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2018年4月23日(月)
シリア軍事攻撃の余波 米露新冷戦で日本は?

ゲスト

西村康稔
内閣官房副長官(冒頭)
佐藤正久
外務副大臣
山内昌之
東京大学名誉教授 フジテレビ特任顧問
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト

西村官房副長官『訪米の手応え』 『安倍トランプ会談』の舞台裏
竹内キャスター
「今月14日、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとしてアメリカ・イギリス・フランスの3か国が軍事攻撃を行いました。これに対して、シリアの後ろ盾であるロシアが非難を強めるなど、シリアを舞台に米露の溝が深まっています。そこで今夜はシリアをめぐるアメリカ・ロシアの対立、今後の中東情勢の行方について議論します。その前に、松山さん…」
松山キャスター
「冒頭は、今回の日米首脳会談に同席した西村内閣官房副長官を招いて日米首脳会談の成果と舞台裏などについて聞いていきたいと思います」
竹内キャスター
「安倍総理とトランプ大統領との首脳会談は、今回で6回目ということですが、西村さん、安倍総理とトランプ大統領、どのような雰囲気で、空気感で行われたのですか?」
西村議員
「2人だけの首脳会談、それから、少人数の会談、それから、食事会、これもご夫婦2人対2人でやられている。あるいは次の日はゴルフがありました、2日目はゴルフがありましたし、ワーキングランチがあって、共同記者会見があって、それから、晩餐会があってと。その合間、たとえば、共同記者会見を待つ間の時間も2人で喋られています。ゴルフに行く時も、同じ車に乗って行き帰り、行っていますので。そういう時間も含めると、12時間以上、お二人が話をする時間があったと思いますので。この2日間にわたって、相当濃密に、いろいろな話ができたという意味では非常に良かったと思いますし、特に私、首脳会談も電話会談も着任をしてから全部同席をしていますけれど、電話でも1時間以上話をされるわけです、2人でするわけですね。これはいろいろな話が、お互いに何でも話す関係という雰囲気ですので、非常に何でも話ができて、何でも相談できてということで、お互いの立場もよくわかった2人の本当に信頼関係が満ち溢れた2日間だったと思います」

北朝鮮対応 『日米の足並み』は…
竹内キャスター
「あらためて、今回の首脳会談の内容について見ていきたいと思います。日米会談の主な合意事項。北朝鮮対応について『完全で検証可能かつ不可逆的な方法で核兵器を含む全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの放棄を求める』『対話に応じるだけで見返りを与えず最大限の圧力を維持』『米朝首脳会談での拉致問題提起を確認した』ということですが。日本としてはICBM、大陸間弾道ミサイルだけではなくて、中距離・短距離ミサイルの脅威も心配があると思うのですが。西村さん、あらゆる弾道ミサイルの放棄で合意というのは、アメリカも日本の懸念を理解しているということでいいですか?」
西村議員
「そうですね。日本側からは、明確に短距離・中距離の弾道ミサイルの廃棄・放棄を求める、求めたいということを言って、トランプ大統領は、それに応えてくれたということですし、もう1点言いますと、『核兵器を含む全ての大量破壊兵器』というところですね。ここももちろん、核兵器は廃棄してもらうわけ、非核化を目指してやるわけですけれども、プラスα、化学兵器・生物兵器、これも大量破壊兵器の一種ですので、これについても廃棄を求める、放棄を求めるということで、これにも合意をしたわけであります」
松山キャスター
「そのあと、北朝鮮が金正恩委員長の言葉として発表した内容として、こう出てきたのですけれども。『核の兵器化が完結したことが検証され、核実験やICBMの発射実験を中止する』ということを発表しました。『北東部、豊渓里の核実験場も役割を終えた』という発表があって。ここで言っているICBM、大陸間弾道ミサイルについては実験を中止すると言ってるのですけれども、この段階では北朝鮮は中距離ミサイル、ノドン等、日本に届くぐらいの射程のミサイルについてははっきりと明言をしてないという状況ですが、日本としては、ここはまだ譲れない?」
西村議員
「はい」
松山キャスター
「これではまったくダメだと?」
西村議員
「そうですね。何点かありまして、ご指摘のあったICBMも長距離だけではなく、短距離・中距離・短中距離のものもこれは廃棄してもらわなければいけませんので、これは南北首脳会談、あるいは米朝首脳会談で取り上げられることになると思います。それから、単に実験を中止しただけでなく、先ほどの日米の合意事項を見ていただいたらわかる通り、他にあります通り放棄、廃棄してもらうということもやってもらわなければいけないということですし、『核実験場も役割を終えた』ですけれども、この点、『核兵器や核技術の移転もしない』と、これは核兵器・核技術を保有することを前提に、こういうこと言っていますので…」
松山キャスター
「そういう文言になっていますね」
西村議員
「ですから、今後は、実験はしないけれど、俺達は持っているのだということを前提にした発言ですので。この点もちゃんと廃棄してもらうと、まさに先ほどの日米合意にあります、完全…、向こう側ですね、検証可能かつ不可逆的な方法でという、1行目に書いてある、この方法で廃棄してもらわなければならないということですので、この点も米朝で議論になると思いますし。そういう最終的に求めていくところは、そういうことですけれども、北朝鮮が初めてこういう発言をしましたので、これまで我々韓国側から、あるいは中国からいろいろ情報を得て、北はこう言っているということは聞いていましたけれども、北が初めて発表したということで一歩前進ではあると」
松山キャスター
「もう1つ、北朝鮮問題では今回の首脳会談で日本の拉致問題についてやりとりがありました。トランプ大統領の方から拉致問題を6月上旬にも開かれるとされる米朝首脳会談で必ず提起するという言葉があったのですけれども。この言葉、実際に提起するだけなのか、あるいはきちんと解決に向けた道筋までつけてくれるという感触なのか、そのあたりどう感じましたでしょうか?」
西村議員
「トランプ大統領は拉致問題を提起するということに加え、『日本にとって最善となるようベストを尽くす』ということと、『拉致被害者の帰国のために努力する』ということまで記者会見でおっしゃっていますので、これは相当、安倍総理の熱意が通じてトランプ大統領は、もう俺はやる、という気持ちになっておられると思います。もともと実は拉致被害者の1人である有本恵子さんのご両親、私の地元におられるのですけれど、有本さんはずっと拉致問題を解決するには軍事力を背景としたアメリカが動かないと解決できないと、日米でしっかり連携してほしいと、アメリカにとにかくがんばってほしいということをずっと言っておられたのですが。事実、そういう感じになってきまして、最大限の圧力、軍事力を背景として圧力が効いてきて、現在、北朝鮮が、向こうから対話を求めてきている状況になっているわけですけれども。これはまさに直接の言葉は控えますけれど、トランプ大統領から安倍総理に対し『シンゾー、まさにお前の言ってた通りになってきたな』という、そういう雰囲気の会談、この拉致問題については。かつ安倍総理から横田さんをお見舞いした時のお話もされて、相当強く拉致問題のことを、これまで何度も話をしていますし、昨年の11月もトランプ大統領も拉致被害者の家族の皆さんとあれだけ時間をかけて膝詰めで話をされてますので、よくわかっておられるのですけれど。あらためて今回、そういう話を総理からされて、トランプ大統領の言葉では『お前、他の話と、言っている時と全然目の色が違うぞ』と、『熱意が違うな』と言うぐらいに、総理は相当強く話を、思いを込めて話をされて、トランプ大統領もまさに身を乗り出して、目を見て『ああ、そうなのか』という感じになりましたので。私は、完全に安倍総理の思いはトランプ大統領に伝わって、トランプ大統領は問題を提起するだけではなく、さらに解決に向けて、まさに言葉通りに全力を尽くすと、ベストを尽くすということだと思います」

貿易めぐる両首脳の駆け引き
松山キャスター
「もう1つ、日米首脳会談で焦点となっていたのが通商の問題ですが、ちょっと説明を…」
竹内キャスター
「合意事項で経済関係についてなのですが、『貿易・投資の拡大に向けて新たな協議を開始する』ということで合意しました。この協議は日本の茂木経済再生担当大臣とアメリカ側はライトハイザー通商代表との間で行われるというものです。西村さん、今回合意したこの新たな協議というのは、この狙いは何でしょうか?」
西村議員
「貿易についても、この2日目のワーキングランチを中心に、もちろん、トランプ大統領・安倍総理の2人だけの時も含めて相当話をしました。かなり率直にお互いに言いたいことを、腹を割って話し合いましたので、お互いの考えていることはそれなりにお互いに理解をしたと思います。我々の立場はTPPに戻ってくるのが最善だと、アメリカに戻ってもらうのが最善だと、これは日米両国にとって最善ということを言っているわけですけれども、言ったわけですけれども。トランプ大統領からするとお互いの立場を尊重してはいますけれども、貿易赤字があるので、これは何とか減らすことができないのかという雰囲気でいろいろな議論を行ったわけですね。過去ずっと言われてるように、2国間のディール。取引とか、協議がアメリカ側は好むと、トランプ大統領は好む、ということでしたので。そういう意味では、いろいろ議論して、2国間で協議もしようということをアメリカ側が言ってくるし、日本側は2国間でやると結局時間もまたかかるし、ゼロからやると時間もかかるし、TPPで達成したものまでもできないかもしれないというようなことまで含めて、いろいろ議論をして。最終的には1番良い道はTPPに戻ってもらうことだということで話をする中で、それでは、具体的ないろいろなお互いの立場をもう1回考えながら、ライトハイザー代表と茂木大臣の間で新たな協議をしようということで、自由で公正で総合的な貿易ディール、貿易取引のための協議を開始するということになったわけですね」
松山キャスター
「実際に安倍総理とトランプ大統領とのやりとり、短くまとめてみるとこんな感じだったのですけれども。経済面では日米の溝がかなり深いのかなという印象を受けたのですが」
西村議員
「何点か申し上げたいと思うのですけれど、まず1番上の232条に関する鉄鋼・アルミの話ですけれど、実は日本からそんなに強く言ったわけではなく、状況を説明したような感じになっていまして。安倍総理からは日本からアメリカに輸出している鉄鋼は、アメリカではつくっていない、日本でしかつくれない高品質なものですよと。だから、現実そんなに影響を受けていないですね」
松山キャスター
「割合が低いですかね」
西村議員
「低いですし、アメリカに輸出が減っているわけでもなく、むしろアメリカ側の企業が日本製品を買わなければいけないものですから、日本しかつくっていないような製品が多いので。ですから、その点を指摘したぐらいで、何としてもこれを早く解除してくださいと強く言ったわけでもないので。もちろん、指摘をして、それは解除された方がいいのですけれども、そういう状況を説明したような感じになってます。それで下の方の話はまさにTPPが双方にとって最善という立場で。トランプ大統領から2国間でいろいろ協議していこうではないかと、協定という言葉はトランプ大統領は使ってないのだと思います、もちろん、FTA(自由貿易協定)、日米FTAという言葉を使っていませんし、2国間でいろいろ協議していこうではないかということですね。それで日本側からいくつか説明もしたのは、たとえば、エネルギーについては、いわゆるLNGですね、シェールガスからできるLNGについて、40億ドル分ぐらい増えてるんですね。これがさらに、何倍かまだアメリカから日本が買う分は増えますので、こういった部分もありますよとか。それから、アメリカが持っている武器ですね、F‐35をはじめとして、日本は一定程度今後も日本の装備に必要なものは買っていきますよということ。それから、日本からのインフラ投資、これは、日本は現在、低金利でなかなか運用先がない中で、長期運用する生命保険とか、いろいろなところが運用先に困ってますので、アメリカが安定的なインフラ投資の、そういう、たとえば、証券、ボンドを発行するようなことがあれば、投資が当然できますので、そういったことでの協力とか、そういうことも言いながら、プラス、たとえば、知的財産権とか、電子商取引とか、TPPの協定ができてからもう2、3年、経ちますので、新しい、いろいろな動きもありますから、そういったことも日米でまたいろいろ考えていこうではないかという。いくつかのことを、これは今後議論することなのですけれど、そういったことを日米でいろいろ協議しながら、トランプ大統領にとって、日米の2国間のいろいろな枠…、協議も進めば、TPPに戻れば農業の競争条件もTPPの他の国やEU(欧州連合)と同じ条件でアメリカの牛肉や豚肉も日本に出せるということも、そういったことも含め、説明をして、全体として今後協議をしていく中で、理解が進めばTPPに戻ってくれる可能性も、余地もあると思いますので、しっかりと、これは茂木大臣とライトハイザー代表との間で協議をしてもらおうと思います」

米英仏『シリア攻撃』の真相 緊迫する中東情勢の今後は…
竹内キャスター
「今月14日、アメリカがシリアに対して行ったミサイル攻撃は昨年4月に続き2度目となりました。まずは昨年と今回のミサイル攻撃に至る経緯を比較しながら見ていきます。昨年4月4日、シリア北西部にあるハンシャイフンで空爆が行われました。この時、化学兵器によるとみられる死者が80人以上出ています。これに対しアメリカは化学兵器による攻撃の拠点シャイラト空軍基地などに59発の巡航ミサイルを発射。およそ半年後の10月26日、調査にあたっていた国連の調査団は、4月の空爆は、アサド政権が化学兵器サリンを使用したものと認定しています。続いて今年です。今月の6日と7日、首都ダマスカスの近郊、東グータ地区のドゥーマが空爆され、子供も含む、およそ50人が死亡、およそ500人に化学物質によるとみられる症状が出たとされています。14日、アメリカ・イギリス・フランスは6日と7日の空爆がアサド政権によるものだとして、ダマスカスとホムス周辺の化学兵器関連施設に105発のミサイル攻撃等を行いました。佐藤さん、アメリカ・イギリス・フランスは軍事攻撃に踏み切りましたが、日本としてはどのように受け止めていますか?」
佐藤議員
「今回の化学兵器による攻撃というのは、非人道的であって絶対許してはならないという立場です。今回はそういう化学兵器の拡散とか、使用、これを止めるという米英仏の決意、これについては従来から支持すると、昨年同様に支持をすると。ただ、今回の攻撃というのは、これ以上の影響というものを抑えるというやむを得ぬ措置という意味での理解という形をしております。ただ、昨年はサリンでしたけれども、今回は塩素と言われるようなガスの可能性が高いと言われていますけれど。私は元自衛隊で、化学科隊員で、まさにそういう専門だったのですけれども。シリアというのは、ソ連からいろいろ化学兵器、あるいは使い方というのを習った国なんですよね」
松山キャスター
「化学兵器が使用されたという情報があって、まだその調査団が入る前にアメリカとイギリスとフランスが同時に歩調を揃えて、比較的短い時間で攻撃に入ったと。これはこれまでのケースと違う何かがあるということですか?」
佐藤議員
「今回いろいろな分析、意見を言われる方もいますけれども、今回は実は国連の安保理決議、事前の攻撃の前に開かれたのですけれども、アメリカの提案するものも含めて、要は、OPCW(化学兵器禁止機関)という化学兵器を査察する機関と国連安保理で合同での調査メカニズムというものを出そうというものが国連の方で否決されてしまったと、ロシアの拒否権等によって」
松山キャスター
「そうですね」
佐藤議員
「そういう手続きを経たというものはあったろうとは思います」

トランプ&プーチンの狙いは
松山キャスター
「今回のアメリカ・イギリス・フランスによるシリア・アサド政権側への空爆と、この一連の動きをように?」
山内名誉教授
「西欧・欧米の世論の中にこの非人道性、あまりにも酷い化学兵器というようなことについての批判というものがある。これを無視することは、トランプ大統領もできない。それから、もう1つ、トランプは、オバマが現職の大統領だった時に、ガスを使うことに、化学兵器を使うというのはレッドラインであると、このレッドラインを越えたらオバマ大統領も報復すると、こういうことを言っていたにも関わらず、それを実践・実行しなかったわけです。それで、オバマの外交・安全保障における信用度が失墜し、大きなコンテクストと言うと、プーチンのクリミア半島戦闘やウクライナ、東ウクライナでの行動に結びついていく。シリアにも積極的に関与するようになったと。従って、ここでトランプ大統領が何もしないということは、昨年のシャイラトの攻撃、第1回目の、その攻撃との連続性や有効性、歴史的な因果関係といったものを確認しないと、現在の時点で政権としてトランプ大統領は非常に弱いところに追い込まれかねないということが大きな背景にあったと思います」
竹内キャスター
「黒井さんは今回のこのアメリカの攻撃についてはどのように?」
黒井氏
「トランプ政権は最初からIS(イスラム国)の方は見ているのですけど、アサド政権に関してはちょっと引いた見方、要は、もともとそういうのは難しいのですけれども、特に2015年からロシアが入ってきましたから、アメリカとしても入っていくのは難しい状況にある。それから、今回の件に関しては東グータというエリアがですね、前からですけれど、特にこの2か月ぐらい大変な包囲網を敷いて、無差別の攻撃をして、皆さん地下に隠れて、それもバンカーバスターのようなものでもやっつけていくと、民間人も含めて1000人以上殺しているということは大々的に報道され、それに対してアメリカはニッキー・ヘイリーさんも、国連の大使も中心に、それを止めようというような動きが国連安保理でかなりの議論があって、それをロシアがことごとく潰してきたと。そういうやりとりがあって注目されていたタイミングです。そのタイミングで化学兵器というものが使われたということで。化学兵器自体はおそらく塩素も含めると、おそらく80回以上は使っていると思いますけれども、サリンの時だけこれまで反応してきたのですけれども、今回サリンが混じっているという見立てをする専門家もいて、まだ検証できていないのですが、塩素だとしても一応それは使うのは国際法違反ですよ。ですから、それに対して、化学兵器を使っていいのだというのを認めてはいけないというのが1つのきっかけではあるのですけれども。1つは、国連安保理の舞台でアメリカとロシアとの対立がすごくなってきたんです、シリアに対してだけではなくて、それがイギリスの化学…、毒物を使った暗殺未遂も含めて、アメリカとロシア、これまでトランプ大統領はどちらかというとプーチン派だったのですけれども、さすがに今回初めてプーチンを名指しで批判したという」
松山キャスター
「ロシア疑惑とかもありましたよね?」
黒井氏
「ありますからね。ですから、アメリカと…、このあとこの話が出ると思いますけれども、アメリカとロシアがいろいろやり合うようになってきた。そういうのも含めて、あとこの大変な人道危機、それにアサド政権が関わった、いわゆる戦争犯罪を続けている、ロシアも一緒になって実はそれやっているわけですね。それに対してアメリカは何もできないのだということだとまずいということです。特に今回、ボルトンさんに新しく代わりましたから、地政学的にロシアとのライバル関係を見ていますので、そういったのも少しはあるのかなと思うんですね。ただ、おっしゃっているように今回あくまでも化学兵器ということを言ってますので、これでアサド政権が使わなければ、おそらくこれで終わってしまうということになるのかなと思うんですね」
松山キャスター
「一説には、アサド政権側が使ったというのが西側諸国の一致した見方ですけれど、アサド政権側からすると反体制・反政府軍が使ったという言い分も前はしていたと思うのですけれども」
黒井氏
「これはアサド政権の昔からのやり方で、いわゆる自作自演説というのを流すんですね。これはロシアのメディアが一緒になって流す方法で。今回も何かやらせのビデオみたいな」
松山キャスター
「現地に記者を入れて何もなかったではないかと…」
黒井氏
「そうです。そういうのをドンドンそういった捏造説とか、陰謀論を流すのですけれども、それがほとんどばれちゃってきているんですね」

米欧露… 交錯する国益と戦略
松山キャスター
「佐藤さん、ロシアとアメリカのそれぞれ背後で勢力の争いというのがあると思うのですけれど、国連安保理での最近の様子を見ていると、ロシア・中国とその他、たとえば、米仏英、かなりかつての冷戦時代を思わせるような対立の構図というのがドンドン鮮明になっているような気がするのですけれど、そこが結実している1つの場所がシリアだと?」
佐藤議員
「アサド政権の後ろにロシア、また、反政府勢力の後ろにアメリカという構図の他に、さらに複雑になってるのが、イスラエルとイランの対立というのがここに入ってきたり、さらにトルコとクルドの対立というものが入ってきたり、非常に複雑化しているという中で、国連の場でこれを解決しようと思ってもなかなか現在、、そういう対立もあり、難しい。実際にこれを政治プロセスの中で、国連主導でジュネーブ・プロセスということでやろうとはしているのですけれども、なかなかそこも進んでいないと。国連が安保理の場面と、もう1つ、ジュネーブ・プロセスの中で政治対話ということをやるという動きを現在、何とかやろうとしているのですけれども、うまくいっていないと。一方、ロシアとイランとトルコ等はアスタナ・プロセスというまた別な政治プロセスでこれを解決しようとしてはいるのですけれども、せめぎ合いが現在行われていると。ただ、最終的には政治プロセスがなければ、これは解決しませんので、そのアスタナ・プロセスというロシア・イラン・トルコというものと、国連中心のジュネーブ・プロセスの折り合いをどうやってつけていくかということが、国連安保理での協議と加速にもつながっていくのではないかと思います」
黒井氏
「ただ、アスタナは結局、ロシアの仕切りですね。ロシアの思う通りにしかならないということです。国連も結局、安保理の拒否権を持っていますから、ロシアが。それが当事者ですから、政治的に解決ができるような状況がないと思うんですよね」
山内名誉教授
「もう1つは、アンマン・プロセスというのがあるんですね、ヨルダンの。これはヨルダン・アメリカ・ロシアですけれども、停戦の問題、難民の帰還権の問題等もあるわけです。副大臣がおっしゃられた、ジュネーブ・プロセス、アスタナ・プロセス、アンマン・プロセス、いずれも3つに共通している国は1つですね、それはロシアです。ですから、結局はロシアの拒否権やロシアの強い主張、ロシアのいろいろな言い分、こうしたものが、現実にシリアにおける軍事プロセスも支配している大きなファクターであるロシアの言い分がかなりあり、シリアの状況では強く作用をするという、こういう構図になっている」
佐藤議員
「1年前の地図と現在の地図比べると…」
松山キャスター
「違いますよね?」
佐藤議員
「いかにロシアがアサド政権を支援したために、ここまで勢力図が変わったかという。まさにロシアの要因というのは、極めて実はこのシリアの現状に大きいと」

緊迫する中東情勢の今後は…
松山キャスター
「今回のアメリカを中心とした空爆については、イギリスとフランスもかなり早い段階でそれに参加するという状況になったと。イギリスもフランスも、その向こうには対ロシアということを念頭に置いて当然参加したと思うのですけれども。今回、その2国がこんなに積極的にかなり早い段階で同調してきたというのは、ロシアとの間に抱えている問題・対立があるということなのですか?」
佐藤議員
「短期的に見ると、この前、イギリスでは、ロシアの元スパイがロシアで昔、つくられたと言われる特別な化学剤で襲撃されたとイギリスが発表しています。そういうのを抱える中で、今回のイギリスが…」
松山キャスター
「ノビチョクという…」
佐藤議員
「はい。…というものに参加しないということは、かなり政権内でも厳しいと言う評価をする人もいます。また、フランスとアメリカが今回攻撃に参加して、イギリスが参加しないという選択肢もイギリス政権としてかなり厳しいでしょうから、今回、昨年は議会に諮って結局参加できなかったんです。今回、議会に諮らずに、政権主導で今回参加したということもあるのでしょう。ただ、もう少しの大きな目で見ると、ロシア側がここに入ってきて、勢力図が変わったという部分は当然意識をしているでしょうし。もともとフランスの影響力というのはシリアには大きいですから、それでロシアがここが来るというのはフランスにとっても…」
松山キャスター
「旧宗主国はフランスですよね?」
佐藤議員
「はい。…にとってもあるでしょうし。今回、マクロン政権はかなりどちらかと言うと、野心的にいろいろ外交も展開しているという中で、化学兵器1つで許せないのに、そのシリアにおいてここまでロシアが影響するというのは、許せないということを言う人もいます」
松山キャスター
「あと今回、米、英、仏で空爆を行った背景に、アメリカのトランプ大統領が、これはアメリカの報道で出ているのですけれども、実は事前にもう少し大規模な攻撃を想定していたという話があって、いくつか、3つの選択肢が中で検討されたということを、これはウォール・ストリート・ジャーナルが書いているのですけれど。化学兵器製造に関する決定的ターゲット、今回行ったようなところです。あと疑いのある研究施設や政権軍の司令部、ここも1部、今回攻撃対象になっていますけれど。もう1つはシリア国内にあるロシアの防空システム、ロシアの施設に対しても空爆を行うということが検討されていたと。ただ、これはトランプ大統領がこの検討を指示したのだけれども、マティス国防長官や、一説にボルトン補佐官もこれには慎重姿勢を示して結局、実現しなかったという話があるのですけれども。ロシアの関連施設まで含めた、攻撃をしていたと仮定した場合、ここはロシアとかなり深刻な亀裂を生むから、そこは、アメリカもためらったということですかね?」
佐藤議員
「今回、ロシアと全面対決をしても、メリットはたぶん少ないと思う。実際にトランプ大統領自身がシリアから1部撤退をして、その部分をアラブ連合軍に、ということも一時そういう話も出たように、そういう中で、ロシアと本格的に事を構えるというのはたぶん良くない。ただ、ロシアの防空システムぐらいであればいいという見方をする人もいるかもしれませんけれども、プーチン大統領はそんなに甘いものではなくて、これだけ戦費をかけ、ある程度の犠牲を払いながら、シリアでロシアの影響力が出ているわけですから。そういう中で防空システムだけと言っても、これを攻撃すると言うのは、たぶん相当なハレーションが起きると思います」
山内名誉教授
「それはあり得ないことですよ、ほとんど」
佐藤議員
「あり得ないですよね」
松山キャスター
「そこはやめたのでしょうね、アメリカも…」
佐藤議員
「実際マティス国防長官、いろいろな話を聞いても、かなり慎重な方ですから、今回も限定的なこの①(化学兵器製造に関する限定的ターゲット)を最終的には選択したわけですけれども。今回、実際の攻撃が終わったあと、ロシアもある程度の反発はしておりますけれども、本格的な反発ではない。皆が何か幸せなような、変な意味ですけれど、皆幸せなような攻撃、限定的な。アサド政権側も冷静に対応していますし、住民も勝った、勝ったと言うぐらいのパフォーマンスもした。結構、限定的にやったと。実際には1部の、本当かどうかはわかりせんけれども、スパイプレーン…」
松山キャスター
「はい、無人の…」
佐藤議員
「…が実際に、無人のものが上を飛んで、事前に攻撃場所を示していたとか、あるいは実際にフランスの国防大臣が言っていますけれども、ロシアの方には事前に通知したということもありますので。攻撃するという部分を、かなり時間をとって、予兆というのがあったためにかなりシリア側も対応できたし、ロシアの方も対応できた。いろいろなことがたぶんあって、限定的な今回は攻撃だと。あくまでも化学兵器というものの1点に絞って、その能力とか、拡散を防ぐという目的で行われた、かなり考えられた攻撃だったと」

一触即発の中東情勢を読む
竹内キャスター
「ロシアは現在シリア国内に、空軍と海軍の拠点があるのですが、佐藤さん、この拠点2つあるということがロシアの介入の大きな理由なのでしょうか?」
佐藤議員
「ロシアの介入の1つの理由になるのは間違いなくて、これはソ連時代から、地中海における海軍基地というのは極めて重要視していた基地ですから、これは当然守るというのはあるのでしょうけれども。ロシアの狙いというのはそれだけではなく、ここの地域における、もともとソ連が影響力があった国というのは逐次、アラブの春以降、少しずつ消えていった中で、このシリアというものについては基地も当然大事ですけれども、アサド政権を助けることによって、いろいろな面でここでの基盤というものをつくることが事後の中東政策においても極めて大きな意義を有しますので。そういう意味で、トルコとか、イランというものを抱き込んだ形で、現在、勢力をドンドン強固なものにしていると言えると思います」
松山キャスター
「黒井さんもこの2つの基地がロシアにとって非常に重要だから…」
黒井氏
「ただ、空軍の方は、戦争が始まってからつくったんですよ。もともとはアサド軍の軍事空港ですけれども。ただ、軍事的なことだけではなくて、グローバルな西側との、綱引きみたいなものにプーチンは乗り出してきた。その中の1つの、1番象徴的で重要視しているという場所がこのシリアだったと思うんですね」
松山キャスター
「山内さんはどう見ていますか?」
山内名誉教授
「現代的に見るとNATO(北大西洋条約機構)の南方拡大、NATOの地中海、東部への拡大、これを阻止しようと、これが大きな戦略としてプーチンさんのもとにはあると。実際にリビア、リビア問題に関しては西側にしていいようにされたわけですね。これをシリアで繰り返してはならない。トルコとは現在、イランと共にトルコを自分の陣営の方にアスタナ・プロセスで引き入れていますけれども…」
松山キャスター
「一時は険悪な関係でしたけれども」
山内名誉教授
「基本的には。しかし、トルコは現在、紙の上とは言え、NATOの加盟国であって、海軍、地中海艦隊の司令部はイズミール・スミルナというところにある。非常に重要なNATO加盟国ですから。トルコの動向いかんによっては再び苦境に立つわけです、ロシアは、南方拡大を絶対に阻止したい。それから、あまり触れられないのですけれども、シリアというのは、大きなシリアというのは歴史的に見て、レバノン・パレスチナ・イスラエル・ヨルダンも含めて、シリアと言うんですね。このシリアの1番大きな特徴は何かと言うと、古代のあの原始キリスト教以来、キリスト教徒がたくさん住んでいる地域。現在のシリアの中にもキリスト教徒が非常に多く、これがアサド政権など父親の代を支えてきた基盤になっているわけです。ロシア正教のリーダーとして、プーチンには中東におけるキリスト教徒を保護しようという、19世紀東方問題以来のロシアの歴史的な使命感というのがあるんですね。こういう観点からシリア問題というのは自分の担任領域であると、この意識が非常に強いということだと思います」

どう示す? 日本の存在感
松山キャスター
「日本にとって考えると来月には日本とロシアの首脳会談が予定されている。これは日本として現在、アメリカとロシアが対立の構図みたいな形になってるわけですけれども、どういう形で関与していくべき?どう距離をとっていけばいい?」
佐藤議員
「ロシアと日本というのは隣国ですから、北方領土問題もあります。引っ越すわけにはいきませんから。これはロシアとはある程度、2国間関係の中で付き合わなければいけないと。さらに、ロシアというのは国連安保理の常任理事国ですから、そこは、無視はできませんので、そういうことの中で、我々としては国際法、あるいは普遍的な価値というものもしっかり訴えながら立ち位置を決めてやっていく。それから、プーチン大統領と安倍総理というのは非常に、極めて話ができる、フィロソフィーが合うと。ソチオリンピックの開会式に西側の指導者で唯一参加したのが安倍総理ということもあって、すごくそういう話ができる関係がありますから。そういう我々の主張はしっかり主張しながらも、2国間関係というものを考えながら、シリア問題についても言及していくということになろうかと思います」
松山キャスター
「山内さんはどうですか?日本としてロシアと今後どうやって関わっていくべきか、首脳会談も来月あるわけですけれども?」
山内名誉教授
「結局シリア問題とウクライナ問題というのは重要性においてややシリアの方が劣るとは言え、今やプーチン政権にとっては大きな対外政策の柱になって、東欧・中欧、元のソ連邦、それから、元ソ連の強い影響圏であったシリア、この2つを軸にしてプーチンはアメリカに対抗しているという構図があるわけです。従って、英仏自身も昔のワルシャワ条約機構に対する対抗上、今回のシリア問題にも当事者だということを示したわけですし、そもそもの植民地列強としての関与というものがあったわけですから、シリア問題に対する関わり方は日本とは全然違うんです。逆に言うと、リアルな観点から言うとイギリス・フランスのレベル、アメリカのレベルではもとより、英仏と同じような形でシリアに関与するということは、日本外交はできないですね。なぜかと言うと、日露関係というこの2国間関係の最大の問題である、特に北方領土問題等々を含めた、両首脳の関係というものをこれからも維持しないといけない。こういう総合的な中でシリア問題に付き合っていくという構図だと思います」

山内昌之 東京大学名誉教授の提言 『難民と弱者に寄りそう支援を』
山内名誉教授
「少し美しくお感じになられるかもしれません。難民と弱者、女性・子供・老人といった、現にシリアで大変苦しんでいる人々、こうした人に対する寄り添う支援と、こういうことを挙げておきたいと思います。それは先ほど申しましたように、イギリス・フランスとはまったく日本の立場は違います。現実にし得る能力というのもありますし、その中で日本が歴史的に培ってきた1番信頼のできる領域で、基本にもう1回戻って、関わろうという、こういうことです」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言 『ロシアの大罪と脅威を直視せよ』
黒井氏
「『ロシアの大罪と脅威を直視せよ』。日本はシリア問題に関しても、他のG7の国も含め、西側の国を含めても、1番腰が引けているんですね。なぜそうかと言うと、先ほどからお話ししていますけれども、北方領土の問題、それから、たとえば、戦略的に中国と対応するのにロシアというのがあるのですけれども。プーチンはそこまで甘くないと思います。ですから、北方領土を返してくれるという前提であれば、ありかもしれないのですけれども、そういった状況が現在、見えない中で、日本は、たとえば、タフなネゴシエーションするためにも、もう少し毅然としてロシアに対応していくということが必要だと思っています」

佐藤正久 外務副大臣の提言 『政治的対話 難民支援』
佐藤議員
「若干野心的なのですけれども。当然、難民支援というのが、4月25日に支援会合に外務大臣が参加されます」
松山キャスター
「河野外務大臣?」
佐藤議員
「はい。河野外務大臣も言われているのですが、日本というのは、民族問題・宗教問題で非常に中立的な立場にこれまであった。しかも、歴史的な負の遺産がないので、河野大臣も盛んに言っているのですけれども、中東でこういう政治的関与という部分を少しずつ強めていくという方針を示されていますので。何らかの形で、米英仏ほどではありませんけれども、そういう関与という部分を強めていきたいと思ってます」