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2018年6月26日(火)
児童虐待死を防ぐには 行政と虐待する親の壁

ゲスト

塩崎恭久
前厚生労働大臣 自由民主党
「児童の養護と未来を考える議員連盟」会長 衆議院議員
藤林武史
福岡市こども総合相談センター所長
後藤啓二
弁護士 NPO法人シンクキッズ代表理事

検証!目黒・5歳児童虐待死事件 防げなかったのは何故か
竹内キャスター
「東京目黒区で、両親からの虐待の末、5歳の船戸結愛ちゃんが死亡した事件。虐待の事実を香川県と東京都の児童相談所は把握していながらも最悪の事態を防ぐことはできませんでした。悲劇を再び繰り返さないために私達は失われた命から何を学ぶべきなのでしょうか。児童福祉に取り組む政治家・専門家をゲストに迎え、児童相談所の問題点や子供の命を守るための対策について議論します。まずは結愛ちゃんが亡くなった経緯について見ていきます。香川県の児童相談所が虐待の疑いを持ったのは一昨年のことでした。12月のクリスマスの夜に結愛ちゃんが唇から出血した状態で自宅アパートの外に放置されていたところ、近所の人が警察に通報し、『パパに叩かれた』と訴えたことから、児童相談所が一時保護しました。父親は『もう殴らない』と約束したため昨年2月、一時保護を解除します。父親は傷害の疑いで書類送検されましたが、不起訴になります。3月、警察官が自宅近くで放置されていた結愛ちゃんを発見し、児童相談所が再び一時保護しました。父親は再度、傷害容疑で書類送検されましたが、再び不起訴。7月には、児童相談所は2度目の一時保護を解除して、保護者への指導措置に移行しました。両親の元に戻った結愛ちゃんでしたが、8月と9月に2度、病院でアザがあるのを医師が見つけ連絡しましたが、児童相談所は様子を見ることにして一時保護はしませんでした。年が空けて1月に、一家は東京の目黒区へと引っ越しをします。香川の児童相談所は転居先の住所を確認し、品川の児童相談所へと引き継ぎをしました。引継ぎを受けた品川児童相談所は2月9日に転居先を家庭訪問しますが、母親に『関わらないでほしい』と拒否され、結愛ちゃんに会えませんでした。その後、2月20日に、担当者は結愛ちゃんがこの春から通う予定だった小学校入学の説明のために訪問をしますが、その際にも結愛ちゃんには会えませんでした。結局、担当者が姿を確認することが一度もないまま、3月2日に、搬送先の病院で亡くなりました。まず東京に来るまでの香川の児童相談所の対応から見ていきたいと思います」
松山キャスター
「昨年の8月と9月に病院でアザがあるのが見つかって、ただ、それについては児童相談所に連絡したけれども、措置が何もとられなかったということなのですけれども。これはどういう背景からこういうことになったと分析されますか?」
塩崎議員
「私どもが理解している限りは、アザというのはお医者さんではない人が見ると、軽いアザだと大したことないと、問題自体が、そう判断をしがちなところがありますけれども。実はそのアザは一部が表れているだけの話であって、実際はネグレクトとか、いろいろな形でプレッシャーが結愛ちゃんにあったはずです。そういったことをトータルに判断をせずに、アザが軽いからということで戻したというふうにも言われているので、これは、徹底検証してもらわなければいけない大事なポイントだし、他のところでも、血だらけになっていればびっくりしますけれども、そうではないとついつい大したことないかなと思うかもわかりませんが、実はギリギリのところまできているのかもわからない。その判断は、小児科の中でも虐待について詳しい、そういうお医者さんが1番わかるので、そういう人達の意見を聞くだけの、いろいろな意見を聞く児童相談所なければいけないのではないか。そういう意味での判断の専門性というのが問われているのだろうと思います」
松山キャスター
「親子分離がなかなかすぐ実現できない背景には、たとえば、日本では親権というものに対してすごく重いものとして見られているという文化的な側面みたいなものもあるのですか?」
塩崎議員
「我々は、これは文化ではなくて、法律そのものであって。親の権利は民法にずっと昔からあります。子供の権利は、実は子供の権利条約というものを1990年代に日本も批准しているにもかかわらず、日本の法律には、子供の権利というのはどこにも書いていなかった。それを平成28年の児童福祉法で私達は子供の権利を初めて入れたわけです。ただ、子供の権利と親の権利のせめぎ合いが今回のケースもそうですけど、ありますから、そこの法律問題をきっちりと詰めて、要するに、もっとも大事な子供の命を守るという、そのことを法律的にもちゃんと正しい行動がとれるように、私達は、児童相談所に常勤の弁護士を置くべきだということをやっていましたが。その方向で実はまだ全国210の児童相談所の中で常勤の弁護士さんがいるのは藤林さんの福岡を含めてたった6つしかないと。204、現在は常勤の弁護士さんがいないということなので。自信を持って言える、踏み込んで子供を預かってくる、離してくるということが法律上も問題ないのだという自信を持って、やらなければいけないのに、それが十分できていないというところに問題があるので。私達は、本当は必置しておけばよかったなと正直、法改正で、少し反省をして次のステップを考えたいなと思っています」

虐待死を繰り返さぬために 児童相談所の現状は
竹内キャスター
「児童虐待の相談件数を表すグラフです。2016年度の相談件数はおよそ12万2575件に上っています。毎年増加が続いていまして、2001年が2万3274件なので、およそ5倍とかなり増えています。藤林さんは、福岡市にある児童相談所の所長を務めているということですが、そのセンターが年間に何件の虐待件数があるのか、実態としてはいかがでしょうか?」
藤林氏
「ここにありますけれども、平成29年度で1457件の虐待通告がありました。1457件を、さまざまに調査を行ったうえで、虐待、または虐待の疑いとして対応した総数は1292件。我々のセンターで緊急支援課というところがこういった虐待する通告を一手に調査を行い、必要があれば、家庭訪問を行い、保護を行うわけですけれども、課長含めて9人」
松山キャスター
「9人で全部処理するのですか?」
藤林氏
「9人で。あらためて考えると9人でよくやっていたなと思うのですけれど、そういう実態がございます」
松山キャスター
「これは年間ですよね?」
藤林氏
「年間ですね」
松山キャスター
「年間で相談が1457件…」
藤林氏
「ええ、年々…」
松山キャスター
「対応する件数もかなりの確率に及んでいるということですか?」
藤林氏
「そうですね」
松山キャスター
「これをたった9人で?」
藤林氏
「たった9人でやっています。そうなりますと専門性の高い職員を揃えなければ、非常に危ないなというふうに思ってます。1個、1個の虐待通告に対して、専門性を持った職員が、これは、虐待なのか、疑いなのか、軽度なのか、中度なのか、重度なのか、そういったことをしっかりスクリーニングを行っていく、アセスメントを行っていくといったことも重要になってきます」
松山キャスター
「いわゆる保護という対応とる場合のきっかけというか、どういう基準に達して、虐待がはっきりとわかった段階で保護ということに移る、何か基準みたいなのはあるのですか?」
藤林氏
「厚労省が作成した虐待、『子どもの手引き』といったものはありますけれども、基本的には安全が脅かされているといったサインがある。たとえば、子供が家に居たくないというのも、家に帰りたくない、これも十分な保護に値するサインなのですけれども。こういったサインを十分熟知しながら、迅速に子供を保護するといったことが必要かなと」
竹内キャスター
「たとえば、保護された子供が親に対する罪悪感とか、恐怖心から家には帰してほしいと言った場合の判断、それも相談者の方が?」
藤林氏
「そうですね。それも、子供の言葉をそのまま鵜呑みにしていいのか、どういう心理状態で言っているのかということも、児童福祉士も、児童心理士も、場合によれば我々のような医師も一緒になって、十分に判断していくということが必要かなというふうに…」
松山キャスター
「自宅に戻すケースとか、たとえば、親と話した方がいいという判断をするケースとか、いろいろあると思うのですけれど、そういった判断もそこで行われる?」
藤林氏
「児童相談所で行います。ただ様々な情報が必要になってきますから、たとえば、福岡市であれば、区役所の情報であるとか、学校とか、保育園とか、夜は警察であるとか、いろいろな情報を集めながら総合的に判断していくということが重要になってきますし、より専門性の高い法医学の医者であるとか、虐待に詳しい精神科医とか、様々なその専門性を持った職員も含めて総合的な判断が必要になってくるのかなと思います」
後藤氏
「これは、日本で決定的に欠けているのは、関係機関の連携だと思います。イギリスではもう、これをワーキング・トゥギャザーと言っているのですけれど、関係機関で一緒にがんばろうというのが、政府の児童虐待対応のガイドラインのそもそもの題名なんですよね。ところが、香川も警察に通報しない、品川も警察に通報しない。少ない人数でありながら、関係機関と連携せずに案件を抱え込んでいてはみすみす虐待死に至らしめているというのが、もうこの10年、20年、30年、ずっとやっていることなんですね。ですから、自分1人だけの機関ではもうできないのだから、警察とか、学校とか、病院とか、そういうところと一緒にがんばろうと。こういう基本姿勢に私は転換しないといくら人数を増やしても変わらないと思いますね」
松山キャスター
「一方、児童相談所の権限ですけれど、大まかにまとめるとこういったものがあるのですけれど。児童相談所には児童虐待防止法9条によって、児童の家庭への立ち入り調査や、児童福祉法33条によって児童の一時保護や、職権による保護、また児童福祉法28条による親子の分離といった、こうやって見ると強力な権限が与えられているということなのですけれども。これは藤林さんに聞きしたいのですけれども、実際ある意味、警察より立ち入り面でかなり強い行政権限が与えられているという印象があるのですが」
藤林氏
「強いですね」
松山キャスター
「これは実際にはきちんとうまく運用されているのですか?」
藤林氏
「児童相談所には、かなりの法的権限が与えられています。しかも、臨検捜索といった1番強力な権限以外は裁判所の許可なしで、一時訪問、立ち入り調査ができると。こんな国はなかなかないのですけれども。それだけの法的権限を児童相談所が与えられていて、本当に適時適切に使っているのかどうか。これは使うためには一般公務員ではなかなか難しい。本当にそれが法的に妥当で、現在このタイミングで使うべきかどうかというのは、その法律の専門家である弁護士が常駐しておくということはもうこれは本当に必須アイテムではないかなと私は思います。それが、平成28年の改正児童福祉法の中に盛り込まれたわけなんです」
松山キャスター
「塩崎さん、この児童相談所と警察との連携、これについてはいろいろ賛否両論があるようですけれども、塩崎さんはどう考えていますか?」
塩崎議員
「現在は児童相談所自体の専門性の欠如ということが問題になっていますが、他機関連携が重要であることはその通りです。特に私どもとしては、この難しいケース、リスクの高いケースについてはかなり緊密に連携していくべきで、既にやっているところは、ですから、児童相談所と医療機関と警察と、場合によって検察も一緒になって、一緒に密なケースはこうするということが、本当に何時間も議論するということをやっているところもあります。私はまずはそういうリスキー、ハイリスクのケースについて他機関で共有しながら、密な議論をしたうえで結論を出すということをやっていくことが大事で。全部、全県共有という考え方ももちろん、ありますし、やっているところもあるわけですけれども、まずそういうハイリスクケースについての緊密な連携をやらなければいけないのではないかと」

児童虐待防止の課題 児相×警察の連携
竹内キャスター
「昨日、厚生労働省では『児童虐待の防止対策に関する関係府省庁連絡会議』が開かれました。まず児童相談所同士の情報共有、警察や学校との連携強化、児童相談所と市町村の体制強化、これは7月下旬までに具体策を示す方針ということですが、児童相談所と警察の連携強化というのは具体的にはどういったことでしょうか?」
後藤氏
「これは連携強化と言っていますが、その通りということになるのですけれども。中身が重要ですよね。私どもは4年前から法改正を求める要望というのをやっていまして、そこでは児童相談所と警察との全件情報共有、連携した対応が必要だと」
松山キャスター
「全てのケースについて?」
後藤氏
「そうですね。もちろん、虐待の疑いがあるというので、虐待がないとは別なのですけれども。これまで過去10年で児童相談所が知りながら子供が虐待死した事件は150件あるんです。そのうちほとんどは、児童相談所がこれは虐待ではないとか、緊急性が低くて警察と連携しなくていいと、こういった判断をした事案で虐待死に至っているんですよね。これは考えたら当たり前で、危ないと思ったら、サッと警察に相談して一緒にやるわけですね。だから、これは安全だと思ったケースで起こっていると。そういう事件が起こったら必ず児童相談所は、いや、これは虐待ではないと思いましたとか、緊急性が低く警察と連携する必要はないと思いましたと、必ずこういう弁明をする。これがもう10年、20年、ずっと繰り返されていると。ですから、そんな神様でもないのに1回や2回、家庭訪問しただけで、この案件は緊急性が低いんだとか、そんな判断ができるわけがないのではないですかと。ですから、それは子供を守るためには幅広に共有して、1つの期間、児童相談所が抱え込むのではなくて、複数の機関で子供を見守っていく、こういう考え方に立たない限りいつまで経っても同じ事件は繰り返されると思います」
松山キャスター
「これまで児童相談所と警察のうまく連携がいかなかったケースが多く見られたというのは背景としてどういうことがあるのですか?それぞれ縄張り意識みたいなものがある?」
後藤氏
「いえ。これはまず警察へ通報する人、近隣住民で言いますと4分の3は警察に通報しているんですね、地域の住民の方々が。総数で言えば実際に通報する案件の方が多いのですけれど、まず警察に通報された案件は、警察は全件、児童相談所に通報しています。ただ、児童相談所からは、これは高知県と茨城県と愛知県を除いては、ほぼ数パーセントぐらいしか通報しない。だから、警察は知らないんですね」
松山キャスター
「県によって方針が違う?」
後藤氏
「違いますね。結局、知らないから、知らされないから、せっかくその家庭に110番が入ったりとか、迷子を保護したりしても、児相から教えてもらえませんので、警察がせっかく110番で行っても虐待であることを見逃してしまう。いわば必ず夫婦喧嘩です、すみませんでした、とか言って帰そうとするので。身体を調べずに帰ってしまうと。その5日後に虐待死されてしまった。遺体には40か所のアザがあったので、児相がちゃんと情報提供をしていれば、警察官は、これは虐待家庭だからちゃんと子供の身体を調べよう、調べろよという指示を受けますので。すると、子供の身体を調べて保護できたわけなんですね。こういう案件が本当に起こっているんです。ですから、なぜ知らせないのか。要するに、みすみす警察が救える機会をなぜ失わせるというか、与えないのかが、私はまったくわからない」
松山キャスター
「塩崎さん、この問題点を解消するためにどういう方策が必要になってくるのですか?」
塩崎議員
「全件共有ということをやっているところは、確か4件あるように聞いておりますけれども、むしろ逆に、全件共有ではなくハイリスクケースをやるべきではないか、初めから、初めにやっていくべきではないかというご意見もあって。その背景は、警察に伝わるということについて、当事者はともかく、その連絡をくださる方がどうも思うのかというのについて、やや慎重な御意見もあります」
松山キャスター
「それは警察が行くことによって過剰にその家庭が反応してしまったりするケースもあるということですか?」
塩崎議員
「ええ。そういうことをどう考えるのかということ。ですから、189(児童虐待をめぐる通告・相談窓口)で、現在、比較的あまり抵抗なくかけてきていただいているのが少し慎重になっちゃうのではないかという意見もあって、そこのところはいろいろ意見が割れていますが。しかし、はっきりしていることは、いずれにしても適切に判断をしたうえで、重要・ハイリスクなケースだということについて連携をすべきだということは、間違いなくやっていかなければいけないことで。今回のように、明らかに連携しなければいけない、東京の品川のようなケースは、これはなぜやっていないのだろうかということを、我々としては品川の児童相談所にお聞きをしたいわけですけれど。もう1つは、全件共有をするためにかなり事務的にも、現在、児童相談所の人達はパンパンに働いて、全国どこでも忙しいことは、間違いない。ケースを40ケースとか、いろいろ言われていますが、普通ではあり得ない数をこなしているんです。そういう意味では、がんばっていただいているのですが。しかし、それにさらに負荷をかけることと、プラスのことと、どう天秤にかけていくかというところもあって。ですから、本当に必要と思われるハイリスクケースはしっかりとした連携を多機関でやっていく。また、児童相談所もそういう度量を持っていかないと、自分達で全てできると思っていないはずでしょうから」

児童虐待防止の課題 国の取り組みは
竹内キャスター
「今月13日に今回の事故を受けまして、塩崎さんが会長を務める『児童の養護と未来を考える議員連盟』は、児童虐待防止対策のさらなる強化を求める決議文を厚労省の加藤大臣に提出をしました。内容を抜粋したものなのですが、①児童福祉の専門性強化、②児童相談所の弁護士・医師などの専門御社配置の促進強化、中核市・特別区における児童相談所設置の促進強化、子供の権利擁護、⑤児童相談所、市区町村間の引き継ぎ、⑥児童相談所の全体改革、という6項目なのですが。塩崎さん、この決議文の狙いというのは?」
塩崎議員
「予算を格段に増やして、人数も増やし、児相、児童相談所も増やし、専門性の高い人を常勤で医師にしても、弁護士にしても雇い、それから、中核市、23区、特別区ですね、これについては5年のうちに全てに児童相談所を置けるように支援をするということになっているんです。23区は、22区までがやると言っています。中核市は60ぐらいありますけれども、現在、手を挙げているのは、正式に決まっているのは明石市1つ」
松山キャスター
「現在、東京都全体、23区全体でも11か所ですか?」
塩崎議員
「これは区が持っているのではないですね、それは東京都が持っているんですね。これを区がそれぞれ持ちましょうということで、それを支援しますということで予算を用意しています。23区のうちの22区まではやると言っていますから、これはこれでいいです。問題は中核市であって。中核市、たとえば、私の愛媛県であれば現在3つあります。県が3つやってくれています。これをもし52万都市の松山市を、松山市が自分で児相を持ったら、あと残った90万、140万ですから、90万を3つで見ればよくなるので、現在、140万を3つで見て、アップアップになっているわけですから。中核市は力があるのだから、保健所もあるし、そういうところが自分で持つべきだということを言っているので。これを早くしろということを言っています。それから、弁護士は何しろ、先ほど言ったように6人、医師は、常勤は31か所43人しかいないです。210のうち、31か所、これしかいない。それから、子供の権利については先ほど言ったように、他の国は皆、子供の代弁者がいる仕組みがあります。ところが、残念ながら日本だけがない、ありません。これをちゃんと、子供の代弁者として、子供の権利というのをちゃんと法律に入れたので、それをちゃんとやりたいということをやらなければいけないという仕組みをつくるべきだということです。引き継ぎは、先ほど申し上げた通り、皆、バラバラに…、ルールは決まっているんですよ。ルールは決まっているのだけれども、その通りにやられていない。あるいは、やや表現がはっきりしてないので遠い時は行かないというようなばらつきがあったのではダメなので。これをしっかりやるためにも、まずは全件調査、まさに引き継ぎの、やってほしいということを言っています。児童相談所の改革については、1番は、1人何役もやらざるを得ない、特に介入と支援の両方を同じ人がやるということは、いくらなんでも人間的にも難しいということなので、これをしっかりと機能分化ができるようにすると。ということは人数がたくさんいることになるので、結局、最終的には予算ということになるので。子供の命をしっかり守る国として恥ずかしくない予算をつくっていくべきではないかと思うんです」
松山キャスター
「一方で、野党の方はこういう改正案というのを提出しています。この野党案については、塩崎さん、どういうふうに?」
塩崎議員
「我々は現在、超党派で議員連盟というか、勉強会を始めました。次、2回目、先ほどの明石市の泉市長を呼んで、中核市として新たに児童相談所を設置する、その意気込みを聞こうということになっていますが。お気持ちはよくわかるんですね。それは、先ほど来、言っている通りのことを法律にしているのですが。1番目の人数を増やすというのは、別に法律は要らなくて予算が要るんです。2番目も、2番目は、情報共有の促進というのは、実はこれはもう既にルールもある、提供、転居時のルールもある。あるけれども、それが守られていたり、守られていなかったりだと。このところをどうするかということを、我々は既に与党としては苦労しているわけであります。もちろん、多機関連携、これはもう先ほど来、出ている通りで。ちゃんと運営指針にもあって、ちゃんとやるべきことをやっているところもあれば、やっていないところもあるようなことでは、子供の命を守れないのではないかということなので。法律にしているのは、アピールするためにされているのだろうと思いますけれども、気持ちは共有しながらも、我々としては実態を、法律がなくたってやらなければいけないことで、やれることでもありますし、そこのところを徹底していきたいと思いますね」
松山キャスター
「藤林さん、現場の立場から見て、与党の議連の決議文と、野党の改正案、内容を見てどう感じますか?」
藤林氏
「確か2015年から2016年にかけて『あなたの子供の家庭福祉のあり方検討委員会』という会議がありまして、それは塩崎先生が厚労大臣の時に立ち上げたものなのですけれども。この時に、過去10年以上にわたる虐待死亡事件をずっと検証ししていたら、携わった委員が40人以上集まって、このような虐待死亡をなくそうと、虐待死亡だけでなく、重度の虐待も含めて何とかしなければならないということでつくり上げたのが、確か2016年3月のその報告書だったと思います。報告書を踏まえて、2016年5月に改正児童福祉法ができたわけですけれども、その中に盛り込まれていないものもあったり、盛り込まれたけれども、いまだ、先ほどお話があったように、中核市の児童相談所が進んでいないとか、または児童福祉の専門性がまだ十分強化されていないという。そういうせっかくの理論のうえに立った改正児童福祉法が、現在からという時にこの事件が起こってしまったというのが本当に残念なことだなというふうに思いますので。この議連の各項目というのは2016年の時の本当に一生懸命議論した中身をもっと早いスピードで進めていこうという、そういう決意ではないかなと思いまして、是非とも実現いただき…」
松山キャスター
「これが実行されていれば防げた事件というのも、事件・事故、あったかもしれない?」
藤林氏
「あったのではないかというふうに私は思いますが、そこは検証の結果、検証はそういう視点で是非していただきたいと思いますね」

保護児童の行方 里親と養子縁組
竹内キャスター
「ここからは、児童虐待などを理由に保護された子供達の受け入れ先として里親制度をどう普及させていくかという話を聞いていきます。里親委託率についての外国と比較したグラフなのですが、このグラフは2010年前後の状況なのですが、日本を見てみますと、委託率は僅か12%と、アメリカ、韓国と比べてみてもかなり低い水準であるのがわかります。塩崎さん、日本ではまだ普及が進んでいないということなんですね?」
塩崎議員
「そうですね。我々が、実親が無理な場合には、里親ないしは特別養子縁組というのが大事だなと。子供は特定の大人との間の愛着形成をすることで真っ当な心が育つということになるのだというふうに我々は学んでいるので。そういう意味で、里親はこれから本当に力を入れていかなければいけないので、日本だけなぜこういう低い数字なのかというのはいろいろ分析があり得ると思いますけれども、日本だけが変わっていて、こういうことができないということはたぶんないのだろうと思うので、その原因をちゃんと突きとめたうえで我々は答えを現在出しつつあるというふうに思っています」
松山キャスター
「これまではある程度、大規模な施設に受け入れるという形に、かなりそちらに偏重してきていたという」
塩崎議員
「もともと児童福祉法というのは、昭和22年にできた法律で、戦争孤児が道にあふれていた、この子達を収容するという発想だった。ところが現在、児童養護施設に入ってくる子供さん達の6割は虐待が原因で入ってくると言われ、非常に難しいうえに、親も問題を抱えていますから、両方の問題解決をしないといけないという非常に難しいことを、児童相談所の皆さん方はやらないといけないし。施設の皆さんも同じような問題を抱えているわけでありますね。ですけど、それを解決するのは、親子関係に近い、大人との関係で、丁寧な育て方をするということが問題の解決になるのだろうと思うんですよね」
松山キャスター
「里親ということで言うと、里親委託率のグラフですけれど、藤林さんが児童相談所をされている福岡は全国の平均よりもかなり高い率で里親委託率が推移していると。これは積極的に里親に受入先を求めているということだと思うのですけれども、どういう活動をされているのですか?」
藤林氏
「増えていったのは3つの要素があると思うのですけれども。2005年から、市民、NPO(特定非営利活動法人)と共に、里親制度をもっと多くの人に知ってもらおうという普及、啓発をずっとやってきました。10年近くやってきて、だいぶ里親制度のことを多くの市民に知っていただいたなというのがあるのと。2点目に児童相談所職員の意識がだいぶ変わりましたね。これまで施設に預けっぱなしでもいいのではないかというふうに、極端なことを言いますと、そんなところだったのですけれども、子供にとっては家庭なのだと、自分の担当の子供に里親、または友人を見つけてあげたいという担当児童福祉員の思いが年々変わってきたというのがあると。3番目に、こういった査定業務を行う職員を増やしてきました。専門の査定業務に専従する職員が少なければ、専門性がなければ増えないですね。当時1人だったのが、今現在7人まで増やしていたり、または民間のNPOとも強力な連携を持ちながらやっていったというのがあります。ただ、それでもまだ足らないんですよ。実は先々週、私は、とある施設の子供から手紙をもらったんですね。何が入っているのかなと思いながら、何かウチのケースワーカーの苦情か不満でもあるかなと思ったら、その手紙の中身をちょっと本人さんの了解を得て紹介したいのですけれど、中身は『早く里親さんに行きたいです。早く行きたいのでよろしくお願いします。里親さんが見つかるまでは待ちます』という、その小学生高学年の子供の手紙を読んで私は涙が出るぐらい、あー、もっとがんばらないといけないなと思いましたね」
松山キャスター
「子供達から見ても里親という受け入れ先が理想のスタイルとして認識されているということなのですか?」
藤林氏
「皆、思っていますね。一時保護する子供同士で情報交換をしながら、僕も里親に行きたいと言う子供が多くいるわけなのですけれども。まだまだ、そういった里親に行きたい、または我々が、里親が適切だと判断しながらも、十分できていない現状があるかなというふうに思います。もっと多くの人に里親制度を理解いただきたいなと思いますね」
松山キャスター
「後藤さんはいかがですか?この受け入れ先のスタイルについて、いろいろありますけれども、日本はこれまで児童養護施設にほとんどかなりの数が収容されているという話だったのですけれども」
後藤氏
「これは里親さんをもっともっと探していく必要があると思うんですよね。これは本当に大変な作業だと思うんですね、児童相談所の方にとっては。子供の意見を聞いて、また、それにちゃんと育ててくれる里親さんをマッチングさせる、本当に大変な作業だと思うんですよ。ちょっとまた先ほどと関連するのですけれども、本当は児童相談所さんでないとここはできないところなので、ここにもっと力を入れてやってほしい。そこで本当に緊急対応とか、初動対応はもっと警察と一緒にやって、その業務を、もっとこっちに振り替えられるように、本当は子供さんの一生はここの世話にかかっているわけですよね。ですから、本当そういう介入と支援、両方を担わされているという児童相談所のそういう辛いところも解消するし、こちらにもっと力を入れてもらえることにもなるので、もっとその関係機関とトゥギャザーと言うか、一緒にやっていって、役割分担をして、ベストの取り組みをしていけるのではないかなと思っていますね」
松山キャスター
「あと受け入れのも1つのスタイルとしては、特別養子縁組というものがありますけれども。保護された子供達の将来を考えた時、生みの親との法的な親子関係を解消し、実の子と同じような親子関係を結ぶというこの制度ですけれど、内容としては実親の同意が原則必要になって、養親の資格は夫婦共同で縁組をして原則25歳以上、養子の年齢は原則6歳未満ということですけれども。塩崎さん、特別養子縁組制度、この有用性についてはどう考えますか?」
塩崎議員
「これは、我々は是非進めたいと思って。これは実は私が大臣時代につくったポスターなんです。こちらは子供を育てたいと思っているけれども、なかなか子供さんができないとか、そういうご夫婦向け。これは、むしろの予期せぬ妊娠をした女性のためのポスター。産婦人科とか、市役所とか、いろいろなところに貼ってもらっているのですが。こういうことでもっと進めたいと思っています。なぜかと言うと、これは日本は先ほどの里親だけではなくて、これは人口10万人あたりの、特別養子縁組の成立の割合を見ると…」
松山キャスター
「また、日本は少ない…」
塩崎議員
「1ケタ、2ケタ、違うんです。だけれど、日本人だけが変わっているわけではないと思うので。ここも同じようにやれるぐらいのことはできるのではないのかと思っていて…」
松山キャスター
「アメリカは本当に多いですよね?」
塩崎議員
「1番、安定的になるのは特別養子縁組。なぜかと言ったらずっと一生親子ですから。私も、愛知県で3組の特別養子縁組のご一家を拝見しましたが、本当に自分の子供と同じように、子供がまったく不安を持たずにいるのを見て、すばらしいなというふうに思いました」

後藤啓二 弁護士 NPO法人シンクキッズ代表理事の提言:『ワーキング・トゥギャザー』
後藤氏
「先ほどから申し上げてますが、ワーキング・トゥギャザーということですね。これはイギリスの児童虐待対応のガイドラインの題名そのものなのですけど、関係機関で一緒にがんばろう。児童相談所だけで対応できるほど児童虐待は甘いものではないと思うんです。ですから、これまで以上に他機関を信頼し、他機関に敬意を表して、あらためるべきところはあらためて、ベストの方策、これで子供達を守っていく。この姿勢が不可欠だと考えております」

藤林武史 福岡市こども総合相談センター所長の提言:『つながろう 子供の笑顔のために』
藤林氏
「虐待死亡、他の虐待にも共通なのは家族の孤立、または、子供・家族・家庭が地域から阻害されているという現状があるのかなと思っています。福岡市は平成22年から虐待死亡ゼロの街づくりということで随分取り組んでいきまして、その中で気がついたのは、後藤さんが言われたみたいに、児童相談所とか、警察とか、市町村だけではなくて、もっと市民全体が孤立した子供、転居した親子があれば、声をかける、孤立しないとか、つながっていくようなまちづくりが重要ではないかということで、『つながろう、子どもの笑顔のために』というカードをつくって、これをいろいろなところに置いて、皆に持ってもらって、市民1人、1人ができることをやっていこうということが、地道な取り組みではあるけれども、こういったことが漢方薬のようにジワジワと効いていくのではないかと我々は思っていまして、こういうふうにやっております」

塩崎恭久 前厚生労働大臣の提言:『子供の権利と最善の利益を守る。』
塩崎議員
「これが、実はこの間、平成28年と平成29年、2年連続、児童福祉法の改正をやったわけですけれども。平成28年の改正の際に、新しい理念を3つ入れました。子供の権利、子供の最善の利益の優先、家庭養育優先原則。このうち2つ、子供の権利と最善の利益を守るということが命を守ることになるんだということを申し上げたかったわけで。では、どうやってやるのだというのは、今日、いろいろお話をしました。1つは、一時的にはまず様々な権限を持っているけれど、もっとがんばってもらいたい、児童相談所の人間も増やし、専門性も高め、児童相談所そのものの数も増やしながら絶対にもれなく救っていくというネットワークをつくる。そのために里親や特別養子縁組という形も、これからはドンドンやっていく。そのためには市民に理解をしてもらわなければいけない、同時に、これまで重要な役割を果たしてくれていた施設も、これからは、非常に難しいお子さん、あるいは一時的に1回、そこに入りますから、これも1つ大事な役割であり、高機能化し、多機能化して地域のお世話も施設がやるようになる、里親も、特別養子縁組も。そういう新しい、我々は子供を育てていく環境を変えて、新しい社会をつくっていくということをやりたいと思います」
松山キャスター
「地域と一体化していくということですね?」
塩崎議員
「はい」