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2018年1月24日(水)
中国の軍事戦略 『新型原潜』尖閣侵入

ゲスト

宇都隆史
自由民主党国防部会長代理
宮本雄二
元駐中国大使
朱建榮
東洋学園大学教授
小原凡司
笹川平和財団上席研究員

検証…習近平主席の野望 『習近平思想』憲法明記へ
斉藤キャスター
「中国の対日戦略を徹底分析します。今月18日と19日に行われた中国共産党の重要会議である中央委員会総会で習近平国家主席の名前を冠した指導思想が憲法に明記されることが確認されました。習近平体制の強化が進む中、今月11日には中国海軍の原子力潜水艦が潜ったまま尖閣諸島周辺の接続水域を航行しました。習近平政権は現在どんな対日戦略を描いているのか、日本はどう向き合っていくのか、を考えていきます。先週18日と19日、党中央委員会総会が北京で開かれました。これは今年3月に開かれる中国の国会にあたる全人代、全国人民代表大会に向けたものです。そこで習近平国家主席の名前を冠した『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』を憲法に明記する方針という方向で確認されました。名前が入るという点では現役最高指導者としては毛沢東氏以来とされています。今回は胡錦涛前国家主席の思想である『科学的発展観』も合わせて明記される方針ですが、胡錦涛前国家主席の名前は入りません。朱さんに聞きますが、この習近平国家主席の名前が明記されるというのはどんな形で明記されるのでしょうか?」
朱教授
「昨年の10月に中国の18…、19回党大会が開かれ、党の規約が改正されたわけですね。まさにここに書かれているような表現で『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想』というのは党の規約に書かれた。その前には『毛沢東思想』『鄧小平理論』『3つの代表』『科学的発展観』、次に習近平のナニナニ思想というようなことを書かれているので、そういう意味で、今回は昨年の党の党大会の決議というのを憲法の中にさらに明文化すると。それで一応、そのような大義名分化する、明文化するという手続きを終え、これからもっと実施に移していくというようなプロセスではないかなと」
反町キャスター
「朱さんがバーッと言われた、歴代指導者の政治思想をこうやってつくったのですけれども…」
朱教授
「うん」
反町キャスター
「これがそれぞれいったいどういうものなのかという、見ている人達にもわかるようにコンパクトに、1つ1つちょっと説明いただけませんか?」
朱教授
「毛沢東思想というのは、新中国をつくったこの毛沢東の全体的な思想で、建国の指導者の思想と。鄧小平理論というのは中国改革開放時代、その経済発展で中国を経済大国に導いた、その指導の理論と。そのあとの2つについては江沢民時代に自分が降りる直前に歴史に名を残すということで、2002年の党の規約に盛り込まれたのですけれども、あとで考えれば、江沢民以下は皆、建国世代ではないです。建国世代ではない人が中国の党の歴史、国家の歴史に名を残すというところで、江沢民の時にまず1つの前例をつくり、そうすると、胡錦涛さんの時も、私も『科学的発展観』というところは残すということでやってきたのですけれども。私から見れば、江沢民さん、胡錦涛さんの2つの思想、基本的には鄧小平時代の延長に入ると思うんですね。習近平さんというのはこれから、今回の党大会でも、これから新しい3つの発展の戦略ということを出したり、そういう意味で、新時代というのはわかるのですけれども、そこに習近平という名前がどうして入るのかというところは、いろいろ説があるのですけれども。私はある程度、期待を込めて解釈するならば、これからの5年間で中国が着手すべき経済・社会などの課題は山積して、そんなに簡単ではない。そういう意味で、習近平さんは完全に自分の名をつけたということで、自分が全責任をもってこれから対処していくのだというようなところで、ある意味、これからいろいろな難関を突破するために、権威づけというところもある程度、中国の中でも必要ではないかなと」
宮本氏
「国内に我々は強くなるのだと、これを実現できるのは中国共産党しかいないのだと、だから、我々の指導に従って、皆一緒にやっていこうではないかというための理屈づけですよね」
反町キャスター
「上の4つに比べると、習近平さんの場合には上の4つが仮にレガシーだとした場合、アメリカ大統領が任期終わりのところで北朝鮮に手を出したり、中東に手を出したりするようなもので、レガシーづくりだとしたら習近平主席の今回やろうとしていることというのは今後10年ぐらいやる可能性があるわけではないですか、それに向けてのビジョンを現在ここで言っている?ツールを現在ここで新しく持っている?」
宮本氏
「鄧小平の時代は、経済はゼロから始まりました。いかに経済を豊かにするかということで、ついにここまで、いわゆる中心国に近いところまで中国の経済は伸びてきたんですね。そうすると、経済も社会も政治も直面している問題が鄧小平の時代と本質的に違ってきているんですよ。だから、新しい時代のいろいろな諸問題に解決するために自分はこういうことでやっていきますということを書いたのがこの習近平の社会主義思想です。鄧小平理論と言われるのは、これは厚いです、こんなに。毛沢東思想というのはこんなに厚いです。要するに、何十年もかかって、ずっと発言してきたことが最後まとめて毛沢東思想になるわけです」
反町キャスター
「へえ…」
宮本氏
「そうして鄧小平が長いことやってきたのが鄧小平理論になるわけです。だから、習近平思想にはならないです、まだ。だから、『習近平の新時代の中国の特色ある社会主義…』、これが現在の習近平思想なので。こういうものをたくさん積み上げていって、5年後、10年後に、その時にもしかしたら習近平思想というのができあがっているかもしれないのですが」
朱教授
「そう、ええ…」
宮本氏
「現在の段階では…」
反町キャスター
「まだできていない?」
宮本氏
「できていない」

中国原潜が接続水域潜航
斉藤キャスター
「さて、習近平体制がさらに強固になる中、今月11日には、中国海軍の原子力潜水艦が尖閣諸島周辺の接続水域に潜ったまま航行するという出来事がありました。今月10日には、海上自衛隊が宮古島沖の接続水域で潜ったまま航行する潜水艦を確認しています。さらに、その翌日11日の午前には大正島の接続水域に入るのが確認されています。さらに同じ日、中国海軍のフリーゲート1隻も接続水域に入るのが確認されました。これに関して、その後、小野寺防衛大臣は、この潜水艦が『商』級の攻撃型原子力潜水艦だとして『海上自衛隊の護衛艦の警告を無視して航行を続けていた』と明らかにしたんです。これに関して中国の外務省報道官は11日の記者会見では『自らの領土付近の海域での行動は批難されるものではない』『中国海軍が海上自衛隊の活動の全行程を追跡し監視した』と述べたんです。しかし、15日の記者会見では一転して『把握していない』と述べたんです。宇都さん、この中国の言い分はどう受け止めていますか?」
宇都議員
「これは別々のことを言っているのだと思うんですね」
斉藤キャスター
「別々?」
宇都議員
「言っていることがひっくり変ったとかではなく、海上自衛隊はこの潜水艦を把握していましたから、艦艇によってずっと追跡をしていくわけなので、海の上だけを見ていれば、海上自衛隊の船がずっとこの尖閣の海域に近づいてくるわけですね。近くにいたフリーゲート艦は、我々もできるだけ近づかないようにしている中で、海上自衛隊の船が入ってきたので、自分達の領域を主張するために我々も近づいていったという主張が、上の主張なのでしょう」
反町キャスター
「なるほど」
宇都議員
「下の話は、いわゆる潜水艦がいたのでしょうという話になれば潜水艦というものはどこの国もその行動については秘匿するものですから、把握していない。もちろん、この報道官レベルだと知らないと思うのですけれども、こういう対応になって。別に矛盾していることとか、言ったことがひっくり返った話ではないと思います」
斉藤キャスター
「朱さんは、この11日と15日のこの食い違いというのですか、発言が違うことをどう見ていますか?」
朱教授
「そもそも、それは接続水域というのは領海ではないので…」
反町キャスター
「そうですね」
朱教授
「ですから、それを通ること自体は国際法でも、他の国の主権でも侵すものではないですね」
斉藤キャスター
「潜水艦であっても?」
朱教授
「潜水艦も含めて。ですから、そこが1つ。日本の自衛隊などのホームページを見ていても、太平洋側で、いろいろな日本の島や、いろいろなところで、接続水域をいろいろな国が、中国やロシアといったところが通っているわけですね。今回の中国の潜水艦というのもどうもその前の方から、既に接続水域にスレスレのところで通っていたので。ですから、これが潜水艦そのものについて、私はこれを中国がわざと、これが日中関係をぶっ壊すとか、私はそうは思わないわけですね。そもそもこれが他の地域でも、海域でも、接続水域というのは、中国の主張する島の接続水域にもアメリカなどの軍艦は通っているわけですね。さらに、もう1点言えば、これが日本も中国も皆、尖閣諸島のところは自分の領海・領土と見ているので、ですから、それについて、入った、入っていないかというところが、中国の外交官は答えられないわけです。いや、それは入っていないと言うことは、日本側の主張に対して合わせて、いや、日本の主張するところに我々は入っていないということ。だって、我々のところですから、入るのか、入らないとか、あなたとは関係ないと、そのようなところで曖昧に答えたと思います」
反町キャスター
「ただ、潜没航行する必要はないですよね?」
朱教授
「それはもう…」
反町キャスター
「接続水域にしても…」
朱教授
「いろいろな…、はい…」
反町キャスター
「小原さんに聞いた方がいいかな。小原さん、別に接続水域だからと言って通っちゃいけないと僕だって思いません。その代わりちゃんと浮上して国籍もわかるようにして、事前に通告するなりして、それで通るのがルールでしょう?」
小原氏
「接続水域は潜没航行の問題はありません」
反町キャスター
「いいのですか?これは、接近してくる、領海に侵入する危険性があるから、日本の海上自衛隊は追跡をしたと?」
小原氏
「はい」
反町キャスター
「そういうことでよろしいのですか?」
小原氏
「潜没している潜水艦というのは非常に脅威度が高いです。ですから、ルール上、接続水域というのは公の海ですから、浮上する必要はないのですが、しかも、中国も領有を主張している尖閣諸島の近く、その接続水域に潜没したまま近づいてくるのは、日本は緊張して当然だと思います」
反町キャスター
「そうですよね」
小原氏
「潜没している潜水艦というのは、潜没して隠密裏に機雷を撒いたりですとか、あるいは潜搬入、特殊部隊を送り込んだりということもできる、非常にいろいろなことができるんですね」
反町キャスター
「なるほど」
小原氏
「ですから、潜没したまま近づいてくるのは、敵対攻撃と見なすのが一般的だと思います」
反町キャスター
「なるほど、接続水域であろうと?」
小原氏
「領海に入ってきたら…」
反町キャスター
「入ってきたら?」
小原氏
「これは国によっては撃沈することもあります」
反町キャスター
「写真があるのですけれど、この潜水艦の特徴というのはどういう特徴があると見ているのですか?」
小原氏
「はい、これは『商』級と簡単に言っていますが、093Bと言われる、その中でも新しいタイプの船だと言われます。それはこのセールの後ろ、この部分ですが、ここに膨らみがあるんです。これまでの093型というのはこの膨らみがありません。この093Bのこの膨らみ、セールの後ろの膨らみには12発の巡航ミサイルが搭載されていると言われています。これ最新型です」
反町キャスター
「なるほど」
小原氏
「ですから、今回、このような写真が公開されたのもたぶん初めてだと思います」
反町キャスター
「巡航ミサイルを積んだ原子力潜水艦が日本の接続水域を潜没航行して通りました。これは宇都さんに聞いてもなかなか…、よくあることなのですか、こういうことって?」
宇都議員
「いや、ないですよね」
反町キャスター
「ないですよね」
宇都議員
「ないですし、中国が領有を主張している海域ですから基本的な国際的な感覚で言えば、お互いに軍事的な緊張を高めないように潜没航行するにしても接続水域を迂回することは十分できるわけですから、迂回しながら通るということはできるのですが、中に通ってきたということは非常に脅威を感じる行為なのだと思います」
反町キャスター
「そういう状況下にある中で、中国から見れば、これは中国の領土だという海域、領海ないしは接続水域に、日本の潜水艦もその中を日本の潜水艦がグルグル動いているというのは、これはあまり答えられないですよね、たぶん?」
宇都議員
「掌握していません」

軍事戦略とその影響
斉藤キャスター
「昨年の10月の中国共産党大会で、習近平国家主席が発表した『新時代の中国の特色ある社会主義思想』の中には、軍の今後についてこのように書かれています。『党の指揮に従って、戦闘に勝利でき、優れた気風を持つ人民軍隊を建設し、世界一流の軍隊に築き上げる』と目標を掲げているんです。具体的に言いますと、『2035年までに国防・軍隊の現代化を基本的に実現する』『今世紀中葉までに世界一流の軍隊にする』ということなのですが、朱さん、この世界一流の軍隊というのはどういう軍隊なのですか?」
朱教授
「現在の中国のここ数年の軍事改革というのは明らかにアメリカ軍の組織や構成ということを研究して、それを取り入れてやっているわけですね。ですから、アメリカに全面的に、まず2030年頃までにGDP(国内総生産)でまずアメリカに追いつく、2050年までに軍事力の技術や運用能力などもアメリカに追いつくという意味ではないかなと思います」
反町キャスター
「小原さんはこれをどう見ていますか?『世界一流の軍隊』はどういう意味なのですか?」
小原氏
「はい、朱さんがおっしゃったように、アメリカに並ぶということだと思います。目的、ここまでのですけれど、目的はアメリカが中国の経済発展を妨害するのを拒否する能力を持つということですね」
反町キャスター
「軍事力で拒否するのですか?」
小原氏
「軍事力で。それは、中国は、アメリカは軍事力をもってしてでも中国の発展を妨害すると思っているからで。しかも、もう少し遡ると、それは中国が現在の国際秩序を変えようと思っているからだということにもなるのですけれど」
反町キャスター
「なるほど」
小原氏
「この『一流』という意味は、数ではないと思います。習近平主席が掲げる矛盾というのは、量と質の矛盾を解決するということですね。これからは質なのだと。これはこれまでの、ただモノがあればいいのではないと。これからは、その質を問うのだということだと。これは実は軍の改革もその通りで、陸軍は小型化するのだということを言っているんですよね」
反町キャスター
「ありました、兵隊の数を減らすんですよね?」
小原氏
「はい、近代化をして質で勝負するんだということを言っている。と言うことは、これまでの軍隊のあり方を変えるということでもあるんですね。もう1つは、習近平さん、これは党総書記の立場としてですけれども、昨年の建国記念日の時に行った演説の中では、ほとんどの部分を党の命令に従えということだけを言っているんですよ。それだけ、党の掌握ということに現在、力を注いでいる。19回党大会では『今後改革が必要なのは武警だ』とちゃんと名指しをして言ったんですね、武装警察ですね。今回、武装警察の指揮系統が変わりました。このようにして軍をとにかく党のちゃんと指揮下に置くのだと、党の中央の指揮下に置くのだということを進めていって、小型化をして、質を高めていく、これが完成するのがだいたい21世紀半ばという言い方をしているので、2050年頃だろうということなのだと思います。ただ、これは1980年代半ばから言っているんですよ」
反町キャスター
「宮本さんはこの『世界一流の軍隊』を目指す中国の狙いは何だと見ているのですか?」
宮本氏
「もちろん、中国の人達、人達と言うか、中国は弱かったから酷い目に遭ったのだというのがあるので…」
反町キャスター
「はあ?」
宮本氏
「だから、中国が侵略され、ああいうふうに屈辱的な100年近い日々を過ごしたのは弱かったからだということがあるので、強くなきゃいかんということがあって。経済もそうですけれども、軍事的にも強くありたいというのは、いわゆる願望としてあるんですね。ところが、客観的に見て、人民解放軍を眺めれば、現在の人民解放軍は実はそんなに世界一流の軍隊からほど遠いですね」
反町キャスター
「あっ、そうなのですか?」
宮本氏
「これは軍の中も小原さんがご存知ですけれども、客観的に申し上げて、現在、中国の組織の中で腐敗が最も1番多いのは人民解放軍ですよ」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「それから、ポストがお金でやりとりされている。だから、贈賄罪とか、収賄罪とか、軍の指導者が皆、贈賄罪、収賄罪、今度の総参謀長は、これは贈賄罪で捕まったわけ。ですから、お金のやりとりをしながら軍のランクが決まるという、そういう軍隊が強いとは思われないでしょう」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「すなわち本当に軍人として素晴らしい人が指揮官とか、最高司令官とか、そういうふうになっていないですよね」
反町キャスター
「ほう…」
宮本氏
「だから、そういうことから始まって根本的に人民解放軍をもっとまともな強い軍隊にしたいというのが習近平さんの想いだと思いますよ」
反町キャスター
「話を聞いていると、そこにあるような『優れた気風を持つ人民軍隊を建設する』というのが、実は非常に質素な目標に見えてくるんですよ。世界に冠たる軍隊をつくるのではなくて、普通の軍隊になろうよという、そういう意味ですか?」
宮本氏
「普通と言っても、まあ…」
反町キャスター
「要するに、先進国の…」
宮本氏
「…先進の軍隊だと思いますけれども」
反町キャスター
「ほう…」
宮本氏
「ええ、ですから、気風も、そういうふうにお金中心の軍隊であれば、気風は育ちませんよ」
反町キャスター
「そうですよね」
宮本氏
「ですから、まずはこういうところから根本的にやり直さなければいかんということですね」
朱教授
「この5年間は、中国、前の軍事委員会の副主席、言ってみれば軍のナンバー2、ナンバー1は党主席ですから、制服組の2人の主席、副主席、最近はもう1人副主席、皆、これが、贈賄罪とかで捕まったわけですね。軍を退役した人を含めれば、この将軍級は60人以上、現在、追放され、取り調べを受けているわけですね。そういう意味で、中国の軍というのは内部の現実はかなり深刻な問題があると。武装警察は、前の政治委員と司令官、いずれも現在、皆、拘束されて取り調べを受けているところで、内部での問題というのは、かなり深刻であることは間違いない。習近平さんはまさにそれは内部のことを1番知っているトップですから、それを何とか、これを先にやらないといけないというところが『優れた気風を持つ軍隊』というのは、普通だったらそれが世界的に戦えるような軍隊、この『気風』というのはまさにそういうのが最低限の清廉潔白で命令系統をしっかりすると…している軍隊にしたいと」

どうなる? 日中関係改善 中国の『思惑』は?
斉藤キャスター
「日中関係は、昨年の後半から関係改善に向けて動き始めていました。11月から見ていきますが、まずは安倍総理と習近平国家主席は日中首脳会談をベトナムのダナンで行いました。その時に、両首脳は関係改善に意欲を示していました。12月に入りますと日中高級事務レベル協議を行い、この時に日中の偶発的な衝突を防ぐための『海空連絡メカニズム』の構築や運用開始について前向きな進展がありました。13日には、南京事件80年の追悼式典が行われました。習近平国家主席、これは3年ぶりに出席しました、ただ、演説は行いませんでした。年末28日には、自民党の二階幹事長が中国を訪問して習近平国家主席と会談を行いました。この一連の動きを見てみますと、日中関係は改善に向けて雰囲気が高まっているのかなと思うのですが、今年に入って中国の原子力潜水艦が尖閣諸島周辺の接続水域に入ったわけですよね。宇都さんに聞きますが、中国は日本との関係改善を本当に望んでいるのですか?」
宇都議員
「はい、望んでいると思いますね。それは各外務省の各レベルから話を聞いてもそれぞれのレベル、レベルで関係改善をしようというアプローチ、こちら側ももちろん、そうなのですけれども、それは間違いなくあるんですね。ただ、その背景に何があるのかと言うと、1つは、先ほど言った、習近平さんの思想、彼が目指すものに対して1番大事なのは経済ですよね」
反町キャスター
「はい」
宇都議員
「経済をうまく軌道に乗せていくために、どうしても現在、AIIB(アジアインフラ投資銀行)もそうです、一帯一路もそうです、うまくいっていないところが、非常に多いですから、そういうところに日本に協力してもらうところは協力してほしいという気持ちがたぶん彼らにはあるだろうと思います。もっとさらに、うがって見れば、できれば中国包囲網みたいなものを何とか日本の一角を崩すことによって、もう少し緩やかにしてほしいという気持ちはあるのだろうと思いますね」
宮本氏
「おっしゃったように、経済ですよ。その経済を中心に考えていきますと、中国の現在、経済改革というのはもう胸突き八丁のところに来ていまして、質的にも、構造的にも大転換を遂げないと、引き続き持続的な経済成長は難しいだろうと言われていますから。そうすると、考えてみると日本がちょっと前というか、10年か20年前に来た道を現在たどっていますので、日本に実は答えは結構あるんですよ。従って、日本と現在、経済関係を強化したいと、もちろん、一帯一路もありますし、それ以外の対外的な配慮もありますが、国内の経済発展のために日本との関係改善を必要としていると思いますよ」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「従って、そういう方向でやっているのですが、日本問題というのは、中国では簡単に国内問題になる極めて扱いにくい問題ですね。従って、これを慎重にとり進めないと、習近平さんを揺さぶりたいという人は、いろいろな理由で揺さぶりたい人がたくさんいますから…」
反町キャスター
「鉄板の権力基盤になった、なったと…、まだなっていない?」
宮本氏
「いやいや、これは表面的にはそうですけれども、まだまだ安心して大きな一歩を踏み出せるという、そういうところまできていないですよ」
反町キャスター
「ほう…」
宮本氏
「これを固めるために1歩1歩いろいろな努力をしておられ、人民解放軍の掌握もその1つですけれども、武装警察をさらにやるというのもそういうのも全部、国内基盤を安定させるための大きな手です。そのプロセスにありますので、今日この時点をとれば、習近平さんは大胆に、他の人のことを無視して、日本の関係を進めるという状況ではないですね。慎重に対応しなければいかんということで2014年に安倍・習近平会談が実現してから、ここまで時間がかかってきたというのが私はあると思いますよ」
反町キャスター
「小原さんはどうですか?今言われたように、習近平体制というのが鉄板・盤石ではないのですか?まだ、日本に急激に接近すると国内保守派から、お前、なぜ日本と仲良くしているんだよと突き上げられる、そういう状況もあり得るのですか?」
小原氏
「はい。ただ、党中央はこの共産党の権威を高めなければならないということで、ある程度一致はしているのではないかと思います。これは2012年に胡錦涛政権から習近平政権に移る時にも、胡錦涛元主席は習近平主席にうまくスムーズに権力が移譲できるように配慮したと思いますし、軍の中の摘発というのは実は胡錦涛時代からやっているのが流れてきているんですね。それでも完全に掌握するということは誰にもできないのではないかとは思います。軍だけにしても毛沢東でさえ完全に掌握していたわけではありませんから、これが完全にできているということはまずあり得ないと思います」
反町キャスター
「朱さん、話を聞いていると、中国が日本との接近において、いろいろ得たいものがある、これはわかりました。となると短い時間で聞くのは無理だとわかりながら敢えて聞きますよ。尖閣の問題です。たぶん、これが最後までノドに刺さったまま、なんだかんだやろうとするとそれが引っかかって…、歴史認識の話はどうにもならない、これは過去を消せないのだから、尖閣の話はどう処理して次に進んだらいいのかという、具体的なビジョンを中国は持っているのですか?」
朱教授
「その点…」
反町キャスター
「日本が飲めないヤツはダメですよ…」
朱教授
「いや、その点は、ある意味で1970年代、1980年代の日中が、暗黙の了解で、それをもう触れない、棚上げにすると。当時そのような暗黙の了解があったというのは、いろいろな証拠があるんですね。ですから、そういうようなことをもう1度、そのような、それをまさにおっしゃったような、日中関係に刺さったトゲにならないように、それを、その部分で互いに日中関係、他のところをドンドン発展させて、その部分で、その比率、比例というのはますます小さくなる、互いに触らないようにこれから日中で海上連絡メカニズムができると、たとえば、その後、互いに尖閣諸島周辺の船、公船を含め、出入りというのは減らしていく。ひいてはそこに共同開発が現在すぐできないとしても、そういうところで互いに、そういうのが日中関係に邪魔にならないようにいろいろな合意していくと、避けていくとか。そのようなところ、歴史問題も含めて、共通するのはトゲになっているものは、真正面から抜くというのは、それぞれの国益、ナショナリズムがあるので、それはできない。ですから、それはフタをする、棚上げにして、日中関係がもっと大きくなれば、それ自体が相対化して小さくなっていく、それしかないと思います」
反町キャスター
「どうですか、宮本さん?」
宮本氏
「よく日中に暗黙の了解があった、なかったということで大騒ぎになっていますけれども、外交の現場をやってきた人間からすると、もう1つの問題で正面からガチンコぶつかっている時に、それをちょっと脇に置いて、前に進むためには暗黙の了解しかないですよ」
朱教授
「うん、そうですね」
反町キャスター
「フフフフ…」
宮本氏
「ね?自分の立場は、自分の立場は…」
反町キャスター
「質問を変えますよ、暗黙できない…、どうぞ」
宮本氏
「暗黙しなかったら、この問題はずっと残ったままで、日中関係は進まないから、進まなかったらすぐ不利益をお互いに被ると。一応、領土に関する問題については、立場は貫いたと、しかし、それ以外の利益は失ったと、そういう選択をするということになるんですね」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「しかし、これを、自分達のメンツというか、立場を放棄するのではないですよ、暗黙の了解、決して放棄していないですよ。しかし、同時にこちらに利益を増やすことができるというやり方を先人達はとってきたわけですよ。ですから、そこをもう1回、知恵を出す必要があるんです」
宇都議員
「正面からぶつからないというのは、僕は政治の知恵だと思うんですね。ただ、暗黙の了解で棚上げにしたものを先に触れてきて、中間線を開発し始めたのが中国側ですから」
反町キャスター
「はい」
宇都議員
「ですので、日本にとってみたらこの暗黙の了解というのが既に信用できないと。彼らが棚上げにした時点で、南シナ海も実際ああいうことになっていますし、中間線だって現在でもこんなことになっていますし、現在、尖閣がこうなっている。これ以上、譲れないというのは日本側の姿勢としてもう染みついている、これは仕方ないですね」
反町キャスター
「では、公共物を建てるのですか?港をつくる、灯台をつくる、やってしまうのですか?」
宇都議員
「そこまでいくと、また、正面からぶつかることになりますが、そこはまた、知恵の出しどころだとは思うのですけれども。それも選択肢の1つではあると思います」
反町キャスター
「触れないようにして、経済交流や文化交流を進めていくことに関しては、そちらの方が、リスクがないと感じますか?」
宇都議員
「うーん、でも、先ほどもおっしゃったように、中国もだんだん時間をかけて変化はしてくるでしょうから、その変化に対応して、どこまで実際にぶつかっていけるかというのを探っていくのは政治だと思いますね」
反町キャスター
「中国にもメンツがあるから、接続水域に入ってくる海警の船というのは3隻とか、4隻とか、これは減らしませんよね?」
宇都議員
「減らしません」
宮本氏
「マスコミの方に申し訳ないですが…」
反町キャスター
「はい、どうぞ…」
宮本氏
「マスコミの方が知らないうちに経ってみたら、いや、今年、中国は来てないぞとか、え?何か知らんけど、結果として、中国の船が来ているのが大幅に減っているとか、そういうのが何かできないかなと思いますけれど」
反町キャスター
「どうですか、小原さん?そんなことがあったら僕ら黙って見ていますよ」
小原氏
「流れの中でも波というのがあって、強く出てきたり、抑えたりという、これが大きな流れの転換点になるのかどうかというのを私達はしっかり見なくてはいけない」
反町キャスター
「今年が?」
小原氏
「いや、それだけではなく、たとえば、この潜水艦が入ってきたのは今後、中国が軍事力を使って尖閣を獲りにくるような転換点になるのか、ならないのか。でも、これはたぶんならないということだろうと私は現在のところは思っていますが。これはその波として強く出てきた波なのだと、どう捉えるかといった、これは分けて考えないと。日中関係の改善も国際社会の中ではアメリカの中国に対する対応が変わってきた中にあって、中国としてはバランスをとりたいという感覚もあると思いますので。そうしたものが永久に日中関係を改善させようとしているのかどうかと、大きな流れはどうなのかというところを見なければいけないですし、これは相手を見るだけはなくて、自分の意図はどうなのかと。そのためにどう働きかけていくかというところまで考えなければいけないと思いますね」
朱教授
「日中関係が本当に信頼と裏のパイプというところが大事だと思いますね。外交の公式の場で言えないものを、裏で、互いに確認しあうとか、そのようなことは1970年代、1980年代の日中関係にいっぱいありました。1978年の当時の平和友好条約の前後にも中国の多くの漁船が係争の海域に来たと。その後、裏でそのようなことで、それが発生しないようにと、そのようなところは裏で互いに確認しあったり、あるいはそういうことはどうなのかと。現在、今回の潜水艦の話でも、本当に日中関係が良ければ、そのことはいったい何なのというようなところで、現在の日中が確認できるような関係ではないですね。米中は逆に間違いなく、現在、南シナ海では互いの行動を事前に、相手はそれが全部わかっている…」
反町キャスター
「行くよと?」
朱教授
「…うえで、私はこう対応するよと、そのような関係で、日中というのは、私は信頼関係というところをつくるのが極めて重要だと」

安倍政権の対中外交
斉藤キャスター
「さて、安倍総理は、一昨日の施政方針演説で、日中関係に触れました。『日本と中国は切っても切れない関係。大局的な観点から安定的に友好関係を発展させる』『ハイレベルな往来を深めることで、日中関係を新たな段階へと押し上げていく』。これは皆さんに聞きたいのですが、日本はこの中国にどう向き合っていくべきだと考えますか?まず宇都さんから」
宇都議員
「安倍総理が『安定的に友好な関係』と言われましたけれど、政治ワードだと思うんですね。私はこの共通の価値観を持てない状況の中での真の信頼、あるいはお互いの相互関係というのを築くのは難しいと思っています。ただ、総理が言われるように、お互いに重要な関係であることは間違いない、切っても切れない関係ですから。その中でどの程度のお互いの協力関係を深めていけるかという、その知恵を出していこうというような話だと思います」
斉藤キャスター
「宮本さんはいかがですか?」
宮本氏
「日中関係は、中国が日本を追い越して、お互いの国民感情が整理されていない。そういう、従って、これまでは経済関係がうまくいけば、日中関係は戻ったんですよ。しかし、昔の関係にもう戻れないという状況に現在、日中関係はなってきています。ますます日中関係はマネージメントが難しい関係になったということですね。そうであればあるほど、2つの側面、1つは、政治指導者が、両国が対立して、ケンカしていていいことは双方にとってまったくないですね。両国が安定した協力関係を持つというのが間違いなくそれぞれの国にとって正しい政策です。それを実現するために、両国指導者が相当努力しないと難しいということと、それから、中期的にはまだまだお互いに誤解が多いので、ですから、これを少しでも是正して国民レベルでもう少し親近感を増やさないと国民的な基礎も落ち着かないということで、上の方は政治指導者がそれを自覚して対応していただきたいといことと、国民レベルでももう少し相互理解を深めて、もうちょっと本当に100%に近づくのは難しいですけれども、現在よりは近づく必要があると思っています」
斉藤キャスター
「朱さんはどう考えますか?」
朱教授
「日中国交正常化のその原点に戻って互いに新しい未来をつくろうと、そのような気持ちというのは当時、国交正常化の文書に、互いの関係というのは体制の違いを超えて相互友好していくと。しかし、現在の日本は我々の価値観とお前はどうせ違うから、相手から見れば、見下ろされるような形、日本は先進国、だから中国は後進国、そのようなことより…」
反町キャスター
「日本の5倍のGDPを持っているんですよ?」
朱教授
「だから、そういう中で、一方、ベトナムは中国とまったく同じ体制、しかし、日本もベトナム対して、それは言わないですね、あなたは体制が違うのだと。ですから、そこで見ると、中国は日本がどこか中国と対抗しようとしているというふうには見えるんですね。私が言いたいのは、まさにそういうところの疑念を互いにとっていくこと。一方、現在の新しい問題というのは、中国も現在のネットの時代で若者がネットを使って一種のナショナリズムが、かつては毛沢東、周恩来が抑えられた、しかし、現在は中国の国民がいろいろな自己主張をし始めた。そういうような中で、日本も同じですけれど、そういうようなところで、国民の大半が互いに、それが1つ歴史問題、島の問題で火がつくと皆、相手が悪いというところになるので。そういうところの、火になるようなところは、なるべくつくらないで、相互に利益になるような、あるいはかつての日中は1つのシンボル、たとえば、上海の郊外の宝山製鉄所、日本が援助してつくったと」
反町キャスター
「ありました」
朱教授
「これからの日中というのは、中国が現在抱えるのは環境の問題、高齢化の問題、農業の問題、あるいは内陸部は水が絶対的に不足、砂漠、そのようなところで、日中で、日本もかつていろいろ支援したのと同じようにもう1つのシンボリックな、あるいは一帯一路で、第3国で日中が協力するモデルをつくっていく、そういうようなところで両国が利益を共有できるのだというところに持っていくのが大事ではないかなと思います」
反町キャスター
「小原さんはいかがですか?」
小原氏
「信頼とか、友好という言葉というのは、美辞麗句で、実際のところ、国は何をするのかと言えば、自分の権益を守るわけですし、それを発展させようとすると。それを実現するために相手といかに衝突しないかというレベルでは、これは外交のレベルでは、時に離れ業と言われるようなこともできるのは人間関係であり、信頼関係があるというのが事実だと思います。ただ、日本が中国と、という、国のレベルでどう付き合っていくのかと言うと、衝突は避けながら、日本の国益を最大限にしていくということなのだろうと。その意味では、中国と付き合って得られるものはちゃんと得なければいけないし、受け入れられないということは受け入れられないということを言う。その中でいかに交流を保つ、チャンネルを保つことによって、その部分での信頼というのは必要だと思うのですが、国として信頼・友好というのは政治的な言葉なのだろうと。その現実的な部分を忘れると、信頼を裏切られたというような感情になると、これは非常に危険ですから、お互いにそれは現実的に、自分の国民がいかに豊かになるかということを考えている、それぞれの大意なのだということはしっかり考えておくべきだと思います」

宮本雄二 元駐中国大使の提言 『硬い手と柔らかい手』
宮本氏
「私は『硬い手と柔らかい手』と書きました。いわば大人の関係をつくるということですね。昔、中国の友人から日本は中国と仲良くしようとすると両方の手を柔らかくしてしまうと、硬い手を持っていてもいいのだよということを言われたことがあります。最近、中国の人も仲良くしようと思えば、全部柔らかい手で来てほしいとこう言うんですね。これは両方とも大人になって、譲れないところはお互いに譲れない、従って、硬い手でくる。しかし、同時に、協力関係を深める、それは柔らかい手。硬い手、柔らかい手、両方あるのが大人の関係だということを理解してやっていくということではないでしょうか」

朱建榮 東洋学園大学教授の提言 『日中ともに海の安全』
朱教授
「海が現在、日本が中国に対して、特にこれは脅威と感じているところで、アメリカも同じことですけれども。私の聞いた話で、現在の中国はアメリカに対して、海上の、シーレーンというところで不安があれば、米中共にやろうではないか、パトロールですね。1980年代、実は米中が先に南シナ海の共同訓練をやったんです。これから米中、日中とも海、シーレーンの懸念があれば共にそこで努力する、そのようなところで信頼をつくっていくのが大事ではないかと思います」

小原凡司 笹川平和財団上席研究員の提言 『大きな潮流を忘れず それぞれの波に対応』
小原氏
「大きな流れということでは、尖閣に限って言えば、中国は尖閣を諦めることはない。ただ、現在は海警局というコースト・ガードを使っている、民間です。今回の潜水艦の行動が大きな転換点になったのかどうかということはしっかりと見極め、そうでないとするならば、それぞれの波にはしっかりとまたそれぞれの対応をしていく、そういったことが必要ではないかと思います」

宇都隆史 自由民主党国防部会長代理の提言 『戦略的互警』
宇都議員
「中国を過小評価せずに、対等なライバルと見て『戦略的互警』と、恵みの恵ではなく、お互いに警戒をしつつも、戦略的に付き合う仲間というポイントを掲げました。3つあって、まず持久戦を覚悟する必要があること、過度な期待はしないこと、領土・安保といった原則は絶対に曲げないこと、このうえで戦略的に付き合っていくことだろうと思っています」