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2018年6月27日(水)
茂木敏充担当相に聞く 米国発の世界貿易摩擦

ゲスト

茂木敏充
経済財政政策担当大臣(前半)
伊藤元重
経済財政諮問会議議員 学習院大学教授
ピーター・ランダース
ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局長

茂木経済財政政策相に聞く 自動車追加関税の懸念
斉藤キャスター
「今日は来月に予定されています日米通商協議の行方について聞きます。アメリカ発の世界貿易摩擦が拡大する中、日本にどんな対抗策があるのか。さらに『骨太の方針』に示されたプライマリーバランスの黒字化や消費増税について聞いていきます。各国との貿易摩擦を引き起こしているトランプ政権ですけれど、現在、自動車とその部品の追加関税を視野に入れた調査を行っています。現状では日本からの自動車に対する関税というのは2.5%かかっているのですが、調査の結果次第では輸入車に最大25%の関税が課せられる可能性があって、日本経済への影響が懸念されています。現在、日米の貿易はどうなっているのかと言いますと、昨年度の対米輸出は総額で15兆1819億円です。貿易黒字はと言うと、6兆9986億円で前年度から5.7%増えています。その対米輸出額のうち、自動車と、その部品の輸出が5兆5649億円で、およそ37%を占めています」
松山キャスター
「トランプ政権が検討しているのは、日本だけではなくて、たとえば、ヨーロッパや、ひょっとしたらメキシコとかが対象国になる可能性もあるということなのですけれど。そうなると、日本のメーカーの中ではメキシコに工場を持っているメーカーもあるということで、そこからアメリカに輸出するには、そこで関税がかかってくると、影響はある程度出てくると思うのですけれども」
茂木担当相
「鉄鋼・アルミもそうでしたが、国別除外であったりとか、製品別除外と、こういったものが一部認められておりまして、現在、自動車・自動車部品につきましては調査中ということで、どういう措置になるかによって影響というのは変わってくるのではないかと、こんなふうに思っています。いずれにしても、このあとライトハイザー通商代表と、新しい通商協議を始めるわけですけれど。おそらく7月下旬になるのではないかと、そういうところで日程調整をしておりますけど。その前に結論が出ているということはちょっと考えられないですね」
松山キャスター
「もう少し時間がかかるだろうという?」
茂木担当相
「ええ、調査を含めて、時間は若干かかると思います」
斉藤キャスター
「伊藤さんは日本経済への打撃はどのくらいあると思いますか?」
伊藤教授
「関税が上がったとしても、仮に上がったとして、それがどの程度の期間続くかということにもよるのだろうと思うんですね。短期間の交渉の中での、報復とか、いろいろなやり方があったとして、それが半年とかのうちに収まるのであれば、そんなに懸念する必要はないのだろうと思うのですけれども。ただ、ちょっとトランプ政権の通商政策で非常に気になっているのは、彼らから見ると、アメリカから見ると、フェアではないと見えているんですね。なぜ自分達は自動車関税が2.5%なのに、ヨーロッパは10%なのだと。あるいは中国は25%なのだと。日本に対してどう思っているのかは別の問題として。ですから、決着して最後の着地点というのはたぶん現在の状態に戻るということではないのだろうと思うんですよ。だから、そこらへんのところが非常に読みにくいものですから、今後1つ、1つの動きを注意深く見なければいけないと思うんですよね」
松山キャスター
「ヨーロッパは10%という関税を課してるということで、アメリカから見ると不公平感があるというのは理解できるのですけれども。日本は事実上ほとんどゼロですよね?」
茂木担当相
「あの、事実上というか、実際ゼロです、はい」
松山キャスター
「となると、日本はゼロでやっているのだから、そこは、日本だけは、除外してやってほしいという要請というのは交渉としてできるものですか?」
茂木担当相
「今後どういう交渉になっていくか、テーマも含めて、現在協議中でありますけれども。おそらくこの問題だけというよりも全体の日米間の経済関係をどうしていくかと。さらに実際に貿易収支はアメリカから見れば、赤字ということになるわけですね。ところが本来、日本の企業がアメリカで生産をしていると。この企業が、今度はまた第3国に輸出をしているんですよ。この輸出の額と日米の貿易収支を比較すると、アメリカにとってはプラスになっちゃうんですよね。本来、多いという…」
松山キャスター
「アメリカで造っている日本車を外に出しているのが多い?」
茂木担当相
「多い。通商全体ですけれど。そういったことも考えながら、いろいろな話し合いをライトハイザー代表ともやっていきたいと思っています」
松山キャスター
「トランプ大統領は、EU(欧州連合)に対してこういうツイートをしているのですけれど、『EUがアメリカからの輸出を拒む貿易障壁をすぐに撤廃しないのなら、アメリカに入ってくる全てのEUの自動車に20%の関税を課す』と。要するに、最大で25%という話を検討しているという話がありましたけれども、実際にもう脅しではないのだぞ、本気なんだぞということを示すようなツイッターを流していると。実際、ランダースさん、これはアメリカ側の本気度合い、日本はまさにそこを測りかねている状況なのですけれど、どれぐらい本気で自動車に関税をかけようとしていると考えますか?」
ランダース氏
「トランプ大統領はかなり本気だと思いますね。これが理想的な形だと。外国の車に大きな高い関税をかけて、できるだけアメリカでつくらせるというのが本気だと思うのですけれども。政権内では必ずしもそうは思わない幹部もいるので、これまで振り子のように政策が変わっていて、これからも変わるかもしれませんね」

日米通商協議の行方
斉藤キャスター
「さて、日米貿易協議が来月、アメリカで行われる予定です。これは、今年4月に行われた日米首脳会談で決まった日米通商協議の新しい枠組みです。この、FREE、FAIR、RECIPROCAL、自由、公正、相互的の頭文字をとり、『FFR』と略される枠組みです。日本側は茂木さんが代表を務めて、カウンターパートとしては強硬派として知られているライトハイザー通商代表です。茂木さんに、このライトハイザー氏にどんな印象を持っていますか?」
茂木担当相
「少なくとも2人で話している限りは、そんな強硬派だという感じではないのですけれども、お互いに国益をかけた協議になりますから、実際の協議が始まったら、なかなか難しい協議だと思いますね」
松山キャスター
「アメリカ政府の中では、茂木さんはタフネゴシエイターというあだ名で通っていると聞きますけれども、向こうは警戒している雰囲気はありますか?」
茂木担当相
「いえ、タフネゴシエイターというのは違って、タフだとは言われました。タフだと聞いているとは言われましたけれども、タフネゴシエイターとは言われておりません」
斉藤キャスター
「さあ、FFRですけれど、貿易協定の枠組みについても話し合われるとみられています。トランプ大統領は『日本との2国間協定の方が望ましい』としていますが、日本はアメリカが抜けたこのTPP11の署名を既に3月に終えています。早期の発効を目指しつつ今後の日米の協議であらためてアメリカの復帰を促したいとしています。一方、EUとの経済連携協定、EPAの署名は7月11日に行う予定です」
松山キャスター
「今回の日米間の協議、それぞれいろいろな分野があると思うのですが、1番交渉で山場になってきそうな分野、たとえば、農業分野、自動車もあると思うのですが、どのあたりが1番焦点になると?」
茂木担当相
「まだ日程、それから、さらに言うと、TORと言います協議の内容等ですね、事務レベルで詰めている段階でありまして、おそらく現場での交渉になると思います。実際にはライトハイザー通商代表と私の、2人の手立てというか、そこでどういう話になっているかということで。これは率直に言うと、やってみないとわからないというところですね」
松山キャスター
「このFFRの『R』は、レシプロカル、相互的と訳されますけれども、この意味が昔、1970年代、1980年代の貿易交渉の頃もよくこのワードが焦点になっていましたけれど、お互いの利益になるような結論を出すための協議、こういう認識でよろしいですか?」
茂木担当相
「そう考えていますけれども、協議ですから片方がプラスになって片方がマイナスになると、これでは合意に至らないわけでありますから、Talks for now free fair and reciprocal trade dealsという形で、この中で、フリーでフェア、これは当然のことでありますけれど、日米双方にとってメリットになる。だから、これは日米2か国だけではなくて、新しい、たとえば、投資のルールをつくっていくと。さらには市場歪曲的な措置、こういった国がとることがないようにしていくと。これは、日米がこういったルールづくりを引っ張っていくという意味でも、相互的になっていくのではないかなと思っています」
松山キャスター
「ただ、日本としては本来であればアメリカ入りのTPPというのを最初目指していたわけですけれども、現在、アメリカはそこに入ってない。TPP11はもうほぼまとまっているという状況の中で、TPP11の水準、TPP11で話し合った分野についての貿易水準というのは、そこは最低限守っていきたいと、これは基本線なのですか?」
茂木担当相
「我々にとってはTPPというのが日米双方にとって最善であると、こういった考えは変わっていないわけでありますから。そういったことを踏まえて、協議には臨んでいきたいと思っています」
松山キャスター
「伊藤さん、『R』のレシプロカル、相互的という部分からすると、アメリカもかなりアメリカの理にかなった利益になるような要求をかなりしてくるとは思うのですけれども…、そのあたりはどう見ていますか?」
伊藤教授
「ちょっと皮肉な言い方なんですけれど、1980年代以降ですね。日米貿易摩擦が出てきた時に必ずアメリカから出てきたのはフェアとレシプロカルです。ですから、聞き方によっては相互に良いとか、あるいはフェアと言うのだけれど、これは1つ、ちょっと裏を返すと、非常に保護主義的な考え方が…間違いないと思うんですね。しかし、それが事実であるとすると、それを理解したうえで日本はいかにうまく交渉をしていくかと、これは茂木大臣の手腕にかかっているわけですね」
松山キャスター
「たとえば、先ほど、自動車の話もありましたけれども、農産物・農業分野は昔から日米間で1番対立が深い部分だと思うのですけれども、このあたりは協議の中でどういう議論がなされるというふうに?」
伊藤教授
「これは私の想像では、間違いなく出てくるだろうと思うんですね。1つには、アメリカ側に日本のマーケットにもっと入っていきたいと思う業界の方々がいっぱいいるということと。また、事実かどうか別として、先ほど、ヨーロッパは、車は10%関税、アメリカは2.5%で、日本は自動車関税ゼロと言ったのだけれど、アメリカ人から見るとやはり日本の農業はすごく壁が高いという、事実かどうかは別としてそういう印象を持っている人がいるわけですから。まさにレシプロカルとか、フェアということを言った時には特定の分野だけではなくて、トータルで見た時に日米間でどういうディールができるかというふうに考えてくると、農業がテーブルのうえに乗らないということはあり得ないのだろうと思います」
茂木担当相
「伊藤先生がおっしゃった通りだと思っています。そこの中でトータル的に見ていくということなのですが、ある意味、TPP12の時の協議というのは、日米で相当やったわけでありまして。そこの中で日本としては自由貿易をやっていきたいけれど、重要5品目を含め、しっかり日本の農業を守っていって、再生産ができるような形にしたいということで、最大限のコミットをしたのがTPPのレベルですね。ですから、どういう協議があってもTPP以上のコミットメントはできないということは既にアメリカにも、4月の日米首脳会談でもそうでありますし、様々な機会で明確に話をしていますので。また、協議になっても、そういうことになると思います」

貿易摩擦で『骨太の方針』は
斉藤キャスター
「今月の15日に閣議決定された、経済財政運営と改革の方針、いわゆる『骨太の方針』に示されている基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化なのですが、骨太の方針では経済再生と財政健全化に着実に取り組んで2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス黒字化を目指すとしています。伊藤さんが民間議員を務めていらっしゃいます経済財政諮問会議の試算では、名目経済成長率は3%を達成していても2027年度まで黒字化にはならないんですね。名目3%の成長、プラス年間1.3兆円の歳出削減で初めて、2024年度に黒字化が視野に入るとしています。ちなみに2017年度の名目経済成長率は1.7%ということです。茂木さん、骨太の方針は3%という高い成長率を前提としていらっしゃいますが、貿易摩擦が拡大して日本経済への影響が懸念される中、この前提で本当に大丈夫なのでしょうか?」
茂木担当相
「まず現在のグラフで、なかなかご覧になっている方、専門的なので若干わかりにくいかと思うのですが、グリーンのラインですね、2027年にPBが黒字化すると、これは歳出削減を見込んでいないんですね。歳出削減は当然やるんですけれども、それを見込んでいないケースでありまして。ブルーのラインで、しっかりとした歳出削減をやっていった場合には、2024年が視野に入りますけれど。現実的にいろいろなリスクであったり、影響を考えると、2025年に黒字化すると、こういう目標であります。この財政健全化の目標設定というのはすごく難しいんですね。後ろに延ばせば延ばすほど現実的な感じがするんですよね。ただ、そうすると、すごく先送りではないか、もう少し今度は前倒しをすると、その前提が非常に高過ぎるのではないか。どちらを言っても難しいところなのですけれども。今回PBの黒字化目標、見直しを行ったわけでありますけれども。この1月に、その前提となります中長期の試算、経済がどうなっていくかと、これを出しまして。それまでは名目GDP(国内総生産)比の伸びも、たとえば、2020年に3.9%という数字を3.1%と、こういうふうに見直したり、かなり現実的な試算、これを議論の前提としておりますので。私は、伊藤先生もそうだと思いますが、現実的なPB目標になっていると思います」
松山キャスター
「そうは言っても、もともと骨太の方針では、PBの黒字化目標はもっと早い段階で達成されるべき目標がありましたけれど、それが事実上5年先延ばしになったという形になっていますけれど。これはやむを得ない理由があった?」
茂木担当相
「えっと、2020年にPBの黒字化を目指すということでやってきたわけでありますけれども。実際、世界経済全体が若干鈍化することによって日本経済の伸びにもマイナスに影響が出たということと。それから、前回の消費税の引き上げと、この問題で、いわゆる見送りの問題もあります。それから、今回、来年の10月に消費税の引き上げ、8%から10%に予定をしていますけれども、これまではそのうちの5分の4を、財政健全化というか、借金を返すことに使うという話だったのですけれど。今回は、半分は財政健全化に残りの半分は社会保障の充実。特に教育の無償化をはじめとする人づくり革命に充てるということにしたわけでありまして。その分、いわゆる財源的に言いますと、借金を返すことから、投資の方に向かっているということなんですね。ただ、ここで重要なのは本当にその高い成長率と言いますか、これに持っていくためには潜在成長率、これを上げていかなければならない、ということでありまして。少子化の中でも人材に対する投資、これをしっかりするような人づくり革命、さらには生産性を上げるという生産性革命に最優先で取り組むことが1番重要だと思っています」
松山キャスター
「今回の骨太の方針の中で、もう1つ注目を集めているのが外国人材の登用についてなのですけれども。新たな外国人材の受け入れということで、政府としては移民政策とは異なるものだという説明をしていて、高い専門性を有することが認められた外国人材については在留期間の上限を付さずに、将来的には家族帯同も認める、専門性があると認められれば、家族帯同も認めるケースも今後取り取り入れていくということで。この方針が、いわゆるこれまで政府が言ってきた移民政策についての方針転換ではないかという意見も、見方も一部であるようですけれども。これは、茂木さんはどういうふうに?」
茂木担当相
「基本的には現在、雇用の情勢が非常に良くなっているわけであります。直近の有効求人倍率が1.59%という数字ですから、1970年代前半以来、44年ぶりの高い数字と。一方で、そうなると、中小企業も含めて、人手不足と、これが顕在化してくるわけでありまして。介護分野であったりとか、農業でもそうですし、建設業でも、様々なところでそういった課題が出てくるわけでありまして、この問題をしっかりと解消していかなければならない。そういった意味で、移民政策、これは明確な定義があるわけではないですけれど、基本的には家族も含めて、その人達が日本に移ってきてずっと生活をすると、また、日本経済の一部分をそれが支えるという前提で、そういう政策をとるということになるのだと思いますけれども、それとは違います。そこで高いというか、一定の専門性を有すると認められた者を新たな在留資格で受け入れるということでありまして。そのうえで、高い専門性を持って、また、代替が将来的にきかない、こういう人にとっては将来的には家族の帯同を認めることもあり得るということなんですね」
松山キャスター
「これまであった、いわゆる技能研修生として日本に滞在していた人が、一定のテストを受けることで、その後5年の滞在延長が可能になる、ということも盛り込まれていますけれども、その分野については、先ほど、茂木さんが言ったように介護とか、建設とか、造船とかという部分がありますけれども、その特定の分野については今後その分野を広げていったり、そういうことも可能性としてはあるのですか?」
茂木担当相
「考えています。またこの分野について完全に詰め切っているわけではないのですけれども。まずこれを、人手不足をしっかりと解消していくうえで、当然、技術革新をとり入れたりして生産性を向上すると。さらには女性に活躍してもらう。また、高齢者の方でも仕事ができる方に就労してもらう。こういうことをとっても、なお、人手不足が解消できない、必要だという分野について進めていくということでありますけれども。よく報道によりますと、介護、それから、農業、建設、造船、それから、宿泊、この5つの分野が、とり上げられるのですけれど、決してそこに限ったわけではなくて。今言ったような、そういったことが様々な国内的な措置というか、対応をとっても必要な、なお、必要な分野については幅広く検討していきたいと思っています」
松山キャスター
「あともう1つ、茂木さんに聞きたいのですけれども、日本経済の今後の見通しを語るうえで来年10月に予定されている10%への消費税の増税。一応、骨太の方針でも、その方向ということで盛り込まれましたけれど。この増税に対して景気の腰折れを防ぐため、駆け込み需要や反動減といった影響をなるべく抑えるために現在、政府としてはどういう政策を検討されているのですか?」
茂木担当相
「前回、2014年の引き上げ時には、4月でしたけれども、その前の、駆け込み需要が相当出て、そのあと反動減ということで、日本経済に相当マイナスの影響と言いますか、景気の回復力が弱まったと。こういったことを踏まえて今回、消費税が来年引き上げ、この需要変動に対して機動的に対応をはかる。こういう観点から骨太の中に明確に書いたわけでありますけれども、どうしても財務省というのは何かこういう対応をすると、補正予算でやりたがるんですよ」
松山キャスター
「うん、そうですね」
茂木担当相
「そうではなくて、きちんと当初予算でと、2019年、2020年の当初予算で臨時、特例の措置をとると、こういった形にしたわけであります。さらに申し上げると、今回、先ほど申し上げたように、1.7兆円分は、人への投資、教育の無償化等々に使うということで、これを通じて実際は家計に、そのお金がまわるという形になるわけですね。それから、日本の場合は一気に前回上がったのですけれど、商品の価格とかが。ドイツとか、イギリスを見ていますと、必ずしもそういうふうに付加価値税が上がる前後に一気にということにならないので、一律一斉の価格変動とならないと。こういう、もちろん、中小企業の価格転嫁の問題とかがありますけれども、自由な価格設定を可能にしていきたいと思っています。おそらく耐久消費財、自動車、住宅、4Kのテレビ、こういったことも含めて、この部分で駆け込み需要・反動減が出るという懸念がありますので、そこに対する予算、さらには税、こういった対応をしっかり検討していきたいと思っています」

米国の『保護主義』政策 今後の世界経済の姿は?
斉藤キャスター
「アメリカ発の貿易摩擦が、今後の世界経済に与える影響が心配されるわけですが、ランダースさんが東京支局長を務めていますウォール・ストリート・ジャーナルは25日に『中国資本が25%以上を占める企業が、重要な産業技術を持つアメリカ企業に投資することを禁止する方向でトランプ政権が検討している』ことを報じました。ただ、今日の報道では『トランプ大統領が新たな投資規制を設けるのではなく、現在議会で審議されている審査強化法案に委ねる考えを示す』、『従来の対中強硬姿勢を軟化させた』と報じているんです。ランダースさん、このたった2日でのトランプ大統領の態度の変化は何かあったのでしょうか?」
ランダース氏
「政権内の対立が強いと思いますね。我々の報道が正確だったのですけど、出た翌日にムニューシン財務長官が…」
松山キャスター
「フェイクニュースだとか否定していましたね?」
ランダース氏
「言いましたね。否定しました。これは中国だけに絞った措置ではなくて、世界全体の投資規制になるんだと」
松山キャスター
「まさにこれですね。ムニューシン財務長官の発言は『中国だけを特定したものではなくて、我々の技術を盗もうとする全ての国が対象となる』。あらゆる国に対して、技術の移転に対して警告を発しているということだと思うのですけれども」
ランダース氏
「同じ日にナバロ補佐官という、ホワイトハウスのナバロさんですけど…」
松山キャスター
「ピーター・ナバロさん」
ランダース氏
「はい、…がまったく反対のことを言っちゃったんですね。我々の記事を裏づける発言をしているんですね。中国に対して行う措置だと。全世界ではなく中国だけだという発言を、同日に政権の幹部がまったくその反対のことを言っているわけですね。それは政権内部の対立で、強硬派と、穏健とは言えませんけれども、協力派という、世界経済、世界の国と協力するような派閥が対立して、トランプ大統領がその上に立っていて、自分の考えもあるのでしょうけれども、ある程度、振り子のように振っているという状態だと思いますね」
松山キャスター
「茂木大臣の今度カウンターパートになるライトハイザーさんはどちらかと言うと、中国に対する強硬派として知られていますけれど、どちらかと言うと、ピーター・ナバロさんと同じスタンスに立っているという見方ですか?」
ランダース氏
「基本的にそうだと思うのですけれど、さらに複雑で、いろいろな対立があって、ある日は、この人は強硬派、次の日はこの人…、意見が変わって強硬ではなくなったとかですね。トランプさんは、混乱を、混乱という、そういう対立をむしろ好んでいるような性格なんですね。他の日本の特に官僚組織だと皆、1つの考えにくっついて、総理大臣が言ったことを全員が支えるとか、財務省の立場を1つにするとか、内部の対立が新聞に出るかもしれないけれど、できるだけそれを、その対立が前面に出るような状況を避けたいというのが日本の考え方だと思うのですけれども。アメリカにもそういう考えの人は多いけれども、トランプ大統領はむしろ皆さん、競わせて、政権劇を演じる、面白い政権・政策の対立を演じて視聴者を増やすと、そういったような考え方が強いので。特に部下に対して喧嘩をもうやめろというようなことは言わないんです。むしろ喧嘩しろと。で、最後に俺が決めるんだと」
松山キャスター
「ただ、この貿易の話で言うと、対中国という意味ではアメリカのトランプ政権は特に知的財産権の侵害ですとか、あるいはその技術移転という部分についてはかなりピリピリしている印象を受けるのですけれども。これはアメリカ側に、アメリカの技術が知らないうちに中国にドンドン持っていかれているという、そういう危機感があるということなのですか?」
ランダース氏
「そういう危機感はあると思いますね。あとは、その前の政権がなかなかブッシュ政権、クリントン政権までさかのぼってもそうなのですけれども、オバマ政権も、中国のそういう分野の措置に対して、対抗できなかったという意識が強いと思いますね」
松山キャスター
「伊藤さん、アメリカのトランプ政権は知財とか、技術移転に対抗する意味で、中国製の製品にすごく高い関税をかけようと現在、検討していますけれど、この動きはどう見ていますか?」
伊藤教授
「まず微妙なのは、現在のトランプ政権、ひょっとしたらアメリカの世論でもかなりあると思うのですけれども、現在の中国のやり方は絶対にフェアではないと思っていると思うんですね。何かいろいろなことが起こっても最後は元に戻るということはないのだろうと思うんです。ある意味で言うと、だから、米中関係に関して見ると現在、トランプ政権の政策というのは破壊者であるわけで。ですから、問題はそれをどこまで中国をターゲットにした、表立ったやり方をやるのか。それともそれはやるにしても、どこまでは少しルールに従うのかということで。貿易についてはご存知のように関税の話になっていますけれども、投資まで、そこの25日の報道にあるような形でやるというのはちょっと行き過ぎなのかなと思う人もいっぱいいるのだろうと思うんですよね。だから、現実的には対中、中国からの投資に対して個別のケースで規制することがあったとしても、一般論として見たら、中国に限ったものではないというところまで、現在おそらく姿勢が戻っているのかなと思います」
松山キャスター
「なるほど。ただ、投資も含めて、こういう関税の引き上げ合戦とか、投資の制限という話で、アメリカと中国という経済の2大大国がこういう形で競っていくというのはドンドン深みにはまっていって、世界全体にとってはあまり良いことではないのではないかという気がするのですけれども」
伊藤教授
「2つ見方があると思うんですね。アメリカが最初、非常に厳しいことを中国に言った時に、習近平主席がボアオの会議で海外からの投資、これまでは過半数を外国機関が持つことは認めていなかったわけですけれど、それを緩めてもいいという言い方をしていたわけですよね。ですから、中国としても全面対決で、現在のものを守るというよりは、勝利を見据えた米中関係をつくるということも、一方であるのだろうと思うんです。その根本にあるのはこれまでこれが容認されてきたのは、中国は後発国だった。だから、先発国の日本やアメリカやヨーロッパよりは関税もまけてあげましょうと。あるいはちょっと何か変なことをやっていても何とか大目に見ましょうという雰囲気がなんとなくあったのかもしれませんけれども。今や世界第2位の中国、もうあなた達は後発国ではないのだと。フェアなルールでやらなければいけないという思いに、非常に表に出ていると思いますから。そういう意味では、これは暫くまだ続くし、中国もどこまでそれを受け入れるか、ここはちょっとまだわかりません」

『世界貿易戦争』突入? 日本が生き残る道
斉藤キャスター
「ここからアメリカ発の貿易摩擦が世界貿易戦争に発展した時、日本が生き残るために何をすべきなのかを聞いていきます。そのヒントになりそうなのがこちらです。このデータは向かって左側のグラフ、こちらは2015年を100とした日本の輸出指数を示しているものです。2008年のリーマンショックを受けた際に、ガクンとこのように下がっていますね。そのあとの輸出は堅調で、今年4月は統計が始まった1975年以降で最高になっています。向かって右側のこちらのグラフ、こちらは、円相場の変動が輸出にどう影響するのかを示す為替感応度のグラフです。一般的には、輸出は円安になると増えると言われています。グラフは数値が高くなれば、為替の変動に影響されることを表しているのですが、日本の輸出は年々、為替の変動の影響を受けなくなっていて、現在はゼロを下まわっている状態です。つまり、輸出量が、為替の変動に影響されなくなっているということを示すデータとも言えるんですね。その要因としては、工場を海外に移したことなどが挙げられているのですが、伊藤さん、他にはどんな背景があると分析しますか?」
伊藤教授
「この間、この短い時期ではないですが、日本の輸出の中身がかなり変わっていまして、かつては自動車に代表されるような最終財をガンガンやっていたのですけれど、ドンドン上流にシフトしていって、高度なロボットとか、炭素繊維のような素材だとか、それから、iPhoneに入っているような非常に細かい部品だとか。そういうものは、感応度は低いんだと思うんですよ。だから、より技術とか、特殊性だとか、そういうものに国際競争に残れるようなものにこう…、だから、意識していると言うよりも、そういう競争を続けているうちにそうなったということだと思いますけれど、これは今後とも続いていくだろうと思います」
松山キャスター
「ランダースさん、このグラフを見て、リーマンショックの時にガーンとかなり日本の輸出が落ち込んでいるというのがはっきりとわかるグラフですけれども。一方で、最近見てみると、日本から製品を輸出するにあたって、いわゆる為替レートの動きにほとんど影響を受けなくなってきているという状況をどう見ていますか?」
ランダース氏
「なかなか海外に理解されていなくて、私達も、一面で取り上げたことがあって、あまり読者は少なかったのですが…」
松山キャスター
「日本経済は新しい次元に入っているのかなと、ちょっと驚いちゃったのですが」
ランダース氏
「まさにその通りで。たとえば、スマホにおいては日本ブランドのスマホというのはほとんど世界で流通していない、一部の例外はありますけれども…」
松山キャスター
「ないですね」
ランダース氏
「アメリカ国内に行くと、店に行くと日本ブランドの携帯電話、スマホはほとんどないと思いますが、その中身を見るといっぱい日本の製品が入っていて、しかも、今おっしゃったような、代替できないような、小さな部品がいっぱい詰まっているのだということで、これは日本経済の新しい実態だという記事を書いたのですけれど、それでも理解されていない。これから、さらにそういう記事を現在、もう1本、実は準備しているところなんです」
松山キャスター
「ただ、先ほどから話しているような、アメリカ発の貿易摩擦みたいな話になってくると、日本は日本で今後、対抗措置というか、自衛措置をとっていかないといけないと思うのですけれども、それの1つの道がこういう輸出にあたって、為替の影響を受けないような製品、付加価値の高い製品をつくって、代替できないから、これは使わざるを得ないよね、ということでアメリカにドンドン売っていくというのが1つの手だと思うのですけれど、アメリカからすると、それをやられると貿易赤字は一向に減らないということになっちゃいますけれど。そことの兼ね合いというのはどう考えますか?」
ランダース氏
「そこまで、うん、むしろアメリカ企業に頼って、企業がホワイトハウスに圧力をかけるというのが1番効果的なやり方かと思いますね。それともう1つは、これも伊藤先生に聞きたいところですけれども、中国ともう少し取引を増やしてもいいのではないかと。日中関係を現在、安倍政権で結構改善させようとしていると思うのですけれど、アメリカがダメだったら、中国はどうかという気もするのですが。現在、既に日中貿易がたくさんありますし、これから中国もさらに成長を続けるだろうと思いますので日本製品、特にこの代替できないような日本製品をさらに中国に輸出を増やすという、貿易を増やすという手もあるかなと思いますね」
伊藤教授
「自動車が話題に上がっていて、よく言われましたけれど、日本の自動車業界は、アメリカ市場への依存度がすごく高いですよね。ヨーロッパでもあまり伸びていないし、それから、アジアも思ったほど大きなマーケットになっていないと。だけど、本来であれば、もうちょっとアメリカに一本足で頼るのではなしに、グローバルなマーケットに広がっていくと、そういう努力が必要な業界はたぶんいっぱいあるのだろうと思うんです」
松山キャスター
「あと日本独自の製品、なかなかクオリティの高い日本ならではの製品というのをドンドン売り込んでいくためには、一方で中国とか、韓国でつくられている付加価値の高い製品というのもドンドン増えてると思うんですけれども、競争力を保つために、日本の中で、たとえば、規制緩和という意味では、どういう方策が現状、考えられますか?」
伊藤教授
「日本の競争力で1番勝っていくためには規制緩和と言うより、人材がもっと伸びるとか、あるいはベンチャーがもっと広がっていくとか、政府の規制にも問題があると思うのですけれど、もうちょっと広く国民のメンタリティとか、企業の考え方とか。そういうためには非常に優秀な人には並外れた給料を出すような企業も出てきた方がいいかもしれないし、そういう旧来のやり方にはまらないような仕組みにどこまでいけるかというところが、日本の競争力のカギだと思います」
松山キャスター
「こういうグラフを見ると、日本はある意味、クオリティの高い製品をつくれているから、貿易収支についても黒字をずっと保っていて、輸出も好調に推移しているということが言えると思うのですけれど。今後そういう新しいアイデア、新しい分野を開拓していく人材、そこを開拓していくというのが1番重要だと思うのですが、たとえば、骨太の方針の中では、そういったことも盛り込まれているのですか?」
伊藤教授
「現在の骨太の方針の中で、教育とか、人材についてこれまで以上に書かれたというのはそういうことだろうと思いますし、骨太に書かれていることではないですけど、実際、大学で教えてみると、現在の若い優秀な子供達というのは、どっちかと言うと、大企業に入って、ずっとキャリアにいるというよりも、ベンチャーにチャレンジしたいとか、あるいは場合によっては外資系に行って、ちょっと違う世界でやりたいという大きな変化が出てきていますから。そういうものを大事にして、これから若い人の能力を引き上げるような、骨太の中で言えば、そういうことをしっかりとやれるような、しっかり教育システムとか、あるいは研究開発システムみたいなものを強化していくということだろうと思います」

ピーター・ランダース ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局長の提言:『民主主義の国と協調する』
ランダース氏
「『民主主義の国と協調する』。茂木大臣もおっしゃったと思うのですけど。たとえば、日本とEUと、日本とアジア各国、TPPの11か国、カナダ・メキシコも入っていますけれど。これまでアメリカに頼ればいいという時代がずっと続いていて、特に貿易においてはアメリカがまとめ役を演じる。日本がいろいろ文句を言って、日本はこういうふうにしてほしいとか、合意に、日本にこんな有利な条件を入れてくださいと。アメリカ側が、そうですか、わかりました、少し入れると。各国がアメリカに寄って、いろいろな要求をするけれど、アメリカがまとめてリードするという時代がずっと続いていて。現在のトランプ政権はもうそういう役割を果たしたくないと。その時代が当面は終わっていると。また、復活するかもしれないし、わかりませんが。では、もう終わった、諦めるしかないというのではなくて、たとえば、日本がアメリカ抜きで、しょうがないから、各国と協調して何とか世界を続ける、アメリカが休んでる間かもしれませんけれども…」
松山キャスター
「休んでいる状態なのですか?」
ランダース氏
「ええ、休んでいるのか、もう完全に寝たのかはわかりませんが。日本とヨーロッパ各国などなどが努力しないと、トランプの政策がそのまま世界の政策になるということを覚悟しないといけないと思います」

伊藤元重 経済財政諮問会議議員 学習院大学教授の提言:『雨降って地固まる』
伊藤教授
「雨降って地固まる。日本がどうすべきかと言うと、雨降って地固まるという諺がありますが、現在、雨が降っているんですよ」
松山キャスター
「雨はトランプ大統領ですか?」
伊藤教授
「そうです。だけど、彼が出てくるまでどうだったかと言うと、トランプさんが出てくる前も15年間、WTO(世界貿易機関)で交渉が全然動かなかったんですよね。あるいは、別にトランプ大統領の肩を持つわけではないけれども、中国の知財の戦略とか、貿易政策はでたらめですね。いろいろな保護主義も残っているわけで。だから、これまでの仕組みが別にベストであるわけではないわけで。雨というか、トランプ政権、トランプ大統領がやっていることと言ったら、それの破壊者。我々は破壊されたことで酷くなるということを心配はしているわけですけれども、大切なことは、そこから次のステップにどういくかと。もっと開かれたオープンな中国の政策だとか、もう1回、WTOの場で、最初からいろいろなことを議論し始めるとか、あるいは日本とアメリカだって、2国間で厳しい競争になるかもしれませんけれども、より高度な通商ルールとか、あるいは知財とか、データのあり方というのを議論することがあってもいいと思うので。なかなか理想的にはいかないと思うのですけれども、とにかく雨が降っても洪水にならないようにしながら、地が固まることが大事だと」
松山キャスター
「きちんと傘をさす時はさす?」
伊藤教授
「ええ、…ということですね」