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2018年5月1日(火)
健保組合の解散相次ぐ 医療保険制度の問題点

ゲスト

橋本岳
自由民主党厚労部会長 衆議院議員
佐野雅宏
健康保険組合連合会副会長
西沢和彦
日本総合研究所主席研究員

保険料は誰のため? 健保組合赤字の原因は
竹内キャスター
「現在、大企業の社員が入る健保組合の解散が激増しています。この10年間で100以上の組合が解散し、今後もその数は増えていくとみられています。なぜ健康保険組合の解散が増えているのでしょうか。医療と社会保障制度に詳しい政治家や専門家をゲストに迎えて、保険制度のあり方について議案します。まずは日本の医療保険制度の仕組みから見ていきます。医療保険は中小企業の従業員が主な加入者の協会けんぽ、主に大企業の従業員が加入者の健康保険組合、公務員が加入者の共済組合、船員が加入者の船員保険、自営業や農業・漁業などに携わる人達が加入する国民健康保険、75歳以上の高齢者が加入者の後期高齢者医療制度で構成され、いわゆる国民皆保険となっていますが。今回取り上げる健康保険組合の組合数の推移を見ていきますと、2008年には1497あった健康保険組合がこの10年間で100以上が解散していきまして、現在は1389組合となっています。さらには人材派遣会社の従業員およそ50万人が加入する人材派遣健康保険組合や、生協の従業員らおよそ16万人が加入する日生協健康保険組合が2018年度中の解散を検討しているとの報道がありました。佐野さん、なぜ健康保険組合の解散が増えてきているのでしょうか?」
佐野氏
「かつては1800ぐらいの健保組合がありました。これがバブルの崩壊後、企業の合併等があって減りました。一方で高齢者の医療費は高齢者の負担だけでは賄えないものでありますので、税ですとか、現役世代の保険料を財源となっているわけです。ここ数年は、この高齢者医療費の拠出金の負担が、健康保険組合の財政を大変圧迫しております。その負担に耐え切れず解散に至ると、そういう健保組合が増えております」
松山キャスター
「健保組合の数の減少の中には、たとえば、普通に企業同士が合併したことによって1つにまとまるとか、あるいは企業の倒産とか、そういうことによる減少というのも入ってるわけですか?」
佐野氏
「もちろん、それはゼロではありません」
松山キャスター
「ただ、最近の傾向としては、高齢者医療の負担増もあって財政運営的に厳しくなっている?」
佐野氏
「そうです、そういうのが増えてきているということですね」
松山キャスター
「西沢さん、健康保険組合の数自体が減っている背景をどう見ていますか?」
西沢氏
「佐野さんがおっしゃった通り、健康保険組合が集めたお金、保険料の半分近くが高齢者医療への拠出金にまわっているんですね。それは前期高齢者65歳から74歳までの人と、あと後期高齢者75歳以上の人に分かれていて、高齢者人口自体は増えてきていますから、支援金がドンドン増えてきているということが1つ。あと2008年に高齢者医療制度改革がありましたけれど、その時、前期高齢者に対する支援金の仕組みを導入され、ここが後期高齢者医療制度だけではなくて、非常に重くなっているのが背景にあると思います」
松山キャスター
「具体的に、後期高齢者の医療でどういう制度設計になっているのかというのをこちらに図があるのですけれども。後期高齢者の18年度分はおよそ16兆円費用がかかっているということですけれども、そのうちの1割については高齢者の医療保険料。現役世代からの支援金という部分が4割あると。ここの部分がいわゆる大企業を主な母体とする健康保険組合、中小企業等の加入者が多い協会けんぽ、共済組合、国民健康保険が出す拠出金から、この4割を賄っていると。あと残る5割が公費負担ということになる。こちらに医療保険制度の分類ごとの収支というのが一覧になっていますけれども。これを見ると、組合健保、いわゆる健康保険組合は収入が7兆8000億円ですね、支出が7兆7000億円。そんなに厳しいようには見えないですけれども、これは内訳ではかなり厳しい状況になっているということなのですか?」
佐野氏
「内訳と言いますか、特にこの中の、今申し上げたように支援金の部分ですね。ここの部分が、収入に比べて、組合健保でも支出7.7のうち3.3。これは他の協会けんぽにおいても、同じぐらい、金額は別にして相当な割合にはなってます。ただ、割合で見ますと、この数字だけを見ても、相当に組合健保の割合は高いということは言えるのではないかとは思います」
松山キャスター
「組合によっては、だいたいこれは平均の数で出ているのですけれども、組合によっては個別の組合でかなり赤字になっている部分もある?」
佐野氏
「その場合ももちろん、あります」
竹内キャスター
「この支援金というのが高齢者への医療費負担ということですよね?」
佐野氏
「そうです、はい、ええ。75歳以上の後期、及び65歳以上の前期に対する支援金も入っています、両方とも入っています」
松山キャスター
「西沢さんは、これは実態としてはどういうふうに?」
西沢氏
「一見、7.8兆円と7.7兆円で払えているのではないかと言えるわけですけれど…」
竹内キャスター
「黒字にみえます…」
西沢氏
「保険料は捉えどころがないと言いますか、誰が負担しているのかがわかりにくいと言いますか。たとえば、7.8兆円の半分、約半分が事業主負担分なんですね。事業主は正社員を雇うと組合健保に入れて保険料を半分払わなくてはいけない。だから、たとえば、正社員ではなくて、非正規にしたりするということも企業によってはできないわけではないわけです。そうすると、その方は協会けんぽにいくか、あるいは協会けんぽにも入れずに国民健康保険にいって、事業主負担のない健康保険に入らなくてはいけないかもしれない。あるいは事業主負担は賃金を減らして捻出するのではなく、商品の価格に上乗せして捻出するかもしれない。そうするとサラリーマン、あるいは高齢者も購買力…、モノが高くなってしまうという形になっていて。一見払えているように見えるのですけど、そのコストを誰かが負っていて、実際には協会けんぽに入っていたら、あるいは国民健康保険は最初の紹介では自営業者や農林・漁業者が入るという仕組み、かつてそうだったのですけれども、現在では就業者の中では非正規雇用の人が1番多くなっているんですね。協会や組合に入れなくて。ですから、そういった形で、コストと言いますか…が出てきてしまっていて。一見払えているようには見えるのですけれど、弱い人にそのコストが転嫁されているという意味で問題が起きているのが大きいのかなと思いますね」
松山キャスター
「あと健康保険組合の拠出金と組合員の保険料の推移をまとめたグラフがあるのですけれど、これを見ると保険料についてもここ10年間のうちで10万円ぐらい増えていると、負担が増えているということですね。拠出金そのものについても、これはかなり…、2008年には2兆7500億円だったものが2018年度には3兆4900億円と、7500億円ぐらい増えているということですけれども。ここからわかることとのはどういうことがありますか、佐野さん?」
佐野氏
「先ほどの話でもあったのですが、健保組合は公的な法人ですので、民間企業と違って利益を上げる必要はないわけです。その一方で、本来、赤字というのは出せないとなっています。従って支出が増えれば、その分、保険料を引き上げるしかないということになってます。従ってこのように拠出金が増える中で、その分を保険料を上げていって、その結果が10年間で約10万円増えたと、こういうことになってます」
松山キャスター
「実態としては保険料を引き上げても、拠出金の額の増大を考えると、だんだん追いつかない事態になっているという状況ですか?」
佐野氏
「拠出金の負担に追いつくように保険料を上げているという方が正確かと思います」
松山キャスター
「それが現在ギリギリのとこでやっているということですね?」
佐野氏
「はい」
松山キャスター
「橋本さんは、これをどう見ていますか?」
橋本議員
「手元にちょっと資料あるのですけれども、これは健保連がつくられたグラフですけれども、国民の医療費がだいたい実績ベースで、2015年度で言えば40兆円ぐらいあるわけです。その中の後期高齢者・前期高齢者を足すと半分以上が実は65歳以上の方が医療費を受けていらっしゃる。残りの45%ぐらいを64歳以下の比較的若者…という状態になっているわけですね。だから、65歳以上の方に、まさに先ほども言ったように、自分達の医療費を払ってくださいと言えれば、逆に言うと健保組合さんとかに負担を求めることはないわけですけれども。そうはいかないので、働く世代の方々が高齢者の方々の医療費を支えていただいているという構造になっています。高齢者の方が増えていっていますので、ここのところがボリュームが増えていって、それが負担にのしかかっている。それが先ほど、西沢さんが解説されていたように、いろいろな形でいろいろなところの負担に入っていっているという構造というのは、現在のこの社会構造上、ある種、やむを得ないかなという面はあります。ただ、健保組合が解散をしていってしまうと、その健保組合さんに入っていた人は基本的には協会けんぽに移っていただくということになります。事業主負担だとか、そういうところはある種、全国一律になるから、おそらくは多くの方がまず保険料が上がる方の方がたぶん多いだろうと思います。公費が入っています、協会けんぽの方は公費が現在、1.2兆円というのが出ていましたけれども、それが入っていますので、この部分ですね。それが入っていますので。組合健保の方はゼロですから、協会けんぽの方に皆が移っていくと、この公費の部分がドンドン増えていくという形で公費の支出が増えるということになりますし、公費というのは税金ですから、原資は。そうすると、国の財政がどうなのかとか、いろいろな税金はどうなのかということを考えなければいけなくなるという、そういう形になることをちゃんと議論していかないといけないということになると思います」

協会けんぽ以降の影響とは 国費負担増の懸念と方策
松山キャスター
「橋本さん、先ほど、協会けんぽに移行する人がドンドン増えてくると、そこにある程度、公費が入っていると、1.2兆円という公費が入っている、これがドンドン膨れあがってくると、今度はこの公費の負担も大きくなってくるのではないかという指摘がありましたけれど。と言うことは、国の財政から支出する部分が増えてくるということで、これ自体、国の財政の問題にもなってくると思うのですけれども、そのあたりはどのように見ていますか?」
橋本議員
「確か、正確に覚えていませんが、私が厚生労働大臣政務官をしていた時に、仮に健保組合が全部なくなって、そこに加入されていた方、皆、協会けんぽに加入したら」
松山キャスター
「ああ、そういう試算もされている?」
橋本議員
「そういうことについて質問されて、いろいろな前提を置いたざっくりと試算でということで、ちょっとすみません、厳密な数字は忘れましたけれども、何千億円とか、確かそんな数字だったと、…というレベルの数字だったと思います。それだけのインパクトは財政にはある。しかも、それは毎年の話ですから、大きな話であります。だから、組合健保がちゃんとしっかりして、各組合さんがあっていただいていることで、ある意味で、本来、税金で国民皆で負担していたものを、従業員さんなり、企業さんなりに、薄く広くというような負担をしていただいているという面があるのだということは大事なことだと思います」
松山キャスター
「協会けんぽの組織というものをちょっと見てみたいと思うのですが」
竹内キャスター
「協会けんぽの組織についてですが、主な加入者は中小企業の従業員の方、加入者数はおよそ3700万人、保険料率は一律で10%ということですね。西沢さん、国の財政にもかなり大きな影響があるという話でしたが」
西沢氏
「ただ、協会けんぽと組合健保というのは兄弟みたいなもので、そんなに大きな差はないですよね。サラリーマン同士の健康保険組合であって、事業主負担もありますし、健康増進事業も両方ともやって、ただレベルに差が出てしまっているのですけれども。最も問題なのは、サラリーマンでありながら、国民健康保険への加入を余儀なくされてる人達が問題ですよね。ですから、組合健保が、あるいは協会けんぽは持続可能かどうかという問いを立てる時に、支援金や拠出金を払えているかどうかというところにも着眼することもさることながら、本来サラリーマンでありながら国民健康保険に入らざるを得ない人が出ていないかどうかという着眼が非常に重要だと思うんですね。ですから、確かに協会けんぽの方に皆移ってしまったら数千億円単位で出るというのはその通りですけれども、国民健康保険に我々、皆、サラリーマンが入ってしまうと国民健康保険は半分超が公費ですし、入っている人達も本当に保険料負担は非常に重いんですね」
松山キャスター
「高齢者医療に対する拠出金全体の額の増加を考えると、この動き自体が今後、どういう影響を全体的に与えてくるのですか?」
西沢氏
「組合の数が減るか、あるいは組合員数は減るのかもしれないですね。組合自体は残って、あるいは組合に入れる人がもしかしたら選別されるかもしれない。あるいは企業が日本から出て行くかもしれない。そういう影響が出てくる可能性があって。協会加入者が、あるいは増える、協会も払えなくなって、もしかしたら廃業、中小企業は廃業するかもしれないし、その人達は国民健康保険にいくかもしれないという。この流れはなかなか見えにくいのが社会保険料の特徴の1つかなと思います」
竹内キャスター
「健保組合は合併するとか、他の方法というのはないですか?」
西沢氏
「それは会社同士が、たとえば、合併すると合併します。ただ、健康保険組合は企業があっての健康保険組合なので、企業の動向によって健康保険組合だけが合併するというのはちょっと考えにくい」
松山キャスター
「生き残りのためにまったく違う業種の組合と合併するということはあまり考えられない?」
西沢氏
「ないですし…」
橋本議員
「よその人達と健康のリスクを分かち合う意味はどこにあるのという話になるので、基本的には考えにくいですね。ですので、まったく違う会社とは…」
松山キャスター
「普通の企業合併とは全然違う?」
橋本議員
「うん」
松山キャスター
「協会けんぽにドンドン移行する人が増えてきたとして、一方で、また国の財政負担も増えてくる可能性もある?」
佐野氏
「はい」
松山キャスター
「打開策というのはどういうものが考えられるのですか?」
佐野氏
「うーん、なかなか厳しい部分があると思うのですけれど。1点は、私自身、社会保険のこの制度というのは大変日本でつくってきた良い制度だと思ってます。それは負担と給付を、いわば関係づけたうえでこの社会保険という仕組みをとってきた、非常に合理性も高い制度です。ただ、保険である以上は負担と給付のバランスというのは重視されるべきであって。これは出したものを、払った保険料のうち半分近くが他に流れてるということになると、これはもはや保険という枠組みとちょっと違う世界に入ってしまっていると。そうかと言って、全体的な負担でいいますと、いわゆる医療費を賄うのには、保険料以外ですと税金、もしくは自己負担、この3つしか要素がないわけですね。従って、そのバランスをどうとっていくかという話になれば、仮に社会保険の負担が厳し過ぎるので、ここを少し減らしてということになれば、足りない部分は税金を持ってくるか、もしくは自己負担を増やすか、そういう話になってきて。これはなかなかに重たい話ではありますけれども、全体の制度をうまくまわすためには、そういったことの検討というのが必要になってくるのではないかと、こう思います」
松山キャスター
「保険料なのか、税なのか、自己負担なのかという話がありましたけど、それぞれについてまだやれる改善点というのはあると考えますか?」
橋本議員
「結局、これはどこにそのご負担を…、結局、誰かが高齢の方の医療費、高齢に限らない、皆、医療はかかるのですけれども、高齢者の方の方が医療費がかかることが多いので。だけれども、ご本人達にそれを全部お願いするのは無理だねというところから始まっていますので。どう負担を分かち合っていくか、皆が納得をして分かち合っていくのかということになると思います。だから、そこに1つのスパッとこういう答えがあるというよりは、こういう現状を皆で共有していただいて、その中で、少しこちらから出してもらおうか、少しこれをお願いしようか、ご高齢の方も、たとえば、収入が多い人、所得が多い人、資産がある方にはちょっと考えてもらおうかとか、そこはいろいろな手だてを尽くして、負担を皆で分かち合っていけるようなことというのに取り組んでいかなければいけないということだと思います」

現役世代負担の限界 後期高齢者2割負担案
竹内キャスター
「2025年に団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となります。それに伴い、健保連の試算では、後期高齢者医療費は2016年度と比較して10兆円増の25.4兆円に膨らむという試算が出ていますが、西沢さん、現在は後期高齢者本人の負担は1割となっていますが、この本人負担の割合についてどう考えていますか?」
西沢氏
「財政審議会等から2割という声も出て、確かに我々現役は3割ですから年齢で1割となっていていいのかなという気持ちはあります。ただ、議論をしなければいけないのは、窓口負担は1番、逆進性が高いと思うんです。低所得者の人でも2割になっていきますし、高齢者は現役に比べ医療費がかかる要因が多いですから負担が重くなってくるわけであって。この議論の前に、1つは税と保険料、税も年金控除がかなり優遇されていますから、あるいは保険料も安くなっているので、税と保険料と窓口負担、ミックスの中で高齢者の方に負担を負ってもらうという議論が1つは必要ですし。もう1つは、この窓口負担というのは患者の受療行動と言いますけれど、病院にかかる行動を変えるわけですよね、価格が高くなるわけですから。それがどういう影響を及ぼすかをきちんと見極める必要があって。たとえば、負担が重いから病院に行くのをやめよう、診療所に行くのをやめようという人が、本当は行く必要があるにもかかわらず…」
松山キャスター
「出てきますね」
西沢氏
「出てしまうと問題ですから。そうならないような医療提供体制をつくりながら、税・社会保険料・窓口負担、トータルで議論し、これが必要だということをあわせて提示する中で、理解を求めていくことが必要かなと思います」
松山キャスター
「佐野さんはどう感じますか?窓口負担の増加、1割から2割にという話が現在、提案として出てきているということなのですけれども」
佐野氏
「先ほど来、申し上げていますように、高齢者の医療費の負担というのは、税金・保険料、自己負担、この3つしかないと。このバランスをどうとるかという話だと思いますので。我々現役世代の負担が増えてきているという立場でもあるのですけれど、そういう立場としてはもちろん、低所得者に対する配慮、これは必要だと思いますが、後期高齢者の患者負担は引き上げというのは避けられないだろうと思っています。その中で言いますと、ここにフリップがありますけれども、当面の案としては、現行の1割から2割というのは妥当なラインではないかと思っています」
松山キャスター
「一方で、西田さんが話されたように、一気に引き上げることによって病院に行くことをためらってしまう後期高齢者も出てくるのではないかという意見もあると。それによって、病気が悪化し、最終的にかかる医療費はもっと上がるかもしれないという話もある。そういう意見についてはどう考えますか?」
佐野氏
「そこは基本的な考え方を1割を2割としたとしても、そういうある種の段階を踏むですとか、もしくは救済策と言いますか、そういう緩和策ですとか、こういったものというのはあわせて考えていく必要があると思います」
松山キャスター
「橋本さん、どうですか?窓口負担の割合については、現在は年齢で言われているわけですけれど、75歳以上の後期高齢者ということで議論が出てるわけですが、それ以外の要素というのはないですか?たとえば、収入がどれぐらい現在の時点であるかとか、資産をどれぐらい持っているかという、そういうことも勘案したうえでの窓口負担の比率という議論というのは出てこないのですか?」
橋本議員
「要するに、そこまで言うと、窓口負担だけの話をするのか、保険料をどう考えるのかというようなことがあるかもしれません。これは財政審が言っていることということで、するのかどうか、できるかどうか、僕が賛成かどうかは別にして、たとえば、3割負担と言っているものの負担を年齢ではなくて別のファクターで調整する仕組みはどうかとかを財政審は言い出したりしていて、これはいろいろな議論があるので、なかなか簡単だとは思いませんが、頭を柔らかくしていろいろなことは考えなければいけないのだろうなとは思います」
松山キャスター
「西沢さん、どうですか?窓口負担の議論がいろいろと出てますけれど、1割から2割へという話もありますし、それ以外、様々な意見があると思うのですけれども。どういう方向にこの議論はいくべきだと?」
西沢氏
「収入によって負担割合を変えるというのは、ちょっとややこしいですね」
松山キャスター
「計算するのが大変になる?」
西沢氏
「ええ。たとえば、保険証にちょっと前までありましたけれど、保険証に収入が高いから自己負担が違いますというマークつけて…、だったら、保険料をもっと高い人に、所得の高い人に払ってもらうとか、所得が高い人に税金を払ってもらって給付費用を確保した方がシンプルでいいわけです。あと2つアイデアがあるというか、1つは、高額療養費制度があるので月10万円を超えてしまう人は免除されますから、実質的な負担割合は2割にならないんですね。ですから、実効負担割合と言いますか、それは2割を切るので、そこは皆さん十分に理解していただくと抵抗感が減ると思います」

平成30年度診療報酬改定 医療費削減の切り札か?
竹内キャスター
「今年4月に行われた診療報酬の改定では国民負担の軽減と医療の質の向上として薬価を1.74%引き下げ、診察料を0.55%引き上げることに決めました。さらに大病院の紹介患者を中心として、紹介状なしで大病院を受診した場合に追加負担が5000円以上かかる制度がありますが、大病院の対象を500床以上から400床以上に拡大します。かかりつけ医の一層の推進。地域の中で患者を継続的に見ていくかかりつけ医として夜間や休日に対応した場合、初診料に800円を加算する機能強化加算を設けるとします。入院医療から在宅医療へ、タブレット端末やテレビ電話などを使い、遠隔診療の利用促進、という改定内容なのですが。橋本さん、今回のこの診療報酬の改定、どう評価されますか?」
橋本議員
「これまで議論していただいているように、医療費がドンドン高齢化だとか、医療の高度化だとか、いろいろな理由によって伸びていっていますね、と言うことは間違いなく事実で。そのことを考えた時に、財政面から言えば、それは診療報酬の改定というものが0.55%というのは医療の方の全体の、診療報酬改定の全体のアレですけれども、伸ばしているだけ、まだ医療に対してつけている、よりお金をまわしているという面があるということはおそらく関係のいろいろな団体の方々にもご評価をいただいて、それなりにご評価をいただいているのだろうとは思います。ただ、これはものの考え方というやつで、たとえば、政府全体で、人件費を3%上げてください、と企業に対して呼びかけている時に、0.55%上げるのはどういう意味なのみたいなことを言うと、それは医療界の方も、逆に言うと、現在のような財政状況だとか、先ほどのように、いろいろな方にご負担をお願いしながら、どうにか賄っているという状況を頭に置いていただいたうえで辛いことも飲み込みながら評価をしていただいているという感じなのだと思っています」
松山キャスター
「ちょっと不勉強なので、ちょっと教えていただきたいのですけれども、この項目を見ていると、たとえば、大きな病院に患者がすぐに行くことはなるべくしないようにして、できたら近所の小さな医療機関のお医者さんにまず行ってほしいととれるのですが、それによって、医療費、診療費というのはかなり抑制できるものなのですか?」
橋本議員
「外来受診を大病院から在宅の方に、という流れというものそのものがすごく医療費を抑制するということになるためにやっているかと言うと、あまりそうではないのではないかなという気はします。ただ、大病院に集中し過ぎると、大病院の外来が過労になってしまうというか、大変過ぎて手がまわらないとか。大病院は専門的で高度な医療が必要なの方の医療ができる施設なので、できればそういう方に時間を割きたいところ」
松山キャスター
「たとえば、ちょっと風邪引いちゃったみたいな…」
橋本議員
「うん。…方に外来の時間が割かれると本来、大病院が果たさないといけない機能を果たせなくなっちゃうと困るねということで。できれば、まずはかかりつけの近所のお医者さんに行って、そこで見ていただいて、うん、これはウチの手には負えないから大病院に行ってくださいねという話になるといいなという方向で、医療体制のつくり変えというか、見直しというか、進んでいると理解をしていただきたいです。だから、それが直接、医療費削減に影響するかと言うと、まわりまわって影響があるかもしれませんが、どちらかと言うと、大病院に大病院の仕事らしい仕事をしていただくためにこんな制度を入れているのだとご理解いただいた方がいいと思います」
松山キャスター
「棲み分けということですよね?」
橋本議員
「はい」
松山キャスター
「高度な医療を」
橋本議員
「役割分担と言うか」
松山キャスター
「役割分担?」
橋本議員
「はい」
松山キャスター
「なるほど。西沢さんは今回の診療報酬改定を見てどう感じますか?」
西沢氏
「これは評価すべきところもあるのですけれども、その前の段階として診療報酬引き上げは醜悪な政治的な駆け引きを見せつけられた感じがありまして。フリップで薬価を1.74%引き下げ、診察料というのは診療報酬本体と呼んでいるのですけれども、上げたと。これのパーセンテージは、国民医療費42兆円に対する寄与度で、だいたい約4分の1が薬価ですから10兆円ぐらい。ですから、薬価はこの1.74の4倍なので約7%下げ、診療報酬本体というのはお医者さんの技術料とか、ですから、この0.55×3分の4なので、0.7%ぐらい上げていると思うのですけれども。昨年の12月の日経新聞に出てた見出しは『医療提供者への配慮』とか、『政権トップから医療提供者への恩返し』とか、この普通の一般新聞に『恩返し』とか、『配慮』と出てしまっていて、官僚からは理屈もないとか、そういう嘆きの声が漏れているわけであって。これがゴシップ週刊誌に出ているのではなくて、大新聞に『恩返し』と出てしまうわけですね。それを私は見せつけられてしまっているわけで。果たしてこれを見て保険料を払ったり、税金を払ったりという気持ちになるかなと思うんですよね。それが1つと。それはさて置きまして重要なのは大病院から診療所に誘導していくというのは非常に重要なことであって…」
松山キャスター
「なるほど。それによって、かなり抑制できるものなのですか?」
西沢氏
「抑制というのも、もしかして結果としてあるのかもしれませんけれども、患者の生活の質も期待できますし、あと大病院で外来を受け付けていることによって、大病院の先生方、看護師さん、あるいはその他医療者の方が疲弊している状況が救われるかもしれない。それで救われれば、たとえば、医療事故が減って、患者にまたメリットが還元される。1人1人の人が丁寧に見てもらえるようになるということによって、こういう非常に重要なこともありますし、そこはかかりつけ医の推進とも関連してくるんですね。まず地元の信頼できるお医者さんにかかって、必要に応じて大病院に行く。必要であれば入院先を紹介してもらうという医療提供体制の重要な改革の中身が入っているわけでして、そのメッセージをもっと前面に出すべきであって新聞に『恩返し』と書かれてはいけないと思うんです」
橋本議員
「新聞の報道の仕方ということもあるので、そういう面が新聞に出てましたねということは否定しませんけれども。だから、逆に言うと、おっしゃっていただいたように、我々、厚生労働省の立場に立って言えば、もちろん、そういうようなこれからの医療提供体制を見据えたものが入っている。ここには入っていませんけれど、たとえば、介護保険との連携をもっと進めていこうだとか、いろいろなことは入っていますので。我々もちょっとそういうところを全面に押し出し、そこが見出しになるようにがんばらなければいけないのだろうなということは思います」
松山キャスター
「西沢さん、これ以外に、たとえば、まだ全体としての医療費を抑えていくためにもっと有効な手立てというのは、アイデアとしてはどういうものが?」
西沢氏
「いっぱいあると思いますけれども。たとえば、診療所に行きますと、お薬を出しておきましょう、みたいな締めくくりになることが…」
松山キャスター
「処方箋をもらって…」
西沢氏
「ええ、多いと思うんですね。でも、たとえば、薬を出してもらうのでなくても、いや、大丈夫ですよと一言声をかけてもらえば済むかもしれませんし。あるいはお医者さん自らが時間を割くと言うよりも、看護師さんや薬剤師さん、あるいはヘルパーの方に日常的なケアをお願いして、その状況だけお医者さんがウォッチしてもいいかもしれません。アイデアはたくさんあると思います。今申し上げたのは別に国民の痛みでも負担でもなく、非常におそらく低コストが期待できて、患者の生活の質も上がるものだと思いますので。医療費抑制と言うよりも仕事を振っていくとか、あるいは薬以外のソリューションを提供するとか、いろいろ方法があると思いますね」
松山キャスター
「佐野さんはどう見ていますか?」
佐野氏
「まず全体的には診察料の引き上げがあったのですけれども、健保連としては、先ほど来、申し上げているように大変厳しい財政状況の中で言うと、本体部分も含めて、引き下げをしてほしいと申し上げておりましたので、その点から言うとやや残念な部分ではあります」
松山キャスター
「ここはよくわからないのですけれど、薬価を引き下げて診療本体部分を上げることによって、どういう結果を導こうと見えるのですか?」
佐野氏
「我々から見ますと、薬価を引き下げたら、この部分は国民に全額還元すべきだと思ってますので。診察料が上がったということは本来還元できるファンドが別のところにまわっちゃったという捉え方になりますので、そこは我々として診察料も…」
松山キャスター
「引き下げてほしい?」
佐野氏
「引き下げてほしい、こういうのがあります。ただ、それ以外の部分で言いますと、機能別の病床体制についての部分ですとか、もしくは大病院の負担の問題とか、全体としてはプラスの方向と言いますか、良い方向に出された改定もあるとは考えてはおります」
松山キャスター
「橋本さん、どうですか?薬価を下げて診療費が上がってるという部分については若干、否定的な意見もあるようですけれども」
橋本議員
「と言うか、結局、これまでの診療報酬改定をする時に、その財源というのをどう考えるか。それを上げるにしても、下げるにしても、特に上げようと思うとどこかに財源がなければできないわけです。それと財政再建計画というのがあって、本来であれば、6600億円伸びると予測される自然増分を5000億円におさえなさいというのを3年間やりなさいと言われております。ですので、1600億円をどこかからひねり出さないといけないという問題もありました。というような中で、結局どうやって、その財源を…、要するに、診療報酬をプラスマイナスゼロにしても1600億円をどこかからつくってこなければいけないというのが厚生労働省の予算組みの時の前提だったわけです。なので、財源というのは、診療報酬改定と薬価の改定というのは同時にやって、毎年ではあるのですけれども。薬価というのは新しいお薬が出ます、新しい値段を決めて、それが流通するわけですが、薬というのはつくっていたら、だんだん製造原価が落ちていきますよねと。だから、価格というのも見直していきましょうねということで下げていくというのが、一般的に言えば、そういう話なのだと思いますが、下げていくということになるし、あるいはジェネリック医薬品とかが出たら、ジェネリック医薬品に切り替えたら、またもっと安くなりますよねとか、そのへんは薬価の仕組みというのはもっといろいろあるのですけれども。基本的には薬価が下がる分で、たとえば、医療提供体制の方で足りないところを補っていこうとか、あるいは先ほど言った財政再建のために残しておこうとか、そういうのを出すということで診療報酬改定というのを毎年やるというのが、毎回やる、毎年やるんです。ということになっているので、それは構造としてそうなっている以上、現在のところ、それでやっていくしかなかったのかなと思っています。ただし、これはこれで、たとえば、薬価改定についても改革すべきだという議論があり、現在2年にいっぺんということになっていますが、これを薬価については毎年見直してはどうかということがあったりして、まだある種の方向性は出ていますけれども、たとえば、そうしたことをする時に、今後そうした形で診療報酬改定というのができていくのかというのは、きちんとウォッチをしていかないといけないし、いつまでもそれが続くと思っていてはいけないのかもしれないなという中で、でも、財政再建をやっていかなければいけないし、どうしようかなというのは、引き続き頭の痛い宿題として持っているということになると思います」

佐野雅宏 健康保険組合連合会副会長の提言:『一体化した議論』
佐野氏
「『一体化した議論』と書きました。今日ずっと出ていましたけれども、負担に関しては税金、それから、保険料、自己負担、これを組み合わせるしかないわけですから、これを一体化して1つ1つではなく、まとめた議論を是非お願いしたいということが1点。それともう1つは、今日、橋本先生においでいただいて大変いろいろな話を聞けたのですけれども、本件は与党・野党、基本的なスタンスはそんなに大きく変わるものではないと思ってますので、是非与党と野党も一体化した議論をやっていただきたいということで、一体化した議論とあげさせていただきました」

西沢和彦 日本総合研究所主席研究員の提言:『負担の全世代型』
西沢氏
「『負担の全世代型』と書きました。現在、給付に関しては、若者向けの給付が諸外国比を見て少ないということで、若者向けにも給付という形で全世代型と言われているのですけれども。負担についても、高齢者の方は、所得税に関しても、保険料に関しても、また、窓口負担に関しても、現役対比、軽減されていますから、負担に関しても全世代型の議論をしていくことが必要かなと思います」

橋本岳 自由民主党厚労部会長の提言:『社会保障は支えあい』
橋本議員
「『社会保障は支えあい』と書いております。今日は医療の話でしたけれども、年金だとか、いろいろなこともそうなのですけれど、結局、たとえば、自分は負担が多く、あまり給付を受けていないね、だから、そこは不公平だなとお感じの方がいるということは、それはわかります。ただ、その方だっていずれご高齢者になれば、逆の立場になるかもしれないし、家族の中で高齢の方がいればどっちみち養わなければいけないのかもしれないし、逆に、養われている高齢者の方も若い人の負担もあって自分の医療を受けられているのだなということをちょっと頭に置いていただくと少し話は違ってくるのではないかと思います。だから、そういう意味で、支えあいなのだということを意識していただけるとありがたいなと思いますね」