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2018年5月25日(金)
衝撃『米朝会談中止』 安保情勢日米への影響

ゲスト

中谷元
元防衛大臣
ラリー・ウォーツェル
米陸軍戦略大学教授
古森義久
産経新聞ワシントン駐在客員特派員

『米朝会談中止』の衝撃 トランプ大統領の手紙
生野キャスター
「昨夜、トランプ大統領が米朝首脳会談をとりやめると発表、世界中に衝撃が広がっています。今夜はアメリカの軍事戦略の専門家を迎えて、米朝首脳会談中止の背景と背後に見え隠れする中国の思惑について緊急検証します。昨日ホワイトハウスが発表した米朝首脳会談の中止ですけれど、トランプ大統領が金正恩委員長に直接、手紙で会談中止の申し入れをするという異例の事態となりました。ウォーツェルさん、トランプ大統領の手紙の内容をどのように思われましたか?」
ウォーツェル教授
「最初に感じたことなのですが、口調が非常に丁寧ですよね。これは非常に重要なことだと思います。トランプ大統領が金正恩委員長に対して、自らの立場、国家元首として、国のトップとしてそういう態度を示したというのは重要なことだったと思います。ワシントンでもいくらか驚きがあったはずです。実際にアメリカと韓国の間で行われた演習に対する、いわゆる反発が非常に強かったということはワシントンにとっても驚きであった、それが原因になった部分もあると思います。ですから、おそらく大統領としてはこうしたある程度、口調は考えながらも特に非核化に関しては進展がみられないと考えた、それが中止の1番の理由だったと思います」
松山キャスター
「トランプ大統領、金正恩委員長宛てのこの手紙の中で敢えて『あなたは核戦力について語るけれども、アメリカが保有する核戦力は非常に威力があり強力だ、それが使われずに済むことを祈っている』という表現が入りました。敢えて軍事的脅威をちらつかせることで、北朝鮮に対してプレッシャーを与えて、何とか非核化を早期に実現させようという、そういう思いがあるということなのでしょうか?」
ウォーツェル教授
「これは私の考え方ですが、確かにそういう考えもあると思います。北朝鮮はアメリカに対して核の脅威を見せようとしています。ただ、金正恩委員長もこうした抑止力ということに関し、しっかり理解をしているはずです。トランプ大統領も何か脅しをかけるということより本当はやりたくないんだということを伝えている、そういうやりとりなのだと思います」
松山キャスター
「そういった中、北朝鮮の反応なのですけれども…」
生野キャスター
「はい。北朝鮮の金桂冠第1外務次官の談話として『想定外で遺憾』としながらも『トランプ大統領が首脳会談実現のため努力してきたことを内心高く評価してきた。いつでもどんな方式でも向かい合って問題を解いていく用意がある』と批判は影を潜めまして、対話継続の意思を示しています。古森さん、北朝鮮は今回の中止をどう受け止めたと見ていますか?」
古森氏
「困ったなという反応ではないかと思います。会談だけはまずできるのではないかと。そこで非核化に関しての米朝両国間の考え方の溝というのは厳然とあるわけだけど、それも何とか話し合っていけば、北朝鮮にとって都合の良い方に少し傾くのではないかという期待で首脳会談に臨もうとしたのではないかと思うんです。だから、ここでスパッと、一応スパッとトランプさんはやらないと言ったわけだから。それにちょっとびっくりして、いや、やりたいのだと。だから、私がびっくりしたのは、この北朝鮮の声明の速さ、それから内容の『いつでも、どんな方式でも』なんて、『向かい合って』とか。それから、アメリカの大統領が何かやってきたことに『評価して感謝する』なんて、普段言わないですよ。だから、そういうことを言い始めた。だから、北朝鮮は会談をやりたいんだなと。非核化…、とにかくアメリカにちょっと待ってもらわないと困っているんだという、困っちゃうんだなという、そういう実感を得ましたね」

『米朝会談中止』の背景
松山キャスター
「ウォーツェルさんは、この北朝鮮の反応をどう受け止めていますか?」
ウォーツェル教授
「北朝鮮の反応についてということですがおそらくこれまでと違った行動をとろうというふうに学習をしている、そういう最中かもしれません。以前はかなり強烈なプロパガンダで、他の国を言葉で攻撃をして、自分達の国の国民に自分達の強さを見せようというような態度をずっと北朝鮮はとってきました。たとえば、国連、北朝鮮の国連大使が国連で話をするような場合も以前はそうでした。しかしながら、個人としての外交レベルという点においては非常に紳士的な、そういう面もあるんですね。ですから、現在はこうした脅威をかけるような時期でない、外交的な態度に徹するべきだと判断したのではないでしょうか」
中谷議員
「この北朝鮮の言葉で『想定外で遺憾』というのがまさに北朝鮮の現在の考えでありまして。交渉ですから、何とかやっていけばいいということで。しかし、1週間も出てこない。悪口を言う、まさに度を過ぎたわけです。ですから、北朝鮮がちょっと見間違えて、アメリカの態度に対して、現在慌てて修正していますが。この影に中国がいるわけですから、現在、中国とどういう話をしてるのかわかりませんが。これはもう一度また話をしたいのだと、もうそれしかないのだということで。かなり今度のトランプ書簡というのは非常に大きな影響を与えているのではないでしょうか」

アメリカの対中戦略
生野キャスター
「さて、トランプ大統領は会談中止を発表する2日前、米朝首脳会談が延期になる可能性を示唆しながら、2度目の中朝首脳会談のあと北朝鮮側の態度が変わったと指摘しています。『中国に関しては気に入らない、気に入らない、気に入らない。習主席は世界クラスのポーカープレイヤーだ』と中国に対して不快感を露わにしました。ウォーツェルさん、アメリカは中国と北朝鮮が接近している現状をどう見ていたのでしょうか?」
ウォーツェル教授
「中国は全体として北朝鮮に対してあまり満足していない状況でした。すなわち十分なコントロールができなかったわけですね。しかし、いろいろなエネルギー、食料面で北朝鮮に援助を中国はしています。また、北朝鮮の経済がもっと発展してほしいと中国としては望んでいるわけです。共産党として、強い共産党を持ちながらもちゃんと機能する経済にしてほしいという中国側の思いがあります。また、1994年からこれまでの間、中国は対北朝鮮の交渉において最も重要なプレイヤーでした。6者協議でもそうでした。彼らが、中国が最も影響力が大きいということだったわけですが。むしろ影響と言うよりは操作をしていたわけですね、これまでは。習主席も今回非常に怒ったと思います。すなわちこの対話を、イニシアチブをスタートし、トランプ大統領がこのような動きを始めたことに対しては怒っていたと思います。韓国の文大統領に関しても、中国でどういうことが言われているかは詳しくはわかりませんが、しかし、中国と北朝鮮の間での話し合いで、金正恩さんの行動が変わったと思います」
中谷議員
「トランプ大統領が『世界クラスのポーカープレイヤー』と言ったことは中国にしてやられたという気持ちなんです。と言うのは、米中関係で経済問題があって、最初のトランプ氏の訪中の時に、この北朝鮮の問題は、中国、是非、関与してしっかりやってくれと。それと経済とリンクさせたような話をして、中国も一生懸命やっていたんですよ。ところが、昨年末に、非常に制裁が効いて、北朝鮮も弱気になって。ここで米朝の関係を維持したまま、今度は中国が反撃に出て、経済問題を言うなら、もう少ししっかりやれという関係で、北朝鮮と中国が非常に密接になったということで。そういう意味で、中国に失望したと言うか、裏切られて。1番大事な時に、何やっているんだということで、非常に苛立たしいように現在、思っているのではないでしょうか」
松山キャスター
「逆に中国と北朝鮮が接近することによって、アメリカが最大限の圧力と言って、経済政策をやりつつ軍事的な圧力ということもちらつかせてきたと思うのですけれども。軍事オプションというのは、中国が後ろ盾でいると北朝鮮に対して逆に行使がしにくくなるということはないのですか?」
中谷議員
「それは、アメリカはないと思います。非常にトランプさん自身は前のオバマ政権とは違って、やる時はやるのだということで、今回の交渉打ち切りもその1つですが。あらゆる選択肢を並べながら、いろいろなところを使いながらということですから。軍事オプションというのはずっと持ち続けているし、またそれをやれる政権だと私は思います」
古森氏
「なぜトランプさんが中国のやり方が気に入らないと言ったのか、なぜそれに合わせて北朝鮮のアメリカに対する態度が、いっぺんOKしたのが…。このへんは推測ですけれど、1番、金正恩さんが恐れているのは軍事攻撃だと。2度目の訪中なんかで、だから、中谷さんはアメリカは別に中国がどう思おうがあまり変えないという、私もその通りだと。アメリカに関してトランプ政権は、その北朝鮮に軍事攻撃をもしかけた場合に、中国との対決と言うか、衝突になるということはないと、いろいろな手を打っていますから。だから、アメリカの方はそれで変わらないと思うのだけれど。ただ、北朝鮮、金正恩さんは中国にすり寄るというか、仲良くすることを見せることによって自分に対する軍事攻撃の可能性、危険は減ったと思ったのではないかというのが私の推測なんですよ。だから、ちょっと強気に出てもいいのではないかと。それから、もう1つは、中国にとってのこの米朝接近というのは、非常に利用する…、1つは、トランプ政権が中国に対して非常に貿易問題からまず強いことを言ったと、今度は軍事問題で強いことを言い始めている。それを抑える1つの大きな切り札がこの北朝鮮問題で。トランプさんが習近平さんに頼むよと、何とかしてくれと言って、100日間の猶予を与えたとありましたよね、4月の米中首脳会談のあとに。それで結局、100日経ったけれども、何もやってくれなかったではないかとトランプさんが言ったと。だから、その状態が続いていて。だから、今度、また中国が北朝鮮問題で大きな役割を果たすんだよと言うと、アメリカに対しての1つのカードになると。ところが、だから、中国側…、アメリカ側の一部にもっとうがった見方があって、中国はアメリカの力がだんだん減ってきているということをとにかくプロパガンダで言いたいと。その証拠として使うのは、北朝鮮問題はアメリカ独力でできないではないかと。中国に助けを求めなければ、できないではないかということをいつまでも宣伝し続けると。だから、実際には何もしないわけですよ。中国の論理…。だから、一種の陰謀説みたいなのだけど。アメリカ衰退論を広めるために、中国は北朝鮮問題でアメリカに協力をするフリをすると。でも、本当の協力はしない、そんな感じですね」
松山キャスター
「それを解決できないアメリカというのを、世界中に晒しものみたいにするということするということですよね?」
古森氏
「そういうことですね」
松山キャスター
「そうした中で、アメリカと中国との間ではこんな動きもあるのですが、アメリカ国防総省が23日にアメリカ海軍が主催する環太平洋合同演習、リムパックに中国海軍に対して行っていた参加要請を取り消したということを明らかにしました。その理由の1つとしては南シナ海の軍事拠点化の動きを挙げているのですけれども。これはカナダやオーストラリアや日本なども参加する合同軍事演習ということなのですけれど、ウォーツェルさん、このタイミングでアメリカが中国海軍を招待しなかった。この背景をどう見ているのか?また、米朝首脳会談の中止のタイミングとちょうど同じ頃にこういうことが起きていると。このあたりはどう見ていますでしょうか?」
ウォーツェル教授
「中国を招待しなかった、また、中国を拒絶するということは、これは直接的には中国の南シナ海での活動・行動に関係があると思います。しかし、率直に申し上げて、個人的な私見ではありますが、中国は本来、リムパックに参加すべきではないわけです。この合同演習というのは、同盟軍、すなわち友好国同士の間で行うべきものでありまして。そういった中で私自身もこの議会の委員会で、貿易、中国との安全保障問題に関して私自身報告をする義務があるのですけれども、議会に対して。しかし、過去2年間の間、私どもは議会に対して中国をこの環太平洋合同演習に招待しないようにということを提言してきました。多くのいろいろな船舶、あるいは攻撃する、たとえば、船に関する、艦船に関する情報も入ってしまいます。また、中国はスパイ船も送り込んだりしているわけですね。従って、率直に申し上げて、中国はそもそも元からこのリムパックに参加するべきではないわけです」
中谷議員
「これは、オバマ政権の失策で、日米安保関係者は何で?ということを言っていましたが。今回この決定をしたというのは南沙諸島の中に中国の艦船とか、航空機とか、電波妨害装置とか、これは空から見ていますから、それを設置したということ。もう1つはこういったウッディー島、まったく手つかずだけれども、爆撃機、これを着陸させたと。ここで問題なのは、2015年の9月に習近平主席がアメリカへ行って、トランプ氏と最初の首脳会談の時に、南沙は軍事化しないと、基地もつくらないと、兵器も設置しないと約束しています」
松山キャスター
「しましたね」
中谷議員
「これは何だということで、明らかにこれは信義違反だということでこういった決定がされたのではないかと思います」

中国の軍事力と習主席
生野キャスター
「中国の軍事費を見てみますと年々増え続けていまして、20年で10倍以上伸びているのですけれど、中国の軍事力についてはウォーツェルさん、どのように見ていますか?」
ウォーツェル教授
「中国の軍事力に関しては、予算に必ずしも比例しないところもあると思いますね。アメリカの貿易赤字のような、そういう数字もあるわけですから。ただこれまでコソボの紛争、それから、第1次、第2次湾岸戦争を通じた調査の結果から考えられることなのですが、確かに軍事力は急速に伸びてきています。たとえば、7年、8年前というのは、中国独自のドクトリンがあるだけで、あまりこうした、アメリカのこともそれほど気にしていなかった、そういうような態度をとっていました。たとえば、戦争領域ということで、陸・海・空・宇宙、電子的な、いわゆるサイバーアタックなどという領域もあります。その中でこういう戦争領域というところに関しては全て現在では合同のオペレーションを行うようになっています。また、精密攻撃の機能も上げています。ミサイルも長距離・中距離・短距離、全て開発をしてきた。また、マイクロ波などの兵器など、高エネルギーの兵器も増やしています。ですから、軍事力は急速に伸びている」
松山キャスター
「習近平さんが国家主席になってから、軍事力増強という路線がかなり、もっと鮮明になってきたと思うのですけれど。これは過去の中国の政権に比べて何がどう違うのですか?その背景にはどういったことがあるのですか?」
ウォーツェル教授
「まず第1に言えることですが、中国の軍事力というのはいくつかの細部構造、たとえば、陸軍がこういうことをやって、海軍はこういうことをやってという形で、以前は協調がまったくなかったんですね。たとえば、通信だとか、あるいは衛星の兵器等での偵察などでの活用もあまり行われてきませんでした。でも、習主席が就任してから、そうした各部門での提携をより強力にしました。また、お互いに協力ができるように、また、地理的な統合も行っています。中国の司令官は、かつてはバラバラだったのが、それぞれ地域を統括するだけだったのが現在は組織も変わっています。アメリカのような形にはまだ完全にはなっていませんが、それぞれを戦区というような言い方をしています。つまりは、地理的にこうした、統合したような形で、たとえば、1つの戦区は日本、一部は台湾、また、ある戦区は南シナ海、また、ある戦区は太平洋、あるいは南アジア、インドなどに対峙するところというような形で。天安門事件が起こった頃では考えられないような組織編成も行っています」
松山キャスター
「古森さんはどうですか?習主席の時代になってから、中国の軍事路線というのは、変化というのは表れているものなのですか?」
古森氏
「はい。これは私、ワシントンでウォーツェルさんは取材相手でいろいろ教えてもらっているのですけれど。彼から聞いた話を含めて申し上げると、習近平さんのやっていることの特徴というのは、2つぐらいあると思うのだけれども。1つはウォーツェルさんが時々言っている、民軍融合という、シビルとミリタリーの間にフュージョンがあると、融合していると。これは、だから、日本で言っている文民統制の正反対の概念なわけですよ。民間の経済でも何でもとにかく軍事目的のためには総動員をしていこうという。この軍事的要素が非常に国の根幹の中で強いということ。それから、もう1つは、もっと根幹というか、もっと長期的に中国の夢とか、中国の復権という、国としての、あるいは国民・人民としての願望というか、長期の目標ですよね。これは、中国をまた復活させて、帝国時代か何かと同じようにするような。それをするためには、軍事手段なのだという。だから、一帯一路という日本では経済的な見地からしかほとんど見られないけれど、これもアメリカは、別にウォーツェルさんに限らず、アメリカの中国軍の軍事問題を研究している人達というのは、一帯一路というのは非常に軍事的要素が強いことだということを言っている。だから、これは先ほど、申し上げたように、全部が軍事に集まっている、あるいは国の全体の流れの中で軍事というものが拡散して支えているという。このへんは厳然たる習近平の時代の特徴だと思います」
松山キャスター
「ウォーツェルさんは、中国が抱える懸案事項と中国の脅威で、4つの大きな脅威というのを挙げていますけれども。この中で朝鮮半島、尖閣諸島、台湾、南シナ海、4つ挙げていますが、危機の度合いで言うと、朝鮮半島の次に尖閣諸島がきていると。尖閣諸島に関する懸念というのは相当重大な懸念があると考えていますか?」
ウォーツェル教授
「尖閣諸島に関しては非常に深刻な問題だと私は捉えています。いわゆる、こうしたより深刻な紛争にエスカレートする、そういう危険性をはらんでいるからです。特に中国としては、常にこうした近くに、こうした戦艦を置いておきたいと常に考えているはずです。南シナ海とは状況の違いが明らかにありますよね。尖閣諸島には日米安全保障条約の枠組みが適用されますから、アメリカも何かしなければいけない。それは中国もわかっているはずです」
松山キャスター
「中谷さん、いかがですか?ウォーツェルさん、尖閣諸島に対する懸念はかなり上位にランキングするという意見なのですけれども」
中谷議員
「位置的に沖縄と宮古島を抜けるルートの、まさにど真ん中にありますので。ここを抑えられるとレーダーを設置されて筒抜け、我が国の動きが筒抜けになってしまいます。また、台湾が非常に中国の、これからの最大の目標でありますけれど、こういったオペレーションをやるうえで、尖閣列島というのは非常に大事なところだと思います。これは我が国の固有の領土でありますので、しっかりこれは日本としては守るということはやっております」
松山キャスター
「古森さんはどう受け止めていますか?」
古森氏
「いや、私も尖閣諸島をめぐる危機というか、尖閣諸島での紛争がこの軍事衝突にエスカレートしていくという、これに対する懸念がアメリカの専門家の間ですごく強い。単なる個人のレベルではなく、たとえば、ランド研究所というところが非常に長大な報告書を研究で出して。これも尖閣をめぐる、日中だけでなく、米中の争いになるのではないかということが非常に具体的な、いつ、どんな形で攻めてくるかもしれないぞということまで書いて出してるわけです。それから、ウォーツェルさん自身がずっとリーダーとして活躍してきた、米中経済安保調査委員会、これも尖閣問題を取り上げて、実際にどういう…、軍事演習をするフリをしながら、侵攻してくるというようなとこまではっきり書いているし、日本の反応が私はもどかしいと。これほどまでに危機が目の前にあるのにもうちょっとなぜ国会で論じないのだということを感じるぐらいですね」

中国の対米戦略
生野キャスター
「ウォーツェルさんは中国の対米戦略についてどう見ていますか?」
ウォーツェル教授
「中国としては、アメリカをできるだけ遠くに置いておきたい。すなわち中国沿岸には近づけたくない。アメリカの、同盟軍を中国の沿岸には近づけたくないわけです。これはもちろん、やり方としては、弾道ミサイルをつくって、それらを艦船で用意をするということもありますが。しかし、それだけではなくて、先ほど、中谷さんがおっしゃったように、宮古海峡を非常に多く中国側はまわっています。空軍、海軍、海兵隊然りです。中国としてはそういった形でもし万が一アメリカと対峙しなければいけない時、日本と対峙しなければいけない時には、できるだけ侵入・介入を阻止するというものですね。従って、中国がアメリカに対して、アメリカと日本はアイランドチェーンの防衛をやっていく必要があるという意味です。すなわち中国が宮古海峡を通らないように阻止していく必要があります。それは対空、あるいは巡航ミサイル、ロケット攻撃も含めて、そういった形で多くのものを、海兵隊、あるいは水陸両用において一緒にこういった島々において現在、我々は演習するべきなんですね。そうすると中国に対する非常に強いメッセージを送ることができるはずです。何もこれは有料道路のお金を払って、有料道路を通るようなものではないわけですから」
中谷議員
「今日、自民党は防衛計画の大綱の提言を発表しました。この中に列島線防衛ということを打ち出しまして、日米で協力して、中国から空母とか、戦闘機がたくさん来ますけれど、どうやってこれを阻止するかということで、費用負荷という概念で、コスト・インポージングということで、日米が協力して、なるべく中国を消耗させるということで、より日米も緊密に協力するし、オーストラリアとか、東南アジアとか、そういう国々とも協力しましょうという概念を打ち出しました。こういった中国の量的膨張、また、質的な向上に対し、しっかりとした体制をとらなければいけないということは政府に提言したんですね」
生野キャスター
「一方で、中国の対米戦略についてはどう見ていますか?」
中谷議員
「これはA2/ADという言葉が20年前にありまして。これはアンチ・アクセス、エリア・ディナイアル。アンチ・アクセスというのは接近拒否。これは日米の接近を阻止するのだと。この太平洋の列島線を突破するために日米の協力を阻止しようと。それから、エリア・ディナイアルというのは領域拒否。これは太平洋の米軍の自由な活動を阻止するにはということで。着々とこの戦略に従って、量も戦術も充実させて、もはや第一列島線を突破しようとしているんですね。これに対してどう対応するかというのは日米で非常にガイドラインの見直しをしたり、安保法制の改正をしたり、日米がしっかり協力をするということに、日米が常に話し合いをしているということです」
松山キャスター
「中国の海洋進出に絡む話ですけれど、先ほどの第一列島線、第二列島線。中国は現在どういう段階で、どういうことをしようとしているのですか?」
中谷議員
「5年前の平成25年頃から、一段と活発になりまして。たとえば、空母の遼寧、これが海域に進出している。それから、中国空軍の爆撃機が戦闘パトロール飛行と称して、常時ここを飛行するという状況。それから、南シナ海は、先ほど言いましたように、巡航ミサイルとか、対空ミサイルとか、まさに列島線上に非常に戦力を強化してきておりますし、これからが大変なんですね。J-20という、最新鋭の戦闘機。これはF-22とか、F-35と対峙できるかどうかということですが、大量生産を始めています。地対地巡航ミサイル、それから、もっと恐ろしいのは空母キラーと呼ばれた、対艦弾道ミサイル、これも開発をしております。こういったものにどう対応するかということですが、目標は、台湾なんですね。台湾問題への対応、それから、独立、外国軍隊の独立支援、これを阻止するために能力を持ってそれを封じ込むということで、そういう意味で、目的と戦力を持って、着々と増強して、もはやこの第一列島線を突破して、第二列島線の間は、中国の活動エリアにしようということを目標にやっているんです、やっています」
松山キャスター
「ウォーツェルさん、中谷さんの話にもあったように中国は着々と海洋進出を進めようとしているという話ですけれども。今後、中国の脅威というのはどういう方向に向かっていくと思われますか?」
ウォーツェル教授
「おそらく日本もアメリカも中国に対しての優位性は維持はできると思っています。ただ、そのためには新たな兵器の開発が必要だと思うんですね。また、オペレーションの戦術も、お互いに考えていかなければいけないでしょう。特に巡航ミサイル、また、大陸間弾道弾などでの新たな防衛のやり方が必要でしょう。また、レーザー砲なども艦から発射されるような、戦艦から発射されるようなもの。また、レールガンのような形で非常に高速に対応できるものも必要だと思います。こうした新たな兵器の開発も必要だと思います。それ以外にも、たとえば、巡航…、また、弾道ミサイルの防衛に関して日本もアメリカもいろいろ考えています。また、潜水艦での戦闘ということに関してもいろいろ検討はしています。また、中国のこうした諜報活動に対する対策に関しては、宇宙、また、衛星などを使った、そういう防衛もあります。そういうところを進めていくことが重要ですね、中国に優位性を保つためには」

日本の安全保障戦略
生野キャスター
「日本の安全保障戦略についてですけれども。東アジア情勢の先行きが見えない中、日本の安全保障戦略というのはどのように見ていますか?」
ウォーツェル教授
「日本の戦略に関してですが昨日と今日、防衛省の方ともお話をさせていただきました。その話の中では中期的な5か年計画のお話もいただいております。これは私自身が評価をするということより、そういうお話をいただいたわけですが。そういう検討は行われているはずだと思います。ですから、私自身の考えとしてもう一度強調しておきたいのは、私どもとしても、こうした常設の合同タスクフォースというものが必要だと思います。合同のタスクフォース担当班をつくり、特定のこうした目的で、また、合同演習も常時行っていくことが必要だと思うんです。日本の自衛隊と、また、米軍との合同演習もさらに強化していく必要があると思います。アメリカがこういうところで合同と言っているのは、陸海空だけでなく、これは日本の自衛隊の全ての部門で合同ということを言っているんです。そうした本部を設けることも必要でしょう。本部を設けることでいろいろなこうした任務にも対応できると思います。潜水艦でのこうした防衛、弾道ミサイルでの防衛、そしてまたアイランドチェーンの防衛、それから、また、マイニングと、そういうことも含めて、いわゆる非戦闘領域でもいろいろな形の協力は可能なはずなんです。そういうことをもっともっと進めていくべきだと思います。アメリカも日本も、こうした法制度は非常に強いものがあります。ただ、お互いに合同でやる企画とか、そうした演習がまだまだ少ないと思います。もっと増やすべきでしょう」
松山キャスター
「日本が最近よく使う言葉としてはインド太平洋戦略、これはアメリカもトランプ政権がよく使う言葉ですけれども。こういった取り組みによって間接的に中国の脅威に対抗していくことが将来的には可能だと思われますか、ウォーツェルさん?」
ウォーツェル教授
「第1に言いたいことですが、安倍総理がこういうコンセプトを導入したのは2006年、2007年頃かと思いますが、非常にこれは大きな一歩になったと思っています。戦略として自由で開放的なシーラインのコミュニケーションを維持したい。パートナー諸国、また、同盟諸国としっかり連携をとっていきたい。インド、オーストラリア、アメリカ、日本とのこういう提携というのは非常に重要だと思います。インドの軍事力ということに関してはまだまだ私も懐疑的な部分があります。インド洋において十分に空軍や海軍を展開できる能力があるかどうかということはまだ議論の余地は残りますが。ただ、インドもとり込むというのは、考え方としてプラスにつながると思います。ここで重要な点というのはインドやその他4極の中に入っている国は全て中国との間のランドボーダー、こうした国境線でのいろいろな防衛の必要がある。ですから、合同でこうした南シナ海で歩調を合わせていくということ、お互いに寄港し、また、お互いに情報交換をする、そうした同盟国としての活動を拡張していく必要があると思います」
中谷議員
「これは、しかし、中国という国を特定した連合ではなくて…」
松山キャスター
「公式にはそうしたことは言っていないですよね?」
中谷議員
「ええ。自由で開かれたというのがキーワードですけれども。1つのその基本的価値の中に、海洋安全保障、自由に航行できる安全な海をつくろうというのがコンセプトになっていまして、こういったところで共同パトロールとか、災害の救援とか、それぞれの問題において国際公共財としての海、これを維持しましょうということですから。これに共鳴するなら中国も入ってきていいんです。我々が求めるのは公平で開かれた国際ルールに基づく海洋ということで。1国の、特定の国の覇権的な、そういうものではなくて、世界の自由な共同の地域をつくりましょうというのがコンセプトになっています」
松山キャスター
「古森さん、このインド太平洋戦略、安倍総理が最初に唱え、アメリカの政権もその言葉を最近多用するようになっていますけれども、実際こういったもので、政府としては公式にはもちろん、認めないのでしょうけれど、中国に対峙する勢力としてこういうものが機能していくのかどうか、将来的にどう見ていますか?」
古森氏
「機能していくだろうし、機能させるべきだと思いますよね。これまでの展開を見れば、インドという存在があって、これは、中国に対して非常に軍事面での懸念を深く深く抱いていると。しかも、歴史・伝統的にそうだということと。それから、民主主義国であるという。だから、インドとの連携を日本がはかることというのは、非常に必然性があるわけですね。と同時に、中国がインド洋にドンドン出てきて、軍事力を根底にした、この無法な活動も含めて、勢力圏をドンドン広げていると。だから、概念的にはインドを含めていくのはいいのではないですか。有志同盟ですよね。ただ、これは中谷さんに…、直接の抗議になるのか、抗議でもないけれども…」
松山キャスター
「なかなか言えない部分もあるのだと思いますけれども」
古森氏
「うん。だけど、中国は軍事力をつかって、自分達の政治的・経済的、あるいはその他諸々、歴史的な要求までを実現…、領土紛争は1番良い例で。軍事という要素が国のもう道具、インストルメントというのか、重大な道具になっているわけですよ。それを防ぐために、何も日本が中国と戦争すべきではないけれども。軍事ということには一切、日本は関わっちゃいけないような、それは憲法からの平和主義とかいろいろあるのだけど。これをいつまでも、いつまでも続けていると、それはドンドンこちらが後退していって、何も中国と戦争するわけではないけれど、世の中の現実で戦争を防ぐためには、もし戦争を仕かけられたら、それをはね返すだけの戦争能力があった方が平和を守りやすいんだという、この国際的な常識を受け入れるだけだから。それは憲法が絡んでくるし、もう少し戦後の国のあり方、安全保障ということをこの際、考える、前向きに考えるべきだと私は思っています」
中谷議員
「ただ反論として、途中に東南アジアとか、いろいろな国が入っていますので。あまり反中国の路線が強くなると、そういう国々は非常に怯え、こういうのに参加しなくなるんですね。そういうことでキーワードは国際社会の秩序ということ。そういうルールを守る国が参加しましょうということで。暗に特定の国を挙げるとなかなかうまくこれが力強く機能しないので、そういうことは1つ必要な面かなと」
古森氏
「だけど、中国が潜在的な脅威が日本に対してあるのだという場合に、中国と言っちゃいけないのですか?現在の日本国、安倍政権は?」
中谷議員
「…は、安倍政権は言っていないですね」
古森氏
「言わないのですか?」
中谷議員
「懸念とは言っていますけれども」
古森氏
「トランプ政権は堂々と、1つの声明に100回ぐらい中国と言いますよ」
中谷議員
「それは、アメリカは非常に…」
古森氏
「でも、同盟国ではないですか?脅威認識が全然違っていいのですか?」
中谷議員
「いや、事実は共通しております。ただ、アメリカもオバマ政権の時に一時期、揺らいだ時期がありますが、最近の中国の行動を見て、これではいけないということで、今年の当初にしっかりとした国家戦略というものを出しました。自民党もそういう意味で、政府に対してしっかりとした戦略のもとに安全保障を対峙するということで。こういった中国に対しても、しっかりと対応できるような、日米の連携ができるような構想を示しております」

ラリー・ウォーツェル 米陸軍戦略大学教授の提言:『強い同盟を維持しながら共同作戦を 中国を抑止するための高度兵器開発』
ウォーツェル教授
「最初に大切なのは、非常に強力な同盟関係をつくるということです。これがこの地域の安全保障になる、中国への抑止力にもなるからです。一緒に日米で合同演習をして、それによって全てのものを使って中国への抑止をするということが大事です。中国がいろいろな兵器を開発しているからこそ、我々も先端兵器で中国への抑止力になることが必要です」

中谷元 元防衛大臣の提言:『安全保障 言うべきこと うまいつきあい 遠慮しない 大人の関係』
中谷議員
「『あいうえお』で。まず『あ』の安全保障、これはいかなる事態も、あらゆる事態にしっかり対応できる安全保障。『い』は、言うべきこと、これをしっかり言うこと。『う』は、うまくつきあっていくと。『え』は、遠慮しない仲になると。『お』は、大人の関係を構築する、そういう成熟した関係を。日本はそういうのをリードしていかなければいけないと思います」

古森義久 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の提言:『中国の言葉ではなく行動を見よ』
古森氏
「『中国の言葉ではなく行動を見よ』と。現在、中国は日本に一種の微笑外交で、いろいろ手を差し伸べてきていますけれども。これは私から言わせるとアメリカとの関係が非常に険しくなってきているので、日本をこっち側につけようという。そのためにいろいろな平和的台頭とか、中国の夢とか、あるいは一帯一路とか、いろいろな、戦略的互恵関係と言うけれど、尖閣で何をやっているか、南シナ海で何をやっているか、行動を見ましょうということです」