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2018年6月28日(木)
『所有者不明』の土地 拡大防止と事態打開策

ゲスト

後藤茂之
自由民主党 政務調査副会長 『所有者不明土地等に関する特命委員会』幹事長 衆議院議員
久元喜造
神戸市長 国交省国土審議会土地政策分科会特別部会専門委員
吉原祥子
東京財団政策研究所研究員・政策オフィサー

『所有者不明土地』問題 その実情と深刻度は
生野キャスター
「近年その深刻さが注目されているこの問題がテーマです、『所有者不明土地』。所有者の居所や生死が判明しない土地のことで、災害復興や公共事業の障害になるだけでなく、森林の適正な管理や税の徴収などでも自治体の大きな負担となっています。この所有者不明土地が増加し続けている背景と、今後の解消策を専門家の皆さんに聞いていきます。昨年の2月に増田寛也元総務大臣が座長を務める『所有者不明土地問題研究会』が出した推計によりますと2016年時点で、日本全国でおよそ410万ヘクタールあると推測されています。これは九州より広い面積となります。このまま何の対策もとらなければ、その面積は2040年にはおよそ720万ヘクタール、北海道の広さに匹敵する面積にまで増加するという試算を出しました。吉原さん、そもそもですけれども、この所有者不明土地はなぜ生まれるのでしょうか?」
吉原氏
「車両者不明というものがどういう意味かということですけれど、国土交通省の資料などによりますと、不動産登記簿などの台帳を見ても、そこに書いてある住所や氏名からは直ちには現在実際にその土地を利用している方の場所、居所とかでさえ、あるいは本当にまだ生きていらっしゃるのかとか、そういうことがすぐにはわからない状態、こういうものを所有者不明土地と言います。従って、所有者が誰もいないということではないんですね。これは言い換えれば、台帳に書いてある情報と、実際の状況というものの間にギャップがあるということです。このギャップはいざその土地を利用しようと、第3者が誰か現在の利用者に連絡をとる必要が生じた時に、台帳をあたってもすぐには現在の方には連絡がつきにくいと。台帳情報等を実際の状況の、このギャップを埋めるために随分と社会的コスト、あるいは行政コストがかかる、そういうことが起きているということです」
松山キャスター
「土地と言うと日本人とは本当に切っても切れない関係があると思うのですけれど、今になってこの所有者がわからない土地というのが大きくクローズアップされてきた、そのきっかけみたいなものはあるのですか?」
吉原氏
「大きなきっかけはまず東日本大震災で広域の面積での土地利用が必要になった時に、その一帯の所有者に連絡をとろうと思った時に、今申し上げたように、台帳情報ではすぐに追えなかったということが起きたということ。さらには空き家問題が現在、深刻になっていますけれど、都市部の宅地においても空き家の所有者に連絡をとろうと思ったところ、登記簿だけではすぐには連絡がとれない。あるいは相続人が全て相続放棄をしてしまっていて、誰も管理の責任を負う人がいないとか、そうした状況が見えてきたことで、これは看過できない問題だろうというふうになってきたのだと思います」
松山キャスター
「その所有者不明土地の問題からくる経済的損失について、まとめたのですけれど、所有者の探索、誰が持っている土地なのかというのを探索するコストというのがおよそ500億円と推計される。土地活用の機会を失うことによる損失、これがおよそ2兆2000億円。管理不行き届きによるコスト、これがおよそ3兆6000億円。固定資産税の未徴収、誰が持っているかわからないということで、固定資産税も上がってこないということで、これによる損失というのは、およそ600億円。…など、合わせて、これは2040年までの累計ですけれども、およそ6兆円という経済的損失があるという試算があるのですが、この額がこんなに大きくなる、ちょっと驚きなのですけれども、吉原さんはこの額についてはどういうふうに?」
吉原氏
「こういう推計が示されたのはこれまでで初めてのことで。こうした、まず推計が行われたこと自体が、非常に意義があることだと思っています。この金額の規模がどのくらいもらえるのかというのは、ちょっと普段の感覚ではにわかには難しいのですけれど。1つ、1つ見てみますと、この所有者の探索というのは、自治体の職員の方の労力を非常に使っているんです。本来、日本の地域社会が抱えている政策課題も取り組まなければならないことばかりの中で、こうした相続人調査に時間をかけている場合ではないと言えると思います。それから、2つ目の機会損失ですね。本来、この土地をすぐに利用できたならば、生み出せていただろう経済的な利益、あるいは便益というものが失われてしまっているということ。管理不行き届き、3つ目のコストというのはそうした放置される土地があることで周辺に鳥獣被害が広がったり、草が生い茂っていたりとか、そうしたことを自治体などで地域住民の税金で、そういうことを負担していかないといけないという、所有者が管理責任を負えていないことによるそうした不利益を地域に及んでくるということ。それから、固定資産税、これは額としてはそれほど大きいとは言えないと思うのですが、ただ、そうした調税実務にかかるコストというものの方が大きくなってしまうことで結局、課税徴収を諦めてしまうということが、税の公平さという観点では大きな問題になってくるのだろうとは思います」
松山キャスター
「後藤さん、日本人と言うと、昔から高度経済成長の頃から土地神話というのがあって、土地は常に上がり続けるものだ、土地ほど貴重なものはないという思考を持っていた人はかなり多いと思うのですけど、現在この時代になって、土地があってもその所有者がはっきりしない、ほったらかしになっている土地がこれだけあるということですよね。これは大きい時代の流れみたいなものがあるのですか、ここには?」
後藤議員
「なぜ所有者不明土地が起きるのかということについては、1番のきっかけは、相続が行われた時に相続登記が行われないというのが1番のきっかけでしょうと思います。それはなぜかと言うと、相続をわざわざしようと思うだけの土地に対する価値意識が持てないとか、あるいは土地の利用に対する昔の土地神話のような、そういう思いを国民が持てなくなってきているという、持たなくなってきているという、そういう時代的な背景もあると思いますし、農地の場合で言えば、後継者が出てこない。あるいは森林であれば、整備のコストを賄えるだけの収入が民有林ではあがらないとか。そういうようないろいろなことが背景にあって。そういう意味では、非常に所有者不明土地が現在、我々の社会が抱えている数多くの問題が表れてくる、そういう社会現象だと思います」

拡大する『所有者不明土地』 問題の原因と『事情』
生野キャスター
「2016年の9月、九州地方を襲った台風9号の影響で、宮崎市内にある住宅の裏山が崩れる被害がありました。市は住民の瓦礫の撤去の要請を受け、裏山の登記上の所有者47人に連絡をとったところ、大半が亡くなっていたため、市が探索したところ400人まで相続人を突き止めましたが未だに全ての相続人が把握できていないため、2年が経過した現在でも対策に着手できない状況が続いています。吉原さん、どうしてこのようなことが起こってしまうのでしょうか?」
吉原氏
「相続登記というものが任意で、相続登記をするのかどうかは所有者の意思に任せられているわけですね。それ自体、登記制度はそういう制度ですので、その制度だけの問題というよりも、土地を所有することにおける所有者の責務といいますか、2つあると思うのですけれども。物理的な管理を行うという責務と、それから、権利をきちんと保全をして、第3者から見て、誰がその権利と責任を負っているのかということがわかるようにしておくということがあると思うのですが、そうした管理責任と権利の保全の責任というものに、きちんと私達が制度として向き合ってこなかった側面があるのではないかなと。こうした問題は普段は目に見えないですね。こうした問題が地域で起きてみて初めてこうしたことになっているんだということに気がついて、この問題によって1番被害を受ける方、たとえば、避難されている方とか、1番困っている方に、その制度上の問題でしわ寄せがいってしまうという構図になっていると思います」
松山キャスター
「結局、相続登記が義務づけられていなかったということはかなり古い例、たとえば、明治時代とか、大正時代の登記のまま残ってしまっている土地、たとえば、山林とか、そういうところがかなりあるとすると、こういうケースはどこでも起こり得ることということなのですか?」
吉原氏
「まったくおっしゃる通りだと思います。この問題は昨日今日始まった問題ではなくて、この制度というものも明治の頃から、今年、明治維新から150年ということで、150年かけて培われてきたこの制度の中で、私達は権利を守り、土地を使ってきたわけですけれども、どうもこのままでは、問題が生じているねと。これは日本社会の変化とパラレルで生じてきている問題で、地域に人がいて、お互いに、よくお互いのことを知りあってわかっていて、土地利用においても協力関係があった時には合意形成もしやすかったし、多少登記が古くても実際日常的には地域で課題解決も可能だったのだろうと思います。それが地域から人がいなくなって、なかなか連絡もとりづらくなると、不在地主も増えてくる。そうした時にいったい誰がその土地を、本当に管理をし、また、権利・責任というものを持っているかということが、台帳がしっかりしていないとわかりづらいということが生じてきているのだろうなと思います」
松山キャスター
「神戸の実例を写真を見ながら、説明を願いたいのですけれども、実際、防災とかの問題も含めて、どういう事例が出てきているのかというのは?」
久元氏
「こういう事例は数十件あるのですけれども、1つの例は、所有者が不明の土地・住宅というのは、ここの部分なんですよ。ここに2棟の、わかりにくいですけれども、草がボーボーに生えた、これはアパートなんですね。アパートが2棟建っているわけです。この奧は木が茂っていますけれど、ここに公園をつくるという計画があるんです。しかし、これの所有者がわからないために、これに着手できないという問題と。それから、ここに土地があるのですけれども、ここに小さな土地ですけれど、これは私有地なのですけれど、神戸市が持っている土地なのですけれど、これは処分したいと。しかし、ここの所有者がわからないために境界が未確定なので、公園をつくろうにも境界が未確定なので、着手ができない、この土地も売れない。それから、さらに隣に住んでおられます。これは物干しに干してありますから、お住まいなっているのだろうと思いますけれど。おそらくここにお住まいになっている方は有形無形の、台風なんかがきた時には心配されるでしょうし…」
松山キャスター
「不安ですよね」
久元氏
「ええ、不安だと思いますし。害虫だとか、発生している恐れもあります。それから、こういうところは、ここまで酷くなったら、なかなか入り込まないとは思うのですけれども、こういうような空き家が増えるというのは治安上の問題が出てくるわけです」
松山キャスター
「なるほど。あともう1つ別の写真についても聞きたいのですけれども。これも所有者不明土地が、一般の住宅の横にあるという…」
久元氏
「すぐ横にあって、こういうところは草が生え放題で、所有者がわからないから、従来は、担当職員は、当然、苦情が出ますよね。これは他人の土地なので、行政は一切手を出せないんですということを言う傾向が強かったんです。私はそれではいけないということで。こういう出ているところは、市の責任でこれをちょっと刈り取るとか、そういうことは是非やるようにしていたのですけれども。幸い空き家の特別措置法ができ、それに合わせて神戸市は空き家と空き地に対する条例もつくりまして、こういうような場合には、特に所有者がわかっている場合にはいろいろな手段を講じる。所有者がわからない場合にも緊急措置として、特にこういうところは刈り取るというようなことをやり始めてます」

自治体の対応と限界は
生野キャスター
「一般的に土地を誰が所有しているのかというのは不動産登記簿、固定資産課税台帳、農地台帳などで確認ができるわけですが。久元さん、神戸市では所有者のわからない土地の持ち主の把握というのはどのように行っているのでしょうか?」
久元氏
「これは当然不動産登記簿をまず見て、そこからスタートするわけですね。一致していないなという心証を得た場合の対応は、これはそれぞれの部局が別個に行います。たとえば、その道路、道路を計画し、用地買収に入って、所有者がわからない土地が出てきた、公園を拡張しようとする時にそういう人が出てきた。それから、老朽危険家屋を、これを非常に危ないので撤去してくれというふうに命令をしても相手がわからないという時には、その老朽危険家屋を担当する部署が調べる。それから、税、固定資産罪の場合には税務当局が調べる。バラバラに調べるわけです。1番情報を持っているのは、固定資産税関係なんですよ、これは」
松山キャスター
「きちんと把握して…」
久元氏
「できるだけいろいろな聞き込みをし、それから、聞き込みをして、最近出入りしている人はいませんでしたかみたなところまで調べてやる。ところが、この固定資産税の情報というのは、地方税法に守秘義務がありまして、他の部局に知らせてはいけないということになっているわけですね」
松山キャスター
「同じ役所の中でも共有ができないのですか?」
久元氏
「できないことになっているんです。それが、空き家対策特別措置法で固定資産税の情報を知らせてもいいという法律改正がなされた。これは、非常に自治体にとってはありがたい話でした。そういうように一部風穴が開きましたけれど、基本的にはそれぞれの部局が大変苦労してやっている。場合によったら関係がありそうなところに出張に行き、苦労して精度をあげていこうとしているのが現在の実態ですね」
松山キャスター
「ただ、実際本当に所有者不明土地があって、それが管轄内で何かしら公共施設をつくるために障害になっているという場合に、所有者を調べるために、たとえば、その息子さんが東京に出て働いているから東京まで調べに行くと、そういうこともされるわけですか?」
久元氏
「しています」
松山キャスター
「そうすると、かなりコストがかかりますよね?」
久元氏
「もちろん、そうです。それは相当なコストと、もちろん、コストだけではなく、結局、そういうところに労力が使われていますから、他のところに人員がまわせなくなるとか、他の仕事ができにくくなるという弊害も大きいですね」
松山キャスター
「コストをかけて、いろいろ所有者を特定する作業をしても、それでも特定できない場合というのは、固定資産税の徴収はどうするのですか、そういう場合は?」
久元氏
「数字で言いますと、固定資産税の徴収には大きな影響は出ておりません。たとえば…」
松山キャスター
「それはもともとそこからは徴収していなかったから?」
久元氏
「1つは、実際に納税通知書を発行するわけですけれど、実際に納税通知書を発行し、58万通発行するわけですけれど、返ってくるのは2000件ぐらいです。逆に言うと…」
松山キャスター
「58万通出して2000件しか戻ってこない?」
久元氏
「2000件、ええ。ですから、逆に言うと、この58万通を発送するために、結局、不動産登記簿以外の、先ほど申し上げましたような様々な努力をして、所有者を把握する努力を税務当局はしているとも言えると思います。現時点では、あとでまた具体的な話になるかもしれませんが、所有者がどうしてもわからないようなケースについては課税保留というやり方をします。課税保留は、これはもともと、税というのは賦課処分というのをやって、それから、納税通知書を発行して、税を納めてもらう、納税してもらう。納めてもらえなかったら督促をして、最終的には滞納処分をする、こういう流れになるわけですけれども。現状、現在のところは返ってくる件数というのはそんなに多くもありませんし、それから、どうしても課税ができないと、1番、賦課処分ができないという額が平成29年度で言いますと、190件で1000万円ぐらいですから」
松山キャスター
「神戸市の中で?」
久元氏
「神戸市の中で。神戸市の固定資産税の額が1100億円ぐらいですから、現時点ではまだ非常に大きな問題にはなっておりません。これはまだ多くの自治体でそうではないかと思いますけれど。しかし、相当、所有者不明土地が広がっている自治体では、これは既に大きな問題になっている可能性があります。これが、しかも、これからは大きな問題になっていくということは間違いないと思います。神戸も現在はこういう状況ですけれど、これが現在のままでずっと推移するとは思いません、悪化していくだろうとは思います」

深刻な現実と打開策は
松山キャスター
「所有者不明土地に対する課税の問題ですけれども、これは実際に所有者がわからない場合、なかなかそこに、所有者がはいないわけですから、なかなか課税は難しいと思うのですけれども。処理の仕方としてはどういうパターンがあるのですか?」
吉原氏
「久元市長がおっしゃったように究極の課税保留ということになりますが、相続未登記の場合は、原則としては相続人調査を行って、賦課換えと言って相続人に課税名義人を変更するわけですね。相続人が複数いれば、その人達が共有で義務を負うということになります。全員でその納税の手続きをするのが大変ですので、代表者を決めて、相続人代表者指定届というのを出してもらって、長男さんなりが、その人がまとめてお支払いをするという対応をとると。相続未登記であっても、実際にどなたか、長男さんなりが代表として払うということは非常によく…」
松山キャスター
「未登記でもできるんですね?」
吉原氏
「はい。そういうことです」
松山キャスター
「ただ、一方で、たとえば、所有者が亡くなっているとした場合、所有者が亡くなった人のまま所有権がまだそこに残っているという場合、こういう場合の課税というのはどうするのですか?」
吉原氏
「亡くなった場合には、その権利が相続によって権利は相続人に移っているので、相続人全員がその権利を持っているということになります。台帳上は亡くなった方の名義のまま、実際はその相続人の方が払っているということで。ただ、税務の現場としては、きちんと課税徴収ができればいいということがまず1番の目的ですので、台帳を最新名義に変えるということは次善の策で、何とか徴収ができれば、まずは次に進むというところが実際だろうというふうに思います。あとは市長もそれほど税収の額としては実際の税収に響いてるものではないとおっしゃいました。まさにその通りで。我々も調査をやったのですけれども、こうした所有者自身がご利用に関心を失うような土地というのは、往々にして資産価値が低いから、あるいは短期的に経済的な収益が見込めないから放置されがちになるわけで。そうすると、固定資産税の評価額も極めて低いんですね。そうなりますと、そもそも免税点未満と言って、課税対象の上限にかかわらないと課税がそもそもされないというほどになります。そうなりますと台帳を更新するインセンティブが今度は税務部局に働かなくなるので、固定資産課税台帳を見ても、最新の相続人情報がわからないということは別の問題として起き得ます」
松山キャスター
「そうなると、両方からインセンティブがないからそのまま放置されてしまう可能性があるということですね?」
吉原氏
「管理の放置と権利の放置、情報の放置ということが可能性としてあります」
松山キャスター
「後藤さん、どうですか、こういう状況を聞いて?」
後藤議員
「固定資産税というのは、第一義的には、登記名義人が納税義務者なんです。ですから、おっしゃったみたいに、賦課決定をしても、大方の場合、名義が違っていても、ご家族が実質的に使っておられ、いろいろされていればご家族が納税をされることもあります。それから、実質的に納税がない場合は、実質的に誰が所有者なのかということを調べますが、所有者がわからない場合でも名義人に賦課決定をそのままし続けているようなケースにあるわけで。そういう意味では、固定資産税というのは、納税義務者が第一義的には登記人であるということで、現在、起きたようなことが起きていて。しかし、地域において意味のある土地については、誰かが税金を払っていると、そういう実態もあると思います。ただ、そういう賦課決定と非常に離れているということになって、矛盾が生じてくると、先ほどおっしゃったような、課税保留とか、いわゆる不能欠損処分だとか、そのようなことも含めて対応していくということだと思います」
松山キャスター
「不納欠損処分というのは、滞納分の徴収金をそのまま会計上ないことにしちゃうということだと思うのですが。あともう1つ、この問題を語る中で出てくるのが、死亡者課税という形がとられている自治体が結構あるという話を聞いたのですけれど、既に所有者が亡くなられている。だけども、そこに敢えて、それに課税する手続きはそのまま続けるということが続いている。吉原さん、こういう実態は実際にあるわけですか?」
吉原氏
「そうですね。死亡者課税という言葉は法律用語ではなく、現場の自治体の方々が実務の中で使っている言葉です。現在それが意味するところは後藤先生がおっしゃったように、本来であれば納税義務者というのは登記名義人なのですけれども、その方が既に亡くなってしまっているということで、死亡者であると、納税義務者が。しかし、実際の賦課徴収というのは相続人の誰かにして、実務はそれで実際の徴収は行っていると、そういう状況を広く死亡者課税というふうに、呼び表しています。厳密な定義が確立しているわけではないので、どこまでの範囲を死亡者課税と認識するかは、自治体によっても多少濃淡はあると思います」
松山キャスター
「課税のお知らせを死亡者宛に、たとえば、郵送か何かで送って、そのまま返ってこないケース、こういうケースも当然考えられると思うのですけれども、実態としてはこういうケースはあるのですか?」
吉原氏
「あると思います。亡くなったお父さんの名義の通知書を相続人のどなたかが受け取って、そのままお支払いをしていれば、自治体の方には納税義務者が亡くなっていることが、もし相続登記がされていなければ、わからないままになります」
松山キャスター
「神戸市では、そういうケースはあるのですか?」
久元氏
「そこは、とにかく課税当局は固定資産税をいかに確実に納税していただくかということに知恵を凝らしていますので。後藤先生がお話になりました、あるいは吉原さんがお話になりましたような、いろいろと現場で知恵を凝らしながら、納税をしていただく努力をしているということですね」

政府の対応と実効性は
生野キャスター
「政府は、今日のゲスト後藤さんが幹事長を務めた自民党内の特別委員会の提言を受けまして、今月閣議決定した『骨太の方針2018』に所有者不明土地問題への対策を明記し、2020年までの工程表を示しました。具体的には、まず公共目的で最長10年の利用権と土地を収用する手続きを簡素化することを定めた特別措置法を今国会に提出しまして、今月の6日に成立しています。2020年までに相続を登記に反映させる仕組み、土地所有権を手放せる仕組み、土地の管理など、所有者の責任の位置づけ、地籍調査の促進、戸籍と登記の連携システム整備などを検討し、制度づくりをしていくとしています。後藤さんは自民党の特命委員会の提言を取りまとめられたわけですけれども、全体としてはどのような方向性を目指されたのでしょうか?」
後藤議員
「5月に自民党の取りまとめをしまして、それで政府が6月1日に、政府の土地、所有者不明土地の閣僚会議で工程表を発表し、現在ご紹介していただいたように骨太方針の中において、いわゆる土地所有に関する基本制度の見直しとか、あるいは民事基本法制の見直しだとか、それから、土地所有情報をきちんと把握するためのシステム、こういうものをしっかり整えていくと。2018年度中に制度改正の具体的方向性を示し、2020年までには具体的に法制度を見直すという、そういう閣議決定をいたしております。土地所有に関する基本制度の見直しということで言えば、これは、たとえば、人口減少社会における土地所有のあり方というのが、もう少し土地の利用・管理について所有者に責任を持ってもらうべきではないのかと、そういう方向での見直し、あるいは地籍調査をもうちょっと円滑にやっていくと。そのために土地基本法の見直しだとか、国土調査法の制度改正とか、そういうことを考えています。また、民事基本法制ということで、先ほど出ていた、出ているかな、たとえば、相続登記を義務づけることにしてはどうかとか、所有権の放棄、みなし放棄の仕組みがどうかとか、所有者不明の場合の相隣関係とか、あるいは境界確定の民事法制の基本的な考え方だとか、あるいは登記簿と戸籍の連携をどういうふうに法制度としてとっていくかと、そういうような民事基本法制の見直しも含めてやっていこうと。これは、だから、2020年までですから、結構、国交省、法務省、現在、急いで基本方針に従って検討を進めていまして、2018年度中、2019年2月には国土審議会とか、あるいは法制審議会において、それなりの方向性をまとめていくという、結構この手の検討としては異例のスピードで議論を進めています。また一方で、実際に住居情報だとか、あるいは相続の情報みたいな、そういう個人情報のネットワークをきちんとつくって、そのネットワークと1番基本となる不動産登記簿との間の連絡をしっかり、連携をとる仕組みも2019年中には制度の内容をキチッと開発を終えて、2020年度からは、そういう仕組みが動いていくように考えていくというようなことで現在、取り組んでいます」

あるべき土地所有者&継承の形
松山キャスター
「ここまで所有者不明土地の問題について議論しているわけですけれど、あらためて日本人と土地のあり方を考え直す時に、もう一度ここで土地に関する、土地、財産に関する日本国憲法の条文というのをちょっと見ておきたいのですけれども。憲法には第29条に『財産権はこれを侵してはならない』とあって『財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定める』『私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる』というふうに規定されています。吉原さん、個人の財産ですよね、土地は。これに対して、国や自治体がどこまで関与できるかというのが今回の1番のポイントだと思う のですけれど、あらためてどういうところを改善していく、どういうところに問題があると考えますか?」
吉原氏
「すごく難しい質問ですね。一市民、市民と言いますか、生活者としてこの問題をどう考えたらいいのかなと自分に引き寄せて思うのですけれど。この問題の単位は個人なわけですね。個人で権利が付与されていて、それによって使っているものが土地という時に、土地というのは個人の財産でありますけれど、生活の基盤であり、農林業など生産の基盤であり、ちょっと大げさですけれども、国土でもあるわけです。私達自身では土地を生み出すこともできない、代替性がないわけです。それをきちんと管理し、権利を保全した形で次の世代に引き継いでいく必要があるものが土地だと思います。そうしたものを使っていくにあたっては、当然そこには責任というものが伴うわけで、自分の家の土地の相続を、自分の家の問題だけだというふうには考えずに、自分がそれをどうするか、1つ、1つ個人の行動の積み重ねが皆の問題になっていくんだよという、その個人の財産権の問題なのだけれども、その積み重ねが公共の問題につながるのだということを、私達1人、1人が普段から想像力を持って考えるということが大事なのかなと思っています」
松山キャスター
「久元さんはどう考えますか?」
久元氏
「この29条をあらためてよく読む必要があると思うんですね。『財産権はこれを侵してはならない』と書いているけれども、同時に『財産権の内容は、公共の福祉に適合するように法律でこれを定める』と書いてあるわけですから。公共の福祉ということが、憲法自身も言っているわけです。ですから、その一方で、憲法12条は『国民は権利を濫用してはならない。常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う』と、一方で、憲法12条も書いているわけです。こういう規定を見ますと、登記をしないで、ほったらかしにしているというのは、これは権利を濫用しているとも言えなくもないわけですね。自分の土地を、相続登記をしないで、先ほどもご覧いただきましたように、草がボーボーで放置をして、害虫などが発生しているという状況が…」
松山キャスター
「火災が起きたら、ますます公共の福祉ではないですよね」
久元氏
「これは公共の福祉に大きく反している、残念ながら。所有権というのは絶対で、犯してはいけないと、犯してはならないと書いているわけですけれども。ここだけを見て、こういう状態になっても立ち入ってもいけないし、草を切ってもいけないというふうに思っている傾向は、これは絶対に変えないといけない。もう1回、憲法を読み直し変えないといけないと。個人にはプライバシーはあるけれども、土地にはプライバシーはないと、社会的な存在なのだと、土地は。そういうことをあらためて憲法の規定を見ると感じます」
松山キャスター
「後藤さん、こうやって考えると、国民の土地に対する意識そのものを変えていかなければいけないという感じもするのですけれども、どういうふうに…?」
後藤議員
「今回の、ですから、所有者不明土地の根本に流れている考え方はまさに権利の上にあぐらをかいて濫用してはならない。公共の福祉のために責任を負わなければいけないと。と言うことは、要は、保有していることに対して管理の責任もあり、ですから、そういうことをもう一度、登記をしないとか、善管注意義務を怠るとか、そういうことがあってはならないということ。あるいはそういうことを前提として、利用をきちんとしていくような形で見ていくということが必要だというのが、今回の見直しの根本的な考え方です。もちろん、所有権というのは非常に大切な権利ですから、公共の利益と個人の権利を、適格にバランスをとっていかなければいけないことは事実ですけれど、そこが今回の見直しの大きな、いわゆる管理の責任、保有の責任を果たしてもらうと。日本は土地神話というのがあったりして、それが現在、土地が有利な資産かという問いにも、以前は6割でしたが、有利と答えていたのが、現在はもう3割の人しか有利な資産だと答えない事態が起きていまして。そういう意味では、土地に対する考え方も変わってきているとは思います。ですから、土地の承継についての多様性をしっかりと確保したところで、たとえば、相続について言えば、相続の時に、そのあと、どう相続財産を的確に承継して、つないでいくのか、誰がどのように管理していくのか、それができないとしたら、それをどういうふうに資産を承継するか、そういうことも含めて、民事基本法制も直していく必要があると思いますし、所有者不明の土地を解決するためには相続の基本制度だとか、管理制度だとか、そういうものもきちんと整えていくことによって、しっかりと対応ができるようにしていく必要がある。しかし、根本は所有権に絶対にあぐらをかくのではなくて、所有権には保有と管理の責任を負わなければならないと。それに従っていろいろな制度を、所有権をバランスさせながら、丁寧に見直していく作業をしていく必要があると思っています」

後藤茂之 自由民主党『所有者不明土地等に関する特命委員会』幹事長の提言:『公共の福祉』
後藤議員
「憲法の文言であるという意味ではないのですけれど、しかし、憲法にはこういう『公共の福祉』というふうに、個人の土地所有、権利の行使については、その責任があるということで、特に土地について言うと保有・管理に対してしっかりと責任を果たす義務もあるわけですから。そういう意味で、今後とも土地の有効利用や、あるいは社会の公益的なニーズと、それから、個々の個人としての権利というのをしっかりとバランスをさせながら、少なくとも所有権に手をつけるわけではないです、しかし、所有権の管理、あるいは運用について、それなりの社会的責任を持っていく必要はあるのではないかと。そのことを所有者不明土地の問題を考えながら、もう一度、日本人が土地の問題について考える時がきたと思います」

久元喜造 神戸市長の提言:『幽霊の住み処を地域の資産に』
久元氏
「現在、所有者不明土地というのは、これは幽霊の住み処だと思うんですよね」
松山キャスター
「まさにそんな感じの家がありましたね」
久元氏
「そうですよね。これをどうやって、人間が人間の世界に取り戻すかと、いかにこの地域の資産として活用していくのかということが大事だと思います。国も非常に良い制度を使っていただきましたので。この問題は非常に大きな問題ということはもうだいぶ理解が広がってきましたので、これからは行動の時だと思うんです。自治体も必要な役割を果たすということが大事で、いろいろな人達の知恵とか、あるいは力をこの問題に結集させていく。NPO(特定非営利活動法人)、NGO(非政府組織)あるいは自治会や婦人会や地域の団体ですね、企業、こういうような知恵を借り、所有者不明土地を含む、空き家・空き地問題というものを解決する。森林とか、あるいは農地の問題もありますけれども。とにかく地域の資産に皆でしていこうと、そのためのアクションを起こす時期がいよいよきていると私は思います」

吉原祥子 東京財団政策研究所研究員・政策オフィサーの提言:『ウチの問題→みんなの問題』
吉原氏
「ウチの問題が皆の問題につながっていくという意識を私達1人、1人が持つことが大事かなと思っています。国の方でも異例のスピードと後藤先生がおっしゃったように、取り組みが改革に向けて進んでいます。これを国や自治体任せにするのではなく、我々1人、1人がまずウチの登記はどうなっているのだろう、実家の土地、お父さんが持っていたのはどうなっているんだっけというのをまず家で話してみて。それを自分がどうするかということ、1人、1人の行動の集積が皆の問題につながっていくんだよということを、日頃から考えていくということがいいのかなと思っております」
松山キャスター
「まずはこういう問題があると認識を持つということが大事だと?」
吉原氏
「そこから、始まると思います」