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2018年3月2日(金)
米国発『新貿易摩擦』 中国の『対抗手段』は

ゲスト

阿達雅志
自由民主党外交部会長
細川昌彦
中部大学特任教授
西濱徹
第一生命経済研究所主席エコノミスト

トランプ『通商政策』の余波
竹内キャスター
「アメリカのトランプ大統領は1日、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す輸入制限措置を発表しました。来週にも正式決定すると見られていますが、中国との新たな貿易摩擦が起きる要因となるのでしょうか。今夜は、トランプ政権の通商政策を検証、米中貿易戦争の行方を探るとともに日本の対応について考えます。トランプ大統領は『鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課す』という、輸入制限措置を発表しました。来週にも正式決定しますが、細川さん、いかがでしょうか?」
細川特任教授
「ポイントは、僕はこのトランプ政権というのは、経済合理性よりも中間選挙だということだと」
反町キャスター
「なるほど」
細川特任教授
「要するに、彼の頭はいかに中間選挙、さらに言えば自分の再選、そこにしか頭にないわけです。そうすると、ラストベルトの労働者に、彼の岩盤支持基盤ですよ、そこにアピールする。特にこれは選挙公約でしたから、俺は達成したのだとアピールさえできればいい。だから、これによってアメリカの鉄鋼産業が再生するとはこれっぽっちも思えません。これによって、稼動率が急に高められるような工場ではないです。しかも、日本とかが供給している鉄鋼製品は特にそうですけれど、自分達ではつくれないわけです」
反町キャスター
「はい、質が違うんですよね」
細川特任教授
「そういうことを考えれば、真面目にこれを制限していこうという発想ではないと」
反町キャスター
「いわゆるラストベルト、ペンシルベニアとか、あのへんのところの、製鉄、斜陽とは申し上げません」
細川特任教授
「はい」
反町キャスター
「あまり高品質な鉄ができない製鉄所を守るための、今回の鉄鋼25%だとすれば、関税をかける対象の鉄というのは、そういうクオリティの鉄を締めるはずですよね?」
細川特任教授
「うん、はずです」
反町キャスター
「その通りいくのだったら日本からの対米輸出のダメージは大きくないはずですよね?」
細川特任教授
「大きくないと見ています」
反町キャスター
「この見立てはどうですか?」
阿達議員
「これは内政問題として、貿易の話をしていますから。アメリカの特にラストベルトの、そういう製造業向けにどういうメッセージを出すか、そういう観点で、たぶん品目も選ぶと思います」
反町キャスター
「いかがですか?」
細川特任教授
「うん、そうだと思いますよ」
反町キャスター
「その通りですか?」
細川特任教授
「はい」
反町キャスター
「そうすると、見栄を切っているだけに見えちゃうんですよ」
細川特任教授
「うん」
反町キャスター
「実際のアメリカの製鉄業や鉄を利用する産業に対してのメリットや、デメリットというものをあまり考えずにボンと大見栄を切って大向うに対して言っているだけという…」
細川特任教授
「いや、はっきり言えば、そういうことでしょう。そういうことだと…」
反町キャスター
「まずいですよね?」
細川特任教授
「いや、まずいというか、それがこの政権の特色ですよ」
反町キャスター
「そういうことでよろしいのですか?」
阿達議員
「ええ。見栄を切って、結局、その分ですね、アメリカでモノの値段が上がるわけですよ。インフレになるわけですよね、当然」
反町キャスター
「そうですよね。だって、モノ不足になるわけだから」
阿達議員
「ええ。だから、アメリカで株が下がったわけですよ。インフレになっていく」
反町キャスター
「トランプさんは自分で自分の首を絞めているのではないですか?」
阿達議員
「考え方によってはそうですけど。でも、彼はもともと貿易だ、何だについても、プラスマイナスを考えて、アメリカの仕事を失うマイナス、それと安いものが入ってくるプラス、どっちを選ぶかということをテーマにしていたわけですよ」
細川特任教授
「と言うよりも、仕事を失うというよりも、それが本当に仕事を失うことになるかどうかより、そういうことを守っているという姿勢、それから、選挙公約を達成しているという姿勢、これを出すというのが目的ですよ」

秒読み『鉄鋼・アルミ輸入制限』
反町キャスター
「トランプ大統領のアルミと鉄に対する税、関税強化策、まだ提案ですけれども、その話を受けて、中国外務省の華春瑩副報道局長はこういう会見を今日やっています。『自国の利益のために、他国に損害を押しつけるべきではない。もし各国が米国のようなやり方を模倣すれば、疑いなく国際貿易秩序に重大な影響を与える』。中国が、こういう…、どうですか、細川さん?」
細川特任教授
「いや、セリフはそう言うでしょうね」
反町キャスター
「でも、今回の話を聞いて、華春瑩さんの話を聞くと、この話は筋が通っているように見えちゃいません?」
細川特任教授
「筋は通っていますよ。だから、相手方に筋が通ることを言わせちゃうというところが現在のアメリカの政権の問題だと思うんですよ。ただし、中国自身も非常に問題なことをいっぱいやっていても、そこは口を拭って、人のことをこうやって、しゃあしゃあと言える状況をつくっちゃっているということが問題だと思いますね」
反町キャスター
「西濱さん、いかがですか?中国、華春瑩副報道局長の発言…」
西濱氏
「昨年のダボス会議ですか、習近平さんが自由貿易を、共産主義国家のトップが言うという、非常にむずがゆいような話でしたけれども。ただ、そういうことを言って、どちらかと言うと称賛を浴びたわけですよね。裏でやっていることは、いや、確かに中国は問題があるけれども、どうも表ではちゃんと言ってくれていると。今回も、いや、アメリカはトランプさんがああいう形でいろいろとやるから、中国がやっていることが何か実しやかにキレイに見えてくるという。善くも悪くも、本当に中国がうまいこと見せるためのマッチポンプにトランプさんがなっちゃっているのかなという感じはすごくしますね」
反町キャスター
「西側・東側というか、自由貿易を標榜する国々の間で、西濱さん、アメリカという国に対する信頼性を毀損する状況にまでなりつつあると感じますか?」
西濱氏
「非常に感じるのはアジアの国々、私はよくアジアを見ているのですけれども、東南アジアの国々でも中国になびいて、アメリカからちょっと距離を置こうよ、みたいな話になりつつあるというのは非常に怖いですよね」
細川特任教授
「西濱さんがおっしゃったアジアの問題と、もう1つ、あると思うのは、ヨーロッパだと思いますね。現在、何が起こっているかと言うと、米欧の亀裂が起こっているわけです。そうすると現在、中国がこういう言葉ではキレイな言葉を言っていましたが、やっていることは市場経済を歪める方向にすごく、習近平政権はシフトしているわけです。そうすると、そこに対して牽制していく、タガをはめていくためには米欧がしっかりと、日本と一緒になってタッグを組むという仕かけが1番大事ですよ。その大事な時に、アメリカがこういうことをやっちゃうと、ヨーロッパはヨーロッパでアメリカに対して…」
反町キャスター
「文句を言いますわね?」
細川特任教授
「文句を言わなければいけない状況になっちゃって、米欧の亀裂ができている。これは中国にとってみたら、非常にありがたい状況と映っちゃうでしょうね」
反町キャスター
「阿達さんはどう感じているのですか?」
阿達議員
「アメリカの政治に対する不信感というのがすごく出てきていると思うんです。ただ、その一方で、アメリカ企業というのは、政府が何を言おうが従来通り自由主義経済をやっているんですね。一方、中国というのは、政府が何を言おうが中国企業は国営企業がほとんど力を持っていますから、全然違うことをやっている。だから、政治と経済が、それぞれの国でやっていることがバラバラになってきている、そういう感じがします」
反町キャスター
「それはアメリカに限らずという意味で言っているのですか?」
阿達議員
「アメリカと中国を見た場合にはそれぞれがバラバラになっている。その点が、まだ日本とか、ヨーロッパというのは、比較的、政治が言うことと経済の動きは似通っていると。その1つの理由というのは、アメリカの場合、アメリカ政府が言っていることと、多国籍企業の利害が全然違ってきているんです。そこが非常に大きな理由でもあると思う。トランプさんがあくまで言っているのは、自国の企業というのは、自国内に工場を持っている製造業ですよ。サービス業は、彼は嫌いですから。だから、どうも偏ったメッセージばかりをトランプさんは発信しているという感じはします」
細川特任教授
「オールドエコノミーの社会にしか、彼はコミットしていないんですよ。ニューエコノミーの世界、IT(情報技術)とか、そこは彼の視野の外にあるわけ、と見た方がいいのではないのですか」
竹内キャスター
「トランプ大統領の長女イヴァンカ氏の夫で、外交に深く関わるクシュナー大統領上級顧問が、最高機密に触れることができなくなったとアメリカのメディアが報じました。クシュナー氏は中国とのパイプを持つ人物として知られています。阿達さん、今回の輸入制限などの動きと連動しているのでしょうか?」
阿達議員
「いや、私は、これは、むしろクシュナー上級顧問がロシアゲートとか、いろいろなところで絡んできた、また、そこで必ずしも全てをちゃんと明かしてこなかったというところで、セキュリティ・クリアランスがとれなかったということであって、今回のこの動きとすぐにつながるものではないと思います」
反町キャスター
「クシュナーさんがそういうアクセスを遮断されることによって、何か影響が出てくる可能性があるのですか?」
阿達議員
「私はそんなに感じないですね」
竹内キャスター
「細川さんは?」
細川特任教授
「現在、政権圏内の力学が、特にホワイトハウス中心にどうなっているかですけれども、対中穏健派と書いていますよね、このコーンさんが、クシュナーさんと、これは非常にある意味で現実主義というか、グローバリストですね、こちらのグループは。それに対して対中強硬派、かつていたバノンさん、ナバロさんという学者で、『米中もし戦わば』という本を書いた有名な対中強硬派の人ですけれど、この人とか、これが対中強硬派ですよ。それで、この2つのグループが当初、この1年間を振り返ると、ナバロさんは政権プロセスの中で非常に、トランプさんに対中強硬の発言をさせた張本人ですね。それが、この人が、だから、国家通商会議委員長で当初は勢いがよかったんです。ところが、すぐに左側の穏健派、こちらが力を持ちまして。クシュナーさんが、コーンさんと一緒になって、コーンさんというのはもともとゴールドマンサックスにいた人ですので、非常にグローバリストですよね。そうすると、クシュナーさんも、そういうビジネスの観点から、というので、実は昨年の4月の米中首脳会談、この時点では、このグループの方が力を持っていたわけですよ。ロスさんもそれに従って、例の『100日計画』をつくって、米中間で合意をしたというのは4月でしたよね。その頃は穏健派のグループが力を持っていたわけです。ナバロさんは結果、格下げになって、コーンさんの部下になっちゃったわけですね。力がなくなって、しかも、バノンさんがいなくなったというので。ところが、最近起こってきたのはこの4月の合意、あるいは11月の米中首脳会談がありましたよね、それで巨額の商談を決めてきたという…」
反町キャスター
「28兆円」
細川特任教授
「28兆円ですか。それで、それが、あまり評判がよくなくて、結局、対中貿易赤字が2017年、昨年は史上最高になっちゃったわけですね。これこそ最大のポイントですよね。トランプさんが1番重視しているのは結果としての対中赤字ですよね。これが増えちゃっているわけです、自分のいる間に。これはメンツ丸潰れですよね。そうすると、ここで対中強硬派が今年になって急に盛り返してきて、ナバロさん、この方がコーンさんの部下だったのに、今回、格上げになって」
反町キャスター
「こっちが上司で、こっちが部下だったのに現在、逆になったのですか?」
細川特任教授
「対等になったんです」
反町キャスター
「現在、対等になった?」
細川特任教授
「はい。それで大統領補佐官に次なるという、こういう噂になっています。と言うことで、こちらが力を持っている。クシュナーさんが阿達先生おっしゃったように今回、他の件で最高機密に触れないということで、これが外になっちゃった。そういうことで力関係が、こちらの方が現在、強くなっていると。アメリカ議会自身もアメリカの場合、特に大事なのは議会ですね。議会が中間選挙を睨んで対中強硬一色になっていますから、現在は、トランプ政権はこの1年間で大きな変化をしているわけです」
反町キャスター
「阿達さん、ホワイトハウスの中の穏健派と強硬派の対立というか、細川さんの話だと、当初こっちが有利だったのだけれども、現在はこっちが幅をきかせているという、この分析はどうですか?」
阿達議員
「もともとアメリカの中で国防総省・国務省というのは中国に対して厳しいんですよ。これは安全保障上の理由で厳しいと。その一方で、DOC、商務省というのは基本的にアメリカの経済界の声をすごく受けていますから、だから、必然的に非常に中国に対しても近い。それから、財務省も、中国が米国債を買っていますから中国に対しては比較的甘い。こういうもともとの力関係があったわけですね。だから、コーンさん、それから、ロスさんというのももともと経済人ということもあるので、中国に対してはシンパシーを持っていたと。ところが、ここへきて、なぜこのナバロ、ライトハイザーがきたのかと言うと、もう昨年の後半から、アメリカが国家安全保障戦略というのを出したと。ここの中で強烈に中国のことを、アメリカの経済、アメリカの価値、そういったものに対するチャレンジャー、これはもうパートナーではないのだと、あくまでも競争相手、あるいは挑戦者だと、こう書いたわけですね。今回、実は2日、3日前に出た貿易報告においても、そこに同じ文言が出てくるわけですよ。中国・ロシアというのはアメリカにとってのコンペティターなのだと。だから、これはけしからんと。しかも、アメリカの貿易政策というのは、アメリカの安全保障戦略をサポートするようなものでないといけないと言っているので、明らかにアメリカの中のもともとの国防総省・軍、また、国務省が持っていた中国に対する非常に厳しい姿勢、これが現在、アメリカの政権内では完全に優位に立っていると」
反町キャスター
「ホワイトハウスの中で、安全保障と経済というものは、韓国が日本に言うみたいな、アレは歴史問題と経済問題か、ダブルトラックみたいな、そういう話ではないですね?現在のホワイトハウスの中というのは、安全保障上の敵は経済でも敵なのだ。そういう理解で、ホワイトハウスの中の意思決定システムはそういうメイン・エンジンになっているという理解でいいのですか?」
阿達議員
「それは、これはナバロがもともと言っていた主張というのは、アメリカの経済、ここでアメリカの中から製造業が工場を中国に移した。この工場を中国に移したことによって、アメリカの若者はアメリカで仕事を失ったのだと。その結果、中国は製造業がドンドン伸びて経済力がついた。この経済力を使って、中国は軍備を拡張したのだと。こういうロジックですよ。だから、アメリカの若者の犠牲の下に、仕事という犠牲の下に、中国は軍備を強化し、世界に覇を唱え、その結果として今度はアメリカの若者が下手したら戦争でやられるのだと、これを変えないといけないというのがもともとのこのナバロさんの考えだと。これはトランプ大統領にすごく影響を与えているんです」
反町キャスター
「阿達さん、個人的にナバロさんの理屈をどう見ているのですか?」
阿達議員
「部分的には製造業が移転することによって…」
反町キャスター
「だって、私企業の勝手な経済活動ではないですか?」
阿達議員
「ええ、…行ったことによって、自国の産業が弱くなったっていうのは1つの事実ではあると思いますね」
反町キャスター
「それは、自国の経済政策を反省すべきなのか、呼び込んだ中国を批判すべきなのか、どちらなのですか?」
阿達議員
「もう1つは、トランプ大統領の発想の中で欠けているのは、そういう現在のグローバル経済の中で、グローバル・サプライチェーンというのがあるわけですね。たとえば、アップルというのは、ああいうシステムを考えたのはアメリカですと。だけども、実際の部品というのはアジアのいろいろな国でつくり、そうして最後、中国で組み立てて、アメリカに輸出をしているわけですね。こういうのが現在のグローバル経済なわけです。こういうグローバル・サプライチェーンという発想が、先ほど細川さんがちょっと言った通り、オールドエコノミーのトランプ大統領にはあまりしっくりきていないわけですよ」
反町キャスター
「それはトランプ大統領だけですか?その周りの…」
細川特任教授
「実は、これで言いますと、実は対中穏健派というのは、言い換えれば、グローバリストですよ。それに対して、対中強硬派というのはナショナリストです。こういうふうに見たら、はっきりとわかりやすいと思いますね」
阿達議員
「この中で現在、経済関係ということでいくとライトハイザー通商代表部代表、ロス商務長官、コーン国家経済会議委員長、それと、もう1人、ムニューシン財務長官、この4人がいるわけですね。この4人の中で、どうも最近、ライトハイザー代表が1番、トランプ大統領に対してアピール力がある。彼が言うことが1番、どうもトランプ大統領が最近採用していると」
反町キャスター
「なぜ?」
阿達議員
「先ほど言ったちょっとそういうグローバリストというのが、トランプ大統領自体というのは、ビジネスの経験はあっても、どちらかと言うと、そういうグローバルなビジネスではないですね。彼は不動産ですから。そういう意味では、グローバルに対する、ちょっと距離がある。それに加えて、結果を出すということで言った時に現在、商務長官のところ、あるいは国家経済会議委員長のところというのはなかなか現在、結果が出せていない。そういう中でライトハイザー通商代表部代表というのが、非常にうまくアピールをして、目に見えることをやろうとしているという、そこが大きいと思いますね」
細川特任教授
「これはライトハイザーさんのバックグラウンドにあると思うんですよ。彼は、だから、1980年代に日米関係で成果を上げた人ですよね」
反町キャスター
「どういう懸案でどういう成果を上げたのですか?」
細川特任教授
「鉄鋼問題で自主規制をさせ、それでこうやって自分はある種、成功体験を持っているわけですよ。そうすると、彼の頭の発想というのは、率直に言えば、1980年代の発想です。トランプさん自身も頭の構造は1980年代です」

中国が打つ『次の一手』
竹内キャスター
「現在、習近平国家主席の経済ブレーンを務める劉鶴氏がアメリカからの要請を受けて訪米中ですが、中国では日本の国会にあたる全国人民代表大会、いわゆる全人代を3月5日に控えています。細川さん、なぜ重要ポストについている劉氏が全人代の直前に訪米したのでしょうか?」
細川特任教授
「これはある意味で、中国自身がトランプさんの本気度を見誤った結果、非常にまずい状況になってきたという危機感で、劉鶴さんという、この人はある意味で習近平さんの特使的な感じだと思います、今回。そう見た方が実態はそうだと思いますね。習近平さんとは幼馴染で非常に信頼していて、経済ブレーンとして彼が最有力ですよね。次の副首相として、経済担当副首相候補ということですよね。本来ならば、きっちりそういうポストに就いてから動くべきですよね。ところが、そう待っていられない。しかも、全人代の直前にですよね。ここがポイントでして、中国側は全人代が過ぎて、組織がちゃんとしてからにしてくれよと言っても、そんなのは待っていられないというアメリカ側が本気度を出してきだものだから、大慌てで直前に行ったっていうのが実態です。その前に、2月の上旬に楊潔篪さん、国務委員、この人は外交トップです、この人も訪米しているんです。この人が訪米して本来そこでアメリカ側と握って物事を終わるだろうという見通しだったんですよね。ところが、対米自主規制とか、そういう案はダメというので、これは大変というので今回行ったという、こういう流れですから。結論を言えば、トランプ政権の本気度の見通しを甘く見たということだと思いますね」
反町キャスター
「トランプ大統領がやろうとしていることはアメリカに入ってくる鉄鋼の量を減らすという、その実の話ではなく、俺はやったのだぞと、アメリカ国内でラッパを吹くことが、名をとることが目的だと思えば、こんなの放っておけばいいという選択肢は中国にはなかったのですか?それとも、そこも含め、中国はアメリカの真意を見誤ったと見た方がいいのですか?」
細川特任教授
「ただ、非常に難しいのは、本当に中国にとってダメージがないかと言うと、そうとも見られないと思いますよ。現在の中国というのは、たぶん全人代が終わると経済が減速するんですよ。皆が見ている、全人代までは経済をちゃんとしておかなければいけないので、不動産開発とか、ドンドンやっていますよ。ところが、全人代終わるとガクッとくるというのは大方の見方です。そうした時に、鉄鋼産業も、その結果、需要が落ちてきてですよ、そのうえにこれが起こってきたら、踏んだり、蹴ったりということになりますよね。そういうことで、これから先の中国経済の運営を考えた時に相当、深刻度をもって受け止めているのは事実だと思いますよ」
反町キャスター
「西濱さん、どう見ていますか?」
西濱氏
「タイミングが、顔に泥を塗られたような感覚を中国は持っているのだと思うんですね。特に全人代の前というタイミングもあるのですが、実は先月の28日まで、共産党の中央会議というのをやっていたんですね。これは何かと言うと、全人代で人事を決めるのですけれど、それの中の前さばきとして、共産党の中で決めるという会議をやっていたんですよ。それを途中で切り上げてまで、劉鶴さんはわざわざアメリカに行っていましたと。その最中にトランプさんはこんなことを言うわけですから。はっきり言って、とんだ面汚しだという話にこれはなるわけですね、間違いなく。先月、楊潔篪さんまで行って、楊潔篪さんも昨年末、共産党大会で中央政治局員になられていると。劉鶴さんも中央政治局員、いわゆる共産党の中のトップの2人が顔を並べて行って、結論がこれだったという、いったい共産党としてどうするのという話になってきていると思うんですね。かつ昨年末、トランプさんが中国に行かれましたけれども、その時に28兆円ということで、非常にアレは、どちらかと言うと…。その前に安倍さんとトランプさんが、非常に仲良くやっていて、どうも日本のやり方をやっているとうまくいくよねという形で実際のところ、楊潔篪さんも行ったわけです。たとえば、トランプさんの孫娘に焦点を当てて仲良くするとか」
反町キャスター
「それが日本のやり方なの?」
西濱氏
「いや、実はそういう方法も使っているんですね。そういう日本のうまいことをやっている例を挙げながら、うまいことをやって、アメリカとしての、強硬派を少しずつなだめようと。今回行ったのも、クシュナーさんに行くのもそうですし、実際、劉鶴さん自身はコーンさんだとか、あとムニューシンさんだとかと会われていますけれど、どちらかと言うと、対中穏健派の方々といっぱい会っていると。その中でうまいこと、ある種、対中シンパを広げようと思っていたら、いきなり違うところからボンと殴られた、という流れですので。非常に中国としてはある種、見誤ったではないですけれど、どうアメリカと付き合ったらいいのだろうかというところで、非常にまごついてしまっているところはあるかと」
反町キャスター
「このあと、中国はアメリカにどういう手があるのですか?」
西濱氏
「考えられるのは、WTO(世界貿易機関)提訴というのはまずやってくるだろうと、これは可能性として。あと考えられるのは対抗措置として関税を上げると。いわゆる中国が…」
反町キャスター
「えっ、関税戦争になるのですか、米中で?」
西濱氏
「これは最悪のパターンです。ただ、28兆円という額をあげていますから、それを履行しないということも当然ながら出てくるわけです。実際額だけ大きい、どれぐらいかというのもありますけれども、買わないということもあるでしょうし、かつその中で、たとえば、航空機に対して関税をかけるとか、もしくは自動車。1番やったら、これは中国に対しても相当影響があるのはたぶん大豆ですよね。これに対する関税をかけると、実は中国…」
反町キャスター
「大豆は中国が輸入しているのでしたか、アメリカから?」
西濱氏
「輸入しています。しかも、現在、中国の大豆輸入というのは基本的に飼料用、家畜用ですね。そうすると、物価が上がりますから中国にとっても痛手になると。本当はこぶしを振り上げて下ろすと、自分にとっても痛手になるけれども、アメリカがあれだけのことをやっていると、もしかしたらポーズとしてやらざるを得ないという可能性にも追い込まれるのかなという」
反町キャスター
「阿達さん、ここまでの話を聞いているとトランプ大統領のやっていることは理不尽だし、筋が悪いということしか、こちらの皆さんから聞こえてこないのですけれども、理不尽で筋が悪いことをやっていながら、どうして中国に対してこんなに強い立場がとれるのか、それはどう理解したらいいのですか?」
阿達議員
「ただ、これはその前は、トランプ大統領の立場で言えば、1年前から中国に対して、対米、アメリカ側からしたら対中赤字をとにかく減らせと、ずっと言っていたわけです。それをいったんですね、100日プランで中国はごまかしたわけですね、100日経ったけれど、実際にはあまり効果的なものは出てこなかった。そのあとトランプ大統領が中国へ行った、その時に北朝鮮の話に合わせて、もちろん、経済の話もしたわけです。その時に、中国は28兆円と確かに出したのですけれども、実際は、28兆円の中身を全部精査したら、それまでに相当コミットしたものまで含んでいますから」
反町キャスター
「既に手つけを打っているようなものまで盛り込まれているのですか?」
阿達議員
「ええ。新たに全部、28兆円のものを買うと言ったわけではないですね。それがあとからボロボロ出てきているわけです。そうすると、トランプ大統領からすると1年前からずっと言ってきたのに、いろいろなことを言って、ごまかして、ごまかして、きているではないかと。しかも、その一方で、中国はいろいろなところで我々こそ自由貿易を守るのだと、我々こそ他の国と一緒にいろいろな貿易協定を結んだりするのだというようなことを言っているというのは、おかしいと。彼の立場からすると、しかも、それがトランプ大統領の場合は経済の話と外交安全保障の話、これをパッケージにして中国とずっときていますから、アメリカは伝統的に、中国に対しては経済と外交を一緒に議論する癖があるので。そういう中でもともと外交・安全保障面でも中国に対して厳しくしようとして、その経済のところでいろいろプレッシャーをかけているのに、全然それが効いてこない。もうこれは米中間では実質的に軍事ではない経済戦争が起きているのだと、こういう認識だと思うんですね」
反町キャスター
「阿達さん自身も米中経済戦争になっていると見ていますか?」
阿達議員
「思います」
反町キャスター
「思う」
阿達議員
「はい」

『米中覚書』の教訓
竹内キャスター
「阿達さん、現在のアメリカと中国の経済対立の要因をどのように見ていますか?」
阿達議員
「これは、アメリカからすると、アメリカというのはもともと自由主義経済、資本主義、あるいは金融資本主義ということで、ずっと伸びてきたわけですね。それに対して中国というのは国家資本主義でずっときた。その中国が、アメリカ的なそういう資本主義の世界に入りたいということで、1990年代後半からすごくアプローチをしてきたわけです。そういう中でWTOに入って、世界の貿易秩序の中で中国はもっと伸びていきたいのだということで、WTOへの進出を申請してきたという経緯があったわけですね。それに対して当時のアメリカの考えは中国が入ってくることを認めましょうと。中国が入ってくる、そういう中で、中国がアメリカ的な、西洋的な経済秩序、あるいはもっと大きな世界秩序、これに入ってきて、インターナショナルコミュニティの一員としてちゃんと行動するのであれば仲間に入れましょうと、これがだいたい2000年代の前半だったわけです。ところが、WTOに入る時に、中国に対して、これからは国家資本主義的な状況から、なるべく本来の自由主義的な経済体制に変えろということで、いろいろな条件をつけていた。ところが、これを実際の中国というのは守ってこなかったんですね」
反町キャスター
「その条件というのがこれですか?覚書と言われている、これですか?」
阿達議員
「ええ、WTOに…」
反町キャスター
「『中国はWTOの取り決め以上に技術移転を求めないことに合意』、これはアメリカとの関係においてですよね?」
阿達議員
「ええ」
反町キャスター
「『中国は国有企業のビジネス上の決定に影響を及ぼさないことに同意』。これはよくわからないのですけれども、どういう意味ですか?」
阿達議員
「これは具体的には、たとえば、アメリカ企業が中国に何かモノを売りたいといった時に、その前の状況というのは、中国は技術移転を必ずしろと言っていたんですよ。つまり、アメリカの技術を中国に渡せと。そうすればアメリカのモノを中国の中で売っていいと、こういう要求をしていたわけですね」
反町キャスター
「なるほど」
阿達議員
「だけど、これは本来のWTOのルールから言ったら、いき過ぎですね」
反町キャスター
「では、この上の部分は、そういうことはもうやらないよと?」
阿達議員
「ええ、それはこれからはやらないと言った」
反町キャスター
「下は?」
阿達議員
「下は、中国の国有企業、この国有企業がいろいろな活動をする時に、通常の民間企業、西欧の通常の企業と同じような行動をするべきだと。つまり、国のいろいろな支援をもらったり、そういう国の政策によって判断をするのではなく、あくまで民間企業として中国の国有企業も行動すべきなのだと、こういうことを条件でつけたわけですね」
反町キャスター
「なるほど」
阿達議員
「これに対して、中国は一定の合意をしたわけですが、そこの書きぶりが非常に曖昧だったこともあって、中国は現実にはアメリカの会社が中国の中でモノを売る時は、当然それについてのいろいろな技術をちゃんと開示しろということを言って、技術を…」
反町キャスター
「移転は求めないけれども、開示を求めるのですか?」
阿達議員
「うん、正式のライセンスという形でなくてもいろいろ条件をつけちゃいますから。それから、中国では現在、国有企業というのがいて、その国有企業が経済の大半を持っている。しかも、そこに対しては中国のまた国有の金融機関がお金を貸し付けている。非常に有利な条件で中国企業はビジネスをやっているではないかと。これに対してアメリカが中国を単純にWTOに入れたのは間違いだったと、それに代わる新しい貿易・投資・サービスのルールをつくろうという、その動きがTPPだったんですよ」
反町キャスター
「アメリカは抜けちゃうじゃないですか、TPP?」
阿達議員
「だけど、TPPをもともと始めた時というのは、WTOではうまく機能しない、中国を抑え切れないから、それとは違うハイレベルの、もっと厳しいルールをつくろうというのがTPPの発想だったわけ」
反町キャスター
「矛盾しているのではないですか?アメリカは中国を抑えたくてTPPにしたのでしょう?」
阿達議員
「ええ」
反町キャスター
「でも、そのTPPからトランプさんは抜けるとはどういうことですか?」
阿達議員
「これはそのトランプさん自身が、先ほど言ったような、アメリカの国内問題として海外にドンドン出ていくアメリカの製造業、これがけしからんということがあったものだから、こういうルールだけでやるのではなくて、もっと現実的に産業をアメリカの中に残したいと、そういうことでTPPから出てしまったと」
反町キャスター
「細川さん、これはどう見ていますか?」
細川特任教授
「中国自身が、この当時、ちょうど私もアメリカ担当課長をしていましたからわかるのですけれども。当時、朱鎔基首相でしたよね。そうすると、市場経済に中国をもっていこうと、国内改革しようという、WTOの加盟という外圧を使って国内改革をしたいという、そういう明確なポリシーがあったわけです。ところが、今起こっている習近平政権の動きというのはこの真逆の動きで、市場経済と反対の、国有企業を強化していこう、あるいはそこに党の関与を強めていこう、技術移転、もっと盗ってやろうと、こういうのが露骨に出ているという、これを議論した時とは真逆のことをやっているわけですよね。それが1つと、それから、それに対してアメリカがどう見ているかということについては今回、トランプ政権がこういうふうに対中強硬になっていった背景とは関係ないとは思います。それは音楽で言いますと、通奏低音というのがあるではないですか。ずっと流れている、それとしては確かにこういう中国の大きな動き、これを反故にして、そっちの方向にシフトしていることに対する反発というのは根っこにはあるとは思います。しかし、現在、トランプ政権で起こっていることは、それだから問題にしているわけではなくて、先ほどご説明した、対中穏健派と強硬派の確執とか、そういうことで主旋律のメロディーが変化しているわけです」
反町キャスター
「なるほど」
細川特任教授
「だから、我々はそこを見なければいけないので、この通奏低音のところは、根っことしては現にあるわけです。ただ、もう1つ加えて言うとすれば、その部分についてどうするのかということについては、TPPというのも当初アメリカはそういう意図があったでしょう。現在は抜けていましたと。そうすると、抜けたあとどうするのかですが、日本がアメリカ、あるいはヨーロッパと一緒になって、このような項目で中国をルールに従わせるための仕かけづくり、これを主導していくという、そういう時期にきていると思うんです」
反町キャスター
「それにアメリカは?だってトランプ大統領はマルチが嫌いとか言っているではないですか?」
細川特任教授
「…なのですが、同時に、そうは言いながらも、WTOの場で、たとえば、電子商取引のルールをつくるためのグループをつくろう、アメリカ入ってくださいよね、とか、あとはOECD(経済協力開発機構)の外に、鉄鋼グローバルフォーラムをつくって、中国の過剰能力を削減させるための仕掛けづくりをする、そこにアメリカを共同議長にさせるというようなやり方、それから、APEC(アジア太平洋経済協力)という場で、インフラ投資の中国の酷いやり方、不公正なやり方をどうルール化していくかと、いろいろなことを、手を変え、品を変え、場所を変え、日本はアメリカを巻き込んだ形でのマルチの仕かけをいくつかやっているんです。こういう事態に対処する現実的なアプローチとしてはとても良いことなので。トランプ政権の総体として、トランプさんが嫌いだと言うのはいいですが、現実にWTOの場、OECDの場、APECの場では、そういう仕かけづくりにアメリカを巻き込んでいる努力は一応、実を結びつつあるんです。それは、これから先、日本にとって1番大事なポイントだと思いますね」

阿達雅志 自由民主党外交部会長の提言 『グローバル経済を見据えた戦略的アプローチ』
阿達議員
「『グローバル経済を見据えた戦略的アプローチ』。現在グローバル企業が本当に世界中でいろいろな形で動いている。グローバル・サプライチェーンがあり、またそのサービス産業というのが非常に大きな影響を持っている中で、日本というのは、米中がいろいろな争いをしている、この争いの中で、しっかりと戦略的にどちら側にどういう形でつくのか考えながらいかないと、日本自体の立場というのが非常に厳しくなっていくだろう。そういう現実に即した対応というのを考えていかないと、現在のアメリカのような形だけでは対抗できないような時代になっているのではないかなと思います」

細川昌彦 中部大学特任教授の提言 『対中有志連合を主導』
細川特任教授
「『対中有志連合を主導』と書いています。これは先ほど、申し上げたことにも関わるんですね。現在の1番の世界経済のポイントは異質な経済秩序の中国、これが台頭してきて、これにどう向き合うのかだと思うんですね。しかも、それがアジアとか、強権的な政策をやっている国々にも蔓延していくということですから。日本がアメリカ・ヨーロッパの橋渡しをしながらどうやって中国に向き合っていくか、その主導権をとっていくということが1番のポイントだと思います」

西濱徹 第一生命経済研究所主席エコノミストの提言 『毅然とした対応』
西濱氏
「『毅然とした対応』と書かせていただきました。別に、これは突っぱねろとか、そういう意味合いではなく、細川先生の方からもお話がありましたけれども、自由貿易、これを是として、これに連なってくるメンバー、これは当然ながら、ヨーロッパだとか、いろいろな国があろうかと思います。そういったところと協調しながら、自由貿易がどうあるべきなのか、これはTPP11などもそのツールになるでしょうし、そういったものを日本として強行に押し出していく、毅然と対応していく、ということが必要なのではないかと考えています」