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2018年6月14日(木)
前駐米大使が読み解く 米朝会談で見えた本質

ゲスト

佐々江賢一郎
元駐米特命全権大使
渡部恒雄
笹川平和財団上席研究員

佐々江前駐米大使が読み解く 拉致問題の行方とカギは
生野キャスター
「史上初の米朝首脳会談から2日、プライムニュースでも連日その内容を検証してきましたが、今夜はオバマ、トランプ両政権と外交の最前線でアメリカと向き合ってこられ、今年3月に退任されたばかりの佐々江賢一郎前駐米大使をゲストに招いて、今回の首脳会談からトランプ外交の戦略と狙いを読み解きます。まず日本にとって非核化と並び最重要課題であります拉致問題で動きが見られます。昨日、西村官房副長官は『金委員長が拉致問題は解決済みという発言をしたと、トランプ大統領から聞いていない。私自身は日朝交渉を拒否することはないと受け止めた』と昨日のプライムニュースで話しています。また、政府関係者は、金委員長は米朝首脳会談で『安倍総理と会う用意がある』とトランプ大統領に述べたということです。また、日本政府はモンゴルにおける国際会議に外務省の参事官らを派遣し、北朝鮮と接触するとの見方も出ています」
松山キャスター
「渡部さんはこれをどう受け止めていますか?」
渡部氏
「私はなんとなくそういう話だろうなと思っていたので、特に違和感はないですし、そもそもこれは私もそうですけれども、皆さん、トランプ大統領というのは個人的な関係をえらく重視する人だというのは、これはわかっている話ですね。どっちかというと同盟国よりも、個人的な関係が、馬の合う人の方を大事にする傾向があって心配されているぐらいで。安倍さんというのは両方なんです。同盟国のトップであり、かつ馬の合う、気の合う相手という。だから、これは当然のことながら北朝鮮側だってアメリカとうまくやっていこうと、もし思っているのであれば、それはトランプ大統領が言った安倍さんとの話をまったく無視したら、これからアメリカと交渉できないと思っても不思議ではないですよね」
松山キャスター
「当然、そういう意味では、これまで繰り返してきた北朝鮮の公式コメントとしては、拉致問題は解決済みだということを繰り返し言っていたわけですけれども、そこは当然言わずに、日朝の扉、日朝のラインが開いてるというシグナルを、ここを送るのが得策だと北朝鮮も判断したと?」
渡部氏
「おそらくそれと、もちろん、北朝鮮の意図は最後までわからないわけですけど。ただ、少なくてもこの段階ではかなり経済的に本当に苦しいという感じではないじゃないですか。むしろちょっと長期的に経済発展をきちんと目指そうという節はありますので。そうなってきた時に日本は重要な投資先であり、投資をしてくれる相手であり、ビジネスパートナーであり、長期的にはですよ。それは普通に考えるのではないですか」
松山キャスター
「佐々江さん、安倍総理は米朝会談が終わったあと、今日ですけれども、拉致被害者の家族の方々と面会を行いまして問題解決に向けた決意というのをあらためて示した。また、自分自身が北朝鮮との直接会談を行う可能性、意欲についてもあらためて示したということなのですけれども、日本としては現在、この段階で、次にどういうステップを踏んでいくべきなのですか?」
佐々江氏
「私は既にシグナルも示されているし、あるいはこのお考えというのは、総理の考えているのはトランプ大統領を通じて金正恩委員長にも伝わっているわけですから。あとはこれを実際上、会談の形にいくための調整というのが必要なわけです。それを今後行っていくことになるのではないでしょうか」
松山キャスター
「まさにその調整の1つと見られているのがモンゴルのウランバートルで行われている国際会議に北朝鮮の当局者が参加していて、合わせて日本の外務省からも、参事官がそちらに派遣され、何とか接触をはかろうとしている。接触ができる見通しだという情報もありますけれど。こういうのは日朝首脳会談実現に向けた下地づくりみたいな形になっていくのですか?」
佐々江氏
「私はモンゴルの、その状況がどうなのか、ここでご説明できるほど承知していないのですけれども。北朝鮮とのいろいろな調整ですね、これはいろいろなチャンネルがあるということで、1つではないと思いますし、ですから、いろいろな形で現在、努力が行われているのではないかと推察します」
松山キャスター
「北朝鮮との接触と言うと、我々が思い出すのは小泉訪朝の時に、事前に外務省の田中均さんが裏で、水面下でいろいろと調整をして、パイプづくりをして拉致被害者の情報などをいろいろと意見交換をしながら実現してたという話がありましたけど、今回の日朝直接会談に向けては、パイプとしては現在、モンゴルでそういう非公式な接触をはかろうとしているという話もありますけれども、それ以外に外務省としてはこういう場合はどういうルートを開拓しているものなのですか?」
佐々江氏
「それは米朝と同じで。この非公式のチャンネル、あるいはこの水面下というのもこれまでもあったし、これからもあると思いますけれども。それは原則として、こういう場所では、あるいは外ではお話をしないというのが原則だと思いますね」

米朝首脳会談と『トランプ流』外交
生野キャスター
「ここからは米朝関係について聞いていきます。今回の首脳会談で両国が合意した共同声明ですが、トランプ大統領は、北朝鮮の安全を保障することを約束。金委員長は、朝鮮半島の完全な非核化に向けた強く揺るがない決意を再確認としています。また、新しい米朝関係を築くことを決意。朝鮮半島に永続的かつ安定的な平和体制を築くため協力。板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて動くことを約束。米朝は戦争捕虜、戦争による行方不明者の遺骨の返還を約束すると合意しました。佐々江さん、今回の合意内容ですけれども、どう評価されていますか?」
佐々江氏
「非常に米朝の現在の北朝鮮の脅威の問題から言うと革新的な問題は核の問題、もちろん、ミサイルの弾道ミサイルの問題はありますけれども、とりあえずそこについて、向こうの約束を取りつけたということだと思うんですね。北朝鮮の方は、要するに、なぜ核を開発しているのかという最大の理由として自らの安全、彼らの言うところの敵視政策、アメリカをはじめとする。それがあるから自分達は自分達を守るために核をやっているのだと、これは理屈ですけれども。それ以外にも理由はあるかもしれませんし、それだけであるとも思いませんけれども。そういうことなので、それでお互いに、約束し合ったと、ここに最大の意義があると思いますけれども。1つ、そこに書いてないことで重要なことはこういう約束したこと、規定を、完全かつ迅速に履行するというくだりがなかったですか」
松山キャスター
「えーと、ここですかね」
佐々江氏
「えー…、あるんですね、このへんとかにあると思いますけれど。…というのがあるんですね、いずれにせよ。ですから、これは全体にかかっているので、アメリカ、我々としては、非核化について、これを完全かつ迅速にやることを北朝鮮も約束したと受けとるし、北朝鮮からすると体制の、あるいは安全の保証というのも当然、完全かつ迅速にやるということをやったということを意味するわけですね。ですから、これを額面通りに受けとれば、お互いが迅速にこれやるということになるのですけれど、そのあと北朝鮮の方から出てきている放送とか、いろいろ言うと…、ちょっと違ったようなトーン、言い口が出てきているので。果たしてこれは意図的に、わかっていてそういうことやっているのか、わかるフリをしてやっているのか、宣伝なのか、これから見極めていく必要があると思いますね」
松山キャスター
「渡部さんは共同声明の内容、いろいろと意見があると思いますけれど」
渡部氏
「はい。ポンペオ国務長官があとから、これ以外にもいっぱい合意していることによって、合意しているんだよということは言っているので…」
松山キャスター
「口頭で合意している?」
渡部氏
「口頭で。つまり、出せない部分があったのか、あるいは出す必要がないとしたのか。あとトランプ大統領は記者会見で質問を受け、もう少しなぜ踏み込めなかったのだと聞かれて、時間がなかったのだということ言ったりしていましたよね。私は結構それはあながち言い訳だけではないと思うんです。これで十分と思ったのではないですか、トランプ大統領は。それは何かと言うと、それは過去のケース、たとえば、2005年の6者協議での合意というのはもっと細かく書いているのですけれども…」
松山キャスター
「そうですね」
渡部氏
「結局、北朝鮮は守らなかったわけで。つまり、あっち側にその気がなければ、丁寧につくってもダメなので、ということを考えれば、ある程度はこの段階で合意というか、お互いにやる気を確認するのが大事だと思っても不思議はないので。なぜかと言うと、トランプ大統領はプロの外交官でもないし、過去のそういうケースに精通しているわけでもないし、むしろ彼は自分のビジネスディールをもとにやっているから、相手とやる気が合致すればやれると思っているというのが1つと。あと意地悪な見方をすれば、それ以上の細かいところは俺の仕事じゃねーぞと、ポンペオがやれと。これは意地悪な見方をする人は、それであとでうまくいかなかったら俺のせいじゃねーと、ポンペイのせいだと言うのだという、そういううがった見方もあるぐらい…」
松山キャスター
「そういう二重の構造になっているのですか?」
渡部氏
「うん。でも、結構、それは、私はトランプという人の意図というのは、そんなにきちんと、優しいというか、アレではないとは思うけれど、でも、そんなにひねくれてはいないと思うんですよ、むしろ割と率直な人なので。だから、こういう話で合意できて入り口に入るというのは実は悪くないことだと。つまり、本当に考え過ぎちゃうと会談はできないんですよ。会えなかったと思いますよ、考え過ぎちゃうと」
松山キャスター
「1番の焦点だと言われていたのが、まさにアメリカが当初主張していた、いわゆるCVIDというものですね。Complete=完全、Verifiable=検証可能、Irreversible=不可逆的、Denuclearization=非核化、ということですけれども。当初アメリカは早期にCVIDを達成して完全な核廃棄を求めるということを主張していましたが。今回の米朝首脳会談の前になって若干そこをソフト路線に転じて、ある程度時間がかかるのは仕方がないというトーンに若干変わったと思うのですけれども。これは現実路線として米朝会談実現するためには多少の妥協も仕方がないという判断で若干折れた、事前に折れたということなのでしょうか?渡部さんはどういうふうに?」
渡部氏
「そうでしょうね。でも、面白いのは、そのあともちろん、合意文書ではなくて、アメリカ側だけでCVIDを連発していますよ。たとえば、ポンペオさんは」
生野キャスター
「首脳会談の前日にポンペオさんはこのように『朝鮮半島のCVIDだけがアメリカが認める結果だ』と主張していますよね?」
渡部氏
「ええ。だから、共同文書でそれは入れるまでにはちょっと厳しいなと思ったのではないですかね。それこそ時間との戦いもあるので短く。しかも、だから、最初は本当に合意できるところに絞ってやったとは言えるわけです、それはCVIDではないかというとそうではないと思うので、これから。結局、CVIDを合意するんじゃなくて、やった結果が、合意した結果がCVIDになるのが目標なので」
松山キャスター
「ただ、佐々江さん、過去の北朝鮮とアメリカの交渉の歴史を見ていると文書でまとめたものですら破棄するという、一方的に放棄するということが多かったと思うのですけれども、今回、仮にこの共同声明が発表されて、いや、ポンペオ国務長官が、渡部さんが言うように実は裏ではもっといろいろなことを決めているのだと言ったとしても…口で言った、言わないみたいな話というのは、簡単に反故にできちゃうと思うのですけれども」
佐々江氏
「うん。いや、そうですね。専門家の観点からすると、北朝鮮との話し合い、交渉については言った、言わない、解釈が違う、ここの部分は合意してないというような、あらゆることがこれまでもあるので。安全をとるためにはしっかり書いた方がいいというのが常識的なことなのですけれども。他方で、北朝鮮は、我々が、アメリカ側がCVIDを非常に重視しているということはよく承知しているので、相手が重視することはそう簡単には譲らないと。それは交渉上、対価を払って、そこにやると。CVIDを書けたら書いた方が私も良かったと思いますけれど。そのために大変な代償を払って書くだけのことなのかということもあるわけですね」
松山キャスター
「とは言え、過去の北朝鮮とアメリカとの間での合意では、その検証に関する文面というのは既に入っていたわけで…。1994年の米朝枠組み合意を見るとIAEAの保障措置協定の完全順守と査察の再開という文言が入っていると。とは言え、そのあと、北朝鮮がウランの濃縮計画を進めていたことが発覚して結局、事実上、枠組み合意は崩壊したと言われていますけれど。そのあと2005年の6か国協議、まさに佐々江さんも直接携わっていた案件ですけれど、その時も検証可能な非核化で一致したにもかかわらず…」
佐々江氏
「ベリファイアブルというヤツですね?」
松山キャスター
「ベリファイアブルということですね、検証可能。これも結局、その後、朝鮮の核実験によって事実上反故にされた形になってしまったと。それでも過去の合意にはちゃんと検証可能とか、査察の再開という文言がきちんと入っていたと。それに比べると今回の共同声明は文言すら入っていないというのは若干、後退したのではないかと印象を受けるのですけれども」
佐々江氏
「うん。文書としては、これが入った方が良かったということは事実だと思いますけれども。しかし、こう入っていても、できないわけですから。要するに、向こうが実際上、ポイントはやる気があるかどうかというところがポイントなんですね」
松山キャスター
「なるほど。今回の米朝会談を受けて、北朝鮮はどう反応しているかというと、早速、北朝鮮が従来主張していたような路線に沿ったような発表というのを既に行っていまして。これは朝鮮中央通信が米朝会談後に発表した内容ですけれども、『米朝の両首脳が朝鮮半島の非核化を実現する過程で、段階的・同時行動の原則の遵守が重要との認識で一致した』と。これはまさに北朝鮮がずっと言っていた段階的・同時的措置というヤツですけれども。ある程度の段階で、非核化に向けたプロセスを達成すれば、その都度、制裁の解除なども含めた見返りを与えるということを示唆する内容ですけれども。それについて『両首脳が合意した』という形で発表してしまっているということです。ポンペオ国務長官は、これについて『今後、トランプ大統領、現在の任期内のおよそ2年半の間に北朝鮮の非核化の大部分を達成したい』と言って、ある程度の期限のメドというのは口頭では言っていますけれども、これは声明には盛り込まれていないと。制裁緩和についても『非核化のプロセスが完了するまで行わない』と口では言っていますけれど。では、この両者の言っていること段階的・同時的行動と言うのであれば徐々に制裁解除する可能性もあるかのように見える、そういう発表を北朝鮮側はしていて、アメリカは原則で最後まで完了しないと譲らないんだと口頭で言っているという。曖昧な溝がそのまま残っちゃっているような印象があるのですけれども、佐々江さん、これはどういうふうに?」
佐々江氏
「北朝鮮との交渉で常にこういうことは起こるんですね。いろいろな合意文書を発表しても、その解釈で、自らの有利なような、一方的な解釈を表明するということは、これまでもまあまああることでですね。段階別・同時行動の原則っていうのは、昔から言っているような、あの6者協議もそうなのですけれども、言っていて。まさに何段階も、初期の措置、第1段階の措置、第2段階の措置、第3段階の措置と、言って、各ところで関所をはって、それに対する見返りを要求すると。見返りが出なければ実施しない、あるいはもう協議もしないとか、こういうような状況ですから。これは世に言うサラミ戦術と言われているわけです」
松山キャスター
「サラミ戦術、ちょっとずつサラミを切っていくみたいな感じですね?」
佐々江氏
「ええ、そうなんですね。そうこうしているうちに時間が経っていって、時間切れになるというのがこれまで見られた例ですけれど、これを向こうが『認識で一致した』と言うことについてはよくわかりません。これはアメリカ側に聞かないとわからないですけれど。これは想像ですけれど、たぶん金正恩委員長が会談で言った可能性もありますね、こういうことを。フン、フン、フンとか言って聞いていたら…」
松山キャスター
「トランプ大統領がその場の則でOKと言っちゃった可能性もあるかもしれないですよね?」
佐々江氏
「…いや、知りませんよ。それは違うだろうとか言って、それは賛成できないと言ったかどうかも知りませんけれども。そのへんはよくわかりません、はっきり言うと。しかし、重要なことはどういう非核化であれ、今日明日で合意したからすぐできるということはないわけですから、それなりのステップを踏むことも事実なんです。しかし、問題は、非常に厳格な形で、北朝鮮がこれをやれば、アメリカが、あるいは我々が必ずこれをやる。我々がこれをやるために北朝鮮は暫く実施状況を見るとか、そのようなことを1つ、1つやっていくと、非常に。昔、大阪から東京に行くのに関所をいくつもブロックがあって、苦労して通らないと…、通らないと行けないというような、それこそ過去の交渉の教訓というのはあるわけですね。ですから、これにハマらないように、先ほど言った共同声明の中に『完全かつ迅速に行う』ということが重要で。そこのところについて今回もその文書について批判があるのはいつまでにやるということが明記されていないのですが、これは大統領の、達成したいという希望を述べたわけですね。ですから、これは、たとえば、2年半でこれを達成するという言質が北朝鮮からあったのかというようなこと、あるいは今後これが交渉の話し合いの対象になっていくのかというあたりが注目ですよね」

トランプ流『非核化』の真相
松山キャスター
「トランプ政権のチームという意味では、これは拡大会合の時の写真をボードにしたのですけれど、いわゆる最も強硬な論を言っていると言われていたボルトン大統領補佐官、ひょっとしたらボルトン外しみたいなものが行われていて、対話モードに徹するために、ボルトンさん、今回の協議は外れるのではないかという観測も一部あったのですが、実際のところは、首脳会談の拡大会合できちんとテーブルの端っこにちゃんと座っていたと。神妙な顔つきで、ほとんどあまり発言している様子は見られなかったですけれども、それでもチームとしては入っていると、今回この会談を主導したポンペオ国務長官、ケリー大統領首席補佐官も同席したという形ですけれど。このチームで今後、ボルトンさんはそれまではリビア方式ということを強く言って、即時完全核廃棄みたいなことを言っていたので、北朝鮮が反発して、会談がもしかしたら実現できないかもしれないという、ちょっと危うい場面もあったということもあったのですけれども。今後このチーム、どう推移していくと思われますか?」
佐々江氏
「私は良いバランスだと思いますね。いかなる交渉チームも何とかして柔軟性を発揮して交渉をまとめようとするこの形と、そこまで妥協していいのか。もうちょっとよく考えろと言う人達とのバランスは必要ですね。世に言う融和派と強行派と言えば簡単なのですけれども、それがなくて、皆どっちか一方だけだと、融和派だけだと相手に言うままになるし、強硬派だけだと、強いことを言って交渉が進まないわけですね。だから、このバランスは重要なのですけれども。重要なことは、北朝鮮は多くの場合、これを分断しようとするわけですね。ですから、今回ボルトン大統領補佐官をターゲットにして批判したのは、大統領を批判するのではなくて、彼を批判してやったのは、まさに彼と大統領との間に楔を打ち込む、あるいはペンス副大統領も批判しましたよね。そういうことですね。ですから、それをさせないように大統領が上に立って交渉の先頭に立つポンペオ氏を立てながら、しかし、しっかりと厳しい視線で見ている人がいるということは重要なことだと思いますね」
松山キャスター
「なるほど」
佐々江氏
「それから、ケリー補佐官…」
松山キャスター
「…首席補佐官」
佐々江氏
「…がいますね。ケリー補佐官はいろいろな会談に当初はそんなに多く、主要なパティシパント(参加者)としてでないような時も多かったのですけれども。最近は、こういう重要な会談で、しっかりと入って首席補佐官として補佐しているということは現在、彼のチームスタッフ、首席補佐官としての、状況を物語っているように思いますね」
渡部氏
「結構、重要なのですけれども。これは、私はずっと疑問だったんですよ」
松山キャスター
「ケリーさんも1回、外されるみたいな話がありましたよね?」
渡部氏
「ケリーさんの影響力が非常に下がっているという話が報道でされていたので、私はずっとなぜケリー首席補佐官がいるのか?彼は元軍人なので軍人がほしかったのかなぐらいの感じなのですが、これはむしろ私は、佐々江さんにコメントをお聞きしたかったんです。重要視をしているからこそいると考えていいのですか?」
佐々江氏
「そうだと思いますよ」
渡部氏
「そうですか」
佐々江氏
「それから、ケリーさんというのは、大統領補佐官になる前に国土安全保障長官ですね。もちろん、軍人出身の方なのですけれども、非常にしっかりとした胆力と資力のある人ですね。長官時代に私も何度もお会いしていますけれども」
松山キャスター
「南方軍の司令官でしたね?」
佐々江氏
「ええ、そうですね。息子さんを戦争で亡くしている人なのですけれど、軍人一家なのですけれど。非常にしっかりとした立場で、大統領を支えていると思うので。ですから、大統領はご承知のように変幻自在で、今日はAだったら、明日はBだったりするというようなことがある。これは今言っていいかというようなことも時々あるわけでしょう。ですから、彼がしっかりと支えて、交渉の先頭と交渉の背後に控えて、立て直せるボルトンさん、こういうチームなのではないでしょうか」
生野キャスター
「今回の合意内容を北朝鮮が行動に移すかという点について、トランプ大統領は首脳会談の会見でこのように述べました。『我々は非常に包括的な文書に署名した。金委員長は文書に基づいて行動すると信じている。北朝鮮に帰国次第、彼は非核化のプロセスを開始すると思う』と発言しています。トランプ大統領はどういうところを根拠に北朝鮮が動くと思っているのでしょうか?」
佐々江氏
「彼の会談を通じて得た心証、感触もあると思いますけれども。いくつかの話の全貌が我々にはわからないので。先ほども話がありましたけれど、この文書に出ている以外の、分野でいろいろ話したと。その時に当然アメリカはいろいろな話をしたと思うんですね、アメリカの望むこと。おそらく北朝鮮も自分達が望むことを、要求みたいなものですけれども、聞いて、それをお互いに聞いたうえで、大統領として、金正恩委員長は非核化については、やるということをたぶん何度も言ったのではないでしょうか。だけど、それはこうしてもらわないと困るということも言ったと思いますけれども、当然ですね。ですから、プロセスを開始するという1番端的な例は核実験場の爆破をまずしてみせて、それから、ロケットの発射台の話で…」
松山キャスター
「撤去したと」
佐々江氏
「これは率直には非常にシンボリックな措置です、実態上の廃棄と、ほぼ同様のような話なのですけれども。しかし、そういうジェスチャーは単に騙すためにやっているということではなくて、これはスターティングポイントだと、善意だということを彼は、そういう善意を示したから、たぶんやるのだろうな、やってほしいねというのがこの意味だと思いますね。しかし、これはトランプ大統領の話ばかり我々はわかるので集中しがちなのですけれども。金正恩委員長の方が、今回の結果を踏まえて、北朝鮮側の交渉担当者、あるいはやる者に対して、どういう指示を与えているかは非常に重要なんですね。つまり、これは米側には言う必要はないけれども、我々は最終的には非核にいくのだと。だけども、それを言うと、とれるものもとれないから黙っているのだと、そこは、というような話をしているのか、いやいや、実は核は諦めないのだけれども、そういうことを言うと交渉ができないから、交渉をするふりして、真面目にやるふりしていろというような指示なのかはもう大きな差があるわけですよね。これを見極めていくのは、実際の交渉の中で明らかになってくると思います」
松山キャスター
「佐々江さんはどっちだと思いますか?」
佐々江氏
「いや、わかりません。本当にこれを判断するだけの十分な材料が出ていると思いませんね」
渡部氏
「そうですよ」
佐々江氏
「それは実際の実務、あるいは専門家の話し合い、ポンペオ長官の話し合い、さらにはこの将来またあるかもしれない首脳会談も含めて、このチャプター1から、2、3と移っていく段階で本気度がわかってくるということになると思います」

半島&日本の安全保障は
生野キャスター
「今回の首脳会談後に行われた記者会見でトランプ大統領から気になる発言がありましたが、トランプ大統領は米朝首脳会談の会見で『朝鮮戦争は間もなく集結する。在韓米軍を将来的に本国に帰還させればいい。米韓軍事演習は北朝鮮に対し挑発的であり、北朝鮮との包括的な合意に向けて交渉が続いている状況下では不適切。中止することで多額の費用が節約できる』と発言しました。トランプ大統領の発言に対しポンペオ国務長官は『米韓合同軍事演習の中止は建設的で誠実な交渉が行われることが前提条件だ』としています。渡部さん、ポンペオ長官は『建設的で誠実な交渉が中止の前提』と述べていますけれども、米韓演習の中止、それから、在韓米軍削減が実際に行われた場合、日本にはどんな影響があると考えますか?」
渡部氏
「大変な大きな影響があるに決まっているのですけれども。まず実現する可能性はあまりないのではないかというのと、いちいちトランプ大統領の発明発言に噛みつけば、『間もなく終結する』と言っていますが。これは終結させるためには条約が要るんですね。現在、休戦協定だったのを、これをきちんとした条約にする。これはトランプ大統領だけではできないので。上院の3分の2がたぶんいるはず。上院の半分は民主党で、すごくトランプ大統領に厳しいので条件とかをいろいろつけてくる可能性もある。それから『将来的に本国に帰還されればいい』というのは、でも、かつてジミー・カーターという大統領は在韓米軍を撤退させるということで、大統領選で勝っているんです、でも、やらなかったんですけど。それで本当にいいのかというのはよくわからない。でも、もっと極めつけは『中止することで多額の費用が節約できる』、意味不明ですよね。そんなに軍事的なものにお金を使いたくないのかという話になっちゃうわけで、これはあまり真面目に捉えない方がいいだろうと」
松山キャスター
「ただ、トランプ大統領本人は、ビジネスマンとしての感覚から、本心から言っているのではないかという危惧が残るのですけれども」
渡部氏
「残りますけれども。それは、もう1つ、非核化の費用は日本と韓国が払うと。払いますけれど、それは。でも、そういう話ではないですよねと、これは両方そうなので。そこがトランプ大統領の同盟間とか、国際関係の感覚に関してはプロではないと、プロの外交官でもちろん、ないけれども、プロの政治家でもないと。でも、そこがまた魅力的なわけでしょう、一部の支持者には。それはしょうがないですよね」
松山キャスター
「2つの要素があって、米韓合同軍事演習は今回の対話ムードの流れの中でいったんやめていますよね。穏やかな形に抑えている?」
渡部氏
「はい」
松山キャスター
「今度8月にまた別な演習が予定されているのですけれど。乙支フリーダムガーディアンという演習があります。それについて既にアメリカのメディアは8月の演習は中止する方向でもう調整していると報じているわけで、現実問題として動き始めている要素があると」
渡部氏
「ありますね」
松山キャスター
「となると、抑止力という点で北朝鮮に対する抑止力、中国も含むかもしれませんけれども、現実問題として動き始めている危惧というのはないですか?」
渡部氏
「あります。だから、これは既にアメリカのメディアでは、これでニューヨーク・タイムズですけれども、実際には日本とか、韓国とか、同盟国が非常に不安を持っているということを書いています。ただ、トランプ大統領からすればそんなフェイクニュースのメディアは無視しろという話になっちゃうのですけれども。結構、だから、深刻な話ではあると思います」
佐々江氏
「いくつかの…、3つの要素があるわけですよね。1つは当面の軍事演習を中止という話なのですけれど。これはその場の流れで、米朝の話の中で出てきたようなものだと思いますね。こういう話が事前の事務レベルの専門家の話で出てきたとは想像しにくいのですけれども」
松山キャスター
「では、首脳同士の話し合いの中で出てきたもの?」
佐々江氏
「たぶん。想像ですけれど、出てきて、たぶん北朝鮮、これはトランプ大統領自身も言っているんですかね。北朝鮮は①②③④⑤をやっている。ミサイルの発射、あるいは核実験、これいずれも当面やっている間はやらないと言っているのだから、彼のその場のまさにスポットな判断で、向こうもやらないのだから、あまり…、どこかに刺激的と書いてありましたよね?あっ、挑発的…」
松山キャスター
「挑発的。北朝鮮がこれまで使っていた表現ですよね?演習が挑発的…」
佐々江氏
「うん、そう。だから、これはそれを言ったということで。そのあとポンペオ長官は修正をはかっています。何が何でも中止するということではなく、ちゃんと向こうが交渉をやっているのだったら、それは中止であるのだけれども、ちゃんとやっていないのなら、それはやるぞという趣旨ですね、反対から言えば。ですから、ここはやや修正を試みていると言えますけれども。ですから、今後、交渉が進むにつれてこれはダメだなということになると、実施されない可能性もある話として受け止めておけばいいということだと思いますけれども。もう1つのこの話、『朝鮮戦争は間もなく終結する』と。これは当面、韓国、特に終戦協定の当事者でもないわけですから、法的に言えば、本当に戦争状況にあるわけですけれど、実態で今、戦争をしているわけではないので。実態上の話を言うよりは、法的・政治的な意味としてのものですね。もちろん、その結果として生ずる意味合いというのは、相当、安全保障上の影響はあるわけですけれども。非核の話、あるいは弾道ミサイルのような協議が進んでいって、お互いに、先ほど言った信頼の醸成が出てきたような段階で朝鮮の戦争をやめるということを当時者が宣言するということは宣言的な話なわけですから、政治的なものとしては不可能だというようなことではないと思いますね。ただし、これまで事前に多少聞いているような話では、韓国はおおいにこの話に熱意を燃やしているというような話なので。これをはやく政治的な導入としてやって、はやくムードを改善すれば、核の交渉も含め、良い関係ができてくることを期待できるのではないかと。北朝鮮からすれば、信頼、つまり、非核をするうえでそういう米側にまず信頼を醸成するようなことをやってくれという位置づけの中でそれなりにシンボリックな、ある面で敵対関係を解消する一部、全部ではなくても、…になると認識するかもしれないので。これはこれで我々からすると、こういうのは当然、交渉の重要なツールというか、材料だろうと…」
松山キャスター
「でも、先にカードを切っちゃっている感じがする…」
佐々江氏
「それがないのにこんなことをやって、どうするのだというのが専門家の普通の見方だろうと思います」
松山キャスター
「普通の外交常識ではないですよね?」
佐々江氏
「現在そういう常識が全部あるかどうか、よくわからないのですけれど、そういうことですね、これは。それから、在韓米軍を…」
松山キャスター
「日本にとって心配な話なのですけれども」
佐々江氏
「確か私の記憶では当面ないのだというようなことを言ったと思いますけれど。当面はないのだけれど、将来的に遠い、全てうまくいった時ぐらいの感じなので。これを現在あったらどうなるのだということを、私は議論するのは尚早だし、それをいろいろ、こうなればこうなるということをあまり、彼が言ったように警戒心をもろに出して、これは大変なことだと言えば言うほど、向こうの術中にはまるということですね」
松山キャスター
「トランプ大統領の頭の中にノーベル平和賞みたいなものがチラついていて、そのためにはまず朝鮮戦争の戦争の終結、平和協定、そうすれば自分の名前は世界に轟くという文脈で言っているのかなという気もするのですけれども」
佐々江氏
「仮に非核化、弾道ミサイルの問題とか、日本で言えば、拉致問題を解決して国交正常化に米朝が向かう、南北の和解が進んで、あるいは日朝も向かうという情勢の中で、そのあとの各国との関係はどうなるのだと。北朝鮮と韓国との間の、将来のこの関係というのはどうなるのだと。統一と言っているわけですけれども、何なのだということも含めて。その時に、この地域の中国とか、ロシアとか、あるいは我々も含め、全体として関係がどうなっているのかと。その時にこの軍事体制を現在のままがベストなのか、あるいはさらに緊張にいくのかと、あるいは場合によっては緩和にいくのかと、あらゆる要素が絡むわけですね。そういう全体的な判断なくして、ただこれだけを取り上げて、米軍のある面で、算術計算でコストがかかるからと言っているような話は、あまり有益な話ではないと思います」

佐々江賢一郎 元駐米特命全権大使の提言:『決意、戦略、忍耐』
佐々江氏
「『決意、戦略、忍耐』。対トランプ外交ということなのですけれど、もちろん、日米同盟を前提にしているわけですけれども、特に北朝鮮の問題では、我々は共通の決意が試されると思いますし、この問題に対応していくうえでは戦略を共有して、祖語のないようにして、しかし、北朝鮮を含めた、この問題の対象には忍耐を要すると、ギブアップしないと、当初の目的を貫徹することが重要だと、そういう趣旨です」

渡部恒雄 笹川平和財団上席研究員の提言:『柔軟に』
渡部氏
「『柔軟に』ということなのですけれど、何に対してかと言うと、それはトランプ大統領というのは先ほどもちょっと言いましたけれども、非常に困ったことを言ったり、矛盾したことを言うわけですけれども。いちいちそういうことに反応していてもしょうがないので。トランプ大統領の特質というのはトランザクショナルと言われていて、相手の出方を見ながら出方を決めていくのもあるので。ただ、日本とって大事な国益を達成するために、まず特に安全保障上は日米同盟が重要であって、これは基本的にあるので。そこを固いところを持ちつつ、でも、だから、いろいろ動いていることに対して柔軟にするということですね」