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2018年5月22日(火)
米政策で『嵐の予感』 相関図急変の中東情勢

ゲスト

武見敬三
自由民主党参議院議員 参院外交防衛委員
大野元裕
国民民主党副幹事長 参議院議員
田中浩一郎
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授

『イラン合意』離脱と新戦略 トランプ大統領の狙いと余波は
竹内キャスター
「トランプ大統領が今月に入り、イラン核合意からの離脱、さらにアメリカがイスラエルの首都と認定しているエルサレムに大使館を移転するなど、不透明さを増す中東情勢に国際社会はどう向き合うべきか。中東問題が与える国際的な影響を検証、日本のあり方についても専門家の皆さんと議論します。イラン核合意とは、2015年の7月に、イランと6か国、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・ロシア・中国が合意したイランの核開発を大幅に制限するためのものです。その内容とは、イランが高濃度ウラン等を15年間は生産しないこと。濃縮ウラン貯蔵量を10トンから300キロに削減、ウラン濃縮に必要な遠心分離機を1万9000基から6104基に10年間で減らすといった内容です。その見返りとして、6か国は金融制裁やイラン産原油取引の制限、国連安保理決議等を解除するというものです。トランプ大統領は今月8日にこの核合意からの離脱を表明しました。その理由として『イラン核合意は一方的な広い合意だ。現在の合意の腐った仕組みでは、イランが核兵器を開発することを阻止できない』と述べています」
松山キャスター
「大野さんは、トランプ大統領が今回、核合意からの離脱ということを決定したと、これについてどう受け止めていますか?」
大野議員
「たぶん背景は3つある、指摘できるかなと思うのは、1つはアメリカの大統領として前大統領がやったことを否定する、いわゆる『ナッシング・バット・オバマ』ですよね。今日の実は未明のポンペオさんの発言を見ていても、このイラン核合意の下で何が変わったかと。レバノンは、たとえば、おかしくなったではないか、イエメンもそうではないか、こう言うのですけれども、実はレバノンやイエメンやシリアやイラクがおかしくなったのはイランの一方的なせいでは決してありません。アメリカの介入を含め、内政上の問題も含め、そこにイランが入っていったとか、あるいはイスラム国を退治するためにイランも実は一定の役割を担っていますから、そこで影響力を構築したとか、そういったところは一切排除して、オバマ大統領のもとで行われた合意の下で良くならなかったではないかということを言っているというのは、いわゆるナッシング・バット・オバマ、『NBO』という意味になりますけれども、この話だと思います。それから、もう1つは、おそらく私はアメリカの専門家ではありませんけれども、エバンジェリカみたいなアメリカのトランプ大統領の支持層に対して中間選挙、国内向けのアピールではないか。それはトランプ政権で何度もありますけれども、とりあえず言ってみて、あとは全部、議会に丸投げするみたいなことがよくありますけれども。実は今日ポンペオさんが言っているのは『オバマ大統領の時と違って、国会ともきちんと協議をしたうえで合意を得たい』と言っていますから、自分達が何やりたいかはポンッと打ち出すけれど、しかし、そのあとの収拾の方法はたぶん持っていない。そういう状況の中でやっているというので内政対策だと思います。3つ目ですけれども、これは核の問題は当然大変重要ですけれども、実はイランに関して言えば、これは田中先生の方が詳しいですけれども、アメリカの政権の中には、出ていったティラーソンさんやマクマスターさんも含めて、基本的に皆イランが嫌いだから嫌いです。つまり、止める人間がいない」
松山キャスター
「現在の政権の中はほとんどイラン嫌いの人ばかりということですか?」
大野議員
「そうですね。ポンペオさんもまさに有名だし、マティスさんにしてもイラクではIEDという仕かけ爆弾で自分の部下を殺されています。非常にアメリカ政権の今回の特徴で言えば、他の政策とは違って、イランに関して言えば、止める人間がいない。そういった意味では、全員がイケイケと言うか、そういったところでとりあえずこの核合意を破棄したということだろうと私は理解をしています」
松山キャスター
「イラン核合意からの離脱についての各国の反応をまとめてみたのですけれども、アメリカのトランプ政権が離脱ということを表明して、それを受けての各国の反応で、たとえば、イギリス・フランス・中国・ロシア・ドイツ・イラン、いわゆるアメリカ以外の核合意に参加した国ですけれども、それぞれ外相会談を開きまして合意の継続を表明しています。そのまま合意には留まるということですね。一方で、中東諸国では、サウジアラビアやイスラエルなどはアメリカのこの合意からの離脱を支持するという姿勢を示している。対応が分かれているわけですけれども。その合意を継続とヨーロッパ諸国やイランも言っていますけれど、アメリカが抜けた状態で実際の合意の有効性というのはどれぐらい残るものなのですか?」
田中教授
「はい。イランの側が遵守する、守っていくというのは、いわゆる核関連措置と言われているものでして、ウラン濃縮の規制をみずから受け入れて、それを一定期間、一定のレベルに留めておくということ。この手のことは彼らの一存で続けることができるんです。しかしながら、この対価として与えられているはずの経済制裁の解除については、国連安保理決議に基づく経済制裁は解除されています。それから、ヨーロッパ諸国がそれぞれかけていた、あるいはEU(欧州連合)としてかけていた制裁も、解除されています。なので、EUが守るというのはこの点を言っているんですよ。しかし、アメリカが離脱したので、アメリカが約束して実行していたはずのアメリカのイランに対する経済制裁、及びイランと通商関係や投資関係を持とうとする第3国、これは、ヨーロッパであれ、日本であれ、中国・ロシア関係なく、第3国に対する2次制裁も復活したんですね。こうなると、アメリカがいない状態でイランが本来得られるはずのいわゆる見返りがないという状態が続く。だから、これを見た時に、イランがどこまで辛抱できるのかなというところが問題になってきます」
松山キャスター
「武見さん、日本の立場としては、イランとも良好な関係を築いているのが日本ですけれども、日本としても今回アメリカがこの合意から離脱したことについては、政府は『残念だ』というコメントを出していますけれども。ヨーロッパなどが合意を継続することについては支持を表明していると。日本の立場、独特の立場であると思うのですけれども、どういうふうに?」
武見議員
「これは、北朝鮮のケースと、イランのケースというのは、日本にとっては異なるわけですよ。これは北朝鮮の核弾道ミサイル開発というのは、日本にとって直接の極めて危険な脅威が現実に生じている。しかも、実際に開発の段階というのは相当もう完成の段階に来て、その危機がまさに目の前に迫っている。これに対しては相当強硬な措置を取らざるを得ないし、またそれによって阻止をすることが最も重要な方針になっている。これに対して、イランの方の核の開発というのは、そこまで進んでいるわけではないと。しかも、既に6か国の合意が形成されていて、その中で徐々に、先ほど田中先生もご指摘になったような形で、こうしたイランというのが実際にその合意を順守して、核の開発というものについては、約束を守って実行には移していないという可能性が高いと思われていたこと。従って、そのプロセスというものは継続すべきであって、ここでやめてしまうべきではないという立場を日本はとっていて。この点は、一見、権威主義体制が新たな核弾道ミサイルの開発を進めている同じケースだと言え、その段階の違いを踏まえたうえで、対応の政策というのは異なっている。この点が、どちらも一辺倒に強硬策で一貫させようというアメリカの立場と、日本の立場というのが異なってくる諸事なんですよ」
松山キャスター
「たとえば、ヨーロッパでもドイツのメルケル首相はもともと合意そのものについて、アメリカが抜けてもEUは維持すべきだという認識で一致しているけれど、『合意が完全でないことはEU全加盟国が認識している』と、合意が完全でないと率直に認めているのですけれども、これは日本としても、そういう立場なのですか?」
武見議員
「それは先ほどの、遠心分離機にしろ、それから、ウラン、濃縮ウランの濃度の課題にしろ、アメリカはゼロと言っているんですよ、事実上。これがある程度、キャパシティを残しておくということは、将来的にまた核開発につながってしまうという可能性があるわけで。そこを全部断ち切れというのが、アメリカの現在の立場だろうと思います」
松山キャスター
「合意の中に、期限を区切って合意がなされていると。たとえば…」
武見議員
「15年…」
松山キャスター
「今後15年という期限があると。15年後にはまた、核開発が始まってしまうということを考えると、そこはもう完全に不十分な合意だと?」
武見議員
「…というのがアメリカの立場なわけですね。そこは、日本は違うんですよ。少なくともこれまでの合意に基づく相互の信頼ある対応はかなりある程度実行されてきているという理解と、それが不十分だという、そういう極めて強いイランに対する不信感のある国との間の違いというのが、今回こういう形で出てきたということでしょうね」

国際社会&経済への影響は
竹内キャスター
「イラン核合意から離脱したアメリカでしたが、日本時間の今朝、アメリカのポンペオ国務長官が新たな対イランの包括的戦略を発表しました。その発表の内容を見ていきます。核開発について『ウラン濃縮の停止・プルトニウムの生産の完全な断念』、『IAEA国際原子力機関による全施設の査察』『弾道ミサイル拡散停止』『シリアの軍事拠点撤収』『レバノンなど周辺国へのテロ支援抑制』など12項目で、全てを受け入れれば制裁解除、外交関係を回復するというものなのですが、受け入れを拒否する場合、前例のない経済的圧力、欧州だけでなく日本・韓国・インドなどにも協力を要請するという内容です」
松山キャスター
「大野さんは、このアメリカが新たに出した案、提案をどう受け止めていますか?」
大野議員
「提案と言うか、かなり基本的な要求、『基本的な要求』と書いてありましたね。という言い方していましたけれども、実は私、2つあるかなと思っているのは。1つは、アメリカもヨーロッパも、それから、イランも、三すくみの状況に現在あるのではないかと思っています。アメリカはおそらく戦略がないんですよね。とりあえず要求をして、出方を見ると。ヨーロッパにしても実はアメリカで決裁を、日本も大変困っているのですけれど、…しなければいけないので、それぞれの取引をしている企業がすごく困っているんです。ただ、ヨーロッパの国々はその企業を救うための国内的措置を講じようとしているので、暫くはその合意の継続を担うのだと思いますが、やれば、自分達の経済に影響がある、守れば。守らないとイランの…、仮にも合意をつくった道を自分達で放棄してしまうことになる。イランはイランで、これは反発するのはいいのですけれども、俺達が正義だと仮に言ったとしても、それがもたらすものは実は実際に何もない。こういう、三すくみの状態にあると思っています。ただ、1つ鍵になるのは、今日のポンペオさんの発言を見て、注意深く読むとわかるのですけれども、日本の新聞は『これまでで最も厳しい制裁制裁』だったかな…という書き方をしていますけれども、実はそうではなくて、最終的にはこれまでで最も厳しいものになる。つまり、段階的にと言っているんです。つまり、段階的の、どの段階まで皆が我慢できるかというチキンレースを繰り広げていて、その最初の段階というのか、まだ深刻で後戻りできるようなところで何らかの落としどころ、たぶんヨーロッパも、アメリカが出て行って、あなたが出て行って、はい、それでいいですよ、とは思っていないので。イランもおそらくこのままで俺達が正しいと言うことだけがただ良いとは思っていないと思うので、そのあたりのところの落としどころは、まだ時間的にはあるかなと思っているので」
竹内キャスター
「ロシアはどう見ていますか?」
大野議員
「ロシアと中国は、アメリカがいなくなった中での影響力拡大を狙っていると私は思っています。それから、もう1つはイラン…、イランにとって重要なのはサウジが先に反対、アメリカについたではないですか。実は域内でイランの影響力の伸長を嫌っている国もあるのですが、逆にイランはそれをレバレッジというのか、取引材料にしているところがあって。たとえば、今月、イラクで、お隣の、イランの西のイラクで総選挙が行われました。そこでは誰も最初から1党で与党を獲れるような状況でないことがわかったんです。このJCPOA(共同包括行動計画)の延長が、アメリカがその核合意の破棄をするのではないかという話があったので、これまでの選挙でも、一定程度、影響力を行使してきましたけれども、今回、私が知っている限りでもいろいろなところでイランはイラクの国内に入って自分達の思い通りにしようと。結果的にはうまくいかなかったのですけれども。いずれにしても、そういった国内の違うところでアメリカが大事と考えているところで締め上げていくという方法もイランはとり始めていますので。それぞれが皆、先ほど申し上げたチキンレースの中で、どこまで我慢できて、どこを降りるかというのは、これから我々は注意深く見ていかなければいけないと思います」
松山キャスター
「田中さんは、アメリカ側の要求、現実にはイランはすぐ受け入れるというわけにいかない要求ばかりですよね?」
田中教授
「うん、ちゃぶ台返しみたいなものですので。長く、10年ぐらい、いろいろとすったもんだ、押しつ、引いたり、いろいろなことで、石油を絶ったり、しながら交渉を重ねてきて、ようやく2015年7月に合意に至った。それを、だから、全部スタート地点に戻しちゃった感じですよね。濃縮云々に関して、確かにゼロ濃縮と言われている、濃縮を認めないということが最も安全である、拡散を防ぐという観点では安全なのですが。NPT(核兵器不拡散条約)の下では平和利用のための濃縮、再処理というのは認められることですので。これは不可分の権利を圧力で放棄させるということは、相当無茶な行為ですね。だからこそ核合意はこういう形にしかならなかったわけです。それから、軍事施設云々に関しても、追加議定書の締結国であれ、それを全面的に隅々まで見せるということを約束しているわけではありませんので。このあたりは、トランプさんにしてもポンペオさんにしても、その発言が相当ゆがんでいるんですよね。イランが何かブロックをかけて、何か見せていないということに大きな問題がある、ないしはその合意自体に欠陥があるということを指摘していますが。それをどこが受け入れるのですかということを考えた時には、普通はこんなことは起きないわけで。主権を持っている国を相手にこういう要求を突きつけていること自体が外交だと考えているとすれば、それも思い上がりも甚だしいと思いますよね」
松山キャスター
「イランという国自体が周辺国との中で生まれた長い歴史的な経緯もちろん、あると思うのですけれども。こういう核開発、平和利用と当初は言っていたと思うのですけれども。核開発をある程度進めなければいけない理由というのは地政学的に何か説明できるものなのですか?」
田中教授
「まずは、イランの原子力開発という観点からいきますと、これを進めたのはアメリカです。イランとの協力のもとで、これを進めたのは、1970年代に至るまでずっとアメリカが推進してきたことですので。1979年に革命が起きて、政権が代わって、体制が代わって反米色が強くなった途端、アメリカがイランと断交したということもあり、この手の協力は一切止まるのですけれども。逆に言いますと、今度、イランがやることを一切容認しない姿勢に変わったということですね。ですので、結構ご都合主義なところがありますし、イランしてみれば、この地域における不安定の最大の要因であるということで、現在、叩かれていますけれども、もちろん、それに加担していることは間違いないとして、多くの原因は、アメリカが蒔いた種で、あるいはアメリカの行ったことの後始末をむしろイランがつけているところもありますので。こういうところはそれぞれ両面があるということをある程度は見ないといけないのだと思いますね」
武見議員
「いや、この政権は、歴史的なコンテクスト、関係ないですよね」
松山キャスター
「アメリカのトランプ政権?」
武見議員
「アメリカのトランプ政権というのは。むしろ非常に複雑なガラス細工の中で組み立てられてくる、そうした平和構築のプロセスというのはほとんど無視される。力によって実際に相手をねじ伏せて、自分達にとって最も好ましい状態をつくりあげる、そういう強硬策が一貫して出てき始めているんですよ。ですから、そこにうまくいった時にはすごくうまくいって、アメリカにとって好ましい状況がつくりあげられるのだけれども。それに失敗した時には、さらに事態が悪化して、リスクが高い非常に深刻な状態になっていく可能性が出てくるという。非常に高いリスクをとった強硬外交路線にある、アメリカがなってきていると理解をするべきで。しかも、それが12月に中間選挙を控えているトランプ政権にとってみて、国内対策としても最適な政策として認識されるようになっているという、まさに一体化がこうしたアメリカの政策を生んでいるのだという理解です、私は」
松山キャスター
「僕も印象として、トランプ政権のやっている政策はどちらかと言うと、アメリカ国内向けの選挙対策を、世界中を舞台にやっているという印象があるのですが、たとえば、イランに対する強硬な要求というのを今回突きつけたということで、イランが核合意から仮に今後離れるとなった場合に、イランが核武装する可能性というのは将来的には出てくると思うのですけれど、そうなると、中東の中でも他の国も核を持たなければいけないという動きがひょっとしたら出てくるかもしれない。たとえば、サウジアラビアはどうするのかとか、そのあたりどう見ていますか?」
武見議員
「いや、そうなると、おそらくイスラエルは完全に武力をもってして、イランの核開発を阻止するという動きになってくる可能性が極めて高いですから。そこにもまたアメリカが関わるかもしれないと。極めてそういう深刻な紛争が起きる可能性が出てくることになるわけですよ」
松山キャスター
「トランプ政権が今回、経済制裁を、合意から離れて経済制裁を行うということで、その具体的な内容をちょっと見ていきたいのですけれども…」
竹内キャスター
「今月8日に大統領令に署名したのですが、その元となった国防授権法というものを見ていきたいと思います。2011年の12月、イランの圧力強化を目的としたもので、内容はイラン中央銀行と金融取引がある外国金融機関とアメリカ金融機関のドル取引禁止というものです。田中さん、ドル取引が禁じられるということで当時どれぐらいの影響が出たのでしょうか?」
田中教授
「はい。これは、いわゆるトリガーと言われるものがこの他にありまして。何をしてしまうと外国銀行がこういう措置、処罰を受けるのかということが重要なんです。それは何かと言うと、イランの方から原油を買っている国の中央銀行がその制裁を受けるということにまでなってしまいますので。これは、たとえば、日本にたとえれば、日銀がアメリカでアメリカのドルを扱うことができない、ないしはその決済業務を一切、間に入ってやることができなくなるということになってしまう、大変な内容なんですよね」
松山キャスター
「影響は大きいですよね?」
田中教授
「はい。これ一応、段階的にイランからの原油の輸入量を減らしていくということが条件づけられています。ですので、それを行っている間は、猶予と言うか、免除はされるのですけれども。しかし、そのままいけば、一定、たとえば、1年半、2年と経てば、多くの国はイランからの原油をゼロにせざるを得なくなってくるということになります。当時はヨーロッパもこういう姿勢に同調してましたので。アメリカとタイミングを合わせ、これはヨーロッパの独自の考え方でイランからの原油輸入を全面的に止めたんです、これはEU構成国として。ですので、EUもイランから買わなくなった。それから、日本や韓国や中国などのように、あるいはインドなどのように、イランから原油を買っている国は、多くの場合、若干の例外はありますけれども、多くの場合は、ドンドン原油の取引を減少させなければいけなかったというトラップがありました。ですので、今回はそのペースもひょっとしたら早くなる可能性もありますし、猶予を他の国になかなか与えないような、いわゆる運用上の強硬策をとってくることもおおいに考えられますので。これは、真綿で首を締めると言うか、いきなり荒縄を持ってきて、グッと一気に息の根を止めるという感じで臨んできたように私は思いますね」
松山キャスター
「アメリカの制裁というカテゴリーでやっていることだと思いますが、当然、ドル取引をやっている国際企業というのは、ヨーロッパとか、あるいはアジアの国の企業もあるわけで、そういう意味で、間接的にはかなり影響を受けるということになりますよね?」
田中教授
「そうですね。ですから、波及効果と言うのでしょうか、これ自身が2次制裁なのですけれども、第3国がイランと取引を行ったり、あるいは投資を行ったりすること、こういったものを一切止めようとする発想なんですよね」

混乱の中東情勢に日本は
松山キャスター
「アメリカがその制裁を復活させるということになると他の国の企業も当然影響を受けるという話が現在ありましたが、日本の企業は影響を受けるのですか?」
武見議員
「もちろんです。日本は2016年の段階で、原油の輸入量の確か6.7%、イランから輸入しているんですよ。2017年にそれが5.5%ぐらいまでに下がっている。徐々に、実は減らす傾向にあることは事実。今後、アメリカの政府との間の交渉ですよ」
松山キャスター
「これは日本の原油の輸入元のグラフですけれども、サウジアラビアが圧倒的に多いのですけれども、イランからは5%ということで、日本だけを見るとそんなに大きい比率ではない」
武見議員
「そんなに大きくありません。ただ、それでも、日本としてはアメリカと交渉して、徐々に削減する形を受け入れてもらうような話がおそらく課題になってくるのではないでしょうか」
松山キャスター
「制裁、圧力をかけろとアメリカから言われても、いや、日本は日本の立場があるので、そこは何とかと」
武見銀
「EUも同じ、おそらく交渉をアメリカとやるわけです。しかも、その交渉の意味というのは、実は徐々に真綿で首を絞めるようにイラン経済に圧力を加えることによって、逆にイランが核開発を諦めて、アメリカの言う方向で妥協してくることを引き出すために、一定の時間的・条件的なプロセスをつくるのにちょうどいい交渉になるかもしれない」
松山キャスター
「なるほど。大野さん、どうですか?日本への影響という部分について」
大野議員
「石油そのもので言えば、おそらく量よりも油価、価格の方ではないか。特にいきなり進展が早く進んでいますので。それから1番、実は困っているのは金融機関です、いわゆる決裁がドルでできなくなるのではないか。どういう条件下だったら、今度はダメなのだろうといった、その問題ですね。それから、日本企業も実は多くは、いわゆる投資をするのではなくて、コモディティ、その商品を…」
武見議員
「買ってね…」
大野議員
「はい、移動させる、こういった取引が現在多いので。その商品の取引自体はそこでやめてしまえばいいわけなので。もちろん、影響はありますけれども、たとえば、中国、インド、それから、ヨーロッパ、こういった国々よりは直接の影響は少ないのかもしれません。ただ、注目しなければいけないのは今日の朝、未明のポンペオさんの発言の中で、域内の国と共に同じような脅威認識をしている、共有している国として挙げられたのが、日本と韓国ですよ。だから、日本と韓国は同じことをしてくれ、乗れという、今後、政治的な圧力も含めて、経済界にも影響があるのかもしれません」

米イスラエル大使館移設 トランプ大統領の狙いと余波は
竹内キャスター
「トランプ大統領は昨年12月に、イスラエルの首都をエルサレムに認定しました。今月14日には、テルアビブにあった大使館をエルサレムに移転しました。田中さん、この大統領のエルサレム首都認定と大使館移転、このことについてどのように見ていますか?」
田中教授
「トランプ大統領は公約を守るということを重要視したのだと思います、今年に行われる中間選挙を睨んでの選挙対策の意図もたぶんあったと思いますが、実態としては相当、無茶をしているなという感じはいたします。何よりも、むしろ私が問題視したいのは国連安保理決議であれ、それから、国際法であれ、イスラエルはこの東エルサレムの併合を宣言してから、こういう国際的な規範に反している状態が続いているんです。彼らは東西の関係なく、エルサレムというのは1つであって、そこはイスラエルの首都であるということを言っている。これをアメリカが受け入れてしまったということは、国際規範を守っていないイスラエルの側にアメリカが立ってしまったわけでして。たとえば、最近、近年の国際情勢の中で、クリミアの問題、ウクライナの問題、それから、南沙を含める南シナ海での問題、こういうロシアや中国の行動に関して、いわゆる修正主義であるとか、いわゆるリビジョニスト(修正主義者 アメリカの対日政策見直し論者)として批判をしてきたわけですけれども、当のアメリカがそこでリビジョニストになってしまったら、開いた口がふさがらないと言うか、どの口を持って相手を批判するのかというのは到底わからなくなってくる、こういう問題を抱えていると思うんですね」
松山キャスター
「大野さんはどうですか?今回のアメリカのイスラエルのエルサレムを首都と認定する。実際に大使館も動かしてしまったということですけれども」
大野議員
「これも中間選挙を前にしての国内的な、様相というのはすごく強いのだと思います。特にオバマ政権時代は元来、民主党とアメリカにいるユダヤ教徒・団体というのは本来は良かったのですけれども、そこに、オバマ政権時代に楔が打ち込まれ、オバマはどちらかと言うと中東寄りと見られていましたから、彼らには。共和党側からすれはチャンスなわけですよね。そこにしっかりと手を突っ込んでいった。キリスト教の右派等の受け、そういうこういったことも含め、トランプさんの強い地盤、中間選挙の鍵となる選挙区、こういったところに、楔を打ったということだと思います。11月に選挙が始まりますけれども、これは来年に本当は移転するはずだったんですね。もともとエルサレムの総領事館が大使館になるのではないかという噂もあったのですが、それができなかったのは、それは政治的な理由ももちろんありますけれども、実は治安上の理由で、テルアビブの大使館に行っていただくとわかるのですけれど、バッファーと言って多少カチューシャ弾程度を撃ち込まれても大丈夫なようになっているんです。ところが、そのエルサレムの領事館は、現在の大使館ですね、実は大きな道路に目の前に面していて、塀は高いのですけれども、これは1発だよねという話が前からある、いわくつきの建物ですから。実は、いろいろ物件をこれまでアメリカは探していたのが、それに間に合わずに、つまり、アメリカの大使館員に万が一のことがあっても、いいという、いわば一か八かの決断を国内的にはトランプさん、やらざるを得なかったのは、私は選挙だろうと思います」
松山キャスター
「もともとアメリカでは議会でエルサレムに大使館を移転をするという方針は既に出されていて、ただ、それにGOサインをするかどうかというので、ずーっと大統領が判断を見送っていたという経緯がありますよね。そういう意味で、アメリカ国内には響く今回の政策ということなのですか?」
大野議員
「そうだと思います。まさに国内向けだと思います」
武見議員
「少なくとも共和党支援している保守派の人達の間では、相当な支援を受けると思いますよ。この中で、実際に拒否権を通じて従来はそれを阻止してきたという立場に、むしろホワイトハウスはいたわけで、それをむしろ法律に基づいてやったという大義名分も実はアメリカの大統領、トランプ政権にはあるわけです。しかも、トランプ政権の中にいる人達というのは、トランプさんの周辺に近い人達ですね。さらには、副大統領みたいに極めて…」
松山キャスター
「キリスト教…」
武見議員
「キリスト教、福音派の遵守のコミュニティ、さらにはユダヤ教に対して非常にシンパシーを持っている人達というのがその周辺を固めていますから。そうしたことが今回の早期移転になった大きな背景にあるのだろうと我々は見ていますよね」
松山キャスター
「今回みたいな行動をアメリカがやることによって逆に過去のアメリカ政権がやってきた、中東和平の仲介役としての立場、これに信頼に傷がつくのではないかという意見は当然あると思うのですけれども」
武見議員
「いや、それは。そういうことはあまり気にしていないのではないかな。それから、同時にその中で、一見矛盾するかもしれないけれども、これまでの中東の合意に関わる基本的なコミットメントを変えないと言っているんですよ。それから、2国家、当事者同士で、話し合いで解決してもらうという基本的な立場も変えないと言っているんですよ。そのことと矛盾したことを実際にやっていることは明らかだけれど、しかしながら実際の、もう1つの別の表現の中には、従来のそうした姿勢は維持すると、こういうふうに言っている。その一見矛盾した立場というのは今後どういう形で、アメリカのこうした和解に向けた動きに復帰する可能性があるかどうかを見ていく時の判断基準になるのだろうと思うのですが、このへんはまだ正直、よくわからない」
松山キャスター
「田中さんはどう受け止めていますか?中東和平の仲介者としてのアメリカの役割」
田中教授
「うん。トランプ自身はまったく諦めていないというか…」
松山キャスター
「むしろ何かそれをやりたいみたいなことも言っていますよね?」
田中教授
「うん、厚顔無恥だと私は思いますけれども。それを続けられると思っているようですね。その彼の考え方はたぶんここの北朝鮮に対しての対応や、イランに対しての対応ともたぶんまた共通するところは、片側に対して非常に強い態度で出る。たとえば、パレスチナ自治政府に対して、ある種の兵糧攻めをかけることによって彼らが、トランプ大統領が用意しているとされる新しい和平提案を受諾させるということです、否応なしに。それを打ち出すのだろうと我々も構えているわけですけれども、そこにまだ至っていないのだろうと思います。しかし、対応からすると間に入ってと言うよりも、こういう条件で飲めということ。これはおそらく事前にイスラエルなどと協議したうえでの、イスラエル側が受諾できる内容を、パレスチナ側に一方的に押しつけるという構造になるのだと思いますね」
松山キャスター
「実際イスラエルへの大使館移転というのが行われたあとに、たとえば、ガザ地区では早速、デモ行進が衝突に発展して多数の死傷者が出ていると。こういう不安定化というのは、これから先ドンドン増えていく?」
田中教授
「そうですね。少なくとも当面のところ続くとまた再燃する可能性はおおいにあると思います。ただ、ちょっと気をつけたいのは、西岸で起きたのは衝突だったのですけれども、ガザ地区は間で、フェンスで仕切られていますので、これはフェンス越しに撃っているんですよね、イスラエル軍が。ですので、ちょっとそこらへんのニュアンスは変えた方が、違う形で我々は見た方がいいではないかと思います。あとアメリカのヘイリー国連大使は『そういうデモを先導する連中がいるのが悪いんだ』ということで、まったく原因が何にあるのかと、デモが発生している原因が何にあるのかということについては、見て見ぬふりですよね。残念なことに、多くのアラブ諸国も同じ対応をとっています」
松山キャスター
「アメリカのホワイトハウスはガザ地区での動きについては、たとえば、バックにいるハマスがいけないということで、批難していますよね?」
田中教授
「はい、批難していますね」
松山キャスター
「そういう意味では、これから先、どれぐらい衝突が拡大していくか。たとえば、今回の件と関連して、たとえば、イスラエルとイランとの間で、シリアに駐屯しているイランの部隊との間での衝突が起きていると」
田中教授
「はい」
松山キャスター
「こういう衝突は中東地域で散発的には今後も行われていく?」
田中教授
「そうですね。衝突というよりは、空中戦ですので」
松山キャスター
「空中戦ですね、はい」
田中教授
「部隊同士がぶつかると言うよりは、ロケットが飛ぶか、あるいはイスラエルが空軍機で空爆を仕かけるかということなので。部隊と部隊がガチにぶつかるということではないわけですけれども。ただ、これをどう見るのかですよね。アサド軍を助けるために入っているイラン軍が、そこにいることに対して強い危機感を覚えているイスラエルの安全保障上の観点からの対応はわからないではないです。しかし、ゴラン高原を含めて、イスラエル側が占領している地域に何が行われるかということについてイスラエルも非常に過敏になって、場合によっては、それに過剰に反応している、ないしは過剰に攻撃を仕かけていることによる、次の段階へのエスカレーションも当然、我々にとってもたぶん見過ごすことはできないものだと思います」

日本が目指すべき外交は
松山キャスター
「安倍総理は国会の答弁の中で『日本はパレスチナともイスラエルとも良好な関係を持っている。イランとも良好だ。独自の外交が展開できる』と話しています。そういう意味では、たとえば、中東和平の仲介役、あるいは仲介役を、アメリカを引き込んだ形でやっていくという外務省の方針もありますけれども、国会議員のレベルでは今度、日本とパレスチナとの間を取り持つ議連を立ち上げたという話ですけれど、どういう活動を予定されているのですか?」
武見議員
「これは北朝鮮に対する政策があって、対米協調というのは政府のレベルでは極めて優先順位が高いわけですよ。しかし、中東地域に対する外交という観点からすると、実は先ほども申し上げたようにアメリカと日本というのは必ずしもその外交的なスタンスが同じではない。むしろ全て、対立している国々との間の2国間関係は日本が良好に確保できていると。むしろそういう中で、平和構築のための役割を担い、調整役を担いながら、現地における一定の外交的なプレゼンスをつくり、それにより8割方、我が国の原油輸入を依存しているこの中東地域の中で、日本が非常に外交的に好ましい立場を占めて、状況の安定化に努めるとともに、エネルギー資源の安定的な供給の確保をしていくというのが、我が国の外交的な1つの枠組みになるわけですね。その時に、アメリカとの間に齟齬が生じた時、議員の立場というのが比較的自由にこうした穴を埋めることができます。そこで私と大野さんが一緒に、実は河野外務大臣とも相談をしました。もともと河野さんを会長にして日本・パレスチナ議連というのをつくろうと。その発足に合わせて、パレスチナの国家承認を行う国会決議というものをやろうと、そのための署名運動をやろうというのを同時並行に現在進めているんですよ。これが入会案内です」
松山キャスター
「あっ、まさに進んでいるプロセス?」
武見議員
「ええ…、この私が会長代行になっているのは本来、会長には河野さんがなるはずだったから。大野さんもこの中に入って、それでこういう超党派の議員外交というのをやることによって日本外交の選択肢を広げると、そういうことを現在、私どもがやろうとしています」
松山キャスター
「大野さんもそれに賛同されて、この議連の中に入った?」
大野議員
「そうですね。武見会長代行で、私は幹事長でやらせていただいています」
松山キャスター
「なるほど。どうしてもアメリカの同盟国ということでアメリカの立場を尊重しつつ外交をやるという姿勢がこれまでもあったと思うのですけれども。そういう意味では、今回のパレスチナ議連というのは、それとは違う独自路線を行くということになるわけですか?」
大野議員
「先ほど、武見会長代行もおっしゃっておられましたけれど、まず紛争を予防するという意味から言えば、パレスチナとイスラエルの2つの国家が共存するということを我々は支持しているというメッセージを出す必要があります。そのためには国家承認、既に全世界で137か国が国家承認していますから、それを国会として政府に求めるという動きは少なくともメッセージとしては伝わるのではないかというのが我々の思惑です」
武見議員
「うん。あと我々は、たとえば、パレスチナに対する人道支援、これによってパレスチナの人達が悪夢の中で将来に対する見通しが見えないという状況を少しでも改善して、光を見せたい。その努力をまた日本が率先してやろうということで、UNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)という国連の組織の中でも特にそこの医療・保健担当の局長をやっているのが、清田さんという日本人なんですよ。彼らと非常に緊密に連絡をとりながら、こうした無償資金、あるいは緊急人道支援というような予算を使って、こういったパレスチナに対する、特に保健・医療分野の協力支援というのを、一貫して毎年行っているんですね。こういったことは、これからまさにもっと続けなければいけない、大きな外交の選択肢になってきている。それをまた後押しするのがこの議連の役割でもあるんです」

武見敬三 自由民主党参議院議員の提言:『対米協調と忍耐』
武見議員
「北朝鮮問題という最も切迫した課題を抱えている日本は、アメリカとの同盟関係、協調関係というのは最も優先的課題です。しかし、この中東に関わる外交に関しては必ずしも同じではありません。しかし、そのギャップを、忍耐強く、アメリカとの協調関係を壊さないように、忍耐強く、独自路線で、中東における日本の外交を展開していくというのが私はおそらくこれから日本がとるべき道だと思っています」

大野元裕 国民民主党参議院議員の提言:『冷静な視点』
大野議員
「私は『冷静な視点』ということを掲げさせていただきました。と言うのは、日本にとってはもちろん、対米関係もとても大事です。中東における我が国の国益も大事です。核とか、あるいはパレスチナ問題については国際法や、あるいは国連における立場も大事です。これらをバランスとれた中で、自分達がどの道を選ぶのか、どこが1番利益なのかということを、片やトランプ大統領はどちらかと言うと扇情的で、ツイッターで大騒ぎするタイプに乗らない方がいい。冷静な視点をきちんと持つ中で、自分達が、国際法的に何を後ろ盾にして、中東からは何を獲り、アメリカとは何をするかということを見ていくのがとても大事だと思います」

田中浩一郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の提言:『二枚腰』
田中教授
「なかなか表現が難しいのですけれど、こと中東外交であれ、トランプ米政権は日本に対しても相当いろいろな要求をしてくると思います。ある部分、相撲にたとえると、いきなり突っ張りで、一気に土俵際まで追い込むような感じでくると思いますので。そこで腰砕けにならず強い骨子で一気に、一気にと言うか、決着はつかないと思いますが、できるだけ多くのものを残す、ないしは勝ち獲るというような対応をとってもらいたいと」