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2018年6月21日(木)
迫る1億総長寿化時代 人生100年生きる術は

ゲスト

木原誠二
自由民主党政務調査会副会長
「人生100年時代戦略本部」事務局長代行
柳川範之
東京大学大学院経済学研究科教授
大野誠一
ライフシフト・ジャパン取締役副社長

迫る『人生100年時代』 日本社会はどう変わる?
生野キャスター
「日本における100歳以上の人口です。50年前には僅か253人でしたが、直近のデータでは6万7824人、2050年には53万人を超えると予測されています。また、現在は20歳の人は2人に1人が107歳まで生きるとの試算を受け、先週、政府は、超長寿社会に向けた、経済社会システムの大改革が必要として基本方針を取りまとめています。この人生100年という長い生涯を私達はどう生きるべきなのか、専門家を交えじっくりと考えます。政府が超長寿社会の基本方針を検討するための資料から作成しました。現在の人生80年時代の一般的な人生における段階、ライフステージを図にまとめたものですが、人生80年の中で教育期がおよそ20年、仕事期がおよそ40年、引退期が20年と、大きく3つのステージに分かれています。人生100年時代になりますと、こうしたライフステージはどう変わっていくのでしょうか?」
柳川教授
「まずは元気で、しっかりと働ける世代、こういう時代がすごく長くなるので、引退期が20年というのは本人にとっても少しもったいない時期だと思うんです。だから、もうちょっと仕事期を長くして、充実した働き方なり、生活ができるようにするところで、教育期は、これから必要なので、そこは変わらないにしても、仕事期はもっと長くして、ある意味で引退期というのももう少し短く、あるいは引退という言葉自体が何か全てを諦めるみたいなイメージがあるではないですか。いつまでも元気で、やる気がある人達に関しては、いろいろな形で純粋に仕事という形ではなくても、少し地域貢献とか、社会貢献とか、そういうものも含めて、何か活動していく期間がもっと伸びていくのがいいのではないかなと思ってます」
松山キャスター
「この20、40、20という、この3つの期間で区切られていると言われているライフステージですけれど、これから先100歳まで生きる人の数がかなり増えてくるということで人生100年時代を考えなければということで、まさに今日議論しているわけですけれども。100歳を基準に考えると、この20、40、20、引退期が20年、これが引退期だけが延びるということになると、それはそれで問題が出てくる?」
柳川教授
「そうです。本人にとってももったいないですし、いわゆる社会保障の面から言っても、たとえば、これであと20年ですか、だから、引退期が40年と言うと、働いていた期間と同じぐらいの期間を引退して過ごすということになると、その人達のある意味で社会保障をどうするのかという問題は出てきちゃうんだと思うんですね。何よりも40年を引退期として過ごすというのが、本人にとっても、社会にとってもあまり幸せなことではないのではないかと」
松山キャスター
「現役期とほとんど同じ時間を引退期に過ごすことになる…」
柳川教授
「ねえ…」
生野キャスター
「大野さんはどうですか?」
大野氏
「柳川先生がおっしゃるように、たとえば、60歳定年で、それから40年間引退をしているというのは本人にとっても、社会とのかかわりとか、コミュニケーションの能力とか、人生の楽しみとかということで言うと少しもったいない、寂しい時間になっていく可能性が高いのかなと思うので、基本的には多様な働き方、生き方が選択できる社会になっていくということが、社会全体としては求められていくことだと思います。ですから、誰もが働き続けなければいけないのだということではなくてもいいと思います。それを選べる。日本全体としては追求していくべき姿なのかなと思いますね」

『日本型雇用』と働き方
松山キャスター
「人生100年時代を議論するうえで、人生80年時代の日本を支えてきた制度として日本型雇用というのがあったと思うのですけれど、大まかに言うと、新卒一括採用で大学・高校を卒業した学生さんをその瞬間に新入社員として雇うという制度。また企業の中での年功序列、年功による賃金、終身雇用と、こういったことがたまに1960年モデルとか、1970年モデルとか言われますけれども、こういう企業文化というのが長らく日本の中では雇用制度として定着してきたということなのですけれども。柳川さん、日本型雇用という、よく言われるものですけれども、これは今後どう変わっていくと見ていますか?」
柳川教授
「現在は、だいぶ変わりつつあるのですけれども、これからもう少し変わっていかざるを得ないのだろうと思うんですね。その大きな原因は高寿命化の話がありましたけれども、その一方で、現在起きている技術革新はすごくスピードが速く、かなりの変化が急速に起こるということなんです。そうすると会社も随分変わっていかざるを得ないし、社内での働き場所だとか、要求される能力だとか、スキルみたいなものも技術革新があるといろいろな形で変わっていくわけなんですよね。そうすると、それに合わせてスキルアップ、新たな能力開発みたいなことがどうしても必要になってくるのだろうと思うんです。なので、1番大事で、この中で変わっていく話はリカレント教育という言葉で…」
松山キャスター
「学び直し…」
柳川教授
「ええ、学び直し。ちょっと純粋に学び直すと、まったく違うことをやるとは限らないのだと思うのですけれども。何かこの中に1個、その能力開発みたいなことを、どこかでピットストップをして、エンジン補給するようなことをしないと、40年だと思ったかもしれないけれども、これが、たとえば、60年になると、60年、同じ仕事をずっとやり続けるというのは…」
松山キャスター
「社会が変わってきた…」
柳川教授
「そう、社会が変わってきているので。もう60年前にあった仕事が現在あるとも限らないという時代がもっと激しくなるんだと思うんです。そうすると、そういう能力開発をしなければいけない。本当は日本型雇用でも、昔は結構実はあったんですね。社内研修とか、社内教育は結構、充実していて、実はいろいろやられていたのですけれども。それが、だんだん競争が激しいので…」
松山キャスター
「企業の体力もなくなってきちゃった」
柳川教授
「そんなところにお金を使う余裕がないのだという話になって、それが細ってきちゃった。もう1つは、大事なことは、技術革新があるので、新しい技術になると社内で教育する、できる人もいないと。同じ仕事を繰り返していたなら、先輩から後輩にその技能を教えれば、それで済んでいたのですけれども、新しい技術になると誰も教えられる人が社内にいないということになってくるので。ここに関しては長い50年、60年の中で、どこかでそういう能力を高めていくようなステージを設けていくと。それ自体がある種、このオーソドックスな日本型雇用を変えていくことにはなるだろうと思うんですね」
松山キャスター
「大野さんはいかがですか?この日本型雇用、限界、いろいろな問題も浮かび上がってきているという認識ですか?」
大野氏
「この3点セットが日本型雇用のキーワードと出てくるのですけれども、全体を通じてもう1つ最近議論されているのは、日本の会社というのはメンバーシップ型雇用をしている。欧米の一般的な雇用形態というのはジョブ型だと。ジョブディスクリプションを明確にして、それをできる人を採用すると」
松山キャスター
「専門技能ということですね?」
大野氏
「そうですね。役割とか、専門技能に基づいたジョブ型の採用をするのが海外では一般的なのだけれども、日本の企業はメンバーシップ雇用なので、基本的にはもう全員がゼネラリストみたいな印象が…」
松山キャスター
「組織の一員であると?」
大野氏
「…であって。誰かが辞めれば、そこに玉突きで人が動いていく。そこに新卒が入ってくる、定年で辞める人がいる。そのメンバーの構造さえ維持していればよかったというやり方をやってきたのですが、これは現在、柳川先生もおっしゃるように、こういう非常に変化が激しい時代になってきた中で対応力が落ちてきているという指摘もあると思います。そのジョブ型にどう移っていけるのかということが1つの議論のポイントなのかなと思うんですよね」

『子育て世代』の働き方は?
生野キャスター
「ここからは子育て世代の人生100年時代の働き方について聞いていきます。こちらは現在40歳の会社員Aさんのライフステージです。新卒一括採用、年功序列、終身雇用など、日本型雇用前提に同じ会社で20年近く働いてきて、定年退職までちょうど折り返し地点を迎えました。しかし、人生100年時代になりますと、仕事期が延び、それに伴い引退期も先送りということが予想されます。大野さん、人生100年時代になりますと、40歳の会社員にはどのようなキャリア形成が求められると考えますか?」
大野氏
「そうですね。柳川先生は40歳定年制度を提唱された先生でいらっしゃるので、非常にタイミングとして重要なタイミングだと思います。先日、ある働き方のセミナーに参加して聞いていた時に、比較的、大企業のサラリーマンの男性と女性が偶然似たようなことをおっしゃったのですけれども。ジョブローテーションで全然違う職種を何年ずつ、グルグルまわされていたと。まわっているうちにもう40歳になっちゃったと。それで気がついてみると、自分にはいろいろな仕事をやってきた経験はあるのだけれども、その強みとなるような、ここが強いんだ、みたいなものがないことに気がつきました。そこでふと立ち止まって、自分はこれから何を中心に仕事をしていくのかなということを考える機会がありました、というようなお話をされていたのですけれども」
松山キャスター
「結構そういう方は多いと思いますよね、日本のサラリーマン社会では」
大野氏
「もちろん、いろいろな仕事をされている方がいらっしゃるので、一概には言えないのですが、40歳というのは自分の軸をどこに置いていくのかということを、ある程度見極めていくタイミングなのではないかなと思うんですね。敢えて言えば、今後の人生100年時代を見越して言えば、場合によっては会社を離れても、これで食っていけるぞというようなものを身にはっきりさせていく、そういうことを考えるタイミングなのかなというような感じがしますね」
松山キャスター
「ただ一方で、40代というと結婚して、家庭を持ってる方というのもかなりの数いるわけで。子供の教育のことを考えると、そう簡単に現在の会社を辞めて転職するのは難しいという考えの人も結構多いと思うのですけれど。そういう方にとってはどういうライフキャリアというのが?」
大野氏
「敢えて転職云々ということは、人それぞれの選択の中なので、そのことが優先されるというより、その会社の中だとしても自分のポジショニングとか、強みをはっきりさせていく。それを自分で勉強していったり、自分なりに学び直したりしながら、強みをはっきりさせていく時期ということだと思うんですよね。その結果として、転職する方もいらっしゃるかもしれませんし、フリーランスになっていくような方もいらっしゃるかもしれません。それは個人個人の選択だと思うのですが、会社に依存したまま流されていくというようなことになってはいけないということで、1回立ち止まって考えるべきタイミングなのかもしれないですね」
松山キャスター
「なるほど。柳川さんは40歳のケースを現在挙げていますけれども、今現在40歳とか、40代の方はどういうキャリアプランが求められると考えますか?」
柳川教授
「先ほど名前を出していただいて、40歳定年制と言ったので。この言葉だけを聞くと、皆、40歳でクビにしちゃって…」
松山キャスター
「一瞬、そういう考えなのかなと思います」
柳川教授
「決してそういうことではありませんで、1番のポイントは、先ほどもちょっとお話したのですけれども、40歳ぐらいでキチッと自分の将来のキャリアを見据え、ピットストップでスキルをアップさせるような、リカレント教育ですね、今で言うところの。そういうものをキチッとやるステージをつくった方がいいのではないのかという提言だったんですね。ポイントは、これから、たとえば、60歳定年だと20年だったのですけれど、たとえば、75歳とか、80歳まで様々な形で働くとなると40年あるわけです。40年を見据えた時には、ここで一度、しっかりとした土台をつくっておいた方がいいのだろうと。それは現在の会社にいる場合もあるのだけれども、たとえば、80歳までだとすると、定年延長をしても65歳までなので、エイジフリーということを考えると、そのセカンドステージのところですよね、セカンドキャリアのところで何ができるかというものもある意味で見据えたキャリアのつくり方みたいなことをキチッと立ち止まってやる時期なのではないか。これは20年間の経験も踏まえつつ、これからの40年、50年、自分は何をやっていったら生きていけるだろうかという強みを見つける、そういうことのステージにした方がいいのかなと。ただ、1番の問題点は、おっしゃるように、この時期は1番忙しくて、まず子育てもあるし…」
松山キャスター
「中間管理職ぐらいですよね、企業の中では」
柳川教授
「ええ、多くの方々が住宅ローンを抱えたりするので、そんな時に辞めて学校行くとか言い出したら、皆、家族は大反対みたいなことになる時期ですね。なので、その40歳定年制の提言自体は、少し長期戦略としての制度の戦略にして出したので。ある意味で、そういう時期だからこそ本当は少し政府がお金をきっちり出して、ある種制度化して、制度になっているから家族の反対がなくて、皆、やるものだから、皆、行くんですと、ここ1、2年はそういうルールなので、私は学校に行きますとか、他のことを学びますということにして、そこで国がお金を出してくれれば、ある意味で皆が安心してこういうことができるだろうという提言ではあったんですね」
生野キャスター
「皆がやっていれば?」
柳川教授
「そうです、やりやすいので。そういうのが基本だからということになれば。もちろん、例外の人はいるしても。ただ、そういう政策がなかなか実現するのが難しいとすると、あまり無理のない形で仕事を見直していく、あるいはスキルをアップさせていくということをできる限りやっていくというのがこの40代の時期に求められていることなのだろうなと思うんですね」
松山キャスター
「木原さんはどうですか?柳川さんは、皆がもうやっているのだというところまで社会全体がなってくれば、気安く転職もやりやすくなるのではないか、学び直しもできるのではないかという話なのですけれど。政治としてこの問題を解決していくために、40代ぐらいで新しい軸をきちんとつくって、次のステップをつくっていくというためにキャリアアップが簡単にできるような制度はどういうことが考えられますか?」
木原議員
「1番ベストは、柳川先生がおっしゃったように、国の助成を使って全員皆、一度40代でフリーズして考えましょうというのが1番いいのだろうと思いますが、現実感としてなかなか難しいかなと。そういうことを考えるといったん止まって考えたい、あるいはいったん止まって次の少し学び直しをしたいと思った時に、様々な学びの機会であるとか、あるいは学びに対するちょっとした助成であるとか、そういったものがまず1つ重要になるかなと。我々の言葉で言えば、教育訓練給付と言っていますけれど、そういったものをしっかり充実させていくということは1つ大切だと思います。同時に、先ほど、子育てとか、皆、心配になるわけです。我々が現在、幼児教育の無償化だとか、私立高校の実質無償化だとか、高等教育のある程度の無償化だという話をしているのは、そういうことが選択の壁にならないように、少し教育の費用については国としてしっかりとできることはやっていきたいと、こう思います。そういう2つのことをやりながら1番可能性を秘めながらも1番難しい40代を国としていろいろな面からサポートできたらいいかなと思います」

『働き方改革』の意義と課題
松山キャスター
「まさにその働き盛りの40代の方もそうなのだと思うのですけれども。現在、国会ではちょうど働き方改革関連法案というのが審議されてまして、その主な内容というのはこちらになるわけですけれども。特に長時間労働の是正についてですけれども、この施策は、人生100年時代を見据えた時に、働き方とか、キャリア形成に対してはどういう影響を持ってくると考えますか?」
木原議員
「人生100年時代ということを考えた時に、現在40年間働くという前提のものが、50年になり、あるいは60年になるといった時、常にフルタイムで働けるわけではないと思いますし、パートタイムで働く時、有期雇用で働く時、いろいろあると思います。従って、それが長時間で働かないと職が得られないということになると、この100年時代にふさわしい働き方ができないと思いますから、そういう意味では、長時間労働を是正することは、100年時代にふさわしい多様な働き方を生み出すという意味では有意義なことだと理解しています」
柳川教授
「兼業・副業の促進の話が出てきていて。私はこの流れは実はつながっていると思っていて、ずっと学び直しとか、リカレント教育と言っていたので、たぶんここまで聞かれた方はそうすると学校に行かなければいけないんだなとか…」
松山キャスター
「イメージとしてはそうですよね?」
柳川教授
「…そう思うのですけれども。実は実際に学ぶこと、スキルアップすることはかなりオンザジョブトレーニングで、実際に仕事をしてみて、仕事を経験してみて学んでいくことはいっぱいあるんだと思うんですよ。もちろん、一部に関しては、大学みたいなところで授業を受けても学べることはあるし、学ぶべきこともあるのですけれど。かなり仕事に直結したところだとある程度、訓練的に仕事をしてみるみたいなことが必要だと思うんですね。本当は兼業・副業みたいなことは、単にそれで給料ももう少し余分に稼ぐということだけではなくて、自分が将来身につけたい能力を、ある意味で副業とか、兼業という形で、最初はトレーニングかもしれないですけれど、そういうようなことで行って、そこでスキルアップしていくと自分のキャリアの幅が広がりますし、もしかすると、それが、自分が本当にしたいことへの転職にもつながるかもしれない。何か兼業・副業をある種のリカレント教育、広い意味でのリカレント教育の1つの手段として位置づけて考えることが大事なのではないかと。そのためには完全にフルタイムで働いていて、さらに副業をして、それでキャリアアップと言うと、相当長時間労働になっちゃうので…」
松山キャスター
「トータルで長時間になりますよね?」
柳川教授
「ある程度、正規雇用の部分の働き方の部分をもうちょっと多様化して、自分は少しこっちで副業をしたいから、たとえば、週3日休みにしてもらって、その代わり、その分給料はもちろん、減るわけですけれども、他のところで働いてリカレント教育を受ける、オンザジョブトレーニング的なリカレント教育を受けられるようにすると。何かこういう方向にもっていくと、皆が将来を見据えたことがいろいろやれる余裕も出てくるし、本当の意味でのスキルアップになっていくのではないかと思っています」
松山キャスター
「大野さんはいかがですか?この兼業・副業の促進とか、時間の短縮、そのあたりの?」
大野氏
「私の友人の若い世代の人間にも副業を始めている人間がすごく多いんですよね。彼らを見ていると、副業を始めることで、仮に本業・副業という状態だった時でも、本業の方の仕事の仕方とか、時間の管理の仕方とか、生産性というのは明らかに上がってくるんですね。本業をいかに効率よく仕事をして、時間をつくって副業をやる時間を確保するとか、いうふうに頭が動き始めるということが明らかにありますね。なので、兼業・副業を解禁するという流れは、おそらく1人、1人の生産性を上げていくというものにもかなりダイレクトに効果を発揮するのではないかなという、割と身近な仲間の働き方を見ていても思います」

『シニア世代』の生き方は?
生野キャスター
「ここからは人生100年時代のシニア世代の生き方について聞いていきます。現在60歳の会社員Bさんのライフステージです。同じ会社で40年近く働いてきて間もなく定年を迎えます。しかし、人生100年時代になり、このまま現役を引退すると長寿化によって長い引退期が待ち受けると予想されます。大野さん、人生100年時代、60歳の会社員の方はどのようなキャリア形成、それから、生き方が求められているのでしょうか?」
大野氏
「この世代、すごく悩ましい時代だと思うんですね。私自身、今年の12月に60歳になるのですけれども。ここまで生きてきて、突然、人生100年時代とポンと、こう…。エッ?と思っている方々が多くて、たぶん先ほどの40代以上にどうしたらいいのだろうなということはあると、感じていらっしゃると思いますが。現在の60歳はすごく若い」
松山キャスター
「そうですよね、大野さんも若いですよね」
大野氏
「私達が子供だった時の60歳は、本当におじいさん、おばあさん、だったと思うのですけれども。現実にすごく若い。おそらくまだ働けるという気持ちを持っている人の方がはるかに多いんだと思うんですね。ところが、残念なことに現在そういう人達が働く場所がキチッと提供されているかとか、チャンスがあるのかと言うと、気持ちがあるほどには門戸が開かれてなかったりするというのが、現在の現実で、戸惑っている方が多いのではないかなと思います。先ほどの40代の方と少し視点を変えて言えば、60歳という40年働いてきた、よく言われることですが、その中で自分のキャリアの棚卸しということを求められると思うんですね。個人的には、また、雇用される働き方と、雇用されない働き方というのが考えられると思います。今後、60歳以降に限らずですが、日本社会全体として雇用されないフリーランスだったり、個人事業主であったり、雇用されない仕事の仕方というものが増えていくのだろうなと。現在60歳前後の方であれば、これまでの自分の経験を活かして誰かの役に立つということを磨いていくというか、すぐに大きな仕事が手に入るかどうかはわからない、わかりませんけれど、誰かの役に立つことで貢献をしていく、ないしは後輩をサポートしたり、後輩に自分の知識を教えたりというような働き方というのが、たぶんこれからすごく増えていくのだと思うんですね。そういうことを、そういう形で、個人で65歳、70歳、場合によったら75歳、80歳まで、息長く自分の働けるスキルと、時間、健康とのバランスなどを見ながら、長く働いていくというようなことが求められると。社会的にも求められると思いますし、個人、個人のキャリアを長くつなげていくという意味でも選択肢としては出てくるのではないかと。その時に、フリーランスの人が、日本の国の仕組み上、会社員を前提とした仕組みがすごく多くて、フリーランスになると結構不利なことが目につくと言うか…」
松山キャスター
「たとえば、不動産がなかなか買えなかったとか、そういうのはよく聞きますね」
大野氏
「はい、よく聞きますね。ですから、そういうところをなるべく早く整備をして、雇用されずに働いていくということが大きな不利益にならないような制度設計というのが必要になっていくのではないかなと思います」
松山キャスター
「柳川さんは、60歳のケースを見ていますけれども、どういうキャリア形成というのが、これから求められてくると思いますか?」
柳川教授
「この人達は実はすごくチャンスがある世代だと思うんですよ。これから80歳までということは20年あるわけで、普通の感覚でいくとまだひと仕事もふた仕事もできるんですよね。その時、大事なのは、この40年間働いてきたキャリアと知識をどう活かしていくかというところだと思うんですね。1番のポイントはここにあると思っていて。ほとんどの人は、1つの会社でずっとそこで40年間働いていると、今さら他の会社で自分が働けないのではないかとか、あるいは通用しないのではないか、この会社に居続ければ、いろいろなことがわかっているのだけれども、新しい会社に行った時に、自分の能力が通用するのだろうかということで。そうすると、どうしてもなかなか他の仕事が見つからない。ここが大事なポイント。実は会社で活かした経験は他の会社でも十分活きるんだと思うんですよ。ただし、そこでは少し知識を整理して、先ほど棚卸という言葉がありましたけれども、自分が持っている知識をもうちょっと他の会社でも使えるような形で頭を整理しないと。1つはマインドを切り替えるということです。前の会社ではとか、すぐ言わない」
松山キャスター
「よく言いますよね、前は部長だったのに僕はみたいな…」
柳川教授
「ええ、会社が変わって働き場所が変わったんだ。その時に活かされた能力は、たとえば、アイツに言えば、話が通ったみたいな話がよくあるわけですけれど、だけど、アイツという言葉だけだと他の会社に行った時に全然使えないのですけれど、この部署のこういう能力を持った人に実は話を持っていくと、うまく話が通じたというふうに整理ができると、これは他の会社でも十分使える」
松山キャスター
「もっとユニバーサルに汎用できるようなスキルということですね?」
柳川教授
「そうですね。なので、そのスキルは結局、今の持っているスキルを少し整理することで大きな武器になるのだろうと。ここはちょっと手間をかけて、いきなり、とにかくいけるところがあるからスッといってしまうと、実はうまく自分のスキルとか、能力が整理できてないままいってしまって、実は能力を活かせないということがあるんだと思うので。ここも、先ほどの40代とはちょっと違う意味ですけれど、ちょっと立ち止まって、自分はどんな能力があって、どう活かせるのかということを整理していただく。手前味噌ですけれども、たとえば、経済学とか経営学はきっとそういうもののために本当は役に立つ話で。自分、ビットテキストを見ていた時には、20歳の時にはまったくチンプンカンプンなことでも40年仕事をしてると、あっ、この話は自分の経験したあの話だよなとか、トップといろいろ揉めていた話はここに書いてあるではないかとかというふうに実はほとんどのことが自分事の経験事になってくるんですよ。そうなってくると実は生きた学問になってくるので。1から別に数式を解かなくてもいいのですけど、何かそういうエッセンスを組み合わせていただくと、すごく棚卸ができて、働けるのだろうと」

『若者世代』の働き方は?
生野キャスター
「ここからは現役世代として、これからの社会保障を支える若者世代の生き方を見てみましょう。現在20歳の若者Cさんのライフステージです。既に社会に出て働いている人や、大学等で教育を受け、これからいよいよ仕事期に向けて動き出すというタイミングです。この世代の若者はどんな意識で働こうと思っているのか。日本生産性本部が新入社員に聞いた調査があります。『社内で出世するより独立したい』と答えた人は2003年の31.5%から2018年は13.7%と半分以下になっています。逆に『今の会社に一生勤めたい』と答えた人は、2003年は30.8%だったのですが、2018年は50.8%に増加しています。この15年の間で若者世代はリスクをとらずに安定を求める傾向にあることが見てとれますけれども。大野さん、若者の意識の変化をどう見ていますか?」
大野氏
「リスクをとらずに安定を求めるという言い方をされたのですけれども、おそらくリスクをとらない、リスクを回避したいという感覚が非常に蔓延しているというか強く定着している。何をリスクと考えるかは個人、個人によってだいぶ違いがあるのだと思います。中には、ここには出てきませんけれども、たとえば、日本の大企業に入るというのはすごいリスキーだよと思うような…」
松山キャスター
「あっ、それをリスキーと見ている?」
大野氏
「…人もいるし、そもそも会社員になるということ自体がリスキーだよねと思うような人もいれば、もう一方である程度大きい会社に入った方が教育を受けられるだろうという期待感で、そこにリスクを回避していこうとしている人もいるみたいなものの統計がこういう数字になってきているのかなと。よくメディアでも、若者は安定志向だから大企業志向だ、みたいな表現があるんですけれども、そういうことではたぶんないんだと思うんですよね。そういうふうに考える人もいるけれども、逆に大企業に入ることをリスクだと思うような若者もいるということだと思います」
松山キャスター
「最近の若者の公務員人気、公務員に入りたい、なりたいという人が増えていると思うのですけれども、それなどはこのデータから裏づけられているということなのですか?」
大野氏
「そうですね。現在の若い世代は、失われた20年、失われた30年の間に育ってきた世代で、たとえば、お父さんがリストラされたとか、そういう経験も随分目の前で見ている人達もたくさんいる中で、今言ったリスクとして、たとえば、1番リストラされないのはどこだろう、公務員ではないのだろうかと思っているような人もかなり多いんだと思うんですね。そういうことが出てきていると思いますが。一方、限界集落だったり、自治体も破綻していく時代、可能性もあるという時代の中で、公務員が本当に安定的なのかということについても疑問に思う人もいるのだと思います。そういう意味では、日本全体がリスクをとらなくなっている、リスクを回避する傾向が非常に強くなっているということはたぶんこれは間違いないことだと思うので。ここは社会全体の空気を変えていかないとなかなか変わっていかない問題なのかなと思いますね」
松山キャスター
「柳川さん、今日議論してきた、現在40歳の方とか、60歳の方の話を聞いていると、本業でやってきた仕事、いろいろな仕事をやってゼネラリストみたいな形で育つよりも、何か軸を決めて新しい道にいつでもいけるような、自分の得意とする分野を広げていって、新しい人生を切り拓くようなことを考えるのが重要だという話がありましたけれど。この若者のデータを見ると、ずっと1つの会社にしがみついていたいというふうにしか僕には見えないですけれども。そうすると、将来のキャリア形成という意味では、スタート地点で既に理想的なキャリア形成と違う道をいっちゃっているような気がするのですけれども」
柳川教授
「そうですね。だから、1つは、アンケートで答えていることは、消極的でない可能性があるのですけれども。ただ、おっしゃるように、そういう意識に皆を向かわせてないというのも事実で。1つは現在ここで議論していたような情報が大学生に十分伝わっているかというと、そうでもない、だったりするということですね。十分な情報が伝わっていないし、そういうことを考えさせる、なかなか教育もされていないので。もっと自分の将来をある意味で、自分で組み立てていくと。もともとの先ほどの会社と個人の意識を変える必要があるというのは前半出てきましたけれど、多くの人が会社に全てお任せで働くというのが、ある意味で正社員の働き方であって。何か会社が言うことと違うことを人生設計するというのは、何か会社側からすると面倒くさいやつだと思われるように、というのがあったぐらいの感覚が昔はあったと思うんですよ。その感覚と同じように、とにかく安泰のところ、会社に就職をして、ずっとあまり自分が考えずに働けるのではないかと思っている人が多いとしたら、そこのマインドを変えるような教育が必要だし、自分のそれこそ60年、70年のキャリアをどうやって組み立てていくかということを他人事ではなしに、会社任せではダメで、本人がどう考えるかということが大事なのだというのは、これからの20歳前後の人達に向けて大事な教育だし、メッセージなのだろうと思いますね」

『リカレント』で何を学ぶ?
松山キャスター
「100年時代構想会議『人づくり革命基本構想案』というものの柱がこの5つと言われています。幼児教育の無償化ですとか、高等教育の無償化、大学改革、そして4つ目にはリカレント教育、いわゆる学び直しです。5つ目に高齢者雇用の促進ということなのですけれども。特にこのリカレント教育、学び直しについてはまさにある程度年齢が上の方がもう一度、社会の中で生き生きと働くための教育ということだと思うのですけれども。このあたり、どういう方策を重点的にやっていきたいという考えですか?」
木原議員
「1つは財政的支援をしっかりやると。従って、教育訓練給付、2つの道がありますけれども、この助成率を上げるということは決定をしていますし、実際に実践をしています。従って、これはしっかりやりたいと思います。同時にリカレント教育の中身ですよね、内容。内容を実践的なものに、IT(情報技術)、AI(人工知能)、あるいはロボットを含めて実践的なものにしっかりしていくということが非常に重要だと思います。それから、技術の進歩に追いつけるような、技術者のリカレント教育というのも非常に大切だということで、今回、政府も取り組んでいくことになっています。もう1つは、技術教育をできる人、そもそも、そういう人も育てていかなければいけないので、そういったこともやっていきたいと思います。いずれにしても、財政的な支援と、それと内容の充実と、両面から取り組んでいくことにしていますし、あとは在職しながらもそういうリカレント教育を受けることのできる、短期集中型であったり、土日であったり、夜間であったりという選択肢をより増やすということも大切だと思います。総合的に取り組んでいきます」
松山キャスター
「柳川さん、政府が出している構想案、教育の無償化とか、リカレント教育とか、盛り込まれていますけれども、これをどう見ていますか?」
柳川教授
「こういう形で教育に焦点が当たって、人づくりに焦点が当たったということはとても大事だと思うんですね。今日ずっと話してきたことのポイントはリカレント教育にあると思っていまして、ここを先生がおっしゃったようにどうやって充実させていくかというのが大事。1番の問題点はこう書かれても、何をどう、どこで勉強したらリカレント教育になるのかよくわからないですよ。ここをもう少し見える化して、そのためにはこのリカレント教育を受けて、再雇用したり、雇う方の会社側がいったいどんな能力を身につけてほしいのかということをキチッと言っていく必要があるのだと思う。たとえば、需要を持っている、ニーズを持っている会社側がいったいどんなリカレント教育が必要と思うかということをキチッと出してもらって、それを実現できるよう、大学かもしれないし、あるいは先ほどのオンザジョブトレーニング的なものも含めて、パッケージ化していくということが政策的にはとても重要。お金も大事なのですけれども、ここで何をするかが、大事だという気がするんですよね」
木原議員
「そういう意味で言うと政府は今回、産学連携で、つまり、先生がおっしゃったように、企業がいったい何を求めているのか。単にヒアリングしてもしょうがないので、企業も参加してもらってプログラムをつくる。あるいは自動車業界なら自動車業、業界でそのプログラムを一緒につくるといったようなことに取り組もうとしていますから。本当に実践型のプログラムをこれからつくっていく」

木原誠二 自由民主党政務調査会副会長の提言:『健康・仲間』
木原議員
「『健康と仲間』とさせていただきました。100年時代、健康に生きなければ楽しめませんから、まず健康。そのためには生きがいを持って、働ける時は働いていただくということが非常に大切だと思います。もう1つは、仲間。仕事が終わった老後は仲間がいないと楽しめません。特に男性は早めに仲間を。アンケートをとると、男性は奥様と過ごしたいと言うのだけれど、奥様の方は夫と過ごしたいというのが4位とか、5位だという」

柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授の提言:『スキルをみがく』
柳川教授
「『スキルをみがく』ということで。大事なことは、新しいスキルを身につけるというのは大事なのですけれども、たとえば、先ほど、60代の方々が典型で、そこはなかなか難しかったりする。その時に申し上げるのは今、皆さんが持っているのは原石みたいなスキルなのだと。これをちゃんと磨くとすごく光る宝石になりますということで、磨くということに焦点があって。ずっと培ってきた個別会社の知識をちゃんと磨いて、すごく将来活躍できるような宝石にしていただきたい。そのためには先ほど申し上げた経済学、経営学とか、頭を整理するということがすごく役に立つのではないかなと思っています」

大野誠一 ライフシフト・ジャパン取締役副社長の提言:『変化を楽しむ』
大野氏
「『変化を楽しむ』と書きました。今日冒頭にありましたように、3ステージ型の人生をストレッチするのではなくて、マルチステージに変わっていくという変化がやってくると思うんですね。そういう意味で、社会も変わっていくし、個人もドンドン変わっていく、企業ももちろん変わっていくでしょう。先が見通せない変化の激しい時代になってきているので、いろいろな意味で変化をしていくことが求められると思うんですね。そのこと自体を楽しめるようなマインドセットが必要かなと。ボブ・ディランの曲に『ライク・ア・ローリングストーン』という曲がありますが、まさに転がり続ける石のように生きていくということが、1つ意識をしておく必要のある時代になっていくのかなと思います」