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2018年4月24日(火)
政治学者が緊急議論! 混迷政治の構図と本質

ゲスト

野中尚人
学習院大学法学部教授
牧原出
東京大学先端科学技術研究センター教授
中野晃一
上智大学国際教養学部教授

続発する官僚・官庁不祥事 問題の『根』は何か?
竹内キャスター
「安倍一強と言われる中、国の行政機関で問題が次々と発覚する、根本的な原因はどこにあるのでしょうか。自民一強と言われる中、なぜ野党の低迷が続いているのでしょうか。3人の政治学者をゲストに迎え、現在の政治状況が生まれた背景を、政治システムや選挙制度などから多角的に検証します。まずは先週末に行われたFNNの世論調査を見ておきたいと思います。安倍内閣の支持率は38.3%で、前回3月の調査に比べ、6.7ポイント減りました。下落は3回連続となっています。支持しない人の割合は54.1%で、前回より10.3ポイント上昇しました。野中さん、ここのところ安倍政権、安倍内閣の支持率が低下している原因をどのように見ていますか?」
野中教授
「あまりにも政府のやること、なすことに疑惑を生じさせることが多すぎると。それに対して、安倍総理はじめ、対応すると、責任を痛感していると言葉はあるのだけど、行動がないわけですね。李下に冠を正さずという言葉がありますけれども、言うならば、我々の住んでいる時代と違う、かなり昔の時代の政治倫理を言っていたわけです。我々は倫理だけではなく、倫理はある意味で言うと大前提で、それに加えて責任を持たなければいけないです、政治家が。それは2つの種類の責任からなると思っていて、1つは説明責任、もう1つは結果責任です。その2つをきちんと果たしていると言えるかどうか。それを果たして、そのうえで、我々はこう行動していると言ったうえで、具体的な行動が伴わない状態で、やりますとか、責任を感じていますと言っても、国民はなかなか納得しないと。そういう次元にきているのではないでしょうか」
牧原教授
「スキャンダルが続発するというよりも、いわば五月雨式に出てくるんですよね。これが止められていない。その中にあるのは政権の内部で、特に現場ですよね。防衛省、自衛隊は典型だと思うのですが、現場と幹部との間で非常に深刻な亀裂がある。これをどう修復するのかも見えてこないということなのだと思います。私は、安倍政権自体が変質してきているのではないかという部分を感じるんです。と言うのは、政権発足時なら、こういう問題にすぐに対応したんですよ。何かあれば更迭するとか、かなりリスクマネジメントを強烈にやっていたのが、現在は放置されているんですよね。ですから、森友、加計は典型で、1年近く燻っていると」
松山キャスター
「霞が関の官僚組織との関係で言うと、最近、たまに聞くのは、霞が関の反乱みたいなものではないかと。いろいろなところからリークが出てきて、政権に打撃になっていくと。そう感じますか?」
牧原教授
「そうですね。昨年、最初にリークが出た時ですね、加計学園絡みで出たわけですけれども、ちょっと変だなと思ったんです。リークというのは官僚制の場合、1番強い抵抗手段ですよね。だから、それが出てきたというのは非常に危ない」
竹内キャスター
「中野さんは内閣の支持率の低下、いかがでしょうか?」
中野教授
「これらの不祥事が、もちろん、行政で起きていることですけれども、突き詰めて、安倍さんのところに道がつながっていっているのではないかというのが、ずっと言われているのですけれど。森友、加計で言えば、1年前から総理の関与があったのではないかと。要は、色をなして、首相が自分や自分の妻が関与していたら国会議員まで辞めるということをわざわざ言った。それぐらい疑われていると彼は感じていて、それを払拭していない。それどころか答弁にも虚偽があったのではないか。公文書も改ざんしていたことが明らかになったということで、嘘が出てきたわけですよね。だから、もともとの問題、先ほど、牧原先生も対応のことをおっしゃいましたけれども、もともとの問題というのもあるのですけれども、それに加え、対応が本当に信用できるのかということになってくると、どうもこれは嘘っぽいと。実際に嘘も出てきているんですよね。そうは言ってもまだこれぐらい支持率があるのかという言い方もできて、それは代わりになるものというのが見えてきていないというところがまだあるのだと思うんですけれど。しかし、それはいつまで続くのか。まして3選ということがあり得るのかというタイミングになってきているのではないかと思います」

政策決定プロセスに問題は?
竹内キャスター
「安倍政権の官邸主導を実現している、総理大臣を直接補佐、支援する内閣官房の現状についてあらためて見ていきたいと思います。内閣官房には現在1141人の職員がいるのですが、安倍政権になってから、およそ330人増員されています。内閣人事局や、安全保障に関する外交防衛政策の基本方針の企画・立案・調整などを行う国家安全保障局は安倍政権下で新たに設けられました。3人いる内閣官房副長官補の下には、内閣の重要政策に関する企画・立案、総合調整に取り組む35の組織が設けられています。牧原さんは、安倍内閣の内閣官房の強化を官邸主導の大きな要素だと指摘されていますが、具体的にはこれまでと何が変わったのですか?」
牧原教授
「まず全体として言えるのが、内閣官房というのは2001年に省庁再編があった時にできましたけれども、その前は定員が200人を切っている非常に小さなものだったんですけれども、それが現在、1000人を超えていて、内閣官房よりも本省の定員が少ない省庁があるぐらいですから、この内閣官房時代が1つの大きな省庁みたいになっていると。かつてとは全然違うんですね。しかも、いろいろな機能をドンドン付加していっていると。企画権限を持っていて、これ自体が政権の、いわば政策形成の中心にかなりきていることが言える。その意味で、官邸主導が完成してきているということが言えると思います」
松山キャスター
「民主党政権時代も、かつて官邸主導とか、政治主導ということを標榜して、各省に行っている政務三役がいろいろ会議を開いて自分で電卓を弾いて、予算まで政務三役が決めるみたいな、そういうことも行われていた。あの時代と比較して、現在の安倍政権の組織、どこがどう違うのですか?」
牧原教授
「民主党政権の場合は、大臣、政務三役と首相官房長官といった政治家が一体となって政策形成を行おうとしたんです。これはイギリスの政治システムを念頭においていた。ですから、それまでは官僚達が基本的に政策をつくって、そのうえに政治が乗っていたのが、そうではなくて、大臣達、政治家達がここで政策を行おうとするわけですね。それぞれが官僚に対して指示を出していく。こういう形で政策を実現しようとしたのですけれど、この仕組みではこちら(官僚)から情報を吸い上げるということがなかなかできない。ここだけで議論しているから、うまくいかなかったということがあったわけですね。今度、第2次安倍政権でどうなったかと言いますと、首相官房長官があるにしても、ここ(官邸)で政策をつくっていこうとする。官僚達が特に事務次官、首相官房長官に説明に行くという仕組みになっていて、実はここ、大臣、政務三役が薄くなって、ここを中心に政策をつくろうとしていると。もちろん、官邸に関心のないものは、大臣や官僚達がやるのですが、ここ(官邸)が中心になっているというのが安倍政権の特に最初の3年ぐらい。しかし、現在、ここ(官僚)が見えてきたという面があります。つまり、官邸の中の官僚達が直接各省の官僚に指示をしている。ですから、例の加計学園の時に、藤原さんとか、あるいは内閣官の和泉さんとか、そういう人達がいろいろ直接、文科省に指示していたという話がありますが、ここ(官邸)の部分が大きくなっているというのがあって、官僚達と首相と官房長官との関係がどうかというのも分かれて見えると。ですから、最初は一体だったのですけれども、コントロールセンターがいくつかに分かれているように見える。それぞれが大臣を差し置いて直接、官僚達に指示をしているように見えると。こういう動きになっているのだと思います」
松山キャスター
「民主党政権時代は政務三役から官僚への上から下へ降りていた。第2次安倍政権は官僚から大臣に細い線で政策が上がっていると、ここが逆になっていますが、これはどういう意味ですか?」
牧原教授
「つまり、大臣達が必ずしもイニシアティブをとっているわけではない。官邸の意向を見ながら自分達がつくった政策は省として動かしていくという、そうなっていると思います。ここの部分だけ行政主導なんですよね」
松山キャスター
「この官僚が官邸を知らず知らずのうちに見てしまっているという部分があるということですか?」
牧原教授
「そうですね」
松山キャスター
「目を気にしながらやっている?」
牧原教授
「ここはすごく気にしていると思います」
松山キャスター
「中野さん、どうですか?安倍政権と前の民主党政権との組織上の違いというのは?」
中野教授
「それは牧原先生がご説明された通りだと思うのですけれども、問題なのは、民主党政権の時には官僚制とかなり敵対的な関係にあった、お互い様のところはあったと思うのですけれども。民主党側は不信感を持っているし、官僚の側も招かれざる客が来たというようなことで、当初からぎくしゃくしてやっていたところがあると思うんですね。その中で官僚を使いこなせなかったということが、現在に至るまで言われているわけですけれども、安倍政権を見ると使い倒してしまっているというような感じになっていると。大臣からラインがくるというよりかは、官邸、あるいはそこの意を汲んだ官僚が、秘書官とか、内閣府にいる人とか、かなり不透明な形で関与をしているというようなことで責任の主体がはっきりとわからないというようなことになってきていて、どうも官僚を使い倒してしまっていて、典型的なのは国会の場においても答弁になっていない答弁をひたすら繰り返していて、これはどうも官邸を守りたいんだなという印象しか受けないようなことが行われてしまっているということで、なのに勝手にやっているかのような感じの言い分。麻生さんはある意味、本音なのかもしれないと思うんですよね。要は、官邸側から手を突っ込んでやっているから、俺のせいではないのだ、という顔をしていますよね。主体的に自分の意を汲んでやっているのであれば、もうちょっと責任主体として意味のあることを記者会見で言えるのかもしれないのですけれども、かなり投げやりな感じで、知ったことかという感じで言っていて、佐川さん、あるいは理財局がやったというような感じにしていて、あなたは監督する人ではなかったですか、というような感じになっちゃうところだと思いますね」
松山キャスター
「野中さん、大臣が自分の省庁の官僚をキチッと抑えられていない部分もあるようですけれども」
野中教授
「それは官邸主導で人事を全省庁集めてコントロールするということですから、当然起こるわけですね。牧原先生がご説明された通りですが、1部この説明の図式でいくと、追加説明すると、ここ(官邸)のところの官僚はここ(首相官房長官)にいる人もいるんですよ。現在、混乱もとになっているのは、言葉が悪いですけれど、側用人政治みたいなことをやる人がいて、つまり、政治家が政治主導するのは政治責任をとる限り正当なことなのですけれども、そうではない官僚で、ここに来た人が政治的な上司であるかのように、いろいろな人に指示を出すということをやっていますから、非常に不透明になってしまうわけです。それが明らかにいろいろなところに出て、つまり、秘書官やその他のいろいろな人です。その人達がこっちの方まで出張って、これをやっているという感じがあるわけですね。それでいろいろ考えてみると、お役人の対応というのは、非常に難しいところがあって、政治的な上司、大臣であったり、官邸であったりがこれをやりなさいと言った時に正面切って、これは嫌ですとか、できませんとはなかなか言えないわけですよ。だから、政治的なプロセス、民主的なプロセスを経て、選ばれたリーダーの意見を尊重しなければいけない。これは役人からすると、官僚からすると、政治的応答制を問われているということです。他方で、もう1つ政治的中立性というのが必要で、長い目で見ると、いろいろなことが起こりますから、ある特定の親分だけに、徹底的に忠誠心を持っているだけでは国民のために仕事ができないおそれがあるわけですよ。これは、過去にいろいろな国で、いろいろな時代にいろいろな失敗があって、それを我々は謙虚に見た方がいいと思います」
松山キャスター
「とは言え、第2次安倍政権ができた直後から何年間かうまく機能していた政治主導の部分もあると思うのですが、ここにきて問題が出てきていると。官邸が力を持ち過ぎたせいかもしれませんけれども、そのあたりの改善策というか、今後の政権も含めて、どういう部分を改善すべきだと」
牧原教授
「たとえば、官邸のイニシアティブで各省の官僚達が強いコントロールのもとに一定の政策を行うとした時、その政策が成功していればいいですよね。最初の数年はそうだったのですけれど、現在みたいに綻びが出た時に誰が責任をとるのかと言うと、官邸ではないと、官邸は、ここは省でしょうと言うと、大臣は自分が知っている話かどうかわからない話が下で決まっているのではないかということがあるのかもしれないと。各省の官僚達も官邸に言われてやっているんですということになってしまうと、誰も責任をとらない仕組みになっているんですね。指揮命令系統が乱れているとこういうことが起こるわけで、失敗が続いてくると責任主体が見えなくなるということが生じていると思います。これは非常に大きな問題だと思います」

『安倍一強』に自民党は?
松山キャスター
「安倍総理は政府とは別に、自民党の総裁でもあるわけで、総裁の直属機関として党内に政策にダイレクトに反映できるような、いろいろな本部を設置していると。現在、ここに一例を挙げたのですけれど、憲法改正推進本部とか、教育再生実行本部とか、一億総活躍推進本部とか、政府の中にもある諮問機関と似たような名前の組織が、党本部の中にも設置されていると。そこからも政策を吸い上げる仕組みをつくっている。こういう形の組織ができあがることによって、党から意見を言っているようでいて、実は官邸の意向を汲んだ政策しか上がってきていないという側面というのはあるのですか?」
牧原教授
「そうですね。民主党政権は、完全に内閣と党の一元化で、全部内閣で決めるということをやって、そうすると党の政治家に不満が溜まるわけですよね。官邸主導の別バージョンとして党の中に政権の意向を汲んだ本部ができる。それは党にかつて政調会の部会というものが非常に強い力を持っていたんですね。政調会の部会を、いわばバイパスする形で、総裁直属機関ができている。それによって政権の方針を党の方で審議しながら求めていく、そういう形になっていると思います」
松山キャスター
「現在の自民党を見ていると、形上は部会から政調会に上げて、最後に総務会で、全会一致でやるというシステムそのものはまだ残っていますけれど、まったく異質のものに映ります」
牧原教授
「そうですね。それはかなり変わってきていると思います。ただ、これは政権の支持率が高かったり、選挙で勝ったりしていると、そうなる。これがまた変わってくると、また党の声が出てくると思いますが、これまでは政権の力で党が抑えられていた」
松山キャスター
「最近、こういった政と官の問題が出てきて、不祥事と言われるようになってから、党からの発信としては、たとえば、現在の自民党の二階幹事長は自分自身もうんざりしているという形で、ちょっと批判的なこともコメントしたりすると。党の顔とも言える二階幹事長がそういった発言ができるということは、党の力も盛り返していると見えないこともないのですけれども、そういった動きをどういうふうに…」
野中教授
「それは波があるので、たとえば、内閣の支持率であるとか、安倍さんの人気であるとか、そういうものが反映するわけですね。こういう状況の中では当然、与党の側の幹部と目される人達がいろいろなことを言う。当たり前に起こる。ところが、もう少し視野を広げてみると、これは憲法の問題についてもそうですけれど、どれだけ党がきちんと討論して、政策的なものを積み上げて、そのうえで官邸に言うことを言っているかとか。それから、幹事長は当事者なのではないのですかと、私に言わせると。国民からすると明らかに当事者で、うんざりしていると言うのは、私は知りませんと聞こえるわけですよ、半分は。そうではいけない。だから、そのところで言うと、何か与党が本来、政権とどういう関係を結ぶのかということについて、何となくイメージがないのでしょうね。という感じを受けます」
松山キャスター
「中野さんはどう受け止めていますか?」
中野教授
「官邸と党の問題というのも、いろいろなモデルがあり得るし、試行錯誤してきていると思うのですが、ただ、我々にとって、何が1番大事かと言うと、民意が政策に反映されているのか、どう反映できるのか、そのチャンネルがきちんとつくれているのかという話だと思うんですよね。難しいのは、民意は1つではないということだし、多様であるということだし、あとは選挙の時に一定程度、表出はされるけれど、1回きりで決まるような話ではなくて、政権ができてからも何らかの形で多様な民意を吸い上げるシステムができなくてはいけないと。55年体制下の自民党というのは一応、そういうのがあって、政権に留まり続けると。政権交代も起きないし、選挙に基本的に負けないと。だけれども、族議員がいたとか、縦割り行政の中でいろいろな問題を孕んでいたけれども、一定程度、吸い上げてきて、それが反映できる。だから、与党対政府の話し合いがあってということが、芝居の部分もありましたけれど、あったわけですね。それでなくなった時に、民主党政権の時は、現在思い返すと気真面目過ぎるほどまでにマニュフェストを書き込んでいて、金額まで書いていて、工程表まで書いていて、できないと随分怒られて、最終的には失望を招いて下野に至ったということだと思うのですけれど、現在の自民党ということで言うと、選挙の公約も相当ざっくりしていて、サイクルも見えてこないわけですよね。だから、3本の矢と言っていたが、現在も有効なのか。新3本の矢と出ましたけれども、覚えている人はほとんどいないわけですよね、何だったのか。総裁直属機関のものでも具体的にある程度進んでいるところもあれば、選挙の時に言われていた言葉が残っているけれど、実態に何があるのかな、あるいは議論が尽くされたとはとても思えないような部分があったりする。だけど、その議論をどこでやるのかと言ったら、どうもその道筋も見えないということになっていると思うので、そういう意味で、現在の党と政府の関係というのはとてもうまくいっているとは言い難い」
竹内キャスター
「自民党の次期総裁に相応しい人物を聞いたFNNの世論調査を見ていきます。安倍総理は20.9%で石破氏、小泉進次郎氏が安倍総理を上まわる結果となりました。野中さん、安倍総理の3選の可能性についてどのように見ていますか?」
野中教授
「この数字は若干、解釈に難しさがあって、これは自民党の党員に聞いたのではなくて、全体の有権者から模索・抽出されているわけですね。自民党党員に限ればまだおそらく安倍晋三氏がトップだと思うんですよね。つまり、これはもちろん、影響はあるのだけれど、総裁を選ぶのは自民党員プラス自民党議員なわけですよ。そこは間違えてはいけない。それを頭に入れたうえで流れとして言うと、安倍さんの一時の圧倒的な人気は明らかに陰りがあって、たぶん私は現在のままの状態ではこの態勢を挽回することはできないのではないかと感じています。何をやるか、いろいろ手はあると思いますけれども、改造をやるとか、あると思います」
松山キャスター
「安倍さんの若干、勢いが衰えているという指摘はいろいろなところで聞きますけれども、たとえば、総裁選ということで言うと、ここに名前があがっている人達も現在の時点ではっきりと出馬するとは言わないわけですが、じわじわと距離を置き始めている発言も出てきていると。たとえば、石破さんは、もう1つの大きな派閥を持っている岸田さんに秋波をおくっている動きも出てきている。そう考えると、たとえば、党員、議員の票を含めて、2位、3位でうまくまとまれば、仮に安倍さんが1位で通ったとしても、2回目の投票でひっくり返されるかもしれない、動きもいろいろ出てくると。これから先、秋に向けて、現在は静まっている自民党内ですけれど、だんだん政権とは違う動きをする議員が増えてくる可能性はありますか?」
野中教授
「率直に申し上げれば、安倍さんの現在の政権運営というのは、完全に行き詰まり型になってしまっていて、本当にやるべきことは何か、もちろん、思っていることもあるのでしょうけれども、北朝鮮の問題もあるだろうし、経済もこういうことをしたいというのがあるのかもしれないけれど、距離をおいて見ると、いろいろなことが行き詰っている可能性が高い。そうすると、自民党は安倍さんが出る、出ないに関わらず、論争した方がいい。そのプロセスの中で、安倍さんの議論がいいではないかということになれば、安倍さんがもう1回、勢いを盛り返す。それはあっていいと思うけれども、現在の情勢だと、国民から見ると、そういう形になっていないのが、自民党の長期的な衰退をもたらすことであって、それはいいことではないと思います」
松山キャスター
「牧原さんはどうですか?」
牧原教授
「安倍一強という時代とはもうかなり変わってきているのだと思います。一強ではなくなってきているのだと思います。ただ、安倍後というのが誰も見通せない。ここは視界不良なので。だから、安倍さんがいいのではないかという、そういう意識はあるのだろうと思うんです。その中で、このままで動けば何とかもち直すかもしれないけれども、たとえば、スキャンダルでも、リークでも出ないとは限らない状況の中で、いったいどう安倍さんがそれを収拾できるのか。現在の政権が収拾できるのかというところは、非常に大きなところで、それがないと次に何が起こるかわからない。何が起こるかわからないと、今度はいよいよというのがあるかもしれない状態になっているのだと思います」
松山キャスター
「安倍さんのあとのリーダーと言うと、まだぼんやりと。はっきりと見えてきていない?安倍さんの再生の芽というのは残っているとは思うのですけれども」
野中教授
「再選の芽は当然あるんだと思うんです。徐々に下がっているなという感じは思っていますけれども、再選の芽がまったくないということはない。ただ、考えなければいけないことは、国民は国民である種、距離をおいて見ているわけですね。多くの人は。自民党の支持者であるとか、自民党関係者、自民党の議員達は別の目で見ているわけです。つまり、安倍さんは再選できるかもしれないけれども、再選したら次はどうなるかということを考えるわけですね。その点からすると、私は安倍さんが続投してずっと引っ張っていくことにはもう無理があるのではないか、自民党として。要するに、これをやる、あれをやるといろいろ打ち上げてきたのだけれども、ある意味で言うと、仕上げる間もなく、新しい政策課題をうまく打ち上げながら転がしてきたのだけれども、どうもそれが行き詰りかかっているなというのが、私の受ける印象で、そういうことまで含めていくと、安倍さんが続投することによって、自民党はむしろ長期的な観点からするとダメージを受ける可能性が高いのではないか。それよりは自民党が活力があって、これまでがんばってきたことを引き継ぎながら、新しい展開を自分達はこうするんだということを打ち出していくべき時期に近づいている気がします」

『安倍一強』に野党は?
竹内キャスター
「現在の野党の議席数ですが、野党第1党の立憲民主党が衆議院55議席、参議院で7議席。希望の党は衆議院で51議席、参議院で3議席。民進党は衆議院13議席で、参議院41議席となっています。今回、希望の党と民進党が、新党の立ち上げに合意をしまして、名前を国民民主党にすることが決まりました。中野さん、新党の動きをどう見ていますか?」
中野教授
「説得力を欠くと思っています。連合の強いバッグがあって、要望があって、来年の参議院選挙を睨んでということで動いているのだろうと思うのですが、あまりにも内向きの話で、そもそも選挙の直前になって、昨年の10月ですね、民進党、第1党がなくなるという話になって、希望の党に皆で合流するということになって、その過程がかなり不透明だったと。前原さん、小池さんの中でやり取りがあってということで、それを追認する形だったんですよね。それは有権者にとって、とんでもない裏切りだと思うんです。それでもそういうことまでやって惨憺たる結果に終わったと。立憲民主党が第1党に躍進したという形になったわけですよね。それが終わって、国会の中でいろいろ活躍している議員が全ての党にいると思うのですけれども、しかし、そのけじめを何もとらずに、今度、また、再合流ということで言うと、あの選挙の時はいったい何だったのだと。希望の党ということで公約も掲げたし、こういったことをやるのだということを訴えていて、民進党はなくなるはずだった。しかし、それが一緒になってやるということになる。これに前原さんとかが入ってとなると、誰が入って、誰が入らない、希望の党騒ぎの責任は誰がとるのだということをまったく不透明でやっていて、それで支持率が上がるとはとても想像がつかない。党名を決めることにも相当迷走があった印象がありますけれども、新しい党の理念が何なのかに関しても、旧民進党と同じなのですか、違うのだったら、それはどこが違うのですかということも含めて、あまりにも不透明なので、拙速に過ぎるのではないかなと思います。けっして未来永劫そういうことはあり得ないということではないのですが、あまりにも説得力が欠ける形であって、とりわけ昨年10月の選挙についてのけじめ、総括というのがないままでは受け入れられないのではないかと思います」
松山キャスター
「現在の旧民主党勢力、バラバラになっていますけれども、それが野党としてまとまって動けない状況になっている。背景としてはどういうことが考えられるのですか?」
中野教授
「私はもともと無茶だった話だと思っているんです。二大政党制に向けていこうと、小選挙区制も導入して、1996年から使ってと、段階を経て民主党が大きくなっていったということで、ついには政権交代を実現したわけですが、その過程で中道保守から中道左派まで含む、よく言われる一体感のない政党ができあがったのが実態としてあってと思うんです。政権交代までもっていったのは随分がんばったなというところはあるわけですが、案の定、いろいろな批判にもさらされる、あるいは自分達で決め切れてなかったことも出てくる。財政的な限界もある。震災にも見舞われて、対応がある、原発事故ですね。そういうことが出てきた中で、結局バラバラになっていってしまったということなのだと思うんですね。 これは民主党だけがバラバラだということではなくて、実はだいぶ右に寄った一体感のある政党になってきてしまったようなところがあるわけですよ。もともとはそれなりに幅がある政党だったわけですね。自民党の場合は権力の座に居続けることができるという、日本のデフォルト与党みたいなところがありますから、石破さんにしてみても、現在、我慢していれば次に自分に来るのではないかというところがある。ところが、民主党の場合は前のめりになって自分が前に出ないとダメなのだという常に代表選挙をやっていたようなところがあったわけですね。今度新しい枠組みで、仮に旧民主党の諸党が一緒になったところで、いったい何が変わるのかと言ったら、なかなかそうはいかないだろうと。もう1つ申し上げておきたいのは、もともと自民党というのは55年体制が発足した時に、官僚制の政党部門として発足したところが多分にあったわけですよね。要は、吉田茂から始まって、その後の総理大臣歴々がそうであったように、あるいは官僚から政治家に入る場合はかつて自民党しかほぼなかったわけですから、そういったところで官僚制とは何だかんだ言って、持ちつ持たれつの関係を持つようなところがあった。ところが、民主党は招かれざる客としてあるということで、どうしたって一体感に欠ける、あるいはそこを突かれる、あるいは政策を集めてきて練る時に官僚の助けを得ることは期待することはできないという不利な条件が多々ある中で、二大政党の一角をもう1回つくろうというのは見果てぬ夢」
野中教授
「中野先生は見果てぬ夢とおっしゃったのだけれども、私は、それについては立場が違っていて、キチッと二大政党がつくる、ないしはできるということではなくて、2つの政権を担うブロックのようなものができるのではないかと。だけど、もう1つ大事なことは他の小さな政党や、ある種の割と中心的なところにいない人達の意見を吸い上げてあげるような小政党もあった方がいい。問題は、その部分が十分に国会という場所に反映されていないところがあって、反映の仕方が常に殴り合いの場所でしかなくて、非常に悲しいことなのだけれども、本来は政権を担うブロックのある種の競合と、それからこぼれ落ちそうな人達を救う小政党や新しい考えを持っている人達が政治的に代表を送って政党として活動してもらうということを両立させるということで成り立っているわけですね」
松山キャスター
「2つのブロックと言うと与党は与党で連立を組んでいるブロックが1つあるわけですけれど、それとは別に野党は野党で政権交代が可能になるようにあらかじめブロック、いくつかの政党が連携してグループをつくっておくということですか?」
野中教授
「政治は、典型的にそこの話し合いで、自分がどれだけ主たる目標をどう設定して、そのために近い人達とどうやって妥協するか、そういうアートですね、ある意味で言うと」

選挙制度に課題は?
竹内キャスター
「ここからは選挙の観点から安倍一強、自民一強と言われる現状を検証したいと思います。昨年11月に行われた衆議院選挙で自民党は小選挙区で218議席を獲得しました。得票率を見てみますと、47.8%と全有権者の中で自民党に投票した率を指す絶対得票率も25%に過ぎず、有権者4人に1人の得票で4分の3の議席を獲得したことになります。野中さん、この結果をどのように考えますか?」
野中教授
「先進国、どこでも投票率は低いんですよね。日本に特殊な状況ではなくて、ポピュリズムであるとか、これまでやっていた政党はどこに行ってしまったのかと、いろいろな問題があります。とりあえず、そういう問題をおいて言っておくと、日本の現状、議席率と絶対得票数、あるいは得票率との乖離の大きさというのはちょっと健全ではない。それは何かと言うと、この選挙制度でやるということは、かれこれ10回ぐらいやっているはずなのに、依然として野党がきちんとそれなりにまとまるという努力をどれだけするかということが問われているのに、十分ではないということですね。ただし、私は現在問題になっているものは首相が野党が準備できないタイミングを見計らって解散をするという、この解散のやり方が国民にとって極めてダメージになっているということをもっとよく考える必要があるのだろうと思っています」
松山キャスター
「最近の選挙を見ると、自民党の絶対得票率自体は低いのに、それでも圧倒的な議席数を得ていると。この現状は選挙制度でも変えない限りなかなか変わらないと思うのですけれども、改善策というか、どういう方向にいくと思いますか?」
中野教授
「選挙制度の見直しについて、小選挙区制の見直しについての議論というのはしないといけないと思います。当然やるにしたって、コンセンサスをつくるまでに時間がかかりますから、真剣にこの議論というのはしなくてはいけないと思っています。ただ、もちろん、小選挙区制があるわけですから、それを考えた時に野中先生がおっしゃった、2大ブロック制的なものを目指すというのに反対どころか大賛成で」
松山キャスター
「オリーブの木みたいな政策でまとまれるグループをつくるみたいな?」
中野教授
「そうですね。あるいは自公が実際には違う政党なのにこの間、ずっと連立を一緒に組んでいて、憲法9条に関してだって、別に合意があるわけではないじゃないですか。両党の意見というのはそれなりに違う。実は自民党の中でだって、ここにきて、古賀さんが9条をいじるべきではないということをはっきりおっしゃたりとか。温度差があるわけですね。それを見た時に、公明党とずっと組んでいる自民党を小選挙区制で対峙しなければいけないという時に、旧民進党系の政党だけでまとまって、実際あの時よりも、民主党の時よりも小さくなっているわけですから、それでやって太刀打ちできるわけないわけです。この間、国会の中で法案を共同提出してきた、あるいは政策協定を結んで参議院選挙においても地方1人区でも候補者の1本化をした、あるいは10月の総選挙の時にも一定程度、候補者調整したということがありますから、政策協議をして、候補者をいかに調整していくのかということ。既にこの間、実績がないわけではないですから、これを積み重ねていくということで、有権者にとって受け皿を提示して、有意な選挙での選択が行われるということが第一歩になると思います」

中野晃一 上智大学国際教養学部教授の提言 『民主的統制』
中野教授
「『民主的統制』と書きました。これは政治改革、行政改革というのが始まって、四半世紀経っている。あの時の原点は何だったかと言ったら、官僚が暴走したり、勝手なことをやる、あるいは誰が責任を負っているのかわからないという政治はおかしいというところにあったと思うんです。そういうことで考えれば、多様で移りゆく民意というものをいかに政治に反映させるかということを考えた時に内閣、首相、大臣、その果たす役割というのは非常に重要だと思いますから、民意を汲み上げるような政治が行われる、そのために野党は何をすべきか、そういう議論が必要だと思います」

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授の提言:『責任政治』
牧原教授
「『責任政治』としました。政府の中で命令系統が乱れて誰も責任をとらない。これがいけない。他方で安倍さんというのは覚悟を持ってやっている部分がありますから、野党が責任をとるとしたら、覚悟がある責任政治、双方にこういうことを考えてほしいと思います」

野中尚人 学習院大学法学部政治学科教授の提言:『権力と責任』
野中教授
「『権力と責任』という牧原先生とだいたい似たような言葉になってしまうので恐縮ですが、何と言っても権力を行使するということについて恐れがないといけなくて、責任を持って説明する。自分の意図したものでない結果が出ても責任を、場合によっては、とる。そういうことがあってこそ、強い、ある意味で、政治主導とか、権力行使というのが許されると。それについて想いを馳せてほしいということです」