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2018年1月30日(火)
米国安保戦略が転換? 日本防衛体制どう影響

ゲスト

中谷元
元防衛大臣 自由民主党安全保障調査会長
森本敏
元防衛大臣 拓殖大学総長 防衛大臣政策参与
渡部恒雄
笹川平和財団上席研究員

新・NSS=国家安全保障戦略 転換する米国の対中露政策
竹内キャスター
「トランプ大統領の就任から1年を経てアメリカの安全保障の基本政策であるNSS、国家安全保障戦略、具体的な政策であるNDS、国家防衛戦略が相次いで発表されました。これまでの対テロリズム最優先から中国・ロシアの脅威を第1に掲げる方針に転換し、全世界が注目しています。そこで今夜は、日米関係と安全保障政策の専門家を迎え、トランプ政権の安保戦略と同盟国である日本の対応を考えていきます。大統領就任から1年を経て初めてトランプ政権の安全保障戦略が明らかになってきました。アメリカのいわゆる安全保障3戦略文書のうち、2017年の12月18日にホワイトハウスがまとめたトランプ政権の安全保障の基本政策であるNSS、国家安全保障戦略が出されました。今月19日には国防総省がNSSに沿ってまとめた安保の具体的政策の機関文書NDS、国家防衛戦略が相次いで発表されました。来月にも残りの1つである核戦略の柱、NPR、核態勢の見直しと、加えて、ミサイル防衛政策の柱であるBMDR、弾道ミサイル防衛見直しが発表されます。まず昨年末に発表されたNSS、国家安全保障戦略について話を聞いていきます。注目ポイントがこちらです。『中国やロシアなどはアメリカの国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力』、もう1つのポイントが『”力による平和”の維持』ということが記されているのですが。まず森本さん、上の部分の意味や狙いはどのように考えていますか?」
森本氏
「中国とロシアというのがアメリカの国益、価値観というものを損なうような、力を行使して国際秩序を損なうような対応をしている。これが、アメリカが言うリビジョニスト、つまり、修正主義という意味です。つまり、従来から国際法に基づく秩序というのを形成しようとして国際社会の平和と安全を維持しようとしていたのにそれをまったく損なうような考え方を持って、世界をリードしようとしている中国とロシアというのは、アメリカから見ると、国益とか、価値観というのは共有できないと。これこそがアメリカにとっての大きな脅威だということをはっきり位置づけ、その次に、いわゆる『ならず者国家』である北朝鮮・イラン、それから、テロリスト、プライオリティがきちんとされているわけですね」
反町キャスター
「なるほど、変わったんですね」
森本氏
「そのNo.1のプライオリティがここに書いてあるというということなので。これに対応するために、あとで出てくる、いわゆるアメリカの国防力を強化することによって、修正主義に対してアメリカが強いリーダーシップをとるという場合に、同盟国の協力を得ながら平和を維持していくのだ、ということなので。まずアメリカの国防力を強化する。と同時に同盟国の協力を得て、この修正主義に対して向かい合うことが、アメリカの米国1国主義と言うのですか、それから、アメリカがグローバルなリーダーシップをとり返すために不可欠な考え方だというのが、この安全保障戦略の基軸になっているのではないかと思います」
反町キャスター
「今回アメリカが中国やロシアを修正主義勢力と名づけたということは、これは急にロシアと中国だけが修正主義勢力に、修正主義はこの場合で言うと、アメリカを中心とする世界秩序に対するチャレンジャーみたいな意味でいいのですか?」
森本氏
「アメリカを中心とするというより、むしろ冷戦後に国際秩序というのは国際法に基づく秩序で維持されている。それを、たとえば、ロシアがウクライナに出て…、クリミア半島を獲って、ウクライナに出て、シリアに出てきて、つまり、軍事力を使ってグルジア紛争、ジョージア紛争から順繰りに、自分の覇権主義的な勢力をヨーロッパに広げているという。中国も南シナ海、今や東シナ海のようなところに国際法を無視して秩序を損なうような活動をやっている。これにキチッと対応することが、アメリカの国益になる、リーダーシップをとり戻すために非常に重要だという考え方に立っているので」
反町キャスター
「でも、別にここ数か月、急にこういう動きが始まったわけではなくて」
森本氏
「いやいや…」
反町キャスター
「もう何年も何年もやっている中で…」
森本氏
「いや…」
反町キャスター
「なぜここにきて急に修正主義とレッテル貼りしなくてはいけなかったのか?」
森本氏
「私は、この2つの現象というのは2014年以降に出てきているのだと思うんです。この3年半、4年ぐらいですかね」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「だから、その前はそうは考えていなかったのだと思うんです。政権ができた時には、中国やロシアと経済関係もあるし、協調できると、大国と協調できると思っていたんですよね。だから、国防省はそう考えていなかったのではないかと思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
中谷議員
「最近ではシリア。ロシアとアメリカがまったく考えが違います。それから、クリミア半島とか、ウクライナも依然としてロシアは考えを変えませんので、非常に国際社会としてはロシアが孤立しています。中国も東シナ海・南シナ海の覇権、軍事拡大を続けていますので、修正主義というのは現状を変えようとしている人達で現在、非常に経済も、軍事もすごい競争社会の中で、米国の力、影響力、利益、これに対抗するような国家であると見ているのではないでしょうか」
反町キャスター
「渡部さん、修正主義と英語で言うと、リビジョニストと言うのですか?」
渡部氏
「はい、そうです」
反町キャスター
「これは昔、日本に対して使われた言葉ですよね?」
渡部氏
「はい、そうです」
反町キャスター
「言わんとするところ…」
渡部氏
「はい、言わんとすることはわかります」
反町キャスター
「この言葉の意味をどう受け止めたらいいのですか?」
渡部氏
「まず修正主義を理解するために修正主義が修正しようと思っている世界の秩序とか、ルールとか、これを守ろうとする立場は、これは現状維持派です」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「英語だと、ステータス・クオーと言うのですけれど。だから、日本は汚名ですよ、はっきり言って日本が修正主義と言われたのは汚名であって、それは日本が不公正な貿易をしていて、世界の貿易ルールを変えようとしているというのと、日本はデモクラシーだと言っているけれど、本当は集団でデモクラシーではないルールをしていると。これはまったくの濡れ衣で、現在はもう世界中の人がわかってくれていると思うのですけれど。だから、私、あの頃、アメリカで勉強していて、もうそれはおかしいでしょうとずっと言っていたわけですけれど。ただ、それを今度は国際ルールに関して言えば、中国やロシアはリビジョニストではないですかと、修正主義者ではないですかと言った時に、かつては中国もロシアもそんなことはないですと言えたんですよ。ところが、これが本当に、森本さんがおっしゃられたように、2014年というのは決定的で、これはロシアのウクライナの内戦の親ロシア派への支援と、あとはクリミア併合、これは、しかも、一方的に力による併合であったと」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「中国に関して言えば、実は2010年でして。南シナ海における人工島、それから、尖閣における、に対する日本の領域に関する工船と、この話がだいたい合わさってきて。だから、実はオバマ政権も2010年以降、何をしたかと言うとアジア・リバランスと言って、中国に関してはある程度、牽制をかけるような政策をとったわけですよね」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「ただ、オバマ政権はそのあと割と緩くなっちゃっていて。ところが、クリミア併合があって、そこで毅然とした態度をとらなかったということがあって、これは世界的に不満が実はあって。そこを見ていた国防総省、安全保障の専門家が今回、トランプ政権の中でこういう提言をしたのだろうと」
竹内キャスター
「昨年末に発表されましたNSS、国家安全保障戦略の中に『競争国に、…これは中国・ロシア…、に関与すれば、信頼関係を築けるとの前提に基づく過去の20年の政策は再考が必要だ』とあるのですが。過去の政策、関与政策の再考ということですが、森本さん、中国とロシアに関する関与政策というのは、いったいどういったことを指しているのでしょう?」
森本氏
「英語で言うとエンゲージメント・ポリシーと言うのでしょうけれども、関与というのは、つまり、幅があるのですけれども、封じ込めたり、干渉したりしない。必要な場合にだけ意見を言う、アドバイスをするという考え方ですよね」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「だから、関与政策というのは、エンゲージメントと英語で言うと、エンゲージするというのは、つまり、干渉はしないです、封じ込めもしない、しかし、無視もしないということなので。必要だ、どうしても自分の国にとって不利益、問題だという時にだけ、相手に対して忠告をしたり、あるいは制約をかけたりするという。それは幅がもちろん、あるのですけれど。関与政策は、結果として、わかりやすく言うと、相手になめられる。だから、こういうやり方はダメなのだというのが、再考という意味なので。こういうことではアメリカのリーダーシップを維持できないし、国際社会の秩序も維持できない。アメリカが強いリーダーシップを発揮して、必要な場合にはちゃんと手当てをしていくということでないとダメなのだという、過去の過ちというのでしょうか、…をもう繰り返すことはしない。これがトランプ政権の安全保障政策の基本ではないですか。北朝鮮に対してもそうだと思います」
中谷議員
「この20年間を総括したら努力が足りなかったということで。特にオバマ政権の時、たとえば、中国に対しては温暖化、これを合意させようとしてやっていましたが、南シナ海があれだけ中国が拡張してしまったのは、明らかにこれはミスであって。国防省はこういった問題を提起し、航行の自由作戦などをやらなければと言ったのですが、ホワイトハウスが全部はねたんですね」
反町キャスター
「なるほど」
中谷議員
「4人の国防長官が代わりました。非常に、そういう意味において、こういった力の空白がこういった現象を与えたわけでありますので、今回、戦略で打ち出したように、世界で力による外交・平和と言っていますけれど、本来はこうあるべきなんですよ。力がないと秩序が変わってしまいますので。米国が関与をしていくということが大切だという方針を打ち出したということだと思います」

新・NDS=国家防衛戦略 トランプ政権の『照準』は
竹内キャスター
「続いて、国防総省がNSS、国家安全保障戦略に沿ってまとめました、具体的政策の基幹文書、NDS、国家防衛戦略の概要を見ていきます。それがこちらです。NSSと同様に中露を念頭に置いた『テロリズムではなく、大国間の競争こそが最重要焦点』、さらに『アメリカ軍の競争力の劣化を認め、より強固な統合軍の構築を目指す』『友好国との同盟関係の強化』『核戦力の近代化』とありますが。渡部さん、『劣化を認め』と書いているのですが、これは何が劣化しているのですか?」
渡部氏
「これは相対的な話です。ライバルがアメリカの圧倒的な力に比べれば近づいてきたというぐらいですよね。だけど、それは近づかれているのだから、きちんとアメリカの努力も要るし、かつ同盟国との協力もいるぞと、これは素直な見方だと思います」
反町キャスター
「比較優位性が失われてきているぞという自覚が、ここに表れているという見方でいいのですか?」
渡部氏
「そうでしょうね。自覚もそうですけれど、これは同盟国に対しても、あるいは自国に対しても、もうちょっと防衛努力をしなくてはと。アメリカの同盟国に関しては、もう少し防衛努力をしてくれよと、こういうことですよね。冷静に見ていますよ、ということですね」
反町キャスター
「中谷さん、ここに正直に言っているのだろうと思うのですけれども、アメリカ軍の競争力の劣化を認め、より強固な統合軍の構築を目指す、アメリカ軍は劣化しているのですか?」
中谷議員
「そうですね。レーガンの時に非常に軍拡したんです。その時にかなりの装備をつくって、態勢をしましたが、当時のものがボロボロになってきて、近代化というものをしなければいけないということと。あと東欧の変化によって、冷戦が終わったということで各国ともに軍縮をしたんです。その結果、どうなったかというとロシアのウクライナの侵攻を招いたというようなことで、アメリカのみならず世界の態勢もポスト冷戦の中でかなり劣化している現象があるので」
反町キャスター
「劣化とは具体的にどういうことですか?」
中谷議員
「機能しないということですね」
反町キャスター
「飛行機が飛ばないわけではないですよね?」
中谷議員
「いや、ハードとしても1世代前に対して他の国はどんどん近代化していますので、遅れてしまうわけですね」
反町キャスター
「ほお…」
中谷議員
「ですから、ソフトにしても、ハードにしても、メンテナンスにしても、常に動けるようにしておかなければならないですけれど、そういった転換が非常に遅れてきていると」
反町キャスター
「稼働率とか、明らかに国防予算が潤沢だった頃に比べると、現在は落ちていると?」
中谷議員
「そうですね。日本で最近、イージス艦の事故がありましたけれども…」
反町キャスター
「ありました」
中谷議員
「原因は定かではありませんが、そういった装備の点でかなり修理とか、部品の交換とか、そういうことは必要だと思います」
反町キャスター
「森本さん、いかがですか?アメリカ軍の劣化の現状とその原因、どう見ていますか?」
森本氏
「この劣化というのは、どういうことかと言うと、競争力の劣化ですから」
反町キャスター
「ああ、なるほど」
森本氏
「これはどういうことかと言うと、アメリカがあらゆる分野において他の国との比較優位をアメリカは持っていた、その持っていたものが、各国のいろいろな軍事技術の近代化だかというようなものによって、アメリカが挑戦を受けて、絶対優位がドンドンと損なわれているというのがここで言う競争力の劣化という意味だと思うんです。これをとり戻すのだという考えですよね。とり戻す時に、たとえば、海軍の能力とか、空軍の能力というのは冷戦が終わって数十年の間、ほとんど地域紛争で戦闘に負けたことがないぐらい強力なものだったのですけれど、たとえば、陸軍の戦力というのは、いろいろなところでたくさん兵員が傷つく、あるいはテロを受けるとこれまでの近代化された統合軍というのが太刀打ちできないで兵員の損害や兵器の損害を招く、これを、つまり、絶対優位と言うのでしょうか、…をとり戻すための軍事力の再構築というものをやろうとしているのだと思うんです。ただ、そういう全てのことがアメリカだけでできるわけではないので、たとえば、技術で言うと『第3オフセット戦略』みたいな…」
反町キャスター
「それがここにある、下から3つ目の『友好国との同盟関係の強化』はそういう意味なのですか?」
森本氏
「うん、だから、アメリカが足らない部分というのを同盟国との関係を強化することによって補完をしていくということです。たとえば、アジア政策については、『インド太平洋戦略』というのは、これは何かと言うと、海洋の安定を維持するために、アメリカの予算で全ての世界の海洋を維持するということ、優位を維持するということはできないので、インド洋・太平洋をつなぐ、たとえば、インドだとか、オーストラリアとか、日本とか、アメリカが一緒になって、同盟国の相関関係を強化することによって、海域の安全を維持するという、こういう方法をとることによって全体としてアメリカが競争力の優位性をとり戻す、回復するということを狙っているのだと思うんですね」

日本の防衛力整備にどう影響?
反町キャスター
「アメリカの安全保障上における世界的な優位性を補完するために日本とか、他の同盟国の協力を求めているというのを我々はアメリカから言われた通りに協力することが良いのか、悪いのか…」
森本氏
「いや、それは両方の側面があって。アメリカのこれは、戦略を議論しているのだけど、我々にとってはアメリカの力を十分に使って地域の安定のために、つまり、同盟関係を強化することによって、我々の持ち出しというものをできるだけ少なくし…」
反町キャスター
「ああ、なるほど」
森本氏
「アメリカの足らない部分を補充する、補完する、補填する、補備する、ことによって、アメリカが十分この地域における役割を果たして、結果として地域の安定を維持することができれば、同盟国にとっては自国の安全に寄与するということなので。それは双方にとって利益があるという考えですよね」
反町キャスター
「ただ、中谷さん、アメリカが圧倒的な軍事力におけるスーパーパワーであれば、別に日本に対して同盟関係の強化をたぶん言ってこないですよね。安保条約は基地を提供して、その見返りとして片務性があってというロジックで過去何十年間やってきたではないですか?」
中谷議員
「はい」
反町キャスター
「それが、要するに、劣化して、比較優位性が失われたから、日本に対して同盟関係の強化を訴えてきているという、この状況は…。それでも自国だけでやるのだったら、GDP(国内総生産)比3%も4%も防衛費をつけなくてはいけないという中で、1%で済んでいるというのは、つまり、これがあるからだということで、よりマシな選択だとして、アメリカとの協力関係を維持しなくてはいけないと。こうやって納得しなくてはいけないのですか?という質問です」
中谷議員
「森本大臣の時からもそうですけれども、日米関係はむしろ進化していまして。ガイドラインを結んで、平時から有事に至る協力、日本も法律をつくりました。装備も、中期防は終わりますけれども、5年間で2兆円ぐらい購入もしていますし、また、HNSというホストネーションサポート、これは5000億円支払っています。これに対してアメリカは、日本は世界の手本だということで絶大な信頼を受けていますので。こういったガイドラインによって調整メカニズムをつくってちゃんと機能するようにしていますので。この点において、日米間において問題点はないと」
反町キャスター
「渡部さん、対日防衛要求に関してはどう感じますか?防衛協力なのか、装備品の購入なのか、いろいろな選択肢があると思うのですけれども」
渡部氏
「これはもちろん、自分で考える、自国の防衛産業をきちんと維持することは極めて大事な、まず日本の安全を守るために必要なので。ただし、もちろん、同盟国のアメリカ、あるいは他の国との協力もしながら、どちらかと言うと、日本の場合はこれまで、過去を振り返ると、どうしても武器輸出3原則があったりして、どちらかと言うと国際的な市場で競争できないような不利な状況があったので、そういうハンデも背負っているからこそ、今後ちょっと変えて、長くサステーナブルという言葉がありますけれど、持続的に日本の防衛産業を育てる部分も必要だし、と言って、ガチガチにそれを守ろうとすると、かえって育たなかったりするわけでという、極めて難しいですけれど。そういうことを考えるのと、アメリカとの期待ですよね、これは要求と言いますけれども、期待ですよ、アメリカのそれは。だから、あとは、日本は日本で同盟国としての、お金ではない価値というのがあるでしょう。たとえば、ホストネーションサポートをして、しかも、在日米軍がこの日本という場所で運用できるということが大事だということがわかるではないですか。そういうことを考えて、自分達でうまくバランスをとっていくということでしょう」

新・NPR=核態勢の見直し どう変わる?アメリカの核カード
竹内キャスター
「今月19日に発表されました、NDS、国家防衛戦略では、核戦力の近代化の必要性を指摘しています。これを受ける形で来月には今後5年間から10年間の核戦略の柱をまとめた、NPR、核態勢の見直しが発表される予定ですが、既に複数のアメリカのメディアがその草案とされる内容を報じています。それがこちら、『通常兵器による攻撃に対しても核使用を排除しない』『爆発力の低い核兵器の開発や配備』『海洋発射型の核巡航ミサイル新規開発の促進』となっているのですが、中谷さん、通常兵器にも核使用を排除しないとなると、核の役割が広がっていくということになりますか?」
中谷議員
「うん、けれど、これは2010年のオバマ政権の時のNPRにおいても、この通常兵器による攻撃に対しても排除しないと書かれていますので、従来の方針は続けてやるということ。それから、生物化学兵器に対して対抗するには核抑止が必要でありますので、そういった点でこういう第1項目というのは、私は必要だと思います」
反町キャスター
「先制不使用という言葉との関係というのは、アメリカは別に核の先制不使用を約束している国ではないですよね?」
中谷議員
「はい」
反町キャスター
「その意味で言うと、別に、先に使う、使わないという議論は既にアメリカの中においては議論の対象にはなっていなくて、普通の通常兵器に対しても使うぞということは我々、周知の事実として考えなくてはいけないという理解でよろしいですね?」
中谷議員
「いや、アメリカの核戦略というのは、曖昧戦略というのがありまして」
反町キャスター
「はい」
中谷議員
「使うとも言わないし、使わないとも言わないと…」
反町キャスター
「はい」
中谷議員
「…いうようなことで、非常にこういったものは、各国の、たとえば、核開発とか、生物化学開発とか、そういうのには効き目があるということです」
反町キャスター
「森本さん、いかがですか?この第1項目、通常兵器に対しても核使用を排除しない…」
森本氏
「まだ、明らかになっていないので、我々は推測しかできないのですけれども。どうしてかと言うと、もう昨年の秋ぐらいからだいたいのアウトラインができていて、1部の議会及び専門家に説明されているんです。それが1部リークされて、報道に載ったので、もう1度差し戻して現在、再検討しているので、おそらくそのリークされたものの1部が修正になって出てくるのだろうと思うんですね。だから、報道されたものをそのまま受け取るわけにはいかないのですけれども。敢えて言うならば、最初の問題については、中谷さんがおっしゃったように、まず生物化学兵器に対する攻撃に対して、核を使用するということを排除しないと。これは広い意味での通常兵器というのではなくて、特に生物化学兵器ですけれども」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「それから、核の先制不使用というのは先制不使用というものを否定するということなので、そのことについてだけは核戦力の中で核の使用に関する宣言を明らかにすることによって抑止力を高めると」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「使ったら、こちらが使うかもしれないぞということをキチッと言うということなので。核戦略に対して曖昧な状態にしているのは、つまり、いわゆる、どこにあるか、どこに存在するかということを否定も確認もしないというか、NCLDと言うのですけれど、そういう政策は維持されると思いますけれども、核兵器をもう少し柔軟に使うということについてはオバマ政権の時よりももう少し核の敷居が低くなるかもしれないので、核軍縮論者から言うと、こういう戦略というのが本当に良いのかどうかということについて1部に批判が出るかもしれないですよね」
竹内キャスター
「アメリカとロシアは核軍縮を進めてきたと思うのですが?」
森本氏
「ええ、これは、核軍縮については、まず戦略核については、今年、2018年の末までに1550ずつにするということで、そのプロセスがずっと続けられていてだいたい達成できるのではないかと言われているんです。これはアメリカだけがもう1550を切っていて、ロシアが依然…」
反町キャスター
「多いですね」
森本氏
「…多いということですけれど、たぶんこれはいつの段階かわかりませんけれど、昨年の防衛白書ですから、一昨年の末ぐらいだと思うのですけれども、今年の末までに新しいスタートという戦略核の削減合意を実現するという方向で米露とも努力しているので、たぶんそう難しくないのではないかと思うんです。ただ、オバマ大統領の時に、この1550をさらに1000にするということを1度、口にしたことがあるんですよね。これはロシアが反対して…」
反町キャスター
「は?」
森本氏
「ロシアの方が反対した」
反町キャスター
「どういうことですか、それ?」
森本氏
「どうしてかと言うと、1000になるとアメリカの戦略核戦力の方が、質が高い、たとえば、原子力潜水艦に搭載されるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の打撃力とか、生き残り性というのが高くなるので、数を少なくするとロシアの方が不利になる…」
反町キャスター
「ほお…」
森本氏
「絶対優位が維持できないということなので、ロシアの方が反対したので、もうこの構想はなくなってしまったのですけれども」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「一方、現在、問題になっているのはINF(中距離核戦力全廃条約)ですね。中距離核については、そもそも中距離核を廃棄するという合意ができているにも関わらず、このところ、たとえば、ロシアがヨーロッパのカレーニングラードに『イスカンデル』という射程500㎞の中距離核を配備した疑いが持たれている。極東においても同じ。つまり、アメリカが、昨年ぐらいから言い始めた、INF条約違反、これに対して、どう対応するかというのが、このNPRと言いますが、核態勢の見直しの中に対抗措置が出てくると思うんですよね」
反町キャスター
「なるほど。渡部さん、いかがですか?アメリカは、基本的に核戦力のこのバランスにおいてはロシアを強く意識して、ロシアに対する不信感みたいなのが強くあると、こういう見方でよろしいのですか?」
渡部氏
「そうですね」
反町キャスター
「ほお…」
渡部氏
「それだけではなくて、核の劣化というか、要するに…、劣化というか、時間が経っているので、古くなってきているので、それを変えなくてはならないのですけれども、国防予算がずっと低下傾向にあってなかなかお金がないので、予算も必要というのが1つ。もう1つは、オバマ政権の時に核軍縮を進めたので、むしろオバマ政権の時もそうでしたけれども、このNPRをする時というのは、同盟国に話を聞きに行くんですよ。あなた達は、アメリカの核の抑止態勢、大丈夫だと思っているのかと」
反町キャスター
「日本に来たのですか?」
渡部氏
「来ましたよ。話していますよ、関係者と」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「なので、それも考えるんです。だから、もちろん、日本の意見も入っていますし、あと当然のことながらロシアの核、カリーニングラードの飛び地の配備に不満・不安を持っている欧州、特にロシアと接しているような国の不安というのがあるんですよね。こういう部分に対応しなくてはいけないという意識はすごく強いですよ」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「ええ、これは先ほどのNSSでもそうです。ヨーロッパに対しての抑止の担保というのはすごく強くて、特に核は重要な要素になっているんですね。NATO(北大西洋条約機構)の過去の2つのサミットでも、核ということがすごく重要になってきているんです。これはロシアに対する懸念です」

アメリカの核戦略転換か? 日本への影響と対応は
竹内キャスター
「NPR、核態勢の見直しですが、報道されているような方向に、戦略が転換され、実行された場合、中谷さん、日本の安全保障にはどのような影響がありますか?」
中谷議員
「北朝鮮の核開発も進行していますので、中国もロシアも核を保有しています。通常兵器も中国の軍拡もありますので、アメリカの核の傘というのは日本の抑止力でありますので、引き続き、しっかりしたものが必要ではないかなと思います」
反町キャスター
「中谷さん、いわゆる北朝鮮のことで特にわかりやすく言うとアメリカの核の傘がここにちゃんと抑止力として存在することによって北が暴発しないということが日米間の協議のうえで、アメリカの核戦略の新しいNPRができている、こういう理解でよろしいのですよね?」
中谷議員
「はい。常にガイドラインにおいて調整メカニズムがありますので、そういう政策的なことは緊密に話し合いをしております。ガイドラインの最初に、米国は拡大抑止によって日本の安全を保障すると書かれていますので、そういった方針に基づいて、日本はそれ以外のところでしっかりと対処力をつけて、抑止力については米国に依存する形で日本の安全を守っていくという方針は続いていくと思います」
反町キャスター
「アメリカの核戦略の変化、強化と言っていいのかもしれませんけれど、それを日本はどう受け止めて、歓迎するべきなのかも含めて、どう対応するべきだと?」
森本氏
「基本的には中谷先生のおっしゃる通りで、まったく異論はないのですけれども」
反町キャスター
「なるほど」
森本氏
「この2番目に書いてある、いわゆる低威力の核兵器というものが…」
反町キャスター
「これは何に使うのですか?」
森本氏
「いや、これは何に使うかと言うと、つまり、低威力というのでしょうから、核兵器そのものが非常に大きな威力を持つのではなくて、たとえば、何キロトンみたいな、強度が非常に小さな核戦力を維持すること、つまり、開発することによって、たとえば、INFみたいな、中距離核に対応できる、核の敷居の低い核兵器を持つということになると柔軟に核兵器が使えることによって、核の抑止を高めることができるのか。あるいは核の敷居が低くなることによって、むしろ通常兵器か、核兵器か、よくわからないような状態で核兵器が使われてしまうという恐れがあって、むしろ不安定になるのだという議論があって、アメリカの中でもなかなか、どういう結果が出てくるか、非常に我々は関心を持っているのですけれども。そのことによって核の抑止の安定というものが、方向づけられるということですね。これまではどちらかと言うと、オバマ大統領の方針というのは、核の開発については非常にネガティブな、否定的なことだったのですけれども、今度のニュークリア・ポスチュア・レビューというのはたぶんそういうことではなくて、もっと安易にではないのですけれども、柔軟に使える、いわゆる低威力の核兵器を新たに開発することによって、核の抑止を高めるという考え方に立っているのだろうと思います」
反町キャスター
「そういう使い勝手の良い、小型の、コンパクトな核兵器ができることというのは、日本にとってそれは良いことなのですか?」
森本氏
「いや、これはたぶんアジアには持ってこないと思うのですけれど、あまりメリットがないと思うのですけれども。ただ、日本にとって拡大抑止が強化されるのであれば、それは良いと思うんです。私は、むしろこのニュークリア・ポスチュア・レビューより、もう1つの、現在、出てこないのですけれども…」
反町キャスター
「戦略ミサイルの方?」
森本氏
「いやいや、弾道ミサイル防衛」
反町キャスター
「ごめんなさい、はい…」
森本氏
「これの方がむしろ日本の安全保障政策に大きな影響を与えてくるのではないかなと思うんですよね。現在のミサイル防衛のシステムで打ち切りと言うはずはないですね。レビューが行われるということは新たな要素が出てくると。つまり、それが開発なのか、配備なのかはわかりませんけれど。それは我々のこれから調達しようとしているミサイル防衛システムにさらに先の話があるということなので、それが共同開発なのか、あるいは将来の新しいシステムを日本が導入するということになるのか。いずれにせよ、核と弾道ミサイルというのは引っついているわけですから、北朝鮮が間違って核付弾道ミサイルを持てる、運用できるということを自分達で過信してしまうと、アメリカが相当強い抑止の機能を持っていないと地域の安定が維持できないということになりますので、我々にとって、もう1つの、いわゆる弾道ミサイル防衛の政策レビューを同時に考えないと、これだけでは議論できないのだろうと思います」
反町キャスター
「なるほど。渡部さん、いかがですか?アメリカの核戦略の変化、どう見ているのですか?日本との関係において」
渡部氏
「まず爆発力の低い核兵器というのは、わからないのですけれども、リークした側の記事を読むと、リークした人は問題意識としては、これは困ったものだと、核不拡散の問題もあるし、軍縮にも逆行すると、ネガティブに見ている人達で…」
反町キャスター
「なるほど」
渡部氏
「私はその意見には何とも言えないのですけれども、まだ。ただ、それで言っていたのは広島とか、長崎級だろうと、原爆級だろうと、小っちゃいということは。確かに現在、北朝鮮も水爆実験に成功したと言って、原子力爆弾よりははるかに大きいわけですよ、もう比較にならないわけ。大きすぎると使えないという弱点はあるんですね、簡単には使えないと。小っちゃければ使いやすくなると、使い勝手は良くなる。それが逆に使うかもしれないと思うことで、抑止力を高めることができるのだろうという発想はあるだろうと思います。この話は割とトランプ政権だからと思っている人もいるかもしれないですが、トランプさんという人はそういうことまで深く考えたり知識があるわけでなくて、これは国防総省の考え方がここにきて出てきているのだろうと思います。これも、全貌を見るまでわからないと思いますし、もう1つは、日本が考えることはそちらではなくて、森本さんがおっしゃるようにミサイル防衛というところが喫緊に日本に必要だし、どうするかと。結構、予算もかかりますから。アメリカもそうですけれども、日本は少子高齢化で、よりお金の制約がありますから、どのぐらい賢く、そういう将来の防衛に投資するかと、まさにこれは保険と一緒で、どのぐらいまで起こりそうな病気とかにケアし、でも、保険貧乏にならないようにと。これは結構、これから本気で考える時期にきていますよね」

中谷元 元防衛大臣の提言 『米国の核抑止力は万全であるべし』
中谷議員
「核がなくなることには超したことはないのですけれど、変な国が核を持つから核抑止が必要になるわけでありますので。核廃絶の理想は掲げながらも、核が近隣にある間は米国の核抑止力、これは万全に機能すべきだと思います」

森本敏 元防衛大臣の提言 『日米同盟の強化とインド太平洋戦略の推進を図ること』
森本氏
「結局、アメリカの戦略に同盟国として向き合うためには日米同盟を強化すると。もう1つはアメリカと日本が共通のテーマとして持っている、インド太平洋戦略、これをどうやって両国で進めていくのか、これによって地域の安定をはかり、日本の国の安全を維持するということになるのだろうと思います。この2つをどのように組み合わせて、進めていくかということが大きな政策課題になるだろうと思います」

渡部恒雄 笹川平和財団上席研究員の提言 『熱すぎず温すぎず』
渡部氏
「こちらは今度、禅問答みたいな話になりましたが、『熱すぎず温すぎず』ということで、ほどよい温度は何という話なのですが。これは日本だけではなくて、安全保障というのはあまり強くしすぎても、逆の、相手に対する警戒感を与えて、リパーカッションしますし、と言ってもあまり緩すぎると今度、相手がなめてくるという話であって。ここをほどよくするのは本当に難しい話なのですが。これは特に今回、アメリカのNPRもそうですし、実はすごく同盟国にいい話なんです。かなり日本にとっては安心感のある話です。だからこそ安心しきらずにきちんとほどよい適正なレベルを日本でも考えてということ、だから、いいのですけれども、あぐらをかいていてはダメですよと。だから、温すぎずという話です」