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2018年5月3日(木)
改めて考える憲法9条 『自衛隊』明記の是非

ゲスト

船田元
自由民主党憲法改正推進本部本部長代行
石川健治
東京大学法学部教授
伊勢﨑賢治
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授

『自衛隊明記』の是と非
生野キャスター
「憲法記念日の今夜は、憲法、中でも9条に焦点を絞って改正の是非を徹底議論します。自民党の憲法改正推進本部は今年3月に『自衛隊の明記』『緊急事態対応』『合区解消・地方公共団体』『教育充実』、この4項目について新たな改正案を示しました。中でも憲法9条について9条1項2項を残しつつ自衛隊を明記するという方向で憲法改正を進めていることが確認されました」
松山キャスター
「この改正案のもとになっているのは昨年の憲法記念日に安倍総理大臣が自民党総裁として示した、いわゆる安倍私案です。今夜は、安倍総裁と自民党が示した改正案を検証しながら、日本が憲法で示すべき国の形について考えていきたいと思います」
生野キャスター
「まず今年3月に自民党憲法改正推進本部が示しました憲法9条の改正案を確認していきたいと思います。こちらは戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を明記しました現行の憲法9条です。自民党が示した改正案はこの1項2項を残したうえで、新たに2つの条文を追加するものです。その内容がこちらです。『9条の2、前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。9条の2の2項、自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する』。1年前に安倍総裁が突然投げかけた、1項2項を残して追加条文の中に自衛隊を明記する案をもとにしたものですが、国民は憲法改正をどのように見ているのでしょうか。連休前に共同通信が行った世論調査があります。憲法改正に賛成と答えた人は58%、反対の39%を上まわっています。ただ、一方で、憲法9条の改正については賛成が44%、反対が46%で拮抗しています。船田さんはこの国民の声をどのように受け止めていますか?」
船田議員
「憲法全体について、これを改正するという方向性は、かなり国民の皆様にも浸透してきたと思いますが、9条ということになるとどうしても様々な意見が錯綜しておりますし、極めてシビアな問題でありますので、国民の皆さんからするとまだまだ9条改正には相当な議論が必要、もちろん、まったく必要ないという人もいっぱいいらっしゃいますけれども、そういう難しさがあるのだろう。これは憲法全体の改正と9条の改正との数字の違いというのは、そこに現れているのではないかなと思ってます」
松山キャスター
「与党の立場から見て憲法改正のタイミングについて事実上、国会での衆参両院での3分の2で発議して国民投票で過半数という、そうなると、こういう世論調査での憲法改正の賛成反対の数字はそういう面からも非常に気になる数字だったりするのですか?」
船田議員
「はい。我々もこれから審査会で議論をしていくわけですが、当然そういった世論調査、その時々、多少、増えたり減ったりしますけれど、だいたいの傾向を見ながら議論するということは当然やっていかなければいけないことだと思っています。だから、この数字は、なかなかこれから議論するうえで厳しいなと。相当な時間もかかるし、丁寧な議論が必要だなと思いました」
松山キャスター
「自民党内の議論で当初2012年の草案では国防軍という表記があったり、2項の削除ということがあって、そのあと議論を重ねた結果、最終的には1・2項を残すという形で自衛隊明記という形になったと」
船田議員
「はい」
松山キャスター
「党内ではいまだに2項について、戦力不保持を定めた2項について、全体を削除すべきだという、たとえば、石破元幹事長は、そういう主張をされているわけですけれども、そういった意見というのは、まだかなり残っていると思うのですけれども、そのあたりは今後、その議論をするうえで障害になったりはしないのですか?」
船田議員
「うん、ああ…。2項を残すか、残さないかという点においては、様々な議論が党内でございました。私ももともとは2項があるとなかなか自衛隊の姿というもの、あるいは自衛隊の今後の行動についていろいろな問題点が出るのではないかと思っていましたが、安倍総理が昨年、2項を残した形で自衛隊明記。これはある意味で、目からうろこ、のような感じがいたしました。ただいろいろ考えてみますと2項、これを削ることによって現在の自衛隊の姿から、あるいは自衛隊の役割が大きく変わることが当然予想される。あるいはそういうふうに憲法がもっていく可能性があると。そういう点では、非常に国民の皆さんも大変な不安を感じるであろうと。そういうことになると、せっかく憲法改正で9条改正をやろうとしても、国民投票で過半数を得られない可能性が極めて強くなるだろう。そういうことを考えると、段階的にまず2項を残したままで自衛隊を明記すると、これが第1段階。その次の段階として、憲法改正は1回で済むとは思っておりませんので、2回目以降の憲法改正の時に、2項をどうするかということについて、さらなる議論をすればいいのではないか、一歩前進ということでいいのかなというのが党内の多数を占めていた。しかし、2項を削らないといろいろ矛盾が生じるよということに対しまして、私が申し上げたような2段階論ということで、1回目はこういうことでやっていくので、これを認めていただいて、そのうえでさらに2項を削る形を皆で模索していこうということで了解をとろうとしたのですが、なかなかそれでも、なかなか理解していただけない部分は残っているということがあります。もう1つは、自衛隊明記と申しましても、我々の案では自衛隊を組織として明記をする部分と、それから、自衛の措置を妨げない、つまり、自衛権ということも当然付け加えております。これは自衛隊の役割・機能というのをそこに明記をしたという点が工夫した点でございます。自衛隊の組織を書くだけではこれはなかなか難しいのであって、自衛隊の役割・機能というものを明記をすることで、少し議論に広がりを持たせると言いましょうか、奥行きを持たせるということによって2項削除論に対して、少しそれを、我々の考え方を理解していただいて、是非、賛成をしてくれと、こういういろいろ話し合いをしたのですけど、なかなか最終的に完全に折り合うという状況ではなかった。大勢は2項存続だけれども、2項削除という有力な意見もあると」
松山キャスター
「安倍総裁は一方で、今回、自衛隊を明記することで、それ自体が何かしら現状を変更するものではないと国会でも答弁で言っていますけれども…」
船田議員
「うん、もちろん」
松山キャスター
「変わらないのであれば、なぜ今という意見もあると思うのですが、そのあたりはどういうふうに?」
船田議員
「解釈の安定性ということを考えると、明記する必要がありますし。自衛隊員の士気の問題にもかかわるし、国際的に見て、日本国憲法に自衛隊が書いていない、なぜ自衛隊があるのかということに対しての、外から見た時の異常さというか、異様さというものをなくして、世界のいろいろな安全保障についての常識というものを我が国もきちんとそれを踏襲するのだと、こういう姿勢を示すということは非常に重要だと思っています」

『2項維持』に矛盾はないか?
松山キャスター
「伊勢﨑さんは過去にもいろいろなところで発言されていて、交戦権という概念そのものが国際的にはあまり一般的には使われていない用語だということを…」
伊勢﨑教授
「うん。交戦権は、交戦する権利として考えるならば、そう読めるでしょう」
松山キャスター
「この漢字自体はそう読めますね」
伊勢﨑教授
「権利としての交戦はありません。パリ不戦条約から国連憲章ができ、現在、主権国家が自分の意思でできる武力の行使というのは全部、自衛ですね。自衛か…」
松山キャスター
「集団的自衛権ですね?」
伊勢﨑教授
「違う、集団的自衛権も自衛権ですから。集団安全保障です。国連の命令で全世界がやるということです。自衛か、国連の命令でやる武力行使か、この2つしかないです。それ以外のものは、アクト・オブ・アグレッションということで侵略とみなす」
船田議員
「侵略ですね、はい」
伊勢﨑教授
「国際法がやっとここまで発展したんです、これまで。何か形がほしいから、正々堂々としかければ戦争をしかけられる時代がありました。それは明確に国連ができる前から違法化されているんですね。この読み方ですけれども、『The right of belligerency of the state will not be recognized.』、これはすごく重い言葉で、これは国際法的に読むと、交戦に入る権利を放棄するということです。つまり、交戦というのは、この日本国憲法ができた数年前にもう国連憲章がありますから、交戦ができるのは敵が現れた時です、敵に攻撃された時ですね。敵に攻撃された時に、交戦できないということです、国際法的に読むと。つまり、個別的自衛権であろうが、集団的自衛権どころでありません。個別的自衛権さえ放棄させているんです、これはGHQですから、これをつくったのは」
松山キャスター
「憲法9条の2項の条文そのものもかなり矛盾をはらんでいるという?」
伊勢﨑教授
「だから、交戦権という、もしこれを、たぶん誰が読んでも日本人は、交戦する権利でしょう。権利としての交戦はないです。既に違法、厳禁されているわけです。だから、厳禁されている概念を放棄しても何の意味もない。それで重要なのは交戦というのはルールを守って…守る義務です、国際法を。これを交戦法規と言いますけれど、これはネガティブリストと言われる、よく言われるでしょう、軍隊のネガティブリストと。やってはいけない、交戦中にやってはいけないこと、使ってはいけない武器、これをずっと合意し続けているんです、人類は。現在もです。だから、ロボット兵器とか進んでいるではないですか。何を使っていいか、何をやってはいけないのか、やってはいけないことのリストがずっと積み上がっているんですよね。そのルールを守る義務なんですよ。その法体系が日本は欠落しているんです。つまり、交戦権という存在しない、この存在しない交戦権という概念を放棄した恍惚感というのかな、何か、日本人偉いみたいな感じの。肝心の義務、でしょう。その義務の執行能力を主権と言うんですね。自らが持っている実力行使が戦争犯罪を、犯さない、それをちゃんと法理して裁く能力を持って、その能力を主権と言うんです、国際関係では。そこが抜けているんです、我々、主権国家ではないですよ、実は」
船田議員
「歴代の政府の解釈というのがずっと積み重なっておりまして。交戦権というのは、要するに、自衛権ではない形で、侵略を中心とした戦いを交えるということ、それから、戦力というのはまさに他国を侵略する、ある特定の目的をもって侵略をする、そういうものであって、自衛の時には、それはいずれにも当てはまらない。だから、自衛隊というのは戦力以下であるということでずっと解釈をやってきたということですね。ただ、国際的に見ると、これはかなりおかしな話であるというのもわかりますし、ただ、それを言い始めると、収拾がつかなくなるということから、我々とすれば日本語で考えて、現状でできる最大限のことは2項を残した形で自衛隊を明記する、このことで違憲論争に終止符を打つということがせいぜいできることかなと。最初にできることは、それだと思っております」
松山キャスター
「一方で、巷の議論では、1項、2項を残したままで、そのあとの項目をつくって自衛隊を明記するという場合に、新しい項目ができると、そちらの法の方が先にできた法よりも優先するという?」
船田議員
「はい、いわゆる上書きということですね」
松山キャスター
「そういう意見があることについては、どう考えますか?」
船田議員
「法理上、そういうことはあるのかもしれません。でも、2項というのを残しているということ自体に私は意味があると思っておりまして。それで第3項、あるいは9条の2で付け加えるとしても、私は2項の精神というのか、理屈というか、解釈というのはそのまま残ると思っております。それがまた自衛隊の存在を、規定をしていると思いますので。そこは現在の自衛隊と変わるところはないと思います」
松山キャスター
「石川さんはどう考えますか?あとから自衛隊明記という項目ができた場合に、前からあった2項が事実上形骸化するという意見については?」
石川教授
「ここに問題になっているのは1つ、『必要な自衛の措置をとることは妨げられない』という例外規定を置こうということは第1ですね。そのための実力組織を置こうというのが第2で。しかし、そこに『自衛隊』という名前が入ってきている、第3というのがあるわけですね。3番目の問題はまたあとで議論した方がいいのではないかと思うのですけれど。こうやって中途半端な規定を挿入することで、かえって、たとえば、矛盾をどう解決するかという新たな解釈問題を発見させて、この9条2項は、…9条の2という新しい憲法規範をより上位の憲法規範に照らして違憲なのではないかというような議論が現実にドイツで行われているのですけれど、そういうような議論も招くことになります。それから、『必要な自衛の措置』というのも、これもほとんど定義がありませんから、自衛というものを、この9条全体で理解すれば個別的自衛権になってしまうのではないかということで、先年できあがった安保法制違憲論が結局再燃することになりますね。むしろ端的に違憲、無効であるという話になってしまいます。結局、余計な議論を持ち込むだけというのがまず第1の印象ですね」
松山キャスター
「『必要な自衛の措置』という部分は、たとえば、より明確に規定すべきなのか、あるいは、この『必要な自衛の措置』という文言自体がなくすべきなのか、そのあたりはどう考えていますか?」
石川教授
「本来はこれまでなかったものを付け加えるわけですから、ある程度キチッとした定義をして盛り込まなければいけないわけですけれど。どうもこの自衛隊と書き込むことで満足してしまっている感じが、この提案にあるのではないかと思います。そのことはおおいに問題だと思います。結果としてよくない条文になってしまっているのではないかというのがまず問題として気になります。それから、言い忘れるといけないですけれど、この9条2、この2項のところ、『国会の承認その他の統制に服する』と一応書いてくれているのですけれども、まったく具体性がないですよね。これはどうにでもなるということになるわけで、その点もこの際、強調しておく必要があると思います。結局、新しいこれまでなかった国家作用を新設するわけですよね、自衛という国家作用を新設するわけです。それを新設した際に、しかも、その新しい組織をつくった際には、必ずそれに対するこのコントロールをつけると。ばっちり対抗できるようなブレーキをつけるというのが、これが立憲主義的な憲法のつくり方ですけれども。昨年からずっと安倍提案は明記、つまり、新しい権限とか、国家作用を新設するのだということだけを言っていて、このコントロールに全然気持ちがまわっていなかったんですね。自民党内の議論でとりあえず1行加えたと思いますけれども、1行加えただけで何とかなるほどの御しやすい組織では自衛隊はないと思います。ですから、これを書いただけでは何の意味もないということになりますから。結局のところ矛盾を挿入する、しかも、どうも自衛隊というものを書きたいというだけであるという印象を免れない条文提案になっているのではないかということだと思います」
松山キャスター
「伊勢﨑さんはどう感じますか?『必要な自衛の措置』ということが、追加条文として、案として盛り込まれているのですけれども」
伊勢﨑教授
「国際法というのは、国際法違反、戦争犯罪を自ら裁き、法廷を設ける、法整備する、その義務を課しているわけです、国家に。だから、主権国家と呼べるわけですよね。それをしなかったわけですね、すると改憲できるようになってしまうから。9条は守られてきたわけではないですか、これまで、条文はそのまま。それを維持するためおかしくなるわけですよね、国際法。だから、国際法でいう戦力、自衛隊も戦力ですけれど、…と日本は憲法的にいうと、これは戦力ではないということを唯一、制度づけるために使ってきた、歴代政府が使ってきた言い訳というのが『必要最小限の実力組織』ということなんだよね」
船田議員
「そう…」
伊勢﨑教授
「国際法上…あり得ないです。だって、規模が問題であれば小っちゃな国の軍隊は国際法を守らなくていいのかという話になっちゃいますから。それ自体がおかしいのだけれども、それが唯一、歴代政府の言い訳だったんですよ。自衛隊は国際法上でいう戦力でない。それが抜けとるではないですか、と言うことは自分の首を絞めていませんか」
船田議員
「うん」
生野キャスター
「どうですか、船田さん?」
船田議員
「どうですかね。『必要最小限』ということを本当は書きたかったんですね」
松山キャスター
「最初の案では?」
船田議員
「『最小限』というのがあったんです、最初は。それが、第2項があるために、そこでは必要最小限ということが含意としてあると、だから…」
松山キャスター
「あっ、含まれている、この中に?」
船田議員
「含まれている。だから、9条のもともとの2項の中に含まれているので、9条の2のところでは『必要最小限』ということまでは書かなくてよろしいではないか。『必要な自衛の措置』という形にしたと」
伊勢﨑教授
「それがなくなると、どうなるかと言うと、歴代のもともとおかしい、歴代政府の言い訳を使っていないわけですよね?」
船田議員
「はい」
伊勢﨑教授
「そうすると現在、自衛隊は国際法上でいう戦力と認めるということですよ」
船田議員
「うん」
伊勢﨑教授
「それがなくなっちゃうと」
船田議員
「うん…。我々の解釈では2項を残すことによって、それが担保できると読みとっているわけです」
伊勢﨑教授
「でも、しかし、それを英語にするとおかしくなるわけですよね?」
船田議員
「はい」
伊勢﨑教授
「ね?」
船田議員
「はい」
伊勢﨑教授
「自衛隊と呼ぼうと、警察と呼ぼうと、義勇軍と呼ぼうと、広域暴力団でも、現在の国際法の運用というのは国家の戦力」
船田議員
「はい」
伊勢﨑教授
「それが国家の命令で動く限りは関係ないです、何と呼ぼうと。それの違反行為を国際法で定めて、それを審理する責任を国家に与えているんです。法廷を持ち、法を持つということですね」
船田議員
「はい」
松山キャスター
「自民党の議論の中では、まだこれは案の段階ですけれども…」
船田議員
「もちろん、そうです」
松山キャスター
「こういう案が仮に世界に向けて発信されるとした場合に、どう受け止められるかというと、たとえば、英語表記にしたらどうなるか、そういう議論まで突っ込んでやっていたのですか?」
船田議員
「正直なところ、そこまでは頭がいっておりません」
伊勢﨑教授
「本当ですか…」
船田議員
「あくまで日本語で考えて…」
伊勢﨑教授
「ハハ…」
船田議員
「日本語のうえで矛盾のないよう。それから、これまでの解釈を大きく変えることのないようにということに集中しておりましたので、大変申し訳ないけれども、余裕はなかったと」

『自衛隊明記』に死角は?
生野キャスター
「さて、自民党は今回の憲法改正案とは別に、かつて野党時代の2012年に党として日本国憲法改正草案を出しています。その中で『内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持』とあります。2012年の草案では『国防軍』としていたのですけれども、なぜ船田さん今回は『自衛隊』となったのでしょうか?」
船田議員
「はい。2012年の時には、安倍総理も大変この議論に加わりまして、党内で様々、野党でありましたけれども、議論をした。その中で先ほど来、英語表記がありますけれど、国防軍というのは『ナショナル・ディフェンス・フォース』で、自衛隊というのは現状のところ『セルフ・ディフェンス・フォース』であると。セルフいうのはセルフィッシュにつながると、独りよがりだと。自分だけよければそれでいいと。そういうイメージが出るので、安倍総理としては当時総裁として『ナショナル・ディフェンス・フォース』という英語表記になるように、日本語においても国防軍でいきたいと、そういう話を彼はされていました。ただ、私は最初から国防軍というのは反対だと、現在の『自衛隊』という形で議論をすべきであって、国防軍と名前を変えることによって、無用ないろいろな摩擦であるとか、あるいは国民の間での不安というのを醸し出してしまうことになるだろうと。我々はまず自衛隊を等身大で、ある意味で、ピン留めをして、憲法の中にピン留めをすることがまず第一歩であるということで、いろいろと議論をしまして、今回は総理も考え直されて、国防軍ではなく、自衛隊という現状の呼び方というものをそのまま憲法に表記をするということになったと」
松山キャスター
「伊勢﨑さんに聞きたいのですけれども。自衛隊の明記ということで、現在、安倍総裁が言っているわけですが。『自衛隊』という組織名が憲法の中に明記されるという、このこと自体についていろいろ異論もあるようですけど、どう考えていますか?」
伊勢﨑教授
「うーん、全然その議論自体が重要ではないです。重要なのは、それを自衛隊と呼ぼうと、国防軍と呼ぼうと、『セルフ・ディフェンス・フォーセス』と呼ぼうとも、『ナショナル・ディフェンス・フォーセス』と呼ぼうと、自衛のための特殊警察部隊と呼ぼうと、関係ないです。国家の実力組織、義勇軍であっても、それが自衛のために交戦、つまり、エンゲージする時に国際法を順守しなければいけないわけで、順守すると言っても、守るというだけでなくて、その違反行為に対する法整備を義務づけられているんです。でしょう?だって地球にはまだ国際法廷、権力のある国際法廷、国連もまだそうはなっていないわけですよ。だから、国際法は18世紀からそういう約束ですね。国際法で違反行為を定義する、それを審理し、自らに法的な責任を下すのが主権国家の役割ですね。法整備の問題をしているんです。つまり、国家の実力組織、国際法の違反行為をした場合に裁く、裁く法体系です。それがまったくされていないです。最高指揮官が何だの、国会の承認が何だの、1つの省庁の名前をここに置くの何だの、こんなことはどうでもいいです、そんなことは。重要なのは、主権国家として自らの実力組織を法理する、審理する能力があるかどうか、そこなんですよ」
松山キャスター
「石川さんは、自衛隊という既存の組織を憲法の中に明記しようという動きが出てきている、このことについてはどう考えますか?」
石川教授
「いや、本来はその名前を書く前で止めなければいけないのだと思うんですね。どういう組織をつくるのかということを定義して、あとは法律の定めるところに委ねるというのが本来の書き方なわけですが、おそらく。それですと自衛隊違憲論消えないですよね。仮に9条2項、9条の2が加わったとしても、なお議論ができる。たとえば、安保法制が違憲であるとか、いろいろな形で議論ができるわけで、何が何でも自衛隊違憲論を消すために自衛隊という組織の名前を書くことにこだわっておられるのではないかという印象があるのですが。この書き方は、およそ立憲主義的な憲法の書き方ではないですよね」
松山キャスター
「立憲主義的には、どういう…」
石川教授
「ええ、これは現在、申しましたけれども、どういう権限を分配し、どういう組織をつくるのかということを書いて新設するわけですね。ところが、既存組織を憲法に書くわけでしょう。こういう書き方をした例というのは過去にいくつもありまして、多くの場合、ソ連のような社会主義憲法で起こったことです。たとえば、ごく早い段階で憲法に書かれていなかった全ロシア中央執行委員会の幹部会というのがあったのですけれども、これは権力の中枢だったのですが、それが、あとからスーッと憲法に説明なしに入るわけですね。これは、憲法というのは既存の権力関係を記録するものだというような彼ら独特の考え方によってできあがったもので、およそ権力をコントロールするっていう考え方も何もないし、立憲主義的な憲法のつくり方ではないですよね。今回のこれを見ると、ああ、これはソ連だなと思います」

どう記す?『実力組織』統制
松山キャスター
「自民党の草案の中では『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する』という表現が入っていますけれども、もともと現在の憲法の中には入っていないですけれども。現行の、たとえば、自衛隊法の中には、内閣総理大臣が内閣を代表して自衛隊の最高指揮官を…、と入っていますよね?」
船田議員
「当然、入っていますね、はい」
松山キャスター
「今回はそれを憲法に盛り込むことが必要になるという認識から、これを盛り込むということですか?」
船田議員
「うん、統制という意味において、シビリアンコントロールを明確に書く必要がある。そのシビリアンコントロールの1つが、指揮命令、これを総理大臣。総理大臣は現在、内閣を代表するという形ですが、場合によってはNSC、つまり、国家安全保障会議とか、そういったものが集団として統括をするという場合も当然あり得ると思いますが。それを象徴して総理大臣と書いてあるということです」
石川教授
「短く申し上げますけれども、おっしゃりたいことはよくわかるんです。たとえば、2項との組み合わせで、ちゃんと立憲主義に揃えようと努力がなされたことはわかるのですけれど。しかし、ここで何が本質かということが非常に気になるわけですよね。おっしゃった、この規定の中に非常に気になるのは憲法上、統帥権条項が登場したということですよ。これまでも法律上はあるのですけれども、憲法上、統帥権条項が登場した。明治憲法の場合、統帥権条項から憲法体制は壊れていったわけです。それが『国のかたち』ということをおっしゃった、司馬遼太郎の1番言いたかったことです。統帥権を中心に軍事的な憲法の部分が増殖していって、まともだった明治憲法体制を内側から破壊してしまったのだと、日本は別の国になっちゃったのだというのが本当は『国のかたち』という有名なエッセーで言いたかったことなのですけれど。これは1つ間違えると同じを機能になりかねないのではないか。そうならないための担保として2項はあまりに薄いという印象があります。よほどのコントロールをつけないと、と思います」
松山キャスター
「伊勢﨑さんは、この指揮権とか、シビリアンコントロールに関する、こういった案が出ているということについてはどう見ていますか?」
伊勢﨑教授
「前提で最も大切なものが抜けています。自衛隊も含めて、国家の実力組織というのは、その社会において突出した殺傷能力を独占している職能集団なんですよ。これを民主主義、法治国家として、どうコントロールするか。普通の表現の自由とか、結社の自由とか、与えてはダメなんです。より厳しく特別法で、だからこそシビリアンがコントロールできるんですよ。たとえば、国会でこの間、事件があったではないですか。大変残念なのですけれども、幕僚監部が国会…」
松山キャスター
「…野党議員に対して」
伊勢﨑教授
「…罵倒を浴びせるという。あれはアメリカだったら即退役です、アメリカだったら。それはどういう意味かと言うと、別に恐ろしいという意味ではなく、民主主義の守護神が国防だ。その民主主義によって選ばれた公人に対して守るべき実力組織の幹部が…。幹部に非常に罰則が与えられているわけです。それが罵倒する。個人的に罵倒するということはあってはいけないことです」
松山キャスター
「それは国会でも大きな問題になっていますね」
伊勢﨑教授
「でしょう。ちょっと捉え方、もう1つ、真剣に。つまり…民主主義という国の形を守るために国防軍があるという考え方…、だから、なぜかと言うと彼らは突出した破壊能力を持っているわけです。その独占を許すわけです。だから、より厳しく縛ろう。それを前提にシビリアンコントロールが民主主義、法治国家においては成り立つ、そういう考え方をしないとといけない。それがまったく抜けているんですよ。そこで首相が最高司令官とか、国会の承認とか、言っても、土台がなかったら議論する意味がないです」
松山キャスター
「ただ一方で、自民党案を見ると、内閣総理大臣の指揮監督権というのを憲法に盛り込むことで逆にシビリアンコントロールを際立たせようという意図もあると思うのですけれども」
伊勢﨑教授
「うん」
松山キャスター
「そういうことには?」
石川教授
「本来、そういうおつもりなのだとは思うのですけれども。それは結局、議院内閣制の回路で全部うまくいくという話ですね。だけど、うまくいかないから憲法でいろいろな縛りを用意しているわけですよ。だから、この議院内閣制のシステムに任せれば、軍隊もコントロールできるというのは全然コントロールが足りていないです。それはもちろん、それすらなければ話になりませんけれども、それを乗せるだけでは全然足りてないわけ。このままだと暴走しちゃいますよ、ということで、それを遮断していたわけなので、これは代案になっていないのではないかなと思うんです」

あるべき『改憲』議論とは?
生野キャスター
「自民党としての改正案はまとまりましたけれど、今後、自民党として憲法改正に向けた議論をどのように進めていく考えですか?」
船田議員
「自民党としては一応、先ほど、提示していただいた4つの項目につきまして、これを国会に出すというか、我々はこう考えているということを他の政党の皆さんに説明するということを、憲法審査会の場でやりたいと思っております。それに対して我々の案が金科玉条のものではなくて、あくまで叩き台ですから。これにつきまして野党の皆さん、もちろん、公明党の皆さんからも様々ご意見をいただいて、やりとりをして。たとえば、維新の会の皆さんは地方自治と教育の無償化について既にまとめをしていますので、議案があると言っておりますので。そういったものも我々、議論して、だんだん煮詰めていくという作業をこれからやっていきたいと考えています」
松山キャスター
「与党内で言えば、公明党はもともとの、2012年の自民党の案にあった『必要最小限度の実力組織』という部分がなくなっていたりする部分について、若干反発もあるようなのですけれど、『必要な自衛の措置』という表現になっていることについては将来、それが集団的自衛権などのさらなる拡大につながるのではないかという懸念も出ているという中で、現段階で公明党は憲法審査会でのすぐに改憲…、この条文案についての議論をするということになっていませんけれど、これは公明党との間ではどういう折り合いをつけていくと考えているのですか?」
船田議員
「まだ具体的にお話し合いと言うか、我が党から公明党に明確に説明している機会はまだないですけれども。これまで公明党さんは、加憲、いわゆる現行憲法をそのままにして、足らざるところを付け加えることによって、実質改正していこうという考え方。9条のこの問題についてはまさに加憲という形をとっているということで、一定の理解はあるのではないかと思っております」
松山キャスター
「自衛隊に関する部分で、たとえば、9条の1項2項を残して別な項目で自衛隊を入れることに賛成の意見というのは公明党の中にも過去にはあったと思うのですけれども」
船田議員
「はい、そうですね」
松山キャスター
「ただ、最近になって、党としては、それに対する非常に慎重な姿勢になってると。このあたりどういう事情があると考えていますか?」
船田議員
「うーん、安倍総理がこの問題について非常に積極的にお話されているのですが、そのことが野党を刺激して憲法論に影を落としているのではないか。そういう動きに公明党として同調するのはいかがなものかという考え方、あるいは公明党を支持する組織の皆さんの中でいろいろと慎重論がどうしても出てしまっていると。それから、3年前の例の平和安全法制の整備の時、公明党さんは一応、最後までついてきていただいたのですが、そのことを支持組織に説明をしてみると、なかなかこれは容易ではないということがあとになってわかってこられて。だから、憲法においても、このことを進めることについては、どうしても慎重にならざるを得ないという事情があると思います」
松山キャスター
「今後の話をすると、憲法審査会で衆参両院でこの自民党案についても議論するという目標を立てて、ちょっと前までは4月中にそれを与野党で審議するという話になっていましたけれども…なかなか現在の国会の状況、混乱状況がありますけれども、なかなか審議入りできないという状況、見通しとしてはこの連休明け、どういう形で各党にアプローチしていこうと?」
船田議員
「うーん、まだ道開きができていないです。参議院では確か1回やっていますけれど、衆議院の審査会は1度も開いておりません。懇談会みたいなことはやったのですけれど、実際にまだ開けない。これは政局、モリカケ問題をはじめ、日報隠し問題、それから、セクハラもパワハラもあって大変困った問題が発生しちゃって、安倍政権に対する不信感が大変強くなってしまった。政局の影響を現在1番受けちゃっているのが憲法議論だと思います。非常にこれは残念だと思っております。本来は政局にこだわらずに、と言うか、関わらずに、国の屋台骨、基本を決める、あるいはどうするのかを考える、そういう場でございますので、政局に絡めないでやるのが本来の筋だと思うのですが。どうしても安倍総理主導で憲法議論をこうやっちゃっておりますので、どうしても安倍総理周辺に問題があるとそれが直接、影響が出てしまう、こういう矛盾にずっとなってきてしまっていますので、なかなか難しいと思います。ただ、現状では少し、野党も17連休という批判を受けて」
松山キャスター
「審議拒否をしていますからね」
船田議員
「ええ、それで柳瀬さんが国会でちゃんと喋ると言ってくれておりますので、少し立ち上がる、あるいは起き上がる、要素は出てきたのかなと思っております。連休後、我々は毎週木曜日が定例日、議論の定例日ですが、それに向けて次の機会には必ず議論ができるように最大限の努力をしたいと思っています。もちろん、政局になった元の問題をきちんと反省をして、解決のための糸口、あるいは改善点を示すということは当然のことだと思います」
松山キャスター
「ただ実際、憲法改正の時間軸を見ていくと、安倍総理は自分の任期中に何とかやりたいとか、2020年までと前に言っていたこともありますけれども、その先を見ると、たとえば、衆参両院で、改憲勢力で3分の2を持っていますけれども、たとえば、来年の夏の参議院選挙のあとになると、参院は3分の2をキープしているのかどうかがわからない状態になってくる。そうなると来年の夏の参議院選挙までには何とかその発議をしなければいけないという意見も出てくると思うのですけど、そのあたりの見通しをどう?」
船田議員
「常識的に言うと参議院選挙は厳しいと思います。自民党にとりまして。公明党もそうかもしれませんが。つまり、改憲勢力が3分の2をとるのかどうかは本当に黄色信号というか、赤信号に近い状況だと思います。でも、私は、あまり重要視していません。すなわち…」
松山キャスター
「そんなに急ぐべきではない?」
船田議員
「急ぐべきではないし、与党、あるいは改憲に積極的な勢力が現状3分の2を獲っていても、国民投票というのがあとにありますから、それだけではない、より多くの政党の支持を得られないと国民投票で過半数を獲るというのは極めて厳しいことだと思います。3分の2があれば、それにこしたことはないのですけれども、もしそうでなくなったとしても、国会での3分の2の勢力を集める努力をするということは、国民投票にとってみると、むしろ良いことではないかと思っております。そのぐらいの気持ちでいかないと夜も眠れません」

船田元 自由民主党憲法改正推進本部本部長代行の提言:『9条論議は政局に左右されず 冷静に!』
船田議員
「『9条論議は政局に左右されず、冷静に』と。憲法改正、あるいは憲法議論において与党・野党はないと。与党・野党の壁を取り払って、本当に国民を代表する衆参の議員が冷静に議論していくということで進めていくべきだと思っております。もちろん、政党政治ですから、これはなかなか難しいところはありますけれども、そういう気持ちが大事。それから、冷静に、というのは、9条の話になると保守派もスイッチが入りますし、立憲民主党さんをはじめとして野党もスイッチが入っちゃうんですね。お互い対立、最初から対決姿勢ということで全然進まないんです。本当に進まないんです。これはきちんと鎧を脱いで、冷静に議論をする必要がある、ということを申し上げたい」
松山キャスター
「現在の国会の混乱を見ていると、なかなか議論のテーブルにつけない政党がいっぱいあるということがありますが、たとえば、与党内で言えば、公明党にきてもらうために国民投票法の改正の話から入るとか、そういうことも考えていますか?」
船田議員
「うん。公明党さんにきてもらうために国民投票法を議論するのではなくて、これは国民投票法のいくつかの、まだ1度もやっていませんけれども、既にわかっている問題点もいくつかあるので、それは議論の前提としてやっておく必要があるのではないかと思ったからです」

石川健治 東京大学法学部教授の提言:『明記は現状維持ではない』
石川教授
「『明記は現状維持ではない』ということですが、明記論をめぐっていろいろな、大したことはないですよ、というレトリックが使われておりますが、大したことあるのだということを申し上げたいんですね。誤解のないように最初に強調しておきますと、安全の供給というのは国家の目的であり、義務であるわけですので、安全の供給それ自体を否定するのではなく、むしろそれがどのような形で働くのかと。結局、自由がどうやって維持されるのかということが大事で、そのメカニズムが確実に損なわれるということを考えていただきたいなと。もう1つだけ申しますと、9条によって実は個々の自衛隊員が守られているという側面も強調しておきたいと思います。私が、こういうことを言うと、自衛隊の組織から正当性を剥奪するなんてことを言うと、自衛隊員の人権を否定しているみたいですが、これはあくまで組織の行使の自由を剥奪しているだけであって、個人の問題は関係ない。個人の自衛隊員に職業差別は絶対にあってはいけません。何より9条があることによって道具として使われない、人間としての尊厳が守られていると。自衛隊員の尊厳という観点についてまったく配慮がないままの議論になっているのではないか。その意味でも9条が確実に役に立っているのだということを考えに入れていただきたいと思います」

伊勢﨑賢治 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授の提言:『国際人道法と9条2項の関係を』
伊勢﨑教授
「船田さんのその提言、大好きです。そのうえでこれをやりましょう、国際人道法。これは、いわゆる国家の戦力の違反行為を定めたものです。これに則る法整備をするのが国家の義務なわけですけれど、それと9条2項がバッティングしていますので。まず左右されず冷静に、政局に左右されず、それでこれをやってくださいということです