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2018年5月9日(水)
検証…日中韓首脳会談 非核化と拉致問題は?

ゲスト

佐藤正久
外務副大臣
宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
朱建榮
東洋学園大学教授
李泳采
恵泉女学園大学人間社会学部准教授

北朝鮮めぐる3か国の思想
斉藤キャスター
「今日、日中韓首脳会談が2年半ぶりに東京で行われました。史上初の米朝首脳会談を控えて、日本と中国、韓国はどんな思惑で動き、どう連携できるのか徹底検証していきます。日中韓首脳会談での大きな論点というのが北朝鮮の非核化だったわけですが。3首脳の発表では『朝鮮半島の完全な非核化実現という共通目標を確認』し『年内に朝鮮戦争の終戦宣言、休戦協定を平和協定に転換するための会談を推進』という、この板門店宣言について3首脳が支持した、一致したということです。佐藤さん、今回3首脳が支持で一致したということをどう評価されますか?」
佐藤議員
「今回、韓国の努力によって、南北首脳会談で初めて完全な非核化ということを北朝鮮が文言として合意に達したということでは韓国の努力と評価をしないといけないと思います。これまで北朝鮮が非核化に言及したということを他の国からの伝聞によってはありましたけれども、まだ北朝鮮は国内向けには非核化ということを言っていなかったと。この南北の首脳会談の板門店宣言で初めて文書で残ったということが大きな前進だということは日本も中国も同じ認識で、これは当然、歓迎すべきものだと思います」
斉藤キャスター
「宮家さんはどうですか?」
宮家氏
「さらに付け加えるとすると問題は完全な非核化とは何か、実はまだ詰まっていないですよね。北朝鮮が発表しているこの宣言も含め、全部目を通して見ると、北朝鮮が自分達の持っている核兵器を破棄するとか、自分達を非核化するという趣旨の文言は1つもないです。ないですよ。韓国の一部の人達が言っているように、我々は側聞するのだけれども、果たして本当に言っているかどうかというのはわからない。その意味で、まだこの問題、米朝で、おそらくこの問題が1番大きな問題になるわけですけれども、完全な非核化という文言をとったのは確かに一歩前進ではあるけれども、まだまだ、まだまだ、本質のところにはきていないなという気がいたします」
佐藤議員
「今回、これを当然歓迎はしますけれども、そのあとの具体的な行動、これに向けて3か国が協力していきましょうという話までつながっているわけです、今回のそれぞれの首脳の説明は」
斉藤キャスター
「一歩前進したということですよね?」
佐藤議員
「はい」
宮家氏
「ついでに、3か国はどうですかと言うと、これまた微妙に違うということですよ」
斉藤キャスター
「朱さんはどのように?」
朱教授
「私は3か国が初めて、このような完全な非核化という板門店宣言を支持するという意味で、3か国が同じ立場をとるという約束したこと、それが重要であって。これから具体的なものは米朝の首脳会談、それを待つということと。一方、それに合わせて今後、3か国はそれぞれの役割分担。今回の発表の中で、中国の首脳も、3か国がもちろん、アジア全体のことを指しているのですけれども、それぞれの優位があると、それぞれの長所があると。おそらく朝鮮半島の非核化問題でも、それぞれの役割を合わせて、いろいろと協力をしてやっていくというところが、今回、意思疎通して、ある程度合意に達したということは大きいと思います」
松山キャスター
「表現としては完全な非核化というあたりは盛り込まれるかもしれないけれども、なかなか日本が主張してるようなCVID(完全で検証可能な不可逆的な措置)的な文言を合わせて共同宣言で出すというのは、現在の段階では中国の立場からすると難しい?」
朱教授
「まず1つ、現時点で、それは過度に北朝鮮を刺激する必要がないし、何よりも具体的な内容は、米朝首脳会談にある意味で花を持たせた方がいいということもあって、現在の3か国で、そのような話をするより、少なくとももうちょっと待つべきではないかと。現時点で、最大公約数で完全な非核化というところが、実際に解釈はおっしゃるようにこれはCVIDというところに当然行き着くと思うのですけれど。現時点では歩調の一致を強調したことに意義があると」
佐藤議員
「ただ、事実として安倍総理から、まさに完全で検証可能な不可逆的な措置をとらなければいけないということは、それは当然、言及はしています」
朱教授
「そうですね」
佐藤議員
「それは何も言及していないわけではなくて…」
朱教授
「そうですね。中国も韓国も反対はしていないということですね」
佐藤議員
「大事なことは、これは一歩前進だということは評価をしつつも具体的な行動をこれから3か国が連携しながら、これを求めていくということが今回大事だと思うので。特にもともとのこの3か国の日中韓のサミットというのは開くこと自体が実は大変なんですよ。隣国が故に利害関係が絶対発するわけで」
松山キャスター
「そうですね、これまでなかなか開けなかった時期がありましたね」
佐藤議員
「そういう中で、1999年に小渕総理がASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3の時に、いろいろ問題はあるけれども、その首脳が集まっていろいろ胸襟を開いて話そうや、ということでこれは始まったのですけれども。実は今回が7回目ですけれども、毎年開かれているわけではなくて…」
斉藤キャスター
「2年半ぶりですものね、今回」
佐藤議員
「今回2年半ぶりという中で、今回、首脳が集まって、しかも、米朝首脳会談の直前と言われるこの時期にこの北朝鮮の問題について話し合って、とりあえず完全な非核化ということまでは合意をし、これからさらに朝鮮半島を含めた、北の非核化に向けて皆で協力しようということを話し合ったので。極めて時期的には私はいいタイミングで、いいものができたとは思っています」
松山キャスター
「李さんはどう考えますか?韓国の立場からすると」
李准教授
「今回、南北、板門店宣言は、南北の間で合意できる最大のレベルのものです。なぜかと言うと、2000年6月と2007年10月の2回の南北首脳会談で核問題は一切入れていません。北朝鮮は一切、核問題はアメリカとの問題だと言って韓国に核問題を提案すると決裂したりとかしました。しかし今回、この完全な非核化というものは、わかりやすく言うとCVIDを入れたということを意味します、南北の宣言の中に。しかし、その合意は南北だけの宣言であって、東アジア周辺の国家にこれが支持されるかどうか、これが非常に今後この合意文を活用するのに重要なのですが、今回…」
松山キャスター
「韓国としてはCVIDがそこに入っているという認識でいるということですか?」
李准教授
「それをわかりやすく言うと完全な非核化という、この言葉に既にCVIDを認めて、それを表現したということになるんです」
宮家氏
「本当ですか…」
李准教授
「そうです、ただ、それは…」
松山キャスター
「文字が違いますよね?」
李准教授
「文字は違いますけれども。その文書の中では、その合意を中で入れたということなので今回、成果になります。ただ、この合意は米朝関係にトランプ大統領が核問題に関して決断をして大きい成果をあげないと、逆に米朝会談の意味がないわけです。全て南北関係だけで解決される問題ではないので。だから、これは、今回の南北会談は、アメリカ、米朝会談の橋渡しの役割なのだということですが。実際、現在、米朝関係の中には非常に認識のギャップが大きいわけですよね。完全な非核化をめぐる、段階なのか、一括なのか、しかし、そのギャップは、韓国はまだ埋めないといけないのですが。最近の動きを見ると、非常にお互いにいろいろな現在、問題、謎が深くなっているようで、危ういのではないかと言われる段階で、今日、日中韓の首脳会談で新たな板門店宣言を支持したということは、米朝会談に向けての新たな追い風にもなりますし。これが非常にもっと板門店宣言を米朝会談まで引き渡すという、この役割を東アジアの国々が合意したというような意味が非常に大きい意味なので。これを今後、アメリカのトランプ大統領に対しても、もう1つの圧力であれば、圧力のような意味があったと思います」
松山キャスター
「宮家さん、どうですか?まだ非核化ということに対する各国の思惑がまだかなり違っているような印象があるのですけれども」
宮家氏
「李先生には申し訳ないけど、外交文書というのは文書ですから、言葉はまさにそれを意味するわけですよ。完全な非核化というのはCVIDではないです。違うんです。どこにそれが証明できるのですか?もし解釈でそうだとおっしゃるならば、いいですよ。だけども、それをそうなんですと言われても、根拠は何ですかと。完全かつ検証可能で『不可逆的な』と書けばいいんです」
松山キャスター
「文字通りそれを盛り込む…」
斉藤キャスター
「書いていないですよね?」
宮家氏
「しかも、このCVIDというのは北朝鮮の非核化なんですよ。ですから、朝鮮半島の完全なる非核化と、それから、北朝鮮のこのCVIDというのはまるで違う」
李准教授
「だから、板門店宣言をよく読んでいただきますと、2つに文章を分けて書いています。1つは北朝鮮の完全な非核化と、その次の文章が朝鮮半島の非核化ということを分けて書いているのはまさにその意味です。だから、北朝鮮の内部では、北朝鮮はもちろん、板門店宣言はあらゆる南北関係のものが全部、書いてありますし、北朝鮮の核問題だけの文書ではないです。しかし、実務者のレベルでは当然、2人が30分の単独会談しながらも、北朝鮮を今回は信頼できる。それを信じて今回は進めていきましょうと言うことに関しては、いわゆるCVIDを認めたというような前提のうえでものを進めているということですね」
宮家氏
「いや、それは先生の解釈でしょう?」
李准教授
「それは解釈になります」
宮家氏
「これはどう読んでも、どう読んでも、そういうふうには読めませんよ」

北朝鮮『非核化』の道筋
斉藤キャスター
「一昨日から昨日にかけて、北朝鮮の金正恩委員長は中国の大連に電撃訪問しました。2度目の中朝首脳会談が行われたわけですが、中国の国営メディアによると、会談で金委員長は『関係国が敵視政策と安全保障上の脅威を取り除くなら核を持つ必要がなくなり非核化が実現できる』と述べたんですね。一方、中朝首脳会談後、中国の習近平国家主席とアメリカのトランプ大統領が電話会談を行いました。その際に習主席は何と言ったかと言うと『北朝鮮の合理的な安全保障上の懸念を考慮し、朝鮮半島問題の政治解決プロセスを共同で進めることを望む』とトランプ大統領に対して北朝鮮の立場に配慮するよう促したということです。佐藤さんに聞きますが、北朝鮮が非核化の条件として『敵視政策と安全保障上の脅威を除去するならば』ということを挙げていることをどう見ますか?」
佐藤議員
「いや、これは逆に言うと、核保有…、これだけ見ちゃうと、核保有宣言に見えちゃうわけですよ」
斉藤キャスター
「と言うのは?」
佐藤議員
「要は、それが取り除かれなければ核を持つということですから。これだけ見ちゃうと非常に曖昧な感じがしてしまうし、というのはあるのですけれど。ただ、もう1つあって、このあとに非核化の条件として、段階的かつ同時措置というのがあるんです」
松山キャスター
「はい、言っていますね」
佐藤議員
「それがなければ非核化というのはならないです。要は、まさにアメリカが北朝鮮敵視政策をやめて、また脅威をなくすと、同時に、この非核化も段階的な非核化を北朝鮮は求めていて。それに対して見返りも、段階的な非核化に基づいて見返りを求めているわけです。段階的な非核化と言うと、逆に言うと可逆的です。途中で戻れちゃう、元に。これは2回、過去の教訓、これは失敗したのはまさに段階的な非核化の途中で北朝鮮がそれをやめてしまって戻ってしまったと。まさに可逆的と。そこで大事なポイントが、不可逆的という部分がそこにもあって。そこの部分は日米ともに、ここは完全で、全ての施設、それをしっかり検証し全部が戻れないような不可逆的ということまでやらなければ、圧力を緩めるべきではないというのは我々の立場。ただ今回、中朝会談で北朝鮮が言ったと中国が発表しているのは、まずは敵視政策をやめなさい、体制を保障しなさいと、そうすれば非核化になりますよと。さらに体制を保障したうえで非核化も段階的にやりますと。段階ごとに見返りをくださいというのが、かなり我々の考えとちょっと違うことを言っているという部分は、どうしてもこの文章だけを見ると感じざるを得ないと。まさにこれが米朝の中でどういう形でここを埋めていくのかと?ただ、我々現在、圧力を強めていますけれども、失うものは何もないわけで。北朝鮮としては実際なかなかタマがないという部分があろうかと。今回、金正恩委員長が中国に行ったのは随行するメンバーに崔善姫という、まさに前の北米局長で現在の外務次官、対米交渉の人間が入っていると。陣立てを見ても、対米のための打ち合わせという部分が色濃く出ているという感じは見えます」
松山キャスター
「対米ということでは6月上旬までに開かれるとみられる米朝首脳会談に向けてのということですよね?」
佐藤議員
「その前にポンペオ、まさにポンペオ国務長官、現在、北朝鮮に訪朝してすり合わせをやっていますが。まさに6月と言わず、ポンペオ国務長官が来る前にも、ここはすり合わせておきたいという話があったのかもしれません」
松山キャスター
「まさにその事前のすり合わせだとすると短い期間に中国を金正恩委員長が2度も訪れて…」
佐藤議員
「40日ですからね、間隔」
松山キャスター
「そうですね。しかも、こういう内容が情報として出てくるということは、北朝鮮としては段階的・同時的措置という部分はどうしても譲れないということ?」
佐藤議員
「それを中国に言ってもらっているんですよ」
松山キャスター
「中国の力を借りて?」
佐藤議員
「要は、そこはたぶん交渉があるので、北朝鮮は自ら言っていないです。今回の発表でも、中国の発表です、全部」
松山キャスター
「そうですね」
斉藤キャスター
「そうですね、こちらですね。中国の国営メディアが発表しています」
佐藤議員
「だから、まさに今回はこれから交渉なので北朝鮮はまだ1回も米朝首脳会談も言及していないです、国内向けには」
松山キャスター
「公式メディアで、米朝の関係改善に向けた調整みたいなことは言っていましたね?」
佐藤議員
「はい。まだ、会談と言っていない」
松山キャスター
「そうですね」
佐藤議員
「今回の非核化も、今回の米朝首脳会談でも自らは非核化ということには言及していませんので。まだ、これからまさに交渉のカードとしてこれをどこまで持っているのかという部分もあるのかもしれません」
松山キャスター
「まだ、米朝のすり合わせはかなりお互いの原則論を曲げてない、距離が縮まっていないような?」
佐藤議員
「だから、今回、とりあえず中国側に発表してもらったような感じですよね」
松山キャスター
「宮家さん、どう見ていますか?」
宮家氏
「いや、おっしゃる通り、米朝が必ずしもうまくいっていないのだと思うんですよね。金正恩さんの立場に仮になったとしたら、アメリカは予想通りと言うか、ポンペオさんも、ボルトンさんも、どう考えても強行できますわね。そうすると、おそらく金正恩氏が言いたいのは、アメリカさんよ、私は、本当は非核化する気があるんですよと。だから、それは信じてくださいねと。だけども、段階的でなければ困ります、時間かけてくださいよ。相互主義的にいろいろなことを、こっちもやれば、お宅もやってくださいよと。こういう形のナラティブというか、ストーリーを刷り込んで売らなければいけないです、アメリカに。それは北鮮だけでは絶対不可能です、力的に。だからこそ中国に飛んで行って、ポンペオさんが来る前にすり合わせをして、中国からも一言言ってくれよと、そういう話になって。おそらくここに書いていないのだけれども、中国は確か習近平さんがトランプさんに段階的という言葉を言っているはずですよね。ですから、中国にちゃんと言わせているわけですよ。その意味では、悪いけど、まだ全然詰まっていない」
松山キャスター
「朱さん、どうですか?北朝鮮の主張をなぞるような形で中国からこういう情報が出てきていると。段階的・同時的ということも、中国もそれを支持するような情報が出てきていると?」
朱教授
「佐藤副大臣のお話を聞いていても、おそらく外部の世界が北朝鮮に何度も裏切られたという気持ちもあって。そのようないろいろな条件をつけると、結局は、核放棄をしたくないのではないかと思ってしまう、不信感を持つというのはよくわかるし、今度、逆に北朝鮮の立場に立つと、正直言って向こうも安全保障上、最大の自分の敵というのは世界最強国のアメリカ。核という最後の最後のそういうものがなければ本当にどうなのというところの不安感もある。そういう意味で、ただの入口論、出口論ではなく、結果的にそういう中で最終的には当然、非核化という目標の実現ですけれど。でも、それに対して我々の知恵で、北が、たとえば、第一歩、核の持っているものを提出。提出に対して外はどのような見返りをするか。査察に対してどうなのかと。そのような時間的なプログラムをつくっていくことを含めて、それがないままで現在の北朝鮮、アメリカからおそらく責められているのはとにかく一括で、パッケージでやるのか、あるいは2年以内にとにかくタイムリミットを決めて、それをやめなさいと…」
松山キャスター
「アメリカはリビア方式という方式を強く推していると。ボルトンさん、国家安全保障担当の補佐官がずっと主張していますけれど。いわゆるリビアのカダフィ大佐の時代に核を放棄したプロセスが短期で核を除去できたということで。内容はリビアが核兵器を含む、大量破壊兵器計画の放棄をまず宣言をして、そのあと国際原子力機関の査察・検証後にリビアが核兵器の関連機材や資料をアメリカに引き渡し、欧米が制裁解除して国交正常化に向かう、これをすごい短期間で行ったということで、このモデルケースをアメリカが主張しているということですけれども。この主張を考えると、現在の北朝鮮から発せられているシグナル、かなり違うなという印象があるのですけれども」
佐藤議員
「ただ、このリビアの場合は、実は北朝鮮とは違って、北朝鮮は既に核兵器を持ってる可能性が高いわけですよ。そう考えると、そんな簡単にリビアの時みたいに本当に数か月で核施設を運び出すということはなかなか難しいかもしれないと。要は、核製造施設、よく寧邊と言われるところの核施設があれば、それから出た核製造物質、核物質、それから、今度は実験施設もありますから。それぞれごとに皆、申告してもらって、検証して、それを止めて、廃棄をするということになると、これはそんなに簡単ではない。リビアのように短期間というわけにはいかない可能性はあるんです」
斉藤キャスター
「宮家さんはどう思われます?」
宮家氏
「リビアはあまり参考にならないと思うんですね。北朝鮮はもう何十年もやっているわけで、何発も持っているわけですから、実際に。それでその意味でリビアのようなやり方を簡単にできるとは思わない。それから、もう1つリビアについては議論があって、いや、もう、リビアが結局、核兵器を放棄して、持たなかったからと…、それは嘘ですよね。これはリビアが核兵器を持たないから、カダフィ政権が倒れたのではないんです。まったく核兵器と関係ありません。これは2011年の、いろいろな一連のアラブの春と、私は春とは言いたくないけれど、あの騒動があった時、それがリビアにも波及し、それまでのカダフィさんの統治というものがひどかったから。だから、国内が分裂し、介入を招いたということですよね。ですから、その意味では、北朝鮮は必ずしも拒否する理由にはならないだろうなと思います」
松山キャスター
「李さんはどうですか?核放棄の期限についてはまだ各国で認識が一致していないという」
李准教授
「おっしゃる通り、リビア方式はたぶんできないと思います。既に核を持っている国としての位置づけになっていますし、たとえば、北朝鮮の核査察とか、廃棄がなぜ時間がかかるかと言うと、南アフリカだけでも専門家達が10年かかったと言っています。だから、アメリカも段階的で同時的な措置ということは、何らかの形で、2年であろうが、何かの形で、必要。リビア方式ではない限りは時間のかかることです。私から見ると意外に、意見が違うかもしれませんが、実は米朝の非核化のプロセスを思ったよりうまくいってると思います。だから、私達はあまり合わないと思うのですが、実はトランプ大統領のいろいろな発言を見ると、『我々は新しい時代を見るだろう』とか、『平和を祝う』とか、そういうようないろいろなニュアンスは、問題は何かと言うと、核問題に関しては北朝鮮がCVID方式で意外に出てきているのに、それまで認めるのだったら、ボルトンさんが言っているのは大量破壊兵器、化学兵器も認めなさい、あるいは中距離ミサイルまでやりなさいと言い続けることで、逆に北朝鮮は自分達が思っていたところを超えている要求事項に困っていると。そういうところで実は、段階的・同時的な措置は時間の問題。逆にアメリカの方が2年でできるのか。トランプの中間選挙まで、これほど、12発から場合によっては20発まで核、あるいは核物質、施設、これを、全てできる人材だけでも実は何百名が必要ですね。だから、私達が現実的に見ると、段階的・同時的な措置というものはアメリカもとらざるを得ないのですが、しかし、リビア方式でもなく、今日イラン方式が否定されたことが残念だと思います。北朝鮮を考えるのにイラン方式で考えていたのに、これをトランプがダメだと言った時に、アメリカはいったいどういう方式で提案しようとするのかということになるんですね」

朝鮮半島の『平和協定』
斉藤キャスター
「板門店宣言ですが、『南と北は休戦協定65年の今年、終戦宣言をし、休戦協定を平和協定に転換。恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北・アメリカ3者、または南北・アメリカ・中国4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」
としているんです。今年中の終戦宣言ということですが、佐藤さんは可能だと思いますか?」
佐藤議員
「その終戦宣言の中身がよくわからないのですけれど。ただ宣言するだけなのか?南北だけで、これは南北の合意ですけれど、南北だけの終戦宣言というのがどういう意味なのか。実際、その終戦宣言にはアメリカとか、中国も入れるのか、よくそこの部分は今後、考えていかないと。大事なことはこの休戦協定の方ですよね」
松山キャスター
「まさに休戦協定という場合に、朝鮮戦争の歴史を振りかえらなければいけないと思うのですけれども。もともと当事者はアメリカを中心とした国連軍と、朝鮮人民軍、北朝鮮、あと中国の義勇軍、人民志願軍ということで。その3者の間で協定は結ばれていると。当時、韓国はそれに署名していないという状況で、この南北の板門店宣言を見ると、それがこの平和協定に転換するための協議を南北朝鮮とアメリカの3者、または南北と米中の4者でということで、ちょっと当事者、プレイヤーが変わってきているのですけれども、このあたりはどのように?」
佐藤議員
「これは2007年の宣言と同じなんですね。2007年の宣言でも同じように3者または4者と、そう言っているので、そこは前をなぞっているという部分はあると思うのですけれども。そこは休戦協定と言う時は、まさに韓国が当事者なので韓国の立場からしたら、休戦協定を自分抜きでやるというのは、確かにサインはしていないけれども、平和協定を結ぶという段階では当然、自分達も当事者だという意識は当然ありますから。と言うことで、こういう形を入れているのは理解できますが。ただ終戦宣言と休戦協定の締結というところを使い分けていますから、ここはとりあえずお互いに敵対行為をやめるということをもって、終戦宣言と南北で言うのか、ここはもう少し中身を詰めないとわからないとは思います」
松山キャスター
「李さん、板門店宣言に盛り込まれた年内の終戦宣言というところまで、本当にたどり着けると考えますか?」
李准教授
「朝鮮戦争の時に、韓国は最後まで休戦協定に署名を拒否していたので、実際的には終戦宣言をする資格があるのかということが言われているのですが。しかし、今回この板門店宣言で、既に韓国が休戦協定は署名していないにもかかわらず、その当事者に認められたということは韓国の立場から大きいです。実は2007年、廬武鉉大統領と金正日国防委員長の話で廬武鉉大統領が明かしたのは、北朝鮮は2007年から中国排除を要求したということだったんです、終戦協定と平和協定における。しかし、今回この4者が入っていることは、中国に終戦宣言にも平和協定にも加わっていただきたいという、この要請がたぶん南北首脳会議以前に中国を訪問したその合意事項が反映されたと思います。だから、今後、非常に中国の役割をこの平和協定の中に入れたということになるので…」
斉藤キャスター
「中国に加わってもらいたいという?」
李准教授
「もらいたいということが北朝鮮の現在の立場のように見えます。だから…」
斉藤キャスター
「中国側からすると、中国は外すなよという牽制はないのですか?」
朱教授
「それは、1953年、それは中国人民義勇軍、小さい中国の軍の司令官・彭徳懐が署名したと。ところが、1990年代、中国と韓国の国交樹立後、北朝鮮から板門店での休戦交渉が、中国は引き上げてくれと言われて、中国は引き上げたんです。従って、1990年代半ば頃、事実上の現在の休戦協定には直接、中国は絡んでいない。その後、中朝関係がいろいろ悪い中で、一時期、中国を外すというようなところを北が考えた。しかし、現時点でそのまま4者ということも言えないし、しかし、いずれにしても南北朝鮮というのが入るというところをはっきりした。その次に中国がどう加わるかというところを北は今回要請してきた。基本的にこれまで、1953年には韓国は加わっていなかった、1990年代以降は、中国は加わっていなかった。そういうところを、しかし、これからは少し合わせていく。そういうようなところでは基本的に今後南北米中、4者で休戦協定を平和協定にもっていくという方向ではないかなと思います」
佐藤議員
「でも、平和協定と言っても、そんなに簡単にできるものではなくて…」
朱教授
「ないです」
佐藤議員
「休戦協定を見てもすごく細かいです。ですから、これから軍事境界線をどうするんだとか、全部解決しないと平和協定にはいかないでしょうから。だから、終戦宣言はなんとかできたとしても、平和協定まで年内というのはかなり難しい」

文在寅大統領の対日外交
松山キャスター
「日韓首脳会談で文在寅大統領は『朝鮮半島や北東アジアの平和と繁栄のため、南北そして日朝間の対話と関係正常化が必要だ』ということで、日朝間での対話というのも進めるべきだという考えを示したということですね。ただ一方、北朝鮮は現在の段階では日本については、日朝の首脳会談については『1億年経っても神聖な地に足を踏み入れることはできない』というようなメッセージを論評として出しているのですが、李さん、たとえば、このやりとりを見てどういう意図でこれを文在寅大統領は語っていると考えますか?」
李准教授
「文在寅大統領が主に言っているのは南北の平和構築だけでなく、東北アジアの平和構築と繁栄のために、要するに、東アジアの冷戦構造の解体を考えているわけですね。そうすると、南北関係、米朝関係だけでなく、日朝国交正常化も東アジアの冷戦構造解体に大事なことであるということが1つある。もう1つは、日朝正常化の中でもちろん、南北関係改善で様々な投資をもちろん、呼びかけることはできるのですが、何があっても北朝鮮の中にある基本的な経済支援に関して見返りになるのは日朝国交正常化による過去清算と、いわゆる経済協力という仕組みが必要になるわけです。金大中大統領時代に南北首脳会談をした2000年6月、その時代も実は金大中大統領は日韓関係改善をして、ちょうど小泉首相の手紙を持って北朝鮮の金正日国防委員長と会ったわけですね。南北関係改善は日朝関係改善と同時にいかないといけないのだという発想です。そうすると、日韓がバラバラに入るよりは日韓の協力があれば北朝鮮経済を支えることもできるし、場合によっては。中国・北朝鮮が1つの経済体になったとしても、日韓の協力で、それに一緒に対抗、あるいはまた協力体制をつくっていくこともできるわけですね。しかし、拉致問題があり、非常に日朝関係が進んでいかないことが、文在寅大統領の構想から見ると南北関係・米朝関係が改善されるとしても、日朝関係が悪化することで、場合によってはいつでも北朝鮮の逆戻りも可能だというような、そういう懸念を考えると、日韓関係で何とか日朝国交正常化も呼びかけていきたい。その役割を果たしますということは何回も言っているわけですね」
宮家氏
「この問題は基本的に韓国が何かできることではない。日朝で直接にやらなければいけない問題ですから。これは状況が、米朝の状況が、首脳会談が仮に、そうはいかないと私は思うけれども、すごくうまくいって、拉致問題も含めて動き始めると、その時にはもうその時に出ればいいわけですよ。それから、もう1つは、米朝がうまくいかなかった場合、北朝鮮からすれば、現在の最大の関心事はアメリカとの関係をどうするかですから、そこにエネルギーを集中しているわけですよね。その時に日本が拉致問題のことで下手に出る必要はないのだけれども。もし米朝がうまくいかなくなった場合には当然、北朝鮮の関心がまた変わっていく、プライオリティが変わっていく。日米に楔を打たなきゃいかん。もしくはいろいろな形で必ず秋波を送ってくると私は思っています。ですから、もちろん、大事な問題ですからタイミングをうまくとらなければいけないとは思うけれども、決して慌てて動く必要はないと思ってます」
松山キャスター
「米朝の内容、どういう成果が出てくるか、それを見て、それ次第で、日朝の機運が高まってくるかどうかというのも変わってくる?」
宮家氏
「かなり大きな要素になるだろうとは思います」
松山キャスター
「一連の外交の中で1番大きな山場と言われているのが、6月上旬までにも開かれると言われる、北朝鮮とアメリカとの首脳会談、米朝首脳会談ですけれど。今回、日本に来ている日本・中国・韓国、それぞれの国がそれまでにどういうアプローチをしていくべきかという点で聞きたいでのすが、宮家さん、日本としてはどういう対応を?」
宮家氏
「米朝をですか?」
松山キャスター
「米朝に向けて」
宮家氏
「米朝、アメリカに対してやれることはもう既にやっている。フロリダに行って、事実上の作戦会議までやって、すり合わせは終わっているんですね。だから、安倍さんの代理はできませんけれど、私がもし関係者だったら、トランプさんがアメリカの国内問題にあまりに時間とエネルギーを奪われて、国内的な成果を出すために何らかの北朝鮮との関係を、犠牲にとは言いたくないけれども、妥協すること、これだけはやめてほしいと、これはアメリカ政治の問題ではなくて、東アジアの安全保障だから、こういうことです」
松山キャスター
「朱さん、中国としてはどういうアプローチをしていくべきだと?」
朱教授
「現在、実際に中国もいろいろ動き出していることですけれど、そこから見えてくることは、1つは、いわゆる米朝というのは、初めての首脳会談というのは、互いに相手に対して全て1番悪い方向で解釈しているというところでですね、そこで互いに、中国として、米朝の間にそれぞれの懸念を伝え、妥協の可能性はどうなのかというところを今回も、昨日、中国・習近平・トランプ両首脳のそういう中でも、北朝鮮の合理的な安全保障上の懸念というところは配慮しつつ、目標というところも一緒に向かっていこうと。そういうところで米朝、同時に今回の首脳…、日中韓に表れるように他の国が協力していくと、その間にまた互いに場内乱闘みたいなようなところ、別のところにいかないようにというところもあるのではないかなと」
松山キャスター
「結構、習近平さん、最近大きな出来事があると、すぐトランプ大統領と電話で会談し、かなりホットライン的に会談が多くなっていますけれども」
朱教授
「そこは、習近平さんは現在、国内を完全に掌握しているということと、習近平さんのスタイルで見れば、これは公式な外交だけでなく、裏の外交もできると。前指導者・胡錦涛さんはだいたい書いた通りに表向きの交渉だけで裏のことはなかなかやらなかったのですが」
松山キャスター
「官僚的だったと?」
朱教授
「ええ。そういう意味で、習近平さんのやり方はトランプさんと割に気が合うと言うか、割にやり方自体が、裏でいろいろ、それを話し合えるというところが、もう何度も話してきたというところが、私は今後かなり重要ではないかなと思いますね」
松山キャスター
「李さん、韓国は米朝首脳会談に至るまでのアプローチ、どういう形が望ましいと?」
李准教授
「5月22日に米韓会談が予想されていますね。その会談は、この間の南北首脳会談での金委員長の話をまた今回はトランプ大統領に素直に伝えて、アメリカと北朝鮮の認識のギャップをどう縮めていくのか。そういう意味では、韓国の役割は非常に大変だと思うんですね。お互いに初めての歴史的な米朝首脳会談なので、たぶん1回の首脳会談でもちろん、成果がないとは思いませんが、大きな成果があることを実際に過大に期待し過ぎると、逆にそこから失敗に対する後遺症も大きくなるわけですね。そういう面では両側にトランプさんも金正恩さんも世界的英雄になりたいと、いろいろな思惑があると思うのですが、そういう成果にこだわらず実質的な、まさに非核化と、朝鮮半島の平和のために一歩ずつ譲りながら何かの次のことができるように、韓国の役割で調整していくのが非常に大事だと思います。今日、日中韓首脳会談の文在寅大統領の演説の中に『今は世界史的な大転換期を迎える』という、そういう使命を金正恩委員長とトランプ大統領が持って、歴史的な大転換を開くという姿勢を持つように韓国がそれを進めていくという役割が非常に大事かなと思います」
松山キャスター
「宮家さん、米朝首脳会談ですけど、これは水面下で調整を現在やっているという話ですが。1回の会談である程度成果が出るか、出ないか、決まってしまうものなのか、あるいは方向性だけ決まって、2回目、3回目が短期的にまた繰り返される可能性があるのか?」
宮家氏
「それはメリットとデメリットがあるわけですよ。一発で決めれば、それこそ北朝鮮のCVIDの非核化というものが目に見えてくる、具体的な形で動き始めると。これがベストだろうと思いますけれども。それは北朝鮮とっては最悪の事態ですから、おそらく。仮に100歩譲って彼らが本当に非核化しようと思っているとしても、その出口論か、入口論かという言い方よりも最後の最後までそれを温存しますよ、交渉の場で。しかし、残念ながら、それは2年も3年も4年も5年もかけられるものではないわけですね。そうするとある程度、前向きなことを言いながら、詳細についてはこれから詰めていきましょうということになれば、結局何が起きるかというと時間だけがかかって、時間だけが稼がれて、非核化が進まないということも十分あり得る。ですから、段階的になったからと言って、いいというわけではないと」
松山キャスター
「たった今、ニュース速報で入ったのですけれども、トランプ大統領がツイッターで、北朝鮮で拘束されていたアメリカ人3人が解放されたことを明らかにしたということですけれど。これがあるのではないかという話は出ていましたが、どうですか、この段階で3人を解放したということについては?」
宮家氏
「それはアメリカ側にとっては最低限の条件だったと思います。ですから、いつの段階で北がそれを切るかということをやっていて。だけど、これを出したからと言って、北の善意というのはある程度出てくる、受け取っておられるかもしれないけれど、しかし、残りの部分のパッケージの部分がこれで進展するかというと、また別の問題だと思います。だから、少なくともこれは、トランプさんにとっては1つの国内に売れるショー的な要素が大きいですから、それは歓迎すると思いますが、これで全体の動きがうまくいくという保証はないと思います」
松山キャスター
「これを機に日本の拉致問題についてもアメリカから北朝鮮に対して米朝首脳会談で強く言うという1つの契機になりますか?」
宮家氏
「なりますよね」

李泳采 恵泉女学園大学人間社会学部准教授の提言:『無信不立』
李准教授
「私は『無信不立』という言葉を立てました。信頼がないと何も始まらないということです。私達はもちろん、北朝鮮との様々な核合意、歴史的に見て何回も試したのですが、それは裏切られ、あるいはできなかったことをもちろん、知っています。しかし、だからと言って、懐疑に陥ってしまうと何も始まらないのが歴史でもあります。実は今回、北朝鮮がいろいろな状況で、今回こそCVID方式をもって国際社会に出ています。私達は東アジアの平和と繁栄のために、今回こそ日中韓が北朝鮮と信頼を持って、お互いに向き合うことこそ新しい歴史の始まりだと思っています」

朱建榮 東洋学園大学教授の提言:『日中韓関係もCVIDを』
朱教授
「李さんの話の中でもCVIDの言葉が出たのですけれども。日中韓が今回、首脳会談、数年ぶりに行われた。ようやく重要な一歩を踏み出した。これから後退しないよう、互いにいろいろトラブルになるようなところを気つけながら前向きなところをやっていくと。北朝鮮問題というのは、これから最大の協力の1つの焦点になると思います」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言:『TCSの活用 戦略的議論を!』
宮家氏
「もう言い尽くされているのですけれども、皆さんにTCSという国際機関があることをお伝えしたいです。3国の協力事務局というのがソウルにあって。3国の外交官が集まって協力を進めているんですよ。こういう努力をしているということをまず覚えてください。そのうえで、これまでは経済とか、文化とか、当たり障りのないことをやってきたのだけれども、これからは戦略的な問題も議論してほしいなと思います」