくるんです。こういう社長さんに会ってくれとか、こういう大学の話を聞いてやってくれと言われると…、というようなところ。ただ一方、3点目は、山梨大学の副学長をしている。つまり、大学で大学入試をして学生を選ぶ立場。これ以外にも官房審議官、2014年のところに出ているのは、高等教育局担当の審議官なので、大学入試も彼の業務です。だから、自分で大学入試の重みというのは十分わかっていたというのは、この経歴から、つまり、科学技術庁出身だったから、あまり教育とか、入試のことなんかは意識がなかったというふうには言えない経歴ですね」
松山キャスター
「今回、立件するにあたって、1つ、こういう6月から導入された日本版司法取引制度というのがありますけれども、協議合意制度と言われますけれども。事件に関係している容疑者等を立件するにあたって、その事件に関係する人、また、その証言をする人が弁護士とともに検察側と協議を行って、何らかの形で情報提供を行う見返りに起訴などを見送ってもらったり、減刑をしてもらうという制度がありますけれども。今回のケースで、大学側に対する捜査はもちろん、行っているということですけれども、まだ在宅での捜査ということになっていると。何らかの形で情報提供を受けるということと合わせて司法取引のようなものが行われた可能性、宗像さんはどう考えますか?」
宗像氏
「最初に私、この事件を見た時に、普通、贈収賄事件というのは、贈賄側と収賄側を同時に逮捕するというのが普通原則的には行われるのですけれど。今回を見ていると、収賄側、それと幇助者だけを逮捕して、贈賄側は逮捕していない。だから、私は、これを瞬間的に見た時、これは情報提供が贈賄側、つまり、大学側からあって。そちらに対して、6月1日から適用がある司法取引を用いている可能性はあるかもしれないなというふうに。これは全然わかりませんけれども。しかし、司法取引はそう簡単にやるべきものではなく、証拠がなかなか集まらないとか、事件の立件がしにくいとかいう時にやるのですけれども。本件のような場合は、どっからかその端緒をつかまなければいけませんから。ですから、大学側が、私の方を司法取引で助けてくれるのなら情報を山のように提供しますよということをやった可能性はあります。まったくそれは想像でわからないですけれど。この捜査の流れ見ていると結構、贈賄側、つまり、大学側は理事長や学長や皆、この不正入試に絡まっているようなことが今日も新聞にも出ていますけれども…」
松山キャスター
「関与していたという話がありますね?」
宗像氏
「ええ。そうすると、これだけのものについて、逮捕もしないで現在のところはまだ不問にしている格好、在宅の格好になっている。これは何らかの意思が働いているかなと。正式にそういう司法取引をしたかどうかはわかりませんけれども」
松山キャスター
「それは最後まで表には出ないかもしれない?」
宗像氏
「ただ、情報提供が大学側からあって、持ち込む時に、私の方にそういう有利な扱いをしてくれるならドンドン協力しますと言われると、特捜もそれに乗る可能性は十分あると思いますよ」
松山キャスター
「今回焦点になっている、私立大学の支援事業についてですけれども、それをちょっと見ていきたいと思うのですが」
生野キャスター
「『私立大学研究ブランディング事業』というものなのですが、独自色を打ち出す取り組みを行う私立大学の機能強化を目的に2016年に設立されました。選定を受けた大学には最大で5年間、1億5000万円が助成されます。2017年度は188校の応募がありまして、うち60校が選定され、東京医科大学もその1つです。しかし、2016年度には、東京医科大学は選定されていませんでした。寺脇さん、この支援事業というのはどういったものなのでしょうか?」
寺脇氏
「私立大学には経常費助成という大きな制度があって、とにかく私立大学が1年間にかかる経費の何割かを見ていくという私学振興助成法というのに基づいた制度があるんですね。それが、制度ができた時は25%から30%ぐらいを補助できていたのですけれど、国の財政がドンドン悪くなってきちゃって、現在、10%を割り込んでいるんです。九点何パーセントぐらいしか経常費助成がないです。なので、どの大学もかなり苦しい。なので、その中で独自の良い取り組みをしているところには、今度は頭割りではなくて積み上げとして出してあげようという事業の1つですね」
松山キャスター
「今回のケースでは、東京医科大学は癌とか生活習慣病を治すための推進する計画ということで、それを事前に、簡単にこの検査できるシステムみたいなものを一応計画の中に盛り込んで申請をして、2016年度は申請が通らなかったのだけれども、2017年度で申請が通って、その1年度分で3500万円の補助を受けているという話ですが。今回、この間に入った、大学側と佐野容疑者を結びつけたとされる医療コンサルタントも逮捕されて、幇助ということで逮捕されていますけれど、収賄の幇助ということで。と言うことは、たとえば、検査のための機器とか、機械、そういうことを購入する資金として、この補助金というのは使われる、そういうことが多い?」
寺脇氏
「これは、使い道は自由になっていますので、機器に使ったっていいし、人件費に使ったっていいし、やれるんですね。ただ、ちょっと制度、私ももっと詳しく見ないといけないけれども、昨年もたぶん60校ぐらい選定されていると思うんですよね。その時には入らなかったと。つまり、上から60は昨年もし採択されて、それが2年目に入っているとするなら、次のところに位置しているヤツが入る。だから、同じもので昨年ダメだったけれども、今年通るということはあり得るんですね、上がいなくなっちゃっているから」
松山キャスター
「宗像さん、前年度は通っていなかったものが、今回、請託があって、それで便宜供与があったとしたら、翌年度に受かっていると、このことを立件するというのも1つの柱になってくるわけですか?」
宗像氏
「そうでしょうね。でも、これが、要するに、不正にやったか、不正ということまでいかないでやったのか。本当は基準にも乗っかってこないものについて入れちゃったと。その場合は、やっちゃいけないことをやれば、枉法収賄になりますから、その場合は。だから、そこは皆どれをやってもいい、合格するところの大学の1つをやったということではないのかなというふうに思うのですけれども」
寺脇氏
「だから、今回のそれをやらなくても通るヤツでも、そういう約束をしてはいけないということですね」
宗像氏
「うん、ダメ、ダメですよ、ですから。だって、選ぶところがいくつもあるわけですから。私のところにお願いしますよと言ったら、それはもう受託収賄で、特定のことを頼んで、それとその反対給付、大学不正入試ですけれども…、ということになるわけで。だから、今回の件はそういう意味では二重におかしなことが起きているということになるわけですね」

問題の根と捜査の行方は
松山キャスター
「文科省は昨年、天下りを斡旋したという問題で、当時の前川事務次官が引責したということで大混乱になっていたわけですけれど。文科省の誠実さが問われている最中に、こういう事案が発生していたということで。文科省の現在の体質を問う声というのも出てくると思うのですけれど、そのあたりはどういうふうに見ていますか?」
寺脇氏
「それはそうだと思いますね。この根っこには、まだ両者が統合してもう17年も経っているのですが、いまだに旧文部系と旧科学技術系というのが、まだちょっと派閥というわけではないけれども、意識の乖離があると。そうすると、天下り問題というのは、あれは旧文部系の、全て旧文部系の話ですよね。それで旧文部系の幹部がほとんど、次官をはじめとしてかなり厳しい処分を受けたのが3月の終わりぐらいですよね。実は、この佐野さんもその時には監督責任で厳重注意を受けていますけれど、処分としてはたいしたことはない。その時に、あっ、これは文部のことなのだな、つまり、自分のことと思えば、これはいけないなと、こういうことがあっている時にこうしてはいけないなとなるだろうけれども、自分事と思えなかったのではないのか。だから、本来だったら官房長というのはこういうことが二度と起こらないように省内を引き締めてやっていくぞという責任者であるにもかかわらずですよ、こういう報道通りなら、5月、まだ全然記憶も新しい時にそういう請託を受けているという話になっちゃうんですね」
松山キャスター
「まさに綱紀粛正を指示する側にあったということですよね?」
寺脇氏
「そうです」
松山キャスター
「宗像さん、文科省内でのそういう立場にあったということも含めると、それなりに責任は重いというふうに感じますか?」
宗像氏
「だから、ずっと見ていますと、これまで起きている事件。構造的に、上から下までカチッと命令系統がうまく通って、しかも、それぞれが国民全体の奉仕者だという考えの下に個々的な利益のために動いちゃいかんというものが徹底して行われていなかったのではないかという感じがしますよね」


後編

米韓演習中止の余波は?
生野キャスター
「米朝首脳会談を受けて、アメリカの国防総省が先月19日に今後3か月で予定されている複数の米韓合同軍事演習を中止すると発表したことについて聞いていきたいと思います。まず織田さん、外交的な理由で中止された合同軍事演習ですけれども、この判断を安全保障の観点からはどう見ていますか?」
織田氏
「合同演習というのは部隊、つまり、在韓米軍には在韓米軍の任務がありまして。韓国を守り、戦争を抑止することによって朝鮮半島の安定化、平和を守るということですね。それを阻害するシナリオというものを普通はつくりまして。そのシナリオで作戦計画を立てるんですね。それが起こった時にどうするかという、それはいくつかあります。その作戦計画を検証し、それを演練するために合同演習はあるわけですね。だから、そこについては、それをやめるということはその任務そのもの、つまり、部隊そのものの存在意義を否定しているところもあるんですね。ただ、演習というのはもう1つの役割として、いわゆる政治の延長、つまり外交を後押しするというのもありますので、やめるのも一時的にやめるのもの、外交を後押しするということは言えるというふうには思います」
松山キャスター
「実際、アメリカのトランプ大統領が米朝首脳会談を行った直後の記者会見で、米韓軍事演習中止を示唆する発言をしたわけですけれども。実際の軍当局は普通だったら事前にそういう話はすり合わせができているものですか、通常であれば?」
織田氏
「普通は、今回の米朝首脳会談でも、話し合いをやっている間は攻撃しないよ、みたいな、しかも、共同声明で、いわゆるセキュリティ・ギャランティーと 言っていますよね」
松山キャスター
「安全を保証…」
織田氏
「安全を保証すると言っていますよね。だから、交渉している間はそのシナリオというものは起こらない、そのシナリオの蓋然性はかなり低いと見ているのでしょうね」
生野キャスター
「渡部さんは、どう見ていますか?」
渡部氏
「はい。まずこのトランプ大統領の発言ですけれども、軍事的に見たら、非常に問題があると思っています。2点ちょっと指摘したいのですけれども。まず第1点目は、私はトランプ大統領の北朝鮮との交渉ですごく支持するのは、力を背景とした対処、これをやった。これは軍事力、アメリカのスーパーパワーの軍事力を背景とした、これは素晴らしい。オバマ大統領ができなかったこと、これをやった、これは素晴らしいことだと思います。ところが、その力を背景とした交渉と言いますけれど、その力の1つが実は米韓合同演習です。これを、金正恩委員長は米韓合同演習にすごく脅威を感じていました。この脅威を感じていた合同演習をなぜ中止をするのか。今後の交渉が力を背景にできない交渉になっていくのではないかという危機を私は感じます」
松山キャスター
「倉本さんはどうですか?米韓合同軍事演習の中止については」
倉本氏
「非常に問題がある。過去にも交渉をやっている間は中止されたこともあります。今回もたぶんそういうことだろうと。交渉がうまくいかなかったら再開されることもある。ただ、この演習をやるためには、半年とか、1年かけて準備している人達がいるわけですね。一部の中には。その準備している兵隊の士気が落ちるのではないかという心配をされる節もあります。だけれど、そこはシビリアンコントロールと言いますか、要するに、政治のために中止をするのだということであって。その交渉がうまくいかなかったら再開もあり得ると。今度は訓練だけではなくて、実働の可能性もあるわけですね。だから、そういう意味では、いったん士気が落ちるかもしれませんけれども、その士気を維持して、最悪の場合に備えるという気持ちは変わっていないと」
松山キャスター
「米朝首脳会談が行われる前までは、アメリカはかなり強硬姿勢で臨むのではないかという観測もあったのですけれども。共同声明を見ると、ある程度最低限は盛り込まれたけれども、そんなにアメリカ側の要求が入ったと見えないという状況ですが。ただ、あの当時、アメリカは今回の交渉が、この流れが決裂した場合は、いよいよもって軍事オプションを構えるのではないかという観測もありました。そういう意味では、合同軍事演習がもう1回再開されるという、仮にそういう局面が来た場合は合わせて軍事攻撃の可能性も十分出てくる、ということなのですか?」
倉本氏
「既にこの3月にも空母が3隻、周辺海域に集まってプレッシャーをかけまして。だから、あの時だってやれないことはない状態ができたわけで。ある専門家は3月に実際に攻撃が起こるのではないかと分析されていた方もおられるぐらいです。そういう意味で、別に合同演習ができなくても、あり得ると。ただ、3月にもしトランプ大統領が攻撃の指示を出した場合に、世界のいろいろな国から非難されること。要するに、独善的とか、いろいろ言われると思います。だけど、今回は一応、首脳会談をやりました。それで核廃棄の交渉をやりましょうという話になりました。そこで北朝鮮が、約束を守らないというか、交渉に応じないということになれば、今度攻撃する時の大義名分ができると考えられると。だから、いろいろな意味で、これは捉えるべきだと思います」

北朝鮮『非核化』の行方
生野キャスター
「北朝鮮は非核化とは矛盾した動きを最近見せているんです。アメリカのメディアが先週から報じているのですけれど、6月26日、寧辺周辺の核施設でインフラ整備が速いペースで進んでいるとの分析を発表しました。また、6月30日付のワシントン・ポストには『北朝鮮が核兵器の備蓄数と製造施設の一部を隠蔽している可能性がある』と。また、7月1日付ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は『咸興にあるミサイル工場が拡張されている可能性がある』と報じています。アメリカ政府が北朝鮮の状況をどこまで正確に把握しているのかというところですけれども。渡部さん、どう見ていますか?」
渡部氏
「ある程度は把握しているというふうに見るべきだと。完璧に把握するのは非常に難しい。と言うのは、アメリカのCIA(中央情報局)、DIA(アメリカ国防情報局)、インテリジェンス・コミュニティで1番厳しいのは北朝鮮の情報をとる…、難しいのはヒューミントだと言われていますね」
松山キャスター
「実際に人が中に入って情報をとってくる諜報員ということですね?」
渡部氏
「スパイを北朝鮮の中に入れて、実際にヒューミントを使って情報をとるのが、1番、正確な情報がとれると思うのですが、それができない。これは非常に厳しく金正恩主席が統制をやっていますから、入れば殺される、そういう状況ですから、非常に難しい。しかし、アメリカのインテリジェンスと言ったら、ご存知の通り世界一と言われています。だから、たとえば、衛星の情報とか、エリントとか、コミントとか、通信の情報とか、そういう情報を使いながら、かなりの情報はとっていると見るべきだと思うんです。ただ、この38度線の正面に何台の、たとえば、長距離の火砲が置いてあるかとか、それがどこに置いてあるかとかいうのは、これは難しいんですよ。たとえば、たくさんトンネルをつくりますから、そのトンネルの中に隠してしまえば、これは発見するのはすごく難しいということですね」
松山キャスター
「実際に北朝鮮の核能力についてもアメリカの情報機関でいろいろ情報が違っていると思うのですが?」
渡部氏
「はい、そうですね」
松山キャスター
「実際にはどの程度というふうに?」
渡部氏
「今言われているのは10から20とか、60という数も出てきます。だいたい普通に10から20というのが、だいたいの多くのインテリジェンス・コミュニティが言っていることだというふうに思います」
松山キャスター
「倉本さんはこのアメリカの情報把握能力、現在の段階で北朝鮮の軍事能力の分析、アメリカはどれぐらいつかんでいると」
倉本氏
「1番上と1番下は、これは衛星情報である程度わかることですよね。2番目に関しては、要するに、いくつあるか誰もわからないわけですね。北朝鮮もたぶん本当のことを言わないだろうし、核査察をやるよと言っても、北朝鮮がここにこれだけありますと言ったことに対しての査察であって、隠してあったら最後までわからないわけですね。それを1から10までつかんでいるかと言うと、決してそんなことはない。ただ、こういう情報がリークされるということは、首脳会談が終わって3週間も経って、やっと交渉が始まりますけれども、それに対する、その圧力とか、ジャブというか、いろいろそういう意味でいろいろなことがリークされているのではないかなと思うんです」
松山キャスター
「このリークはおそらくアメリカの情報当局とか、たとえば、DIAとか、そういったところからの情報ということで引用しているようですけれども。と言うことは、アメリカのペンタゴンの中には、あまりに北朝鮮を信じ過ぎることに対する警戒感みたいなものがあって、こういう情報がチラチラと出てくる?」
倉本氏
「そうですね。政権の中でちゃんと調和がとれていないというか、いろいろな考えの方がおられて、いろいろなことをやっているというのが実態だと思いますよね」
松山キャスター
「織田さんはこの分析について」
織田氏
「リークされた内容を見てみますと、要は、アメリカのインテリジェンスの能力が完璧ではないよということ言っているんですよね。CVIDというのは、非常に難しいのは、北朝鮮の正直な申告がないと成り立たないんです。ちょっとでも隠すと、それは独自のインテリジェンスでとった情報で特別査察をやらなければいけないんですね。それを受け入れるかどうかは別の話として。その特別査察ができるのですかと。その情報を持っているのですかと言ったら、先ほど、渡部さんが言われたように偵察衛星とか、いわゆる定点観測は上手なのですが、必ずしも、日本は何かアメリカの情報は完璧だなんて思っている節がありますが、全然そういう話はなくて。私が経験したのは2004年ぐらいだったかな、アメリカのコブラ・ゴールドが要撃されたことがありましたよ。第5空軍で大騒ぎになっていました。びっくりしていました。つまり、西海岸にある戦闘機がいつの間にか、東海岸に移っているわけですよ…」
松山キャスター
「コブラ・ゴールドが?」
織田氏
「ええ…、いや、戦闘機が」
松山キャスター
「戦闘機が…」
織田氏
「ええ。コブラ・ゴールドに対して要撃したのですけれど、ええ。だから、ほとほと…、そんな程度かということですね。それで、1番ないのがヒューミントなんですよ。ヒューマン・インテリジェンスですよね。これは力を入れてこなかったというのもあるのですが、CIA、一説によると2000人、30年間に入れて帰ってきたのが3人だなんて言っていますけれど、それぐらいタイトですね。やられちゃうわけですよ。それぐらいクローズドの世界ですから。だから、情報を得られない。ヒューミントが得られないと、斬首作戦なんかもちろん、できませんし、CVIDの根本的な特別査察もできなければ、これは絶対に抜けが出ると、私はそこを金正恩が狙っているのだろうと思う。だから、核の全廃はあり得ない。核の削減、非核化をテコにして、自分達の金王朝の体制維持をはかるということをはかっているのだろうと」
松山キャスター
「非核化に応じるという姿勢だけを見せて、実はそのまま核を温存して、どこかに隠しておくと」
織田氏
「はい。だから、ある程度は応じると思うんですよ。10発でも1発でも残れば、これは実存的抑止という言葉がありまして、どこから出てきたかというと、キューバ危機の時です。キューバ危機の時、核があるかもしれない、ないかもしれない、しかしながら空軍参謀長が今叩けということで具申するわけですよ、ケネディに。その時に、ケネディは応じなかったんですよね。なぜなら1発でも残っていたら、マイアミ壊滅するぞということで。それは核の威力としては1発でも残っていたら実存的な抑止があると、つまり、Existential Deterrenceと言うのですけど。そこを私は狙っているのではないかと」

『南北統一』の先にあるリスク
生野キャスター
「朝鮮半島の今後を動かすキーパーソンの1人が、韓国の文在寅大統領です。最新の支持率を見てみますと68.9%、とても高い数字なのですけれども。織田さん、南北統一を掲げる文在寅大統領はどんな朝鮮半島の形を目指し、日本にはどんなリスクがあると考えますか?」
織田氏
「うーん、文在寅という人の考えはよくわかんないんですけどね。理想主義なのかな、あるいは出自が北の人ですから、北に対するシンパシーというものを持って…」
松山キャスター
「韓国の中で南北統一への楽観論みたいなのは確実にありますよね?」
織田氏
「あります、ありますよね。では、どういう形で、統一というのは時代の趨勢だと思うんですよ、もうそれが近いか、遠い将来かの話であって。その場合に少なくとも、在韓米軍は用をなさないですね、必要がなくなりますよね、統一した時に」
松山キャスター
「存在意義がなくなる?」
織田氏
「ええ、存在意義がなくなる。その時に、中国の影響がどれぐらいなのかということがありますよね。だから、北朝鮮は必ずしも中国とはうまくいっていなくて、大嫌いですね。だから、主体思想、チュチェ思想なんていうのがあって、中国の影響を受けたくない、だから、核を持ちたいと、持って撥ねつけたいということはあるのでしょうけれど。だから、核を持った緩やかな統一、核のない緩やかな統一、大きく2つあると思うのですが。核がなくなったら、限りなく、それは中国の影響下にある南北統一だと思うんですね。でなければ、中国は統一というものを邪魔しますよ。アメリカの影響力のある、いわゆる韓国主導による統一だったら、もう体を張って抵抗するでしょうね。と言うのは、鴨緑江のところに、THAADのエクスバンドレーダーがくるなんてことは、中国からしたら嫌で、嫌でたまらんと。ですから、そこは我々が考えておかないといけないのは、最悪の体制。そうすると、中国の影響力のある統一か、核を持った、中国、あるいはロシアとある程度、距離を置いた統一だということですね。いずれにしてもそれは日本にとっては悪夢みたいなところがありまして。後者の、核を持った統一だったら、核に対する脅威にずっとさらされるわけですよね。だから、その時にアメリカがいわゆる核の傘をさしてくれるのか、どうなのかというところもありますし、自らやらなければいけないかもしれない。また、核のない統一というのは、中国の影響力が対馬海峡までくるっちゅうことですから。まさに第一列島線、イコール、アチソンラインになりましてね。我々は、少なくとも日本列島の南西の領域に対する防衛というのを考え直さなければいけないというふうに思います」
生野キャスター
「倉本さんはどうですか?」
倉本氏
「非常に難しくて、要するに、これはもう韓国と北朝鮮だけの話ではなく、この地域というのは昔からなのですけれど、戦後日本では地政学というのはあまり言われなくなったのですけど、地政学的にこのエリアは非常に重要なエリアだと思います。マッキンダーという地政学者が言っているのですけど、要するに、海洋国家のアメリカと大陸国家の中国なり、ロシアが対立をする場合、ここがすごく緊要な地形と言うか、ここをどっちが獲るかによって変わってしまうような場所なんですよね。だから、中国寄りの朝鮮半島もアメリカは許さないだろうし、アメリカ寄りの朝鮮半島の統一も今度は中国・ロシアが黙っていない。非常に難しいかじ取りが必要になると思います」
松山キャスター
「ある意味、その緩衝地帯として北朝鮮があるという現在の状況がある意味、バランスはとれていたということも言えると思うのですが」
倉本氏
「そういう意味では、核がなければよかったのですけれども。そこに核というのが入ってきて、その核をどのように廃棄させるか、あるいはコントロールするのかというところだと思うんですよね。だから、単に北朝鮮と韓国だけの話ではなく、もっと大きく見ないといけないと思います」
生野キャスター
「渡部さんはどう考えますか?」
渡部氏
「まず前提が、統一を唱える文在寅大統領ということが前提としてありますね。言われている通り、文在寅大統領は統一をしたいのだというふうに思います。それでも3つのケースがあると私は思います。1つのケースは、南北統一した統一コリアができない、このケースだってある。それから、2番目は民主主義国家としての統一コリアが誕生する。これは韓国の中の民主主義勢力が勝ってというものですね。3番目は赤い統一コリアと私は呼んでいるのですけれども…」
松山キャスター
「赤化統一ということですか?」
渡部氏
「はい。金正恩が朝鮮労働党、独裁体制の統一国家をつくる。これが、中国モデルと、私は言っていますけれども。中国では共産党一党独裁の中国モデルというのをつくりあげた、経済的にも発展している。これと同じようなものを統一コリアで金正恩が目指していく。そういう、この3つのシナリオ。織田さんが言われた通り、それは全てに核がどこかに入っている。これが私の3つのシナリオで。1番最悪なのは、3番目の赤い統一コリア、核つき。トータルとして言えば、いずれにしても、この3つのケース、どれをとっても反日にならざるを得ない。だから、日本としてどのようなケースになったとしても、韓国、この統一コリアから厳しい態度をとられる。これを前提にしながら、安全保障、防衛問題を考えなければならないというのが結論ですね。防衛ラインの話ですけれども、ちょっと皆さん誤解があると私は思うんですよ。日本の防衛ラインが下がるのではないんです、アメリカの防衛ラインが下がるんです。これはすごく重要なことですよ。たとえば、アチソンラインというのも出てきました。第一列島線がこれですけれども、これと、アチソンラインというのは、台湾を外してしまうのがアチソンラインなんですね。第一列島線は台湾を含んでいます。これはすごく大きな違いです。第一列島線は台湾含む、アチソンラインは台湾を外している、これは非常に重要なポイントなんですね。だから、アメリカとしてはアチソンラインではないですよ。台湾も含んだ第一列島線をアメリカとしては守りたいだろうと、アメリカの軍事専門家はそのように考えていると思います」
松山キャスター
「そういう意味では、どういう形で統一されるか、されるのかどうかもわかりませんけれども…。日本としての対応というのはどういうことが求められてくるのですか?」
渡部氏
「日本が第一線になる、この緊張感というのは持たざるを得ない。だから、この緊張感を持って、たとえば、対馬も、非常に大きな焦点になるでしょう。日本にとっての防衛ラインは変わりませんよ。日本の領土・領空・領海、これを守らなければいけない。これはアメリカがどのラインをつくっても、日本としては、ラインは全然変わりません。それは絶対に守らなければいけない。しかし、朝鮮半島からの圧力が各段に増してくる。これに対応しなければ…。私は11月に韓国を訪問した時に、いろいろな第一線、38度線、特殊作戦部隊、全てのところにこの独島があるんですよ。私達に対し、北朝鮮との厳しい状況の中で独島を見せつける。この状況というのはちゃんと考えなければいけない。韓国の仮想敵というのはもしかしたら日本かもわからない。この緊張感を持って考えなければいけないと思います」

渡部悦和 元陸将の提言:『憲法改正』
渡部氏
「速やかに憲法を改正していただきたいと思います。大綱は改定されます、その時に打ち出してもらいたいのは、攻撃されても勝てる自衛隊。攻撃されても勝てる自衛隊を是非実現してもらいたいと思います。そのためには南西の防衛をしっかりやらなければいけません。統合作戦能力も向上させなければいけません。領域横断作戦、これの能力を向上させなければいけません。サイバー戦・宇宙戦・電子戦、陸海空のそれぞれの戦い、これをジョイントオペレーションでしっかりできる体制をつくることですね。安全保障の基本は抑止です。積極的抑止としてのDMD体制の確立、イージス・アショアを含みます。懲罰的抑止としての敵基地攻撃能力、これは必要であろうと思います。専守防衛でなく、積極防御、アクティブ・ディフェンスです」

倉本憲一 元海将の提言:『自衛力・同盟・(国連)』
倉本氏
「丸い自衛力と書きましたけれど。要するに、欠落機能のない自衛力をつくっていかなければいけないと。大綱がこれから始まりますけれど。それから、この同盟というのも大切です。カッコして国連と書いてあるのですけれど、災害派遣という大震災の時は自助・共助・公助というのがありますけれど、それに当てはめてみると、自助が自衛力、共助が同盟、本当は公助で国連が来てくれればいいですけれど、国連は機能しないということを我々は十分認識して、欠落機能のない打撃力を持った防衛力を育てていかなければいけないと思います」

織田邦男 元空将の提言:『想定外を想定する』
織田氏
「私は『想定外を想定する』ということを書きました。危機管理とか、安全保障というのは想定外というのがあってはならないですね。しかしながら、今後、朝鮮半島についてはあまりに不安定要素があって、誰も見通せない。そんな中にあって想定外だったというふうにならないように、危機管理、あるいは安全保障として、あらゆる最悪の想定を考えて、その手立てを打つ。国内では米朝が首脳会談をやったからイージス・アショアなんかいいではないかという、あれを聞いているとバカだなと思うのですが。防衛力整備というのは10年単位ですから。意図というのは、一夜にして変わる。そこをおわかりにならない偉い人もいるということで愕然とするのですが。少なくとも国家としての対応としては、想定外を想定して準備しておく、備えあれば憂いなしと」
松山キャスター
「長期スパンで物事を考えると」
織田氏
「そういうことですね」