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2018年5月24日(木)
『非核化』の現実味は 北朝鮮の信頼度と本音

ゲスト

猪口邦子
参議院外交防衛委員会理事 自由民主党参議院議員 元軍縮大使
森本敏
防衛大臣政策参与 元防衛大臣
古川勝久
元国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員

北朝鮮 核実験場『廃棄』 真の狙いと『非核化』の行方
生野キャスター
「北朝鮮北東部にある豊渓里の核実験場の爆破解体が行われたことを、海外メディアがつい先ほど伝えました。史上初の米朝首脳会談を間近に控えて、北朝鮮の姿勢を国際社会にアピールしましたが、非核化をめぐるアメリカと北朝鮮の溝は深いままです。果たして北朝鮮の非核化はどこまで可能なのか。専門家の皆さんとそのプロセスとリスクを徹底検証します。北朝鮮が海外メディアを招いて廃棄の模様を公表した、豊渓里の核実験場ですが、北東部に位置しています。北朝鮮は初めて行いました2006年から昨年の2017年まで、合わせて6回の核実験をこちらで行っていまして、また、北朝鮮の全ての核実験はここで行われたとされています。この写真が豊渓里の核実験場の衛星写真ですが、拡大しますとこちらです。このように、南側坑道入口、西側坑道入口、こちらが北側坑道入口とみられているのですけれども。今回、海外メディアはこちらの観測台から取材したのではとみられています。どこをどう爆破したかは、詳細は明らかになっていないのですけれども、森本さん、今後どういう形で完全に廃棄に向かっていくのでしょうか?」
森本氏
「この坑道を廃棄しても、実際にもし意図かあれば、別の坑道を掘るということできるので。これまで使った坑道を廃棄したからといって、非核化に直接つながるような、軍事的な効果はあまり感じられないのですが。かつこの坑道全てが、現在からも利用可能かどうかということはわからないですね。この数回の…坑道というのは、この北側坑道を主として使ったと言われているので…」
松山キャスター
「2回目から6回目までは北側を使ったと言われていますね」
森本氏
「その通りです。だから、全部を破壊してみたところで、申し上げたように本当に新しくまた実験を再開しようと思ったら、別のところに坑道を掘れるということなので。これは政治的なデモンストレーションと言いますか、どれだけ深刻に考えているかということを、主としてメディアを通じて政策上の広報をするという効果を狙ってやったものではないのかと思います」
松山キャスター
「古川さん、どう見ていますか?今回メディアのみを招待して、今回、爆破を取材させているという状況のようですけれども…」
古川氏
「そうですね。基本的にこれまでの北朝鮮の交渉パターンからすれば、これだけで普通、何か見返りを要求してきた。制裁を解除しろとか、金を出せとか、そういう交渉のツールで使ってきた。今回はそれを敢えて自制して、自発的に米朝会談を前にこういうことをやって、見返りをこれに関しては求めないということは、アメリカに対して一定のグッドフェイスを見せようという意図はあるのかなと思います。しかしながら坑道というのは、要は、トンネルなわけですね。南側トンネルにしても、北側トンネル、2か所にありますけれども、時間かけて、何年も時間かけて、コストと時間をかければ掘れるものです。ですから、それを潰したからといって、そもそもどれぐらい、どういう潰れ方をしているのかわかりません。本当に中まで潰しているのか、入口だけか、そういうのもわからないですが。それだけで非核化に非常に近づいたというのはまったく違う。非核化のプロセスというのは、より複雑、かつ時間がかかる。まさに、核兵器の核物質の製造から研究開発を含め、この北朝鮮のこの核兵器に関わるインフラ、これをどう無力化するかということなので。あくまでも第一歩、前向きではある、しかし、まだ第一歩であると」
松山キャスター
「猪口さんは今回、坑道の爆破をメディアに公開したという北朝鮮側の意図、どう見ていますか?」
猪口議員
「ポジティブな一歩と評価すべきではあるとは思いますけれど。本来であれば、非常に専門性の高い展開ですので、これは専門家、あるいはIAEA(国際原子力機関)関係者の何らかのチームを呼んで誠実にこれから非核化に向けての一歩を踏み出すということを示すと。他方で、メディアに公開するというのも一生懸命の努力の一端かもしれませんが、専門家と報道陣の両方が必要だと思います」
松山キャスター
「北朝鮮は2008年にも、以前、寧辺の核施設を爆破しましたよね?あれもメディアに公開をして、冷却塔を爆破して倒れるシーンが世界に流れましたけれども。あのあとも北朝鮮は核開発を続けて、ミサイルについても開発を続けたと。猪口さんは軍縮を昔担当していらしたこともあると思うのですけれども…」
松山キャスター
「そこからの失敗、国際社会から見たら、そこで止められなかった失敗があると思うのですが…」
松山キャスター
「今回こういった非核化に向けた動きを北朝鮮が撮り始めた、その動きを止めないために、失敗から学ぶことというのはどういうことがあるのですか?」
猪口議員
「とても重要な視点だと思うんです。ですから、現在、我々はその最初の一歩見ているかもしれないのですけれども、それでは着地点はどこかと考えますと、もともと核不拡散条約という核不拡散・核軍縮体制というのがありまして、北朝鮮は、この条約のメンバーでありながら、脱退して核開発した唯一の国です。ですから、この国が本当に核、非核化、核廃絶をやるというのであれば、この核不拡散条約に国際法的に戻ると、これが最終的な着地点で。2008年及び1990年代のいろいろな枠組み合意とか、いろいろな努力は、結局は脱退したあとの北朝鮮を国際法の枠組みの中にキチッと戻さなかったと。そういう外交努力が少しこちら側としても重点を置かなかった。そこを今回、教訓として是非、NPT(核兵器不拡散条約)に北朝鮮よ、戻る。この外交的道筋と多国間条約ですから、既にできあがっている条約ですが、いったん脱退したものが戻る、こういう条項がNPTにはない。脱退することの条文というのは10条にあるのですけれど。ですから、何らかの外交的な文書を用意して、名誉ある復帰ということができる外交的道筋をつくる。まさにこの度、アメリカの大統領、安全保障補佐官に任命されたボルトンさんは、この専門家ですね。NPT条約の専門家で外務省の職員…、国務省の職員として機能してきた方ですが。それで国連大使もやったことですから。そういう目的もあってこの人に任命があると思います」

『完全』な非核化の意味と現実
生野キャスター
「北朝鮮の非核化は本当に可能なのか、ここからは北朝鮮に対してアメリカが求めているCVIDを検証していきます。完全、検証可能、かつ不可逆的な非核化ということですけれども。まずこのうち『C』の部分です、完全性について検証していきたいと思います。軍縮大使も進められていた猪口さん、この非核化における完全というのは、何をもって言えるのでしょうか?」
猪口議員
「まずは兵器級の核分裂性物質、この製造、あるいは保有・所有、そういうことが完全に放棄されていると。合わせて北朝鮮について言えば、核、ミサイルと、ミサイル運搬手段もセットで放棄してもらいたいという交渉をしています。ですから、完全というのはミサイルについても全射程、核分裂物質も濃縮度をすごく高くしてそれで兵器級になるのですけれども、他方で原子力の平和利用のためのそういう道はもちろん、NPT条約の加盟国には残されていますけれど、核分裂物質、その完全な放棄ということになりますね。それが検証できているのかということですね。かつ、また気が変わって、つくり始めるということがない、イリバーサブル、不可逆性ということが求められていると」
森本氏
「1番大事なことは、全てのあとのプロセスを進めるために、コンプリートというのは全てを包み隠さずに申告するという、これが最初にあってそのあとがあるということですね」
松山キャスター
「北朝鮮の核能力の実態については不透明な部分が非常に多くて、実態はわからないという部分があると思うのですけれども。たとえば、いろいろなデータの中から、1つ例を挙げてみますと、核弾頭については推定で10発という説から、60発ぐらいという説まであると。移動式発射機についても短中距離弾道ミサイルで少なくとも200基以上という情報もある。長距離弾道ミサイルについてはまだ不明。もちろん、実験はしていますので、ある程度の数は持っているだろうということは推測できるのですけれども。核施設についても、核実験が行われているこの豊渓里、また、核兵器の製造のための施設、寧辺の核施設など18地域で22施設という情報もあるということなのですけれども。ただ、北朝鮮側の申告を待つということになっても、実際にはどれぐらい、そういう施設があるかはまだわからない部分もありますね。そのあたりは今回、米朝で協議がまとまっていくとすれば、北朝鮮というのはきちんと申告していくのですか?」
森本氏
「いや、わからないですけれども、査察をしていくと、やがて申告をするのか、隠したり、あるいは廃棄したり途中で、そういうことが検証できると思いますね。だから、1番全てのプロセスの最初です、コンプリートというのは。だから、包み隠さず全ての施設を申告して、今度実際にそれを検証してみると、どこか隠しているものがあるに違いないということがやがてわかる。その時はわからないけれども、やがてわかるというものだと思うんですね」
松山キャスター
「なるほど。古川さん、この完全という部分については、北朝鮮、どういうことが求められると?」
古川氏
「まさに、このアクションプランとしては完全申告、ご指摘がございました通りです。時間軸については、もし付け加えるならば、現在ある核兵器の解体、あるいは兵器級核物質、こういうものをしっかりアメリカに移送する、関連施設を破壊する、あるいは民生分野にしっかりと転用する。こういうことをまず現在あるものに関してはしなければいけない。プラス将来の話、たとえば、北朝鮮はかなりハイレベルと言ってもいいかとは思います、それなりに高いレベルの核兵器能力を持っていますので。これを持って将来、また、核兵器計画を復活させないように、中長期にわたるモニタリングが必要になります。加えて他の国に核能力を拡散させない、不拡散、こういうことも考えていかなければいけない。時間軸は結構長くなる可能性があると思います」
松山キャスター
「過去に非核化というものが実現した例としてよく挙げられるのが、2つありますけれども、リビア方式と言われるものと、南アフリカ方式と言われるものですね。古川さん、リビア方式と南アフリカ方式、端的に見てどういった部分に相違点があると考えますか?」
古川氏
「南アフリカの場合は、皆、疑ってはいたのだけれど、密かに核兵器をつくって。政権が変わったんですね、人種差別をしていた政権、アパルトヘイト政策をしていた政権から、他の政権に変わった。そのタイミングで、こんなもの要らないだろうと、周辺の国々との関係も良くなったので。誰も知らないうちに核兵器を解体していた、自発的に全部、やっていたということです。南アフリカの場合はIAEA、猪口大使が先ほどから強調されているまさにNPT、条約の守りの要のガーディアンですね。この査察官達の査察に全面協力します。ただ、全面協力にしても、それでも南アフリカがIAEAに出した申告、これは、内容は確かに正しいねということをIAEAが確認するのに2年弱ですね、かかっている。だけど、そのあとも不拡散、海外に遠心分離機のいろいろな部品を密輸していた企業などは南アフリカにあったので、結局、不拡散の懸念はとれない。だから、IAEAが最終的に南アフリカをクリアしたのは19年後。リビアの場合はもっと…、核兵器計画はあったのですけれども。核兵器のデザインも入手していました。ただ、遠心分離機という高濃縮ウランをつくるためのものは確認されただけでは、たった22基ぐらいしか完成品としては調達ができていない。部品は数百、数千、持っていて、買ったのですけれども、結局、自分達はつくれなかったんです。だから、ある意味、かなり規模が小さい、しかも、非常に未熟な段階だったので、解体というのはすごく短期間でバシッと終えることが可能な状態、それがリビアだったんですね」
松山キャスター
「今回アメリカはリビア方式というのをボルトンさんが言っていましたけれども。猪口さんは前、ボルトンさんと実際に一緒に仕事でも一緒になったことがあると…」
猪口議員
「はい」
松山キャスター
「…話されていましたけれど、アメリカがリビア方式を強く追求すればするほど、北朝鮮が反発するという構図に現在はなっていますよね?」
猪口議員
「そうですね、はい」
松山キャスター
「どういうところに落としどころを求めていくと考えますか?」
猪口議員
「リビア方式と、北朝鮮の現在の立場というのは全然違っていて。まず核実験をやった、核保有について明確にしている、これが北朝鮮の場合でありますから。それはリビアの場合とかなり違っているということだと思いますね。ですから、体制についても、最終的にはリビアの体制というのは崩壊するわけでありますから。リビア方式と言われること自体、北朝鮮が非常に不安感を感じるのではないかと思います。ですから、サンダース報道官が、いや、これはトランプ方式でリビア方式ではないという表現を言っていますけれども。ここは、ですから、初めてそういうNPTから脱退して、明白な核開発をやって、それを誇示して、それでバックダウンするということをやるのであれば、まさにリターン・トゥ・コンプライアンスと言って、順守に戻るという表現で、NPTに戻り…。そうすれば自動的に、このIAEAのフルスペックの査察が入ってくることになると。先ほど、完璧な申告と森本先生がおっしゃった、その完璧な申告が、まず完璧かと、コンプリートの申告かということも、IAEAの査察を受けることになれば、それは特別査察とか、抜き打ち査察とか、申告されている施設以外のところも査察に査察チームは入る、いろいろなレベルの査察がありますから。そういうことにも、遵守の責任が出てくるということになります。ですから、今日、その最初の一歩がスタートしたのかもしれないけれども、最初の一歩がなければ、着地点まで行くことはできないわけですけれども。その着地点を見間違わないようにして、IAEAの完全な査察を受けるには、条約に戻らないと不十分だということが言えると思います」

『検証可能』の実現性は?
生野キャスター
「続いてはCVIDの『V』検証の可能性について聞いていきます。先ほどもありましたけれども、森本さん、非核化の検証というのは具体的には何をしていくことなのでしょうか?」
森本氏
「だから、申告された全ての関連施設についてまず主体、誰が検証するかということがまず問われるんですね。この場合、アメリカだけで済むのか、IAEAも入ってやる。たとえば、リビアとか、南アというのは、最後は結局、IAEAが関わってるわけです、両方。まったく無関係ではないですね。最後に本当に結論はIAEAが判断していると。そういうことが一体できるのかということですよね。それでリビア方式を嫌がっているのは、リビア方式の場合は、施設そのものを持ち出して、アメリカの中に持っていって、ディスマントルしたわけですけれども。そういうことをやると、北朝鮮はどこに持っていかれるかわからないし、実はそれを解体されて、分解されて、分析されるかもしれないし、本当にディスマントルするかどうかは信用していなかったら持ち出されること自身が嫌なので。誰が主体となって、このベリフィケーションができるかという。それから、その次は対象としてどこまでやるかということなんです。1つ、1つの施設の歴史的な経緯を全部見ないと、現在こうなっているのだけれども、実はどれぐらいのものが濃縮されて、あるいは再処理されて、生産されて、生産されたものが一部は実験で使われ、一部は保存され、貯蔵され、あるいは既に核兵器の中に入ってしまっているかということを、1つずつ分析できないとベリファイアブルとは言いませんよね。だから、対象、主体と対象、程度、それが全部、ベリフィケーションする側にとって、技術的に満足のいくようなものでなければ、ベルファイアブルとは言いませんよね。それが本当にできるのかという」
松山キャスター
「仮に北朝鮮が非核化という方向に進んでいく場合に、たとえば、周辺国のロシアや中国がその検証システムに一緒に入りたいと言ってきた場合、ロシアとか、中国の技術を転用した北朝鮮の核施設というのもかなりあると思うのですけれど。そこで本当に客観的な中立的な査察というのができるのかどうかという問題が出てくると思うのですけれども」
森本氏
「多数国が入るから客観的とは言いませんよね。必ずしもそれは言えないと思いますし、それから、また、北朝鮮の過去の経緯を考えると、それを全部、他の国に見せるということを躊躇する可能性がありますよね。どのように持ち込んだものを北朝鮮が生産に使ったか、あるいはそれ以外のところから盗んできたのかというか、言葉はよくないのですが、たとえば、イランその他から手に入れて買ってきたものであるのかどうかということまで全部わかってしまうということですから。できればアメリカだけに検証させたい。北朝鮮はIAEAというのを必ずしも信用していないのではないかと思うので。IAEAが本格的に入って全部見るということは全部、IAEAの組織にわかってしまう。これは、ちょっと北朝鮮は躊躇するのではないかと思いますので。アメリカだけでできるのか、アメリカには十分その技術者がいますからアメリカだけでできるのか。あるいは他の国が入ったから客観的とは言いませんから。しかし、アメリカだけがやっても、IAEAとしては、客観性がないと言うかもしれないので、最後のところはIAEAが関わらないといけないのかなと思うのですけれども。そこをどこまで交渉で両方が合意できるかというのはこれから大きなカギになると思いますね」
松山キャスター
「過去に北朝鮮は、寧辺の核施設などにIAEAの保障措置で、IAEAへの査察官を受け入れて、暫く常駐させたこともありましたけれども…」
森本氏
「でも、それは全部見たわけではないと思いますね。本当に見せたくないところは見せなかっただろうし、ですね」
松山キャスター
「最後には追放してしましましたよね?」
森本氏
「追放してしまう。だから、本当に100%、信用できる組織だと思っているとは限りませんよね」
松山キャスター
「古川さんは、この査察・検証のあり方をどういうふうに?」
古川氏
「中国・ロシアの査察官に関しては、ちょっと私としてはやめていただきたい。と言うのも、中国・ロシアからかなりの物資が北朝鮮に流れ込んでいるはずなんですね。原子力、あるいはミサイル、こういうところにはいろいろ入っている可能性が高い。当然、日本・ドイツもあると思います。ですから、こういう情報を隠そうというインセンティブを持っている国は査察官を送るべきではないのだろうと思います」

『不可逆性』をどう担保?
生野キャスター
「森本さん、非核化の不可逆性を担保するにはどういった措置が必要になってくるんでしょうか?」
森本氏
「これは4つの要素の中で1番難しいですね、これは。わかりやすく言うと仮に非核化というプロセスが終わって本当に北朝鮮が核や弾道ミサイルを全て廃棄したという状態になっても、まず第1に、それに至る生産や製造のいろいろなプロセスデータ、あるいは図面、いろいろな証言、それに必要な知識といわれるものはどこかに残っているわけですね。それを、、廃棄するということは、これは口では簡単に言えますが、頭の中に入っているものを捨てろということですから、大変難しい。第2は、それに携わった全ての人をどのようにするのかということですね。これについては、たとえば、南アは、1000人ぐらいの人を他ところに就職させたんですね」
生野キャスター
「他国にですか?」
森本氏
「いや、いや。南アの中で。南アの中で、たとえば、製薬業とか、機械業というようなところにキチッと政府が全部就職をさせ、再び核開発の職業に戻らないようにしていったわけです。旧ソ連の場合はそれができなくて、これは国際的に資金を出して、日本も出しましたけれど、平和利用のための原子力研究センターをつくって、そこで雇用して、高額を払って、そこに、いわば引き留めて、他の国に散って行って他の国の核開発に干渉しないように、そういう人間としてどういう…再就職と言うわけではないけれども、その道を担保してやるかということを、北朝鮮でどのように担保するかという。もう1つあるんですよ。それは、1番大事なのは何かと言うと、仮に全部なくしましたといっても、また、新しく原材料をどこかから手に入れ、やり始めるということだってできないわけではないですね。これを完全にストップさせるためには、ある種のエクスポート・コントロール・システムと言いますか、他から入ってこないような輸出管理メカニズムというのがないとまたお金を使って手に入れるという道が残っているわけですから。それを完全にシャットアウトするということでないとダメですね。だから、人間、データ、それから、その他の手段が外から入ってくるのをどうやって防ぐのか。トータルで、イリバーシブルなものにしないといけないというのは、口では言いますけれども、実はこの4つの中で1番難しい面があると」
松山キャスター
「古川さんは、この不可逆性についてどう考えていますか?」
古川氏
「いや、まさに現在のポイントが1番の問題になると思いますけれど。たとえば、科学者・技術者の平和分野での就職活動の支援、これは、アメリカ政府はずっと、過去、たとえば、イラクとか、遡ってみればソ連、ロシア、あるいはリビアもやってきたんです。リビアもまだ人数が確か数百名だったので、比較的コストがまだ、かかりますけど、それでも上限は見えますよね。北朝鮮の場合、たぶん数千ではたぶん終わらない、数万になると思うんですね。核・ミサイル・科学技術、だってこれが国の経済の第2経済と言われる基幹産業として生きてきた国ですから。だから、その人達を、どうやって平和分野に転用するかというのは、これは遠大な巨大なプロジェクトになるわけです。だから、その数百人とは言わずとも、数十人でも、日本も含めて、いろいろな国々が平和分野で受け入れるとか、いろいろな形で転向を支援する、そういうことが必要になると思いますね。そうでないと、北朝鮮の現職技術者、大半がソ連とかロシアで訓練された人達なので、ドンドンあっちに行ってしまって、ロシア経由でまた別のとこに拡散していくと、それはちょっと意味がないことになりますね。最後にもう1つ、核弾頭のデータ、これが1番重要になります。リビアは先ほど、大した核兵器計画でなかったと言いましたけれども、それでも核兵器のデザイン持っていたわけです。これはかなりアメリカ、イギリス政府は当時、非常に警戒をしまして、全てリビアが保有している書類・データ、これを没収しました。ところが、それだけでもリビアの未熟な核兵器計画、没収した種類の量は25トンです。北朝鮮がどれぐらいになるかというのは、私はわかりませんし、国家のトップシークレットの核兵器のデザイン。これを北朝鮮がアメリカに渡すか、大きなクエスチョンマークですね」
猪口議員
「その不可逆性、これをちょっと別の切り口から見てみたいと思うのですけど。それはまずそもそもなぜ核開発したのかということですね。この動機・背景を考えてみると、国際社会で自分の地位を上げるには核兵器を保有するのがいいのではないかと考えた可能性があると。そうすると、もう2度とこれをやらないという決意をしてもらうには、この国際社会で核兵器がなくて、それで経済力で国際的地位を上げることができるということを日本のような国が先頭で証明し続けなければならない。これが、環境的な要因となると思います。ですから、日本のように核軍縮不拡散にコミットし、経済力をもって高い国際的地位を示している。これを北朝鮮は今後、手本とし、それで国家建設に邁進する。ですから、社会主義的経済をつくるのだという発言もありますよね。経済にシフトする。ですから、もちろん、これまでの技術者の平和的な分野への処遇であるとか、あと輸出入コントロールですね、これは森本先生もおっしゃったサプライズグループのような輸出入コントロールをきちんとやることがとても大事。そういう技術的なレベルから、核兵器がこの世に必要ないのであると国際社会の一員として北朝鮮が理解できる、そういう環境を我々はつくり続けなければならず。私は、日本のような国が国連の安保理の常任理事国に、非核兵器国なのだから、立派なこういう非核兵器国としてなるべきではないかというぐらいに思いますが。そういう観点からこのイリバーサブルな道というのをキチッとしなければ。もちろん、条約に入れて、戻ってもらえば、これはかなり遵守義務がかかって、技術的な検証というのはやり続けることができると思いますけれど。国際環境全体としてそれが大事と思います」

『非核化』の範囲とゴールは?
松山キャスター
「こちらにアメリカのトランプ大統領の発言があるのですけれど、トランプ大統領が目指す非核化の時間軸について先日語ったんですけれど、『朝鮮半島の非核化は物理的な理由で、短期間だ。本質的には一括だ』と。基本的には一括での非核化、完全な核廃棄というのを求めるということを言っているのですが。ただ先日、これは22日の米韓首脳会談の時の発言ですけれど、『物理的な理由があるのであれば短期間だ』という表現も今回付け加えたということですね。この非核化の時期をめぐっては北朝鮮は段階的措置というのをずっと求めていると言って、アメリカは即時、完全核廃棄だということで溝が埋まっていないと言われていました。森本さん、ここへ来てアメリカの表現、若干変化があるようなのですけれども、これをどう感じますか?」
森本氏
「おそらく現在、我々が議論しているこの一連のプロセスを北朝鮮側から見ると、それをやるというのであれば、はっきり言うと、わかりやすく言うと、見返りをくれと。その見返りを出すという用意があると、アメリカは考えているのだと思います。それが受け入れられないと、一方的にアメリカ側の要求を押しつけて実行できるというのは無理があろうと思っているのだろうと思うんです。ただし、北朝鮮のように、ステップ・バイ・ステップだったり、アクション・トゥ・アクションだったり、これをやるからこれをくれ、これをやるからこれ…、そういうまどろっこしいことはやらないぞと。一挙に検証して、一挙に解体して廃棄するのだという。それもあまり時間がないと。もっとはっきり言ってしまうと、おそらく次の大統領選挙、政治的に言うと、それが近づくまでの間に、成果がキチッと出せるような状態でなければいけない」
猪口議員
「この比較化のプロセスというのは、技術的には細分化すればすごくたくさんのステップに細分化できますし、そういう施設だってたくさんある、申告のレベルだっていろいろある。あとどういう濃縮のレベルかということだっていろいろあるし、ですから、これをいちいちここまでやったら何の見返りということをやれば、その検証自体も技術的に信用できないと思いますし、外交はそれに翻弄されるということになりまして、目的の平和のための北朝鮮の非核化、そこが曖昧になっていく、時間軸の中で。トランプ大統領はたぶん直感的にこれを理解されていて、ですから、短期的に、かつ一括だと。だけど、少なくとも政治的に非核化するのだということは瞬時に決定して、それで全ての査察の、あるいは保証措置、NPTに戻るのだったら保証措置、そういうことにまでは服しますと、リターン・トゥ・コンプライアンスというところ。あと技術者が、専門家が細かいことについてキチッと、ある程度の時間はかかるかもしれないけれども、その決定はかなり短期間にやるか、やらないか。さらにもう1つ大事なのはミサイルですね。ICBM(大陸間弾道ミサイル)、それはアメリカが本当に脅威を感じたかもしれない。しかし、これはもう1つの最後の冷戦の、アジアにおける冷戦終結の姿を我々は見ているのかもしれませんけれど、ヨーロッパ正面で何が最初に解体されたかと言うと中距離ミサイルで、INF(中距離核戦力)というものですね。1987年にこの条約ができています。これは射程500㎞から5000㎞の中距離でありますね。5000㎞以上が大陸間弾道弾となります。500㎞以下は短距離となるのですけれども、このINFはすごく脅威の対象だった。それは攻撃のシアターを限定することができるので、世界大核戦争にはならないから使われやすいのではないかとか、着弾まで10分とか、対処の方法もないではないかと…」
松山キャスター
「逆に使うハードルが低い?」
猪口議員
「そうです。ですから、INFが最初、つまり、中距離のミサイルの解体ということもとても大事なんですね。ですから、そういうことを含め、完全な非核化ということに一気にコミットすれば、それは歴史を新しく生み出していく努力、そういうことだったら、僕は一緒にやってやるよとトランプさんは言っているのではないですか」
松山キャスター
「ただ、北朝鮮がその条件が飲めないのだったら、まだまだ…」
猪口議員
「そうですね。小出しの条件闘争に入っていくのだと、無限の交渉になりますから。その度にどの制裁を解除するとか、あるいはどの経済的なヘルプをやってやるのだとか、ちょっと想像を絶しますので。それにはたぶんトランプさんは乗らないだろうし、日本としてもそういう交渉にアメリカにいってほしくない。もう一括してキチッと核廃絶」

そのプロセスとリスク
松山キャスター
「北朝鮮問題とも深く関係してくると見られているのが先日、トランプ政権が発表した、イランに対する新方針です。トランプ政権は3年前にオバマ政権が他の主要国と共に結んだイラン核合意からの離脱を発表しました。そのうえで経済制裁の再開と、より厳しい新たな要求をイランに対し突きつけました。その主な内容がこちらです。『IAEAに核計画の完全開示と永続的かつ検証可能な方法で放棄することを求めた』。あと『ウラン濃縮の停止、プルトニウムの再処理の断念』『全ての核関連施設に対するIAEAの査察の受け入れ』『弾道ミサイル拡散や核弾頭搭載ミサイルの開発・発射の禁止』などが盛り込まれています。森本さん、これまでのイラン核合意に比べてかなりアメリカはイランに対しては核で厳しい要求と突きつけていますけれど、こういった要求をアメリカは今回、北朝鮮に対してもある程度厳しい態度で臨むというシグナルとして発していると思いますか?」
森本氏
「シグナルとしては発しているのですが、本質的には全然違うわけですよね。JCPOA(共同包括行動計画)というのは、そもそもイランの濃縮・再処理というのが2015年7月の合意によって一応止まっているという形になっていると。それで制裁がかかっているのを、制裁を解除する。もともとこの合意にアメリカ不満だったわけですね」
松山キャスター
「そうですね」
森本氏
「この不満を解消するための提案なんですね。ところが、北朝鮮はそれさえまだ全然できていないわけですよ。現在、北朝鮮の核開発が止まっているわけでもないので、前提条件が私は違うと思います。ただし、これだけイランに対しては厳しい制裁及び査察についての条件を示しているのだから、北朝鮮も相当覚悟しないと、これ以上の条件を突きつけることになるぞという、いわばメッセージというのはこういう形で出しているのではないかと思います」
松山キャスター
「その前提となる、イランの核合意からの離脱の発表の直前ぐらいには、その発表をすることが北朝鮮にどういうシグナルを送るかという2つの論があったと思うのですけれど、1つは、いったんつくった核の合意でも、アメリカは簡単に破棄してしまう可能性があるという誤ったシグナルを送るのではないかという批判。もう1つは、多少でも核開発の余地を残すのであれば、アメリカは最後まで強硬にそれを強く求めていくのだというシグナルになるという意見。森本さんは今回、アメリカが核合意から離脱したことがどっちの方向に動くと考えますか?」
森本氏
「私は、そもそも核合意をつくった時、オバマ政権をつくった時のJCPOAは査察その他の手続きが不十分で不完全だったということ、非常に現在の政権は思っていたので、それを元に戻すために離脱するぞと。もちろん、猶予期間があるんですよ、90日から180日という期間があるので、それをまた、それを戻すと言うかもしれないけれども、少なくても現に不満があるような、査察も不十分なような合意をしてしまった、前の政権のミスマネージメントは再びやらないよということをアメリカは考えている。それは、だから、やるなら、北朝鮮とそういった不完全で問題のあるような合意は初めからしないという…」
松山キャスター
「メッセージを出している?」
森本氏
「そうです」
松山キャスター
「古川さんはどう見ていますか?」
古川氏
「そうですね。私も本当にそうあってほしいなとは思います。1つだけ、私、アメリカの政権に懸念を持っているのは国連にいた時にもアメリカのイラン・北朝鮮に対する姿勢をずっと見ていたのですけれども、トレードオフの側面があるんですね」
松山キャスター
「取引でやると?」
古川氏
「と言うか、イランにフォーカスをするとどうしても北朝鮮への人員とか、いろいろな予算とか、配分がこう変わってしまう。率直に申し上げてイランの問題でいろいろ問題があるのですけれども、一定の枠組みで閉じ込めた、ようやく閉じ込めていたのに、またちゃぶ台をひっくり返した状況になっているので。アメリカは中東好きなんだと思うんですね、イランが好きなんです。だから、かつてイラクを軍事侵攻しようとして、それにリビアのカダフィ大佐がビビッて、私は全部やめますと、大量破壊兵器を廃棄しますと、このモデルをおそらくイランに強く迫ることで、北朝鮮に、お前もこうならないように、ちゃんとやれと。ちゃんとやったら良い関係を結ぶからということを期待していたのだと思うのですが。北朝鮮はそんな簡単な相手ではないので。これからイラン問題でこれだけヒートアップしていく中でトランプ政権がどれだけこの北朝鮮に本当に向き合ってくれるのか。まさに森本先生がおっしゃったような徹底した措置を追求していく、こういう姿勢を持って交渉を続けるか。ここは、私、ちょっとそうならなければいけないのだけれども、ちょっと不安を感じさせます」

猪口邦子 参議院外交防衛委員会理事の提言:『核不拡散条約 北朝鮮 復帰への道すじ』
猪口議員
「私はこれを提言したいと思います。北朝鮮は、国際社会にあります核不拡散条約、これに加盟していながら、脱退して核開発した唯一の国です。ですから、完全な非核化ということをやるということであれば、当然ながら核不拡散条約、NPTに戻り、これはリターン・トゥ・コンプライアンス、遵守に戻るという表現なのですけれども。IAEAの保証措置、査察を完全に受け入れて非核化を証明すると。これで初めて完全非核化ということになると思いますので。その道筋を日本も核軍縮・不拡散を推進する国として進めるということです」
松山キャスター
「側面支援するということですね?」
猪口議員
「はい」

森本敏 防衛大臣政策参与の提言:『北朝鮮の非核化に最大の貢献を』
森本氏
「私は、これから行われる米朝の対話や交渉がどういう結果になるかわからないのですが、どういう結果になるにせよ、同盟国・日本としては、アメリカがやろうとしている非核化にできるだけの、できる限りの支援と協力を行う。それが査察に関する技術的なものであったり、経費の分担であったり、経済協力であったり、いろいろな形があると思いますが。とにかく日本としてできるだけの努力をし、アメリカの政策をサポートするというのが、日本がやるべき役割だと思います」

古川勝久 元国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員の提言:『右往左往せず、国益をしっかりと見すえて』
古川氏
「小泉劇場ならぬ金・トランプ劇場、これから日々、いろいろな情勢の劇的変化というのは続くと思います。こういう情勢の変化に一喜一憂、あるいは細かい動きにとらわれることなく、本当に北朝鮮の非核化という中長期の目標を見据えて、我々が国益を中長期の観点からどう実現していくのか、しっかりと考えていく必要があると思います」