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2018年5月17日(木)
外務省同期3人が集結 米朝首脳会談の行方は

ゲスト

田中均
元外務審議官 日本総研国際戦略研究所理事長
藤崎一郎
元駐米国日本大使 日米協会会長
宮本雄二
元駐中国日本大使 日中友好会館副会長

外交のエキスパートに問う! 『中止けん制』で米朝会談は?
生野キャスター
「史上初の米朝首脳会談まで1か月。昨日、北朝鮮は開催予定だった南北次官級会談を、米韓合同軍事演習を口実に突然キャンセル、さらに米朝首脳会談の中止も示唆しました。北朝鮮の非核化をめぐり米朝の牽制が活発化する中、拉致問題も抱える日本はどう動くべきか。今夜は外務省入省同期で、それぞれ日本外交の最前線で活躍してこられた方々をゲストに迎え激動の国際情勢を読み解きます。6月12日にシンガポールで開催が予定されています初の米朝首脳会談ですが、ここにきて北朝鮮が態度を急変させています。昨日、北朝鮮メディアは今月11日から始まりました米韓合同軍事演習『マックス・サンダー』は『板門店宣言に対する露骨な挑戦であり、良好に発展する朝鮮半島情勢の流れに逆行する意図的な軍事挑発だ』と非難。昨日、開催予定でした南北次官級会談の中止を発表しました。さらに北朝鮮の金桂冠第1外務次官が談話として『アメリカが一方的に核放棄を強要しようとするならば米朝首脳会談に応じるか再考せざるを得ない』と、アメリカを強く牽制しています。まず田中さんに聞きたいのですけれど、米朝首脳会談を1か月後に控える中、このように態度を硬化させる北朝鮮の思惑をどう見ていますか?」
田中氏
「これはたぶん北朝鮮の戦術的な動きだと思いますね。常套手段なんですよね。いつも、我々が北朝鮮と交渉した時にもそういうことが何回かあったのですけれども。要するに、たぶん今回の話というのは米韓軍事演習のB‐52という爆撃機の問題というようなことがありますけれど、本当は非核化のやり方・対応について現在、米国と北朝鮮との間では大きな差があると思うんですよね。たぶん北朝鮮は現在、ボルトン補佐官が言っているような、リビア方式、要するに、一方的な核廃棄、制裁の解除といったことでは自分達は非核化するつもりはないという、一種の意図表示をしたということなのではないかと思いますね。だけど、こういうことはよくあることなので。私は結果的には行われることにはなると思うし、もしこういうことで頓挫していくと、結果的にはもっと危険なことになるので。これから話が進んでいくことを期待します」
松山キャスター
「田中さんが指摘された、アメリカのボルトン安全保障担当大統領補佐官ですけれども。『2003年から2004年のリビア方式を念頭に置いている』と、これはテレビ番組のインタビューで答えていますけれど。アメリカは実際、本当にリビア方式がそのまま北朝鮮に当てはまると思っていると思いますか?」
田中氏
「いや、そう思いません。と言うのは、リビアと北朝鮮では核開発の段階のうんと違うわけですよね。リビアは非常に初期的な段階だった。ところが、北朝鮮の場合には、いくつかの方式で核弾頭をつくるということに成功しているわけだし、核弾頭も20とか、場合によったら50とか。北朝鮮の場合には全てが地下に潜っているといったようなこともあるので。常識的に考えても、本当に検証して非核化を達成するためにはそれなりの時間がかからざるを得ないし、あっという間に、皆まとめて廃棄するということには技術的にもならないから。なおかつ北朝鮮は、自分達は自分達の安全のために核兵器をつくってきた、これを廃棄するのはよいと。しかし、廃棄しても安全な保証をくださいよということを言ってるような気がするんですね。だから、その見返りの与え方というのはいろいろな考え方があると思いますけれど、結果的にはそういうことにならざるを得ないから、1つのプロセスをつくっていくということにならざるを得ないので。私はリビア方式と言って、CVIDの唯一の方式なのだということではないと思います」
松山キャスター
「北朝鮮側は、敢えてアメリカのボルトン補佐官の名前を出して、そういった一方的な核放棄に応じられないと言って、かなり強い口調で批判しているのですが」
藤崎氏
「そうですね」
松山キャスター
「これまでの流れを見ていると、6月12日の米朝首脳の会談に向けて、かなり北朝鮮とアメリカ、かなりお互いを評価するようなコメントをしながら、いい状況をつくってきた。にもかかわらず1か月前に北朝鮮側からそういうシグナルが、突然強硬論みたいな出てくる。この背景をどう見ていますか?」
藤崎氏
「どういうことを目指すかということを、はっきり言えば、公にあまり言わないでもっていった方がよかったのだろうと。ただ、アメリカ側との駆け引きでかなり強い形で言っておかないと、向こうに誤解を与えるかもしれないということで言ったのだと思いますが。実は非核化についてお互いに持っている概念がだいぶ違うと。だから、北朝鮮の方は、韓半島全体像の非核化というのはありますけれど、アメリカの軍の方もある程度低減させてのことを念頭に置き。アメリカは完全な即時の非常に短期間における撤廃ということで。そこのギャップがだんだん進んでくうちに、非常にはっきりしてきているということが、問題がこういうふうに顕在化してきた理由ではないかなと思いますね」
松山キャスター
「宮本さんに聞きたいのですけれど。今回、北朝鮮が若干、これまでの前のめり路線を1回ストップして米朝首脳会談についても再考するみたいな言い方をしていますけれども。ここへ来て、アメリカのボルトン大統領補佐官を槍玉にあげて、彼の言っていることは北朝鮮に対して相容れないと、リビアのケースを出しているけれども、核を持とうとしていたリビアと、実際に過去を持った北朝鮮と同列に扱うのはおかしい、というような具体的な文言で反論しているのですけれども。これはボルトンさんがホワイトハウスにいるということを、北朝鮮をかなり意識していると思われますか?」
宮本氏
「うん、それは意識すると思います。北朝鮮もアメリカの人脈はそれなりに勉強しているでしょうから、ボルトンさんという人は言い出したら変えない人なんですよね」
松山キャスター
「実際、外交の現場でもそういう経験はありますか?」
宮本氏
「少しはありますけれど。だから、そういう極めて論理的、原理原則のしっかりした人なので。ですから、そういう人が入ってきて、リビア方式と言われてみると、アメリカの政権の中で相当な影響力を持つというのを心配するというのはわからんでもないんですね。ですから、そういうことに対する、いわゆるバランスをと言うか、それに対する反撃を少ししとかなければいけないと。もう1つ、北朝鮮が中国を訪問し、それまで中国とのコネクションが弱いまま米朝の首脳会談が実現して、気がついてみたら、自分がポッとアメリカの方に放り出され、自分1人でやらなければいけないという状況になって、ちょっと心配になって、中国との関係を戻しておこうということで、ああいう努力をしたと思うのですけれども。そういうことで少しそちらの方も整えて、アメリカに対して従来、北朝鮮がやったような戦術的にいろいろとまた揺さぶりをかけると、そういう作戦もとりやすくなったというのは間違いなくあると思います」

『非核化』米中朝のシナリオは
生野キャスター
「先ほど、宮本さんからもありましたけれども、アメリカとの直接会談を前に北朝鮮は、それまで冷え切った関係にあるとみられていた中国に接近する動きを見せています。3月25日、南北首脳会談の前に金正恩委員長が北京を訪問し、習近平国家主席と会談。4月の南北首脳会談後、5月に入りまして、王毅外相が訪朝して金正恩委員長と会談。5月7日からは金正恩委員長が大連を訪問し、習近平国家主席と会談を行いました。さらに今週、北朝鮮の高官が中国を訪問するなど、中朝の行き来が活発になっています。また、一部報道では来月の米中首脳会談に合わせて習近平国家主席がシンガポールを訪問するのではないかとも伝えられています。宮本さん、急速に接近している中朝ですけれど、それぞれの思惑をどう見ていますか?」
宮本氏
「北朝鮮が急速に核兵器を完成させるために、ミサイルを撃ったり、地下核実験をやったという、あの段階で中国は、これは許容範囲を超えるというので、トランプ大統領の誘いもあって、それで北に対して制裁強化ということで対応して。なおかつ比較的真面目に制裁を実施し始めたんです。そこで中朝関係というのは相当厳しい、メディアが名指しで批判し合うという、極めてめずらしい緊張状態にまでなったんですよね。今年の何月だったですか、対外連絡責任者等の、大臣クラスですけれど、その人が習近平さんの特使で北朝鮮を訪問したのですけれども、金正恩さんは会わなかったと。そういうのが状況としてはあったのですが、金正恩さんの訪中後は、まったく手のひらを返すように、中朝関係が良くなったということですね。だから、北としては、先ほど申し上げたような理由が最大の理由ではないかと思うのですが、中国にしてみれば、あの段階で南北が話をして、あっという間に米朝になってしまって、気がついてみたら中国の脇で事態が進んでいくという事態に、彼らも非常に危機感を覚えたと思いますね。その前から中国の中で、トランプ政権に協力をして北に圧力をかけるのは、これはアメリカの中朝分断策、それに乗せられているのだという中国国内の厳しい批判があったんです。ですから、そういう中で中国としても北朝鮮との関係を大幅に修復しておく必要があるということで、従って、お互いに首脳会談及び関係修復は必要としていたということだと思います」
松山キャスター
「田中さんはどのように見ていますか?」
田中氏
「現在の状況になったのは中国の役割が相当大きかったと思うんです。9割の貿易を持っている中国が北朝鮮を締め上げるということについて相当、大きな役割を果たした。だから、我々としては非核化のプロセスが終わるまで中国はそういうことをやってくれる存在でいてほしいわけですよ。だけど、中国がもし北朝鮮に対して支援するというようなことになってしまえば、北朝鮮に対する圧力が、効き目がなくなるから、非核化というのも中途半端に終わってしまうということがあるんですよね。それを考えたら、現在トランプ大統領がやっていることが正しいかどうかという議論はあると思うんですよ。と言うのは、中国との関係で貿易のところでガッと要求を突きつけた、それから、台湾についても相当揺さぶるようなことを中国にやっていると。本来ならば、どうなんでしょうね。北朝鮮が、プライオリティが1番高いと言って、非核化に向けて中国の協力を求めていくということが常識的だと思うのですが。トランプ流というのはテコをつくってやっていくということなのでしょうかね」
松山キャスター
「そういった中で、金正恩委員長は1度目の訪中、北京で習近平さんと会談をして、それから、ほとんど時期を置かずにもう1回、大連で会談するという。2回、こんなに短期間で会うのはかなり異例のことだと思うのですけれども。これは中国側に北朝鮮を自分の側に後ろ盾としているんだぞということをアメリカに対してアピールしたいという意味合いなのですか?」
田中氏
「それは金正恩がアメリカと対峙していくにあたって中国の全面的なバックアップが必要だという意識を持ったから、何回も行っていると思います」
松山キャスター
「なるほど。中国がバックにいるということを逆に金正恩委員長がアメリカに対して示したい?」
田中氏
「…ということだと思いますね」
松山キャスター
「宮本さん、そのあたりは?」
宮本氏
「米朝の水面下の交渉はよくわかりませんから。おそらく、その流れの中で、金正恩さんとしては中国に行かなければいかんと思ったかもしれませんよ。水面下のいろいろな折衝の中で。それから、まさに田中さんが言う通り、中国としては間違いなく、それ以外のところでアメリカは中国を現在、締めつけていますから。それに対するカウンターバランスと言うか、カウンターメジャーとして北朝鮮を使う気ですよ。だから、それは間違いなくトータルのアメリカとの関係の中のカードの1つに北朝鮮は入れますから。それで現在はかわいがる姿勢をとっているのだと思いますけれども。ただ、本気で北が核兵器国に邁進した時に、中国はまた違う顔を見せる可能性は依然としてあると思います」
松山キャスター
「そうした中で、一部報道では来月、シンガポールで行われる米朝首脳会談に合わせて、中国の習近平主席もシンガポールに来るのではないかという観測も一部出ているのですけれども」
宮本氏
「これはお膳立て如何ですね」
松山キャスター
「ああ、どういうお膳立てが?」
宮本氏
「ですから、休戦協定、平和協定含め、中国がそこにいて、それをブレッシング与えなければいけない。ですから、大国・中国の、それもますます指導者としての権威を高めている習近平さんが、わざわざ出向いてですよ。それでよかったと思われるような場面設定がないと行きにくいと思います」

『平和協定』現実味と『その先』
松山キャスター
「南北首脳会談のあとの板門店宣言で示された平和協定に向けての協議の枠組みというので、これまで2007年の南北首脳会談後に出た声明では、3者または4者という表現しかなかったのですけれど、それが具体的な国名まで挙げられて、南北とアメリカ、または南北とアメリカ・中国という、この2つの枠組みが出てきました。この当事者を見ていると、朝鮮戦争の、いわゆる当時の関わった国がこの枠の中に入っているわけですけれども、仮にシンガポールに習近平主席が入ると、今回、米朝首脳会談に合わせて入るということになると、その当事者が、あとは韓国もありますけれども、揃う可能性というのが出てくると思うのですけれども。そういう場面で、平和協定までいかなくても、たとえば、終戦宣言みたいなものがなされる可能性を田中さんはどう考えますか?」
田中氏
「終戦宣言は、あり得ると思います。あり得て、なおかつ、もちろん、非核化について、きちっとしたコミットメントがあって、具体的なロードマップができたとした時に、終戦宣言と平和協定に向けて作業していきましょうというのはあると思うのですが。私は現在、外務省にいるわけではないから、こんなことは言えないですけれども、日本が当事者でなければいけないかどうかという議論は当然あるんです。それで現在の状況の中で、北朝鮮の非核化とセットになるのは平和協定だけではない。それは正常化とか、経済協力とか、諸々の枠組みがあるから、それをこの4か国ないしは3か国でやるというのは、フェアではないし、無理だと思います。だから、6者協議のような枠組みがどうしても必要になるということだと思うので。終戦宣言と平和条約のために作業しましょうということだけであるならば、それはこういうことなのかもしれないけれども。それだけということにはならないと思うんですよ、北朝鮮の現在の主張を考えてみれば」
松山キャスター
「仮に、平和協定みたいな話がドンドン進んでいくとなると、いわゆる国連軍、あるいは在韓米軍、アメリカ軍というのは朝鮮半島に、韓国側にいるわけですが、存在意義・存在価値がなくなるのではないかという議論がありますよね。実際、朝鮮半島全体の非核化という話が出てくると、在韓米軍は撤退すべきなのではないかという議論が韓国の中からも出てきていると。田中さん、この在韓米軍の今後のあり方、どういう議論が出てくると感じますか?」
田中氏
「確かに在韓米軍というのは北朝鮮と分断された時に、戦争から引き続き、在韓米軍がいるということだけれども。新しい時代において、必ずしも在韓米軍の役割というのはそれに限られているわけではないと思うんですね。この東アジアの環境の中で、日米、日本にいる米軍と、それから、韓国にいる米軍というのはそれぞれ役割を果たしていると。だから、この地域の平和と安全ということを考えれば、日本の立場からすれば、在韓米軍は残ってもらいたいと思うんですね。一方、韓国の立場からしても北朝鮮という国が突然ですよ、核は放棄します、もう軍事挑発はやらない、そういうことをただちに信じられるような国になるかどうかというのは、私は、そこはそうではないだろうと。もう少し時間を経て、仮に平和協定ができても、在韓米軍に残ってほしいと。形は変わるかもしれない、だけど、米韓の安全、相互安全保障条約というのは韓国も必要だと思うと思います。ですから、あまりそれがなくなるという議論はないと思います」
藤崎氏
「在韓米軍については、現在、トランプもボルトンもそういう、それを減らすという選択肢はテーブルの上に乗っていないと言っていますね。ただ、そういう記事がニューヨーク・タイムズなんかに出ているはその通りなのですけれども。ただ、昔ほど、カーターが撤退をしようとした時みたいな状況ではない。韓国も強くなっているし、それから、むしろ地上軍が攻めてくるというよりミサイルの方がもっと大きくなっていますから、意味が。だから、同じではないと思う。ただ日本、韓国が協議に預からない形で、北朝鮮との間のディールとして、何かそういうことが行われてしまうようなことはまずいと。だから、そこのところははっきりアメリカに言っておかなければいけない」

『拉致問題』解決の道筋とカギ
生野キャスター
「ここからは日本が一刻も早い解決を求めています拉致問題解決の今後の道筋について聞いていきます。先週、東京で行われた日中韓首脳会談の共同会見で安倍総理は拉致問題についてこのように述べました。『拉致問題の早期解決に向け、私から中韓両首脳の支援と協力を呼びかけ、日本の立場に理解を得た。日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算し、国交正常化を目指す』と発言しています。田中さん、拉致問題に関して、日中、日韓で共有することはできたのでしょうか?」
田中氏
「共有することが外交の目的であるかのような言われ方がされているのは間違いだと思います。もちろん、環境をつくるという意味で、日本がアメリカにシンガポールの首脳会談で提起してくれよとか、韓国に対してそれを言うというのは、環境づくりという意味で正しいのだけれども。あたかもそれをやることが外交の目的だと。日本国民の生命財産にかかわることだから、こんなことを他の国に頼むという国はないですよ。こんなことを頼むこと自体が恥ずかしいことです。日本が自分でやらなければいけない話なので。だから、それは報道の伝え方の問題だとは思うけれど、私は普通であれば、日朝で水面下でも協議を続けていて、それを側面から支援してくれよ、と言うのはわかる。現にそれが行われているのかもしれないけれども。ですから、私は日本が当事者なのだから、これは。日本自身の努力で解決をしないといけないし、中国や韓国がこれを理解したかったからとって、彼らが解決してくれるものではない。アメリカが解決してくれるものではないから。そういう環境をつくるということは正しいと思うが、それで全てであるわけがないので。まさに必要なのは日朝で対話の道を探るということだと思います」
松山キャスター
「ただ、実際、日米首脳会談で、この間、安倍総理とトランプ大統領が会った時、トランプ大統領は今度の米朝首脳会談で必ず拉致問題を提起すると、『シンゾーが重要だと言う問題は私にとっても重要な問題だ』という表現もありましたけれど。アメリカとしてどこまでこの拉致問題をバックアップできるものなのですか?」
藤崎氏
「アメリカのトランプがこの問題を取り上げるということがどう取り上げて実際にやるかどうかわかりませんから。ですけれども、現在、これを一言一句、私は、おそらく北朝鮮の方でも見ていて、ああ、こういうのが来るんだなと、これはこちら側、日本側からこう言っているからだなと、けしからんと受け止めているというのはそれだけこのメッセージが伝わっているということではあるだろう。ただ、もちろん、実際に解決は日本の役目であるというのはその通りだと思いますが。しかし、ありとあらゆる手段を使うという意味では、中国も、韓国も、アメリカも、いろいろなところからやっていくというのは必要なのだろうと思いますね」
松山キャスター
「まさに藤崎さんが話されたように、北朝鮮は拉致問題についても最近言及しているのですけれども。これは12日の朝鮮中央通信の論評ですが、『日本の反動層が既に解決済みの拉致問題を持ち出し世論化しようとするのは、国際社会が一致して歓迎している朝鮮半島の平和ムードを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だと言わざるを得ない』という表現をしているのですけれど。ある意味、北朝鮮も拉致問題を意識しているということの表れともとれると思うのですが、そう考えますか?」
藤崎氏
「私は、そう思いますね」
松山キャスター
「宮本さんはどうですか?この間、日中韓の首脳会談が東京で開かれた時、そこにも共同宣言の中に拉致問題の解決というのが盛り込まれたと。中国は盛り込むのに若干難色を示したという話がありましたけれども。これは北朝鮮に対して何かしらのメッセージになると感じますか?」
宮本氏
「メッセージには間違いなくなると思います。ただ、拉致問題、それから、日本、そういうものを北朝鮮が、あるいは中国が、韓国が、アメリカが考える朝鮮半島の大きな問題の解決、その中心に座っているのは核問題ですけれども、そういう大きな問題を解決していく、その構想内に、そういうものの中に日本を位置づけしないと、日本の重要性はわからないんですよ。日本というのは実は非常に重要ながら果たして、肝心かなめのところになったら、日本が出て行かないと、あの計画も実現しない、この計画も実現しない、それは必ず将来くるんですね。それを関係諸国にもっとわからせる。そういう努力をしながら、お願いをするということだと思います。最終的にはもちろん、もう2国間の話で解決しかないのですけれども。今日現在の状況を見れば、そういうこの日本の重要性というものを、より上手に関係諸国に伝え、拉致問題を真剣に対応しなければいけないんですよと、中国さん、あなたもそういうことなんですよ、という説得を続けていく必要があると思います」
松山キャスター
「田中さん、北朝鮮があらためてここへきて既に解決済みという立場を、国営メディアを使って論評したというのは、これをどう感じますか?」
田中氏
「ずっと言っていることですしね。私は、北朝鮮が言うことを、それを受け止めるのは一定の限界が、一定の程度問題だと思います。私達が交渉してる時も、彼らは表面的にはありとあらゆることを言うわけですよね。だけど、外交は結果をつくる作業だから、途中で、拡声器で叫ぶ作業ではありませんから、これは拡声器で叫んでいるわけで。自分達の立場をある程度は、相場観を切り下げるために言ったり、いろいろなことはあるとは思いますよ、ああいう国だから。日本を見ていると、圧力、圧力、拉致ということでいったい何をしたいのかというビジョンが見えない、みたいな。朝鮮半島の平和というのは日本の平和に直結するわけだけれど。だから、要は、こういう平和をつくるのだと、そのために非核化というのはこういうふうにやらなければいかんのだという大きな構想と、それから、それが非核化された時に、日本というのはこういうことをやるつもりがあるんだという、ところもちょっとは見せてほしいという気がします」
松山キャスター
「このところ安倍総理が対北朝鮮の拉致問題に関して言うと、日朝平壌宣言についての言及がだんだん増えているのですけれども」
田中氏
「ようやくですね」
松山キャスター
「これは日本としても、北朝鮮に対して拉致問題を解決できればきちんと正常化できるのだというのを鮮明に思い出してほしいというメッセージなのですか?」
田中氏
「それはそうでしょう。だって、この平壌宣言では、謝罪という、過去の清算・謝罪ということも言っている。核の問題はマルチ、多国間で解決していきましょうとか、一定の全体をとらえているわけですよね。だから、特定のことだけを言っているわけではないので。こういうもののベースの中で、拉致問題を位置づけて解決していくのが物事をうまく解決していく方策だと思うんですよね。拉致だけ切り離してやっていっても、なしのつぶてになるので」

情勢急展開に日本外交の針路は
生野キャスター
「ここからは、今後の日本はどう外交を進めていくべきかを聞いていきます。来月の米朝首脳会談の前にも重要な外交日程が続いています。今月22日には米韓首脳会談、26日には日露首脳会談が行われます。来月8日からカナダでG7サミット、ここで日米首脳会談が行われるか調整中です。12日には米朝首脳会談。日本の安倍総理は、会談直後にトランプ大統領に直接話を聞きたいとしています。田中さん、この関係各国の動きでどこに注目されていますか?」
田中氏
「いや、もう一連の動きがあると思いますね。私は、これが、たとえば、G7の場とか、日本というのはこの地域、朝鮮半島に隣接する国として、それでG7に出ている先進国として日本のビジョンみたいなものを朝鮮半島でこういうことにする必要があるということを語っていただきたいと思うんですよね。そうすることによって初めて各論が生きてくる。私は圧力路線というのは正しい路線だと思うんですよ、常に。それが現在に至ったわけだから。いつでもそれを維持していかなければいけない、だけれど、他にやることはあるよ。圧力、圧力、だけではないということですね。それから、拉致という特殊な問題がある。韓国だって500人の拉致被害者がいるわけだから。だから、それも大事だと思うのですけれども。朝鮮半島の平和という観点からビジョンを語ってもらいたいと思うし、日米首脳会談だって、それは米朝首脳会談で何があったか直接聞きたい、それは、気持ちはわかるが、日本の役割は何かということについて単にアメリカに頼むということだけではなくて、日本としてこの非核化を成功するために何をするかというベースでアメリカと話をしてもらいたいと思うんですね」
松山キャスター
「安倍総理が米朝首脳会談の前後に、2回の会談を調整しているという話がありますけれど。かなりこの短期間で2回やるのは異例のことだと思うのですが。拉致問題も含めて、アメリカに託したメッセージがどう北朝鮮に伝わって、北朝鮮からどういうリアクションがあったか、そのあたりを真っ先に聞きたいから、2回目の会談を調整している、こう見ていますか?」
田中氏
「こんなに頻繁に会談をやることの意味というのは、私にはよくわかりませんが。ただ、直接話を聞いたということは国内的には売れるでしょう。ですから、外交を通じて国内にアピールをするということなのではないですか。それはそれでいいと思うけれども。だけど、私が大事だと思うのは、そこに中身を与えてほしい。単に、いや、聞きました、という形ではなくて、日本としてこれを成功するために何をやっていけばいいのかというベースで話をしてもらいたい」
松山キャスター
「藤崎さん、実際にトランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題を北朝鮮に伝えましたと。ただ、日本としてはそれ以上のものを期待している部分もあると思うのですけれども」
藤崎氏
「そう、当然そうだと思いますね。私は現在の一連の日程の中で、日露首脳会談があって。さっき枠組みの話がありましたけれど、外れそうになっているとすれば日露ですよね。4者でやろうとか、そういう動きがある場合に。ですから、ロシアと一緒に入ろうねと言うことはかなり意味があるタイミングかもしれませんね。それから、もう1つは、首脳会談だけではなくて。そこに至る過程において、まさに準備していく高官達の動きがあるわけですね。ですから、たとえば、外務大臣であるとか、あるいは安全保障補佐官であるとか、いろいろなレベルでの話が、またもっと下の高官のレベルでもあると思いますけれども、その中でいろいろ浮かび上がってくる点も大事なのだろうと思います。首脳会談だけではなくて」
松山キャスター
「日露という意味では日本が蚊帳の外論みたいなものが一部であったりしますけれども、朝鮮半島の問題について、日本とロシアが若干、距離外れているのではないか、枠から外れているのではないかという議論がありますけれども。たとえば、6か国協議という枠組みが前にありましたが、現在も存在はしていますけれども、ロシアと一緒に共闘して6か国協議をもう1回、活性化し、その枠組みで話し合おうと、そういうアプローチを日本が積極的にやるということは考えられるのですか?」
藤崎氏
「私はどういうふうにそのことが進んでいるかわかりません。だけども、日本の立場とすれば、ありとあらゆることをやりながら日本のプレゼンスを確保していくというは当然だと思います。ですから、先ほど言ったようにアメリカが中心かもしれないけれど、もちろん、ロシアも大きいし、中国や韓国を含めて、北朝鮮もあるでしょうけれども、日本がいることの意味を説明していくということは当然だと思いますね」
松山キャスター
「宮本さんはこの一連の今後の外交スケジュールを見て、どう感じますか?」
宮本氏
「それぞれに重要なんですけれども、しかし、1番考えなければいけないのはこの地域に核をなくして、平和をつくって、拉致問題を解決するという、そういう大きなターゲットが、外交目標があるわけです。そうするとこれをこれまでの経緯からずっと眺めていくと、なぜそれが実現できなかったという最大の問題は、国際社会が一致できなかったからなんですよ。だから、国際社会が一致しないから全部そこをうまく逃げられて、結果として、ほぼ、北朝鮮の核兵器が実現したという状況になって。これが実現した暁には、東アジアはとてつもない安全保障環境の悪化が待っているわけですね。そういうことを考えれば、現在、日本外交としてやるべきことは国際社会の一体化、これをいかにして実現するか。そこに焦点を当てて外交努力をすべきだと思いますね。それが6者になっても構わないですよ。立派なそういう国際社会一体化の場ですよ。ですから、外されているから、6者に戻してやっていこうという発想ではなくて、国際社会が一致してやらない限り、核の問題は絶対に解決しない。核の問題が解決せずに拉致問題というのはなかなか難しいですね。ですから、そういうことも考えていくと、そういう国際社会を一体化するための日本の外交努力、こういう首脳会談というのは全部それに使えますよね」
松山キャスター
「一連の外交、日本国内で見ると、いわゆる官邸主導とよく言われますけれども、外務省が外交の最前線に立ってグイグイやっていると言うよりも、どちらかというと官邸とか、NSC(国家安全保障会議)とか、そっちの方を中心にまわっているのかという印象を受けるのですけれど。田中さん、現在の外務省、機能としてきちんと一連の外交をキチッキチッと仕切ってやっているのかどうか、そのあたりをどう見ていますか?」
田中氏
「私は中にいないからわかりませんが、そうは見えないです。なぜ見えないのかと言うと、官邸による人事の掌握というのは非常に威力がある。要するに、自分達がこう思うということがなかなか言いにくい。本来、プロフェッショナルというのは毎日、毎日、外務省にいれば、電報を読んで他の国がどう動くのかという分析・評価をし、そのうえで政策なのだから。それは当然、官邸に対して意見具申をしなければいかんわけなのですが、たぶんなかなか官邸の意に沿わないことを持っていくというのはできにくい、まさに忖度の世界が、外務省についてもあると思うんですよ。これはすごく危険なことだと思うので。まさに外務省の人がそういう全体の、宮本さんが言ったように国際社会の枠組みをつくることがまず先決なのだというような議論をしているかと言うと、私は甚だ疑問に思いますね。これは、日本の現在の人事で掌握していくというプロセスが結果的にダイナミックな政策展開を妨げているのではないかという危惧は持ちます。他の方は違う意見をお持ちだとは思うけれども」
松山キャスター
「藤崎さんはいかがですか?」
藤崎氏
「私は役所を離れて5年ですから、どういう風にいろいろな意思決定が行われているのか知りません。だから、うまくいっていないはずだという議論をするのはあまりわからないのですけれども。どの国でも、たとえば、アメリカでも国務省とホワイトハウスとがあり、あるいは議会があり、その中でいろいろと調整をしながらやっていかなければいけない。時にはどちらかが強くなったり、時には弱くなったりするのですけれども。日本の国益は、本当は1つなので。そこはどこかですり合わせをしなければいけない。そのすり合わせをするのはトップのところですり合わせをすることになるんですね。だから、本当にそれがきちんとされていないかどうか、私はされていることを期待します」
松山キャスター
「あと外務省の機能とも関係するのですけれども、担当部局があって、たとえば、拉致問題解決のための日朝首脳会談へ向けた調整、これは田中さんに聞きたいのですけれども、実際見通しとして実現できる可能性はどれぐらいある?」
田中氏
「実現はできると思います。だけど、単に日朝首脳会談をやればいいという話ではないので。それは首脳会談のためには達成すべき成果とか、成果ができない可能性とか、いろいろなことを考えながら手を打っていくべきものですね。アメリカのように圧倒的な力を持った国ではないわけだから。そのためには事前の折衝というのが私はいると思う。事前の折衝というのは水面下でもいいから是非やってほしいと思う。それはシンガポールの米朝会談の結果如何によって展望が開けてくる可能性はあると思う。と言うのは、物事は非核化の展望が出てくれば、当然、日本はそのパーツなんですよね。そのパーツの日本が持っている最大の問題が拉致であると。そうすると、この問題をこなしていかなければいけないのではないかというのは、北朝鮮だってわかるはずだと思うんですね。ですから、決して日朝首脳会談ができないとか、そういうことはないと思います。だけれど、十分な準備が必要だし、かつ非核化の動きというのがきちんとないとなかなかその見通しは立ちにくいと思います」
松山キャスター
「宮本さんは、日朝首脳会談の実現をどう見ていますか?」
宮本氏
「それは当然追求すべき目標であるのは間違いないと思います。最後は首脳会談にもっていって、場合によって首脳会談の動きをつくって、その次の展開をはかるというのは極めて正当な外交の手法だと思いますが、その時には日本の戦略がなければいかんということですよ。それを実現するためには無数と言っていいぐらいのいろいろなことをやらないとその最終的なところに到達しないんですね。ですから、中国の周恩来総理が『外交に小事なし』、…小さな事、『外交に小事なし』ということを言っているのですが、外交というのは本当に小さな、晩餐会のメニューも含めて…」
松山キャスター
「全てが重要だと?」
宮本氏
「全てが重要ということ。そういうのを全部…、しかし、その前に大きな戦略があって、それに従ってその小さなことをたくさん積み上げていって、最終的な結果が出るということだと思うんですね。その段階で現在、首脳がぶつかって、ぶつかった方がいいということがあれば、その段取りを飛び越して首脳がやる、それも当然、その選択肢は出てくると思うのですが。その前にそういうのを考える癖、そういうものを日本の国として、もう少し持った方がいい。私がやった時に、必ずそうやったと言うわけではありません。しかしながら、外交として言えば、そうやった方がいいだろうと思います」
松山キャスター
「藤崎さんはいかがですか?」
藤崎氏
「2人の議論に異論があるわけではないのですけれども。外交においては、自分が要求者の立場にできるだけならないようにしなければいけないというところもあります。それは、アメリカ大使でもそうなんです。北朝鮮大使でも同じだと思いますし、中国に対してもそうですけれども。自分から要求者という立場に立った瞬間に、相手はそうかと、それではちょっと…という感じになりますから。現在の首脳会談であれ、いろいろなものについて、どういう段取りでどういうふうにして、向こう側からも必要だという感じになっていかないといけないので。そう簡単に、これは大事です、とはいかない。結果が大事ですから…と思います」

田中均 元外務審議官の提言:『信頼のギャップをうめよう』
田中氏
「『信頼のギャップをうめよう』と。これは日本と米国、トランプの米国との間にも私は十分な信頼があると思わない。それから、日本と韓国、日本と中国、ましてや日本と北朝鮮、これは相手国のせいでもあるし、日本のせいでもある。だから、先ほど、宮本さんのいろいろなことをやらないと結果はつくれないんだという、藤崎さんが言うように、向こうが言ってくれればいいねというのはあるけれども、その根本あるのは信頼だと思うんですよね。信頼がないところに何事も起こらないと思うので、信頼を埋める努力をしてもらいたい、信頼のギャップを埋めると」

藤崎一郎 元駐米国日本大使の提言:『自信泰然』
藤崎氏
「『自信泰然』、大きな意味でいけば、日本の外交は、ずっときちんとアメリカとロシアと中国と、中国もよくなってきていますし、韓国もよくなって…、日中韓ができるようになったし、インドともやっているし、できているんですね。それ以外のもちろん、中東とかがありますけれど。そこできちんと自信を持って、現在、北朝鮮との関係についてちょっと皆が予想しなかった動きが出ているのは確かですけれども、あまり慌てず騒がず泰然と取り組んでいくということが大事だろうと。これは本当にそう思います。外交で1番大事なことは足元を見られないことですから、どの国に対しても。仲間の国に対しても、そうですね。きちんと泰然と対応するということが1番大事だと」

宮本雄二 元駐中国日本大使の提言:『対話力の強化』
宮本氏
「『対話力の強化』と申しましたが、これは申し上げているソフトパワーとしての外交力の強化ということです。すなわち日本の経済に代表される国力は相対的に低下していくわけです。これは必然的にそうなっていくわけです。その中で、日本の場合は、国家として生きていくためには外交力。そうすると、先ほど言ったように、構想力とか、自分の立場を相手に説明する力とか、そういうものをますます強化する。日本の国、外務省、政府、それから、国民も含め、そういう対話力を強めていかなければいけないと思います」