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2018年5月18日(金)
世界情勢の近未来は? エマニュエル・トッド

ゲスト

エマニュエル・トッド
歴史人口学者
三浦瑠麗
国際政治学者

『知の巨人』トッド氏に問う 『家族制度』と世界情勢
生野キャスター
「トランプ大統領の就任や、イギリスのEU(欧州連合)離脱、アラブの春、古くはソ連の崩壊などを予言的中させ、その発言に世界の注目するフランス人学者のエマニュエル・トッド氏を迎え、混迷する世界情勢と日本の未来について話を聞いていきます。歴史人口学者のエマニュエル・トッドさん。1951年フランス生まれです。パリ政治学院を卒業後、ケンブリッジ大学で博士号を取得。フランス国立人口統計学研究所を昨年定年退職されています。また、昨年に出版しました『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』で日本の家族制度から見る日本の現状と未来について言及されています。トッドさん、これまで世界情勢の未来を予測しまして的中させてきました。トッドさんが、1976年に初めて出した著書『最後の転落』でソ連崩壊を予測、1991年にソ連は崩壊。2002年の『帝国以後』でアメリカ発の金融危機を予測、2008年にリーマンショックが発生しました。2007年『文明の接近』で中東の民主化運動を予測、2010年にアラブの春が発生。2005年、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』でイギリスのEU離脱を予測、翌年にイギリスのEU離脱が決定しました。2016年8月、朝日新聞のインタビューでトランプ大統領の当選を示唆、3か月後にトランプ大統領は当選しました。トッドさん、なぜこれらの現象を予測することができたのでしょうか?」
トッド氏
「大変印象深く説明を聞きました。これだけの予言をしていたということですね。私はフランスの歴史学の伝統に根ざした研究をしてきているので、長期持続という考え方です。現代のジャーナリストであれ、政治家であれ必ずしもまともに受けてくれないのですけれども、この長期持続の観点に立てば、歴史の方から、人口状態の変化から、たとえば、識字率とか、出生率の変化ということから、この17世紀、18世紀からの変化から、ダイナミックな歴史の変化というものが、そこから説明できるということを学生の時から勉強して、それを知ったわけです。それを現代の世界の分析に適用しようとしたわけです。ご説明にあったように、歴史家として、歴史家の先達に習って、この長期持続の立場から未来を予測するという手法を学んだのです」

『核家族』と現代政治
生野キャスター
「トッドさんは歴史人口学者として主に世界の家族制度や識字率・出生率に基づいて、現代政治や社会を分析していますけれども、基本となる家族制度について見ていきたいと思います。トッド氏の理論では、家族制度は大きく分けまして、核家族、直系家族、共同体家族、この3つに分類されています。核家族から順に見ていきたいと思うのですが、核家族は、結婚後の動向は、子供は親から独立、遺産相続について親の意思で決定するのは絶対核家族、これは主な国と地域としてはイギリスやアメリカがあります。また、遺産相続について子供間で平等なのが平等主義核家族ですね、フランス北部やスペイン、イタリアということですけれども。絶対核家族の国と平等主義核家族の国、これはどういう違いがあるのでしょうか?」
トッド氏
「家族システムについて語る時は中世以来の過去の農村地区における家族形態を問題にしているわけです。古い家族形態が、近代以降の現代の社会にまでイデオロギー的なこの決定的な影響を持っているということです。このイギリスやアメリカの、いわばアングロサクソンの国ですけれども、これは絶対核家族ということで自由主義ですけれど、平等ということに関しては意を介さない。そういうようなのが絶対核家族。特に遺産相続では子供達の間で均等相続するのではなくて、親の意志で決定するということがあります。ところが、フランスの方では、この核家族がメインだったのですけれども、フランス革命以前から、この平等に関するオブセッションに近い意志というものがあったんです。ですから、フランスの場合には自由で、しかし、平等というものを追求する、そういうタイプの家族が伝統的にあったということ。ですから、それは家族構造の中にそういった自由で平等な家族形態というものがフランスの場合にはあった」
松山キャスター
「トッドさんの家族の分類の点から見て、アメリカは絶対核家族というカテゴリーにイギリスと共に入るわけですけれども、絶対核家族というカテゴリーから、トランプ大統領が誕生したことというのはどう説明できるものなのですか?」
トッド氏
「うん、それは興味深い質問です。人類学的なモデル、これは過去の家族構造からネオリベラルな革命がアングロサクソンの国、イギリス、アメリカです、で起こったかを説明できるんです。個人主義の国です、イギリスもアメリカも。しかし、平等には意を介さない。この社会の変化の中で格差というものを容認するようなメンタリティというものが伝統的にあるんだということ。ただしこのような理論的な図式から現実を説明することには一定のもちろん、限界はあるわけで、経済的なインセキュリティ、つまり、不安定性、不安定化ということも現在、生じているわけです、イギリスでも、それから、アメリカでも。その中で、そういった格差の拡大ということ、あるいは安定性が失われていくということ。その時に、この伝統的なメンタリティが、自由で個人主義的だけれど、格差を容認するような、そういう社会に対する、自分自身の伝統に対する、いわば反感というか、レボルトですね、反乱が起こっているのだと説明できると思います」

『直系家族』と現代政治
生野キャスター
「直系家族とはについて見ていきたいと思います。結婚後の動向としては長男・長子が親と同居ですね。跡取りは長子・長男です。結婚後も親と同居しまして、遺産の全ても相続するという家族制度ですけれども、主な国と地域としてはドイツ、日本、韓国、北朝鮮が挙げられます。直系家族の国には、トッドさん、どのような特徴があるのでしょうか?」
トッド氏
「直系家族というのは、つまり、これはトランスミッション、世代間の伝達ということ、能力の、この農民の家族であれ、農業技術を親から子供へと伝えていく、非常に生産性の高い。職人であれば職人の技能を代々伝えていく。それから、インダストリー、産業の面でもそうです。それがこの伝達ということですね。技能の伝達ということが日本の経済というものをここまで高めてきたわけですね、テイクオフの段階から。これは大変、スペクタキュラーな経済成長というのを、これはドイツと同じように、日本の場合、経験してきたわけです。それは直系家族の中には、リジッドな、このトランスミッションの…、トランスミッションのリジッドなシステムがあるわけですね。たとえば、イギリス、絶対核家族の場合は、あるいは…、核家族の場合は、子供達はもう親元をドンドン離れて自由にあちこちに飛びまわるわけですね。それに対して、この直系家族の場合は、親から子供へのトランスミッションのかなりリジッドなシステムが伝統的にはあったと。かつてはこの3世代家族というものがあったわけですが、伝統的な日本の家族では。これはドイツでも同じことが言えたわけです。日本とドイツは極めて効率の高い、経済面では極めて効率の高いパフォーマンスを実現してきたわけですね。女性の地位は、核家族の社会よりも、直系家族の場合、やや低いことがあります。特に日本の場合、女性が職業的なキャリアを全うするのか、それとも結婚して子供をつくるのかという、この選択を迫られるというのは、ちょっとこれは異常な事態ですね。それは直系家族というものの伝統からきていると思います」
松山キャスター
「同じ直系家族のカテゴリーの中には、トッドさんの分類では日本だけではなくて、たとえば、韓国、北朝鮮も入るということなのですけれど、これは直系家族同士の国で、必ずしもその関係というのは、歴史問題などもあってうまくいってない。北朝鮮、現在まさに焦点になっていますけれども、北朝鮮の大きな問題も出てきていると。これをどのように説明できますか?」
トッド氏
「似たような家族形態の国だから仲良くなるとは限らないわけですね。似た者同士だから仲良くなるわけではないんですよ。日本と南北の朝鮮ですね、同じような歴史を経験しているわけですけど、しかし、植民地化の問題が大きく歴史的にはのしかかっているわけですね。私は韓国にもよく行きますけれども、日本の植民地支配というものに対して、残虐な支配というもの、それに現在でも恨みに思っている韓国人がいるわけです。しかし、日本による植民地化というものはヨーロッパの植民地化の経験とは違うわけです。もちろん、朝鮮半島の近代化に貢献したという面もあるわけですけれども。コミュニズムが既に意味を失った現代社会にあって、皮肉にも、まさにこの直系家族の効率というものが、北朝鮮の場合、核を開発する、ミサイルを開発する。それから、権力のトランスミッションが世代、親から子供へですよね、北朝鮮の権力者の場合。これはまさに直系家族の典型的な世代交代によるトランスミッションが北朝鮮で行われているわけです。ですから、同じ直系家族の国だからと言って仲良くなるとは限らないというのが私の考え」

北の非核化と『イラン核合意』
松山キャスター
「最新のニュースとして、北朝鮮の核問題に関連し、6月の米朝首脳会談が行われる予定になっていますけれども。それを前に、ここ数日、北朝鮮が米朝首脳会談に出席しない可能性というものを示唆し始めたと。一方で、南北の閣僚級、次官級協議、予定されていたものを突然キャンセルするといった動きも見せている。アメリカと北朝鮮との間でちょっとギクシャクした雰囲気が出てきているのですけれども。最近の北朝鮮のこういった動きをどうトッドさんは分析されていますか?」
トッド氏
「最初に正確を期すために言っておきたいのですけれど、私の北朝鮮に対する態度なのですけれども、私は北朝鮮というのはちょっと許容できない体制だと思いますね。家族、王家…に関しては許容できません。それはフランスの18世紀の悲劇につながるかと思いますよ。ここで理解していただきたいことは北朝鮮、韓国、朝鮮半島のセキュリティに関してなのですけれども、これを理解することができるのは、朝鮮戦争の時にアメリカがどういうことをしたかということですけれども。それは北朝鮮を破壊しようとしたわけですよね。それはアメリカが北朝鮮に脅威を与えたわけですよね。それが根本的な理由となりまして、北朝鮮は核武装したと私は考えます。私はフランス人ですけれども、私どもは核を持っております。核武装を持っているフランスですけれども。それはセキュリティにつながるんです。ですから、ドイツは怖くありません。そういったことでドイツと友人でいられる。それは一般的な状況ですよね。ここで現在どういうことが起きているかと言いますと、北朝鮮に戻りますけれども、そこでは全体を見る必要があると思いますね。2つの決定が同時になされたわけなのですけれども、それはイランが1つ、もう1つは北朝鮮。そこでイランですけれども、イランにおきましては条約を脱退したわけですよね。イランの核兵器に関しての条約です。それはもちろん、懲罰もあるわけですね。これはある意味、非常に過激なことですよね。一方におきまして、韓国に関しては非常に開けているという感じがしますね。それはどういうことかと言いますと、実際、トランプさんがやったことの現実から非常に懸念すべきことですね。なぜかと言いますと、イランの人達が、条約を破棄するということをした時、彼らは言ったんです、…また、攻撃しますよ。今度はそれを朝鮮の人が聞いた時に同じことになっちゃうんじゃないかと思って、北朝鮮が同じような反応をするということは当然、私は予想していたわけですよね。なぜかと言いますと、核を持ちたい国にアメリカが攻撃するわけですよね。核を持っているところしか、交渉をしないということですよね。皆、西寄りですよね、皆、アメリカ側ですよね、ある意味、そうですよね。しかしながら、私達がしていることは、私達がと言うことはできないけど、他の人達が皆、バカだなんて言えないわけですよね。私達は現在どういう立ち位置にいるかと言いますと、もしあなたが核を持っていなければ、犬同然に扱いますよ。こっちに核を持っている国がいれば、あなたは尊重しますよ、となるということですね。そうなると、一般的な核の考え方はそのようになっていくわけですよね。そうなると、それでも北朝鮮はダメだよね、北朝鮮に関しての合意をやめちゃおうという話です。それは、イランとの関連でそう考えるわけなんですよね。最初から皆、私が初めに言ったのですけれど、フランスのインテリは、トランプさんの富豪政策に関して発言しているわけですけれど、それはイランとの条約破棄と関連があるわけですね。それは同じことが北朝鮮でも起こるわけですよね。それは中東ですとか、…に関してアメリカの態度が想像できるわけです」
松山キャスター
「なるほど。そうなると、トッドさんはイランのアメリカの核合意からの離脱、これも影響しているという話がありましたけれども。そうなると、北朝鮮は核を持っていないと攻撃されるという恐怖を持っているとすれば、今度6月のトランプ大統領と金正恩委員長との会談、ここで完全に核放棄するというところまでいくという可能性は、トッドさんは低いと見ているのですか?」
トッド氏
「細かいところでどうなるか、私はわかりません。会議は持たれるのでしょうね。しかしながら、そこで行われることは全て喜劇になると思いますよ。私達が懸念することは、北朝鮮は核を持ち続けるでしょう。私達は、トランプさんがボルトンさんと一緒に北朝鮮を攻撃することがないようにするということです。その場合、中国とロシアは北朝鮮を守るということになってきますので。そうなりますと私達が望んでいることは以下のことです、何にもしないということですね。状況を凍結するということを望みます」
松山キャスター
「もし北朝鮮が仮に核をこのまま持ってしまうという状況になった場合、日本はそれに対してどういう方針をとるべきだと思いますか?」
トッド氏
「私が言うことは、非常にショッキングなことだと思います。ドラマチックなことだと思います。しかしながら、私が申し上げるべきことは、私から話すことは、私の感性は非常にフランス人的かもしれません、それは核保有国ということです。私達は平和主義ですよ、根本的に。あまり大きな軍隊を持っているわけではないですけれど、しかしながら、核兵器に関しては誰も脅威を持たないですね。私達にとっては、それは戦争とか、ナショナリズムということではないんです。フランスにおきましては核を保有するということがどういうことを意味するかと言うと、それは平和なんです。それは核を持つことで平和につながるという考え方なんですね。核を持てば戦争が不可能になるからです。非常に難しいことだと思いますよ、日本に関して、日本人に関しても非常に難しいと思います。でも、本当に再検討する必要はあると思いますよ」
三浦氏
「日本人の中では、フランスがどうして核を持っているのか、かつなぜ平和的なのかということがあまり国民レベルで理解してるとは思えないですね。ただ、フランスを見てくると、それが、防衛的兵器であることは確かである。防衛的兵器という考え方は、日本国民の中で原爆さえ落とされていなければ、完全に合意できるものだと思うんです。ただ、自分達は原爆落とされたことを世界史上でも最悪の部類の犯罪だととらえている。それはユダヤ人がホロコーストで受けたのと同じくらいの犯罪だと思っている以上、それを持つということにはなかなかいきにくいということはトッドさんもそれを踏まえたうえで、わかっていらっしゃるのだと思うんですね。ただ、国際政治学の観点からしますと、アメリカの勢力が退潮していく中、アメリカの正義、アメリカの覇権を前提としない平和を組み立てていく必要があります。それは我々が冷戦期に持っていた常識、あるいはアメリカの覇権のもとでの常識を全部取り除いたうえで、かつ民主主義国が多い、この世界において、どうしたら皆が平和に暮らせるか。あるいは異質な民主主義が増えて、あるいは民主化していない国がある中で、どうやって平和を担保するかということを考えた時に、私の理論では基本的な中心に核抑止がきます。核抑止がなければ、大国間での戦争を抑止することは絶対にできないと思うからです。核抑止が大国間の戦争以外に阻止できないのかと言うと、それもまた違って。国際法や国際機関や、あるいは外国からの仲介によって収められる戦争もあるでしょう。ただ、国際法や核抑止をもってしても防ぎきれない、非対照的な戦争というのがあるんですね。それがイラク戦争でした。そういうような戦争を防いでいくためには、1つの国の中でなるべく抑制的になる、インセンティブづけというのをしていく必要があります。ここで面白いなと思うのはまず日本の平和主義のカルチャーとして効くでしょう。あるいはフランスの核を防衛的に持つ、かつ自分達は絶対にドイツを攻めないというふうなものも効くでしょう。でも、それだけではないと思うんですね。つまり、私はずっと研究者としてシビリアンが軍人のアドバイスに反して戦争を攻撃的に始めることが民主主義国ではすごく多いという研究をしてきました。結果的に血のコストですね、ブラッド・コストをある程度、バードゥンシェアリングをしないと、負担を均衡、負担を共有しないと、国は攻撃的になり得るということを考えると、私は日本の平和主義だけが特別だと思うのでもなくて、あるいは核兵器を持ってる国がいけないと思うのでもなく、かつ韓国がこの状況下においても北朝鮮に対して融和しようと思っている。これは徴兵制があるからですよね。そういった日本特殊論に流れるのではなくて、自分達がどうやって自分達の国の中のレベル、意思決定レベルで、平和的になっていくかということを考えていくべきなので、日本は平和憲法があるから、非核三原則があるから平和的ですという言説よりも、もうちょっと先に進んで、どうやって平和を担保しようかなということを考える段階にきている思います」

日本の先行きをどう読む?
松山キャスター
「これまではある程度、日本というのはアメリカの核の傘のもとで安全保障を保ってきたという部分があるのですけれど、日本では核保有という議論はなかなか現在の段階では難しいというのが当然あると思うのですけれども。日本はアメリカだけではなくて、たとえば、他の国にも目を向けて、どういう外交、どういう関係を築いていくのが理想的な形だと考えますか?」
トッド氏
「誤解がないようにしたいのですけれども、アメリカとの協力というのは、基本的には日本のためになると思いますよ。他には選択はないと思いますね。実際には、それはアメリカとの協力が必要ですよね。日本はどうしても必要なパートナーなわけですよね。そうなりますと、日本がアメリカとの交渉の力をつけることが必要なことだと思いますね。それが1つ目です。2つ目は、非常に日本にとっては辛いことだと思いますけれど、明確なこと、地政学を知っている人にとってはそうだと思うのですけれど、安倍さんもわかっていると思うのですけれど、現在、問題は中国ですよね。日本はロシアとの良い関係が必要になってきますよ。私は日本人が戦争に入ることを望まないと思います、ロシアとの間に。それは歴史的に考えてもそうですよね。日露戦争のことを考えても、1905年だったですか、日本人が国に誇りを持ち始めたのはその頃からですよね。しかしながら日本にとって非常にコストがかかったんですよね。お金もかかりましたし、非常に死人も多く出たんですよね。何万人規模で死人が出たわけですよね。それで日本よりもロシアの方が、日本と補完性があるわけですよね。それは、たとえば、北、ノースカロライナで言えば、また話は変わってくると思うのですけれど、中国を怖がるということがありますよね。もしかしたら2つ目の見方だと思いますね。ですから、日本にとってのクラシックな政策というのはアメリカとの協力、アメリカに圧をかけるということ。それを利用してロシアに対し、中国に必要な武器を供給しているところですから、そうなりますと、東シナ海に関してもロシアの武器ということもあります。そういったことがありますので外交的に軍隊のクラシックな形だということが言えますよね。そうなりますと、先ほど使われた表現なのですけれど、恐怖という教訓、アメリカの核の傘ということですよね。私は思いますけれど、核の重力というものは、それは使われないためにあるべきですよね。戦争をよく思う人なんかはいないわけですよね。なぜかと言うと、それは死を意味するからですよ。ですから、しかしながら、核のリスクというものは自分の国だけのものですよね。フランスは絶対に核を使わないと思いますよ。そう希望します、絶対、絶対、そう希望します。それを使うとしたら自分の国を守るためだけです。ドクトリンの中にも、プーチンさんのドクトリンの中にもそういったものが書いてあります。ロシアもそうです。もし日本がアメリカのことを想像して、日本を守るというセキュリティ…、意志に関して脅威が出た場合は、日本はその危険をアメリカの核の傘ということにおきまして、日本の現在の状況を見ますと、中国とか、北朝鮮とかに核の脅威が出た場合ですよね。しかしながら、日本は核兵器を拒んでいるとしても、もしそれを持つことがあれば、非常に安全が確保できますよ、アメリカがいなかったとしても。もし持つことになれば、本当に素晴らしいことになるのではないでしょうか」

『共同体家族』と現代政治
生野キャスター
「ここからは、共同体家族について聞いていきたいと思います。共同体家族、結婚後の動向は、息子は全員、親と同居。遺産相続に関しては子供間で平等。主な国と地域ですけれども、外婚制ですね、従兄妹婚を認めない地域が中国やロシア。内婚制、これは従兄妹婚を認めるのですけれども、アラブ地域、トルコ、イランとなっています。この共同体家族の国々はどのような特徴を持っているのでしょうか?」
トッド氏
「共同体家族というのは、これは結局、共産主義を生み出した家族形態ですね。権威主義的で。ただし、兄妹間は平等の遺産相続をすると。これは、しかし、共産主義の実験は失敗に終わったと言われているわけですけれども。しかし、中国とロシアの間には大きな違いがあります。この共同体家族というのは、両方の国で古いものです。17世紀、18世紀から現代まで続いているわけですけれども。女性の地位というものが中国とロシアでは違います。ロシアの方が、いわばヨーロッパに近いと言いますか、女性の地位が中国と比べると高い。それがロシアのダイナミズムを生んでいると言います。中国の方は男性支配の国です。私は、中国のダイナミズムというものに関してはペシミスティックな見方をしています。ロシアの場合は伝統的な家族形態、コレクティブなインテグレーションというものを重んずる、そこに、コミュニティに属しているという、この実感というものを大事にします。それは日本と、そういう意味で、ロシアは同じだと思います。日本の場合、伝統的には兄妹間の不平等というのは、長子相続ですから、ですから、ドイツや韓国と似ていると言えますけれども、日本の場合はですね。しかし、ロシアの場合は、ネイションとして、平等なネイションでなければいけないというのが基本的にあります。ですから、それは…、先端技術が発達し、軍隊を持ち、外交関係はアメリカと違って他の国々も存在するということを認めるという態度があると思います。ですから、ドイツが存在し、フランスが存在し、日本が存在し、トルコが存在し、ということ、中国が存在するということ。これを認めてかかるというのが基本的な外交の姿勢だと思います。ロシアの場合はですよ」
松山キャスター
「トッドさん、中国については将来、悲観的だという話もありましたが、中国の今後について、どういった部分に不安要素があるのか?また、中国は実際、南シナ海などでは海洋進出ということをドンドン繰り返してやっていると。軍事拠点化を進めて、西太平洋に覇権を広げようとしているという状況ですけれど、こういったことはどう分析されていますか?」
トッド氏
「中国に関する私のビジョンは、あらゆる人口学者の中国観と同じです。出生率が高かったわけですよね。それを抑制するようになった。若者が多く、老人が少ない。日本の場合は豊かな国ですけれど、老人が多く、若者が少ないという構造になっていますよね。中国の場合、ユーラシアの人口では共通していることですけれども、中国では選別的な堕胎、中絶を行ってきたんです。特に女子は中絶するということで、男子を優先するという伝統がありました。従って、男性は結婚する相手がいないという問題が起こったわけですね。ですから、また元に戻らなければいけない、中国は。ところが、中国の、いわゆる中国の共産主義の中では女性の地位が低いわけですね。ですから、移住の率ですけれども、国内での移住ですね、農村から都市へみたいな意味での国内での移住、こ日本は高かったわけです、国内の農村から都市への。これはロシアでも言えることで。ところが、中国にももちろん、あるわけですけれども。現在、大変な軍事力を持っています。もちろん、ロシアからそれが来ている部分があったわけですけれども。しかし、中国も共同体家族ですから、…平等というものに対する執着があったのですけれど、現実には格差というものが非常に生まれてきている、貧富の格差ですね。それが社会的な不安というものを生み出し、そのために外へ、国内のこの危機を対外関係でもって強く出ることによって救うという政策を現在とっているわけです。それはアメリカもそうです。国内の危機というものを対外進出という形で乗り切ろうとする。ですから、対外的なナショナリズムですね、膨張政策と言ってもいいのですけれど、中国の場合。それが極めて不安材料であるということ」

世界情勢の今後
生野キャスター
「トッドさん、今後の世界全体の流れについてはどう考えていますか?」
トッド氏
「現在、世界がどう動いていくかという質問ですが、ここで予言めいたことを言うのはちょっと冒険ですので控えたいと思います。私は、日本に来て、今回驚いていることは国際情勢について盛んに議論している。これはヨーロッパとまったく同じですね。アメリカ、中国という2大国ですよね、アメリカの主導権、それが中国の主導権に移っていくのではないかと、そういうことをおっしゃる日本の方が多い。確かにアメリカは現在、危機にあります。中国も、しかし、見かけ上の繁栄から危機を迎えるだろうと私は思っています。これは予言ではありません。私が恐れているのは、心配しているのは覇権国を中心とした秩序へといくのではなく、無秩序に向かっていくのではないかと。この世界を組織する原理・原則というものがもうどこにもないような、そういう世界になっていく。と言うのは、中国は本当に、たとえば、WTO(世界貿易機関)のルールを十分尊重しない。アメリカの方はさまざまな条約に調印していながら、すぐに離脱する。こういうことをアメリカが続けていく場合、これはヨーロッパにとって、これまではドイツ中心のEUの中で、ヨーロッパはかなり困難な状況にあったわけですね。と言うことで、中国、アメリカ、ヨーロッパと見た場合に、極めてこの世界を秩序立てる、原則というものが、もうどこにも見当たらない。そこで、ロシアのことについて言いたいのですけれども。私はロシア贔屓というように思われているのですけれども、これは共産主義贔屓とも誤解されているのですけれども。大変なパラドックスなのですが、現在この世界の無秩序状態の中で、通常の理性的な言葉で語っている人は、私はバカなことを言っていると思われていますけれども、これは現在、最もリーズナブルな外交戦略を展開しているのはロシアだと思っているんです。しかし、文化的に、先ほど申し上げたように、ロシアは国家ごとの関係は、平等の形であるべきだというのが基本的な考え方だと思います。ですから、条約、私はちょっと冗談で、オルブライト国務長官、かつての、ソ連の崩壊の時の国務長官でしたけれども、『アメリカは必要不可欠な国だ』と彼女は言った。冗談のように笑いながら、私はこう言いました。日本人にとってはショッキングでしょうが、現在は世界の秩序にとってロシアこそがインディスペンサブル、必要不可欠な国だと私は言いたいわけです。いや、ロシアの武力というのは、戦力というのは相対的には小さいです。唯一合理的にこの社会を見て、外交戦略を展開しているのは、現在はロシアだと。価値、アメリカのように価値は語らない。非常にリアリスティックな外交政策をとっていると。現在、アメリカと中国という、2つの超大国がありますね。ところが、それが世界秩序…、国際的なルールというのを現在、守らない超大国になっているということがあって、米中に挟まれた日本は極めて困難な立場にあるわけです。平和こそが絶対的な価値だと主張しているのは日本ですね。戦争を避けるためにはこの世界秩序を構築することが可能だという信念を持って外交を展開していかなければいけない。そうでなければ、無秩序になります」

歴史人口学者 エマニュエル・トッド氏の提言:『Les dmger posr rous dk la aise americane』
トッド氏
「これは提言ではなく、私の不安を表明する言葉を書きました。アメリカの危機、アメリカは現在、危機にあります。これについてよく考えなければいけない。私はアメリカを支持したい。私の家系は、イギリス・アメリカと密接な関係があるんです。ですから、私は反米主義者ではまったくない。これまではアングロサクソンが世界秩序をリードしてきた。ところが、シリアとか、中東とか、さまざま、ベトナム戦争以降数々の戦争に負けてきた。ですから、傷ついているわけです、それがこのアメリカの危機の根源にあるわけですけれども。ブッシュさんの時の対テロ戦争の失敗です、それから、オバマさんの時に戦争を停止したわけですけれども、トランプさんでもって、また問題児になっているわけですよね。これは私が言うのは、決して反米感情から言うのではなくて、アメリカを何とか救ってあげたいということから、気持ちから言うのですけれども。アメリカの危機は、我々、つまり、日本やヨーロッパにとって大変な危険要素だということを申し上げたいわけです」