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2018年6月6日(水)
日大『悪質タックル』 大学スポーツの光と影

ゲスト

馳浩
元文部科学大臣 自由民主党衆議院議員
玉木正之
スポーツ評論家
安田秀一
株式会社ドーム代表取締役

日大『悪質タックル』問題 これまでの経緯と行方
斉藤キャスター
「日本大学のアメリカンフットボール部による悪質タックル問題から、選手と指導者の関係やスポーツ界の体質・構造など日本の学生スポーツのあり方について考えていきます。日大アメフト部の悪質タックル問題は大学のガバナンスが問われる事態へと発展しています。最近の動きがどうなっているかと言いますと、先月29日、関東学生アメリカンフットボール連盟は内田前監督と井上前コーチを除名処分にしました。これは処分の中で最も重くて永久追放に当たります。30日付では、内田前監督が日大の常務理事を辞任しました。翌日31日付、日大は事実関係を解明するため弁護士7人からなる第三者委員会を設置しました。安田さんに聞きます、昨年度まで法政大学アメフト部の総監督を務めていたということで、日大の内田前監督、井上前コーチとは面識はありましたか?」
安田氏
「井上前コーチはないですけど、内田さんはもちろん、あります、はい。だから、ここで喋るのも割かし怖いですよね」
馳議員
「どんな人だったの?」
安田氏
「怖い…。だから、たぶん馳さんが1番よくわかっていると思うのですけれども、縦社会だから、基本怖いんですよ」
馳議員
「こうやって…、3人で喋るような雰囲気ではないんだ?」
安田氏
「いや、馳さんも怖いので…、ハハハハ…」
馳議員
「前から知っている」
安田氏
「1番いけないのが、儒教の文化、現在、時代に相当合わなくなっちゃっている、長幼の序みたいなみたいな考え方とか、そういう世界観がありますよね」
松山キャスター
「今回の件、テレビで放送されるようになって、どう感じましたか?」
玉木氏
「ああ、出たかという感じですよね」
松山キャスター
「こういう文化というのは、いろいろなところで見え隠れしていた?」
玉木氏
「いや、見え隠れどころか、僕は見てきましたね、取材を通して。それほど日大の前の篠竹監督は名コーチ、名監督と言われていましたけれども、目の前で杖をふるってバンバン殴っているのを見たことがあります」
馳議員
「それは誰を?選手を?」
玉木氏
「選手を。それは別に普通、一般の人が見ていますよ。それこそ高校野球でも、近距離から硬球を投げて、ぶつけていた、名監督と呼ばれた人もいるんですよね、私自身は原稿を書く人間として、いったいなぜそういうものが起こるのかというのを1回考えたことがあるんです。スポーツというものに対する理解がまったく進まない時に日本では武道の伝統というのがあったんですよね。武道というのはどうしても年寄りの方が上なんですよね。要するに…」
松山キャスター
「長幼の序みたいな?」
玉木氏
「ええ。そもそも稽古というのは、あれは古きを学ぶと読みますから。要するに、古い方が偉い、長幼の序で、年寄りの方が偉いというのがスポーツの世界でも全部下りてきていて、それで、とにかくスポーツの現場では、結論というか、はっきり言うと合理性が1番なんですよね。相手を上まわるために何をするかという理屈なの。ところが、それに対して、そういうことを述べることを頭から禁じているというのが現在の体育教育なんですよね」
安田氏
「軍隊のカルチャーもありますよね」
松山キャスター
「軍隊の鍛錬みたいなものの流れが残っているということですか?」
安田氏
「僕らの時代は、そう、逆に、水も飲めませんでしたから」
松山キャスター
「そういうのはありましたよね?」
安田氏
「そう」
松山キャスター
「馳さんに聞きますけれども、今回出てきたような問題、こういう体質というか、その体育会系の体質みたいなのがクローズアップされていますけれども…」
馳議員
「うん」
松山キャスター
「これは日大アメフト部だから特有のものとして出てきた問題なのか、あるいはもっと普遍的に?」
馳議員
「いやいや。私が言うのも失礼ですけれど、日本レスリング協会も体質としては同じかもしれませんよね。つまり、まさかそんなことはないだろうと思っていることが、事実を明らかにしていくと信じられないようなことがドンドン出てきて、栄強化本部長と伊調さんとの間で、いわゆるパワハラと認定される事案が4つも、5つも出てきたわけではないですか。従ってある部分、上意下達と言うのかな、上の人が言ったことは下の人は聞くものだという文化があって、それは日大アメフト部においても残念ながら反則タックルを行ったあの選手は残念ながら自分を使ってほしいがためにルールを破ること、1番やってはいけないことなのに、それを犯してしまったと。その背景という部分では大学スポーツの1番悪い部分が今回表に出てきてしまった。加えて、もう1つ、大学は課外活動であるから、体育会・運動部の活動は別物だという認識が経営者側にあって。従って、後手後手を踏んでしまったと。報道というのは別に事案を見て、1つ、1つ事実を積み重ねて、報道されているでしょう。ところが、いや、関係ないよと。日大の教務や学部のことと体育会は、アレは課外活動だろう、俺達とは関係ないという認識があるから、いまだにおそらく田中理事長が自分に関係のないことなので、という認識があるのではないかと思われます」

選手と指導者の関係
斉藤キャスター
「先月29日に出された日本大学アメフト部選手一同の声明文には『監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまった』『監督やコーチとの間や、選手間のコミュニケーションも十分ではなかった』としています」
松山キャスター
「馳さんはどうですか?選手側と指導者側とのコミュニケーション不足みたいな部分ついては?」
馳議員
「もしかしたら団体スポーツと、我々レスリングのような個人競技とはちょっと違う部分があるのかもしれませんが。基本的に言えば、監督・コーチと指導者は、選手のコンディショニングを確認し、相手チームの状況も確認し、戦略を立てて、アドバイスをして、フィールドに出たら、マットに上がったら、あとは自分達が判断して戦うと、こういうものだと思うのですが。その時に、まさしく宮川選手が言っていたように、目的に従わざるを得ないような恐怖支配があったとしか思えないですね。従って、今後のことを考えれば、コミュニケーションが十分とれる、選手の意思が反映されるような空気づくりというのが最初に大事だと思います。だから、そのために知識・教養、アカデミックな部分というものを持ち合わせていないと、この人はチャンピオン・チームだったから、オリンピックの金メダリストだったから、だから、偉いんだ、指導者だという、まだ見方があると思うんですよ。そこにもメスを入れていく必要があると思いますね」
松山キャスター
「先ほど、馳さんがチラッと今回の日大アメフトの話と合わせて、女子レスリングの話をされましたけれど、それもちょっとここでおさらいしておきたいと思うのですけれども」
斉藤キャスター
「女子レスリングにおけるパワハラ問題も大きな問題になりましたよね。第三者委員会がパワハラと認定した主な内容がこちらなのですが。2010年2月、当時の栄強化本部長、栄氏の指導から離れた伊調選手に対して『よく俺の前でレスリングできるな』などと発言。同年5月には広州アジア大会の代表に関して本人への説明もなく伊調選手を外しました。さらには9月、モスクワ世界選手権の時にホテルで田南部コーチに『伊調の指導をするな』と発言したということです」
馳議員
「大事なところが1つ。伊調さんも田南部コーチも、そう言われた、やられた栄さんに対しても、また私ども理事会に対してもものを言える空気・環境になかったということが、我々はまず1番反省しなければいけないポイントだと思っています。同時にそういった情報が私ども役員のもと、あるいは監督・指導者の中で情報の共有ができなかったというのも今回の私どもの反省です」
斉藤キャスター
「伊調さんはずっと我慢してきたという認識なのですか?」
馳議員
「1番、伊調さんがショックだったのは『よく俺の前でレスリングができるな』と言われたことは、いまだに引っかかっているんですよ。それはなぜかと言うと、それは栄さんを頼って志學館大学で高校生の頃から大学生と練習をして、世界一にもなり、感謝をしているわけですよ。しかし、自分のレスリングの可能性を高めるためにお母さんも一緒になって、東京行って練習拠点を変えますからと言って、ちゃんとお詫びというか、仁義を切りにいっているんですよ、名古屋まで。にもかかわらず、そういう、いわゆる栄さんからの発言に対して、正直すごく心を痛めて、それがいまだに引きずっているということなんです。それに残念ながら気がつかなかった我々、情報が得られなかった我々役員にも責任があるということです」
松山キャスター
「指導者とある意味、選手とのパワーバランスの問題だと思うのですが、指導者が絶対的には上の立場に立ってしまうという構図から、こういうこと起きると思うのですが、今回の日大の件と重なる点はあると思いますか?」
馳議員
「うん、あると思います。日常的に、選手の意見・考えというものを引き出し、聞いて何かを決めるという文化にしておかないと、どうしても、おそらく内田さんは怖いのでしょう?」
安田氏
「怖いですね…」
馳議員
「そういう、そういう空気中になっちゃうんです」
安田氏
「馳さんのおっしゃっている文化とか、感覚、これはあるのですけれども、実は結局、ガバナンスなんですよ。要するに、そういう体制を行わないようにしなければいけないですね。何かと言うと結局、栄監督は理事でオリンピック選手を選考する立場ですよ。では、栄監督を監督する人は誰なんだという話ですね。そういう立場にいると、たとえば、僕は、栄さんの話はわからないけれども、たとえば、僕らみたいなスポーツメーカーが、たとえば、こういう商品を使ってほしいから接待にいくとか、いろいろな、たとえば、要するに、ここの理事の方々のガバナンスをする仕組みが現在ないですね。結局、一般財団法人、社団法人、任意団体だから、そこの法律がないですよ。なので、実際アメリカにはと『テッド・スティーブンス・オリンピック・アマチュア法』というのがあって、これによって全部、スポーツ団体というのは定義されているんです。理事の数も決まっています。倫理規定も決まっています、給与規定も決まっています。それに基づいて全部、協議団体というのがある。だから、そういうものがちゃんとないと、要するに、もちろん、文化もあるのだけれども、まずルールでちゃんと決めていかないと、というところで…」
馳議員
「もう1つだけ、そうおっしゃられているので…。実は平成25年の内閣府による公益法人のガバナンス改革で、随分と規約もつくって、おっしゃるような、苦情受付とか、いろいろ規約も細かくできたんです。ところが今回、あらためて見直すことになりました。そうすると、残念ながら規約通りに運営がなされていない。私達も十分にそれを理解してやっていなかったし、伝えていなかったと。現場の監督やコーチ、またナショナルチームの選手達に何かあれば言えるんだよということがあるにもかかわらず、十分に伝えきれていなかったというのは反省の点です」
安田氏
「ただ、オリンピック、たとえば、東京オリンピックがせっかくあるわけですよ。だから、法整備を僕はするべきだと思うんですね。別に公益財団法人というのはスポーツ団体に向けた法人ではないですよ。公益で、たとえば、NPO(特定非営利活動法人)でも何でも公益財団法人をとれるわけであって。オリンピック選手、オリンピックというのは、たとえば、国からも補助金が入るわけですね。だから、国がもうちょっとしっかり管理・監督する法整備をしないと、結局のところ、そこを属人的な管理・監督になってしまうというのはスポーツ団体独特の話なので」

学生スポーツの『根性論』
斉藤キャスター
「関東学生アメリカンフットボール連盟の規律委員会の調査結果によりますと、内田前監督は、見込んだ選手を全員の前で名指しして酷評、『結果を出さなければ干すぞ』と圧力をかけたと。ひたすら厳しい練習を課していました。精神的に追い込んでさらにがんばらせる指導スタイルを好んだとしていて、その指導法の対象になったことを選手たちは『ハマる』と呼んでいたそうなんですね。実際に経験した選手からは異口同音に地獄だったと述べていたということなのですが。『ハマって』いても耐え抜いて結果を出した選手の中には『今となってはあれもいい経験でした』という証言もありました。玉木さんはこの指導方法はどう評価されますか?」
玉木氏
「まったく評価しないです。すごく古臭い、まったくスポーツと呼べないことで。それに内田監督時代に、十何年、20年ぶりですか、甲子園ボウルに勝ったということを言われていますけれども、あれは良い選手が集まったんです。スカウト活動を1年間されて、その良い選手を連れてきた立命館大学のコーチであるとか、青学のコーチであるところが入って優勝したことであって。別にこの『ハマる』とか、根性論で優勝したわけではないですよ。織田幹雄さんとか、古橋廣之進さんとか、それから吉岡隆徳さんとか、皆、全然根性論と違いますよ、昔の人でも。世界レベルの活躍をした人は、根性論で勝っている人なんていないですよ」
松山キャスター
「馳さん、どうですか?アメフトの世界ではこういうことが他にあるのではないかという気が僕はするのですけれども」
馳議員
「いや、どんなスポーツにもあると思います、これは1点目。もう1つの間違うポイント、優勝したからいいではないかと、これで全てが見逃されてきたということを我々は見直さなければいけないと思いますね」
玉木氏
「勝利至上主義ってあるではないですか。あの時に至上というのが何よりも素晴らしいという意味ですよね。でも、スポーツというのは、勝利は目的に戦わなければいけないし、それは勝利目的主義と言うほうが正しいというのは、早稲田大学の先生も言っておられるんです。だから、勝利至上主義というのは勝ったらとにかく何よりも素晴らしいという、そんな理屈はスポーツにはないですよね」
馳議員
「そんな価値観はないですよね」
玉木氏
「ないですよね」
馳議員
「ましてご存知のようにIOC(国際オリンピック委員会)の倫理規定でもメダルの数を数えることは禁止するのですから」
安田氏
「たとえば、1番強い部活と言ったらどこかと言うと帝京のラグビーと青学の駅伝ですよ。ここはもう完全に…、岩出監督は、僕は普段も懇意にさせてもらっているのですけれど、彼らはもう本当に1年生をいかに生き生きとさせるか、めちゃくちゃ合理的なのだけれど。その1年生を奴隷みたいな形にしていると1年間、4分の1、25%の時間を奴隷で過ごすわけですよね。この期間をちゃんと強化すればどれだけ強くなるか、全然違うわけです、実力が。だから、そういうように普通に本当に勝とうと思ったら、そんなハメたり、下級生をこき使ったりすることは絶対にないですよね」
斉藤キャスター
「たとえば、厳しい指導をしてその受け止め手が次はがんばるぞという期待を持ちながらがんばれるのか、恐怖に怯えてしまうのか、そこはどうやって?」
安田氏
「それは人によるのではないですか」
馳議員
「厳しい指導の内容にもよりますよね?」
安田氏
「そうですね、人によると思います」
馳議員
「つまり、科学的な情報戦略を持って、わかりやすく、こう、こう、こうだから、こういう厳しい練習するという説得力、説明能力がないと、説明がなければ、なぜそんなことしなければいけないのと」

大学と運動部の関係
松山キャスター
「今回の日大の件でもう1つ問題になっているのが、いわゆるスポーツ日大という形で、いわゆる広告塔としての役割をそのチームが果たしているということがありますよね。それについてちょっとまとめてみたのですけれども…」
斉藤キャスター
「1940年の創部以来、フェニックス、不死鳥という、チームを持つ日大アメフト部が成し遂げてきた実績なのですが、ライスボウル、日本選手権で4回優勝しています。『甲子園ボウル』、学生日本一、21回優勝、同点の優勝を含んでいます。関東学生リーグでは33回目の優勝と。日大アメフトは伝統校として輝かしい成績を残している状態ですよね」
松山キャスター
「こういった日大が、いわゆるスポーツを前面に押し出すことによって、大学全体のイメージアップをはかるという戦略をずっととってきたわけですけれど。安田さん、日大アメフト部のケースを見て、広告塔の役割として、すごく期待を背負わされていた側面というのはあるのでしょうか?」
安田氏
「いや、当然だと思いますね。ただ、日本の大学の場合は結局、経営が、今回も理事長がいて、学長がいてみたいな、大学の私学の経営はかなり複雑で、宗教系の学校だとここにさらに宗教団体のトップの方が入られ、さらに、体育会は体育会で任意団体の集まりの交流会的な、体育会のまた集まりがあったとか…」
馳議員
「親睦団体みたいなものですよね?」
安田氏
「そうなんです。誰がどういうふうにして、このスポーツを、たとえば、大学のものに使うかというのが実ははっきりしていないです。日大の場合は理事長の先生が相撲部で、その下の内田さんがアメフト部だから、スポーツをやろうよというところがかなりポッと決まって、そうなったかと思うのですけれども。その反面、大学がちゃんとやるとした場合には会計をまず入れなければいけないのだけれど、大学の中に。会計は別というこの仕組みになっちゃっているというところで、おそらく調子の良い時は使うけれども、調子が悪くなった、実はあまり良くなかったら、責任はとりませんというような状態でもあってという、ここは痛しかゆしの状態だと思いますよ」
松山キャスター
「玉木さんはどうですか?大学が知名度アップも含めてだと思うのですが、こういう形で良い選手をたくさん集め、広告塔的にこのチームを使っていくという」
玉木氏
「ナンセンスですね。ナンセンスとしか言いようがないです。と言うのは、大学というのは何するところですか?勉強をするところでしょう。そうしたらスポーツ日大と言うならば、スポーツの理論をいろいろ考えて、それを発表する人が出てきてもいいのではないですか。それはライスボウルで優勝するのもいいと思いますよ。でも、もう一方で、オリンピックはこうあるべきだとか、日本のスポーツはこうあるべきだという、論文とか、本とかをドンドン出してほしいですよね。それを僕は日大関係で見たことがないですよ」
松山キャスター
「一方で、広告塔としての役割も1つのやり方の問題ではないかという意見もあると思うのですけれども?」
玉木氏
「いや、やり方…、もちろん、そうですけれども」
松山キャスター
「それによってスポーツが活性化するという…」
玉木氏
「アメリカで言うなら、スタンフォード大学の関係者だけでメダルを獲っている、オリンピックでね。それは北京大会の時は日本の国と同じぐらいとっているんです。それはスポーツもやっている。でも、研究もすごいですよ。だから、スポーツに対する、学ぶとスポーツを教えるということをやっているというのは、残念ながら、日本大学では僕は聞いたことがないです」

大学スポーツ界の改革案 『日本版NCAA』
斉藤キャスター
「さて、日大アメフト部の悪質タックル問題をめぐっては加害者の学生が1人で会見を行ったあとに監督やコーチ、学長が会見を行うなどガバナンスのあり方が大きな問題になりました。そのような中、注目されているのが、スポーツ庁が来春設立を目指している『日本版NCAA』。どういうものかと言いますと、これまでは野球やアメフト、陸上競技など競技ごとにそれぞれの学連が統括していて、横のつながりや連携・共通したルールがありませんでした。この『日本版NCAA』というのは競技団体や大学に加盟してもらって大学や協議を横断して統括する組織を設けようというものです。アメリカの大学スポーツや選手を横断的に統括サポートする全米大学体育協会、NCAAを手本にしているということです」
馳議員
「たまたま2年前の3月、私が大臣をさせていただいている時に、大学スポーツのあり方についての指針を懇話会と一緒につくったんですよ。それは何かと言うと、まさしく学校には安全配慮義務があると。私は知っているつもりですけれど、大学の体育会は、大学当局と体育会に対して十分な関係性がとられていないと。まさしく課外活動でしょうと。それはおかしいではないか。大学に所属し、大学の体育会の一員である以上、そこで何が行われているか、どこを使っているか、それから、指導者と学生の関係、また、スカウトの問題、また、学連を通じた協議制の問題、そういったものを、基本的には、大学のガバナンスのもとで動かしていく。加えて、横の連携で、学連の横の連携をとりながら、パイを大きくし、基本的には保険ですよ。学生に万が一の時があった時の保険。もう1つは、卒業したあとに、スポーツしかしていませんでした、というのではなくて、きちんと文武両道で単位の取得についても管理をしっかり大学側はすべきではないかと。そこまで踏まえて育てていく必要があるのではないかと。もう1つは、言葉が悪いのかもしれないけれども、稼いで配る。つまり、大学スポーツももっと稼いでいいではないか。その分を施設整備、また、そのネットワーク整備などに、十分に使えるようにして、かかわる指導者とか、トレーナーなどをプロ化していかないと、現在ほとんどがボランティアでやっているんですよ。ボランティアというのは、聞こえは良いかもしれませんが、責任の所在はどうするんだということです、万が一あった時の。そういったところを全体的に整備する必要があるのではないかということで、実態の把握から始めて、2016年8月には中間報告を出して、年末には報告を出している。で、今現在、来年からスタートするにあたってのいろいろな協議会をつくっているという段階にあるということです。概略ですけれど」
松山キャスター
「現在の時点で、既に日本版NCAAがアメリカ並みに仕上がっていたとしたら、今回の日大のアメフトのケースみたいなものは起きなかった?」
玉木氏
「これに対してはすぐに上から、調査が下りて、それで罰金、いろいろなことが出ると思いますね。これはアメリカで同じ事件が起こっていたら、罰金、莫大な罰金ですよ。アメリカと同じ組織ができないとは言え。ただ、現在できていたらという時で、たとえば、それこそ箱根駅伝に対して、各大学、20大学が出ますけれども、1大学につき200万円払われているんですね。だから、20大学で4000万円ですね。そうしたら、テレビ局からの放映権料はたぶん2億円以上ですよね。これはいったいどうなっているのかということを全部きちんと出してほしいと思いますね」
松山キャスター
「安田さんは、日本版NCAA推進をいろいろと陰でやっている、表でもやっていると思うのですけれども、どういった部分が1番の改善点だと考えますか?」
安田氏
「ちょっと玉木さんにおっしゃっていただいた、たとえば、箱根駅伝の話、相当、パンドラの箱みたいな感じではないけれど。本当に、たとえば、放映権だって、たとえば、アメリカのNCAAというのは何かと言うと放映権に関しても一括で管理して競売にかけるんですね。なので、たとえば、FOXとESPNだとどちらが高いのだというところで。たとえば、4億円というレベルではないぐらいの収益を得られると。それをキチッと分配する、こういう仕組みなのですけれども。ただ、問題は、この日本版NCAAに書いてあるのですけれど、本来はまず、この運動部というのがここの中に、先ほど、馳さんがおっしゃっていたみたいな、これがまず基本ですよ。これが今度は集まってこうなるんですね」
馳議員
「そうなんです」
安田氏
「大学が集まって、大学の意志でやるんですよ。なので、先ほど言っていたもしNCAAがあったら、ああいうタックルはどうなるのだという話になってくると、まずそういうことが起こらない仕組みなんです。なぜかと言うと、大学同士でルールを決めるからなんですよ」
松山キャスター
「なるほど」
安田氏
「要するに、たとえば、僕が監督として代表としてNCAAボードメンバー入っているから、たとえば、10人いた時に、内田監督が1人いたとした場合、内田さんだけそういうことはできないです。だけど、現在ここに分かれちゃっているから、このガバニングの強弱でそういうことが起こっちゃう。たとえば、レスリング協会、ちょっと申し訳ないけれども、これは栄さんがここにもいて、ここにもいて、ここにもいちゃったわけですよ。要するに、協会にもいたし、大学にもいたし、チームにいたし。さらに上の理事にもいた、みたいなところで。そういうふうになっちゃったりする形があるから、こうなる。なので、まず大学が部活をしっかりと管理して、大学同士が集まって決めると。もう1つちょっと重要なポイントなのだけれども。現在、アメリカンフットボールの中で実はこういう動きを、アメリカンフットボールのチームでやるよということで。実は一部校、16校あるのですけれども、15チームの監督が集まって監督会というのをやっているんですよ。ポイントは何かと言うと、16校あるのに15校ですよ。これは内田さんだけ来られなかったんですよね。だから、要するに、ちゃんと皆でルールを決めようよとなった時に、そこに何となく入りづらいわけです。だから、それは、僕は内田さんの悪口を言いたいわけではなくて。NCAAというのは大学の集まりだから、ちゃんとそうすると自分もただ一票を投じる1人のボードメンバーだから、たとえば、そういう権力みたいなものとか、たとえば、怖いからとか、威圧とか、そういうものが使えなくなるんですよね。なので、一応たぶん、内田さんだけは何となくその威厳を保ちたいからなのか、僕はわからないけれども、出てこられなかった」
松山キャスター
「あと現在、安田さんが話していた、日本版NCAA、各大学から代表がNCAAに入っているという話がありましたけれども、そうなると、各大学の中に運動部を管轄するような新たな組織…」
馳議員
「スポーツデパートメントという…」
松山キャスター
「そういうのが必要になりますよね?」
馳議員
「管轄が必要なんです」
松山キャスター
「ただ、実態としては、まだほとんどの大学にはそれはないですよね?」
安田氏
「そうですね。一応、箱をつくっている大学は、大体大とか、神奈川大学とか。現在、一応、僕は筑波大学の客員教授をやっているのですけれども、筑波大学が一応1番進んでいて、これは何かと言うと、会計と人事を部に入れるという、ここが肝なんですよ。だから、ただ単に管轄するのではなく、1部門にするから、たとえば、経済学部と同じように、アスレチックデパートメントというのがあって。教授を同じように監督を雇う。たとえば、教授が自分で黒板のチョークを買うとしたら学校に請求するみたいに野球のボールを買うのだとしたら、大学側に請求をすると、この仕組みをつくっていって。要するに、部費みたいなものをゼロの形にしていくというのが本来の形。筑波大学は、すぐ一朝一夕にはできないので、多少時間はかかるのだけれども、一応そこの方向性で現在走り出しているというのが…」
松山キャスター
「来年春にもスタートする方向で調整されると思いますけれども。ただ現在の段階でスポーツ庁が中心に組織をつくろうとしているということは…」
安田氏
「はい」
松山キャスター
「それを管轄するところは、文部科学省ということになるわけですか?」
安田氏
「本来は大学が中心になって、自主的な組織でなければ、本来ダメなんです」
松山キャスター
「馳さん、どうですか?日本として最初にスタートするところとしては」
馳議員
「私が指示を出したというか、大臣としてお願いしたのは、高等教育局長とスポーツ庁と合体して、今現在の大学スポーツの実態というのをまず明らかにしようと。これでは選手を、学生を守れないよねと。また、しっかり学問を修めて、卒業していくという、勉強の方も十分できないねと。スケジュールに追われていたり、平日に公式戦があったりするというのは、これはあり得ないよねと。従って、高等教育局とスポーツ庁において。大学自体がスポーツデパートメント、スポーツにかかわる部局をしっかり整えて、その下に運動部を置いて、そこで各大学の代表者が集まって日本版NCAAをつくることによってルールをつくろうよと、保険をしっかりとやろうと。就職もちゃんとできるように勉強もさせようよという、ある意味では、文武両道の当たり前のことを組織として、システムとしてやるべきだよねと。だから、それ以上、法律をつくるというレベルではなくて、そういう枠組みの中で、自主的にやってもらいたいと。ここは甘いのかもしれませんけれども、できるところから手挙げ方式でもいいから、とにかくスタートさせようではないか。そうしないと、現在のままではダメだという感覚ですね」
松山キャスター
「そうなると、アメリカのNCAAでよく言われるのは、商業主義に走り過ぎているのではないかという批判も一部でありますけれど。商業という部分にはそんなにポイントを置いていなくて、まずは共通のルールづくりみたいなものを行っていく組織というのを念頭に置いている?」
馳議員
「ルールづくりが1つと商業ベースも必要だと思っています。各大学、たとえば、早稲田大学はどこかのメーカーとつなぐとか、東京大学はどこかのメーカーをスポンサーにしてやると、やってもらっていいです。しかし、それで稼いだ分を施設整備であったり、システムの維持であったり、そういったこと、ネットワーク維持であったり、そういったことにちゃんと使う、見えるようにして。コンプライアンスもありガバナンスも効かせて使って…、透明性をもって使ってもらえるようにしてくださいということです」

成長産業化・商業化の是非
斉藤キャスター
「日本版NCAAが手本にするアメリカのNCAAというのは、莫大な収益を上げる組織としても知られています。直近1年間の収益ですけれども、およそ10億4500万ドル、これは日本円にしておよそ1150億円ということです。主な収入源はテレビ放映権がおよそ78%、試合のチケット収入がおよそ12%を占めています。その収益はそれぞれの競技のリーグを目指す、リーグを指すカンファレンスを通じて各大学に配分されているということです。安田さんに聞きますが、日本版NCAAも莫大な収益を上げられる可能性というのはあるのでしょうか?」
安田氏
「そうですね。実は1000億ではなくて、実はバスケットボールのいわゆるマーチ・マッドネスと言われている、3月に行われる大学のトーナメントの収益だけですよ」
松山キャスター
「そうなのですか?」
安田氏
「ええ。それだけがNCAAの収益として計上されるんです。なのでフットボールは別です。これはカンファレンスが持っているんですよ。なので、全部入れると1兆円と言われているんですね」
松山キャスター
「そんなに大きいのですか?」
安田氏
「めちゃめちゃデカいです。1兆円規模の、大学スポーツだけで1兆円規模の市場。日本のスポーツ市場がだいたい5兆円…、4兆円から5兆円と言われているので、もう大学スポーツだけでそれだけの規模があると。メジャーリーグもだいたい1兆円ぐらいなので、全然すごい金額を稼いでいる。でも、その配分がすごくフェアです。これはなぜかというと大学の集まりだからですよ。興行権は、NCAAの1番のポイントはホーム&アウェーで開催するんですね。なので、大学で自分の大学がミシガン大学だったら、ミシガン大学で試合をやるわけですよ。そうすると、ミシガン大学は100%興行収入を得られるんですね。アウェーの時はゼロ。だけども、ホームでとにかくお客さんを呼んで、盛り上げたいからということで、いろいろな仕かけをしたり、投資をしたり。あとは学生の自分の大学へのロイヤリティを高めるという、この効果が1番でかいです」
松山キャスター
「ミシガン大学だって5万人ぐらい入るスタジアムを持ってますよね?」
安田氏
「11万人」
松山キャスター
「11万人なのですか?」
安田氏
「そういうような、大学にとってすごく大きな、要するに、カレッジライフを楽しむための、応援とか、それに参画するみたいなことも、1つの大学のキャンパスライフの大きな魅力なんですね」
馳議員
「地域を巻き込んじゃっているんですよね」
安田氏
「そうですね。全部、はい…」
松山キャスター
「玉木さん、日本版NCAAの場合は、そこまではなかなか商業ベースに乗らないと思うのですけれども」
玉木氏
「いや、そこまでということを言ってしまうと、前に進まないので。何か方法はないかと考えた時に、たとえば、日本で人気のあるのは野球ですよ。そうしたらプロ野球が生まれる前は六大学野球が、1番人気があって全試合満員だったわけですよね。ただし、その時に長嶋茂雄という人が出て、観客をプロに持っていったという意見もあるのだけど、満員の人気のあった六大学野球で、商売をしようという意識がまったく…」
馳議員
「なかった」
玉木氏
「なかった。代わりにどんなことが出てきたかと言うと、六大学野球の良さを言って、他の大学野球との差別化をするわけですよ。私達はエリートだったという」
松山キャスター
「それで孤立していった?」
玉木氏
「孤立した。ラグビーもそうですね。昔は大学ラグビーと言えば、サッカーよりも満員になっていたわけですよ。現在、若い人に、日本の冬のスポーツと言えば、日本はラグビーの方がサッカーより上だったんだよと言っても、えっ、嘘?と言われるぐらいに、Jリーグができて変わっちゃったわけですよね。そうしたら、大学のスポーツをどうするかという発想がまるでなかった。でも、お客さんをそれだけ集めた過去があるわけですね。これは何とかすればできるだろうと」
松山キャスター
「馳さん、どうですか?」
馳議員
「いや、私は、最初から広告代理店に入ってもらって、大学スポーツのこの審議会を初めたんですよ。つまり、言葉は悪いですけれども、本当に金を稼ぐと。稼いだら、それを還元する、収益を還元する、していく。そこに新たな価値を生み出していく。また、広報に関して言えば、今やSNSもあれば、地上波もあればということで。ネットもあれば。十分に、伝えることはできるツールはある。それをどうパッケージ化して提供するのかということで。これまではそれがバラバラに行われていたわけであって、そこをしっかりと商品となるようなものとすることによって、最終的にはそれは学生がケガをした時とか、また、大学の施設整備とか。また、トレーナーのように、海外では中学校・高校で普通にトレーナーを雇っていますからね。我が国ではトレーナーすら雇っていないではないですか。よっぽどのサッカーとか、ラグビーのチームでなければ」
安田氏
「結局、興行権を学連が持っているから発達しないんですよ。そこに尽きます。興行権をちゃんと大学が持てば、うまみがわかるので、あっ、こんなに儲かるんでって。大学、現在は日本の私学は収益を上げるのにすごく必死ですから」
松山キャスター
「それこそ、良い指導者をある程度収益にも還元する形で雇う…」
玉木氏
「…自分達のやる試合でどれだけ儲けるかという…」
安田氏
「そう。現在お金を儲けられないから、大学がそれを推進する理由がないんです」
玉木氏
「でも、大学だけではなく、社会人でもあるんですよね、それが。バレーボール協会とか」
安田氏
「全部の協会が現在、主宰をしちゃっているというところに問題の根源がある」

安田秀一 株式会社ドーム代表取締役の提言:『キラキラした笑顔』
安田氏
「要するに、青春時代です、18歳から22歳。1番人間が成長を自分で感じられて、お酒も法律で飲めるようになる、恋愛もするかもしれない、いろいろな、人生の分岐点のこの4年間に、どれだけキラキラした笑顔をつくれるのか。こういう大学であるべきだと思うし…」
馳議員
「安田さんは現在でもキラキラしている…」
安田氏
「裏では苦労しているのですけれども、すみません、ありがとうございます」

スポーツ評論家 玉木正之氏の提言:『体育から知育・徳育を伴うスポーツへ』
玉木氏
「『体育から知育・徳育を伴うスポーツへ』。要するに、体育をスポーツと考えている限りスポーツの発展はないですよ。それに体育会系は勉強しなくていいというような、ことを言っている人がいるのだけれども、私も大学で教壇に立っていますけれど、日本の学生、特にスポーツ系は勉強しなさ過ぎますね。大学に行っていない人間がこんなことを言うのも失礼ですけれども、大学生は勉強した方がいいですよ」
松山キャスター
「勉強とスポーツと両立をはかる?」
玉木氏
「はい」

馳浩 元文部科学大臣の提言:『インティグリティ 公平性 公正性』
馳議員
「スポーツマンシップは、インディグリティ。公平で、公正な社会。インティグリティという精神を大学スポーツで培ってほしいと思います」
松山キャスター
「公平で、公正でなければならない?」
馳議員
「はい」