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2018年4月5日(木)
茂木経済再生相に問う 米中『貿易摩擦』余波

ゲスト

茂木敏充
経済再生・人づくり革命担当大臣(前半)
鎌田薫
早稲田大学総長(後半)
伊藤元重
学習院大学国際社会科学部教授


前編

茂木経済再生相に問う 米中『貿易摩擦』余波と対応
生野キャスター
「今週から木曜日と金曜日を担当します生野陽子です。よろしくお願いいたします。さて、アメリカの追加関税措置に中国が対抗措置を発表、米中間の貿易摩擦がエスカレートしつつあります。日本も対象国に含まれているトランプ政権の保護主義政策は、経済再生にどんな影響を及ぼし、日本はどう向き合うべきなのか。前半は、茂木経済再生大臣にじっくり聞いていきます」
松山キャスター
「茂木大臣のもう1つの担当が人づくり革命です。経済再生に向けて、いわば稼げる人材をいかに育成していくべきか、後半は高等教育のスペシャリストを交えて大学教育のあり方なども聞いていきたいと思います」
生野キャスター
「3月8日、アメリカのトランプ政権が1部の国と地域を除き、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課す輸入制限措置を発表し、23日に発動しました。これに対して中国は今月2日、アメリカからの輸入品、豚肉や果物など128品目に最大25%の関税を上乗せする対抗措置を発動しました。一方、アメリカは一昨日、中国の知的財産侵害への制裁措置として、ハイテク製品など総額500億ドル、日本円で5兆円相当の中国からの輸入品1300品目に25%の関税上乗せを公表。これに対し中国も昨日、大豆や自動車など総額500億ドル、日本円で5兆円相当のアメリカからの輸入品106品目に25%の関税上乗せを公表したことで、貿易をめぐる米中の摩擦がエスカレートしています」
松山キャスター
「米中の貿易戦争という捉え方もされているようですけれども、まだお互い、アメリカと中国、それぞれこういう品目でやる用意があるということを提案しているだけの段階で、ここから先、アメリカについては基本的に実際に発動するのは2か月ぐらいあとということで、その間、ホワイトハウスの高官はまだ交渉の余地があるというようなことを言っているようですけれども。米中の駆け引きはどう進んでいくと?」
茂木経済再生相
「これは、米中2か国の話ですから、なかなか難しい部分もあるのですけれど、トランプ大統領もアメリカ経済にとって悪くなるようなことはしないと思います。たとえば、この鉄鋼・アルミ、日本もこの関税の対象、除外をされなかったわけですが、松山さんもアメリカが長かったからよくおわかりだと思うのですけれども、日本の、鉄鋼とか、アルミの輸入というのが、アメリカから見て米国の安全保障に何らかの悪影響を与えているということはないわけでありますし。むしろ日本の高品質の鉄鋼製品、こういったものがアメリカの産業にプラスに働いているということでありますから。そういった意味も含めて、しっかり除外されるように日本としては働きかけをこれからもしていくということでありますし、全体的にもきちんとしたルールに基づいて公正な取引、こういったことが行われていくというのが必要なことなのだと思っています」
松山キャスター
「そもそも論で今回、アメリカの国内でもアメリカ側から始まった関税報復合戦みたいなのに懸念を示す声というのが、たとえば、農業団体、自動車団体から出ていると思うのですけれども」
茂木経済再生相
「うん」
松山キャスター
「アメリカのトランプ大統領を中心にこういう政策が突然出てきたと、これは背景にはどういう理由が考えられますか?」
茂木経済再生相
「トランプ大統領は、大統領選挙の時からアメリカ・ファーストということで、アメリカ・ファーストの中でトランプ大統領から見ると、なかなか陽が当たっていない部分にも陽を当てたいということで相当強い姿勢、いろいろな問題についてとってきたわけですから、そこはある意味、一貫はしているのではないかと。それが、たとえば、タイミング、タイミングごとに強いメッセージとして出てくるということだと思いますけど。全体的には自由で公正なルールに基づいた貿易体制を確立すると、このことが世界全体にとって、また、アメリカの経済や雇用にとっても大切なのだと、このように思っています」
松山キャスター
「伊藤さんはこのあたりをどう見ていますか?選挙対策みたいな、中間選挙もあります…」
伊藤教授
「あとは大統領がどこまで通商問題を重要視しているかということで、たぶんトランプさんにとっては非常に重要視しているのだろうと思うんです。そうすると、どうしてもアメリカが出てきて、ルールを変えたいとは言わないのだろうけど、動かしたいというのが出てしまっちゃっているのではないですか。過去にもそういうことが何回かありましたよね。たとえば、ウルグアイ・ラウンドがちょっと停滞した時に、これはブッシュ、クリントンの時代ですけれど、NAFTA(北米自由貿易協定)をやる、いわばWTO(世界貿易機関)を無視するような形でいって、これはルールを変えていったわけです。日本だと1980年代にいろいろな通商摩擦を経験したわけですから。ですから、決して嬉しいことではないのですけれど、これを新しい現実として少し考えていかなければいけないのかなと思います」
松山キャスター
「どう見てもアメリカ・中国、双方が痛手を負うこの報復合戦になっていると思うのですけれど?」
伊藤教授
「ただ、関税についてちょっと気をつけないといけないのは、たとえば、仮に今言っている関税を本当にやったとしても、それが2年、3年定着すれば、経済には相当大きな影響がありますけれども、短期間、そういう報復とか、実際に関税が上がったとしても、これはたぶん実体経済にはそれほど大きな影響はないだろうと思いますから。あまり今から悲観的なシナリオだけで議論する必要はないと思います」
生野キャスター
「アメリカの貿易収支を見ていきますと、昨年のアメリカのモノの貿易赤字は7962憶ドル、日本円でおよそ90兆円の赤字です。これを国別に見てみますと、1位は中国で赤字額は3752億ドル、およそ日本円では42兆円となっています。以下、桁は違いますけれども、メキシコ・日本という順番になっていまして。現在はトランプ政権の矛先がこの1位の中国に向けられているのかなと思うのですが、茂木さん、今後、日本にその矛先が向けられる可能性はないのでしょうか?」
茂木経済再生相
「全体で見て中国が半分近くということですから当然、考えれば、中国とどうするのか、この貿易収支をどうしていくかというのが1番の中心だと思いますし、また、メキシコ、さらにカナダとの間もNAFTAの再交渉ということで、こういった問題もあります。そのうえで全体としてどう貿易収支を改善していくか、貿易赤字を削減していくかという中には入ってくると思いますけれども、優先順位から言うと、そういう優先順位だと思います。実際、貿易収支の数字を出してもらったのですけれども、アメリカに進出している日本企業が、日本に輸出をしている額の方が、アメリカのこの赤字額よりもでかいですよ、現在。実際に大きくなっていると、それだけの貢献もしているわけですし、現在、直近の日本企業の投資計画ということでもずっと伸びているわけですから、きちんとそういった昔の単純な貿易だけでは日米の経済関係というのは測れないのだという話をよくした方がいいと思いますね」

経済成長 『次の一手』
生野キャスター
「茂木さんは先月チリで行われましたTPP11の署名式に出席されました。こちらTPPを離脱したアメリカを除きます11か国がTPPの新たな合意文書に署名。TPPはこの11か国のうち6か国が国内手続きを終えれば発効しますが、茂木さん、発効はいつ頃になるのでしょうか?」
茂木経済再生相
「国内手続きを6か国が終えて60日後に発効ということになるわけですから。たとえば、今年の11月の末に終われば1月の末ということで、2か月のタイムラグがありますけれども、基本的にはそういうことだと思っています」
松山キャスター
「年で言うと、2019年ぐらい?」
茂木経済再生相
「この間、3月8日に、チリの署名式、私も行ってきたのですけれども。チリで感じたのは、思った以上に各国がスピード感をもって国内手続きを進めようとしているなと思っていまして。来年の早いタイミングで発効ということになることを期待したいなと、こんなふうに思っています」
松山キャスター
「日本国内の手続きというのはそれほど心配されていない?」
茂木経済再生相
「3月27日に、このTPP11の協定、それから、関連する国内法を国会に提出していますので、1日も早くこの成立を期すと。これに向けて全力を尽くすことで各国の手続きが、日本がやったのなら、ということで、さらにモーメンタムが上がっていくということを期待したいと思っていまして。このTPP、アメリカが離脱を発表したのが昨年の1月23日ですね。ちょうど1年後の今年の1月23日、東京の新宿で主席交渉官会合を開きまして、そこで協定文を確定させて。3月8日に署名式をやるというスケジュールも決めたわけですけれど。おそらくアメリカが離脱して、昨年の3月ぐらいまでは、TPPは漂流するのではないかという懸念というのは非常にそういう声が強かったわけですけれど。昨年の夏7月に箱根で主席交渉官会合をやって、それから、4回、主席交渉官会合をやっているのですけれども、そのうち3回は日本で開催をする。また、ダナンでの大筋合意と、その時はベトナムのアイン大臣と私が共同議長を務めると。その後もメキシコとベトナムの間の労働の問題であったりとか、最終的にはカナダの文化例外を含め、私も各国の閣僚と何度も交渉したり。さらに安倍総理にもベトナムの副首相であったりとか、また、メキシコのペーニャ・ニエド大統領にも直接電話で働きかけてもらったりと。各国から見て、日本が主導してこのTPPを、半年ぐらいで、短期間でまとめてきた、こういう評価をしてもらって。実際に3月8日、署名式がチリ時間で3時からだったのですけれど、その前に閣僚会議が開かれた時に、全閣僚が日本がやってくれなかったらここまでこなかったと、茂木大臣にも感謝したいと、こういう評価をしてもらいまして。ここまで日本が主導してやってきたわけですから、発効までのプロセスでも、必要な事務局的な機能であるとか、各国との連絡調整、こういったことでも日本がしっかり主導的な役割をとっていきたい。また、これが、保護主義が台頭すると、こういった中で、自由で公正な21世紀型のルールをつくっていくという意味からも大きいし、また、日本の成長戦略にとっても大きな効果があるのだと思っています」
松山キャスター
「現在の段階で、トランプ大統領もアメリカの国益に適うなら、という条件をつけてTPP復帰を完全に排除はしていないという発言もしていますが、どうやってアメリカを巻き込んでいこうと考えていますか?」
茂木経済再生相
「1月23日に、11か国で協定文を確定して、チリで署名式を開くというのを決めた時に、早速トランプ大統領もコメントと言いますか、TPPに対する評価を発表したわけですけれども。トランプ大統領、さらにはムニューシン財務大臣をはじめ、米国の最近の一連の発言というのが、TPPの意義であるとか、また、効果というものを正しく評価するということであれば、我々として歓迎したいと思っています。まずTPP11、早期に発効させることが何よりも需要だと思っていまして。同時にアメリカには、このTPPはアメリカにとってもプラスになるのだと、こういったことをしっかりと話していきたいと思っているところです。アメリカの復帰に向けて、どういう課題があるかとかいうことは今後ということです」
松山キャスター
「トランプ大統領の一存という感じもします」
茂木経済再生相
「なかなかTPPも、非常に各国、利害がある中で相当な利害調整をして、TPPのハイスタンダードは保ちながらバランスのとれた協定にする。言ってみるとガラス細工のような協定で。1部だけを取り出して再交渉をするとか、見直すというのはなかなか困難な部分がありますが。いずれにしても1度、アメリカ側の話も聞いてみたい、こんなふうに思っています」

TPP拡大の意義と戦略
松山キャスター
「TPP11に追加して参加の関心を示している国というのが、たとえば、イギリス・韓国・タイ・インドネシア・コロンビア・台湾、こういった国と地域が現在、挙がっていて。特にASEAN(東南アジア諸国連合)のタイやインドネシアについては逆にTPP11の方からドンドン入ってほしいという意向もあるみたいですけれども。茂木さん、これを見て、今度はどのあたりからTPP参加の動きは強まっていくと思いますか?」
茂木経済再生相
「まずチリで感じたのは、太平洋同盟に入っている国の中でコロンビアだけこのTPPに入っていないというので、これちょっとサントス大統領がどういうこの後なっていくかということにもよりますけれども、非常にコロンビアがある意味、切迫感を持っていると言うか、入りたいという意向を持っているのは間違いないと思っております。それから、日本にとっては、たとえば、タイ、これは日本企業も多く進出をしています。サプライチェーンを全体で考えるという意味では、非常にタイというのは魅力的な国でもあると思っています。もちろん、それぞれの国が魅力的でありますけれども。また、おそらく準備状況から言うと、台湾というのはそんなに難しい国内問題を抱えていない地域でありますから非常に関心を台湾の側も示しているというのは間違いないと思っておりますし、イギリスの場合は大西洋にあるように思うのですけれど、どうしてTPPに…」
松山キャスター
「そうですね。太平洋から離れていますよね」
茂木経済再生相
「ええ、イギリスの、イギリス領の島が太平洋の中にあるんですよ」
生野キャスター
「ああ、なるほど」
茂木経済再生相
「だから、決して太平洋諸国ではないとは言い切れない部分もあるのではないかなと、こんなふうに思っていますが。いずれにしても、このTPPはおそらく日本の外交史というか、こういう中でも、日本が本当に主導して、このマルチな難しい協定というのをここまで仕上げたというのは、初めてのことなのは間違いないと思っています。おそらく今後も、この発効に向けて日本が主導的な役割を果たしていき、さらには拡大に向けてもそういうことになるのではないかなと思っていまして。もちろん、発効に向けたさまざまな準備をこれから進めていくわけですけれど、同時にこういった関心国に対して、いろいろな情報提供もしていきたいと思っていますし。参加11か国の間で、こういった国にどう対応していくのか、この対処方針、対応方針も共有をしておく必要があると思っていまして。これはまだちょっと発表していないのですけれども、6月か7月には主席交渉官会合、これをまた日本で開催して、発効に向けた準備、新しい国に対する対応をよく協議したいと、こんなふうに思っています」


後編

未来を担う『人材育成』の形
生野キャスター
「ここからは日本の未来を担う人材をどう育てるのか、人づくり革命について聞いていきます。安倍総理は、会議で『大学は知の基盤であり、イノベーションを創出し国の競争力を高める原動力だ。人づくり革命を牽引する重要な主体の1つとして、時代に合った形に大学改革を進めなければならない』と述べました」
茂木経済再生相
「考えてみると教育を受ける、就労をする、老後という中で、たとえば、大卒ですとストレートにいって22歳で卒業して、就職をして、65歳定年まで勤めると43年間働くことになるのですけれども、現在、海外の研究では、今年生まれた日本の子供、平均で109歳まで生きると言われているんですよ。そうすると、65歳で定年を迎えても、109歳ですから老後の方が44年あるんですよ」
生野キャスター
「長いですね」
茂木経済再生相
「そんなことは考えられないですから、いくつになっても、誰でも活躍できる社会をつくっていくということが必要。その中で教育機関、今日は鎌田先生、『人生100年時代構想会議』のメンバーとして加わっていただいているのですが、さまざまな大学にも、単に18歳で高校を卒業した学生にだけ知識を提供する場から、さまざまな専門教育を提供する、そういった場に変わっていってほしい、こんなふうに考えています」
松山キャスター
「実際、今後の方策として高等教育の無償化ですとか、そういったことも盛り込まれているわけですけれども、これはどういうことを目標にしている?」
茂木経済再生相
「まず教育無償化につきましては幼児教育の無償化はさまざまな国で進められているわけでありまして、日本でも、大半が利用している3歳から5歳児については幼稚園・保育園・認定こども園、全て無償にするということを決めさせていただいて。同時に家庭環境によって、その後の人生にさまざまな影響が出てくるということがあって、大学進学率も顕著ですね。どうしても一般の家庭で言うと、大学進学率が半分近く行くのが、たとえば、住民税非課税家庭で言いますと、これが20%しか行っていない。大学を出ているか、出ていないか、高等教育を受けたか、どうかということが、その後の年収と言いますか、人生の収入にも大きな影響を与える。格差、これを是正していく意味からも、こういった低所得な家庭、住民税非課税世帯に対する、この無償化を進めると。授業料も無償にする、同時にずっとアルバイトをしなくてもいいように給付型奨学金といった形で生活費の方もカバーできるような状態をつくっていきたいと思っています。国立についてはそういった形をとるのですが、私立についても、私立大学はそれぞれどちらが高いか、私はわかりませんけれども、早稲田と学習院。平均をとれば、だいたいそれを見ながら、そこらへんまではきちんと対応できるようにしていきたい、こんなふうに思っています」

『人づくり革命』と『大学改革』
松山キャスター
「これは一般論としてよく意見を聞くのですけれども、今回の人づくり革命の中で取り上げられている、高等教育の無償化については、各大学からは国が、たとえば、学生への支援策とか、それに対する線引きをすると、いわゆる住民税非課税家庭が対象になったりするという、いろいろな線引きを国がすることに対する反発もあるという意見をよく聞くのですけれども、そのあたりはどうですか?」
鎌田氏
「これはいくつか異なる視点が混ざっているのだと思うのですけれど。たとえば、大学のガバナンスに関する基準というのも閣議決定の中では提案されているんです。これは合理性があるとすれば、つまり、大学経営、放漫経営で垂れ流しにしていても国がこの支援策を通じてお金を入れてくれるからそれでいいではないかと、こういうふうなものを放置することはいけない。それから、個人の側からいけば低所得者層であれば、一生懸命、アルバイトをするよりもどこかの大学に入って、先ほど、茂木大臣がおっしゃられたように、月々の給付型奨学金を貰った方が何もしないでいい生活ができる、こういうふうな…」
松山キャスター
「逆転現象が起きちゃうということですね?」
鎌田氏
「ええ、容認してはいけないという意味で、何らかの基準は必要なのだろうなとは思いますけれども。ただ、それが教育の質とあまり関係のないところで線引きをされて、大学自体のあり方が一定の方向に誘導されるということは、本来の大学のあり方からいくと望ましいことではないですから、それについては相当慎重な議論をしてもらいたいなと思います」
松山キャスター
「茂木さん、そういった意見のあることについてはどのようにお感じになりますか?」
茂木経済再生相
「まず、いわゆる幼児教育については、全ての家庭、3歳児から5歳児を対象にするわけでありますけれども、高等教育については貧しい家庭に育っても意欲さえあれば、皆、進学できるような環境をつくりたいということで、基本的には子供に、大学にではなくて子供に着目をして、住民税非課税家庭については無償化をする。支援の崖ができないように、階段があまり急にならないように、それに準ずる家庭については、それに準ずるような支援策をとっていくと。さらには中間所得層については、たとえば、オーストラリアなんかはHECS(高等教育費用負担制度)という制度もあるわけでありまして、これは卒業してからの収入に応じて奨学金を返すという形になるわけですけれども。そういった支援策も検討していく必要があるのではないかと。一方、大学についていろいろなプログラムをこれから提供していきたい、リカレント教育をすると、その時にこの支援策を国としてももっと大幅に拡充をしていきたいと思っていまして、大学側の負担で、そういったプログラムを進めなければならないということはなかなか実際に拡大していかないと思いますので。たとえば、学び直しをしたいという人は多いのですけれど、現在の学び直しをするのでは問題があるという人も結構いて、だいたい8割の人が、問題があると、こういうふうに言うのですけれども、理由は3つですよ。1つは、時間的な余裕がないと、これを解消するためにも、鎌田先生がおっしゃったように、夜間とか、休日、こういったものを使っていくということが必要になっていきます。それから、費用がかかる、学び直しに。だから、その分の支援を、何割支援するか、プログラムによって違いますけれども、支援を充実させていきたいと。それから、どういうプログラムが自分に向いているのかがわからないとか、まだプログラム自体が不足をしていますから、たくさんのプログラムをさまざまな教育機関がつくっていくということによって選択ができると、自分はこういうキャリアを歩みたいから、そのためにはこういうリカレント教育を受けたいという人が増えていくということを期待するというか、そのための環境整備を進めていきたいと思っています」

茂木敏充 経済再生・人づくり革命・経済財政担当大臣の提言 『educatio』
茂木経済再生相
「『educatio』と…」
松山キャスター
「educationじゃないんですね?」
茂木経済再生相
「ラテン語で、もともとの教育、educationの語源ですね。educatioと。このeducatioというのは、決して教え育むというよりも、意味としては引き出す。要するに、人間はさまざまな才能、これを持っていると、これを引き出すのが教育の役割であり、また、社会の役割であるということで。これは、人材についても、企業の生産性についてもそうですけれども、引き出せるような環境をどうつくっていくかということが、これからの日本の将来のカギではないかなと、そんなふうに思っています」

大学はどう生き残るべきか
生野キャスター
「人材育成の課題として大学改革が挙げられていますが、その背景に、いわゆる2018年問題があります。18歳人口の推移ですが、日本の18歳人口は少子化に伴いまして2018年頃から減り始め、2030年には現在のおよそ20万人減少とみられています。大学の経営にも大きな影響を及ぼすと言われています。生き残れない大学も出てくる可能性もあります。鎌田さんはどのような危機感を持っているのでしょうか?」
鎌田氏
「大学、とりわけ私立大学は、収入の4分の3を授業料に頼っておりますので、授業料を払って在学をしてくれる学生が減ってくるということは大学の存立に関わる重大な問題だと思っています。ただ、私の所属している大学では、もう5年前から学部の学生を減らすという方針を出しています。20年間で2割減らすというふうにしているのですが、これも報道などではまさに2018年問題の危機に対処するためであるとか、あるいは文科省から学生を減らすように迫られているからだと報じられることもあるのですけれども、我々はそうではなくて、これからの時代に適合的な教育をしていくためには、教育内容・教育目標・教育手法を全面的に変えていかなければいけない、こういう意識で。そのために、いわゆるアクティブ・ラーニング、議論中心の少人数教育を中心にしていかなければいけないと。と同時に、知識社会でありますから、学部教育だけでは不十分だと、大学院までもっと重点を置いていかなければいけない。そうすると、私立大学の場合には教員のマンパワーに限界がありますので、それを学部にかけているエフォートを少し節約して、大学院に移していくことで大学院生を大幅に増やすと、こういう戦略を立てているわけで。大学改革は、高度経済成長を支える分厚い中間層を数を育てるというのがこれまでの大学の主だった役割で、それに適合的な教育体系を持っていたわけですけれども、まさに第4次産業革命後の社会は大量生産・大量消費の時代とは変わってくるわけですから、もっと多様な人材や個性を発揮しながら、自由に学んでいく環境にしていかなければいけない。そのためには学生を絞り込んでいくということが1つ必要。他方で留学生も、日本の大学で良い教育をすれば留学生は増えてくる。それから、進学率も私はまだ上がる余地があると思っているんですね。たとえば、看護師さんを例に挙げるのがいいのかどうかはわかりませんけれど、かつては高卒とか、専門学校が養成をしていましたけれど、それがやがて大学が養成するようになり、現在は大学院までの教育が必要だというふうに知識社会ではもっともっと高度のスキルを身に着けていくということが求められる時代になってきますから。そういう中で、これまでと同じ形で同じ教育をして同じように学生を集めていって、学生が減ったら、さあ、どうしようというのとは違う考え方をしていかなければいけないと思っています」
松山キャスター
「まさに鎌田さんの言う学生を絞り込んでいくという話がありましたが、一方で、東京都の動きとしてこういうこともありました。小池都知事が、地域の活性化の一環として国が出した政策として特定地域内、この場合、23区の大学などについては学生の収容定員の増える人員を抑制すると。これは10年間で時限措置としてやるということが閣議決定されまして、これに対して、小池東京都知事は『大学の定員増を抑制することと地方創生を推進することとは別問題』だと、『地盤沈下が激しい日本の大学の国際的地位をさらに低下させることにつながりかねない』と言って、異論を唱えているのですけれども、この動きをどう捉えていますか?」
鎌田氏
「これに対しては私立大学連盟としても反対の意見書を出させていただきました。個人的にはウチの大学は減らしているので、直接関係ないと言えるのですけれど。いくつか理由があって、1つは、この国の大学規制というのは、従来は非常に間接的だったんですね。それがここで直接に大学を規制するための法律改正までやるというのは、1歩大きく踏み込んだのだと。でも、なぜそんな必要性があるのかと言うと、東京23区の大学生を増やさなければ地方が栄える、こんなことは…」
松山キャスター
「必ずしもそうはならないという意見もありますよね?」
鎌田氏
「うん、ならないでしょう。と言うのは、法科大学院なんかは、東京の大規模法科大学院が学生を集めるから地方の法科大学院が困っているのだというので、東京の大学は大幅に定員を減らされましたけれども、そこから溢れた人は地方に行かないで結局、共倒れになっていくということでもあるので。ここまで強力な規制をするのだったら、ふさわしい論拠がほしいということが1つ。それから、地方の活性化は、私どもの意見では人の循環が必要なので、地方活性化には若者・よそ者・馬鹿者が必要だとよく言われるのですが…」
松山キャスター
「馬鹿者も…」
鎌田氏
「いや、従来の、地方でずっと伝統的にやられてきたことを踏襲していたのでは活性化できない。だから、ちょっと奇想天外なことをやるような人が入っていかなければいけない」
松山キャスター
「ちょっと変わり者みたいな?」
鎌田氏
「ええ、そういう意味で、地方の人が東京に出て行って、いろいろな経験をして、そこで得たものを持って帰るとか。現在、早稲田大学でも地域貢献型入試というものを始めたんですね。将来、地域に貢献したいという強い意欲を持った人を入学させて、それにふさわしい教育をして、就職まで面倒をみるという、こういう1つのサイクルをつくろうと。これに応募者がはたしているのかという心配をしていたのですけれども」
松山キャスター
「それは宣言すればいいのですか?将来、地方に戻って活躍しますと…」
鎌田氏
「ええ、それにふさわしいステートメントを出し、AO入試で選んでいって、一定の学力が必要という。これに、若干名の募集に300名を超える応募者があって、そのうちの4割が首都圏の人ですよ」
松山キャスター
「あぁ、半分嘘ついているかもしれない?」
鎌田氏
「嘘ついている可能性も半分…。それで別に自分の生まれたところに帰る必要はないですから、あるいは自分のお祖父さんが青森出身で青森を何とかしてやりたいと自分は思っていたという、こういうことでもいいわけですけれども。でも、そういう意味で、半分しか本当に考えている人がいないにしても、相当な人が、アンケートをとると、地方出身者がかなり半分以上、首都圏の人でも将来地域のために活躍したいという人が結構、多いわけですから、そういう循環をうまくつくっていくにはどうしたらいいかということを考えること。それから、地方の振興自体、あるいは地方大学の振興は、秋田の国際教養大学だって地元に就職する人とか、地元出身の人はあまりいませんけれども」
松山キャスター
「そうですね、アメリカにはいっぱいいますけれども」
鎌田氏
「うん、あそこに大学があるということ自体が、地元の価値をつくっていくわけですから。いろいろな地方に魅力のある大学をつくって、そこにいつでも若者が滞留しているということを次の地域の発展につなげていく。アメリカには大学しかない町がいっぱいありますよね?」
松山キャスター
「ありますね、大学でつくられています」
鎌田氏
「そういうことをやろうと思えばできるはずなので。これをやれば地方が栄えるとか、地方大学が振興されるというのは、ちょっといかがなものかという」
伊藤教授
「これはなんとなく大学って1つのもので、その1つのものを東京と、たとえば、地方で分け合うという考え方なので。たとえば、先ほどからの話というのはコミュニティ・カレッジと、たとえば、リサーチ大学とは違うし、ということになってくると、それぞれの地域に合った違ったタイプの大学をどう育成していくのかという視点で考えないといけないと思いますよね」
松山キャスター
「この通りの政策を実行して、東京の大学の収容できる人数を抑制したとしても、必ずしもそれが地方に向かうわけではないという?」
伊藤教授
「そうですね。ええ、向かったとしても、本来、地方にあるべき大学とは違うものができちゃう可能性がありますよね」
鎌田氏
「小池知事がおっしゃっていることとピッタリ当てはまるのだと思うのですが、ウチも実はデータサイエンスについて新しい教育を始めようと思っているんです。データサイエンスというのはありとあらゆる学部の教員・学生が集まってきて、いろいろな産業からのアクセスがないとできない。そういう意味では、企業・大学の集中している都心でないと良い教育ができないですね。そこに新しい学部をつくろうとした時にすごくお金がかかる。私立大学がそれをやろうとした時には、その原資は何で回収するかと言うと、国は先ほどのデータのようにお金を出してくれませんから、授業料をとらなければいけないですよね。かなりの授業料をとろうと思っても、学生は1人も増やしてはいけませんと言われると、そういう新しい分野のチャレンジは私立大学はやらなくていいですという宣言になってしまうわけで、これは学問の発展という意味では非常に大きな障害になると」
松山キャスター
「授業料で言うと、私立大学の授業料の負担というのはかなり大きいというのはだんだん問題になっているのですけども。先頃、新入生の負担、その家庭がお金を借り入れる額というのが過去最高になったという情報もありましたけれど。そうなってくると、なかなか大学に入ったはいいけれども、それをどうやって将来、たとえば、奨学金とか、返していこうかと、かなり困っている学生さん、あるいはその家族とかが増えていると思うのですけれど。そういう対策は急務だと思うのですけれど、どういうふうに?」
鎌田氏
「大学でできることと、大学の手に余ることというのがあるのですけれど。大学でできることで言いますと、現在、日本の私立大学全体でいきますと年間900億円、独自の奨学金を学生達に出しているんですね。早稲田大学の場合には早稲田大学が出している奨学金が年間40億円近いのですけれども、これは全部給付型です。返済は要らないというふうにして。なぜそういうことを…」
松山キャスター
「僕の時はなかったですけれども…」
鎌田氏
「なぜそういうことが起きるかと言うと、実は先ほど、フリップで見たように、国立大学はとても手厚いですよね、54万円の授業料を払えばだいたい300万円相当の教育を受けられるわけですから、そこへ皆、目指していくわけですね。そうすると、子供の頃から塾通いしないとなかなかそういう学校にも入れなくなっているということで。ウチはお金がないから国立大学ですということをよくおっしゃるのだけれども、今や国立大学の学生の家庭の平均年収は、私立大学の平均年収を上まわっているんですね。そうすると、ここでまたお金のある人はより…」
松山キャスター
「よりお金が貯まっていくと」
鎌田氏
「…いい教育を受けられる。それで低所得者層の大学進学率はドンドン低下していっていますから。先ほど、ちょっとお話があったように、教育格差が経済格差を生み、経済格差が教育格差を生んでいくという、この負の連鎖が出てくるので。それを救済するというのが今回の人づくり革命の1部ではありますけれども、現在の制度より本当に良くなるかどうかはもうちょっとしっかり詰めて…」
松山キャスター
「見てみないと?」
鎌田氏
「…いけないと思います」

鎌田薫 早稲田大学総長の提言 『多様性』
鎌田氏
「人づくりだと思うのですけれども、人づくりをどういう観点でやるかというのが最初の頃の議論と絡むのですけれども。これまではこれもちょっと図式化し過ぎですが、本当に大量生産・大量消費の高度経済成長時代には、どちらかと言うと均質な人を大量に、一定のレベルを持った均質な人を育てるということが重要だったのですけれども。現在の時代というのはそうではなくて、できるだけさまざまな独自の発想のできる人達を育てていかなければいけないと、こう考えているんです。敢えてこんなことを考えなければいけないというのは、私の個人的な感想と言うより、いろいろな大学の先生とお話していても最近、大学に入っている子は皆、均質であると。それから、先生の言ったことに、先生おかしい、と言う学生がほとんどいなくなってきた。これはなぜなのかということの1つはマークシート型の試験で、どんな問題にも唯一無二の正解があります、その知識を覚え込みましょうと、余計なことを言って授業を乱さないでくださいという、そういう意味で、非常に秩序正しくなってしまって、画一性と内向性が顕著だと。そういう中ではもう1度、多様な人材を初等・中等教育を通じて育てていって、大学でもっと伸び伸びと才能を発揮していくと。こういう形に教育を切り替えていかなければいけないのではないかなということを考えて、こういうものを出させていだきました」

伊藤元重 学習院大学国際社会科学部教授の提言 『人』
伊藤教授
「『人』ですね。別に今日、教育の話をしたからではなくて、本当にこの30年ですよ、つまり、1990年にバブルが崩壊してから、たとえば、企業は非正規に象徴されるのですけれども、安い労働力を使い捨てにしていく経営をしてきましたし、大企業は従業員に対するいろいろな教育の質をドンドン落としているんです。それから、財政の方でも、先ほど、データがありましたように教育に使う、財政のGDP(国内総生産)比というのが下がっていって、この30年間、本当に人にいろいろな意味で負荷をかけてきて、その結果だと思うんですよね。ですから、30年前の質というのが良いとは思いませんけれど、まずはこの30年で本当に劣化しちゃったものをどうやって戻すのかということを考えないと、これから先の未来、日本の未来はないと思います」