プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2018年4月4日(水)
駐日ロシア大使に問う 元スパイ殺害未遂疑惑

ゲスト

ミハイル・ガルージン
駐日ロシア大使
山本一太
自由民主党政務調査会長代理
名越健郎
拓殖大学海外事情研究所教授

駐日ロシア大使に聞く 元スパイ襲撃事件
斉藤キャスター
「3月1日に着任されたばかりの駐日ロシア大使を迎えて、北方領土交渉をはじめとする日露関係の行方、北朝鮮問題、イギリスで起きた元スパイ襲撃事件など、ロシアの今後について考えていきたいと思います。まずはガルージン大使の経歴を簡単に説明させていただきます。1983年に当時のソビエト連邦の外務省に入省されました。最初に駐日ソ連大使館に着任されたのは、この入省された1983年です。それ以降、公使まで務められて、ロシア外務省きっての知日派として日露外交の最前線で活躍されてきました。ロシア外務省第3アジア局長を経て、先月、駐日ロシア大使に着任されました。1997年の橋本・エリツィン会談をはじめ、何度も日露首脳会談の通訳を務められたということで、今日は通訳なしで話を聞いていきたいと思います。最近、大きな外交問題に発展しました元スパイ襲撃事件から聞いていきます。どんな事件だったのかと言いますと、先月4日、イギリス南部ソールズベリーで、ロシアの元スパイでイギリスに亡命していたセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが意識不明の重体で発見されたというものだったんです。現在2人はどうなっているのかと言いますと、この娘のユリアさんは意識を回復させたのですが、スクリパリ氏は依然意識不明の重体のままということです。イギリスのメイ首相ですが、襲撃について旧ソ連が開発した軍事級の神経剤『ノビチョク』が使われたことを明らかにしました。『ロシアが事件に関与した可能性が極めて高い』ということを明らかにしたんです。イギリスに駐在するロシアの外交官23人を追放することを決定、ロシア開催のサッカーW杯への要人派遣を取りやめました。これを受けてアメリカはと言いますと、駐米のロシア外交官など60人を追放し、シアトルのロシア領事館を閉鎖しました。その他、ドイツ・フランス・カナダなど、先月27日の時点では27か国がロシア外交官の追放を決めたとアメリカ国務省は発表しています。ガルージンさん、今回の各国の措置をどう受け止めていますか?」
ガルージン氏
「実際に、英国の治安当局自体は、これから調査が数週間、ないし数か月間ぐらいかかると公の場で言っています。英国には調査が終わってもいないし、本件に関する裁判の判決がないにも関わらず、首相の立場にいる人は、ロシアが責任を持っている、ロシアがしかけた犯罪だということを事実上言っています。それはいかがなものでしょうか」
松山キャスター
「1つの根拠としてイギリス側が言っているのは旧ソ連の時代に開発された軍事級の神経剤・ノビチョクというのが使われていたと…」
ガルージン氏
「それも真実を歪曲した発言でありまして。旧ソ連・ロシアはノビチョクと、なぜか西側がノビチョクと言う物質を、研究・開発・製造もしたことがありません。むしろ英国・米国、スウェーデンとチェコでそのノビチョクという物質についての研究・開発が行われ、製造に成功したらしいです。今日も真実はますます明るみに出始めています。この事件が起こったソールズベリー市の近くにあります英国軍の科学研究所の所長はこのノビチョクという物質がどこから来ているか、出所を特定できないとはっきり言いました。つまり、ロシアに対する嘘のキャンペーンは恥をかいた形で完全に破綻しました」
松山キャスター
「英国の科学研究所で、確かに現在の段階ではロシアと断定することはできないということを言っています」
ガルージン氏
「はい」
松山キャスター
「ただ、使われた神経剤は明らかに軍のレベルで開発されたような高度なものであったと言うことも言っていまして、国でなければ、こういったことはできないということも発表しているのですけれども。それは必ずしもロシアに限ったものではないというのが?」
ガルージン氏
「だからこそ、ロシアは今日、ハーグでOPCW、化学兵器禁止機関の執行理事会の会議を緊急に招集するよう求めて、現在まさにその時間に、その会議が進行中であります。我々が主張していますのは、もし英国がロシアに対して何か疑問を持っていれば、化学兵器禁止条約の第9条に基づいて、ロシアに情報を求めなければなりません。正式な情報の要請を受けて、ロシアは10日以内に回答しなければならないというわけですね。ロシア側としてはずっと、すぐに化学兵器禁止条約に明記されます手続きを採用して、事件の調査をやりましょう、協力をやりましょうと言っていましたが、英国はそれを完全に拒否して、あたかもロシアがその襲撃をしかけたというふうに公の場で、しかも最高のレベルの立場をとっている首脳の口からそういうことを言っています。それはロシアに対する明らかに事実無根の中傷でありまして、明らかにロシアに対する屈辱です」
松山キャスター
「安倍総理がメイ首相と電話で会談した際にこのように言っています。『早期の事実関係解明を期待する』ということで、事件の元になっている国がロシアだということはもちろん、はっきりとは言っていないわけですけれども。一方で、化学兵器が使用されたことについては批難すべきことだということも安倍総理は言っています」
ガルージン氏
「もちろん」
松山キャスター
「今回の日本の対応、これについてはどのように感じていますか?」
ガルージン氏
「私は、今おっしゃった、安倍総理、河野大臣がおっしゃった日本の立場に敬意を表したいと思います。つまり、化学兵器を使ってはならないというのはロシアの主張でもありまして、ちなみにロシアは昨年、自分がこれまで保有してまいりました化学兵器を完全に廃絶しました。ロシアが化学兵器を廃絶した事実は、OPCWに確認されています。ちなみにOPCWには英国も米国も入っています…」
松山キャスター
「一太さん、この…」
ガルージン氏
「…そして、日本の立場に私はまったく同感です。化学兵器を使用してはならない。使用した勢力・人物は処罰されなければならない。本件につきましてまず実態を解明しなければならないという日本側の立場に私はまったく同感です」

圧勝再選のプーチン大統領
松山キャスター
「今回、当選を果たしたプーチン大統領に対して、アメリカのトランプ大統領が電話会談を行ったわけですけれども。そこで、ホワイトハウスの周りはかなり止めたという話もありますけれども、今回、プーチン大統領に対して祝意を述べたと」
斉藤キャスター
「こちらです。『さほど遠くない将来に会談し、軍拡競争などを話し合う可能性についても協議した』ということを記者団に対して発言したのですが、ガルージンさん、トランプ大統領のこの発言をどう評価されますか?」
ガルージン氏
「これまでトランプ氏が結局、勝利を収めた。アメリカの大統領選挙前のキャンペーン中にもいろいろ露米関係について、期待を、希望を抱かせる発言をしていました。だが、実際のアメリカ・トランプ政権の対露外交における行動を見ますと必ずしもここで書いてある言葉と合致していないのではないかという感じがします。たとえば、先ほどの、大量の外交官の追放、国外追放措置とか、等々がロシアと良い関係を持ちたい、ロシアと仲良くやりたいという発言に相容れない行動でありまして。私は駐日大使ですから、その立場でどれだけ露米関係についてコメントできるかということは別として、真のトランプ外交はどこにあるのか、つまり、トランプ政権の真意はどこにあるのか。電話でプーチン大統領に言っていることにあるのか、あるいは大量の外交官の国外追放という、そっちにあるのか、それはむしろアメリカ側に説明していただきたいですよ」

プーチンvsトランプ
松山キャスター
「トランプ大統領がプーチン大統領に祝意を述べた直後ですよね?」
ガルージン氏
「そうですね」
松山キャスター
「アメリカ側の判断で外交官を60人追放したと」
ガルージン氏
「だからこそ、私はそう言っています」
松山キャスター
「正直、その瞬間、祝意の一方で、そういうことをするということで、どう感じましたか?」
ガルージン氏
「それは残念ながら、現在のアメリカ政権らしいやり方だと思いましたね」
斉藤キャスター
「というのは、どういう?」
ガルージン氏
「つまり、口先で良い言葉を言いながら、実際の行動で自分が言っている正しいことを裏切るような行動ですね。ですから、矛盾しています。矛盾で満ちています、アメリカの現在の対露政策は」
松山キャスター
「名越さんはワシントンにもいたのでアメリカ政権のこともよく知っていると思うのですけれども、今回のようなトランプ政権の対応をどのように?」
名越教授
「選挙2日後にコングラチュレーションズと言って数日後に60人追放と。追放はマティス国防長官のイニシアティブという説もありましたけれども、ともかくロシアもトランプさんの変心には慌てていると思うんですよね。これだとロシアは首脳会談をやりたいわけですよね。3月1日の演説の最後に、だから、現在、米露はテーブルにつくべきだと、はっきり呼びかけているのだけれども、アメリカが応じるかどうかですよね。11月に中間選挙があり、それから、ロシアゲート疑惑の捜査が本格化すると暫く国内政治上、トランプさん…、米露首脳会談が開かれないかもしれないですよね」
斉藤キャスター
「ロシアのウシャコフ補佐官ですけれども、記者会会見で『電話会談でトランプ大統領はホワイトハウスで首脳会談を行うことを提案した』。ただ『元スパイ襲撃事件をめぐる一連の現状を踏まえ、首脳会談開催の可能性をめぐり協議することは困難』と」
松山キャスター
「実際、可能性として、ガルージンさん、どうですか?米露首脳会談の実現の可能性というのは、厳しい状況になってきているのですか?」
ガルージン氏
「また言わざるを得ないのは、それはアメリカにかかっていますよ。アメリカの言動にかかっていると、アメリカの態度にかかっていると思います。ロシアは常に対話のために開かれています。アメリカの準備次第で首脳会談ができるのではないかと私は思っています。ただ、アメリカが準備できているかどうか、それもまた不明です。繰り返しになりますけれど、トランプさんはプーチン大統領にホワイトハウスにお招きしますよと言っていると同時に、明らかにロシアに対して控えめに言って非友好的な行動を実際にトランプ政権がとっているんです。その背景には何があるか、ちょっとそれはおそらくアメリカ側の方で詳しい説明を求めなければならないでしょうけれど。私なりの意見ですと、トランプ氏は大統領選で勝利を収めてはいますけれども、アメリカ国内でいろいろ反対勢力、民主党を中心とした反対勢力のいろいろな行動で、そういうまったく事実無根の、いわゆるロシア疑惑、ビッグ・ナッシング・バーガー等々で縛られていますよ、束縛されています。ですから、私は、トランプ氏がプーチン大統領に、いろいろと仲良くしましょうと言っている時にトランプ氏は率直に自分の胸の内を明かしていると信じたいのですけれども」
松山キャスター
「一太さんは、この米露首脳会談、見通しはどう見ていますか?」
山本議員
「米露首脳会談があるかないかと言うと、普通に考えたら当分無理だと思います。米露関係が良いかどうか、これは非常に良くないと思います。誰が見ても良くないと思いますね。トランプ大統領が、プーチン大統領が19日に大統領選挙に当選した翌日に電話をしたわけですよね。電話首脳会談をやったわけですけれども。これはよくご存じだと思うのですが、ワシントン・ポストがいろいろ中身をスッパ抜いて、側近、特に安全保障のアドバイザーは、トランプ大統領に対するブリーフィングで祝意は述べないでくれ、くれぐれも言わないでくれと。これをトランプ大統領は無視したんです。それから、電話会談の中で、ソールズベリーの元スパイの暗殺未遂事件についても言及してくれと。言及しなかった。だから、トランプ大統領がツイートしたり、電話首脳会談で言うことと、アメリカ政府のロシアに対する対応というのは、本当にめずらしいことですけれども、分けて考えなければいけないと思います。これもガルージン大使もご存知だと思うのですけれども、最近、フォーリン・アフェアーズの論文が出たんです。これはブッシュ政権、それから、オバマ政権時代の政府元高官、国務副長官もいたと思いますが、現在、外交問題評議会のシニアフェローなのですけれども、2人とも。ロシアを封じ込めろという論文を書いたんです。これはまるで新たな冷戦に対する対応みたいに言われるかもしれないけれど、そうなんだと。これが現在のアメリカのムードにあって、米露関係は良くない。何が心配かと言うと、1つは、これもガルージン大使にもし時間があれば、お聞きしようと思ったのですけれど、ロシアは依然として核大国ですよね。INFってあったではないですか、中距離核戦力全廃条約、たとえば、米露対立が続くと、こういうものをもしかしたら破棄するかもしれない。あるいは新STARTと言って、新しい戦略核兵器削減条約、これもだから、もしかしたら延ばさないかもしれないとか、このへんところをすごく心配をしています。ですから、米露関係が良くないということは、あとでいろいろまた議論になると思いますが、明らかに日露の交渉にも影響があるので、十分に見ていかなければいけないと思います」

北朝鮮問題とロシア
斉藤キャスター
「先月26日には、北朝鮮の金正恩委員長が電撃訪中しました。中朝首脳会談が行われました。今月の17日から20日まで今度は安倍総理が訪米します。日米首脳会談が行われます。27日には南北首脳会談が行われて、5月末までに米朝首脳会談が行われる予定ということなのですが、ガルージンさん、最近の北朝鮮の積極的な外交姿勢をどう見ていますか?」
ガルージン氏
「ロシア側としては北朝鮮の緊張の緩和に向けた傾向として歓迎しております。今回、朝鮮民主主義人民共和国がこういう対話に出たことをもちろん、ロシア側としては歓迎いたします」
松山キャスター
「実際、金正恩委員長が突然、中国を訪れたということで、一般世間的には、首脳会談が行われていないのは、関係国で言うと、ロシアと日本ということになって、次はロシアではないかという観測が出ていますけれども、この次、金正恩委員長がロシアを訪れてプーチン大統領と会談する機会というのは、近くあると考えますか?」
ガルージン氏
「私は、本当はわかりません。少なくともこれから露と朝、首脳会談が行われるという話は聞いておりません。ただ、露朝首脳会談が行われるかどうかは別として、ロシア側が中国と一緒にずっと前から、朝鮮民主主義人民共和国と米国とその同盟国が、お互いに自制を発揮し、お互いに挑発的と受け取れる行動を控えて、緊張を緩和させ、対話の場に戻る。つまり、6者協議というずっと前から存在してきました、機能してきました交渉のメカニズムに戻ると中国側と一緒に主張していまして。まさしく今申し上げた動きは露中のロードマップに沿ったものであると私どもは思っております」
松山キャスター
「ガルージンさんが言った、ロシアと中国のロードマップがこちらですけれども。ロシアと中国で提案している内容が、北朝鮮が核・ミサイル開発を停止させると、そのうえで米韓合同軍事演習など軍事的圧力の停止、対話路線に戻るということなのですが、なかなか日本としては、まず1点目からなかなか受け入れられない条件だと思うんですよね。北朝鮮が核・ミサイル開発を停止ではなくて、完全に廃棄するということを日本としては主張していますけれども。ロシア側のまず停止というのは、どういう意図が含まれているのですか、ここには?」
ガルージン氏
「まずロシア側としては朝鮮民主主義人民共和国の核兵器武装化は到底受け入れられないことでありまして。是非、非核化しなければならないということをずっと前から主張していまして、それは隣国として、NPT(核拡散防止条約)の加盟国として、ロシアは到底受け入れることはできません。ご案内のようにロシアは国連の安保理により承認されている、対朝鮮民主主義人民共和国の制裁にも参加しています。それはロシアが国連安保理事会を避けた形で実施されています、2国間の追加的な制裁措置に反対しているというわけなのですが。なぜここで停止としていますのは、それは完全な非核化への第1歩として位置づけています。つまり、まず北朝鮮が核とミサイルのいわゆる実験・開発を停止し、同時にアメリカとその同盟国は、明らかに北朝鮮を逆なでするような、周辺水域での、周辺地域での軍事演習を停止すると提案しています。いわば両行動の停止の結果として、もうちょっと雰囲気が落ち着いて、より落ち着いた雰囲気の中で対話への糸口を探り始める、探し始めるというのが合理的なのではないか、常識的なのではないかと思います。その対話を、結局、対話の場に戻って、朝鮮半島の完全の…完全な非核化と、朝鮮半島においてもっと広い意味で北東アジアにおいて平和安全保障メカニズムの創設について、6者協議の場で話し合おうと提案しています」
松山キャスター
「朝鮮半島の完全な非核化というのは、ロシア側が言う場合は北だけでなく南、いわゆる韓国の在韓米軍も含めて完全に非核化すべきという考えで言っている?」
ガルージン氏
「そうです、もちろん」
松山キャスター
「と言うことは、在韓米軍の撤退も含めた?」
ガルージン氏
「在韓米軍の撤退というものはアメリカと韓国との間に話し合われるべき話でありまして、ロシアがどうこうコメントする立場にないのですけれど。でも、核兵器を朝鮮半島全体から廃絶すべきだというのが我々の立場です」

北方領土交渉の行方
斉藤キャスター
「5月末ですけれども、安倍総理大臣がロシアを訪れて、21回目の日露首脳会談を行うということです。日本としては、北方領土交渉が今後どうなるのかというのが1番気になるところなのですが」
松山キャスター
「安倍総理とプーチン大統領とのこれまでの経緯なども含めて、日露の北方領土交渉の経緯をここにまとめてみたのですけれど、プーチン大統領としては1956年の日ソ共同宣言で歯舞・色丹についてこの二島を明記して引き渡しという方針がここに盛られたということで、この考えをプーチン大統領は現在も持っているということですよね。そのあと東京宣言、1993年で、四島の帰属問題を解決して、平和条約締結ということも盛り込まれたと。2001年にイルクーツク声明で歯舞・色丹の引き渡し、過去の遺産の克服や法と正義を解決の基礎として、日ソ共同宣言に基づいて交渉して平和条約締結へと結んでいくという方針は出ているのですけれども。こういった流れの中で、ただ、実際のところはなかなか具体論には踏み込んでいけない。その間に日露の経済協力の話というのが常に出てくるわけですけれど。日本としては経済協力という部分だけで合意することで、ロシア側においしいところ取りだけされるのはどうしても許容できないという考えが根強くあるわけですけれども。こういった経緯も含め、今度の日露首脳会談でどういう方針でロシア側は会談に臨むのか、そのあたりはどうですか?」
ガルージン氏
「うーん、まず文字通りにご質問にお答えしますと、ロシア側がどういう方針で首脳会談に臨むかということは、首脳会談が始まってからおわかりになるんですね。それを前もって誰も公表しないですよ、外交ですから。まあ、それはそれとして今おっしゃったことについて、もしよろしければ若干コメントさせていただきたいと思っています。プーチン大統領が何回も発言していますように、日露平和条約交渉を続け、進めるには、それを日露関係全般の発展という好ましい環境の下でやった方がいいというわけですね。それは決して、ロシア側が何かの経済的な利益を追求して、そう言っているわけではないですよ。経済はもちろん、それは日露関係の重要な部分ですけれども、それだけではないです。日露の、たとえば、国際テロ等々の焦眉の国際問題の解決のために、日露両国がお互いに協調し、お互いにやらなければならないこと、あるいはやることができることはたくさんあります。グローバルの安全保障、アジア太平洋地域における安全保障のために日露両国が共にいろいろなことができます。さらに人的交流・文化交流・教育交流を進めるうえで、それは両国にとって有意義、有益なものであります。まさに安倍総理が来月ご訪露なさいます時に、日露交流年という、お互いに相手国を幅広く詳細に両国民に紹介する、それは大事業でありまして。まさにそういう関係を進めることによって、初めて平和条約交渉を取り巻く環境が改善していきますし、その交渉も進むと思います。そして現時点で、安倍総理とプーチン大統領が合意しましたように日露両国が四島における、それは中立的な用語ですけれど、ロシアは南クリル諸島と言っていまして、日本側が北方領土とおっしゃるのですけれども、四島という中立的な用語に落ち着きましょう。その四島で共同経済活動を実施するために、現在いろいろ2国間の外交ルートで協議と対話が行われていまして。まさにそういう共同経済活動という事業を一緒にやれば、それはますます四島は、対立の地域ではなくて、日露間の互恵的な協力の地域になり、それは日露両国民にとって大変いいことだと思います。たとえば、既に四島の水域における操業、日本の漁民による操業に関する政府間の取り決めもありますし。元島民をはじめとして、日本国民が四島をビザなし交流という形で訪問できる体制も既にずっと前からありまして。そういうような路線をお互いに続けながら、日露の平和条約交渉を取り巻く環境をさらに改善していきたいと思います。その点につきまして…1つだけよろしいですか、ちょっとだけよろしいですか、この1956年の宣言について言いますと確かに旧ソ連は、日本側・日本政府の希望、あるいは日本の希望を考慮し、歯舞と色丹島の引き渡しに同意しましたが、それは平和条約が締結されたあとのことでありまして。プーチン大統領も何回も言いましたようにそれはどういう条件でもって、どういう形で、その条項が実施できるか。また、この共同宣言のテキストには明記されていないのですけれど。それはまた追って、いろいろ対応しなければならないと」
松山キャスター
「ガルージンさんが言うように経済協力などの環境整備や信頼醸成などを通じて平和条約交渉につながっていくという話ですけれども、今後の見通しは?」
山本議員
「北方領土の問題、平和条約の締結も含め、決して一筋縄ではいかない問題だと思うんですね。ずっと安倍総理を応援してきた立場もあるのですが、プーチン大統領と安倍総理の時代に是非、平和条約締結という歴史的な偉業を成し遂げてほしいという強い思いがあります。それは先ほども、このパネルに出ていたように、今度、総理がプーチン大統領に会うとすると21回目ですね。これ以上会っている首相はおそらくメルケルさんは長いからもっと会っていて、習近平国家主席は23回ぐらい会っていますが、それを除けば本当に何度も会っている、信頼関係がある。2012年にプーチン大統領の方から記者団に対して北方領土問題を持ち出し、引き分けというやり方があるのではないかとおっしゃった。2016年の山口県での会談は、番組が始まる前にも大使とお話をしていたのですが、1時間以上、2人だけで話し合っている。だから、こういう信頼関係が北方領土問題の解決、平和条約締結に結びついてほしいという気持ちがあります。最大の現在のポイントは、大使がおっしゃったような共同経済活動ですよね。四島における。私は北方領土と日本だから言わせてもらいますが、四島における経済活動。これは4月に局長級の会談があって、おそらく5月に首脳会談の時の話題になると。現在、一生懸命、事務レベルで両国の外務省が話し合っているわけですよね。現在のところ日本の立場としては、両国の法的立場を阻害しない形で共同活動、経済活動をやると。ロシア側はどちらかと言うと、ロシアの国内法でやるのだと言っているのですが。これは現在5つぐらいのプロジェクトが候補として出ていますよね。海産物の養殖とか、水力発電とか、ツアーとか、確か、ゴミの焼却とか、いろいろあったと思うのですが。こういう中で、これは実際に話し合いをして、これが国際約束なのか、協定なのかはわかりませんが、そのニーズに応じてできるところからやればいいのであって。そういうベストプラクティスみたいなことを、どういう話が行われているのか内情はわかりませんけれど、そういうベストプラクティスみたいなことを積み重ねることによって、日本側とロシア側とちゃんと協定があれば、お互いの法的立場を害さないという立場で、これを進めることもできると思うので、それを是非、日露で今回キチッとやって首脳会談で本当に四島の経済活動を前に進めていく。そうすると、極東でいろいろと始まっている米露の経済協力、これは8項目か9項目あったと思いますが、エネルギーとか、医療とか、いろいろ、街づくりとかもあったと思うのですけれども。こういうのと相まって、全体の、大使がおっしゃった日露関係がすごく厚くなっていく、信頼が大きくなっていけば、それは四島の問題、北方領土の問題の解決につながり、あるいは平和条約の締結につながっていくと」
名越教授
「プーチン政権は就任以降、周辺国との領土問題を非常に柔軟に解決してきたんですね。フィフティー・フィフティー、係争地を折半にするとか、中国・カザフスタン・ノルウェーとか、非常に超法規的措置なのですけれども、日本に対してはそうでもないんですね、第二次大戦の結果ということで。これは技術的な国境問題と、日本とか、バルト三国がそうですね、そういう歴史認識が絡む問題になると譲歩できない、引き分けは無理だということなのですか?」
ガルージン氏
「うん、いや、それはご質問でしょう?」
名越教授
「質問」
ガルージン氏
「はい、ありがとうございます。まず確かにおっしゃったように日露関係における国境問題と言いますか…について言いますと、それは第二次世界大戦という歴史に根を下ろしている問題でありまして。それとして日露両国の世論の中で大変敏感に受け止められている問題であるのは確かです。そのような敏感な問題で、いろいろな感情を起こす問題に取り組む際に、まさに慎重にやらなければならないと思っておりますし。国家同士と言いますか、両国間に信頼関係を着実につくり上げなければならないと思っております。ですから、申し上げました方針を私どもはとっているわけですよね。山本先生のご発言の中で法的立場を害さない形でやろうというお話ですが、もちろん、私どもは日本が自分の法的立場と相容れないことをやらないということをよくわかっています。他方、我々の立場もあります。これまでの経緯を見ますと、たとえば、日本の漁民による四島水域における操業についての政府間協定などにも見られますように、お互い善意でもってやれば、最終的に双方にとって納得のいく決着が不可能ではないです」
松山キャスター
「安倍総理は、自分の任期中に何とかこの問題を解決したいということを度々言っているのですけれども、一方で、プーチン大統領は最近も時の政権のトップが誰であるかは関係なく、じっくりと信頼を熟成したうえでこの議論を進めていくべきだという考えを示しています」
ガルージン氏
「はい」
松山キャスター
「プーチン大統領は日本が安倍総理の間に何とか解決したいということにはそんなにこだわっていないということなのですか?」
ガルージン氏
「いや、どうでしょうかね。それは交渉次第です。私はそう思っています、個人的には」
斉藤キャスター
「でも、信頼関係がとてもあるんですよね?」
ガルージン氏
「もちろん、信頼関係があると私は確信しております。でなければ、20回目の会談はなかっただろうと思います。これまで20回、会談をしておりまして、信頼度が極めて高いと私は思っております。ですから、そういう複雑で敏感な問題に取り組む際に、何か時限を設定して、必ずその時までに解決しましょう、あるいは結果を出しましょうと言ったら、ちょっとあまりにもそれは複雑な問題で、そうしない方がいいのではないかと思っております」
山本議員
「私が昨今、気になっているのは、プーチン大統領を含めて、今回のこの四島の話について、安全保障の問題を絡めるコメントがすごく多くなってきていて…」
ガルージン氏
「はい」
山本議員
「つまり、たとえば、択捉・国後を返すと、そこに米軍が来るのではないかと。オホーツク海に核ミサイルを搭載したロシアの原子力潜水艦がいて、これが、まさしく核抑止の拠点であって、それに対して何か支障が生じるようなことはなかなか難しいみたいな話で、どうもそういう安全保障の問題と絡めて、この四島返還の問題は難しいという話を聞くのですが。大使に申し上げたいのは、たとえば、北海道に米軍はいないですよね。たとえば、根室に米軍が来れば、別に北方領土に米軍がいても、いなくても、同じような効果が期待できる中で、北方領土、たとえば、返還が実現したとして、そこに米軍が来るとは限らないし、もう1回、言いますけれど、北海道にも米軍はいませんから。そういう意味で言うと、ロシアが言っている安全保障の問題というのはどのくらい今回の領土問題を交渉するにあたって本当にネックなのか?どちらかと言うと、大使は答えにくいのかもしれませんが、むしろ交渉のカードであって、これもいわゆる克服し得る問題かどうかというところは是非、大使のご意見をうかがいたいと思う」
ガルージン氏
「率直に、今おっしゃった、安全保障上の問題について言いますと、私の意見はこうなります。日本という国自体がロシアにとって脅威であるかどうかと言いますと、そうではないです。日本という国を脅威と見ておりません。それはまず第1点です。だが、2点目は、それもまた客観的な事実ですけれども、日本の領内にアメリカの軍が駐留しています。安保条約等々に基づいて駐留しています。北海道に駐留しているのか、駐屯しているかどうかは別として、日本国内に米軍があるというのもそれは周知の事実であります。日本の皆さんは毎日のようにではなくても、毎週のように米軍の存在をご自分の肌で感じていらっしゃるというのも1つの周知の事実ですけれども。それは別として、アメリカ軍が日本国内でやっていることは、それは決してロシアにとって無視できることではないです、安全保障上の理由で。特にロシアの地図を見ますと、なぜかわかりませんが、ロシアの国境沿いに、国境沿いの地域に、ほとんどどこにでも、おそらくロシアと中国、ロシアとカザフスタン、ロシアとモンゴルの国境を除いて、全ての地域に米軍が駐留しているんです。たとえば、旧ソ連崩壊後、NATO(北大西洋条約機構)というアメリカを中心とした組織が、自分が旧ソ連の指導部に約束したことを破って、ロシアの西側の国境までNATOの軍事プレゼンスを拡大してしまった。それが1つ。もう1つは、アメリカがグローバルな戦略安定を揺るがす、あるいは崩壊させかねない措置…にまで踏み切ったんです。それはどの措置であるかと言うと、それは対ミサイル防衛の開発と、その実践配備です。アメリカは、それはイランに対する措置とか、あるいは北朝鮮に対する措置とは言ってはいますけれども、実際に冷静な軍事専門家による分析をしますと、それは明らかにロシアと中国の戦略ポテンシャルを狙う措置であります。残念ながら、対ミサイル防衛の1部は、アジア太平洋地域、つまり、日本国内に配備されています。それも無視できません。なぜかと言うと、それはロシアの安全保障上の利害関係に直接抵触するからであります」

名越健郎 拓殖大学海外事情研究所教授の提言 『サプライズ外交』
名越教授
「日露外交だけではないのですけれど、日本外交を見ていまして、サプライズがないと。経済協力とか、そういうのは完璧にできるのだけれども、拉致問題、領土問題、歴史認識、そういう難易度が高くなるとお手あげになるんです。しかし、現在、安倍首相が官邸外交と、政治主導になっていますから。これからは対露外交も含めて、サプライズを起こさないとなかなか問題が解決できないのではないかと思いますね」

山本一太 自由民主党政務調査会長代理の提言 『前のめりは禁物』
山本議員
「『前のめりは禁物』。先ほど、安倍総理とプーチン大統領の時代に是非、平和条約締結を実現してほしいと申し上げましたが、そこは交渉ですから全体の状況を見てキチッと交渉する必要があると思います。たとえば、米露関係が悪化している時はなかなか地合いが悪かったりするので、そこらへん全体の状況を見ながらいく。是非、平和交渉、平和条約締結をしてほしいけれど、そこはちゃんと戦略的に進めてほしい、敢えて前のめりは禁物と書かせていただきました」
斉藤キャスター
「北方領土問題にもかかわってきますものね?」
山本議員
「はい」

ミハイル・ガルージン 駐日ロシア大使の提言 『友好』
ガルージン氏
「『友好』というふうに決めましたが、友好があって初めていかなる複雑な問題も解決できますから、という気持ちを込めて書きました」
斉藤キャスター
「これは信頼とは違うのですか?」
ガルージン氏
「友好は、私の考えでは信頼を含めていますよ」