プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2018年6月11日(月)
徹底予測『米朝会談』 非核化は 体制保証は…

ゲスト

山本一太
自由民主党政務調査会長代理
宮本雄二
元駐中国大使
手嶋龍一
外交ジャーナリスト

『米朝』歴史的会談前夜! 日米&中露の焦点検証
竹内キャスター
「史上初の米朝会談がいよいよ明日、シンガポールで行われます。先週末、日米首脳がアメリカで会談。その数時間後に中国で習近平国家主席とプーチン大統領が首脳会談と、関係国の動きも慌ただしさを増すなか、トランプ大統領、金正恩委員長はどんな交渉戦術を描いているのか。非核化、経済支援、体制保証、想定される会談の焦点を直前検証します。米朝両首脳がシンガポール入りしました。いよいよ明日、会談となるわけですが。山本さん、2人の両首脳の表情を見ていかがでしょうか?」
山本議員
「表面的に見ると、前もこの番組で申し上げたとおり、アウトスマートという言葉があると。相手よりも賢く振舞って出し抜くという意味なのだけれども。まさにトランプ大統領と金正恩委員長はアウトクレイジー競争をしている。どっちが危ないかみたいな競争だったのですけれども。ここ一連の流れからいくと、なんとなくトランプ大統領が主導権を握ったように見えるんですね。ただ、トランプ大統領がここに来ても依然として、最初の1分でわかるとか、あるいはチャンスは1回きりとか、こういう言動を繰り返しているというのは断続的に事務レベルで、たとえば、ソン・キムフィリピン大使とかが来て、断続的にはやっているのですけど、大きな方向性はリーダー同士の話し合いに委ねられているのではないかという気がします。現在、アメリカは主導権を握っているように見えていますが、と言った、その『が』は、CVID、これはポンペオ国務長官がこの時点でCVIDがなければダメだと言ってくれたのは日本にとってもすごく良いニュースで心強く思ったのですが。そもそも非核化の定義というのがよくわからないし、CVIDは、ここ4、5日間ずっと核の検証のプロセス、いわゆるIAEA(国際原子力機関)の、これまでの歴史とか、これまでのケースとか、調べてみたのですが、基本的にCVIDというのは短期間でやるのは不可能ですよね。たとえば、1週間前ぐらいにロスアラモス研究所の元所長の…」
松山キャスター
「ヘッカー…」
山本議員
「ヘッカーさんですかね。ヘッカーさんが言っているように、少なくとも10年と言っているではないですか。では、核弾頭を解体する、これおそらくアメリカにとって最も良いシナリオかもしれないけれども、核弾頭を解体する、それは北朝鮮内でやるのと、アメリカに持ってくるのでも全然違うし、ケースによっても全然違うし、北朝鮮が本当に全てを申告するかどうかもわからない。これを検証する方法は、私が調べた限りなかなかIAEAにはないですよね。そうすると、たとえば、ここでCVIDに原則的に、金正恩委員長が合意したとしても長いプロセスなので、そうすると、主導権という点で言うと、時間はもしかすると金正恩委員長の方に有利に働くのかなということなので。どっちが有利不利というのはなかなか言えない感じがしますね」
手嶋氏
「CVIDというのが出ましたよね。完全で検証可能な後戻りができない非核化、CVIDの『D』というのは、実は非核化ではないですね。英語でDismantlement、廃棄と言うのですから、もっと明確に、核弾頭を運び出し、それを破壊し、ウクライナのケースで言いますと明確にこれを全部廃棄する、もっと明確な表現になっているんですね。これだけを見ても非核化は、ご指摘があったように、確かに非核化、ちょうどオバマ大統領の『核なき世界を』というようなことに少し似ていますよね。そのところまで、彼らが使う、現在トランプ政権が使っているCVIDのDをもってすら、実は水面下で北朝鮮の方にグッと寄っているということになりますから。それが使われただけではまだ安心ができないと。まさにここのところ、厳密な検証と、これは本当に大変で、ご指摘がありましたように、核の専門家で、短期間でそれが全部できるということについて自信があるという人に1人も私は会ったことがありません」
松山キャスター
「宮本さんは、米朝首脳会談前夜の両首脳の顔を見てどういうふうに?」
宮本氏
「なかなか難しいのですが。1つ大きく、これまで我々が抱いてきた北朝鮮のイメージというのはだいたいにおいて金正日の時代に形づくられたイメージなんですね。もちろん、金正恩さんになってから金正男さんがマレーシアで殺されたりして、なかなかそのイメージは簡単に払拭というか、変えることはできなかったのですけれども。この人が、現在どう考えているかというのをもちろん、北朝鮮のことですから著しく難しいのですが、私はちょっとフラッットに考えてみたのが、核を持ち続けていいんですよ。そうすると、国際社会の制裁は続くんです。経済支援はないです。そうすると現在の貧しい状態を、金正恩さんは三十何歳ですか、これをずっと続けなければいけないですよね。そう考えた時に、何かのブレイクスルーを考えて、豊かな北朝鮮というものが、お父さんよりは金正恩さんにとって大きな意味を持っているかな、とちょっと思うこともあるんですね。そうすると、核兵器をつくりあげた今日、これはまさに核兵器をつくり上げたので、自分は、お父さん、お祖父さんができなかった、アメリカの大統領とサシで話をして、一応、北朝鮮の将来について話をすることができるという状況までもってきたわけです。これは彼にとって大変な成果だと私は思いますよ。だから、このチャンスを逃したくないと思っている割合は、金正恩さんの方がトランプさんよりも大きいのではないかという気もしなくはない、私は、…わかりませんよ。ただ、ちょっと彼の立場に身を置いて考えてみた時、なんと言ったって若いですよ、彼は。あと10年、貧乏を我慢すれば、それでいいという、そういうことではないのではないかなという。ちょっとそこは、いや、あまり楽観視してもいけないのですが、厳しい国際政治ですから、あまり楽観視してもいけないのですけれど、そういう要素もあるなという気がチラッとしている」

米国の『非核化』シナリオ
松山キャスター
「アメリカはここへ来て若干、非核化のペースについてはゆっくりでもいいということを、たとえば、金英哲副委員長にトランプ大統領が言ったという話もありますし、若干ちょっと折れてきているような気がするのですけれども、どういうふうに?」
手嶋氏
「ええ、これは3つが揃わなければいけないんです。どんなものを対象に核の廃棄に進むのか。そのプログラムはどういう工程で進むのか。全体としていつそれを完成するのかというのが出揃わなければ、本当の核の廃棄ということにはならない。漠然とした非核化にとどまってしまうということになるのですが。その1つ1つを詰めるということになりましたら、これはアメリカには核軍縮の、核廃棄の専門家はまだたくさんいますから、その人達が出てくるというので、これを全部止めるのには膨大なエネルギーと、それから、予備交渉が必要ということになりますよね」
松山キャスター
「1回だけの米朝首脳会談では、とてもではないけれども、このプロセスを全部網羅するのとかは難しい?」
手嶋氏
「ええ。ということになるとトランプ大統領は今回1回きりだと…、あれは一種の啖呵を切っている、脅しをかけている。今回、一挙に非核化の意思を表明しなければ、ちゃぶ台返しで。トランプ大統領は、これは米側の関係者が言っているのですけれども、仮に会回のシンガポール会談でちゃぶ台返しをして席を立つとしても、これは十分な姿勢を示さなかったので国に帰る、これがアメリカの国益だと言ってもトランプ支持層を中心として大向こうは喝采するかもしれないというようなことを言う人がいて。その点でトランプ大統領はかなり強気には出ている。一方で、トランプ大統領は、完全にひっくり返すのだったら別ですけれども、一連のここまで大騒ぎをしてやるのですから、何らかの形で成果を上げなければいけないと。お土産は国内に持ち帰らなければならないということになりますね。その時にということで、実は朝鮮戦争というのは休戦状態が続いているだけということになりますから、それを北朝鮮側との協力のもとに終止符を打つ、それを世界に宣言をする。このことによって朝鮮半島で当座、第2次朝鮮戦争が起きる可能性というのはグンと減りますね、確かに。まさに終戦の宣言というところに気持ちがずっと動いていることは間違いないと思うんですね」
松山キャスター
「宮本さんはこのプロセスを含めて、今回の米朝首脳会談でどのあたりまで合意できると?」
宮本氏
「これは非常に難しいですね。これは全体がパッケージなのでね。従って、アメリカとしてはその時期はいざ知らず、全部核は廃棄…、諦めますということを言わせないと、入れないと思うんですよね。それ以外のところでは、しかし、これは対象をはっきりさせないと、これは専門家に言わせればすぐわかりますから、対象を。どういうプロセスでやらなければいかんかという細部は、これから詰めなければいけませんけれど、大きなところはもうわかっているんです。そのためにだいたいどれくらいの期間がかかるだろうと、これもだいたい現在、専門家に言わせれば出てくるんですね。従って、そういうものを一方で、現実でおいといて、最終的にはこれをちゃんとやるんだという金正恩さんの言質をとって、次にそれをどういう形で組み合わせていくかという次のプログラムづくりになっていかなければいけないので。ですから、その時に、北朝鮮側のどれくらいの態度を引き出すかと、そのために終戦協定と言いますか、終戦の宣言と言いますか、そういうものが使われる可能性がある。と言うのは、将来について何も進まないまま、こちらの方だけちゃんと約束しなさいと言ったって、それは、今度は北が飲めない話になってきますので」
山本議員
「十分注意しなければいけないのは終戦宣言なるものをやった時にアメリカは軍事行動という選択肢を縛ることになるわけだから。終戦宣言やるということがどういうことかというと、現在よく金正恩委員長の状況を見ると、動物が何か喧嘩して相手に攻撃しないでくれと言っている時に、お腹を見せるではないですか、コロンと。その状態だと思うんです。そういうのを見ていた、たとえば、アメリカとか、ロシアがこんな状況なのだから攻めちゃダメだとか言って。だけど、ムクッと起き上がるチャンスを狙っているという状況なので。終戦宣言というのはよほど慎重にやらないと、ある意味、先ほどから出ている非核化、非核化の定義は難しいのですけど、相当キチッとした担保をとらない限り、むしろ体制保証になっていくんです。だから、終戦宣言というのは、よほど慎重にやってもらわないといけないなということだけ感じました」

朝鮮戦争終結と『体制保証』
手嶋氏
「とても重要なご指摘なのだと思いますね。トランプ大統領は就任以来一貫して、自分の執務室の机の上にはあらゆる選択肢、最後は、相手がやらなくても伝家の宝刀を抜いて先制攻撃と、この可能性があると言っていた。これがテーブルに北朝鮮をおびき出す最大の要因になっているということですけれども。あらゆる選択肢というのは今回、終戦宣言によって縛るということになりますよね。終戦宣言の次のステップは、ということになる、当然のことながら平和協定に切り替える。当事者3人、あるいは今回、韓国を入れるかもしれませんけれど、原則的に3人。従って、その人達でもう一度会談をして、これが平壌になるかもしれないと、そして首脳会談をと。これがもう1回、やるかもしれないという背景になっているということになりますね。平和協定がもしできたとするということになりますと現在、休戦状態にありますから、実際はアメリカ軍が中心なのですけれども、UN、国連軍のキャップを被っているということになりますけれども、その選択肢を消してしまうということになりますよね。これは国連軍の司令部というのが、韓国と同時に一部小さなものですけれども、横田にもあるということになりますよね。この選択肢が消えるというのは、少し専門的になりますけれども、日本とアメリカの大きな抑止力に明らかに陰りが出るということになりますね。なぜならば朝鮮戦争の時の国連軍ですから、その後、日米安保条約が改訂されましたので、もし在日アメリカ軍が、海兵隊が朝鮮有事の時に、朝鮮半島にという時には、これまで使われたことがないのですけれども、日米安保条約に基づいて事前協議の設定がなされていますので、それについて、アメリカ政府が日本政府に正式にこれを同意してくれますねと確かめなければいけない。たぶん、ウンと言うのでしょうけれど、しかし、NOと言う可能性もありますよね、しかし、ここはおおいに議論があるのですけれども、国連軍ならば一部運用できるかもしれないと、宮本さんがおられた外務省というのは条約省と言われるぐらい名うての条約官僚がいますから、その人達はそう考えている。ここのところはあまりにも微妙な問題で、手嶋さん、その議論をしないでほしいと頼まれたことがあるので、名を提供しているのですけれども…」
松山キャスター
「いわゆる一般的に在韓米軍と一言言ってしまうのですけれども、実は内実としては在韓米軍という、いわゆる韓国とアメリカとの間の防衛協力条約に基づいて駐屯しているアメリカ軍と、重なってはいますけれども、朝鮮にある国連軍。その2つのカテゴリーがあって。仮に朝鮮戦争の平和協定というのが結ばれた場合は、その国連軍については存在する存在意義がなくなってしまうのではないかという意見が韓国の政府の中からも出ているという状況なわけですよね?」
手嶋氏
「そうですよね。一言、補足をしますと。横田には司令部はある、実施部隊はないですけれども」
松山キャスター
「はい、後方司令部はありますよね?」
手嶋氏
「しかし、現在もほそぼそとは運用されているので。中国のどうやら石油運搬船が瀬取りと言って、北朝鮮に石油をという時に、監視に当たっているのは主に海上自衛隊の艦艇が中心なのですけれども、同時にカナダやオーストラリアとも連携をしていると。これは広い意味では朝鮮国連軍に対する、広い意味で朝鮮戦争時の国連軍の協力の枠組みに、と解釈できるということになりますから。そういうものについても手足が縛られるということになりますし、もしいよいよ終結宣言をして平和協定にという時に、北朝鮮は堂々と当事国として出てくるということになりますから。これは当事国として金正恩委員長が出てくるということになりますから。このことを通じて、実質的には現体制、強権体制の保証にと言われるのは、まさにその所以だと思います」
宮本氏
「外務省のご心配をいただきまして…。外務省だけではなく、日本という国は昔から法律を細かく守るんですよね。陸奥宗光の本を読んでも、本当に条約はこうだというふうですね。日本の特質なんです。だから、日本は動きにくくなりますよ、間違いなく」
松山キャスター
「なるほど」
宮本氏
「トランプさんがどれくらい、そこをちゃんと守ってやれるかどうか、それは、私にはわかりませんけれど、日本は間違いなく自分の手足を縛るということになってくると、動きにくくなるというのは、これは間違いないと思いますね。ただ、ここで私どもが考えておかないといけないのは、なぜここまできたか、生き延びてきたか。核兵器をここまで保有することになったかというのは、これは国際社会がバラバラだったからなんです。だから、いかにして、これはトランプさんが1番苦手な分野なので、だから、私は日本の出番が大きいとかねがね言っているのですけれども。国際社会がもう少し団結して、北に当たるという構図がない限り、シンガポールでどういうふうに米朝が合意をされようと、最後は国際社会が、それを北に実施させないという体制が整わない限り、あそこは生き延びるし、核は場合によっちゃあ持ったままになってしまうことになってしまうんですね。従って、そこを同時にアメリカとしては注意して対応してもらわなければ困るし、同時に、そこに日本の出番があると思いますね」
手嶋氏
「この際、終戦宣言と非核化というのは、実は微妙な形で絡み合っている、時に相反する、トランプ大統領の立場から言いますと、お土産は持ち帰らなければいけませんね。ところが、非核化は口先では言うのだと思いますよ。しかし、それは明らかに専門家の批判に耐えるものでなければいけませんけれども、そういう水準になるのか、どうかはわかりませんよね。とすれば、トランプ大統領しては大きな成果として、朝鮮戦争の終結というものを世界に向けて高らかに宣言をしたら、大きなお土産になりますよね。こっちの方に行くかもしれない。しかし、そのケースはとりわけ日本から見た場合にはいくつか非常に懸念すべき問題があると、このことは忘れてはならないと思います」
宮本氏
「いや、だから、そのために北に核を放棄させるというところについてはっきりとした、そういうものをトランプ大統領にとってもらわないと、その先の段階に、進んでほしくないと思いますね」

日米&中露の『焦点検証』
松山キャスター
「まさに北朝鮮の非核化については関係国として他にも中国やロシアのスタンスというのも問題になってくると思うのですけれども…」
竹内キャスター
「先週末、中国を訪問していたロシアのプーチン大統領は現地メディアの取材に対して、このような発言をしています。『中国が地域情勢の緩和に対して多くの働きかけをしたことを支持する』『北朝鮮の指導者層による空前の努力は私にとって予想外のことだった。1つはミサイル核・実験を停止したこと。もう1つは、最大の核実験場を爆破したこと』『我々が実現させたい非核化に踏み出した重要な一歩であることは間違いない』という内容で。北朝鮮の行動を『予想外のことだった』とプーチン大統領が発言しているんです。宮本さん、本当に事前連絡がなかったのか、どう受け止めていますか?」
宮本氏
「事前連絡はなかった可能性があります。しかし、プーチンさんがこれをうまく利用して、ですから、朝鮮の問題というのはロシアにとってはちょっと悪いですが、2の次、3の次の問題でロシアにとって1番の問題はヨーロッパの話ですし、その次が中東ですから。その次に北朝鮮ですから。従って、これは、北朝鮮が喜ぶ、北朝鮮との関係を近づける、そのために意識的に発言しているなと。だから、非核化なんてとってつけたような感じでしょう。北朝鮮が良いことやっているのだから国際社会もそれに応えてやってあげなさいよと。なおかつ北朝鮮の実際の安全保障上の脅威をロシアほとんど感じていないと思います」
竹内キャスター
「距離的に近いような気もするのですが」
宮本氏
「あそこは人が住んでいませんから」
松山キャスター
「ロシアの北朝鮮核問題への危機感がそれほどでもないという話がありましたけれど。たとえば、ミサイル実験とか、核開発の停止とか、ミサイル・核関連施設の廃棄とか、いろいろテーマはあると思いますけれども、ロシアは本腰で北朝鮮に対してはどこまでを要求しようと思っていると思いますか?ミサイルは、たとえば、長距離しか関心がないとか、短距離・中距離は、実はどうでもいいと思っているとか、そういうことなのですか?」
宮本氏
「安全保障理事会の常任理事国として、あの決議に賛同していますから、彼らの立場は当然、核廃絶であるべきなんですね。しかし、内心は北の核をそんなに脅威だと感じていないので。従って、熱意が薄いということだと思いますよ。そこは、中国と本質的に違うと」
松山キャスター
「中国は北朝鮮の核開発にある程度の危機感は持っている?」
宮本氏
「いや、もうかなりの危機感を持っていますよ。これは、いずれ地図が出ると思いますけれども、もう北京は、射程内に既に入っています」
松山キャスター
「中距離ミサイルでも既に北京は…」
宮本氏
「ええ。従って、核を持った北朝鮮は途端にその他の核大国に対して大きな顔ができるようになるんですよ。核を持つ相手に対して本気で恫喝をかけるというか、脅しをかけるということは、その敷居がグッと上がるんです。核を持っているか、持っていないかというのはかなり死活的に大きな重要性を持っていますから。北が核を持ってしまうと、これまでも北朝鮮に関しては、中国は本当に振りまわされて、扱い方に苦労していましたよ。その北朝鮮が核を持ったら、ますます扱いにくくなるというのは当然想定できますし、なおかつ北京まで届く、あるいはそれ以外の主要都市まで届く核というのを北は開発済みですから。これは習近平さんになって、はっきりしたと思いますね。北の核に関しては、中国はこれをストップさせるということは、これは決めたと思いますね」
松山キャスター
「何か我々の感覚で言うと、日米韓、こういった国々が北朝鮮に対して短距離・中距離も含めて、ミサイル開発を一切やめろと強く主張するのはわかるのですが、なんとなく中国は自分のところには向けられていないのではないかと思っている印象があるのですけれども。そうでもないということですか?」
宮本氏
「いや、それは向こうも核を1発、相手が持ったら、これをお前に撃ち込むぞと言われて、北京なら北京の何百万、下手するともう一千万人近い人がそれで犠牲になるというようなことがもうわかっている時に、それにもかかわらず北にさらに圧力とか、北に対して強い姿勢をとろうということができる指導者は10分の1に減るのではないでしょうか。それぐらい、いわゆる小さな国にとって核を持つということは自分の身の保全のために著しく効果的です、それを北朝鮮が持ってしまうと。それに対して中国は危機感がある。しかし、遠いロシア、シベリアには人が住んでいませんから。遠いロシアはそれほど危機感がないと。しかし、ICBMを開発して、アメリカに届く核を持ったら、当然ロシアにも届きますし、ヨーロッパにも届くようになるんです」
松山キャスター
「モスクワなど主要都市に届く?」
宮本氏
「ええ。ですから、アメリカとの関係だけで皆、議論をしていますけれど、長い目で見ると、北がICBM開発した時、これは世界の問題になるんですね」

北朝鮮への『経済支援』は…
竹内キャスター
「先週の金曜日、日米首脳の共同会見で、トランプ統領は経済的な支援についてこのような考えを明らかにしています。『我々は合意に達するまで制裁を続ける』『取引が合意できれば北朝鮮を支援する』『アメリカは、非常に遠い国だが、安倍総理も文在寅大統領も大きな経済支援をすると言ってくれた。中国も協力するだろう』という内容ですが、山本さん、経済支援は日中韓の役割というトランプ大統領のこのスタンスをどのように受け止めていますか?」
山本議員
「日本には日本のスタンスがあって、拉致問題という重要な問題を抱えているわけなので。もちろん、ミサイルもそうですよね、中距離以下のミサイルも、もちろん、このディールの中に含めてもらわなければいけないのですけれども。それがそういう道筋がつかないのであれば、それはなかなか首脳会談もできないし、経済支援もできないと。だから、いわゆる共同宣言に戻るための条件はしっかりトランプ大統領に言っていくべきだと思います。この体制保証という話になると、2人からもいろいろとお話があると思うのですけれども、その最も考え得るのは、手嶋さんが先ほどおっしゃった平和協定ですよね。それから、何らかの形の不可侵条約みたいものですよね。だって、30歳のリーダーなんだから、トランプ大統領が代わったら、アメリカの政治はダイナミックだから、また政策が変わるかもしれないので。キチッと条約とか、そういうもので担保したいというのがあると思うのですけれども。その上にあるのは経済発展だと思うんですね。これは30年間、20年、30年、国を治めていくためには、現在の経済を何とかしなければいけない。このまま経済制裁が続いたら、さすがに北朝鮮の経済はおかしくなってくると思うんですね。だって、スキー場とカジノに投資しろと言うぐらいの状態ですから。ただ、問題は、ポンペオさんは国民の税金を使わないと。たとえば、アメリカは、いわゆる経済投資を促すようなことはするけれども、アメリカの税金は使わないと言っているわけなのですが。ドンドン外資が入ってきた時に、普通は現在の人権状況…、独裁国家というその成り立ちと、それから、経済発展というのは、普通なかなか成立しにくいということを考えると、元に戻っちゃうのですけれども、私の感覚で言うと、宮本元大使の方からもありましたけれども、小国にとって核を持つということが、いかに大きな意味があるかということを考えると、どう考えても、もちろん、CVIDにいってほしいと思うのですが、どう考えても残念ながら金正恩委員長が核を簡単に放棄するとは思えないな、という気がします」
松山キャスター
「日本からすると、いや、なぜアメリカも支援しないの?という、なぜ日本の名前を勝手に出すの?という印象を持つ人もいると思うのですけれども」
手嶋氏
「常の大統領だったら、そうですけれど。トランプ大統領の言い分を認めるわけではないのですけれども、トランプ大統領なので私は少しも驚きません。なぜならトランプ大統領、トランプ政権の本質を一言で言ってみろというと、たった1つしかないんですね、アメリカファースト。アメリカの国益が全てに優先するということになりますから。これまで、出かけて行って、朝鮮半島の平和のためには尽力をすると。しかし、お金まで払うつもりはないと。なぜならば自分はアメリカ国民のためにという、そういうふうに固く思っているということなのだと思いますね。従って、日本については、拉致問題については協力をする、問題提起をする。これは嘘ではないし、かつそういう発言はトランプ大統領がするのだと思います。しかし、道筋がついたあとは、安倍さんはどうやら日朝平壌宣言というのも言っているのでしょうから、これは日朝平壌宣言のポイントはたった1つですよね。日本は北朝鮮と国交を樹立し、然る後に経済協力をということ。これは戦後補償の意味合いも含まれているわけですけれど、当時の日朝平壌宣言をとりまとめた全ての関係者の証言は一致しているんですね。この中には実は額は書かれていないのですけれども、ほぼ水面下の交渉では、日本は1兆円と言っていた。その後、物価も上がっていることもあって、もっとちゃんとお賽銭を渡してくださいというのがトランプ大統領の本音なのだと思います。しかし、ああそうですかと簡単に言うわけにいきませんよね。拉致問題は解決をしなければいけない。しかし、その一方で、非核化が十分に実現をしないまま、もし経済協力をしたら、それは核・ミサイルの資金に使われる可能性があるので、ここで考えていただきたいのですけれど、私は2002年の小泉総理の北朝鮮訪問、その時にワシントンの特派員であったのですけれども、日朝平壌宣言に随分批判は受けましたけれども、手厳しい批判のコメントを明らかにしました。それは日朝平壌宣言には、だいたい拉致問題も書いていない。しかも、核。ミサイルのことは若干触れていますけれど、それらについて明確な条件が付されていない。日本は経済協力だけということになります。しかも、それは実質的に1兆円ということになりましたから。安倍総理は最近、日朝平壌宣言を、山本さん、肯定的な立場から引用されるのですけれど、これはおやめになるように是非言っていただきたいと思うんです。日朝平壌宣言、もしあの時に日朝平壌宣言がそのまま実施をされていたら、2002年のことでありますから、北朝鮮の核・ミサイルの資金に実質的には使われましたよね。このことはあまり皆、議論をされないのですけれども、日朝平壌宣言を1回、様相を新たにして、もし宣言をするのならば、新たなもの、拉致・核・ミサイルというのをちゃんと書き込んだ宣言にすべきだと思います」
松山キャスター
「トランプ大統領が言うほど、日本から経済支援をするというのはなかなかハードルがまだまだ高い、そう簡単にはできない…」
宮本氏
「それは、何もないまま経済支援というわけにいきませんから。日本には日本の明確な立場があって。それがキチッと担保されたという時でなければ、これは、こういう金銭的なもので起こった時にアメリカの人に言い続けたのですが、これは皆、日本国民のお金なんですよ、税金なんですよ。アメリカと同じように日本政府も国民に説明できないと、そのお金を出すわけにいかないんですね。従って、そこは日本政府としては民主国家として当然、そこをキチッとしない限り前に進めないというのははっきりしているのですが。ただ、トランプ大統領がこういうことを言えば言うほど、従って、我々が考えているいろいろな問題をテーブルに置いて、それを包括的に解決すると。それを私は段階的に進めるしかないと思いますよ、一挙にというのは不可能ですから、先ほども言いましたように。しかし、段階ごとに見合った対応をしていくのですけれども、私は最近考えているのは、制裁問題、制裁復帰条項、北がさぼったり、やらなかったりした時は自動的に制裁を戻すと。すなわち、もう1回、安保理を開いて中国、ロシアと相談しながらもう1回、安保理にしましょう…。やらないということが証明された段階で自動的に前の制裁に戻るというぐらいのものをつけて、確実にやるということが、その中に、拉致問題はもっと早く解決できますから、核の問題と違って。それは解決してもらわなければ困るのですけれども。核の問題に関しては、そういうふうなものを、これから米朝だけではなく関係国、日本も当然、入るべきだと思いますけれど、…が考えるべき、そういう段階ではないでしょうか」
松山キャスター
「ただ、現在、日本の中でちょっと懸念としてあるのは今回、トランプ大統領が金正恩委員長と会談するにあたって、非核化の方向性だけを出して、ある程度の妥協をして、北朝鮮が言うような、段階的・同時的措置に一部応じるような、制裁の解除ぐらいまで応じてしまう、そういうソフト路線に転じるのではないかという懸念があると思うのですけれども。それは日本としては断固、そこは…?」
宮本氏
「それは困りますよ、本当に。従って、先ほど言ったように、そういう段階的なところを決めるのだったら、申告をしていて、たとえば、これは各施設ですと、これは核・ミサイルはここにありますと、こう申告するわけですよ。それを国際機関が見に行くわけですね。しかし、アメリカだ、あるいはイギリスだと、情報機関を持っていますから、そういうところが調べた結果、他にもあったと。そういった時に、我々はさらに要求するわけですよ。その時に、ないなんて言われたのでは制裁は元に戻りますと。このメカニズムを、ロシア・中国も入れて合意しておかない限り、私は絶対前に進まないと思います」
松山キャスター
「一太さん、どうですか?たとえば、日米間で制裁の段階的解除みたいな話については絶対に、原則論として非核化が完全にできるまではやらないんだという、そこまできちんとすり合わせはできているものなのですか?」
山本議員
「いや、実はそこを私は一番懸念していまして。日本のスタンス…、今回、北朝鮮に対して最大の圧力を維持すべきだという国際世論は、かなり日本がつくったところがあるんですね。安倍総理があらゆる国際会議で言い、河野大臣が就任した直後のASEAN(東南アジア諸国連合)の会議でも言い、中東でも言い、こういうことはあまりなかった。本当に日本がかなり国際世論をつくるために貢献したのだと私は思うんです。特にトランプ大統領に、北朝鮮政策について影響力があるのは安倍総理だと思うので、だから、そこを最も実は警戒しているんですね。先ほど、手嶋さんがおっしゃった、日朝平壌宣言、気をつけなければいけないと、大変説得力のあるお言葉で。ここに拉致と書いてあるのかどうかは別として、最大の問題は、まず日本が経済力をやるための最大のネックは拉致問題をキチッと解決するということですが、ただ、あらためて、たとえば、日本が経済協力をした時のことを考えると、キチッと非核化の筋道がついていないと、確かに核開発・ミサイル開発に使われるという懸念があるので、ここの方向性をしっかりしなければいけないというのと。それとトランプ大統領は何度も言っていますよね。アメリカの政権も、それはICBMだけではなく、中距離以下のミサイルも全部、廃棄の、先ほど言った範囲に入ると言っているのですけれど。私はここをすごく心配していまして。なぜならIAEAのこれまでのいろいろな活動とか、手嶋さんがおっしゃった、私も何人か核廃棄というのか、核廃絶の専門家と言われる人に会ったのですけれども、核弾頭をとにかくまず解体することが1番のプライオリティなのですけれども、なかなかそれはやれないとすると、ICBMを解体するというのは、比較的、技術的に簡単なのだそうです。だから、これに最初に手をつけて、トランプ大統領としてはもしかしたらそれが運ばれるような映像があれば、それは中間選挙への影響は絶大ですよね。でも、長い長いCVIDのプロセスの中で中距離以下のミサイル入っていたとしても本当にここに網をかけられるのか。国際法的に、いわゆるミサイル開発を何か違法にするみたいな枠組みは、たぶんミサイル製造を止める枠組みはないんだと思うんですね。だって、イランの、考えてみたら、核合意の時に、確か核燃料サイクル関連の事業には相当厳しく、EU(欧州連合)プラス3でかけたのですけれども、イランがミサイルを別にしてくれと相当、主張したために切り離された、これがアメリカ議会の反発を呼び、トランプ大統領が今回イランの合意から離脱した理由ですね。だから、ICBMで手を打つことはないと言っているのですけれど、よほどここに気をつけなければいけないと思います」
松山キャスター
「安倍総理は日本が経済支援する話については、こういうことも言っているのですけれど。『北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くこともできる。我が国も日朝平壌宣言に基づいて不幸な過去を清算し、国交正常化し経済協力を行う用意があります』『拉致問題について最終的には日本と北朝鮮で直接協議していく。問題解決につながる首脳会談を行いたい』ということなのですけれども。手嶋さん、米朝の会談が行われる直前になって、アメリカは非核化の問題でポンペオ長官がCVID、完全な検証可能で不可逆な核廃棄というのを強く求めているということなのですけれど。その一方で、経済支援を行う用意があるということをかなりシグナルとして最近アメリカ側から発信されていると思うのですけれど、日本が考える経済協力の条件とアメリカが考えている経済支援、中国や日本も含めた経済支援の条件、若干ちょっと違っているのではないかなという印象があるのですけれども」
手嶋氏
「ええ、明らかに違うのですけど。一応、安倍さんはトランプさんのかなり重要な助言者の形、これは外交的な資産としては大きなものだと思いますよね。しかも、トランプ大統領はポンペオさんほど明確には、明確な非核化というものを言っていませんね。ここのところは、ニュアンスは出しているのだと思います。自分が交渉し、お土産をアメリカに持ち帰らなければいけないということなので、少し誘い水も出しているところがある。トランプ大統領に平仄を合わせて今月7日には日米首脳会談も行われましたから。従って、安倍さんとしては、本来ならば北朝鮮が核を廃棄するという道を歩むのであれば、と言いたいところですよね。これはアメリカ側から要請があったのかどうかわかりませんが、明らかにこれは少し曖昧な物言いをしているということになるんです。これは一方で、日本としては当座のところは拉致問題の解決という、安倍内閣にとって最優先課題ということに何としても突破口ということになるので、ここは意図的に批判を受けても、少し譲っているのだと読むことができるのだと思います。その結果そちらの方に道が開かれれば、今度、日本も応分の協力をしなければいけない。従って、『日朝平壌宣言に基づいて』と、これは、私は言うべきではないと思うのですけれど、このようなかつての、つまり、日朝両国の合意に基づいて不幸な過去を清算し、国交を正常化し、戦後補償の意味合いもあるのですけれど、経済協力を行うと言っているわけですね。ところが、『正しい道』というのは非核化だということにならなければ、日本の納税者は、山本さん、絶対に納得しませんよ。日本がこれほど厳しい経済情勢の中で、納税者がお金を出し、それが日本海側に跳ね返ってくる中距離核の資金に使われてしまうという懸念は現に大きいですよね。そのための経済協力など行うことはできないということになるんです。これは難しいですけれど、このようにして北朝鮮を誘い込むにしても最後は原則を譲るべきではないと」

外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏の提言:『非核化なくして資金協力なし』
手嶋氏
「成果というよりは課題なのかもしれませんけれど、非核化、明確な非核化なくして、関係国、特に日本からの資金協力なしということをアピールすべきだと思うんです。2002年の日朝平壌宣言の最大の問題点は、まさにちゃんとした非核化の道筋がなくて経済協力をと。そのこともあって、あれはアメリカが力づくで潰してきたという、新たに広島型の核弾頭の開発に手を染めているという情報を、言ってみれば突きつけて潰したという成果がありますけれども。今度は日本がトランプ大統領に対してはっきりものを言うべきだと思います」

宮本雄二 元駐中国大使の提言:『始まることは良いこと!?』
宮本氏
「『始まることは良いこと』だと書いたのですが。その前の状況は危機的だったんですよ。戦後いろいろありましたけれども、東アジアで安全保障と平和というものがこれだけ危機に瀕していると実感したことはございませんでしたから。それがここのフェーズに移ったという意味で、始まることは良いこと。しかし、結果がどうなるか、先ほど、皆で議論した通り、なかなか予断を許さないということですね。トランプ大統領にどういう考え方があるか、金正恩さんもどういう考え方があるかわかりませんが、国際社会のまともな人は皆、全力を尽くして、これが良い方向にもっていくというふうにあるべきですね。そうしないと他人様みたいに預けていて、もう1回、またああいう危機が起こったら、1番割を食うのは我々なんですね。本当に真剣に見守っていきたいと思います」

山本一太 自由民主党政務調査会長代理の提言:『日朝首脳会談への道筋』
山本議員
「非核化についてどこまで合意ができるのかというのはなかなかわかりませんけれども。少なくともこの米朝首脳会談が安倍総理にとって日朝首脳会談の追い風になるような、そういう結果を期待しています。それは、すなわち非核化についてもある程度の方針が出て、中距離以下の核・ミサイルについてもしっかりしたある程度の方向性が出て。加えて、拉致問題解決のどこまでのメドかはわかりませんけれど、少なくとも日朝首脳会談をやる価値があるところまでそういう道筋ができる会談になってほしいと思っています」
松山キャスター
「トランプ大統領は会って1分で前向きどうかがわかると言いましたが、まさにその瞬間、お互いの信頼関係がそこで築けるかがかなり重要になってきますね」
山本議員
「はい」