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2018年3月28日(水)
検証…金委員長初訪中 ▽ 米中貿易摩擦の行方

ゲスト

丹羽宇一郎
元駐中国日本大使
平井久志
ジャーナリスト(前半)
朱建榮
東洋学園大学教授(前半)
野口悠紀雄
経済学者
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問(後半)

金正恩委員長が電撃訪中 『米朝』前…中朝の狙い
斉藤キャスター
「北朝鮮の金正恩委員長が中国を電撃訪問しました。それを受けまして、今夜の前半は、中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩委員長による初の首脳会談を緊急検証します。後半は、米中貿易摩擦の影響を分析して、日本の対応策を考えていきます。北朝鮮の金正恩委員長、25日から28日の4日間の日程で李雪主夫人を伴って中国を訪問しました。こちら主なスケジュールです。まず25日に特別列車で中国遼寧省丹東から中国に入りました。翌26日には北京駅に到着、人民大会堂で首脳会談に臨み、会談後は夕食会が行われました。27日は、釣魚台迎賓館で習近平国家主席夫妻と昼食を共にし、ハイテク企業が集まる北京の中関村地域、観光名所の天壇公園を視察し、その後、北京駅を出発しています。今朝ですけれども、今朝7時過ぎ、中朝境界線を越えて北朝鮮に戻ったとされています。平井さん、この電撃訪中、どう受け止めていますか?」
平井氏
「よくダイナミックに北朝鮮外交が動いているなということを感じましたね。明らかに南北、米朝首脳会談を睨んでの動きだと思います」
反町キャスター
「今回、中国を訪問することが南北首脳会談、米朝首脳会談にどういうメリット、アドバンテージを金委員長に与えるのか、そこはどう見るのですか?」
平井氏
「1つは、トランプさんのまだ意図がよく読めない中で、韓国とだいたい南北共同であたるという感じはつくり出すことに成功しているのですけれども、それに中国の理解を得ておく、非核化という、非常に曖昧な朝鮮半島非核化というワーディングを出して臨もうとしているわけですけれども、そのことに対する中国の支持を事前にとって、交渉力を高めておきたい。それと、もう1つは、非常にホワイトハウスとか、国務省にタカ派の方が起用されているので、この会談が決裂する、失敗する危険性もあるわけですよね、北朝鮮から見ると。その場合に、軍事的な緊張がもし高まったような場合に中国を抱え込み、軍事的な攻撃がないような環境をつくっておきたいという、そういう、どちらに転んでも中国を惹きつけておく。もう1つは、経済だと思いますよね。全体のこういう対話攻勢に出た背景として、経済制裁が効いているということは事実だと思われるのですけれども。北朝鮮の貿易の9割は中国が占めているわけですから、将来的にも経済制裁の緩和ということを含めて、中朝関係を修復したい、そういう意図があったのだと思います」
斉藤キャスター
「朱さんはどう見ますか?」
朱教授
「私も、まず今回の訪問というのは北から先に提案し、中国はそれを受け入れたと思います。そのような電撃的な訪問というような表現もあったし、いろいろな動きを見ていて、しかも、中国の正式な発表は、今回は非公式訪問ですね。公式訪問だったら国事訪問でいろいろなことをやるのですけれども、非公式というのは専らある事項をめぐって、重大なことをめぐって協議に行くのだというようなことで、訪問が実現したと思いますが。中国は受け入れる前提の1つはこれまで数年間、中朝関係が悪化した原因でもあるのですけれども、北朝鮮の核開発。今回の発表、中国側の発表には、金正恩氏は中国訪問中に、非核化という目標を、それについて言及したということは、中国としてこの目標というのをはっきり言及してくれたというのが私は受け入れた前提になったと思います。もう1点ですけれども、それは平壌の発表の朝鮮中央通信の発表の中で、今回の中朝の首脳会談の中で、戦略的・戦術的な、対米に、それをめぐって意見交換したと。つまり、これから金正恩委員長が韓国と、また、アメリカと首脳会談をやる時に、いろいろなこと、それを言われたら、どうすればいいのかと、そういうようなことを含めて、中国と意見交換をするというのが、今回はメインの狙いの1つ」
斉藤キャスター
「丹羽さんは、2人の意見を聞いて、あらためていかがですか?」
丹羽氏
「先ほど、出ましたようにトランプさんの状況が非常に強気に出てきているわけですよね。台湾問題についての発言もあり、あるいは中米の貿易の問題にしても。ここで中国側としては少し強気の態度をアメリカに示しておくと。我々はアメリカにベッタリで、あなたの言う通りに、はい、はいと言うわけにはいかないよということを陰ながら、今回の金正恩さんを受け入れて話をしたということで、世界にも示したと思う。だから、彼は、私に言わせると、金正恩さんというのは、我々、1人ぼっちではないよ、ちゃんと中国との同盟関係があって、あるいは世界の各国ともお付き合いもしているのだということをアメリカに見せ、あるいは北朝鮮の国民にも知らせたということではないかと思いますね」
反町キャスター
「首脳会談における発言がいくつか紹介されているので、まずは朱さんに聞きたいのですけれども。習近平主席の発言として『今年に入って情勢に肯定的変化が表れている』と習近平主席が金委員長に対して言ったと。『今年に入ってから情勢に肯定的変化が表れている』いうのは、これはどういう意味で習主席は言っているのですか?」
朱教授
「中国語はこの『肯定的変化』という言葉を『前進』という言葉を使っているんですね。金正恩委員長は非核化というところで、初めて言い出したと。これまでも我々はもう核保有国だと、韓国との間でもう核の話をするテーマではないというようなことを、今回は、前指導者の遺訓を受け継ぐような形で、非核化という目標を…ということを現在、受け継いでいるのだと」
反町キャスター
「では、『肯定的変化』というのは、核・ミサイル開発に血道を上げるとは言いませんけれども、国力を非常にそこに集中していた北朝鮮が、そこに多少ブレーキをかける雰囲気が出てきたことを『肯定的変化』だと?」
朱教授
「これが1つ、非核化という目標を現在の金正恩委員長が初めて口にしたこと。次にそれをめぐって、米朝、南北の交渉で、平和交渉を、と入ると、それは中国としては評価するという意味で『肯定的変化』と言っているのではないかなと思います」
反町キャスター
「平井さん、一方、金正恩委員長の発言なのですけれども『アメリカと韓国が善意で応え、平和と安定の雰囲気がつくり出せれば、非核化問題は解決できる』という、この金委員長の発言はどう見たらいいのですか?」
平井氏
「ここには出ていませんけれども、こういうことも言っているんです。『平和実現のために段階的・同時的措置を講じるならば、朝鮮半島の非核化問題は解決できる』と。だから、段階的ということは、先ほどおっしゃったように、トランプさんのような一挙にもう核を放棄しろということではなくて、段階を置いてやっていく。たとえば、自分達が核実験やミサイルの発射を中止すれば、米韓合同軍事演習を中止するとか。だから、同時に、お互いが同時にやる」
反町キャスター
「お互いにというのは、同時ですね?」
平井氏
「同時だと…。ですから、段階的・同時的措置というのは、そういうステップ・バイ・ステップで1つずつ解決していけば、我々は朝鮮半島の非核化を迎えるのだという、そういうことを言って。これが結構、米朝首脳会談に向ける金正恩さんの基本的姿勢を、ここではからずも示した…」
反町キャスター
「平井さん、今回の中朝首脳会談の結果について形から聞いていきたいのですけれども、共同会見、共同声明、共同文書がまったくありませんでした」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「なかったけれども、それぞれの国が、それぞれの政府が発表しました。こういうことでこう確認をしたとか、合意という言葉はなかったけれども、こういう件について意見交換をしたとか。まずこの形式から聞きたい。なぜ紙も出さない、共同会見もしない、けれど、内容については別々に発表した。しかも、同じ内容をすり合わせたように発表するならわかるけれども、それぞれの国が自国に都合のいいようなことをバラバラに発表しているようにも見える。これはどう見ていますか?」
平井氏
「これは、ですから、金正日総書記の時代とまったく同じやり方ですね」
反町キャスター
「なるほど」
平井氏
「彼は7回、正式にはロシアから帰りに寄ったのを入れれば8回、中国に行っているわけですけれども、そのほとんどをこういう、全て、8回とも全て非公式訪問という。公式訪問は隣国であるにも関わらず1度もやっていないわけですね。非公式訪問で、列車で行って、しかも、その間は非公式訪問ですから機密にされて、中国から離れるか、平壌に着いた段階で発表をするという。それは、だから、極めて発表の仕方、滞在中の警備やメディアの扱い方もお父さんとまったく同じやり方を踏襲した。だから、過去のそういう伝統的なやり方が生きているんですよという、むしろそういうイメージ操作ではないかなという気がしますよね」
反町キャスター
「なるほど。内容ですけれども。それぞれちょっと違う発表をしているのではないかということで、こういうようなフリップをつくったのですけれども。新華社通信、中国側の発表では『金正恩委員長は"遺訓に従い朝鮮半島の非核化実現に尽力する"と表明した』というのが中国側の発表文の中にあります。朝鮮中央通信、北朝鮮側の発表によると『金委員長は習主席の訪朝を招請し、習主席は快諾した』。下の部分にはこういうような発言もしたということなのですけれど、たとえば、半島の非核化という話は北朝鮮側の発表では出てこない。北朝鮮側の発表にあるような『習主席の訪朝を招請し、習主席は快諾した』というのも、我々が見ている限りでは中国側の発表にはないですよ」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「これはどう見ますか?」
平井氏
「1つは、北朝鮮は国内で依然、核兵器は宝剣であり宝の刀だということをずっと言い続けているわけですから、そんなに簡単にその核兵器を放棄するということを、国民というか、自国民にPRする気はあまりまだ現在の段階ではないと思いますよね。ですから、それは非核化という約束を国内にことさらPRする必要はないので省いたのだろうと思うし、習近平さんの承諾にしても、これは適切な時期を選んでというのが入っていますから、中国側が適切だと思わなければ来ないわけですから。そういう意味で、非常に理解の仕方によってどうにでもなる合意でもあるわけだと思うんですね。だから、ただ、ポイントは違いますよね、中朝間で…」
反町キャスター
「違う、違うんですよ」
平井氏
「非核化に、中国側はかなりな部分を核問題に対する金正恩さんのワーディングを報道しています。北朝鮮側はまったくそれを報道していないので。そこは基本的なスタンスの違いがあるのだということだと思います」
反町キャスター
「たとえば、この『遺訓に従い』ということで言うと、先代、先々代においての核に対する姿勢と、3代目になったところで核に対する姿勢は、極めて踏み込みがきつくなっているではないですか?」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「3代目の金正恩委員長の核に対する姿勢がウンと踏み込んで、核もミサイルの実験もすごく加速度的に増している中で『遺訓に従い』『尽力すること』を表明したと中国が敢えて言っていること。これは北朝鮮の核・ミサイルの開発のテンポが明らかに減速するということを強く希望している、当然そういう意味だと思うのだけれども」
平井氏
「うん、それは希望しているのでしょうけれども。ある意味で、北朝鮮はマッチポンプでもあるわけですよね。お父さんの時代の『朝鮮半島の非核化に努力する』ということを、金正恩さんの時代になって言わなくなった。それを上げていたのを、今回下げたわけですよね。非核化ということは交渉のカードになり得るのだ、外交カードになり得るのだということで下げた。だから、見方によってこれは違うと思うんですね。単にマッチポンプで、自分で釣り上げて自分で下ろしただけだから何の進展もないのだという冷たい見方もできるし、いや、核開発そのものが自己目的化していた金正恩政権というものが非核化というものを外交カードとして出してきたというのは大変な進歩だと認識することもできるだろうし、そういう意味では、中国はある程度、しかし、お父さんの時代のレベルに戻ったことを私は評価している部分があるのではないのかなという気がします」
反町キャスター
「1つ確認させてください。平井さんから見ると、北朝鮮は昨年の暮れに核・ミサイルの開発完了宣言をしましたよね?」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「その意味においては、北朝鮮は明らかに核・ミサイルの開発プロセスではなくて、これを外交カードとして使うプロセス、場合によっては下ろすプロセスに入ってきている、そう見るのですか?」
平井氏
「いや、それは、先ほども言いましたように、段階的・同時的措置ということがあるのですから、それを見合うものが出てこない限りは下ろさないと思いますよ。だから、たとえば、アメリカとの国交正常化であるとか、休戦協定を平和協定に変えるとか、そういうものがしっかり担保される、自分達の体制が保障されるという措置が現実的にとられない限りは、それはそんなに簡単に核を放棄するということはないと思います」
反町キャスター
「朱さん、では、北朝鮮と中国の発表の食い違いは中国から見たらどう見えるのですか?」
朱教授
「私は、これが、確かにそれぞれ都合、立場があって表現が違ったと思うのですけれども、やや違った内容であっても、事前には相手にはもう見せていると思います」
反町キャスター
「なるほど、一応こういうふうに発表するよという?」
朱教授
「ええ、ここぐらいは、いや、こっちの立場もあるので、非核化というところを中国は言わないと、だって、今回…」
反町キャスター
「何のために呼んだのだと?」
朱教授
「北ももちろん、国内の事情があるから、北はそれに反対をしない。ただ、自分のところでは言わない。でも、北は国内向けに、私の訪問で次には習主席が我々のところに来るというのを約束してくれたというところで北にとっての1つの成果ですので。そういうところは事前に多少は言っているんですね。厳しい詰めではなくても多少はもう先に見せて発表したと思います」
反町キャスター
「でも、朱さんの目から見て、新華社にしても、朝鮮中央通信にしても、それぞれの自国民向けの報道ではないでしょう?これは他の国々、日本とか、アメリカ、他の国々に対して、中国は北からこういう言葉をとったよと。北朝鮮にしてみたら我々はこういうのを中国からとったよという関連各国に対するプロパガンダではないですか?」
丹羽氏
「アメリカだよ、アメリカに…」
反町キャスター
「もちろん、そうですよ」
朱教授
「本当におっしゃるように、これは自国民へのところももちろん、特に北はそれがあるのですけれども、他の、特にアメリカ向けに、それはPRするものがあるのは間違いないです。その直後に、習近平主席がトランプ大統領と電話で会談するとか、まさにそういう成果というのが今回勝ちとったよというところを、PRするところはあるでしょう」
反町キャスター
「なるほど。いかがですか、丹羽さん、この成果はアメリカを意識しているとしたら、アメリカはこの報告を聞いて満足すると思いますか?」
丹羽氏
「いや、もう今日ここに出ているように、非常にうまくいったというメッセージが出ていて、我々はこの会談を楽しみにしていてほしいと…」
朱教授
「最新のツイッターですね」
丹羽氏
「…そういうことだと思いますよ」
反町キャスター
「紹介すると、トランプ大統領がツイッターに書いたことで習近平主席から連絡を受けたと、中朝首脳会談は非常にうまくいったという報告を受けた。さらに言えば、北朝鮮に、我々の会談というのは、つまり、米朝首脳会談です、米朝首脳会談を楽しみにしてほしいと言った一方で、北朝鮮に最大限の圧力をかけ続ける姿勢も強調したということですけれど。トランプ大統領はだいたい自分の前宣言をツイートするわけですよ。その意味においては、前向きに言ってはいるものの、中身の前進が期待できるかどうかという」
丹羽氏
「それはそうですよね。それは、これからの北朝鮮のどういう条件の中で、君のところは非核化というものをどう実現していくのだということを知らない限りは、ああ、そうですかと言うわけにはいかない。過去の会談における状況から見ても。だから、それぐらいの慎重さはトランプさんも持っているでしょう」
反町キャスター
「トランプ大統領でも?」
丹羽氏
「大統領でも」

金正恩委員長が電撃訪中 『日本パッシング』か?
反町キャスター
「日米首脳会談、今月半ばにもあるわけですけれど、総理はワシントンに行って何を話すべきだと見ていますか?」
平井氏
「私は、圧力を続けるということも大事ですけれども、ここの、東アジアの平和というのをどうつくっていくのかということ、そういうことも少し日本が発言してもいいのではないかという気がします」
反町キャスター
「平和構築プロセス?」
平井氏
「ええ。そのことに、どう関わっていくのか。要するに、この非核化ということには対価というものが必要になってくるわけですから、その仕組みをどうつくっていくのかということで、日本が果たせる役割というのは非常に大きいわけです。そういう対価を見せながら、彼らに譲歩を迫っていくと。残念ながら、すぐに核兵器を放棄します、廃棄しますなんて、これは現実性がないですよね。結果的には、凍結から始まって、段階的にいかざるを得ないわけですから。そこで、むしろ東アジアで戦争が起こらない、それで、いかにしてそれが、非常に時間がかかるかもしれませんけれども、非核化に向かう方法というのをどうやってつくっていくかということを、トランプさんと話すべきではないのかなという。だから、安倍さんも少し出口、朝鮮半島の平和の問題をどうするのかという、そういうビジョンを持たないといけないのではないのかなと」
反町キャスター
「でも、日本の出口は、拉致がある分、ちょっとハードルが1段高いではないですか?総理も今日の国会の答弁においては『拉致問題についても米朝首脳会談という機会を活かしたい』。つまり、日米首脳会談でトランプ大統領に対して、日本の拉致問題の重要性をあらためてもう1回再度刷り込んで、それで平壌と会談に向かってほしいと、こういう趣旨の発言ですね。言われた平和構築プロセスに対する日本の積極的な関与というのは、総理の答弁からはそこの部分よりも、どうやって拉致をトランプさんに刷り込むかという、そちらの方が強く伝わってくるのですけれども、そこはどうですか?」
平井氏
「それは、トランプさんは言うことは言うでしょう。でも、北がそれをちゃんとした交渉マターとして受け止めますか、現在の状況で?」
反町キャスター
「なるほど」
丹羽氏
「それから、安倍さんは、トランプさんに会った時にもう少し腹を割って、長い時間をかけて、日本の考えを、安倍さんの考えを伝えなければダメですよ」
反町キャスター
「伝えていない?」
丹羽氏
「伝えていないと思う。それでなかったら、あれだけ伝えていても、貿易問題も含めてですよ、ああいう返答はないだろうと思うんですよ。だから、北の問題について…」
反町キャスター
「どの国の首脳よりもトランプ大統領と…」
丹羽氏
「いや…」
反町キャスター
「…腹を割って話しているということで、国際会議の場において、いろいろな国の首脳からどうやったらトランプ大統領と仲良くなれるのかという話がきているというのは…」
丹羽氏
「いや…」
反町キャスター
「それは嘘だと思いますか?」
丹羽氏
「いや、嘘だと思わないけれど、どこまで本当のこの気持ちが、安倍さんの本心が伝わっているのかと」
反町キャスター
「安倍さんですらそうだとしたら他の誰もトランプ大統領と腹を割って話していないと、こういう話になっちゃう」
丹羽氏
「いや、要するに、トランプさんの陣営の人と、日本のアメリカのことについての有識者というもののコミュニケーションなり、ルートというのが非常に薄くなっているわけですよ。だから、トランプさんの話と安倍さんの話だけで世の中が、そう進んでいるとは思えない、ということから考えると、もう少し日本とアメリカのルート、話し合いのルートの層を厚くしないと、現在のままいったらトランプさんの発言だけで、右に行ったり、左に行ったり、非常に不安定な発言が多いですから。それをそのまま100%、日本が信じていくわけにいかんと思いますね」
(後半)
『米中貿易戦争』の可能性は? その影響と対応策
斉藤キャスター
「トランプ大統領が打ち出した通商政策をめぐって中国が強く反発しています。米中貿易戦争が懸念されているという最中。アメリカのトランプ大統領は22日に、中国がアメリカの知的財産権を侵害しているとして、600億ドル、およそ日本円にして6兆3000億円規模の関税を課す方針を固めました。そうすると今度は23日、中国の華春瑩報道官は『お返しをしなければ失礼にあたる。我々は、最後までお付き合いする』と反発したんですね。まったくその同じ日、今度、トランプ大統領は鉄鋼に25%、アルミニウムに15%の関税をかけるという輸入制限を発動しました。中国の商務省は対抗措置として、ワインや豚肉など128項目、およそ30億ドル分、日本円にして3150億円分の追加関税を準備していると発表しました。野口さん、貿易戦争直前のような様子にも見えるのですが、本当に始まる可能性はありますか?」
野口氏
「中国からの輸入品に、関税をかけた時にまず困るのはアメリカの消費者と企業です。価格が上がってしまいますから。実際に反対の声が上がっています。つまり、アメリカ第一主義と言うのですが、第一主義になっていないんですね。あまりに経済的な合理性を欠く政策であるわけです。ですから、この貿易戦争がドンドン、エスカレートしていくというような事態というのは非常に考えにくいと思います。つまり、なぜトランプ大統領がこういうことを言っているかと言うと、中間選挙に向けた政治的なメッセージですね。つまり、これだけのことをやって、あなた方に職を確保しますよ、ということを言いたいから、そういうことを言っているわけで。経済的にはまったく不合理なことですね。ですから、中間選挙でこれがどの程度影響するか、まだわかりませんけれど、私はあまり影響がないのではないかという気がするわけですよ。実は、アメリカと中国の問題というのは、この問題ではなくて、もっと本当に深刻な問題があるわけです、アメリカが心配しなくてはいけない、それは中国の先端的なIT(情報通信)、特にAI(人工知能)です、人工知能、これが近い将来にアメリカを抜くだろうと考えられているんですね」
反町キャスター
「それは技術レベルですか?生産レベルですか?」
野口氏
「技術レベルです。基礎的な能力がものすごいわけです」
反町キャスター
「なるほど」
野口氏
「中国はそれを急速に上げていて。たとえば、コンピュータサイエンスのランキングで、現在世界1位は中国の精華大学です。つまり、スタンフォードやMIT(マサチューセッツ工科大学)を抜いたわけですね。だから、知的財産権と言いませんけれども、アメリカが中国に与えた知的なもの、トランスファーの最大のものは、アメリカの大学院で中国からの留学生を教育して、その結果、中国が恐るべき力をつけたということです。これに対してどうするべきかということは、アメリカでは非常に大きな危機感が現在、上がっているんですね。それをどうしていくかということの方が本当は大きな問題です」
反町キャスター
「それはトランプ大統領は気づいていないと見ているのですか?」
野口氏
「そこはわからないのですけれども、気づいていない可能性…」
反町キャスター
「留学生の窓口を閉めるわけにもいきませんよね?」
野口氏
「いや、でも、ただ、留学生に対して、たとえば、『H‐1B』というビザがあって、留学のあとアメリカで働くという制度がこれまでありました。これがアメリカのIT産業に非常に貢献していたわけです。それを制限するとか。あるいはそもそも留学生を制限するとか、トランプさんはそういうことを打ち出していますね。これもアメリカの活力を削ぐことになるわけですよ。だから、そういうメッセージでラストベルトの労働者に訴えようとしているのでしょうけれども、経済合理性という観点から言えば、まったく逆のことをやっているということですね。だから、こういうことがいつまで続くのか、非常に疑問に思いますね」
反町キャスター
「この米中間の経済戦争と敢えて言いますけれども、1つのシンボリックな話として、中国が保有している米国債を売るという、これもどこまで本気かという話があるのですけれども、そういう話が出ています」
野口氏
「ええ」
反町キャスター
「駐米大使がこういう発言をしていますよね。1兆1700億ドル、124兆円、中国は米国債を持っているのだけれど、これを1部売ったらどうするのだ、みたいなこういう話を言っているのですけれども、この可能性、もしも中国が米国債を多少なりとも売り始めた時の世界経済への影響、どう見ていますか?」
野口氏
「仮に、現在保有しているのを売るということはちょっと考えにくいのですが、購入額を減らしていくことは考えられるんですよ」
反町キャスター
「はい、ペースダウンですね?」
野口氏
「うん、アメリカの金利というのは、長期金利は上昇傾向にあると。ですから、それが加速される可能性がありますね。つまり、世界的な金利高になる。それで1番困るのはどこかと言うと、実は中国ですよね。中国というのはリーマンショック以降に非常に拡大策をやって、国有銀行が民間企業に貸したりして、民間企業の債務が現在、非常に大きくなっているんです。GDP(国内総生産)に対する比率が世界各国で突出して高いです。従ってもし金利が上がると債務不履行に陥る可能性がある。つまり、金融危機が起こってしまう可能性があるんですね。現在、中国が抱えている最大の問題の1つはそこですよ。ということは、中国がもし国債を売れば、自分で自分の首を絞めてしまうことになる」
反町キャスター
「では、やれない?」
野口氏
「やれないとは言えないし、それは脅しの手段として使うということは十分あり得ますよ。だけど、先ほどの話と同じで、経済的に合理的ではないですよね、この方策は」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、トランプ大統領の中国に対する経済制裁的な意味の発言の数々とか、紹介しましたけれども、中国外務省の『お返しをしなければ失礼に当たる』とか、2国間の外交の場にあまりふさわしくないような言葉のやりとりが続いているのは、野口さん的に言うと、これはあまり真に受けなくて静かに見ていれば、言葉の争いで終わるのではないか、そんな感じで見ていますか?」
野口氏
「いや、取引の手段に使うということは十分あり得るんですね。たとえば、鉄鋼・アルミニウムの関税の問題にしてもどこの国を除外するかということが問題になってるわけですよね。ですから、たとえば、韓国を除外したと、だけど、輸入制限…、数量制限を入れたと。これは取引の材料に使ったということですね。日本も現在のところ適用だけれど、まだ最終的に決まったわけではない。従って、今後それを取引の材料に使ってくる可能性はありますよね」
反町キャスター
「アメリカが?」
野口氏
「アメリカが。たとえば、2国間の交渉に持ち込んでアメリカからの農産物の輸入を認めさせると、わかりませんよ。そういう取引の道具に使うと。トランプ大統領のいろいろなことが、そういうそのディールという、ことが多いと言われていますよね。だから、今回のものも1つは先ほど、言いましたように、選挙民に対するメッセージ。もう1つは、外交的な取引での手段に使うと、それは十分あり得るのではないですか?」
斉藤キャスター
「さて、トランプ政権が通商政策のターゲットにしているのは中国だけではないんですね。トランプ政権が23日に発動しました、鉄鋼に25%、アルミニウムに15%の関税をかける輸入制限ですけれども、日本と中国はともに輸入制限の対象です。カナダや韓国、EU(欧州連合)などは当面除外ということです。野口さん、当初、日本は対象外になるのではないかと言われていましたけれども、日本は対象になりましたよね、これをどう見ますか?」
野口氏
「先ほど、言いましたように、ディールの道具ということがあり得ますね。ただ、このことが日本の鉄鋼業にとってどれだけ意味があるかというと、アメリカに対する輸入は2%ぐらいですよ」
反町キャスター
「そうですよ、少ないですよ」
野口氏
「だから、あまり量的に問題になるようなことではないと言っていいと思います」
反町キャスター
「そうすると、あまり大量の鉄…、これを見せた方がいいのか、あまり大口ではない日本に対して、敢えて他の国、たとえば、カナダとか、韓国というのは適用除外にしているわけではないですか。にもかかわらず、その国よりもはるかに小さい割合である日本を残しているというのは、先ほど、野口さんが言われた…」
野口氏
「うん、先ほどの、農産物…」
反町キャスター
「農産物と鉄の取引をやろうと?」
野口氏
「それはあり得ることですよね。2国間の交渉になったら、当然そういう話になるのではないですか。これまでもアメリカは日本の農産物の高関税とか、輸入制限を問題にしていますから。農産物の輸出というのは、アメリカにとって非常に重要なことですから」
反町キャスター
「でも、TPPに入らないアメリカが悪いのではないですか?その筋論を言っている場合ではないですね、たぶん。そんな理屈は向こうには通じないですものね?」
野口氏
「つまり、TPP、多国間でやる場合には他にも参加国があるから、だから、日本の農産物の高関税というのは認められたわけですよね。だけど、2国間の取引になればその問題がもろに出てきてしまうということだと思います」
斉藤キャスター
「丹羽さんは?」
丹羽氏
「貿易戦争で日米を考えた時に、農産物というのは圧倒的に中国が、たとえば、大豆で言うと、日本が輸入しているのは、おそらく300万、400万トンですよ、年間で。彼らは9000万トンですからね。それだけのものを輸入して、世界の貿易の半分に近いものを、半分以上、中国が買っている。彼らがそれをストップしたら、アメリカの農家、大豆農家は潰れますよ。売るところがないもの」
反町キャスター
「それは中国が強いという意味で言っているのですか?」
丹羽氏
「そうですよ」
反町キャスター
「アメリカが輸出制限をしたら中国が困るということではなくて?」
丹羽氏
「いや、困らない。ブラジルがあるし、アルゼンチンもある。だから、ずっと続けられるかどうかは別ですよ。しかし、少なくともアメリカの生産者が手を上げますよ。だから、そういうものが今回のトランプさんの発言の中で、鉄鋼の問題についても、これを新日鐵住金さん以外に、原油の、石油のパイプラインをつくる鉄がないですよ。それを止めてどうするのだ。値段を上げて困るのは誰だと。値段を上げて困るのはお前のところの石油のパイプをつくっているところではないのと。同じようなことが、トランプさんが国際的に輸入関税を上げるとか、あるいは中国のものを上げると言った時に、同じ問題が起きる。だから、現在この問題で1番困っているのはアメリカの輸入業者、アメリカのそれを使っている産業分野の方々です。だから、アメリカのほとんどのところが反対ですよ。それで、1000品目のものをどうやって計算をして、順繰りにこれを統一していくか。おそらく2か月、3か月かかるだろうと。これは時間がかかっている間にアメリカの業者が手を上げますよ、いい加減にしろよということ」
反町キャスター
「手を上げるということは中間選挙に向けて逆風になるはずですよね?」
丹羽氏
「逆風になる、それは」
反町キャスター
「それは中間選挙の秋までにトランプ大統領がそれに気づいて今みたいな方針を変えるだけの…」
丹羽氏
「いや、おそらく実行できないと思うの」
反町キャスター
「ああ、こういった強硬姿勢が?」
丹羽氏
「うん。要するに、それをやったら、理屈はともかく、手を上げるということは、やっていけないのだから。だから、それはちょっと勘弁してくださいよと、ということで彼も次から次へ例外の措置をとっていかざるを得ないかもしれない」
反町キャスター
「野口さん、いかがですか?トランプ大統領の強硬姿勢は長続きしないのではないかというのが、丹羽さんの話です」
野口氏
「先ほど申し上げたこともそうなので。あまりに経済合理性を欠いているので、とてもアメリカ経済がこのような不合理な政策に耐えられるとは思えないですね。でも、それは当選した時から皆、そう思っていたわけ、ずっと」
反町キャスター
「ずっと。合理性をあらゆるところで政治的な、経済的な合理性を…」
野口氏
「そうひっくり返して…」
反町キャスター
「全部踏み倒して押し倒してきているではないですか、トランプ政権は」
野口氏
「そうです。だから、そういう意味では、今回、中国に対する制裁関税を本当に出してきたというのは、驚きと言えば、驚きですよね」
丹羽氏
「唯一方法が、中国は講ずると思う。もしそれをやったら何が起きるかと。日本から中国に輸出して、中国がそれを加工してアメリカに出したんです。そういう貿易戦争を抜けたわけです。今度は中国をイジメたら、中国は今度、ベトナムとか、フィリピンとか、アジアの国に中間部品を輸出して、そこで組み立ててアメリカに出すんですよ。要するに、経由するところが、日本・アメリカでダイレクトにやっていたのを日本・中国・アメリカにしたわけ。今度、中国がやられるから、中国は、ベトナム・フィリピン、次はアジアに出すわけ。そしてアメリカに行く。するとアメリカの赤字は減らない」
反町キャスター
「結局、外から入れれば変わりないですからね」
丹羽氏
「そう。だから、中国をイジメてもグローバリゼーションのこの世の中で、そういう経済構造の変化によってルートを変えれば結局、税金はかからないで入っちゃうわけですよ。と言うことは、トランプさんの意図していることは全然実行できないのではない」
反町キャスター
「野口さん、トランプ大統領は、ずっとがんばることはできないと見ていますか?」
野口氏
「うん」
反町キャスター
「だから、あの大統領は万が一、そういう非合理的なことをやって手詰まりになっても、また、新たな非合理のロジックを立てて、それで戦ってきた人だと僕は思うのですけれども、どうですか?」
野口氏
「ただ、当選してから言っていることは、別に新しいことを言い出したわけではないので。中国に対する赤字が問題だというのは最初から言っていたことで、新しい政策を持ち出してきたわけではないと思いますよ。だから、手詰まりではないですか、もう、と思いますが、私は」
反町キャスター
「そうすると、その手詰まり感をもし大統領が気づいた時に、彼にどのように方針を転換させられるのか、それは内政の問題だからいいでしょう。その手詰まりになったトランプ大統領に日本はどう向き合っていったらいいか、ここの部分です。どう見ていますか?」
野口氏
「日本がどうするべきなのかというのは、これは、正解は明らかで。自由貿易の有効性を堂々と主張すべきことでしょうね」
反町キャスター
「はぁ」
野口氏
「ただし、日本にそれができるかという問題があるわけですよ」
反町キャスター
「できない?」
野口氏
「できない。つまり、日本というのは、だって、農産物に対して非常に制約的なことを、政策をとっているわけですから。それにもかかわらず製造業の製品だけについて自由化をすべきだというような論理というのは通りませんよね。だから、日本が本当に正論を言うのであれば農業について自由化する、それがまず第1歩ですね、自分をあらためる。そうでないと正論が言えないですよ」
丹羽氏
「おそらく私が思うに、世界中が現在のトランプさんの貿易方針に反対していると思います。トランプさんがいくらがんばっても、先ほど申し上げたように、自分の国民が損するだけで、経済構造が変わってきている。何かと言うと、産業、機械産業構造から第3次産業の、グーグルとか、アップルとか、そういうものに移ってきているわけですよ。それでビジブルに、モノが目に見えるような形のものは減らない。アメリカも減らせられない。何かと言うと自動車とか、いろいろな。ところが、目に見えないインターネットだとか、そういうものを、ソフトですね、こういうものでアメリカは輸出を稼いでいるんですよ」
反町キャスター
「そうですね」
丹羽氏
「そこのところに目を向けないで肝心要の産業が、要するに、生産工場というか、第2次産業の分野はいくら押さえても、結局、彼らはこういう回り回って、買わざるを得ないわけですよ。急に労働者を増やして、工場を増やす、それはできません。ということを考えますと、どんなに考えても、現在のグローバリゼーションの世界で、このトランプ政策が成功するとは思えない」
反町キャスター
「野口さん、いかがですか?知財の部分とかでの…」
野口氏
「はい、そうです」
反町キャスター
「今の話ですよね?」
野口氏
「うん」
反町キャスター
「アメリカは知財の部分におけるロスにもっと目を向けるべきだという趣旨の話かと思ったのですけれども、アメリカは結構、そこにうるさく騒いでいないですか?まだ足りないと思いますか?それとも、そこはどう見ていますか?」
野口氏
「アメリカの持っている知的なものを中国に盗まれたということですか?」
反町キャスター
「そういう意味です」
野口氏
「それは先ほど言いましたけれども、1番大きなことは、中国からの留学生に教育したことですよ、間違いなく」
反町キャスター
「あっ、それ?」
野口氏
「知財権とは言いませんが、知的な財産、最大なものですよ。まさに問題はこれまでアメリカがまさに、大使がおっしゃるように、グーグルとか、アップルとか、そこの分野にシフトして、それで成長してきたわけです。それがアメリカの強みですよ。アメリカの強みは今や自動車でもないし、鉄鋼でもないですよ。情報産業ですよ。ところが、中国がその分野で実力を蓄えてきて、今や特に最先端であるAIの分野においてアメリカを凌駕するのではないか。5年で逆転すると言われているんです、だから、そこが1番大きな問題ですよ」
反町キャスター
「その流れは、でも、たとえば、留学生の規制措置とかなかなか難しいことを考えると、止められない?」
野口氏
「止められない」
反町キャスター
「止められないですよね」
野口氏
「止められないですし、止めるべきではないです。それは両方ともwin‐winなのですから。ただ、そこで問題になるのは、アメリカが問題にしているのは、中国の特殊な社会構造があると。つまり、AIの発展のためにはビッグデータの利用が必要です。ビッグデータというのは個人情報ですよ。個人情報をどれだけ集めてそれを利用するか、それによって技術の進歩が決まるんですね」
反町キャスター
「なるほど」
野口氏
「アメリカでは、そういうことをやることに対して反対があるんです。この間のフェイスブックがそうでしょう?フェイスブックは…」
反町キャスター
「はい、大統領選挙に使われた話ですよね?」
野口氏
「大統領選挙。つまり、個人情報を使ってはいけないという考えがある。それはアメリカだけではなくて、ヨーロッパはもっと強い。ところが、中国の場合にはそういう個人情報をドンドン取り入れて、しかも、それに対して、それが良くないという国民感情がないんですよ」
反町キャスター
「国家統治のツールとしてのAIですよね?」
野口氏
「そうだし…」
反町キャスター
「それに対する異論がない?」
野口氏
「そう、異論がない。つまり、中国の国民というのは監視カメラで監視されて誰かわかっちゃっても、それは社会が安全になるからむしろ良いことだという考えが強いんですね。非常にそういう意味では、特異な社会です。そういう特異な社会がAIという最先端の技術に対して有利に働いてしまう。では、どうしたらいいか。だから、これは非常に深刻な問題です。だから、つまり、それは西欧的な価値観を中国に要求するしかないので」
反町キャスター
「それは、でも、中国はそれを飲みませんよね?」
野口氏
「飲みませんね」
反町キャスター
「だって、それは有利に働いているのだから」
野口氏
「そうです、その通りです」
反町キャスター
「なぜそっちの土俵に移って苦戦しなければいけないのと?」
野口氏
「その通りです。だから、非常に深刻な問題が現在、生じているんですよ、そこでは。それが先ほど申し上げたことです」
丹羽氏
「…世界中の問題。イギリスも、ロシアも、全部」

丹羽宇一郎 元駐中国日本大使の提言 『ポジティブ・リスト→ネガティブ・リスト 縦割→総合へ』
丹羽氏
「現在、日本の縦割りというのが科学技術の進歩から経済の進歩、相当、蝕んでいるだろうと思うんですね。それで、日本はポジティブ・リストと言いますのは、コレとコレ、コレはやっていいよ、他はやってはいけない。と言うことは、上司に相談しないと何にもできない、決められたことしか、ネガティブ・リストにしろということは、コレはやってはいけません、あとは何をやってもいいということで。医学の勉強をしている人が、農業とか、あるいは工業の、いろいろな発見をしたり、あるいはそういう発明をした場合には、ちゃんと研究をさせてくれるわけですよ。日本の場合は、コレとコレ、コレという、その枠を外れると予算もくれない、何も…ない。だから、技術が進まないです、いちいち上司に相談しないと、予算がない、やめろ、ということ。これを縦割りから総合という方向へ変えないと日本の経済は進歩しません」

経済学者 野口悠紀雄氏の提言 『フロンティア』
野口氏
「フロンティアということですね。フロンティアというのは、ビジネスのフロンティアとか、知識のフロンティア、技術のフロンティア。これが現在、非常に拡大しつつあるんですね。特にAIとか、ブロックチェーン、そういう情報技術の面で広がりつつあります。それをいかに現実化するかということが、日本の将来にとって大変重要なことだと思います」