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2018年4月26日(木)
『台湾海峡』波高し! 米国の影と中国の野望

ゲスト

若宮健嗣
自由民主党 国防部会長
川上高司
拓殖大学 海外事情研究所所長・教授
小原凡司
笹川平和財団 上席研究員

アジア情勢『新たな火種』 緊張増す中台関係の行方
生野キャスター
「朝鮮半島情勢に世界中が目を奪われている間に、中国が南シナ海で習近平国家主席の出席のもと、史上最大の規模と称して空母や潜水艦、爆撃機等を一堂に集めて披露する観閲式を実施。さらに台湾海峡での実弾演習や空母を使った実践訓練を行うなどアジアの海で軍事的なプレゼンスを高めています。そこで今夜は中国と台湾をめぐる情勢を分析して、今後、日本がとるべき対応を考えます」
生野キャスター
「急速に緊張が高まっている中国と台湾の動きをまとめました。こちらです。今月の12日、中国は南シナ海で史上最大規模と称した空母や弾道ミサイル、原子力潜水艦などを一同に集めた観閲式を実施。この中で出席した習近平国家主席は18日に台湾海峡で実弾演習を実施すると発表しました。これに対して台湾は13日、蔡英文総統が視察する中、潜水艦や駆逐艦、戦闘機等を交えた軍事演習を実施。18日、中国は予定通り台湾海峡での実弾演習を実施。20日には台湾沖で空母・遼寧からの発着艦訓練を行ったのち、東シナ海に向かいまして、22日にも実弾演習を行っています。こうした事態を受け、台湾のメディアは、台湾当局が実弾演習を6月に実施すると明らかにしたと報じました。小原さん、中国と台湾のこの軍事的な応酬をどのように見ていますか?」
小原氏
「まず中国は領土の統一というのは鄧小平氏、偉大な指導者の指示であるということもあって。この時代は実は2020年に終わる、現在、新しい時代に入ったと中国が主張しているのですけれども、そうすると台湾の問題も何とか片をつけたいと。一方で、アメリカが中国をかけていて、これに対して中国も何らかの措置をとっていかなければ、中国共産党の権威が台無しになってしまうということもある。ですから、中国は今後とも台湾に対して圧力をかけると思いますが、これに対して、もちろん、台湾はそれを許すことはできないと。もちろん、単独で中国に対抗することはできないだろうということではありますけれど、自らが防衛の努力を示さなければ、もちろん、アメリカが助けに来ることはないわけですから、これに対抗する姿勢は鮮明に出していかなければならないということだと思います」
生野キャスター
「川上さんはどう見ていますか?」
川上教授
「起こるべきして起こった緊張の高まりかという感じがいたしますね。と言うのは、米朝首脳会談から6月の初めに行われる、それから、もしかすると、その時に決裂した場合には、アメリカは先制攻撃も辞さないかもしれない。ボルトン氏、ポンペオ氏が就任しましたし、その時には当然ながら、先の朝鮮戦争でもそうだったように中国が台湾を獲りにくる可能性があると。ですから、それをアメリカに対してはまずその姿を見せたと。下手に北朝鮮を攻撃できないぞと。これに対してアメリカは当然、そうなった場合には空母を1隻、台湾向けに張りつけなくてはいけないというようなことになります。それから、アメリカ側からしてみると、この時期に中国がこういうチャレンジングをしてきた場合には引くに引けない、台湾を守る姿勢を見せなくてはいけないということで、全体的に一見、和平に見えますけれども、緊張が高まっているという状況にあるのだと思います」
生野キャスター
「総兵力に関しては、中国はおよそ220万人に対して台湾はおよそ22万人です。陸上戦力は、中国は戦車等およそ7400両、台湾は戦車等およそ1200両となっています。海上戦力は、中国が艦艇およそ740隻のうち、潜水艦はおよそ60隻、台湾は艦艇およそ390隻のうち、潜水艦が4隻。また、航空戦力は中国が戦闘機やヘリコプター等の作戦機がおよそ2720機、一方の台湾は510機となっています」
松山キャスター
「歴然と、兵力にはかなり差があるなという印象があるのですけれども。台湾としては、今回の軍事演習だけ見ても実弾で15回やっている、これも中国の本気度の表れということなんですかね?」
若宮議員
「おっしゃる通りだと思います。実際に中国が経済成長とともに、経済が発展するとともに、軍事力を急速に拡大して、およそだいたい為替レートとの関係もありますけれども、17兆円から18兆円ぐらい公表ベースでの軍事予算を持っておりますので。そのこと自体でも相当な量だと思います。ただ、中国全土で考えますと、広域な領土の国境がありますし、それから、また、ある意味、海にも面していると考えますと、確かに人数も、人口も多いですから、いろいろな面で考えますと、確かにそういった頭数は多いのは当然と言えば、当然な部分もあろうかとは思いますが。ただ、台湾にしてみれば。もうこれはすごく脅威だと思いますね」

米台『軍事的接近』 トランプ政権の思惑と波紋
生野キャスター
「トランプ氏は大統領選に勝利したのち、大統領就任前の12月、台湾の蔡英文総統と電話会談を行いました。これは1979年にアメリカと中華民国が国交断絶して以来、初めてのことです。また、トランプ氏はのちに修正はしましたけれども、アメリカが従来からとってきた、台湾は中国の領土の1部とする『1つの中国』政策に縛られることに否定的な発言をしています。今年3月にはアメリカと台湾の閣僚や官僚の相互訪問促進する台湾旅行法が成立。その後、実際にアメリカの政府高官が台湾を訪問しています。4月、アメリカ政府は、台湾が進める潜水艦建造計画にアメリカ企業が協力することを許可しました」
松山キャスター
「トランプ大統領は、大統領選を勝利して大統領に就任する直前だったと思いますけれど、蔡英文総統と電話で会談をしたと。それ自体、私もワシントンにいて非常に驚いたのですけれども。あの時に、その直後に『1つの中国』の政策については中国側が、たとえば、為替とか、貿易の問題でどう出てくるかによって、それだって普遍的なものではないというような発言をして物議を醸したのですけれど。そのあと、習近平さんとの電話会談で、2月になってその『1つの中国』政策をとっている中国を尊重するという言い方で若干修正をしたような感じなのですが。心の底で中国の『1つの中国』政策というのを1つのカードとして、台湾カードみたいな形で持っていて、それをまた取引の材料でいつか出してくるという姿勢でいると考えた方がいいのですか?」
川上教授
「私もそう読んでいます。ここのところで非常にアメリカの政策が見えにくいのは、トランプ大統領がどう考えるかということが見えない。ただ、注目しなくてはいけないのは、トランプ大統領の頭の中には11月6日の中間選挙があると思うんですね。その11月6日の中間選挙で、もし上院・下院で敗れた場合には、自分は弾劾裁判にかけられる可能性があると。弾劾裁判にかけられてしまったら、自分が行ってきたロシアンゲートであるとか、いろいろなロシア企業との取引、その時にやった資金クレンジング、そういうものが下院で負ければ、おそらく公聴会でそういうのに呼ばれる。そうすると次の大統領選がなくなってしまうということは随分計算に入っていると思いますから。それに対して、中国に対しては強くなくてはいけないし、それをやればやるほどおそらくトランプの支持率は上がりますから。そういう具合におそらく台湾の関係も北朝鮮の関係も読まなくてはいけないと思うんです。そうやって考えれば、トランプは今後、台湾に対しては援助をしながら中国に対してはおそらく厳しく当たると。それから、まさに米中間で貿易戦争をやってますから、それに対する駆け引きとして、安全保障と今度は貿易をディールすると、まさにその通りだと思いますね」
松山キャスター
「ボルトンさんが大統領補佐官として就任したと、一方で、国務長官をティラーソンさんから今度、ポンペオCIA(中央情報局)長官に間もなく代わる可能性があるということで、どちらも中国に対しては非常に厳しい姿勢をとっていると言われますけれども、これによって台湾への接近というのはより強まっていくと感じますか?」
川上教授
「普通でしたら接近は強めると思うべきだと思うんですね。日本にとっては、これは、本当にボルトンさんというのは昔から知ってる古なじみの顔ですから、非常に喜ばしい方だと思います。それから、アメリカが台湾に対して接近し、かつ中国に対して厳しく出るというのは、これは日本の株が上がります。日米同盟も強化されるというところで。ポンペオさんも中国に対しては強硬派でロシア・イランよりも中国に強硬に出るべきだというということを就任前から言っています」

アジア情勢の『火種』を読む
松山キャスター
「小原さん、どうですか?アメリカが急速に台湾に接近しているように見える、この背景についてどう感じていますか?」
小原氏
「もちろん、現在の国際社会のシステムのレベルで言えば、アメリカを脅かしているのは中国という認識がアメリカにはあると思います。その中国を押さえ込まなければならないというのは中国が実力をつけているということもありますが、まさにこの台湾は第一列島線、これは、本当は冷戦期にロシアや、当時ソ連ですけれど、中国を封じ込めるためのラインということで。実はもっと北まで伸びていまして、アリューシャン列島からアラスカまでですが、これは冷戦が終わってから今度は中が抑え込まれる鎖になっている。ですから、中国はこれが鎖になってはならないということを言い始めている。この台湾がどういう位置にあるかと言いますと、この南シナ海から太平洋に出る、このバシー海峡が今日1番広くて出やすいのですが、ここの北側を押さえている。2000年代前半、中国海軍は台湾が太平洋への入口になるのだということを盛んに言っていました。ここが開くと、中国の影響力というのは、ドンドン外へ出てきてしまうということになります。これを押さえるのに実は潜水艦というのは非常に有効な兵器なわけです。ここにアメリカが潜水艦を建造する、協力するのだということを言い始めて、中国は危機感を高めている。これも最近になって中国が言い始めているのが中国海軍の対潜水艦戦、対潜戦を第一列島線から第二列島線まで広げなければならないのだということを言い始めています。中国の、第一列島線の第二列島線の間を中遠海、中の遠い海という言い方をしていまして、第一列島線の内側がこの近海、近い海なのですが…」
松山キャスター
「南シナ海のあたりですか?」
小原氏
「ええ、南シナ海から東シナ海まで全部そうです。太平洋側が全て遠海、ブルーウォーターということになるわけですけれども、このちょうど中間にあるところを現在、中国は海軍力で押さえようとしている。これによってアメリカの接近を押さえるとともに、台湾の潜水艦の動きも封じ込めるということを考える。それが現在の中国の海軍の動きだと言えます」
生野キャスター
「今月12日、南シナ海で史上最大とする観閲式が行われました。そこで習近平国家主席が訓示の中でこのような発言があったのですけれども、『今日ほど海軍増強が迫られている時期はない。海軍の近代化を進め、世界一流の海軍になるよう努力せよ』という発言がありました」
松山キャスター
「『海軍増強が迫られている』という表現を使っているのですけれども、これはある意味、アメリカからのプレッシャーを感じているという意味にもとれるような気がするのですけれども、このあたりどう読み解けばいいのですか?」
小原氏
「ここは中国の危機感が表現されている部分だと思います。これは、中国が自分自身では軍備増強が追いついていないという危機感を持っています。特に海軍ですけれど。それは台湾等に対するアメリカの協力が強化されていて、これに対しての対潜水艦の能力は低いということもあります。また、中東等で中国はビジネスを展開し、一帯一路も展開しているわけですが、ここがシリア問題ですとか、サウジアラビアとイランの対立等で、こういった軍事的な緊張が高まると、結局、アメリカとロシアの軍事的なゲームになってしまう。そうすると、ここに軍事プレゼンスを展開できない中国は影響力を失う、という危機感を持っています。これが、中国は、アメリカが中国の発展を妨害するのだと信じている根拠にもなっていますけれど。そういったことを軍事的に跳ね返さなければならない。ところが、トランプ政権になって勢いが増しているように中国には感じられる。ですから、現在こそ増強しなければならないのだという切迫感を持っているのだと思います」
松山キャスター
「実際に中国、潜水艦がそのエリアに出て行ける道をつくったとしたら、それは太平洋の勢力圏のうえではかなりダイナミズムが変わってくるという事態になっているわけですか?」
小原氏
「これは艦艇同士のダイナミズムだけでなくて、国同士の抑止にかかわる問題だと思います。潜水艦に搭載している大陸間弾道ミサイルというのは、残存性が1番高い、生存できる可能性が1番高いわけですけれども、これは潜水艦の隠密性によるものです。潜水艦が太平洋に出て行かなければ、中国の潜水艦から発射される大陸間弾道ミサイルはアメリカ本土に届かないんです。ですから、南シナ海からアメリカに探知されずに太平洋に出る必要がある。このためにも中国は何とか台湾等は解放してこのバシー海峡等を自由に使えるようにしたいと考えているのだと思います」
松山キャスター
「中国側の軍備増強に対して台湾はどう対応しようとしているのですか?」
小原氏
「台湾はもちろん、自らできる防衛力を最大限高めようとしていると思います。ただし、台湾だけで中国に対抗できるとは考えていないと思いますから、もちろん、アメリカの助けがないと、台湾は中国に完全に潰されかねないということですけれども。ただ、アメリカが防衛上の協力をするにあたっては台湾がまず自らその防衛努力を示さなければならない。これは日本も同じことですけど、そうした決意を示し、実際に行動することで初めてアメリカは防衛の協力をしてくれる、一緒に戦ってくれるわけですから。そういう意味で台湾は安全保障の努力というものは継続してきていますし、アメリカに協力を依頼し続けてきた。ここにきてトランプ政権がそれに応じ始めたというところだと思います」
松山キャスター
「以前、中国側は台湾危機が高まった時には、たとえば、48時間で台湾を制圧できるとか、いろいろな言葉を言っていましたけれども。ある意味、台湾としてはアメリカからの支援が得られるまでの一定の時間がかかるとして、その時間の間、何とか持ち堪えられるような装備を揃えようとしていると、そういう見方はできるのですか?」
小原氏
「それもおっしゃる通りだと思いますし、さらには、普段からその努力を見せておくことで、アメリカの関与を確実にするということもあると思います」

米・台湾vs中国『新対立構造』 日本への波紋と『その時』
松山キャスター
「川上さんはいかがですか?台湾有事、あったと仮定して、アメリカがそこに介入していくシナリオ、どういう形の関与の仕方が考えられると思いますか?」
川上教授
「いろいろ、軍に全てオペレーション・プランニングがありまして。私も論文に書いているので、言えるところだけ言いますと、沖縄にいる海兵隊は31MEU(海兵遠征部隊)がいるのですが、そこがおそらくNEO、つまり、アメリカ人救出・外人救出のため台湾に先に入ると。そうすると、中国はミサイルを撃てなくなりますので、そこで時間を稼いでいろいろ増援をはかると。海兵隊、もしくは太平洋軍がいますので、そういうのがシナリオとして考えられますが。その時は当然ながら日本も、かなり与那国とか、近いところがありますので、横に目視できるようなところにありますから、台湾の戦闘機が、中国の戦闘機に追いかけられて我が国の防衛を犯すかもしれないとか、いろいろなシナリオが考えられますので。ですから、これはアメリカだけの問題ではなくて、日本の問題でもあります。それから、台湾というのはアメリカにとっても日本にとっても死守すべき死活的な場所にありますから、米軍との普段からの協力がある。そういう意味で、日本も米軍と一緒に与那国に自衛隊を展開したり、そこに地対地ミサイルを入れたり、いろいろな抑止力を持つ必要がある、展開になっていくと思います」
松山キャスター
「若宮さん、どうですか?日本としてこの事態への備えというのは」
若宮議員
「東シナ海、南シナ海、それから、また第一列島線と第二列島線との間というのは、これは日本にとっては、いわゆる中東・アラブからの…」
松山キャスター
「シーレーンですよね?」
若宮議員
「はい、おっしゃる通りシーレーンの本当に大事な油の供給量の80%を通ってくる、タンカーは全部ここを通ってきます。それで、ただ、台湾の、今日は中台がテーマになっておりますけれども、台湾のみならず、南シナ海に対する中国の海洋進出というのもこれは見逃してはいけない部分だと思っておりますので。これは全て、中国海軍、あるいは中国の海洋進出の一体化された、連携された動きだと思っておりますので。これに対して日本としてそれなりの対策、あるいはどういった形での対応をとっていかなければいけないかというのは、これはある意味、具体的に日本は現在の憲法と法律の中で何ができるかと言えば、軍事オペレーションができるわけではないので。私はミュンヘンの安全保障会議に、副大臣の時に2回ほど出させていただきまして。各国の閣僚とか、首脳達に様々なことを、当然主たるいろいろなミッション・セッションがある中で、ここでバイ会談を行う形になります。これは国際会議ではよくあるパターンですけれども。その中で彼らはロシアの脅威を声高に感じているんですね。また、シリアの難民の問題というのも非常に大きなテーマがあったのですが。どうしても東アジアの地域のことについてはさほどまだ理解が進んでいなかったのが1年目でありました。ただ、1人1人の各国の国防大臣や外務大臣にお話をさせていただくことで、徐々に徐々に理解が深まり、中国はこんなことしているのかと、そうだ、北朝鮮、そうなのかと。あなたのところへ、逆に日本海側へ撃っているから、あるいは太平洋側に撃っているから、こちら側にミサイルが飛んでいるけれど、逆を向けたらロンドンにも、パリにも、ローマにも、ミサイルが届きますよと。あるいはその技術をもしかしたら近隣諸国に売る可能性もありますよという話をしました時、中国のこの南シナ海に対する海洋進出に対しては非常に大きな懸念を持ちました。たとえば、イギリスは具体的にそうですけれども、フランスも含めて、いわゆる『航行の自由作戦』というのを自国の艦船が、フランスは実際、ニューカレドニアに自分の海軍の基地もありますので。そういった意味で、敢えて南シナ海を自由に通ってくるということをやって…」
松山キャスター
「アメリカ軍はやっていますよね?」
若宮議員
「アメリカはやっていますけれども、フランスも、イギリスも…」
松山キャスター
「あっ、フランスも?」
若宮議員
「はい。そういったヨーロッパ諸国も、そういった形である程度、中国の動きということに対して警戒感を持っているなというのが現実ですので。そういった外交手段によるいろいろなある程度、国際世論から押さえていくというのも非常に大きな観点ではなかろうかと思っています」

中国の軍事拠点構築と拡大 南シナ海『覇権』の行方は
松山キャスター
「南シナ海の近辺、よく言われるのが、中国が岩礁をドンドン埋め立て、人工島をつくって、そこを軍事拠点化してきたという話ですけれども。こちらが衛星写真ですけれども、アメリカの研究機関が出している衛星写真ですが、ファイアリークロス礁とか、スビ礁とか、ミスチーブ礁とか、この他の岩礁も人口拠点化、軍事拠点化がかなり進んでいるという状況なのですが。小原さん、実際、どこまで軍事的に実用可能な施設が建設されているとみたらよろしいのですか?」
小原氏
「まずこれらアメリカのシンクタンクでビッグ3という言い方をしているのですが、それはこれら3つに似たような施設があるからです。それは象徴的なものが3000メートル級の滑走路で、これは中国人民解放軍が持っているほぼ全ての種類の航空機、戦闘機や爆撃機を含めて離発着が可能です。さらに、この滑走路脇には戦闘機用のハンガーですとか、あるいは大型爆撃機用のハンガーだと思われるものが既に建設されています。地下貯蔵庫の大きなものがつくられていますし、ここに弾薬等が貯蔵されるのだろう。さらに水・油を貯めるための施設ももうできている。さらには兵舎、あるいは庁舎といったものもできている。それだけではなくて、実はレーダーをたくさん並べた区画がそれぞれの島にありまして、対空ミサイルもほぼ同じ数、1つだけを多いところがあるのですけれども、これもシェルターに入った状態で置かれていると。と言うことは、空からの脅威にも対抗しようとする。そうすると、これら中国の3つの人工島は、ここに戦闘機ですとか、爆撃機等を展開して運用できるというところまできているということになります」
松山キャスター
「中国はこういう人工島を軍事拠点化することで、具体的にはどういう戦略、作戦というのか、そういうのを想定しているのですか?」
小原氏
「中国はこれらの島をそれぞれ個別に守ることは難しいということは理解をしていると思いますが、ここにあるのがちょうどスプラトリー諸島、ここにある3つの島で、中国はこの北側にあるパラセル諸島は既に軍事拠点化を終えています。こちらには戦闘機が展開したとか、対空ミサイルが展開したということも既に中国では報じられています。さらに問題になっているのは、フィリピンの沖合200kmぐらいあるスカボロー礁ですが、ここを押さえてしまうと、中国はこの三角形で南シナ海を面で押さえてしまうことになります。これで全て防衛ができると思ってはいないわけですけれど、これらの人工島に軍事力を行使するということは戦争行為にあたるわけですから非常にハードルは高い。と言うことは普段からここを航行するアメリカ海軍の船等は、これらについて対応をする状態で通らなければならなくなるということですから、実はアメリカの安全保障に対して非常に大きなコストを強要するということにもなります。こうすることによって中国は南シナ海を実質的に領海化したうえで、全て通るのを妨害することはできないにしても常にコストを強要する、圧迫するということなのだと思います」
松山キャスター
「アメリカ側の立場からすると航行の自由作戦をこの海域でやっているわけですけれども、ただ、そんなに頻繁にやっているわけではなく、たまにやると、それが発表されるという状況になってますけれども。若干、アメリカから見ると、この中国の軍事拠点化の動きに出遅れたという印象を僕は受けるのですけれど、小原さんはどう見ていますか?」
小原氏
「そういった感は否めないと思いますが。ただ、アメリカがこの建設途中にこれを破壊できたかというと言うと、これも難しいのではないかと思います。現在、トランプ大統領がスプラトリー諸島における航行の自由作戦、オバマ大統領の時よりさらに突っ込んだ航行の仕方をしていまして。オバマ大統領の時の航行の自由作戦は、中国が領海だと主張するこの人工島から12海里の中を通行するだけだったのですけれど、最近の海運関係のニュースを見ていますと、モア・ミスチーフといったようなタイトルで、ミスチーフに繰り返し入ると。しかも、12海里ではなくて、さらに近い6海里を航行すると。しかも、まっすぐ走るのではなく、ジグザグに戦術運動訓練を行う。さらには溺者救助訓練を行うといったことが書かれています。溺者救助訓練というのは人が船から落ちたのを救助する訓練なので、名前だけ見てみるとたいしたことではないように思うのですが、アメリカの船には中国の水上艦艇が追尾をしています。実は中国もあまり過度に反応しないよう追尾だけしかしないのですが、溺者救助訓練というのは、人が落ちたと言うと、回頭と言って最短距離でグルッとまわるんですね。そうすると、追尾している中国艦艇から見ると前のアメリカ海軍の船がすごい勢いでこちらへ頭を向けてくるという運動になる。これは実は非常に緊張を高める」
松山キャスター
「危険ですよね?」
小原氏
「はい」
松山キャスター
「偶発的な事態が発生する可能性がありますよね?」
小原氏
「そうして圧力をかけているということなのですけれど。アメリカに対して中国がコストを強要しようとするのであれば、アメリカもそれに対して現在これだけのことで、緊張、圧力をかけられるということをここでも見せ合っているということだと思います」
松山キャスター
「以前に、たとえば、アメリカ艦艇が使っていた小型の潜水機ですか、海洋調査用の潜水機を出していたら、それを中国側が回収してしまったという、ちょっと緊張状態が高まった時期もありましたけれど。もっと遡れば、たとえば、海南島でスパイ・プレーン、スパイ機が中国側に保護されたという事態もありましたけれども。何か偶発的な事態で一気に緊張が高まる可能性が十分あると思うのですけれども、それはどう感じていますか?」
川上教授
「米軍の中、もしくはシンクタンクの中ではそれをむしろ待っていると。現在の段階では中国海軍に対しては圧倒的にアメリカが有利でありますので、今のうちに出鼻をくじくと、元の状況に戻すと。特にフィリピンにドゥテルテ大統領が出る前までは国際裁判所で争ってフィリピンが勝っているわけですから。そのあとに中国がそれを無視してやっているという状況ですから、これは明らかに違法行為でありますから。それを国際的な世論のもとに、中国がそういうことでやってきたというのだったら、米韓は正当防衛で切り返すことができるという状況だと思います」
松山キャスター
「若宮さん、この南シナ海で、たとえば、日本ができることはなかなかまだ見えてこない感じがするのですけれども。実際、航行の作戦は支持するということを日本政府としてはずっと言っていますけれども、それ以外にこの海域の安定を守るために日本ができることはどういうことがあるのですか?」
若宮議員
「実際、これはもう発表しておりますので、申し上げても差し支えないと思うのですけれども。日本でも、艦艇をそれぞれのいろいろな近隣諸国の国々に寄港し、それぞれの国の軍隊の皆様方との友好・親善を深める形で、練習艦隊もそうですし、それから、いずもの艦船も昨年はずっとかなりの日数をまわって帰ってきたのですけど。そういった形で日本としても、この海域は押さえておかなければいけない海域ですので。そこは年中、ご先生方がおっしゃっていますけれど、アメリカの艦船であろうと、日本の艦船であろうと、あるいは先ほど申し上げたイギリス、あるいはフランスの艦船であろうといろいろな国々の艦船が自由にドンドン通ることがある意味抑止になると思います。既におっしゃるように、滑走路ができてしまっております。滑走路ができてしまっているうえに、対空砲、まして本当に近隣、近いところも全部撃ち落とすCIWSをもうセッティングしているのではないかと、準備をしている状況ですので。そうした中で本当に拠点化されてしまってはどうしてもないなと。1番厄介なのはこのファイアリークロス礁ではないかなと思っております。と言うのが、大きな港湾施設を合わせてつくっております。ちょうどこちらになります。港湾施設をつくるということはそこにいろいろな輸送船が入れる、あるいは大きな軍艦も入れる、そういった形につくることで完全に拠点化できると。その意味も含めて、先ほどの台湾の話にちょっと話が戻りますけれども、アメリカがなぜ台湾に対して潜水艦をある意味、売却供与というのを認めていくかと言うと、先生方のお話にもありましたが、艦艇、潜水艦というのはじっと海の底にいますから把握することが非常に難しい。こちらは見つからないのだけれども、見つけられないのだけれども、相手からするともうどこにいるのかをすぐに察知することができますから。そうした意味では、中国と現在、台湾とでは圧倒的に潜水艦の量が違う。であれば、アメリカのある程度能力の高い潜水艦を台湾のために供与することによって、この海域も含め、いろいろな抑止力を高めることになると見てとれるのではないかなと思います」
松山キャスター
「一方、この海域、いろいろな岩礁をいろいろな国が領有権を主張していたりして複雑な領域なわけですけれども、ロシアが、たとえば、ベトナムと安保協力を今度結んだりとか、また、別の大国がここに力を及ぼそうとしているという状況で、だんだん複雑化の一途をたどっているような気がするのですけれども。このロシアファクターをどう見ていますか?」
若宮議員
「ご指摘はごもっともで、もちろん、古くはベトナム戦争に遡れば、実際に旧ソ連があと押しをしたわけですから。ベトナムとロシアの関係というのも、またベトナムにとってみれば地続きで中国というのは大きな脅威となってますから、自国を守るために、ある程度、手を組める相手であれば組むという可能性というのはおおいにあると思います。ただ、ベトナム自体、経済とか、いろいろなものを総合的に考えた時に、確かに社会主義国として成立をしているものの、現在、付き合いの仕方というのは、ある意味ではASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の一員として入っているところもありますから。そのへんの見方、考え方というのは、私もベトナムの将軍とお話をさせていただいたこともありますけれども、特に私はこっち側だ、私はこうだという意識を持たず、自国をキチッと維持・守ることをベトナムの国々の方々も考えておられるので、そのへんのところは日本としての付き合い方としては良好な形でできると思うのですが。ただ、ロシアの介入というのは、御存知の通り、クリミアでのハイブリット戦闘と、いろいろ様々な形態で、実際に日本で言うところの、いわゆるグレーゾーン的な本来の軍服を着た軍隊ではない形でさりげなく入ってきて、どこだかがわからないうちにいつのまにか獲ってしまったと現実もありますので。そういったところをしっかりと見ていかなければいけないなと思いますね」

あるべき日本の姿勢と備えは
生野キャスター
「中国が海軍を中心に軍備を増強していますけれども、川上さん、尖閣問題などを抱える日本の備えは十分だと考えますか?」
川上教授
「いや、まだまだだと思いますね。もちろん、日本は何かあれば、日本の領土ですから、1番に守らなくてはいけない、血を流さなくてはいけない。それで、初めてアメリカというのは助っ人に来てくれて、抑止力が効いているわけです。ただそのへんは十分、自衛隊、防衛省、日本政府は意識して、最近ではこういう島しょ部に自衛隊を配備し、地対地ミサイルも配備しながら、かつ水陸機動団をつくって、日本版の海兵隊をつくったわけですね。かつ米軍再編で、そこで米軍の実戦部隊の1部がグアムに移転しますから、それの補足で日本の海兵隊、水機団が入ると。それから、キャンプハンセンとかも、基地の共同使用もおそらく自衛隊はやっていくだろうというところで増強しているのですが、 まだまだ当然ながら中国の海艦であるとか、もしくは中国の艦船の方が優位でありますから。1メーター、1メーター、本当に中国の空軍とかに削られているわけですね。そのような状況が非常に厳しい戦いを強いられている中、どういう具合に抑止力を高めて、アメリカが本当に尖閣で何かがあった時に助けてくれるかというところがポイントになっていると思います」
松山キャスター
「1つ最近の動きとして中国、尖閣によく出てきていた海警ですね。その海警局が今度、軍の指揮下に入るという話がありました。これによって、たとえば、日本だったら海上保安庁がそれに対抗してやっていたというのがあったと思うのですけれども、海警が軍の指揮下に入ることによって、今度、自衛隊は出ていけるのかと言ったら、それはなかなか出ていけないという事情もあったりする、何かバランスが崩れたりするところもあったりするのではないですか?」
川上教授
「一歩たぶんチャレンジしてきたと思うんですよね。ですから、海保を相手にせずに今度は自衛隊、海上自衛隊を相手にするということを向こうから言ってきていますから。そうすると、本当に海上自衛隊のそういう人員が足りているのと。もしくは規模が足りるの、それだけ本当にやる気があるのという課題をまた新たに1つ敷居を上げてきたと。それから、ドローンも使ってきていますから、それに対してどう対応するのか。それから、本当にそういう具合が、米中が今度は和解に向かった場合、どういう具合に自衛隊独自が展開するのかという課題がたくさんあります。それは防衛大綱とか、中期防の方で十分抑えがきいているのだと思います」
松山キャスター
「なるほど。若宮さん、まさに防衛大綱や中期防の話が出ましたけれど、中国の軍備増強とか、北のミサイル・核開発とか、いろいろありますけれども、それに備えて現在の段階ではどういう方向性とか、戦略を示していくことになっているのですか?」
若宮議員
「まずは私どもの自民党の方で、私国防部会長でもあるのですが、安全保障調査会というのがありまして、中谷元元防衛大臣が会長をさせていただいて、それで私は事務局長を務めておりまして。そのもとで新たな防衛大綱と、それから、新中期防ということで、その方向性を現在とりまとめている最中です。骨子につきましては、皆様方にもお配りをさせていただいたかと思うのですが、3月末に一応発表させていただきまして。なぜこの時期に…、大綱というのは、これは基本的に概ね10年ということで真ん中あたりまできたわけですけれども、それを見直さなければならないかと言うとまさに今日もお話に様々出ていますけれども、日本を取り巻く安全保障環境というのは戦後最大の危機的な状況にあるのが現実ではないか。現実と新たな脅威というのをしっかりと見据えなければいけない。現在は融和状態でありますけれども、私が副大臣を2年間やらせていただいた時には、およそ約40発のミサイルを撃ち込んできました。また、核実験も本当に頻発してやりました。そうした状況というのが決してこれから絶対にないのかということは、まだ保証できたわけではありませんので、そこもしっかり見ていかなければいけない。また、もちろん、今日お話に出ました、中国の不透明な軍拡と一方的な現状変更の試みというのも、またしっかりと見ていかなければいけない。さらに先ほど、ベトナムとロシアの連携の話もありましたけれども、このロシアの勢力の拡張というのも見逃すわけにはいかないと思っています。いろいろな形での、ウクライナでの危機とか、あるいはハイブリット戦、様々ありますので。これもどういった形でどこへ手を伸ばしてくるかというのはしっかり見ていかなければいけないと考えていますし、また、さらに新しい領域としては、今日は全然話題は違いますけれど、宇宙、あるいはサイバー、これはもちろん、対中であったり、それから、対北であったりしても、当然のごとく必要な個別具体の内容になっていきますから。こういった分野というのはまさに国境を越えて、いろんな形で、あるいは組織ではなく、個人とか、様々な形態になってきておりますので、こういった情勢の中にあって、我が国、日本の領土・領空・領海、日本国には守るためにどうあるべきかというのは5年前につくった大綱に足らざるところをドンドン、バージョンアップしていこうというのが1つあります。それから、また、新たにトランプ政権が発足してもう1年が経ちました。そうした新しい米国の新戦略に基づいた形の新たな日米同盟の進化ということも、これも忘れてはいけない部分で、進めていかなければいけないと思っています。最終的に総理もお話されていますから、インド太平洋地域全般を見据えたうえでの日本の戦略のあり方というのもしっかりと取り組んでいきたいと考えています」
松山キャスター
「小原さんはどうですか?中国の軍備増強とか、尖閣問題もありますが、日本の備え、現在の段階で十分だと考えますか?」
小原氏
「いえ、決して十分だと思いませんし、また、台湾と同様、日本は単独で中国と戦って勝てるだけの軍備を持つべきなのかと言うと、私はそれも現実的ではないのだろうと思います。ただ、日本政府は既にこれに対抗すべく非常に有効な手を打ってはいるとは考えていまして、そのキーワードになるのは機動化だと思っています。先ほど、川上先生もおっしゃったような水陸両用機動団の新設もありますし。また、南西諸島への陸上自衛隊の監視部隊ですとか、対艦ミサイルの部隊の配備、これもその部隊が単独で中国の艦艇を全て叩けるとか、防衛できるというものではもちろん、ないのですけども、これが相手にコストを強要するものになると。しかも、日本側のコストはなるべく小さくして相手にコストを強要するということが大事になってくるのだろうと。そういった意味で、小笠原諸島への移動レーダー、移動式のレーダーの配備、これも新しくつくるのではなく移動式のものであるということがミソだと思っていまして、コストも抑えられる。しかしそれによって太平洋のある程度、範囲をカバーできるのだということを見せる。ここに部隊を展開するのではなく、今後やらなければいけないことはここに機動的に部隊がいつでも展開できるのだという体制をつくることによって、中国に全てを対応させなければいけないけれども、日本は機動的に現在ある部隊を展開できる。こうしたことが、日本にできることだと思いますし、そういった努力を続けることによって日米同盟をさらに強化する、日本ができることをさらに増やしていくということになるのだと思います」
松山キャスター
「日中韓の間で、たとえば、経済面では日中ハイレベル対話が何年ぶりかで開かれ、一時の冷え込んでいた時期に比べるとかなり接近しているような印象を受けるのですけれども。そういう経済面での接近とは別に安保面では対中国対策というのをきちんと別にとっておくべきだと考えますか?」
小原氏
「はい。日中関係は今年間違いなく改善すると思います。これは、昨年後半から中国側の日本に対するアプローチも随分変わってきたということを実際に感じていましたし、それに中国はアメリカからの圧力が強くなるとバランスをとるため、日本との関係を改善しようとします」
松山キャスター
「そうですね」
小原氏
「この流れは変わらないと思いますし、日本にとって悪いことだとも思いません。日本の独特の立場というものは、アメリカに対しても有効に働くと思っていますし、同盟関係というのは一方的に守ってもらうものではなく、日本が日本の役割を果たして初めて同盟関係というのは成り立つと思っていますので、そういった意味で、日本の役割を中間で果たすということができると思います」

若宮健嗣 自由民主党国防部会長の提言:『インド太平洋地域諸国との強固な連携関係の構築(安全保障ネットワーク)』
若宮議員
「インド太平洋地域諸国との強固な連携関係の構築、これこそ安全保障ネットワークではないか、そのように考えています」

川上高司 拓殖大学海外事情研究所所長・教授の提言:『確固』
川上教授
「私は簡単に確固。つまり、今後中国と日本が対立していく可能性も増えますでしょうし、アメリカと中国が対立する可能性もあると。そのためには準備だけではなく、それなりに戦う覚悟、もしくはある程度で妥協をする覚悟、それが必要だと思います」
松山キャスター
「確固たる姿勢が必要だと?」
川上教授
「はい、確固たる」

小原凡司 笹川平和財団上席研究員の提言:『我の最小コストで彼に最大コストを』
小原氏
「先ほど申し上げましたが、日本は日本の国力に応じた安全保障政策をとる必要がある。そうすると中国の弱点は何なのか、日本の強点は何なのか、日本の最小のコストで相手に最大のコストを払わせる、そういった方策をとっていく必要があると思います」