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2018年3月6日(火)
櫻井よしこ×田中均 北朝鮮問題と9条改正

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長
田中均
元外務審議官 日本総合研究所国際戦略研究所理事長

韓国北朝鮮合意 来月末南北首脳会談
竹内キャスター
「昨日、平壌に派遣され金正恩委員長と会談した韓国の特使が今日午後、帰国。今後、特使が訪米し、トランプ大統領に北朝鮮訪問の結果を報告する見通しです。一方、自民党内で議論が進められている憲法9条改正は、今月中旬にも具体的な条文案が提示される見通しです。今夜は今後の朝鮮半島情勢と憲法9条改正について徹底的に議論します。まず今入ってきました速報で、来月末に、板門店での南北首脳会談で合意というニュース。まずは田中さん、このニュースを見ていかがでしょうか?」
田中氏
「意外に早い展開だと思います。果たして米国との関係の調整はついているのかどうかということもあると思いますし、これからいろいろなことが起こり得ると思いますね。たとえば、4月に予定されていた米韓合同軍事演習というのは、たぶん延期、再び延期されるということになるのかもしれない。それから、首脳会談をやればいいというものではないから、具体的に、いったい何の目的で何をするかということについて、あらかじめ、いろいろな話し合いがされているのかもしれないですね。私自身、南北融和が進んでいくということは同一民族だし、これは歓迎すべきことだとは思うが、しかしながら北朝鮮の思惑というのは明らかだから、要するに、制裁レジームに穴を開けようということなので、これに乗るわけにはいかないし。制裁というのは、南北首脳会談があろうが、なかろうが、きちんと維持をしていくということが必要だけれども。同時にこういう南北の流れの中に、問題の解決策を求めていくということが大事なことだと思います」
反町キャスター
「田中さん、今、早いと言いましたけれども…」
田中氏
「はい」
反町キャスター
「早い理由は、どっちが急いだと見ていますか?」
田中氏
「それは明らかに北朝鮮でしょうね」
反町キャスター
「なぜですか?」
田中氏
「彼らの思惑というのは、私は、制裁が相当効いていると思う。相当効いていて、このままだと活路がないよと。従って、1番弱いリンクというのは韓国だから、そこに穴を開けようとしたのだと思うんです。そうすると、その流れを早く一定の軌道に乗せておくというのが北朝鮮の思惑だと思いますし、韓国も文在寅大統領は国内的にこの面で進んでいくという跡を示すという意識が非常に強いのではないでしょうか。ですから、両方なのでしょうね、たぶん、両方」
竹内キャスター
「櫻井さんはいかがでしょうか?」
櫻井氏
「4月末にということを今日発表したという意味においては、確かに早いと思うのですけれども。このタイミングは、しかし、十分あり得るということも考えられますね。北朝鮮の側からすると合同軍事演習だけはしてほしくないわけですよね。それをさせないためには、南北が話し合いをしたり、いろいろなことをしているうちはしないと。だから、オリンピックの間はしませんよということも言いました。だから、金正恩さんの方の、いわゆるアメリカの軍事力に対する恐怖心というのは、私達の想像を絶するものがあると思います。自分の命を狙われるわけですからね。それと、経済制裁、ご指摘があったように、非常に効いているのだろうと思いますね。文在寅さんの、実は、彼の憲法改正の動きとか、私はよくよく調べてみたら、これは西岡力さんという、朝鮮問題については非常に詳しい方にも、教えていただいたのですけれども、実は昨年の8月ぐらいから、国会に憲法改正のための特別委員会をつくっていて着々と進んでいるんですね。だから、こういったことも早くやりたい。文在寅さんの方は早く憲法改正をやって、南北の連邦政府と言いますか、その2つが1つになる過程を早く進みたいという思惑があるのでしょうし、なるべくアメリカの機嫌を損なわないようにしながらも、アメリカの考える強硬手段はとらせたくないとか、いろいろな思惑が韓国の側にもありますから。この両者の思惑が一致したのだと思いますね。それから、今回、代表が政策担当の人と国情院関係の人と2人で行きましたね。この政策担当の秘書というのはアメリカのマクマスターさんのカウンターパートですよ。国情院の方は北朝鮮のカウンターパートですよね。そうすると、アメリカとも十分に、アメリカにとって十分かどうかはわかりませんけれど、韓国の方はアメリカと十分に協議をしながら、この動きをしているという認識ではないかと思いますね」
竹内キャスター
「『北朝鮮は朝鮮半島の非核化の意志をはっきりさせた。北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消され、北朝鮮の体制の安全が保障されるなら核を保有する理由がないことを明らかにした』と」
反町キャスター
「櫻井さん、これはどうですか?」
櫻井氏
「金正恩が、今年の1月に韓国にいるチュチェ思想派の共和国側の人間が、青瓦台を掌握したと総括したと言うんですよ。これはどこでと言われると困る情報ですけれど、かなり確かな情報ですね。その中で韓国を、青瓦台を掌握した、つまり、1つの政府でという、どういうふうに南北を統一するのかと言ったら、ベトナム方式でやると言うんですって」
反町キャスター
「どういうことですか?」
櫻井氏
「ベトナム方式というのはベトナム戦争、南北ベトナムが戦っていて、パリ協定を結んで、パリ協定に基づいてアメリカが引き上げたわけでしょう。そこに戦車が南に入っていったわけです。つまり、アメリカを撤退させるということですね。だから、その非核化とか、軍事的な脅威が解消されたら、核も要りませんとか…」
反町キャスター
「これは、在韓米軍の撤退という意味で言っているのですか?」
櫻井氏
「いや、それを狙っていることも、なきにしもあらずだろうと思います。これがもし北朝鮮の発言であったとしたらですよ。それもその1つの目標だと考えておかなければいけないわけで。だから、休戦協定でなくて平和協定にしたいと言っているわけでしょう。だから、いろいろなことを考えなければいけないです。本当に、北朝鮮の言うことというのを言葉通りに受け止めておくとこちらが火傷しますので。いろいろなことを考えておかなければいけない。それから、もう1つ、ちょっと取材してきたんですけれども、文在寅さんが、かなり憲法改正に力を入れていて、これは先ほどもチラッと触れましたけども、昨年8月から実は特別委員会というのをやっていて、委員会の諮問委員を担っている人達を見ると、ほとんど全部左翼ですよね。現在、日本でも憲法改正のことが話題になっていて、あとでまたこれも話題になるのでしょうけれども、日本の場合は本当に一部をちょっと変えると、実質的な変化になるかどうかわからないけれど、何かを付け加えるみたいな感じですけれど、韓国で起きていることは現在、明らかにこれは全面的な憲法改正です。ポイントをいくつかちょっと言いますと、韓国憲法の前文とか、それから、第4条が、韓国は自由民主主義の国であるとか、いろいろ書いているのですが、ここから『自由』をとる、民主主義だけにしようと。これは、人民民主主義でもいいわけですね、北朝鮮は朝鮮民主主義人民共和国ですからね。『自由』をとる。それから、国民の権利という権利条項というのがありますよね。これを、『国民』という言葉を『人間』にする、人間の権利にすると。これは人間の権利というのは主体思想、金日成の、あれは人間中心主義ですよ、その言葉のうえでは。それから、もう1つは『分権国家』という言葉を入れようとしている。分権、地方分権ではなくて『分権国家』。これは南も北も『分権国家』。だから、連邦政府をつくって1つの国にするということですね。それから、『勤労者』という言葉は全部とって、『労働者』にする。それから、これと合わせて、私は、韓国の教科書が書き換えられているということを知っていたのですけれども、小学校レベルの歴史教科書では全部、書き換えが終わってしまっていて、朝鮮戦争で北朝鮮が韓国に攻めてきたという記述がなくなってしまっているとかですね。そんなことを考えると、かなり文在寅さんは昨年の8月から、この委員会をつくって、着々と南北が北朝鮮の主導の下に、北朝鮮が指導力を発揮して統一するという形でないとしても、南北朝鮮がある種の主体思想的な考え方の下に、社会主義的な考え方の下に、1つの国という形に向かっていく可能性は、この動きから見れば、あると思いますね」
反町キャスター
「田中さん、ここの発言をどう読まれますか?」
田中氏
「1番上、『北朝鮮は朝鮮半島の非核化』と言うでしょう。常に我々は『北朝鮮の非核化』だったのですが、彼らは必ず『朝鮮半島の非核化』。それは何を意味するかと言うと、アメリカは、それは戦術的な核がなくても、いろいろな意味で核の脅しを使っているというのが彼らの論理ですよ。だから、『朝鮮半島の非核化』に込められた意味は、北朝鮮だけではなくて、アメリカの問題もあると言い得る根拠を彼らはつくっているということですね。それから、『北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消され』、これはいったい誰が判断するのだと。我々は、我々が北朝鮮を脅しているわけではないのだから、軍事的な脅威はないよという。それから、我々にとって、米韓相互防衛条約というのはなくなると困るんです。だから、彼らは自分達の解釈に従って、まだ軍事的な脅威があるではないかということを言って、核を保有するという余地があるということですね。それから、『体制の安全が保障される』、これは繰り返し、繰り返しやってきた。体制の安全を保障されるために、一、平和条約をつくる、今は停戦合意しかないので平和条約をつくる、一、日米が国交の正常化をする、それから、米国が先制攻撃をしないという約束をする、こういうことですね。こういうことが果たして十分かどうかという議論をずっとしてきたんですよ。だから、彼らが自分達の体制の安全がまだ保障されていないということを言うことによって、核を保有するという余地も出てきているということですよ。だから、これは言葉だけで。私は、だからと言って、いや、これは頭から撥ねつけたらいいということを申し上げているわけではない。だけど、要は、信頼性があるかどうかですよ。この信頼性ということは、これからのプロセスで確認をしていかなければいけないし、具体的にそういう余地を生まないように、手立てを加えていかなければいけないと。私は、櫻井さんのように、文在寅政権が北朝鮮のペースに乗っかって統一をするようなことになるとは思っていないですよ。思っていない、私は。と言うのは、韓国と北朝鮮というのは明らかに国のレベルが違うので、北朝鮮のようなことが、韓国の国民が幸せだと思うとはまったく思わないわけですよね。だから、そういう意味で、韓国には少なくとも民主主義体制はあると思うし、国民の意思というのは、そんなに簡単に北朝鮮の思惑に乗るということではないと思います。だから、これからやらなければいかんのは、そういう言葉の問題ではなくて、具体的に…」
反町キャスター
「言葉の問題ではなくてと、たとえば、この発言とか、もう1つこちらのこれもそうなのですけれども、こういったことを特使が会見で言うと、僕らはこの言葉の解釈で、何を意味するのか。その言葉を信じさせたいと思うから特使が会見するのだし、政治はそれを発表するのだし、それは信じられないんだよという、この話になっちゃう?」
田中氏
「うん、だから、北朝鮮は満足がいく合意ができたと言っている。韓国が何を言ったかと言うと、1つの結果はつくりましたと、それは必ずしも、何と言いましたか、失望ではないというようなことを言った。要するに、北朝鮮とは同じ言葉は使わなかったわけですよね、韓国は。いや、これは満足がいく合意だとは言わなかった。なぜ言わなかったのかと。こういう言葉というのは、過去にも言っているからですよ」
反町キャスター
「北がね?」
田中氏
「うん。それを確実にすることがこれからの使命である、ということですね」
反町キャスター
「なるほど」
田中氏
「だから、要するに、言葉を、その言葉だけで信じてはいけないということです」

今後の南北統一への動き
竹内キャスター
「韓国の文在寅大統領の演説ですが、昨年の8月18日、金大中元大統領の命日にしているものなのですが、こちら、田中さん、文在寅大統領が目指している連邦政府とは具体的にどういったものなのでしょうか?」
田中氏
「これは、いわゆる3段階論と言っているヤツだと思うのですけれども。最初はEU(欧州連合)みたいに国家連合として韓国の連邦…、韓国の政府と北朝鮮の政府が並立している、それで国家連合をつくるという。2番目は、1つの連邦政府ではあるけれども、北朝鮮の地区に政府がある、韓国地区に政府がある、地方政府ですね、そういう形。それから、3つ目は、完全な統一ということです」
反町キャスター
「田中さん、その3段階論というのは金大中さんが2000年の頃に言ったやり方が、現在、2018年ですよ。18年経って、同じものを目指しているんですと、現在の大統領が言う? 18年間の間に、3段階統一論というものに対する、取り巻く環境は優しくなったのですか、厳しくなったのですか?」
田中氏
「それは厳しくなったでしょう。だって…」
反町キャスター
「それは、文在寅大統領はわかっていないっちゅうことですか?」
田中氏
「いや、文在寅大統領の自分の特色というのは、金大中、廬武鉉、自分、ということなのでしょう。だから、一種の理想を掲げているということであって。だた、実際の状況というのは、北朝鮮は核を持つようになった。ミサイルをこれだけ実験をするようになった。経済はウンと悪くなった。国民の自由というのはウンと束縛されるようになった。そういう国を相手に、いや、これは連邦というか、統合ができますと思うのは、周りの人はちょっとそれは無理だよねと思うとは思います」
反町キャスター
「なるほど。櫻井さん、この金大中大統領が言った統一3段階論をまたここで言い出している文大統領をどう見ているのですか?」
櫻井氏
「文大統領は、金大中の失敗の原因とか、廬武鉉の失敗の原因というのを、彼は一生懸命勉強したと思いますよ。だから、この3段階をそのままやるとは限らないと思いますね。あなたのご遺志に応えます、というようなスピーチの目標というのは、南北統一というものを、朝鮮民族の国家を1つにしてつくりますということではないかと思います。その時のつくる形、考え方とか、制度というものは自由韓国ではなくて、いわゆる北朝鮮タイプというか、北朝鮮は専制独裁という意味ではないのですけれど、明確に社会主義のあり方という国の形を目指しているとしか、これは思えないです。彼がやっていることからして。ですから、南北朝鮮を1つにします、その国のあり方としては、彼はこれまでの歴代の政権の中で正当性のある政府は3つだと言っているんです。金大中、廬武鉉、自分であると。朴正𤋮大統領とか、全斗煥大統領とか、これは全然正当性がないのだと。要するに、韓国の歴史というものは、彼らが言う日帝ですね、日本帝国主義にへつらってできた国家らしからぬものであるという価値観を、文在寅さん達は持っているわけですよ、歴然と。だから、これは本当に西大門の刑務所の跡で3.1の演説をしたんですよ。そこに何回、日帝という言葉が出てくるか。何回、朝鮮の人達が酷い目にあったかということが出てくるか。これを読んでいて、このような大統領なのだということを日本人は知っておかないといけないと思うのですけども。だから、朝鮮半島の、このような3段階ではないかもしれないけれども、1つの国にするということ、その国にした時の国のあり方というものは、現在の韓国とは全然違う、むしろ北朝鮮タイプの考え方なのだということを信じていらっしゃる。そのような方向に彼が現在、進もうとしている。これは日本にとっての危機だと思います」
反町キャスター
「アメリカは最終的に、その先に米朝交渉というものが視野に、韓国のお腹の中にあるとしたらですよ、アメリカはこの流れは歓迎するのですか?」
田中氏
「いや、彼らもステートメントで言っていますけれども、南北の対話自身は歓迎するんだと、支持するんだと。それは1つの民族の話だから、それは支持するんですよ。だけど、非核化という目的に対して、それを阻害するようなことであっちゃいかんのだということは明確にしていると思うんですね。だから、他の国から見れば、南北の統一とか、そういうことについて、私はある程度、おおらかな目で見てやった方がいいと思うんですね。1つの民族だから。だけど、非核化ということについては、揺らいではいけないから、南北の対話を進めることが非核化に支障が出てくるといったようなことにはならないようにしないといけないし、もともとこの文在寅さんが選ばれて、最初にアメリカに行ったんですよ。その時に、彼は特使を派遣したの。特使を派遣して、こういうことで米朝対話をやりたいという案をぶつけた、アメリカに対して。それは、要するに、入り口のところで核・ミサイル実験を凍結する、それから、米韓の合同軍事演習を凍結する、だけど、出口のところでは非核化に向けて進んでいくと、こういうことですね」
反町キャスター
「その評価を聞きたい、ダブルフリーズと言われたヤツですよね?」
田中氏
「…ダブルフリーズは入り口だけですよ、入り口だけ。だけど…」
反町キャスター
「評価は?田中さんの評価を聞きたいですよ」
田中氏
「それはうまくいかない、自分で経験してそう思うのだけれども。1つ1つ詰めていかないとうまくいかないと。だから、アメリカはバシャーンとやったんですよ、こんな非現実的なことを言っているようではダメだと言って、アメリカの圧力が韓国にガーッとかかったわけ。まさにTHAADもきちんとやらなければいかんと言って、中国と韓国の間がガーッと離れちゃったんですね。ですから、引き続き、アメリカはこういう非常に空想的なことについては、私は圧力をかけると思う。だけど、南北の対話が進むことについては、自分達は邪魔しないよと。だけど、非核化という目的を達成するまで圧力は緩めないようにしようねと。これが基本的なポジションだと思いますよ」

憲法9条改正のあり方
竹内キャスター
「ここから9条改正について話を聞いていきます。憲法9条は第1項に戦争放棄、第2項に戦力の不保持と交戦権の否認を規定しています。先月28日に開かれた、自民党憲法改正推進本部の全体会合では、党所属の国会議員から寄せられた100を超える意見について議論したのですが、その中の主なものがこちらです。大きく分けて2つ。9条2項の削除、9条2項維持、そのうえで自衛隊を明記、または自衛権を明記、または自衛隊と自衛権の両方を明記というものなのですが、櫻井さんはどの案を支持されますか?」
櫻井氏
「その前に、私もう自民党にちょっとしっかりしてよ、と思っていたんですよ。ところが、この28日の、自民党本部で行われた…」
反町キャスター
「憲法改正推進本部ですね」
櫻井氏
「…推進本部の全体会合、すごかったんですよね。150人ぐらいの議員が集まって。いろいろな部会は、出席した青山さんとか、いろいろな方々に聞いたのですけれど、部会に出る時というのは、ギリギリに行っても座る席があるのだけれども、全体会議は余地がなかったと。だから、30分ぐらい前に行って座る座席をとらなければいけないぐらい大変だった。いわゆる憲法のインナーグループと言われる人達が前に並んですごくいろいろな意見が出て、19人、20人近くが意見を述べ、まだ40人ぐらいの人の意見、手が挙がっていたのだけれども、時間切れになったと。大変な熱気に満ちていたということで、ここで憲法改正議論が1つ、弾みがついていくのではないかという印象を私は持ちました。これは私にとってはすごく嬉しいことなのですけれども。そこで、どの案を支持しますか、というご質問だったと思うのですけれども、これは今の現実を見るとおのずと絞られてくるのではないのかなと思いましたね。その時の議論を見ても、石破さんが2項を削除するということを新聞なんかでは、自分の案は取り下げてもいいのだ、とおっしゃったのですけれども、2月28日の全体会合ではかなり石破さんが理念的なことももう1回いろいろお話になったということでした。ですから、彼はこれを本当に、ご自分の案を諦めるのかどうかというのはまだよくわからない、その2項維持の中で、自衛隊か、自衛権か、それとも両方かというのがあって。全体の流れとしては自衛隊明記の方へいこうとしているのではないかという印象を持ちましたね。私はこの段階ではこの2項を維持するということに軸足を置くのであるならば、国民の皆さん方に何のために憲法改正するのですかと。国というもの、政府というもの、もしくは自民党・公明党、それから、憲法改正に賛成する政党は、別に国民を騙そうとしているのではなくて、国民の皆さんと一緒にやろうとしているんですよということを、本当にじっくりとわかってもらう機会にしなければいけないと思っているんです。だから、朝日新聞とか、毎日新聞とかがこの憲法9条に触れれば、また軍国主義の国になるとか、戦争をするためにやるのだ、みたいな議論をしているではありませんか。そうではないですよということを、きちんと国民の皆さん方、有権者の皆さん方に示していけるような内容にしないと、この改憲の意味はないと現在、私は思っているんですね」
反町キャスター
「基本的なことをまず聞きたいのですけれども、教えていただきたいという感じですけれども、自衛隊の明記と自衛権の明記というのはどう違ってくると我々は理解したらいいのですか?」
櫻井氏
「この自衛権というのは、自衛権の明記、これは青山繫晴さん達のグループが言っているのですけれども。憲法、これが1項ですよね、日本国民は侵略戦争をしませんよというのが9条の1項ですね。2項が、前項の目的、侵略戦争をしないために、この目的を達するために、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない、国の交戦権はこれを認めない。憲法改正をしたいと言っていた人達は、実はこの2項を削除したいと思っていた。だから、理論的な意味では、石破さんが正しいのですけれども。でも、これを削除するとなると、国民の方が疑問を持つわけですよ。また、持たせるように朝日新聞が書くわけです。そうですよね?結果として誰もこれを、2項を削除することで侵略戦争をしようとか、もしくは戦争をして人を殺そうなんて思っている人は誰もいないと思いますけれども。そのような誤解がもう沁み通っているのであるならば、この国は民主主義の国で国民の意志によって決まる国ですから、国民の皆さん方が疑問を持つようなことはこの際しませんということを示すために、自衛隊だけを加憲しましょうと。今のご質問は自衛権を書くとどうなるかということですね。この自衛権の書き方は、この前項2つ、前項は、その条項は、自衛権の発動を妨げないようなものとするというような文言になっていたと思うんですよ。そうすると、いや、自衛権の発動を妨げないと言ったら、自衛権とは何?の話が出ますよね。集団的自衛権なのですか、個別的自衛権なのですか。集団的自衛権も個別的自衛権も国連憲章第5条によって全ての加盟国に認められているにも関わらず、我が国にも認められているにも関わらず、我が国はここのところの議論で集団的自衛権は制限しないといけない、ダメだとか、いろいろなことが安保法制の時にありました。あの時の議論が蒸し返されるのではないかと。あの時の議論、反町さん、何が集団的自衛権で、どういう場合に集団的自衛権になって、どこが個別的自衛権との線引きだかおわかりになりました?」
反町キャスター
「いや、わからなかったですよ、僕は…」
櫻井氏
「わからないでしょう?頭の良いあなたでさえわからない」
反町キャスター
「いえ、それは…、はい、どうぞ…」
櫻井氏
「田中均さんだって、わかっていらっしゃるかもしれないけれども、うまく説明するのは難しいと思いますよ、これは」
反町キャスター
「振る、のはやめた方がいいと思います…」
櫻井氏
「いやいや、難しいと思いますよね。あれで本当にきちんと説明できたのは誰か?安倍総理お一人だったと思いますよ。本当に一生懸命説明なさって、聞いている時はよくわかるのだけれど、それを繰り返そうとなると、どうだったかなと私だと思っちゃいますよ、私は頭が良くありませんから。そのような議論をもう1回、繰り返すのですかというのがあると同時に、疑惑みたいなものを、また、生ましめるのではないかと思うんですね。だから、そうであるならば、自衛権とか、発動というのではなく、自衛隊の方が、自衛隊は国民の99%の方々が認めているのだし、自衛隊に対して疑問を持つ人はいないのだし、また、我が国が必要最小限度の実力です、戦力ではない、実力としての自衛権を行使する存在としての自衛隊は認められているわけですから。その認められているものを、憲法にただ文言として書くということは何ら問題がないわけですから。こっちの方が、いわゆる抵抗がなくていいのではないかと思います」
反町キャスター
「田中さん、自民党の中の9条をめぐる議論をどう見ていますか?」
田中氏
「大変申し訳ないですけれど、私はいったいどういう目的があって、何をやっておられるのかまったくわかりません。なぜこんなことを申し上げるかと言うと、たとえば、加憲と言うのですか、第3項に自衛隊を明記するということであったにしても、仮に国民投票で打破されても、いや、自衛隊は合憲だ、何ら変わらないということをおっしゃっている。何のために、それでは9条改正をされるのかということについて、私にはまったくわからない。いったいどういうビジョンをお持ちで、この国をどういう形にするかということについて、私には何も響いてくるものがない。ましてや外、他の国の人が、こういう説明を受けて納得するかと思ったら、まったくそういうことはないと思うんですね」
反町キャスター
「諸国の話はあとで聞きましょう。そうすると、国内的な論議において意味がないと言うのは、たとえば、総理が言われる、自衛隊をキチッと明文化することによって、自衛隊の隊員の子女のお話とか、隊員の士気の問題であるとか、法的な建つけという、そこの部分にはあまりメリットを感じない?」
田中氏
「私が、外務省にいて、いろいろな形で日本の安全保障政策に関与してきましたけれども、私達が思ったのは、憲法9条というのは、その体現する平和主義というのは得難いものだと。これをベースにしつつ、だけど、環境が変化しているから自衛隊の役割、日本の安全保障政策というのは変えていかないといけない。だから、憲法の範囲内で、できるだけ時代に合った形で自衛隊の役割を規定していこうという試みをずっとやってきたわけですよ。1996年の日米防衛協力のガイドラインとか、それから、新しい安保法制もそうだと思う。それで、集団的自衛権の一部行使ですら、現在の憲法下で、それで法律でやったわけですね。これに対して諸外国の大きな反対があったかというと、それはそうではないですよ。なぜそうではなかったか。それは基本的な憲法、これが平和主義の下での憲法であるということが1つ安全弁になっているわけですね。なぜそれを弄ろうとされるのか、私にはわからない。自衛隊の役割の拡大というのは、自衛隊は突然、集団的自衛権の行使ができるわけではないですよ。たとえば、PKO(国際連合平和維持活動)の部隊にしても、それから、諸々の自衛隊の活動とか、それから、周辺事態というか、まさに集団的自衛権の一部行使の具体的なケースにおいて果たして自衛隊が現在、現実に訓練をされて、本当にその権限を行使されるような状況になっているかどうか。むしろそれをやっていくのが先なのではないかと思うんです。せっかくこの平和憲法の下で自衛隊として役割を果たし、国民の多くの人、それから、政党も含めて、自衛隊は合憲だということですよね、なぜ変えちゃうのですか?」
櫻井氏
「そもそも論をちょっとお話申し上げたいと思うのですけれども。田中均さんは自衛隊に対して高い評価をなさったけれども…」
田中氏
「評価していますよ」
櫻井氏
「在外公館で武官がどう扱われているのか。これは、外務省は本当に悪いと思いますよ、外交官は。自衛隊から出向して外務省に所属し、在外公館に武官として行くわけですけれども。日本国に対する報告をするのも、全部、外務省を通すわけですね。それはお役所の決まりなのでしょうけれども、各国々の武官の扱い、これは現場に行ってみればわかりますけれども、外交官よりも下の位置ですよ、扱われ方が。身分は、もしかして同じかもしれないけれども。本当に私はどの大使館に行っても、そんなに世界中行ったわけではないけれども、行ったところで、自衛隊の方、気の毒だと思いましたね。このことにある意味、象徴的に凝縮されているように、自衛隊というものはきちんとした場所を得ていないわけですよ。国民は9割以上が評価していますよ。だけども、国民が9割以上評価をしているのと、誰も違憲だと言わないとおっしゃったけれども、憲法学者の多くが違憲だと言っているわけですよ。そうでしょう。東大の法学部から、宮澤俊義さんから始まるところから、そのお弟子さん達の中で、自衛隊が合憲だと言っている人の方が少ないですよ、憲法学者に関して言えば。どうしてこんなことになるのということを自衛隊は感じると思いますね。何と言っても、任務に服する時には身命を賭して国民の負託に応えますと言って、命がけでやるということを宣誓して、自衛隊になっている。本当にその通りに、1800人もの人達が殉職しているんですよ。1800人ですよ。1800人の自衛隊員が殉職して、命を賭け、その場その場で自分の責務を果たす。この人達をどうしてもっときちんと位置づけてやることができないのかというのは、私は安倍総理がおっしゃっていることは非常によくわかります。これを加憲として憲法の中に書き込んだからと言って、自衛隊の役割は変わりませんとおっしゃっているわけですから」
反町キャスター
「そう言っていますね」
櫻井氏
「ね?変わらないのだけれども、でも、ちゃんとこれは憲法によって認められる、その地位がきちんとした形になる、これだけでも大きいことだと思いませんか。だから、自衛隊の立ち位置というものをきちんと国として認める、現在は法律で担保されていますけれども、憲法にないんですよ。だから、そこのところが、心情的に1つあると思います」
反町キャスター
「田中さん、櫻井さんの意見をどう感じますか?」
田中氏
「自衛隊の地位というのは当然、国のために生命を賭して、がんばってもらっているわけだから、当然のことながら外交官より下ということはあり得ないわけで。当然、意識を変えていかなければいけない、それはそうですよ」
櫻井氏
「でも、田中さん、事実上、大使館に行ったら、あの方達がどんなに肩身の狭い思いをしているのかというのが…」
田中氏
「うん、それは変えなければいかん」
櫻井氏
「外から見ると本当によくわかる」
田中氏
「それは是非…」
櫻井氏
「私はもうそれは、声を大にして言いたいですよ。是非、変えてください」
田中氏
「うん。でも、それは憲法で書くということなのかね」
櫻井氏
「関連しているということですね」
田中氏
「もし憲法で書いて、それで国民投票で否定されたら、それはどうなるのですか?」
反町キャスター
「なるほど。それは、でも、田中さん、櫻井さんの説明だと国民投票で、言葉が違っていたら、ごめんなさい、国民投票で負けないためのギリギリの案が、1、2を残して自衛隊明文化という、この選択肢だという、ここの部分に対して田中さんは、理解は示されるのですか?」
田中氏
「私は憲法というのは国の基本法であり、日本が戦後70年の時代を生きてきて、この平和憲法があったおかげで、いろいろな意味で私は価値が大きかったと思うんですよ。これを変えていくという議論をする時には、日本はこういう国でありたいというビジョンが必要ですよ。そのビジョンが、私には見えないわけですよ。いや、憲法の自民党の議論がそれほど熱を帯びているとおっしゃったけれども、いったいこの国をどうしようとしているのかがわからない」
反町キャスター
「前文から手をつけた方がいい?」
田中氏
「いやいや、だから、そういう真正面から議論をして、場合によっては、いや、これはもう時代が変わったのだから…」
反町キャスター
「そこです」
田中氏
「うん、普遍…、集団的自衛権も含めて、もう1回考えましょうよと。それで、もし集団的自衛権が行使できるようになると日米安全保障条約も片務的な条約ではなくて、相互的な条約にしましょうと。そういう議論をされるのだったら、それに賛成するのか、どうかは別にして、それは1つの考え方だなと思いますよ」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言 『現実を見る』
櫻井氏
「『現実を見る』。現在、日本の周囲の状況というのは、北朝鮮問題もそうですし、韓国もそうですけれども、本当に大きく変わっていますので、現実を見ないと日本が現在のままでいいかどうかということもわからない。現実をきちんと見ると日本も自分自身で国を守る、国民を守るという制度、それから、力を持たなければいけないということに気がつくと思うんですね。だから、とにかく国際政治の中で埋没しないよう、ちゃんと民族として生きていけるように、国民を守れるように、現実を見ることが大事だと思います」

田中均 元外務審議官の提言 『ビジョン』
田中氏
「憲法というのは短期的なものではなく、中長期的な国の基幹ですから、政治家はビジョンを語ってほしい。どういう国であるべきかというビジョンの下での憲法改正であってほしいと思います」