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2018年6月4日(月)
検証!トランプリスク 日本の景気に負の連鎖

ゲスト

甘利明
元経済再生担当大臣 自由民主党衆議員議員
早川英男
元日本銀行理事
浜矩子
同志社大学大学院ビジネス研究科教授

世界『貿易戦争』突入か トランプリスクと日本経済
竹内キャスター
「先週末に行われたG7、主要7か国財務大臣・中央銀行総裁会議では、アメリカの輸入制限措置をめぐり、アメリカとその他の6か国の間に亀裂が広がりました。議長総括でアメリカを除く6か国の総意として『アメリカが課した関税措置が、開かれた貿易や世界経済の信頼性を損なうとして、参加国は懸念を示した』とアメリカを名指しで非難する異例の事態となり。一方、トランプ大統領はツイッターで『巨額貿易赤字があるのに、貿易戦争に負けるわけにはいかない』と投稿。果たして、このまま貿易戦争に突入してしまうのか、日本経済にどんな影響があるのか、日本の景気リスクを徹底検証します。ゲストの早川さんはトランプリスクとしてこちらの3つを挙げています。まず『貿易摩擦』から話を聞いていきたいと思います。トランプ大統領がこれまでに打ち出している関税の引き上げですが、主な関税引き上げ策として、鉄鋼・アルミの輸入制限として鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課すことを決定しました。中国に対して自動車や航空機、半導体といったハイテク分野の商品1300品目に対し関税を25%に引き上げると表明していましたが現在、米中の間で協議が行われています。さらに自動車や自動車部品の輸入制限として25%の関税を課すことを検討しています。早川さん、このトランプ大統領の手法についてどのように見ていますか?」
早川氏
「挙げられた3つの中で言うと、鉄鋼・アルミはやり方は良くないですけれども、では、本当に影響が大きいかというと、それほどではないです。問題は、日本にとって、まずは中国のハイテク製品を狙い撃ちにした追加制裁であって、これが本当に行われると中国への影響も大きいですけれども、実際には中国で全てつくられているわけではなくて、日本とか、韓国とか、その他の東南アジアの国々から部品とか、素材が供給されて中国でアセンブリされて、送られてくるわけですから、事実上、東アジア全体に影響が出てくるので、ここがどうなっていくか。本当は知的財産権の侵害というのは、おっしゃる通りではあるのだけれども、本当にそれを直したいのだったら、こんなやり方ではなくて、アメリカはTPPに留まって中国に圧力をかけるべきだったと思うのですけれど。それを言ってもなかなかトランプさんには通じませんね」
松山キャスター
「甘利さん、先日行われたG7の財務大臣・中央銀行総裁会議でも、構図としてはG6、プラス1みたいな形でアメリカの関税政策に対するすごい批判が各国から出たと。この状況をどう捉えていますか?」
甘利議員
「まあ、皆、トランプさんに困って…」
松山キャスター
「一言目は困っているんですよね」
甘利議員
「とにかく普通の国なら皆で無視して干し上げればいいのですけど、世界最強の国のトップですから、そういうことにはいかないわけで付き合わなければならないわけです。トランプさんの発想がすごくわかりやいといえば、わかりやすいでしょう。貿易赤字をモノづくり赤字という簡単な構図。モノづくりでプラスマイナスゼロにしていくのだと。経済構造はサービスの部分が多くなったら投資、知財の権益とか、収益とか、非常に複雑になっているんです。しかも、電子商取引は国をまたいでいろいろやりとりすると。その中ですごく古典的なモノづくりだけにフォーカスを絞って、それは、アメリカはいつの話ということをやっていらっしゃるわけですね。それが、自分の選挙基盤がモノづくりに携わっている人達が多いと、しかも、かなり疲弊している。そこを助けるということが、赤字の解消にもつながるし、中間選挙にも良いんだと凝り固まっておられるわけですよ。誰かが言って、わかったと、現在の貿易・経済構造と違うよね、と理解してくださらないので、だから、皆、困っているんです」
松山キャスター
鉄鋼・アルミは、それほど日本のシェアが大きいわけではないので、それほど大きい影響を受けないという話もありましたが…」
甘利議員
「ええ、受けないです」
松山キャスター
「ただ、続く、中国に対する実現知的財産権の侵害だと言って、1300項目にわたって出している。これはまだ実際に発動されるかどうかは今協議中ですけれども、これが発動されるとなると、かなりハイテク分野では日本も影響を受けてくるのではないかという気がするのですけれども」
甘利議員
「日本は、電子部品・デバイス、そういうような部分を輸出しているんですね。中国で組み立て製品として出荷しているわけです。中国から、アメリカにも製品としてiPhoneはいっぱいいっているはずですから。アメリカ人も困るのではないかと思うんです」
松山キャスター
「消費者も困っちゃいますよね。G7の中でもちょっと孤立感が出ているアメリカですけれど、そのアメリカに対して現在、最大の貿易相手国である中国がこんなコメントを出しています。『中国は、人民の日増しに高まるより良い生活へのニーズや質の高い経済発展の要求を満たすため、米国を含む世界各国からの輸入の増加させることを望んでいる。これは両国人民ないし全世界にも有益となる』ということで声明を出しているのですけれど。なんとなくここへ来て中国が世界の貿易のリード役というか、貿易ルールを守る旗手みたいな形で名乗り出ようとしているのではないかという見方もあるようですが、甘利さんはそれをどう見ていますか?」
甘利議員
「全然違います。中国は技術移転を強要し、ソフトプログラムのソースコード、設計図を開示要求し、いろいろ強要をしているわけです。知財管理もちゃんとしていない。だから、トランプ大統領のおっしゃっていることはその通りなんです。その通りなのに、なぜTPPを理解しないのですかと、不思議でしょうがないです。TPPに書いてあるんですよ、全部、そういうことをしちゃいけないというのは。だから、そういう日米でせっかくつくったルールを国際標準にしていけば、どこの国もそうだから、中国もそれに従わざるを得ないのに。それは関係ないとやっておいて、モノの制裁でそこが変わるというのも、それは力関係、貿易量から言って、中国の方が困ると思いますよ。ただ、そこにいくまでに相当、米中だけではなくて世界中が痛手を負いますよ、これは」
松山キャスター
「浜さん、中国がWTO(世界貿易機関)のルールに従え、みたいなことを言う時代がまさかくるとは思っていない人が多かったと思うのですが、こういう現在の状況をどう見ていますか?」
浜教授
「甘利さんが言われたことはごもっともだと思いますけれど。でも、中国のスタンスは昨年の頭ぐらいからずっとこういう感じですよね。片や、トランプさんになったというので、これはチャンスという感じで、習さんがグローバル時代のグローバル経済の我こそは旗手なりというこのポジショニングを折りに触れて前面に出そうとしている。その実態はさて置き、そういうスタンスを彼がとっているということは間違いないと思いますね。だから、それを、この見栄の切り方とどう付き合うかということが、難しいわけで。だから、トランプさんの一方でああいう感じだと、なんとなく、では、中国にお願いするかという感じになっちゃいますよね。だから、そこが難しいところで。ちなみに私は非常に違うスタンスをとっているようであるけど、この2人は結構共通するところがあって…」
松山キャスター
「習近平さんとトランプさん?」
浜教授
「そう、習近平さんとトランプさん、2人とも実は愛僕主義者だと思うんですね。愛僕主義の僕は、僕ちゃんの僕ですけれども。僕ちゃんが点数を稼ぎたい、僕ちゃん、僕ちゃんが好きという、これで凝り固まっている同士がポジショニングを競っているという姿ですから、すごくやりにくい状況ですよね」

トランプリスクと日本の自動車
竹内キャスター
「アメリカの貿易収支を見てみますと対中国の赤字が突出していますが、自動車やその部品について見てみますとメキシコや日本、欧州などが上位を占めています。甘利さん、これまでは中国を標的としてきたアメリカの通商政策なのですが、ターゲットが変わったと言いますか、範囲が広まったというような印象を受けるのですが」
甘利議員
「赤字を詰めていく具体的な策を示せということにドンドンなってきているんです。これまでは包括的な…」
松山キャスター
「少額で、貿易赤字を減らすと…」
甘利議員
「うん、要するに、全体の考え方とか、方向性とか、そういうことでわかった、そうしようということでしたけれども、だんだん中間選挙は大統領への信任だとホワイトハウスは言っているわけですよね。それに向けて具体的な、言ったことの手形を落としていくフェーズに入っていますから、具体的な項目を出していかなければいけないと。そういう中で、おそらく赤字のリストを見て、上からこれがある、これがあるとおっしゃっていったんだと思うんですね。ただ、日本からの部品の輸出というのはアメリカでつくる車への供給ですから、こっちの部品供給が止まる、あるいは高くなったら向こうが高くなるんですよ。だから、アメリカの消費者が損をするんですよね。ただ、そうですよと言っても、ああ、そうかと、わかったとは絶対おっしゃらないですよ。そこが難しいところです。常に交渉がなかなかできないタイプの人だから」
松山キャスター
「早川さんは、アメリカが自動車に対しても関税という話を持ち出してきていると、どう受け止めていますか?」
早川氏
「いや、甘利さんおっしゃった通りであって、明らかにアメリカの消費者のためにもならないので、普通で考えると、たぶんこれはブラフだと思うんですよ。ただ、トランプさんに限って言うと、だから、大丈夫、実際にはやらないと言い切れないところが怖いところですね。勢いがついちゃうと、本当にやっちゃうかもしれないというのが心配なところです」
松山キャスター
「実際に日本の自動車の生産状況をグラフにまとめてあるのですけれど、アメリカでの現地生産、青いグラフで示していますけれども、かなりの量に及んでいると。一方、日本からアメリカ向けの輸出として日本から送っているもの、そういうことは多くないと。比較するとかなり数量としては比率が少ないのですけれども。それでも部品も含めてですから、甘利さんがおっしゃったようにアメリカで生産しているメーカーでも日本部品を使ってるものも多いと」
早川氏
「そうです、うん」
松山キャスター
「そう考えると、経済論理的には破綻していると言うか、まったく意味をなさない関税引き上げのような気がするのですけれども」
早川氏
「そう思います。これは、日本だけではないですからね。同じことがドイツ車についても言えるし、韓国車についても言えるわけで、そのシェアを全部足すと相当大きなシェアになってくる。結果的にアメリカの消費者が車を買うのに高いお金を払わなければいけなくなるわけで、決していいことではないわけですけれども。トランプさんがある種、感情的に反応する部分もあるし、それから、中間選挙で具体的に中西部の大事な州を獲るためには必要だと思っちゃうと、やりかねないというのは怖いところですね」
松山キャスター
「浜さん、このトランプ政権の自動車へに対する関税措置、本心として出していて検討中ということですけれども、どう考えますか?」
浜教授
「論評に値しないというか、何とも言いようがないという面もありますけれど…」
松山キャスター
「あまりはっきりしないですよね、アメリカの利益が?」
浜教授
「うん、いや、だから、アメリカの実質としての利益と言うより、トランプさんの愛僕的利益としてあくまでも考えているということだと思いますね」
松山キャスター
「僕ちゃんが好き?」
浜教授
「僕ちゃんが点数を稼ぎたいの、僕ちゃんのお友達が困らないようにしたいのと言うので。別にアメリカの消費者だって、ある意味で敵にまわす用意もあるというような感じだと。要するに、僕ちゃんの快進撃を阻むの者は皆、敵という、すごく自分にとってわかりやすい単純な構図で動いている人ということだと思うんですよね。だから、日本に対して自動車輸出自主規制やれとかと言い出す可能性も、ちょっとなきにしもあらずだと思います。その時にどうするのかという問題はありますが。でも、いずれにせよ、これは日本がどうなるか、日本の自動車産業がどうかというのが大きいですけれど、こういう僕ちゃんがやることによって、それに対して皆、報復しだすということになりますと、これは本当の古典的、時代遅れな貿易戦争になっていってしまうので。貿易戦争は下手すれば本当の戦争にもつながるという代物でございますから、そう言うところにもしっかり目を配っていかなければいけないし、WTOあたりがもっとしっかりした構えを示してほしいもんだなということも思いますね」

日本経済『先行きリスク』
竹内キャスター
「トランプリスク、続いては、地政学リスクについて聞いていきます」
松山キャスター
「このグラフを見てもわかる通りトランプ政権によるエルサレムの首都認定とか、そのあとシリアへの空爆というのもありましたけれど。そのあとイラン核合意から離脱というのもありました。ずっと一貫して原油価格が上昇し続けているという状況ですよね。甘利さん、日本は、アメリカと安全保障上では100%一致しているということでずっとやっているわけですけれども。ただ一方で、イランの核合意からの離脱などの影響が実体経済として日本にかなり影響している状況になっていると。これは中東の不安定化という意味で、どういうふうにこれを見て…」
甘利議員
「うん、これは本当に残念なのですけれども。せっかく6か国で大変なところをまとめたわけですよね。イランの濃縮ウラン保有量を圧倒的に少なくし、しかも、設備廃棄させますから、実際に本当に核兵器をつくるのだという決意をしてもできあがるまでに1年やそこらかかるような仕組みにしたわけですよね。いきなり核疑惑をゼロとすれば、それは立派なのですけれど、だんだんこの枠組みで縮小させていくということに成功したわけですから、これは守ってほしかったですね。西部劇みたいな話ですから、1か、0か、どちらかということなんです。拳銃を突きつけて返事しろ、みたいなことはなかなかそう簡単にはいかないですから」
松山キャスター
「日本はこれまで独自のスタンスで、アメリカとは違う中立的で素敵な立場から、アプローチできるという利点があったと思うのですけれども?」
甘利議員
「イランと日本の関係というのは非常に良いですから」
松山キャスター
「そうですね」
甘利議員
「イランも日本を信用して、信頼して、日本もそういう感じでイランとは付き合っていますから。中東和平のうまい立ち位置はとれるんです、日本は。その立ち位置は維持していかなければいけないと思うんですね。アメリカと一緒になって、けしからんとやると、これは誰が仲介するんだという話になりますから。ここは日本がうまく仲介していくというような、立ち位置にいた方がいいと思います」
松山キャスター
「浜さんは、トランプ政権の対中東政策、かなり不安定だということで、世界経済の1つの地政学的リスクになるのではないかという話ですが」
浜教授
「そうですね。この地政学リスクというのは実は本当に怖いと思います。と言うのは、地政学的なバランスというのは総合的に広角視野でものを見ないと実現しませんよね。こっちでこう言ったら、こっちでこうなっちゃうなという、連鎖と広がりの関係を見ながら動いていかなければいけない。けれども、トランプ流にはそういう視野が一切ないですよね。すごく視野狭窄で、その瞬間は1つの、基本的に1度に1つのことしかたぶん考えられないのだと思うので。そういう人が舞台中央に躍り出たということの怖さは本当に深く受け止める必要があると思います。これをどうコントロールするのかというのは、ある意味では、ニンジンをぶら下げないとダメというか、それが効くと…、すごく…」
松山キャスター
「アメリカがほしがるようなニンジン?」
浜教授
「うん、アメリカが、というか、トランプさんが」
松山キャスター
「トランプさんが、個人が」
浜教授
「ノーベル平和賞の時にすごく反応していたんですよ」
松山キャスター
「ああ、反応していますね」
浜教授
「だから、あらゆるノーベル賞、ノーベル経済学賞はいかがですか。ここで2国間貿易バランスとかを言うのをやめていただくと経済学賞も差し上げることができますと。そういうような感じで、反応しそうなニンジンをぶら下げて連れて行くというのを考えるぐらいのことしかないのではないかという感じがしますね」
松山キャスター
「早川さん、ノーベル賞の話で言うと、まさにトランプ大統領は現在、北朝鮮問題でノーベル平和賞が獲れるのではないかみたいな、それに気を良くしているという話をよく聞きますけれども。北朝鮮問題、これは地政学的リスクとしてはどう捉えています?」
早川氏
「地政学的リスクとしては日本にとっては本当に近くの国ですから、非常に重要であるし、それから、拉致問題もあるので、そういう意味では、日本にとって非常に重要な問題ではあるわけです。ただ今日、経済という話題をしていると。経済の観点から言うと、本当に朝鮮半島でホットウォーが起こったら、これは大ごとですけれど、逆に言うと、北朝鮮問題というのは、日本経済への直接的影響というのはそれほど大きくない。むしろ経済への影響を言うのだったら先ほどの中東の方がどうしても大きく出てくるということですね」
松山キャスター
「6月12日と言われている米朝首脳会談、予定通り行われる方向ですが、そこで仮に非核化とか、体制保証みたいな話で話がうまく折り合えず、継続して協議するみたいな話で終わったとして、それでもそんなに経済的には大きな引き下げ要因にはならないと?」
早川氏
「いや、破局的な、だってこれまでもあれだけ酷いことがずっと起こっていても、別にそれで直ちに短期的な経済活動に大きな影響を与えるわけでないので。むしろあまり怪しげな合意をしてもらわない方が、要するに、中身が何も詰まらないのに、とりあえずやった、握手して平和賞ほしいみたいなのはちょっと困るなというのが正直なところですね」

『トランプ旋風』と米国経済
竹内キャスター
「続いて、トランプリスクの3つ目です。『アメリカ経済の減速懸念』ということなのですが、早川さん、これ具体的にどういったことなのですか?」
早川氏
「アメリカ経済が自律的に減速するということよりも実はトランプさんがやっているたくさんのことが…。これまでアメリカ経済がうまくいっている1つの大きな理由というのはFRB(連邦準備制度)がゆっくりと慎重に利上げしていて、それがうまくいっているというのが大きく影響していると思うんです。ところが、トランプさんがやっていることが結局、ある種FRBを急速な利上げに追い込んじゃうのではないかなということなんです。これは全部関係していて、たとえば、地政学的リスクで原油が上がれば当然、物価が上がるでしょうという話があるわけですし、それから、貿易摩擦にしても鉄鋼・アルミぐらいだったら大したことないですけれど、中国のハイテク製品、それどころか遂に自動車にまで手を出せば、これは物価が上がるんですよ。そうすれば、FRBは金利を上げざるを得ない。もう1つは、アメリカはマクロ政策であれだけ大きな減税をやりました。景気はその分良いわけですけれども、その分だけ、1つは税制赤字が大きくなることによる長期金利の上昇圧力とか、それから、景気が良ければ、その分だけ、実際現に物価が上がり始めていますので。そういう大規模減税、それから、関税、それから、イラン核合意からの撤退、全部、要するに、FRBの背中をもっと利上げしろと結果になっちゃうので。もし、FRBがこれまでのゆっくり慎重にというスタンスから、ある程度のスピード感を持って上げなければいけないことになると、それは私自身が前にこの番組で申し上げたけれども、アメリカの株価が高すぎると、多くの経済学者とか、当局が思っていますから、その中で、アメリカ…、FRBが利上げテンポを高めるということになると、それは結果的にアメリカ経済にはね返ってくるというストーリー。全部やっていることはそっちの方を指しているんですよ」
松山キャスター
「トランプ政権、トランプ大統領としては、財政出動とか、大型減税で景気の引き上げをはかろうとしていると、一方、FRBの方は緩やかな緩和縮小と金利の引き上げと慎重に行っているということなのですけれども、方向性としてはどうなのですか、同じ方向を向いてやっていることなのですか?」
早川氏
「ですから、方向は違っているわけですし」
松山キャスター
「そうですよね」
早川氏
「ただ、これまではFRBサイドが、イエレンさんの時代もパウエルさんになってからも、基本的に緩やかに金利を上げていくということで進めてきたことが、金融市場の安定とか、いろいろなところに影響してるのに。そもそも、これだけでも、もうちょっと利上げを急がなければいけないという要因になるわけですが。繰り返しになります。それに関税をかけるの、それから、原油価格が上がるのという、条件が重なってくれば、FRBサイドはもっと急がなければいけないということになってきて、それがアメリカ経済に悪影響を及ぼす可能性があるなと思っているわけです」
松山キャスター
「浜さんはアメリカ経済の減速懸念をどう受け止めていますか?」
浜教授
「これは下手をすれば米国経済の減速懸念どころか、崩壊懸念というふうに…な側面もあると思うんですよね。まさに現在、早川さんが言われていたような、減税はやるわ、貿易戦争を仕かけるわ、地政学リスクはばら撒くわ、ということをやっていると経済運営としても全然つじつまが合わなくなってきちゃうということが出てくるおそれがありますね。だから、減税で浮かれている部分はあると、これも主として富裕層が恩恵を被るということになるわけで。一方で、貧困層は年々物価が上がって生活が苦しいということになる。そういう二極分化状態が出てくると、金融政策はすごく難しくなるわけですよね。どっちを見て、この政策をやったらいいのと。引き締めによって苦しい人達にさらに追い打ちをかけるのか。でも、そういうことを心配していたらば、本当に減税バブルになってしまうかもしれないというので、すごく動きにくくなる。動きにくい中で、先行きが非常にわからなくなって、多くの懸念が出てきて、株が下がり、米国債も暴落し、ドル離れも進むというような、一気にいっちゃうという、こうハチャメチャ懸念ですね。それが実は根底にはそういうものがちょっと渦巻いているのではないかなという気がしますね」
松山キャスター
「FRBが行っている金利の引き上げ、あと量的緩和の縮小策、徐々に行っていますけれども。これは出口戦略としてはうまく着地できると考えますか?」
浜教授
「うまく着地できるかどうかは、そのどこまでハチャメチャになるか、パウエルさんもすごくさじ加減が苦しいところだと思います。考えていること、目指している方向感、どこに出口を設定しているかと言うと、とりあえずいずれもなかなかよく考えられたシナリオをFRBはつくっていると思います。だけど、このハチャメチャなそのシナリオを遂行不可能にするというおそれはあるわけで、そのへんの兼ね合い、非常に結構、緊迫感が高まってきていると思います」
松山キャスター
「懸念が当たってしまって、もう整合性が取れない、ちぐはぐになって、それが結果としてアメリカ景気の減速、減速どころか、浜さんは崩壊だって言いましたが、そういう事態になると当然、日本への影響が出てくるわけですよね。どのような影響が考えられますか?」
早川氏
「まずアレですよね。えーと、たとえば、米ドルも、おそらく金利を上げていくプロセスでは、いったん円安方向にいきますけれども。アメリカが良くないということになれば、当然大幅な円高になるし、それから、それ以前の問題として、先ほど申し上げているように、アメリカの長期金利がかなり高く上がっていくと、既にかなり高過ぎると思われているアメリカ株が大きな調整を起こす可能性がありますので。そうしたいくつかのルートを通じて、日本にとってもかなり大きなマイナスの影響…。それは、崩壊という話になるのか、もうちょっと小さな話かは状況によりますけれども。影響は無視できないと思いますね」

脱・マイナス成長の処方箋
竹内キャスター
「ここから今後の日本経済に待ち受けるリスクについて聞いていきます。2013年から堅調に推移してきたGDP(国内総生産)成長率ですが、2014年の春の消費増税による反動減や2015年の中国発の世界同時株安などの要因でマイナスに転じたものの、それ以降はプラス成長を続けてきました。ですが、先月発表された今年の1月から3月の成長率はマイナス0.2、2年ぶりのマイナス成長となりました。早川さんは今回マイナスに転じたということですが、日本の経済成長はこのまま失速していってしまうのでしょうか?」
早川氏
「たとえば、2017年度というのは結果的に1.5%成長にいったわけですけれども、日本のいわば実力と言うべき潜在成長率というのは1%内外しかないので。1.5%みたいなでき過ぎがあると、そのあとは、私はそんなに急に落ちるとは思いませんけれども、1.5%が2つ続くとか、政府とか、日銀の見通しだと2%近い高成長を18年度想定…そんなことはなくて、元の1%台前半に戻るぐらいのイメージで考えています。どうしても高い成長にならないのは根っこの成長潜在成長率が低いのが最大の原因であるし、もう1つは、企業が儲かって儲かってもなかなか賃金が上がらないというのが、消費につながっていかない影響があって。特に気をつけなければいけないのは、実は設備投資というのは、えーっと、8年かな、連続して増えているんですよ、伸びが鈍いんですけど。今年もたぶん増えるので、9年目かな、…とね、さすがに常識的に考えると伸び率は落ちてくるんですよ。そうすると、それを支えるためには個人消費がしっかりしてくれるか、さもなければ、そもそも根っこの生産性が上がって潜在成長率が上がれば、もうちょっと投資できるので。とにかく消費が増えるか、そういったものがなければ、潜在成長率が上がらないと、さすがに5年半続いてきた景気がまだまだ大丈夫と単純には言い切れない状況がだんだん近づいてきますよ」
竹内キャスター
「浜さんは、日本の経済成長の先行きはどのように見ていますか?」
浜教授
「現在の姿は人為的にかさ上げされてきた部分がはげ落ちて、実力が見えてきているという意味では、自然体として別に別にこんなものだろうという感じではありますが。でも、そこを、いや、そうではないのだと、もっと高い成長率を目指していかないといけないという政策判断が前面に出てくると、それに伴って、おっしゃっていた、労働生産性をもっと、もっと上げねばならぬというような話になってくると、これがまた国民窮乏化成長になってくると思うんですね。生産性を上げるということは、それだけ皆さん必死に尻をひっぱたかれて働かさせられる。限られた時間の中で最大効率を求めるというようなことで、どうしても成長率を上げるというふうな展開になっていくと、成長率は上がったけれども、誰もハッピーではないというようなことになっていくので。どういう姿の日本経済を目指していくかということとの関わりで言えば、そんなに潜在成長率も無理やりに引き上げるというのではない、だけど、うまくまわっている経済というものをどうつくり出していくかということが、これからの焦点になっていくと思うので。そっちの方に焦点が移っていくといいなと思いますが。当面あまりそれは期待できないので。なかなか無理やりに成長率を引き上げる政策が前面に出てくると、そのことに伴うバランスの崩れ具合というのが心配だなと思いますね」
松山キャスター
「甘利さんは、この経済成長、1月から3月期、若干落ち込んだということなのですけれども、来年10月には消費増税というものが予定されていると。そういう意味では、現在、日本の経済の成長、今後の成長をどう見ていますか?」
甘利議員
「長く続いたプラス成長が1‐3月で落ちたというのは年率換算で0.6%ですけれども、これには理由があって、天候不順の野菜の高騰と、それから、iPhone10が前押し上げた、その反動減です。4月の数字は小売統計でも相当良くなってきていますから、このまま失速するということではないと思います。そこで大事なことはこれまで潜在成長率の話が出ています。本来、人口が、労働力人口の世帯が、世代が四百数十万減っているにもかかわらず、投入労力量の量、250万人増えているんです。これは何かと言うと、そのうちの200万人は女性なんです。女性の労働参加率はアメリカより高いんですよ、今や。ここまでは人口が減っても、労働力を増やしたということができたんです。これから先、どうするのかということです。これ以上、労働投入量を増やすというのはなかなか難しいです。そこで何をするかと言うと、現在、政府が言っている、4次革命による5次社会、Society5.0と。これは何かと言うと、AI(人工知能)とか.ロボットをどうやって生産の現場に追い込んでいくか。そういうことが進んでいくと投入労働量がこれ以上拡大しなくても、同じ労働量でできる付加価値が何倍にもなっていく。そういうことを狙っていくしかないと思いますし、そういう方向に現在、向かっていると思います」

日銀『異次元緩和』の今後は
竹内キャスター
「日本経済の先行きについて聞いていきます。日銀の金融政策、異次元緩和によって日銀が保有する資産がどう変化してきたのかを見てみます。黒田総裁が就任した2013年4月からこの5年間で保有資産は2.5倍を超え、およそ550兆円にも上ります。その内訳は、大きなボリュームを占めているのが長期国債、最近ではこのETF、投資信託などの資産のボリュームが増えてきています。浜さんは日銀が日本のGDPに匹敵する資産を吸収しているということについてどのように考えていますか?」
浜教授
「国際市場においても、株式市場においても、日銀が非常に大きな存在になってしまっていると。中央銀行がこんな触り方をこの2つの市場においてするというのは実に異様な姿ですから、これは大問題だと思います。国際市場においても、株式市場においても日銀が許容する範囲でしか、価格が動かない。これは、こんなものはまともな経済ではないので、ほぼ統制経済ではないのという感じですよね。だから、これは何とかしていかなければいけないと思います。長期国債については、そうは言っても、次第に減らそうとしているのではないのという、この話もありますが。これはそういうことではなく、これは2016年9月から、この金融政策のターゲットが、目標が変わってきていて、長期国債の利回りをゼロ近傍に抑えるというのが目標になっているので、それがそこそこいってる分にはそんなに国債を買わなくていいだけの話であって。早々と出口に向かっているというふうには到底言えないと思うんですよね。それも然りながらこのETF、要は、投資信託を通じて株を6兆円、年間、というような規模で買っている。これは1機関投資家がこんな規模で株を買うと言うこと自体がちょっと驚くべきことですし、しかも、それが中央銀行であるというのは大問題だと思います。世界の中央銀行で株を買うということを基本的にしている、皆、しないですよね、基本的には。皆、そこは仮にやりたいと思っても遠慮をするという、あまりやりたいとも思わないでしょうけれども。ですから、非常にこの金融政策が異様な姿を呈している。これはもはや金融政策とは言えないのではないかと私は見ておりますね」
松山キャスター
「早川さんはどうですか?浜さんからはETFの日銀による買付はある種、異様な姿だと。株価と連動する投資信託を中央銀行が持っているのは若干、異様だということなのですけれども」
早川氏
「それは普通に考えたら異様でしょうね。現在、日銀がやっていることというのは、私の理解では、要するに、短期決戦から持久戦へ方針を転換したのだと。最初はもうどんな手を使ってでも短期間で2%の物価目標を実現するのだと、やっていたのだけれども、それがなかなかうまくいかないので、時間をかけてやるのだ、という方向におそらく2年ぐらい前から転換しつつあるのだと思います。ですから、先ほど、国債を買う金額が徐々に減って、買う金額が減ってきているのもそういうことであるし、つい先だって、2%達成する時期がいつですかと答えなくなっちゃったのも同じことだと思っていて。それ自体は無理に強引な金融緩和をやってみた、あるいはできもしないことに対して強気な発言だけ繰り返しているよりはずっとまともだと思うのですが。逆に言うと、持久戦というのは、金融緩和は長期化しますよね。長期化に伴う副作用みたいなことについてどう考えるのか。なし崩し的な持久戦から、そこのところをもう1回、ちゃんと整理しなければいけなくて。1つは、たとえば、金融機関の収益の悪化みたいなものも、2年間で終わるのだったらいいですけれども、ちょっと我慢してくださいですが、これが7年も8年も続くとなったら、これはかなり大きな問題になってくるし、今ほどの、ETFについても、これが短期間の話ならともかく、ずーっと買い続けていくと株価形成を歪める。それから、日銀が実質的に大株主になっちゃったら、コーポレートガバナンスとは何なのという話にもなる。最終的には、日銀が国債を大量に買い続けることによって財政規律に緩みが生じているでしょうという、そう言った、いわば…持久戦はいいのですけれども、では、長期になることに伴う問題とは何ですか。それに対してどう考えますかというのを本当ちゃんと発言しなければいけないと思いますよ」
甘利議員
「国債の保有規模がGDPと同じ、近いくらいなったと。世界の主要銀行は多いところで4割ぐらいですから、確かにその倍以上の規模だと。ただ発行済みの国債のうちの日銀保有は4割ぐらいですから、市場性は損なわれていないわけです。これ皆、日銀が買っちゃったら、市場がなくなっちゃうからエライことになりますけれど。50%は民間が持って、10%は外国勢が持っているというところですから、まだ市場性は確保されていると。これから先、具体的にどうするかと言うのは、あまり政府の人間が中央銀行の手法に介入するということは中央銀行の独立性から言って良いことではないですし、与党の役員もあまり細かいところに、注文をつけない方がいいと思うんです。我々は日銀を信頼して、やるべきこと、2%の物価安定目標に向かって努力をすると。我々政府・与党も何もしないのではなくて、その環境整備のために全力で政策を主導するということで、総理もやっていらっしゃるわけですから。日本の景気が回復してきているというのは歴然たる事実です。失業率や高卒・大卒の就職率ももう100%近いですから、98・何パーセントですから。現在、若い人達の自民党支持率が高いというのは、職があると、行きたいところにほぼ行けるということですから。それから、企業の収益も非常に良くなっています。ただ、我々からというか、私から言わせると、まずデフレを脱却するために環境整備をしたと、いろいろ無理無理と言われることもあります。それで好循環を取り戻すと。好循環というのは成長と分配の好循環です。賃金が上がれば、消費が伸びる。業績が伸びれば、また賃金も上げられると。そのために、相当な内部留保と言われるもの、内部留保と言われるうちの現預金というのが二百何十兆円ありますから、まだ伸びていますから、これがこの好循環に使われているかというと、まだ賃上げは弱いと思うんですね。そこはこの現預金の拡大に見合ったくらいはやってくれないと戻ってきませんよということだと思うんです」

浜矩子 同志社大学大学院ビジネス研究科教授の提言:『限りなくやさしき わかち合い経済』
浜教授
「『限りなくやさしき わかち合い経済』という方向性を目指すといいと思います。現在、日本の経済に必要なのは成長ではなくて分かち合いである。生産性を上げて成長率を上げましょうという路線でなく、現在、我々が手にしている豊かさを惜しみなく分かち合うという方向性でいければいいのではないかと思います」

早川英男 元日本銀行理事の提言:『まず賃金、次いで成長戦略』
早川氏
「『まず賃金、次いで成長戦略』と書いてあります。1つだけ申し上げておくのは、別に賃金が大事で、成長戦略があとでいいという話でなく、成長戦略は一生懸命やっても効果が出るには時間がかかりますから。まず速攻性である賃金から、成長戦略、この2つが重要だと思います」

甘利明 元経済再生担当大臣の提言:『イノベーションのエコシステム』
甘利議員
「『イノベーションのエコシステム』です。世界中の人が使うデジタルインフラ、Amazonとか、あるいはGoogleとか、Facebookとか、世界中の人が依存しているのは、アメリカ製、ないしは現在、中国製です。メイド・イン・ジャパンがありません。世界中の人が依存、使うような新しい仕組みを常に日本から間断なく輩出される、そういう体系をつくっていくということが今後何より重要だと思います」