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2018年6月19日(火)
新幹線内殺傷で再浮上 安全の死角と対応策は

ゲスト

平沢勝栄
自由民主党治安・テロ対策調査会長代理
板橋功
公共政策調査会研究センター長
星周一郎
首都大学東京法学部教授

『3人殺傷事件』で見えた死角 なぜ新幹線? その事情と背景
竹内キャスター
「今月、走行中の東海道新幹線の車内で発生し、男性1人が死亡、女性2人が重傷を負った殺傷事件。浮き彫りとなったのは新幹線という移動手段における安全対策の難しさでした。今回のような凶行を未然に防ぐためにはどういった対策が必要なのでしょうか。防犯に詳しい政治家と専門家をゲストに迎え、日本社会の安全について議論していきます。今回の事件の概要です。今月9日、新横浜から小田原間を走行中の東海道新幹線の車内で、22歳の男が乗客に切りつけ、女性2人がケガ、止めに入った男性1人が死亡する事件が発生しました。犯人は事前に購入したナタを新幹線の車内に持ち込んでいました。平沢さん、この事件なのですが、どのように受け止めていますか?」
平沢議員
「日本は非常に治安がいい、安全がいい、ということをずっと言われてきたのですけれども、今までもそうですけれども、最近は今まで以上に何となく動機なきというか、なんというか、わけのわからないような、それから、たとえば、目黒区の幼児虐待、こういったものも増えていますし、犯罪発生件数は減っているんですよ。だけども、そういったのは増えています。それから、今回の事件の前にも動機なき殺人事件みたいなことがいろいろなところで起こってはいるのですけれども、今回のケースもわからない、動機がさっぱりわからない」
松山キャスター
「誰でもよかったというような供述をしているという話がありますが」
平沢議員
「そうなんです。ですから、一言で言えば、私達誰もがいつ被害者になるかがわからない、そういう社会になりつつあるのではないかなと、そんな危惧を覚えます」
竹内キャスター
「板橋さん、いかがでしょう?」
板橋氏
「ショッキングだったのは日本の大動脈の中で起こった事件ということですよね。3年前の放火事件の時、焼身自殺の、これもまたショッキングでしたけれど、今回の場合も無差別の殺傷を密閉空間でやるという残忍さというか、利用する人達が多いだけに皆さん、ショックを受けたのではないかと思います」
竹内キャスター
「星さんはいかがでしょうか?」
星教授
「開業以来、50年以上経って、大きな事故・事件というのはほとんど起きない、本当に極めて安全な乗り物だった。利便性というものがそれに支えられて追求されてきたわけですけれども、その陰で手薄になってしまっていたところを突かれたのが今回の事件だったのかなという気がしています」

『3人殺傷事件』の教訓は 手荷物検査の可能性と現在
竹内キャスター
「今回の事件を受けて国土交通省の石井大臣とJR東海の金子社長が事件後に会見を行いました。その中で、手荷物検査に関しての内容がこちらです。石井大臣は新幹線での手荷物検査について『慎重な検討が必要』と述べました。その翌日、金子社長も『利便性を著しく損なうのでできないと考えている』と、どちらも消極的な発言という内容なのですが、平沢さん、コンサート会場などでは手荷物検査がされているのですが、新幹線では導入は難しいものなのでしょうか?」
平沢議員
「これは相当、コストを払うことを覚悟しないとなかなか難しいと思います。私達も新幹線を利用しますけれど、それこそ直前に乗れるというのが最大の利便性だったわけで。そういったものを、たとえば、飛行機と同じように30分間に着きなさいということを言って、大きなチェックのスペースをとるということになれば。またそれでそれなりの人、係官を動員してやるということになれば相当コストがかかります。それは切符代に跳ね返ってくるかもしれませんけれども、そういったことも覚悟してというなら、構わないですけれども、日本の場合は欧米と違ってすごく本数が多いです。それで乗客の数も圧倒的に多いわけで。これをやるというとなると相当の犠牲になるんです。ですから、犯罪というのは、たとえば、自動車事故で、毎年、日本全国で4000人亡くなっていると、それで60万人の方がケガをしている。これをゼロにするのは簡単なんです、自動車を全部止めればいいんです。止めれば交通事故で亡くなる人は1人もいなくなるんです。だけど、それを選ぶかというと選ばない。それは、どこかで設定をしなければならないので。ですから、もちろん、こういった、気をつけなければなりませんので、それを荷物検査という形でやるのがいいのか、それとも警戒を強化するとか、別な方法で何かないのかどうか。それで100%の安全ということはありませんけれども、できるだけ100%に近づけることはできないかということを考えるべきではないかなと思います」
松山キャスター
「板橋さん、利便性との兼ね合いで手荷物検査が難しいと、国交大臣も、JR側も言っているという話ですけれども、このあたりのバランスは?」
板橋氏
「私は全数、全ての乗客を航空機のように検査する、これは難しいと思うんですね。利便性を損ないますし、現実的では、私はないと思います。実は新幹線の手荷物検査はいろいろな機会に議論になっていて。たとえば、9・11直後とか、マドリードの列車爆破事件直後だとか、あるいは日本でのAPEC(アジア太平洋経済協力)やサミットの折に、現在のセキュリティで十分なのかという議論は度々してきているんですね。ただ、いずれにしても利便性との関連で難しい。利便性だけではないですけれど。あと法的な根拠とか、いろいろあるのですが、難しいと。ただ、実際にアメリカとか、あるいはシンガポールで見てきているのですが、ランダムの検査だったらできるのではないかと思うんです。全数ではなくて、ある一定の比率で、100人、200人に1人とか、あるいは時間帯もランダムにして、突然始めて、突然終わらすとか、常にずっとやっているのは、これは難しいと思うんですね。私はそんな難しいことを話しているわけではなく、たとえば、実際に見てきたのですが、ニューヨークのグランドセントラルの駅…。これは爆発物の検査機で、本当に何十人に1人をチョイスして、ここでふき取り式の爆発物の…。ある時ポンと検査台を設けて、1時間、2時間経つとなくなるいうような、ただ、時間帯もランダムでやっている」
松山キャスター
「なるほど」
板橋氏
「こちらがシンガポールなのですが、これも改札口の入ったところで検査台を置いてランダムにやっている」
松山キャスター
「それも突然現れてですね?」
板橋氏
「そうですね。このくらいのことはできるのではないかと。これでも抑止力は、100%防ぐというのは難しいかもしれませんが、私は一定の抑止力があるのではないかなと思うんです。いつ検査されるかわからないという、やる方にとってはリスクがあるわけで。一定のそういうものに対する抑止力というのにはなるのではないかなと思っています」
竹内キャスター
「そのランダムに言われた側は、拒否権はあるのですか?」
板橋氏
「比較的、ニューヨークの場合は素直にというか、全然拒否感を持たずに応じていました。実はアメリカだと、それが自分の安全につながっていくという意識があるわけですよね、逆に」
松山キャスター
「星さんはいかがですか?手荷物検査の難しさという話も平沢さんからありましたけれども」
星教授
「皆さん方の意識と言いますか、航空機に関して古くは『よど号』ハイジャック事件から、そういったような事件が度々起きてきたわけでして、そうすると、板橋さんのお話がありましたように、あれぐらいの検査をしないと自分自身の安全も守れないという理解が長い間に培われてきて、飛行機というのはそういう検査を受けて乗るものなのだと、ある種の常識と言いますか、その範囲で言えば自分自身の手荷物を見られても仕方がないと言いますか、プライバシーの意識というのもその点では管理せざるを得ないという意識にはなってきているわけですけれども。新幹線に関しては先ほどもお話申し上げたように、50年以上、航空機に比べますと全然大きな事件・事故がなく、制度的な保証はなかったのですけれども、安全な乗り物。従って、そういうことをしなくても乗れる、利用できる乗り物なのだという意識で我々はきているわけですので。それを急に変えるというのはなかなか難しいわけですけれども。残念ながら今後、そういうセキュリティチェックがないと安全というのが必ずしも保証されないということであれば、ランダムチェックにせよ、何にせよ、理解が深まっていくのではないかなと思っております」
板橋氏
「1点だけいいですか?1番、飛行機と同じような厳しいチェックをしているのがユーロスターですね。これは海峡鉄道で…」
松山キャスター
「はい、イギリスとフランスの間の」
板橋氏
「ただ、これは、私はちょっと参考にはならないなと思っているんです。これはパスポートコントロールをやっていますし、それから、便数も1日10本近くなので、これはちょっと比較にならないと思っているんですね。では、日本が、新幹線がすごく遅れているかというと実はそうでもないんですね。2015年、3年前の8月にヨーロッパの国際間鉄道のタリスという鉄道の中でテロ未遂事件があったんです。これはすごく有名な事件で、最近、映画にもなったのですが。テロリストが乱射をしようとして銃を準備している間に薬きょうを装填するカチャカチャという音に、たまたま乗っていたアメリカの兵隊が気づいて、未然に防いだんですね。この事件のあと、ヨーロッパ、EU(欧州連合)の、交通大臣会合が開かれて、手荷物検査をどうしようかという議論があったのですが、結局全てにおいて実施できているわけではない。一部フランスなどではランダム検査をやっているようですけれども、必ずしも全部において検査をしているわけではないんですね。こういう事件があって、テロ事件があってもなかなか難しい、これが鉄道の利便性というものなのでしょうね」

『見せる警備』の抑止力と限界
竹内キャスター
「ここから再発を防止するための監視強化について話を聞いていきます。石井国交大臣は『見せる警備や警察との連携強化、防犯カメラの適切な運用などを各鉄道事業者へ指示した』と述べました。JR東海の金子社長も『警察官や警備員による駅や車内の巡回を増やす方針』を示しました。板橋さん、監視の目、人の目を増やすことで、犯罪を抑止する効果というのはどれほど期待できるのでしょうか?」
板橋氏
「カメラなどは一定の効果はあると思うのですが、確信的犯人、たとえば、今回のような、やってやろうとか、あるいはテロリスト、まして自爆覚悟のテロリストにはカメラの抑止効果というのはほとんどないと思いますね」
松山キャスター
「JR側の説明の中で、『警察官や警備員による駅や車内の巡回を増やす方針』と言っていますけれども、私の小さい頃の記憶では、よく石立鉄男さんが出てくる『鉄道公安官』というドラマがあって…、小さい頃にあれを観て鉄道公安官になりたいなと思ったのですけれども、鉄道公安官は知らない間になくなっているのですか?」
板橋氏
「そうです。これは平沢先生の方が経緯は詳しいと思いますが、現在、鉄道警察隊になっています。新幹線についてはごく一部の車両というか、線に乗っているケースがあるのですが、あるいは大きなサミットだとか、そういうイベントがある時、比較的頻繁に、警乗と言っているのですが、警乗しているケースがあるのですが、全ての新幹線に乗っているわけでもありませんし、それほど実は頻繁に乗っているわけでもないんですね」
松山キャスター
「現実問題としては警備の担当者を全ての車両に乗せるのは難しい?」
板橋氏
「まず警察官を乗せるというのは、まず不可能に近いと思いますね。それから、警備員なのですが、これから先、日本は警備需要がすごく増大していくんです。警備員が実は足りなくなってくるわけですよ。そういう中で、どうやっていろいろなところでこういう警備員を確保しようかというのが大きな課題になっているんですね。そういう中で、全ての車両に警備員を乗せる、巡回強化するというのはなかなか至難のわざだなと思うんですね。鉄道公安官については是非、平沢さんに…」
平沢議員
「鉄道警察隊ということなのですけれども、昔の鉄道公安官ですね…」
松山キャスター
「鉄道公安官というのは国鉄時代に?」
平沢議員
「国鉄時代ですね。国鉄が民営化されて、鉄道警察隊になりましたけれども。現在、全国で鉄道警察隊というのは700人もいないです。ですから、警視庁では100人もいないんです。ですから、100人もいない警察官が駅の中をパトロールしたりするわけですから、列車に乗ってなんていうのは、しかも、新幹線だけでなく、他の在来線も山手線だ、何だといろいろありますから、これはとてもではないけれども、人手がまったく足らないと。ですから、列車に乗るということは、先ほど、板橋先生が言われたように、何か特別なイベントがある時とか、何かというのは別として、普段はとても無理ですね。それから、警備員も、これはJRが独自にやることなのですけれど、この警備員もそもそもこれは人数が、そもそも募集してもなかなか集まらないですから、現在、人手不足で。ですから、なかなか無理だし、もし雇うのであれば、ある程度、訓練された人でなければダメですから、どうしても時間もかかるということになりますので」
松山キャスター
「なるほど。国鉄時代にはあったという鉄道公安官は、国鉄時代は、要するに、採算度外視でそういう体制が組めたから置かれていた?」
平沢議員
「いや、それは警察が全国に置いていたのですけれども。現在は、警察は鉄道警察隊の他に、それぞれの駅前交番とか、あるいはスリの対策のために捜査3課の警察官が駅で張り込むとか、それはいろいろな形で警察はやっていますけど、鉄道だけをやっているという警察は鉄道警察隊で、これは全国に700人もいない。ですから、極めて数は少ないと。ならもっと…なぜ増やさないのだということなのですけれども、他にやることがいっぱいありますから、ですから、とてもまわらないと」
松山キャスター
「たとえば、先ほどの手荷物検査ではないですけれど、ランダムに何人かが、鉄道警察隊の方が車両に乗って警備をするとか、そういうことは?」
平沢議員
「乗るということは、私は効果的だと思うんです。制服で見せる警備、見せることになりますから、これは警備員よりは警察官が乗っていた方がはるかに効果的だろうと思います。警察官が乗っているなということは大変な抑止力になるし、駅のパトロールもそうだし、それから、列車の中もそうだと思うんです。1つだけ言わせていただきますと、これはちょっとおかしいなと思って、ちょっと所持品を見せろと言った時、警察官がすぐ簡単に見せてもらえると思ったら全然見せてもらえないです。これは法律的に…」
松山キャスター
「そこは権限がない?」
平沢議員
「逮捕した時とか、あるいは捜索令状とか、令状をとった時とかでない限り、あとはよほどの理由がない限り、これはできませんし、もし荷物検査なんかを強制的にやれば、ただちに弁護士会から大変な大苦情がきます」
板橋氏
「むしろ警察官の方が大変なんですね。警備員の場合は施設管理権、これは鉄道会社に雇われていますので、施設管理権があるわけです。それから、契約約款、いわゆる鉄道約款とか、輸送約款があって、それは危険物を持ち込まないとか、いろいろなテーマパークにしてもそうですが、その中で秩序を乱す行為みたいなことはしないという、これは契約約款に書いてあるわけですね。だいたい手荷物検査はその2つを根拠にしているんですね。1つは施設管理権、もう1つは約款です。これに基づいて、むしろ警察官より警備員の方がやりやすいと思うんですね。ただし…」
松山キャスター
「JRだったら、JRの側についている人がやるということですね?」
板橋氏
「これは施設管理権でできますから。ただし、利用者の方が今度は警察官でないとクレームをつけたり、何か嫌な態度をとったりする」
松山キャスター
「そこまで権限があるのかと」
板橋氏
「そういうことですね」
松山キャスター
「星さん、警備の目を増やすことについてはどういう対策があると」
星教授
「入口のところで危険物の持ち込みをしてはいけないとルール上はなっていますし、お話にあった約款でも、JRでも客の立ち合いを求めたうえで点検をすることができるし、点検に応じなければ、安全な運行が保証されないということで、それ以上、乗車することを拒否するということもできることはできるのですけれども。なかなかそれが実際にできるのかというと、非常に難しいところがあります。そうだとすると、仮に持ち込んでしまった人がいたとしても、それをさせる機会をつくらないと、そのための見せる警備といったようなことが次善の策としては考えられるのかなと思います」

急増する『防犯カメラ』 その効果と限界&不満とは
竹内キャスター
「2015年6月30日にあった新幹線放火事件をきっかけに、60台だった新幹線内の防犯カメラが現在一部の車両除いて、デッキや客室に、1編成16両に合わせて105台の防犯カメラが設置されているということなのですが。板橋さん、新幹線のカメラの効果をどのように考えていますか?」
板橋氏
「これは確信的な犯人にはあまり効果がないんですね。ただ、この中で起こったことが記録されていますので、事故の捜査とか、あるいは記録され、逃げようと思う犯人にとっては一定の抑止効果があると思うんですね。でも、確信的なテロリストとか、あるいは今回みたいな捕まってもいいというような犯人にはなかなか効果はないだろう。事後的な検証とか、あるいは捜査には非常に役に立つと思いますね。実は3年前の放火事件のあとに車内のカメラができたんですね」
松山キャスター
「なるほど。その放火事件の前は60台…」
板橋氏
「デッキだけ…」
松山キャスター
「1編成60台ぐらいだったという話なのですけれども」
板橋氏
「デッキだけしかついていなかった」
竹内キャスター
「客室になかった?」
板橋氏
「これは、デッキになぜついているかと言うと、乗った人を記録できるからです」
竹内キャスター
「出入りを…」
松山キャスター
「なるほど、乗り降りを記録している?」
板橋氏
「うん」
松山キャスター
「これを記録しているということは常時見ている人はいないのですか?」
板橋氏
「いないですね」
松山キャスター
「と言うことは、実際に画像は撮っているけれども…」
板橋氏
「ただ、技術的に…」
松山キャスター
「それはあとから確認するため?」
板橋氏
「いや、おそらく現在の技術だと、はっきりわかりませんが、要するに、管制室みたいなところ、新幹線の管制をやっているところではたぶん見られるシステムぐらいになっているのかなと思っていますが、これはセキュリティのことなのであまり追求すると…。そのくらいの技術は進んでいますし、リアルタイムで見ることはたぶんできるだろうと思います」
松山キャスター
「平沢さん、監視カメラによる犯罪の抑止効果をどういうふうに?」
平沢議員
「2000年頃から急激に監視カメラが増えたのですけれども。たとえば、現在、街頭にも、あちこちについているんです。これをつける時には弁護士会から猛烈な反対があったんです。弁護士会が反対したのに2つ理由がありまして、1つは勝手にプライバシーを侵害していると、これは人権侵害だというのが1つと。それから、もう1つは、犯罪の抑止効果がないということなんです。要するに、なぜかと言うと、防犯カメラがあれば、防犯カメラのないところで犯罪を犯すから同じことではないかと。ところが、ですから、最初は公費で防犯カメラをつけることができたのは、たとえば、歌舞伎町とか池袋の繁華街と、ここは公費できたのですけれども、他の町は商店街でも何でも公費ではつけることができなかったんです。ところが、そのうちにだんだんと時間が経つにつれて、防犯カメラは抑止効果ももちろんですけれども、犯罪は大幅に減っていますから、これを説明するとしたら防犯カメラが1番の大きな理由なんです。ですから、犯罪が非常に減ってきた1つの大きな理由として防犯カメラが挙げられるし、それから、犯人が犯罪を犯したあとの検挙にもこれはすごい力を発揮しているわけです。ですから、現在は、防犯カメラは当時すごい反対がありましたけれども、現在、防犯カメラを設置することに、けしからんと言って、文句を言う人は弁護士会からもあまり聞こえてこないです」
松山キャスター
「だんだん認識が変わってきている?」
平沢議員
「認識が大きく変わったんですね。それだけ確かにプライバシーは侵害されているけれども、しかし、安全というコストのためには、皆さん、それはやむを得ないと、それはもう認めなければならないという意識に変わってこられたのだと思うんです」
松山キャスター
「なるほど。板橋さん、防犯カメラ、効果の方もある程度あるという話ですけれども、実際に実験での効用が認められたケースというのがあるのですか?」
板橋氏
「実は最近、カメラの技術で、これはつい昨年ですか、国土交通省が羽田空港で実証実験をやっているのですが、不審物を検知する機能というのを持っているんですね。これはAI(人工知能)などを活用しまして、一定時間、そこに動かない荷物をこれは探知するんですね」
松山キャスター
「誰かがたとえばリュックサックを置きっぱなしにしたとか?」
板橋氏
「ええ、そうですね」
松山キャスター
「そういう場合に、ずっと置いてあったりすると…」
板橋氏
「そうすると、不審物ではないかということで今度は警備員がチェックに行くというような、こういう検知する機能もあるんです、現在。ほぼ実用化されています。それから、もう1つが…」
松山キャスター
「忘れ物をした人もこれで見つかる」
竹内キャスター
「見つかりやすいですね」
板橋氏
「それから、もう2つあるのですが、2つ目が群衆行動解析機能と言って、これは、たとえば、急激に人が集まってきたとか、急激に人が分散した、それを検知するんですね。そこで何か起こった。たとえば、刃物を持っている人間がいれば、急激に人が…」
松山キャスター
「…散っていく」
板橋氏
「散っていくでしょうし、そこで人が倒れたということであれば、急激に人が集まってくるでしょう。それを検知するんですね。それから、もう1つが不審行動者追尾監視機能と言って、何度も同じところを往復していたり、うろちょろしていたりという人を検知して、それを追跡する機能みたいなのは現在できているんですね。そういうものの活用というのが、今後あり得るのだろうと思うんですね」

急増する『防犯カメラ』 その効果と限界&不満とは
竹内キャスター
「こちらは愛知県刈谷市の防犯カメラと犯罪件数のグラフなのですが、2012年には106個だった防犯カメラの数が2017年には930個に、かなり増やしました。するとその結果、犯罪件数が2012年度は2239件だったのが、2017年度は1237件と半減しています。その一方で、効果を疑問視する声もあります。2012年に日本弁護士連合会が提出した『監視カメラに対する法的規制に関する意見書』の概要です。『監視カメラはあらゆる犯罪について予防効果を発揮するわけではなく、監視カメラに予防効果が期待された犯罪類型についてもその有用性は証明されなかった』という見解を示したわけですが、星さん、防犯カメラと犯罪抑止の関係性というのは期待できるのでしょうか?」
星教授
「先ほどの刈谷市のグラフだけを見ますと、防犯カメラが上がると同時に、犯罪が下がっているように見えるので、一見すると因果関係があるようにも見えるのですけれども。ここは正直、どこまでの効果があるのかというのはよくわからないというのが率直なところですね。もともと現在、日本は犯罪の数自体が全国的にも減っているという状況にありまして、それは防犯カメラが普及しているだけの効果なのか、実はそれだけではなく、たとえば、侵入窃盗が多かった2002年、2003年頃ですか、ピッキング用の道具を持っているだけで取り締まることができるような法律ができて、割とかなり早い段階でその犯罪者の予備軍みたいな人を検挙することができるようになった」
松山キャスター
「最近あまり聞かなくなりましたね?」
星教授
「そうですね。鍵自体もCrime Prevention、CP錠と言うのですけれども、強い鍵になってきたとか、いろいろな対策の効果というところがありますので。防犯カメラだけにその効果があるとは直ちには言えないところがあると思います。あと先ほど、日弁連の反対の意見もありましたけれど、『あらゆる犯罪について予防効果を発揮するわけではない』というのは先ほどお話した通りで、あとよく言われるのが、ある地域に防犯カメラを設置しますと、犯罪は防犯カメラの設置されていないところに移ってしまうだけではないかと、いわゆる犯罪の転移と言われる問題もあるのですけれど。それもこれまでの効果検証の研究を見る限り、そういう転移という現象が見られる場合もあれば、そういうのが見られない場合もあった。地域の状況ですとか、もともとの犯罪発生状況とか、そういったようなことにも左右されますので、一概には何とも言えないというのが率直なところではありますね」
松山キャスター
「平沢さん、防犯カメラの設置と、犯罪件数の因果関係、このあたりはどういうふうに?」
平沢議員
「これは、現在の刑法犯の犯罪発生件数とか、認知件数、戦後最低です。なぜこんなに犯罪が減ってきたのだろうと。これはいろいろな状況が考えられますけれども。どう考えても、これはこの刈谷市だけではなくて、全国的になんです。同じような傾向が見られるんです。ですから、防犯カメラの設置が大きいだろうと、これは誰もが認めざるを得ないと思います。最初はいろいろなことを皆さん、言われましたけれども。それから、外国からの旅行客が増えたら日本は犯罪が多くなるということも言っていましたけれども、外国の方が日本に随分、観光客が増えましたけれども…」
松山キャスター
「ドンドン増えていますね」
平沢議員
「増えていますけれども、犯罪発生件数は減っているんです。ですから、ドンドンこれを増やそうと。今度、これまで700万人、800万人だったのをいずれ近く4000万人にしようというようなことを言っているわけです。3000万人を突破するわけです。これだけ増えても犯罪は増えていないということは、いろいろな理由はありますけれど、日本では犯罪を、犯せば、そのあと必ず捕まってしまうという、おそらくそういう…」
松山キャスター
「…認識が広がっている?」
平沢議員
「認識が広がっていると、外国の人に、ということも間違いなくあるだろうと思うんです」
松山キャスター
「この防犯カメラを設置する主体なのですけれど、これはまだ公的機関がドンドン街の中に設置していくということにはなってないわけですよね?」
平沢議員
「これは場所によって違うのですけれど、商店街が自主的にやっているところもあれば、マンションの場合、マンション独自につけるとか。学校は学校で独自につけるということでやっているのですけれども。たとえば、東京都のカネで、たとえば、繁華街はつけていると。これは住民の方が是非つけてくれ、つけてくれという強い要望があって、それでつけているというところもありまして。それで設置主体が変わりますから、それを管理するところも全部それぞれによって違うということになりますので。管理者に対してはその情報を、防犯カメラで撮った情報を他に流さないとか、プライバシーをしっかりと守ると、そういったことが強く求められるということですけれども。現在のところそれを、たとえば、悪用したとか、他の目的に使ったとか、そういったケースは現在のところ出ていませんから、私は防犯カメラの情報の運用についてはしっかり行われているのではないかなと思います」
松山キャスター
「海外の例を見ると、たとえば、中国はかなり国家統制が進んでいる国なので、いわゆる防犯カメラだけではなくて、顔認証システムみたいなものをあちこちに設置して、誰がどっちに動いているか、犯罪者がどこにいるかみたいなことまで全てある程度、ビッグデータみたいな形で把握しているという話もありますけれども…」
平沢議員
「はい」
松山キャスター
「さすがに日本ではそこまでの社会にはなかなかいかないですよね?」
平沢議員
「それは、顔認証、日本でもやろうと思えばすぐできますけれども」
松山キャスター
「抵抗が強いのですか?」
平沢議員
「それは、日本ではちょっと抵抗が強いと思いますね」
松山キャスター
「そうでしょうね」
平沢議員
「はい」
松山キャスター
「板橋さん、犯罪件数、全国的に同じような傾向が見られると平沢さんの話がありましたけれど、防犯カメラと犯罪件数の因果関係、このあたりはどうですか?」
板橋氏
「一定の効果はあると思うのですが。防犯カメラ自体は言われたように、いろいろな媒体がつけていますので、ビルの所有者、それから、鉄道はオウムの地下鉄サリンのあとすごく進んだわけですね。カメラがついていると、逃げようとする人間には一定の抑止効果があると思うんですよね。あるいは見られているという犯罪者にとってのリスクというのが当然あると思うので、効果はあると思いますね。ただ、運用のルールというものをもう少し日本の場合ははっきりと決める必要があるのかなと。記録の保存期間だとか、あるいは誰がチェックできるのか、見られるのかとか。それぞれつけている場所もあるのですが、割とノールールのところもありますよね。そういう一定のルールづくりみたいなものは必要なのかなと思います」
松山キャスター
「平沢さん、このあたりのルール、防犯カメラをめぐるルールは、まだ整備が進んでいないのですか?」
平沢議員
「いや、それぞれの設置主体がそれなりのルールを持っているんです」
松山キャスター
「あっ、それぞれが…」
平沢議員
「持っているわけです。ですけど、それは、運用規定みたいなのはだいたい、かなり共通性がありまして。言われたように、保存期間がだいたい1週間になら1週間、それで、その間もし何もなければ、それはすぐ廃棄するということやら、絶対他にはその情報は使わないとか、そういったルールをちゃんと持っていまして、どこもだいたい同じ内容だと思います」
松山キャスター
「なるほど」
板橋氏
「ただ、表示をしてあるところと、表示をしていないところは結構ありますよね。アメリカだと、ほとんどのカメラとか、『撮影しています』…」
松山キャスター
「あれは、勝手に撮っていると訴えられたりするからというのもあるのでしょうね?」
板橋氏
「そうですね」
平沢議員
「いや、これは、表示を全部した方がいい場合もあるし、しない場合もあるんです。これは、したことによって…、表示をすることによって効果がある場合、たとえば、私の地域では神社の賽銭箱なんかよく盗られちゃう。防犯カメラがありますよということをちゃんとアレしときますと、それが、犯罪がガタッと、そういう賽銭箱泥棒みたいなのが少なくなるんです。だけども、それは逆にそれがあればそれを避けるということもあるでしょうから、別にどこにあるかということをわざわざ知らせない方がいい場合もある」

日本の防犯に『死角』は 安全と自由のあるべきバランス
竹内キャスター
「2019年6月にG20サミットが大阪で行われます。9月からはラグビーワールドカップが全国12か所で行われます。10月22日に、国民に天皇陛下の即位を披露する『祝賀御列の儀』というパレードが行われます。2020年にはオリンピック・パラリンピックが予定されています。板橋さん、こういった大きなイベントが控えている日本なのですが、警備面における懸念は?」
板橋氏
「よくオリンピックの警備、これは2020年の8月に間に合えばいいんでしょうと皆、勘違いしているんですね。だから、一生懸命、オリンピックの警備は2020年の8月を目標に皆、がんばっている」
松山キャスター
「訓練とか、それに向けてやるというイメージでいますよね?」
板橋氏
「そう思ったら大間違いで。これを見ると5月には退位と即位があるわけですね、4月30日から5月。それから、G20サミット、これは20か国以上からアウトリーチ国も含めて、G7の各国も含めて、アウトリーチ国も含めて、約30の国・機関からトップが集まるんですよ。これは大変な警備ですね。それから、ラグビーのワールドカップ。これも全国12か所ですよ、各開催地を警備しなければいけない。それから、今度10月の『即位の礼』があるのですが、この時は、おそらく元首とか、王族とか、そういう方々もお招きするわけですよね、これはまた大警備ですよね。それから、オリンピック1年前となると、いろいろな行事が、関連行事があります、オリンピックをはじめ。すなわち来年、来年度になると重要警備が目白押しなわけですよ。すなわち実践ですよね、もう。そうしたら、準備や訓練している暇がないですよね。と言うことは、オリンピックの準備は来年の3月までに整えておかなければいけないということですよね。あるいは民間サイドでの警備、警備強化、いろいろな対策、たとえば、大規模な集客施設、これは狙われていますから、ターゲットになっていますから。たとえば、大きなテーマパークだとか、あるいは大きなショッピングモールだとか、こういうところの警備も、当然ながら来年の4月以降、強化しなければいけないわけですよね。そうすると、その準備を進めておかなければいけないわけですよね。皆さん、勘違いしていて、2020年に間に合えばいいのでしょうではなくて、来年に間に合わせなければいけない。ということは、現在まさにやらなければいけない。こういう重要警備が始まったら訓練なんかはできないですよね、実践ですから、ずっと。あるいは準備もできないですね。だから、装備も訓練も来年の4月までにちゃんと整えておかなければいけない」
平沢議員
「こういったイベントを虎視眈々と狙っているテロ分子というのは世界の至るところにいると思うんです。日本国内も、それはゼロとは言わないですけれども、それはいますけれど、それははるかに外国ですから。これをしっかり掴む…アレをやらなければならないし、昨年、私達はテロ等準備罪ですか、あの法律を通した時に、随分いろいろな批判を受けましたけれども、これは集団でこういったテロ行為をやる時、その準備に一歩踏み出した時には結局、そこで検挙できるということなので、もし内部からそういった形で、1人仲間割れが出た時にはすぐ、事前に防ぐことができますので。あの時に、一部の法律に反対している人から言われたのは、日本では犯罪が行われてから出ていくのが警察の仕事だと、犯罪が行われる前にやるのは、これはとんでもないということで批判されましたが、とんでもない誤解で。犯罪というのは行われてからでは遅いんです。ですから、事前に防ぐことことを考えていかなければならないんです。そういう意味では、私は絶対に、これは特に外国からのテロリストの防止というのは考えておかなければならないと思います」

板橋功 公益財団法人公共政策調査会研究センター長の提言:『セキュリティ共同体』
板橋氏
「『セキュリティ共同体』という意識を持とうということです。どういうことかと言うと、自分のいる空間、これはセキュリティを共有してるわけですね。もしここで何かがあれば、私も犠牲になってしまうし、皆さんも犠牲になる。ですから、そこを利用する皆さん全てがセキュリティについて意識を持ちましょうと。たとえば、コンサートホールだったら、アリアナ・グランデのコンサートが狙われましたけれども、コンサートホールだったら入る前に不審なものはないか、不審者はいないかと、それぞれが見てみる。コンサートホールに入ったら、自分の座席の下に不審物がないか、不審者はいないか、周りに、見てみる。それを皆がやることによって、そこのセキュリティを高めるという意識。実はこれを日本はやっていた時期があります。地下鉄サリン事件のあとです。皆、自然とそういうことをやっていた。それをこれからこの2020年に向け、皆意識を持ってセキュリティを高めていく必要があると思います」

星周一郎 首都大学東京法学部教授の提言:『“水と安全はタダではない”ことの意味』
星教授
「水と安全はタダではないことの意味、ということなのですけれども。これが言われてから久しいのですけれども、それが具体的にどういうことを意味しているのかと。本日のテーマで言いますと、防犯カメラとプライバシーとの関係ということですけれども。プライバシーというのは片方では幸福追求権、憲法で保障された幸福追求権の一環で非常に重要なものです。これは保護されるということが必要なのですが、その幸福追求の中身には、安全に暮らすことができる、というのも片方ではあるわけですね。そうしますと、プライバシーへの影響というのもコスト負担と言っていることを考えた場合に、どこまでは守ってもらい、どこまでプライバシーへの影響というのは甘受するのか。それによってどういう安全を確保したいと考えるのかと。そういうのが具体的な場面ごとに、緻密に考えていく必要があるのではないかなと思っております」

平沢勝栄 自由民主党治安・テロ対策調査会長代理の提言:『安全はタダではない』
平沢議員
「たまたま星先生と同じにしまったのですけれども。40年以上前に、イザヤ・ベンダサンという方が書かれた本の中で、要するに水と安全を日本人はタダと思っていると書かれたんです。確かにそうだったんです。昔、水と安全はタダで、こんなものにはお金を払うものではないと。イザヤ・ベンダサンが言われたのは、お金の意味で言われたんです。それで現在、水にお金を払うようになった。安全にお金を払うけれども、同時に、このタダではないという意味の中には、お金と、もう1つあるのは、自分達の人権も若干犠牲にしなければならないと。たとえば、プライバシーを侵害しなければならない。それは街で、たとえば、防犯カメラで撮られると、これは確かにプライバシーの侵害なんです。だけれども、これは社会全体の安全のためにはある程度我慢しなければならないコストだと。ですから、安全と水ということの中の安全には、安全のコストというのは費用という意味と、もう1つは自分達のプライバシーとか何かを犠牲にする、そういうことによって自分達の安全が結果的に守られると、こういうことになるという意味なんですよ」