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2018年2月19日(月)
少子化時代の大学改革 選択と集中のあり方は

ゲスト

下村博文
自由民主党衆議院議員 元文部科学大臣
小宮山宏
三菱総合研究所理事長
金子元久
筑波大学大学研究センター特命教授

『大学教育』の現状と課題
竹内キャスター
「安倍政権が進めている『人づくり革命』、その中で人材育成の重要拠点となる大学の改革について有識者による議論が今月8日から本格的にスタートしています。今夜はこの議論の行方も見据えながら、日本の大学をめぐる現状と、これから進んでいく改革の課題について、専門家の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。なぜ今、大学改革が必要なのか、政策の狙いについて聞いていきます。背景となります、学生と大学の数をめぐる変化を見ていきますと、18歳人口と大学の数のグラフですが、少子化の進行に伴って18歳人口も1990年の200万人から2017年は120万人に減少しています。しかし、同じ期間の間にも大学の数は507校から780校へと増えていまして、その中心は私立大学となっています。ちなみに、2017年の大学進学率は52.6%ということですが。下村さん、若者の数が減っているのに大学の数が増えている、この点についてどう考えていますか?」
下村議員
「日本は、18歳が大学入学対象ということ自体が、人生100年の時代の中で、リカレント教育で、これから後半の議論になってくるとは思いますけれども、諸外国では18歳からというよりは、いったん社会に出て、それから、大学に入るとか、つまり、25歳以上の大学生の占める割合が20%台の国もたくさんあるんです。ですから、入学者は高校を卒業してすぐというような対象ではなくて、社会人も含めたことを考えていく時代だと思うし、それから、大学進学率が52.6%というのは他の国に比べて決して高くないです。他の国で先進諸国ですとだいたい70%ぐらいいっていると。1番高いのはオーストラリアの95%ぐらい、これは留学生が入っています。それにしても、これから第4次産業革命、AI・人工知能、高度な、よりまた、多様化した社会に対応していくためには、教育力を身につけていかなければならないと思います。ですから、確かに40%近くの大学が定員割れをしていると。だからと言って大学の数を淘汰するとか、減らせば解決するという問題ではなくて、時代の変化に対応して大学はどうあるべきかという、そういう議論からしていくことが大切で。ニーズに合わなくなったから潰せというのは日本全体を衰退化させることになりかねないと思いますね。そのためにどうしていったらいいかということが今日の議論だと思います」
反町キャスター
「大学に入学するチャンスがたくさんあるにも関わらず、門が開かれているにも関わらず、行かない人が多い。これは、つまり、大学教育に対する期待度、学生として、親御さんがそうかもしれない、社会人入学ということも含めてですけれど、入ったところで、何ら得にもならないし、自分の人生にとってどうメリットになるのかというのがはっきりしないという人達がおそらく多いから、行かないのではないか?」
下村議員
「うん。厚生労働省の調査ですけれども、高校卒業と、それから、大学卒業における生涯獲得収入というのは、7500万円も開きがあるんですよ。たかだか大学に4年間行くか、行かないかによって、結果的には7500万円も違ってくるということは、それだけの付加価値はあるわけですね。ところが、最近は、授業料等、教育費負担が大きくなって、子供2人、3人産みたいけれど、そこまではなかなか2人、3人つくれないという、大きな要因として教育費の負担が大きいというのが調査でも結構、上の方にあがってきているんですよね。教育費負担が非常に子育ての中で大きいということもあるし、それから、大学そのものが時代のニーズにきちんと対応できていないというところもあると思いますね。そのへんの問題で、必ずしも大学に対して、そういう行っても意味がないということではなくて、1人1人のニーズに対応できていない大学、それは一言で言えば、たとえば、学長、それは選挙で、かつてもそうだったと思いますけれども、意向投票で選ぶわけです」
反町キャスター
「何ですか、意向投票?」
下村議員
「意向投票、その大学の教職員の、中には学生も入っていたりしますけれども、投票で選ぶわけですよ。これは政治家だったらそれは民主主義社会として…」
反町キャスター
「首班指名投票ですよ」
下村議員
「うん。選挙で選ぶというのは当然の話かもしれませんけれども。たとえば、中小企業で社長を選挙で選んでいて中小企業は成り立つのかと。同じようなことがかつて高度経済成長で子供の数がそんなに減らない時には誰がやってもそれほど経営的に心配はなかったかもしれない。それから、そもそも優れた学者が優れた経営者になれるわけではないですよね。ですから、大学における経営という視点から考えた時に的確に時代の変化に対応するようなそういう大学改革を含め、できているのかという、それができていないままトータル的に世界の中で日本の大学が地盤沈下しているという要因も非常にあるのではないかなと思います」
金子特命教授
「教育費の件ですけれども、これは私も非常に重要な点だと思いますが、ただ、教育費だけで進学率が制限されているわけでは必ずしもない。これについて、政府支出を増やせばいいという議論もありますけれども、現在の財政状況の中でこれができるのか。そうすると、ローンとか、そういう制度を拡充していくしかない。ただ、ローンにするのであれば、金を借りて大学に行くのですから、それだけの質を担保しなければいけないだろうと思うんですね。ですから、質の改革は、私は基本的に第1番地だと思うんですね。総理がおっしゃっている『人づくり革命』ですから、大学の数、就学率、それ自体が問題なのではなくて、むしろ中身をどうするかということが問題で。個々の教室や授業で何をやるのか、学生がそれに対してどういうモチベーションを沸かすか、これが1番基本の問題だと思います」
反町キャスター
「それは1人1人の教授、先生のやる話ですか?それとも、たとえば、あまり大上段に構えるつもりはないのですけれども、国家政策として何かやりようがあるのかみたいな、大学教育の水準を上げるのに国としてどういう施策を、何か打てるものがあるのですか?」
金子特命教授
「国が直接やれることは非常に少ないと思います。ただ、たとえば、政策としてできるのが大学に関する情報公開、どういう授業をやっていて、学生がどれくらいの授業をどう受けているのかと。たとえば、大学に4年いる間に、100人以上、100人以下の教室でどれくらい授業を受けたか、それから先生の教育時間はどれくらい使われているのかとかですね」
反町キャスター
「先生の教育時間?」
金子特命教授
「先生がその教育をするのにどれくらい時間を使っているのかとか。日本の大学の教員1人あたりの学生数はすごく高いです。これは大学の貧しさというのは1つそこから出ていると思いますけれども。それを克服しないと十分な時間を使えない。そういう問題もあります。ただ、最初に認識していただきたいと思うのは、日本の学生の学習時間は少ないですね。1週間に5時間以内、授業に関連して自分で学習する時間は、5時間以下の学生が6割くらいですね」
反町キャスター
「1週間に?」
金子特命教授
「1週間に。1日1時間。アメリカは、これが1割ぐらいしかいないですよ。貧しいですね、圧倒的に日本の学生が受けている授業というのは。これはこれまでの…」
反町キャスター
「アメリカの学生は、1週間に自宅での勉強時間はどれくらいやっているものなのですか?」
金子特命教授
「平均ではなかなか言いにくいですけれども、15時間とか、それくらいはやっていると思いますね」
反町キャスター
「1日3時間、家で勉強している?」
金子特命教授
「それぐらいは…」
反町キャスター
「週5日だと、そうですよ」
金子特命教授
「授業がそれを要求していて、それをしないと、授業で単位をとれないというのが…」
反町キャスター
「1番最近まで学生をしていた竹内さん…」
竹内キャスター
「はい」
小宮山氏
「自分のことをおっしゃったら…」
反町キャスター
「僕は、ここでは言えない」
下村議員
「ほとんど勉強してなかったのではない?」
反町キャスター
「どうよ?」
竹内キャスター
「いや、でも、そうですね、5時間以下でした…」
反町キャスター
「はい、どうぞ…」
金子特命教授
「ポイントは、これはこれまでの日本だったらこれで良かったのだと思うんです。要するに、企業に入って勉強すればいい。それは職場に応じて勉強していければいい。これが、ドンドン労働が多様化して、流動化した時に企業に頼った教育でいいのかというのは最大の問題だと思うんですね」

大規模私立『拡大』の功罪
竹内キャスター
「私立大学の赤字と黒字についてですが、学生数8000人未満の中小規模の大学が地方で48%、都市部で38%、赤字の状況となっています。学生数の多い大規模校の方が、経営状態が良く、地方で16%、都市部で10%の赤字、9割の大学が黒字という状況ですが。金子さんは私立大学の経営についてどのような点が問題だと思われますか?」
金子特命教授
「私立大学の経営問題は、私は2つに分かれていると思います。要するに、小規模大学の問題、これは現在、先ほどのデータにあったように赤字が多いわけですね。もう1つ、大規模大学。日本の学生のだいたい半分近くは大規模私大にいるわけですけど、こちらの問題。これは2つ、かなり違う問題があるんです。小規模大学の方がいろいろな大学がありますけれども、赤字というように一応データでは出ていますけれども、かなり経営努力をやって、赤字には見えるのですけれど、必ずしもそうでもない、比較的安定しているところもある。それから、かなりイノベーションをやっているところも結構ある、小規模大学にはかなり多い。一方で、大規模私大はあまり問題にされていないのですが、実は内部のイノベーションは実は非常に遅いと私は思います。それは大規模であって、しかも、日本だと有名大学ですから、あまり何かいろいろなことをやらなくても学生は来るわけですね、だいたい。大きいことは良いことになっているわけです。学生は来るわけです。実際に、中で、しかも、学部自体が大きいですから身動きをとるのが非常に難しいと。そのために新しいことを起こすというのはなかなか難しいという状況になっている。一見、経営問題は中小大学の問題だと思われていますが、私は先ほど申し上げた、質の観点からすれば、むしろ大規模大学にこそ問題はあるのだろうと思います」
反町キャスター
「自治体にしてみたら工場みたいな感じで誘致の対象になっているものなのですか?」
金子特命教授
「これまでは大学を呼び込むと若い人が来るからいいと…」
反町キャスター
「そう、そう」
金子特命教授
「…地域に活気がでる。ただ、この頃、言われていますのは、教育してもまた出て行ってしまうと。地域での大学と、それから、産業の結びつきとか、そういったことがないと、ただ単に地方で大学があるということはこれまで、要するに、需要が非常に多い場合は、それでも意味があったと思うのですけれど、現在のようにある程度、過剰感が出てくると、それだけではダメだと思います」
反町キャスター
「地方振興策としての大学の誘致は日本ではあまりうまくいっていないと見た方がいいのですか?」
下村議員
「ですから、これからは産学官を合わせたマッチング戦略が必要でしょうね。つまり、どこの大学、何でもいいから地方の過疎になりつつある自治体に来てもらいたいとかではなくて、先ほどの話のように、地域振興につながっていくような、学部、大学が、どの程度きちんと戦略的に考えているかと。自治体は自治体と、大学は大学ということではなくて、それの産学官の連携の中でマッチング戦略をきちんとやっていかないと、ますます生き残っていけなくなると思います。ですから、既に約48%とありますが、地方中小規模に限定すれば約半分ぐらいが赤字なわけです。この赤字を解消していくためには、1つは、本当にその大学の学部が、あるいは学生が地域のニーズに合った学生を育てながら、また、そういうことを教えているのかどうかという問題がありますよね。あとは、これは企業と同じように、極めて経営戦略をどのように将来的にとっていくかということもありますよね」

私大に求められる『経営の力』
反町キャスター
「大学に対して経営力を求めるようになったのは最近なのですか?以前からそれは言っていたのですか?」
下村議員
「いやいや、ごく最近です。それはすごく拒否反応と言いますか…」
反町キャスター
「大学側から?」
下村議員
「大学側から。まったく手をつけられなかった、実際のところ、まったく…」
反町キャスター
「大学自治は、それだけ強いものですね?」
下村議員
「強いです。基本的に以前の大学というのは教授会が強かった。教授会が大学の重要事項については事実上の決定権を持っていた。教授会がYESと言わなかったら大学改革はできなかったんですね。これをしようとしたのですが、私立大学は、大学の自治に対する国家権力の介入だ、という拒否反応が昔からありましたから、私立についてはできなかった。国立大学だけやったんです。国立大学について、つい最近ですけれども、実際、法律改正をして、平成27年から国立大学に限ったガバナンス改革をして、学長選考の仕方とか、それから、外部人材をどれぐらい入れるとか、それから、教授会の意向は、というか、教授会の決定については、学長は配慮するけれど、それに囚われる必要はないと最終的な決定権は学長が持つということが決定したことによって、法律改正することによって大学改革が相当進んだ部分がある。でも、私学については一切手をつけられなかったですね」
反町キャスター
「それは現在でもそうなのですか?」
下村議員
「現在でもそうです」
小宮山氏
「これまでは大学が適当に来てくださいと、企業に来たら教育しますよという形で、日本の高度成長というのはうまくいってきたわけです。その頃に経営なんて言われたことがないわけです。それを現在、経営と大学に言い出して、非常に重要ですよ。だけど、法律も重要なのでしょうけれども、実は国立大学法人法というのは本当のことを言ったら、学長というのはオールマイティですよ。だって、重要事項、経営に関する重要事項は経営協議会というところがやって、学術に関することは評議会というところがやるのだけれど、両方とも議長は総長で、それぞれの議を経て、総長が決定するのですから。本当のことを言ったらオールマイティです。だから、どれだけ学長が本当に自分の責任を果たしているかということが問題なんですよ」
反町キャスター
「学長に問われている、経営者、研究者ではなくて、教育者ではなくて、経営者としてのセンスが問われている、能力が問われてきているというのは当たり前なのですね?」
小宮山氏
「これはそう、おっしゃる通り。その通り。だけど、はっきり言うと、企業の経営よりははるかに難しいの」
反町キャスター
「難しいのだったら…、はい、どうぞ」
小宮山氏
「企業というのは、要するに、金勘定ですよ、最終的には。これから変わってくるけれど。ESG投資とか…」
反町キャスター
「何ですか、ESG?」
小宮山氏
「エンバイロンメント、ソーシャル、ガバナンスと言って、この3つをやっていないと株価が下がるんですよ、現在は」
反町キャスター
「企業から見た時に?」
小宮山氏
「そう。だから、そういうような形で、企業の社会的責任というのがドンドン強くなりますよ。そうすると、今までよりも難しくなるけれど。大学はともかく学生を育てる、学術を研究する、こういうこととお金勘定と両方必要なのだから。それで、別にこっちの人達は、重力波が見つかることが目標なので、お金稼ぐなんて考えていないもの。でも、それは必要な部分でしょう、大学の。だから、問題はどうやって学術研究、あるいは学生の教育という部分を維持したまま、ある程度、日本は、それは、いや、世界でも強いですよ。私の時はまだランキング12位だったし、世界で。それで、工学部は7位だったというようなことで、まだまだ結構、それがそんなに落ちているわけではないですよ。そういうところをどうやって維持しながら、維持をしながらというのは壊さないで今必要とされている、大臣がおっしゃったり、金子さんがおっしゃったりされているような経営力というものをどうやってつけていくか。ただ企業の人を呼んで来て、できるというものですか」
反町キャスター
「下村さんに聞いた方がいい」
下村議員
「…いや、企業というわけではないけれども、私、昨年の11月に現在、世界で、トップでランキングされているオックスフォード大学と、オックスフォード大学の学長に会って、ちょっと驚いたのはオックスフォード…、たとえば、小宮山さんは東大の総長をされていましたけれど、東大の総長、東大以外の人が総長をした事例はないと思いますよ」
小宮山氏
「イエールでしょう?」
下村議員
「いやいや…」
小宮山氏
「なぜイエールの人にしたかというのには理由があるんだよ」
反町キャスター
「オックスフォードが?」
下村議員
「そうね、オックスフォードは800年の歴史の中で、他の大学で、他の大学も、スコットランドもそうなのだけれども、学長の経験があって優れた人をスカウトして、800年ある歴史の中で全然、オックスフォード大学の関係のない人を学長に据えて、女性なのですけれど。就任した人で、彼女に話をしていて、それぐらい日本の大学からすると画期的なことをしているのだけれど、でも、その彼女から言わせると、オックスフォード大学の改革は遅いと、遅いと。もっとスピード感を持ってやっていかなかったら、世界の中で本当にオックスフォード大学がさらに浮上することは難しいと…」
反町キャスター
「オックスフォードの学長になった方、女性でなった方というのは…」
小宮山氏
「イエール大学だよ。イエールにリック・レブンという私が非常に親しかった人ですよ、それで、私もイエールとの連携を非常にやった。それで、私がこうやっていた時のケンブリッジとオックスフォードの学長が4人、いろいろ任期があるから、4人知っているのだけれども、そのうちの3人がイエール大学での副学長の経験者ですよ。それは…」
反町キャスター
「それは、イエール大学というのは経営者を育てる何かを?」
小宮山氏
「お金」
反町キャスター
「あっ、お金集め?」
小宮山氏
「イエール大学はリック・レブンが入って、急激に基金をハーバード並みに増やしたんですよ」
反町キャスター
「なるほど。お金集めの上手な人が日本の大学の経営者には求められている、そういう意味で言っているのですか?」
小宮山氏
「いやいや、そんなことは言っていない。それはもう重要な…」
下村議員
「金集めももちろん、必要だけれども。もちろん、大学なのだから優れた研究者や学生をいかに育てるかという、そういう能力はもちろん、必要ですよ」
反町キャスター
「彼女はどちらが評価されているのですか?」
下村議員
「それは両方でしょうよ」
小宮山氏
「いや、違う、お金だよ」
下村議員
「だから、企業の経営者がそのまますぐ大学の学長として適切かどうかはまた別の話ですよ。でも、少なくとも自分の大学の中の選挙によって選ばれた教授が、学長として適切かどうかという時代ではもうなくなっていると」

イノベーション創出のカギ
竹内キャスター
「ここからは研究開発分野など大学の持つポテンシャルをどう伸ばしていくべきなのか、小宮山さんが今携わっていますプロジェクトを実際に見ていきながら、考えていきたいと思います。そのプロジェクトというのが研究成果展開事業『センター・オブ・イノベーションプログラム』というものですが、小宮山さん、これは?」
小宮山氏
「これは大学をイノベーション、あるいは地域というところと連携する拠点としてつくっていこうというプログラムで。現在18です、全国で、…の拠点で展開しているプログラム。私が、ヘッドをやっているものだから、一生懸命やっています。皆、ビッグデータ、ビッグデータとは言っているのだけれども、真面目な話をすると、ないんだよ、ビッグデータが」
反町キャスター
「ないのですか?」
小宮山氏
「ないんだよ。ビッグテータって言っているものの99%はゴミなんですよ。だから、使えるものがないの。だから、使えるビッグデータっていうのは、つくっていかないといけないんですよ。じゃあ、どこがつくれるかって言うとね、病院なんですね」
反町キャスター
「なるほど」
小宮山氏
「これは、弘前大学が、ほとんど、病院を挙げて健康診断を、これで15年間続けているわけ。それで、これはもう世界一の項目数ですよ。まったく同じ項目、1100」
反町キャスター
「大学病院に来る患者さん全員に1100の…」
小宮山氏
「患者さんではないんだよ。この人達は、健康診断だよ」
反町キャスター
「あっ、そうか、なるほど」
小宮山氏
「それで、病気にならないように健診をしていきましょうという話ですよ」
反町キャスター
「健康診断のために1100項目も聞かれるのですか?」
小宮山氏
「そう。聞かれるというか、測定するの。聞くのもあるけれども」
反町キャスター
「ああ、はい」
小宮山氏
「それで、2日がかりですよ。病院総出」
反町キャスター
「ほお」
小宮山氏
「それで弘前大学という地域の中核大学ですよね、ここの信頼ですよ。これがあるから人々が集まるわけですよ。今、言ったようなちゃんとした形で取るデータというのは、企業は欲しくて、欲しくてしょうがないわけ。アンチ・エイジングとか、さまざまなデータとしてほしいですよ。現在、30企業ぐらいが自然と集結してきていますよ」
反町キャスター
「ここで言うと、新事業ならびに雇用創出、ここの部分のチャンスが今、出ている、こういうことでよろしいのですか?」
小宮山氏
「そうですね。本当に有名な企業から地域の小さな企業まで含めてですけれど、知っている企業の方が圧倒的に多いですよ。そういうレベルの企業が、30ぐらいがここに集結して、いわばビッグデータをつくっているんですよ。そうすると、ここは世界の本当のトップのデータですよ。だから、世界のトップ大学、世界と闘う大学、地域に貢献する大学、もう1つ、特殊な何とかでしたか。ここが世界のトップの仕事をしているわけですよ。トップクラスの何とか、だとか、専門分野、地域のニーズだって…」
反町キャスター
「これは政府の方針ですけれども」
 
小宮山氏
「うん、だから、上からそういうふうに1つの大学を、そういうふうに決めていこうというのは非常にコストパフォーマンスが良くない。ウチはどこにしようかというのでもって、大変、喧々諤々な労力を使うし…」
 
反町キャスター
「でも、弘前大学の話を聞いていると、この3つが、弘前大学のビッグデータの集積の…」
小宮山氏
「全部に入っているわけですよ」
反町キャスター
「入ると、こういう話になるんですよね?」
小宮山氏
「そうですよ。地域のニーズに応えるし、その地域のニーズというのは、日本は課題先進国ですから、世界のニーズだし、専門分野に優れた教育研究拠点だし、世界トップクラスの研究をやっているわけですよ」
反町キャスター
「それぞれカテゴリーを分けたところに大学をはめ込もうとしている、これは政策ですよ?」
小宮山氏
「そう」
反町キャスター
「それに対しての、まずは感想から」
小宮山氏
「良くない、はっきり言って良くない」
反町キャスター
「良くない?」
小宮山氏
「うん」
反町キャスター
「良くないということは、つまり、弘前大学の例が…」
小宮山氏
「どこの大学にも、今の弘前大学のようなものというのはでき得るし…」
反町キャスター
「健康関連のビッグデータの蓄積というのは、こういう分け方を政府が、つい最近ですよ、これを発表したのは。と言うことは、政府はこの弘前大学の研究の評価をキチッとできていないという話になるんですよ」
小宮山氏
「どうも大学という少し大きな大学の特性というのをご理解いただいていないと思います」
反町キャスター
「いかがですか、下村さん?」
下村議員
「それはちょっと適切ではないと思います。うん、これは重点支援の3タイプだから、たとえば、弘前大学がこのいずれにも当てはまるからいけないと言っているわけではない。どちらかと言うと、『地域のニーズに応える人材育成』というところが、たぶん弘前大学はここに当てはまると思います。しかし、これをやりながら『専門分野の優れた教育研究の拠点』にもなるし、結果的にやったことが『世界トップクラスの教育研究』になることがあったとしても別にこれを否定するという話ではないでしょう。だから、それぞれの良さを求めながら、事実上その大学があらゆるレベルで活性化して発信すれば1番良いわけだから。ただ、だからと言って、これを、重点支援をそれぞれの大学の好き勝手にということではなく、インセンティブは必要だと思うんですよ。そのために、たとえば、弘前大学も大学単独でやっているわけではないでしょう。今の話のように産業界も支援をすると、企業も。地元の自治体も支援をすると。それから、住民も協力するという中から始まっているわけですね。そういう意味での、トップクラスの研究開発をするために大学単独でできるわけではないから、たとえば、東大にしても京都大学にしても、ここに地域の、地域だけではないかもしれません、トップクラスだから世界レベルのいろいろな企業なり、産業界も関わってくる中で、たとえば、京都大学のiPS、再生医療も、そうなのかもしれませんけれど。ということをすることによって同じような、弘前大学とコンセプトが同じような形でやれる部分はあるけれども。でも、重点政策としては、こういうことをやりながら、その大学の特徴をさらに特化させ、進めていくという、コンセプトをつくっていくという意味では、戦略的には、86の国立大学、皆、同じようにということではなくて、それぞれの大学に合わせた特性の中で応援していくと。その中で各大学が、いや、実際、でも、他の分野にも広がっていくというのは良いことだと思うけれども、これと相矛盾するとか、そういう話ではないとは思いますね」

『私学助成』見直しの是非
竹内キャスター
「国立と私立の経営に関して、その主な収入源を比較して見てみますと。学生の授業料、政府からの補助金、大学への寄付金と大きく分けますと、私立の方は7割近くが学生の支払う授業料に依存している状況ですが、一方、国立大学は58.3%が国からの財政支援ということで、その分、学生の負担は17.6%と低くなっています。下村さん、私立大学からは国の補助金など、配分の見直しを求める声も挙がっているということなのですが、経営支援のあり方についてどのように考えていますか?」
下村議員
「私立大学から見たら、当然ですよね。つまり、私学助成というのは、大学の収入トータルの2分の1ということを目安にしていて。それがドンドン減ってきちゃっているんですね。13.1%とありますけれど、事実上はもう10%を切っていますよ。ですから、私立大学からしたら、もっと国の公的資金は出してほしいと、今の、ですから、5倍ぐらい出して、私学の経営のトータルの収入の2分の1、私学助成の上限になるわけだから、それから比べると相当少ないではないかということです。それに比べて、国立大学は恵まれていますよね、58.3%ですから。ただ、それにしても日本の大学の課題としては、寄付金などとありますけれど、今後、企業や個人も含め、そういうところから、研究支援と言いますか、共同開発というか、それでどれぐらい持ってこられるかということを各大学は考えていく必要があると思うんですね。先ほどの、たとえば、弘前大学も、大学単独での収入、経営構造ではなく、相当に企業とか、いろいろなところから資金的にも集めていると思うんですよ。同じような形で、研究については大学がトップですから、研究の果実を企業が即戦力として社会の中で、新産業として活かしたいということであれば、自分のところで研究開発するよりは、大学と連携して研究開発をして、そのシーズを一緒に共有したいという部分がありますから。これまで以上に大学と、それから、産業界が、あと地域ということで言えば地方自治体ですね、より連携することによって大学側が外部からもっと資金を得られるような工夫を、個人を含めてですけれど、もっとしていく工夫を応援する必要もあるし、大学側もそういう努力をしていく必要があると思いますね」
反町キャスター
「金子さん、いかがですか?この財政に関しては?」
金子特命教授
「今、おっしゃったようなことだと思いますが。ただ、政府…」
反町キャスター
「でも、下村さんは5割を目指して公費助成を私学にすべきだという、こういうお話、ここは…?」
金子特命教授
「これは1975年…1976年ですか、私学助成法で半分までは助成できるという法律に変えたのですが。それは実際には全然、実現しないで、むしろ私学全体の収入に占める比率が下がってきちゃっていると」
反町キャスター
「5割も入れたら国公立大学と何ら財政上は遜色なくなりますよね?私学と国公立大学の違いというのはどこにあるのだと、ここの議論にならないのですか?」
金子特命教授
「なると思いますね。それから、1番大きな問題は、まったく何もチェックなしで政府のお金をそんなに入れられるかと。相当厳しい公的な監視と言いますか、情報公開のようなものが必要になってくると。それがなければ、現実的には政府補助金を飛躍的に伸ばすのは非常に難しいだろうと思います」
反町キャスター
「金子さん、私学助成、文科省から大学運営の経費支援というのは2700億円です。この2700億円というのを、さらに増やしていくためには、チェックという話をされましたけれども。僕は実態を知らないのですけれども、その私学助成の使い道というのはかなり甘いのですか、チェックというのは?どう感じているのですか?」
金子特命教授
「原則的にはチェックはないのではないでしょうか」
反町キャスター
「ない?」
金子特命教授
「要するに、必要経費の何割と」
反町キャスター
「ああ、そうか…」
金子特命教授
「定員をどれくらい超過しているかによってある程度差がつきますけれど、基本的には内容としてどう使うかについては、私学の自主性に任されていると思います」
反町キャスター
「そこで自主性を任されるのは、話がおかしくはないですか?」
金子特命教授
「ですから、情報公開も…がどうしても必要になってくるわけですけれど。近年、ある程度はそういったことは要求されているのですが、たとえば、大学間の比較は全然できないような情報公開の仕方で。これは抜本的に私学の情報公開をしないと説得力は生まれないだろうと…」
反町キャスター
「小宮山さん、私学助成については、透明性とかを含めて、どう感じているのですか?」
小宮山氏
「透明性で妥当性を担保するというのは1番良いと思う、と言うのは、報告書とか何かでもって担保しようと思っても無理ですよ、書いたのを見るだけでは。そうではなくて、中で本当に見るということをやるのが1番良い。たとえば、教育の評価というのはとても難しいではないですか、アウトカム評価と言うけれども」
反町キャスター
「難しいですね」
小宮山氏
「いつがアウトカムかわからないですから。非常に難しいのだけど。たとえば、教室を複数の先生が見れば、明確にわかりますよ」
反町キャスター
「ほお…」
小宮山氏
「私は、やったことがあるもの、東工大で。数学と物理の、同じ講義をあっちこっちでやっているんですよ、パラレル講義を。それを5人ぐらいで見ましたかね。30分ぐらいでバーッとまわっただけですよ、1か所5~6分で。だけど、順番をつけたら、上と下はほとんど皆、同じですよ。間がちょっとは順番をつけると、あそこが良いと思ったというのが…。数学の講義だって、学生がこうやってやっている人と、僕らが行ったのも、気がついていないのではないかと。ずっとこうやって、やっている人といますから。だから、現場を見ることをしないと、そのチェックは、と言ってもなかなかできないですよ」

『私学助成』と『憲法改正』
竹内キャスター
「そもそも私学助成に対しては違憲ではないかという指摘が昔からあるのですが、議論の焦点となっているのは憲法89条です。『公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益、若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育、若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない』というものです。下村さん、憲法と私学助成についての関係をどのように考えていますか?」
下村議員
「ええ、これは、自民党としては変えたいと思っています」
反町キャスター
「変えたい?」
下村議員
「はい。これは89条の、『公の支配に属しない』というのは…」
反町キャスター
「これですね?」
下村議員
「はい。公の監督が及ばない、だから、支配に属しないというのは、監督が及ばない、そこだけですけれども。それを変えることによって違憲だと言っている人もいるわけですから、自衛隊と同じですけれども。誰が見ても違憲でないような状態にするために『監督が及ばない』に変えることによって、私学助成は合法、合憲だというふうにしたいと思っています。この監督が及ばないということで、たとえば、朝鮮学校は監督、日本政府の監督下にはないですね」
反町キャスター
「ああ、ないですね」
下村議員
「だから、高校の就学支援金の対象ではないというのがわかりやすくなると…」
反町キャスター
「なるほど」
下村議員
「…いうことですね」
反町キャスター
「金子さん、いかがですか?憲法と私学助成の関係をどう感じますか?」
金子特命教授
「私は、第9条の問題と似ていると思うのですが、既に出しているので、今さら憲法を変えるというのはどういう意味があるかということ。それから、もう1つは、こう書いてありますが、私立大学も公の支配には属しているんですね。単位制とか、設置基準というのがあって、それは相当厳しく基準を決めているわけです。公教育の、学校教育第1条に書いてある大学というのは、そういう意味で公の支配に属しているんです。そういうことを考えると、これを本当にやる必要があるのか、ないのかというのは、疑問に思います」
反町キャスター
「そうすると、先ほどの話に戻っちゃうのですけれども、国公立大学と私立大学の違いはどういうところになっていくのですか?話を聞いていくと特色ある教育をしているのが私立大学だと。そんなことを言ったら、小宮山さんは怒りますよね?」
小宮山氏
「…」
反町キャスター
「そうすると、どう?」
金子特命教授
「国立であれば、国立大学法人ということで政府と一種の契約関係にあるのだと思うんですね。こういうことをやるからお金をくださいとか、一応、計画を立てて、それに対してお金をもらうと。それが現在の国立大学法人のあり方です」
反町キャスター
「なるほど。小宮山さん、私学助成と憲法の問題をどう感じていますか?」
小宮山氏
「憲法を変えるほどの。もう根づいているものですから、私学助成は。これが憲法違反だと言っている人は聞いたことがないんだよね。いるのでしょうけれども、おられるのでしょうけれども」
反町キャスター
「話題には出ますよね?」
小宮山氏
「うん。あまりこれは…」
下村議員
「反町さん、前提条件がちょっと正確ではないですね。これは自民党でも89条だけを変えるという話ではないんです。そもそもは憲法26条を変えると。憲法26条には、教育の文言があるんですね。26条の中で、無償化という言葉は使いませんが、しかし、経済的な理由によって教育のチャンス・可能性をなくしてしまうことがあってはならないと思いますし、そもそも教育というのは、これは文言に入れようと思っている言葉ですけれど、もともと自民党の憲法改正、24年の時の3項、現在1項、2項というのがあるんです、第26条。3項目目に入れようと思っている中、『国は国民1人1人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ国の未来を切り拓く上で、極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない』ということで。今後、国がさらに教育については環境整備をはかっていく。それは今後の将来にとって、国にとっても、国民にとっても、大切なことなのだということを26条の中に追加しようと思っているんです。その時に89条も一緒に、より、違憲だと言う人もいますから。それを厳密に言葉として、ですから、89条そのものを変えるというより、『支配』というのを『監督』と変えるわけですけれども。だから、89条だけ単独で変えるということではなく、メインは26条だと。26条で、より国にとっても、それから、国民にとっても、これから教育が大切なのだという中の一環として89条も変えようと、そういう意味ですよ」

小宮山宏 三菱総合研究所理事長の提言 『オープンな拠点』
小宮山氏
「私は、大学がオープンな社会の課題の解決の拠点と本当は書きたかった。ただ、字がアレなので、こうしたのですけれど。社会に開かれるということが何より大事で、これは学生も、先ほど、種子島の例を言いましたけれども、学生も講義を聞いているだけではなくて、社会に出る、それから、外からの人も受け入れる。これは、産もそうだし、いろいろな社会人、海外からもそうだし、そういう人を受け入れると。社会の課題を解決していくということがどこでできるかというと大学しかできないと思っているんです。だから、オープンな課題解決の拠点、これが大学の生きる道だと思います」

金子元久 筑波大学大学研究センター特命教授の提言 『質の飛躍』
金子特命教授
「『質の飛躍』ということを申し上げたいと思います。これまで日本の大学の教育というのは、貧しいというものが当たり前だと思っていたわけですけれど、具体的な問題として、どのようにしたら教育の質、その密度を高くすることができるか、それが最大の問題ではないかと思います」

下村博文 自由民主党衆議院議員の提言 『教育立国への道』
下村議員
「『教育立国への道』。これは、少子高齢化で18歳人口が減ってきているから、大学を潰そうということではなくて、そもそも18歳ではなく、リカレントだから、50歳になっても、70歳になっても大学に入って学び直そうという、そういう社会をつくっていくことが大切ですね。ですから、逆に大学を活性化させるという意味で、教育立国への道と、大学改革、と思います」