プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2018年1月23日(火)
TPP11&日欧EPA 歴代担当者が徹底解析

ゲスト

西川公也
内閣官房参与 元農林水産大臣(前半)
鈴木宣弘
東京大学大学院農学生命科学研究科教授(前半)
甘利明
元経済再生・TPP担当大臣(後半)
菅原淳一
みずほ総合研究所政策調査部主席研究員


前編

『TPP11』首席交渉官会合 『3月署名式開催』で合意
竹内キャスター
「昨年アメリカを除く11か国で大筋合意したTPP11の主席交渉官会合が昨日と今日、東京で開かれ、早期署名に向けて議論が交わされました。また、昨年12月に日本とEU(欧州連合)の間で妥結したEPA、経済連携協定も署名に向けた詰めの作業が進められています。今夜前半は、TPP11と日欧EPAが日本の農業に与える影響と攻めの農業への課題について、後半は、アメリカ・中国の2大経済大国に対する日本の通商戦略のあり方について考えます。ちょうど1年前の今日、アメリカが離脱したTPP、環太平洋経済連携協定ですが、昨年11月、アメリカを除くTPP11として大筋合意に至りました。署名に向け残された課題を克服するため、昨日と今日の2日間、東京で主席交渉官会合が開かれ、その結果について茂木経済再生担当大臣が会見を行いました。今日の会合で合意に至ったポイントがこちらです。『TPP11の協定文を最終的に確定し署名に向けた準備を進める』『3月8日、チリで署名式を行う』ということですね。まずは西川さん、今回のこの主席交渉官会合の結果はどのように受け止めていますか?」
西川氏
「私は、党で最初からこのTPP問題を扱ってきました。本当に難航に次ぐ難航でありましたけれども、今日こうして落ち着いたということは、3月8日には署名ができると信じて、本当に良かったなと思っています」
反町キャスター
「鈴木さん、いかがですか?内容は細かくこれから聞いていきますが、今日の現在の段階で合意しました。11がまとまりました。3月8日署名式、前後の日本の国内法の制定も含めて、国内での準備作業も一気に加速します。現在の状況をどういう思いで感じていますか?」
鈴木教授
「1年前にトランプ大統領がTPPを離脱すると宣言した…」
反町キャスター
「ちょうど1年前なんですよね」
鈴木教授
「そうですね。これはトランプさんが思いつきで離脱したわけではなく、その前にアメリカ国民の78%がTPPは賃金が下がる、失業が増えると、国家主権の侵害であると、職の安全が脅かされると、そういうことで猛反発した。それが大統領選挙でどの候補もTPP反対と言わざるを得なくなったという、このアメリカの世論というのは重いわけで。このことについては、我々は、日本はTPPを推進するために邁進してきましたけれども、なぜアメリカの国民がそういうふうに否定したのかということについてはもう1度、冷静に議論する必要があると。特に凍結項目が22項目…」
反町キャスター
「22項目あります」
鈴木教授
「…あるということはそれだけTPPには問題があるということの象徴でもあるわけですよね。そういう点については引き続き、きちんと議論をしていく必要があるなというのが現在の感想です」
反町キャスター
「菅原さん、22項目の凍結項目は具体的にどういうものなのですか?」
菅原氏
「主に交渉でアメリカが主張していたものという言い方がされていますけれども、22のうちの11項目、半分が知的財産に絡むものということで。例の最後まで交渉で揉めたバイオ医薬品のデータ保護期間の問題とか、そういったものを中心に凍結されたということで。22というのは、TPP全体から言うとかなり少ない。今回のこのTPP11、11か国での交渉の最中も、報道では80とか、そういったような数字も出ていた中で、22まで絞り込んだということは非常に良かったというか、よくここまで絞り込めたなという感じですし、全体として見ると、自由化の水準も、ルールの水準も、オリジナルのTPPのものを維持できていると、そう評価していいと思います」
反町キャスター
「菅原さん、その22項目というのは、鈴木さんの話からすると、それは懸念の対象だという話になるのですけれども、22項目というのは、つまり、アメリカが戻ってくる時のために、ここの部分は決着しないで、あなたが戻ってきたら、いつでもこの状況で戻れるよというアメリカに対する誘い水的な意味もあって、22項目の凍結となったのか、ここはどう見ています?」
菅原氏
「そうですね、2つ意味があると思いますけども。1つは、今、おっしゃった通りですね。アメリカとしてはそれを実現したいのであれば、TPPに戻っていらっしゃいよということです。もう1つは、他の国はアメリカ市場に参入できるから、ここはアメリカの言い分を飲もうということで合意していたというところですので。アメリカ市場が抜けてしまうわけですから、そこは自分達としてももう守れないよというところで、アメリカが戻ってくるまで凍結という、残りの11か国の言い分ということと、両面あるということだと思いますね」
反町キャスター
「鈴木さん、菅原さんの話をどう感じますか?」
鈴木教授
「22項目まで絞り込んだとは言え、最初に60だ、80だというような数の問題点が指摘されたと、それをアメリカがいなければ認めたくないと、それだけの声があるということは、そのこと自体がTPPの抱える問題点であると、そう捉える見方もあるのかなと私は思っています」
反町キャスター
「西川さん、22項目というのは多いのか、少ないのか。22項目の凍結を残して、知財の薬のアレ、8年とか、5年とか…?」
西川氏
「8年です、8年です」
反町キャスター
「そこの話ですよね?」
西川氏
「うん」
反町キャスター
「その特許をいつまで持たせるのか、こうふうなところをアメリカが戻ってくるための橋として残したのか?鈴木さんが言われたみたいに、それは大きな懸念として捉えるべきなのか?どう感じますか?」
西川氏
「生物製剤、アメリカが12年を主張していましたね。それから、オーストラリア、ニュージーランドは5年を主張していました。日本は8年でいいだろう、こういうことで、8年で合意したんです。ところが、アレ、なかなか複雑な合意になっています。それはそれとして、アメリカが戻ってくると、こういうことを期待すると8年でいかざると得ないと思います。コメも、アメリカから7万トン、オーストラリアから8400トン、こういうことを最初に決めていますから、アメリカの7万トンはいつでもアメリカが戻ったらちゃんと分けますよと、こういうふうにしとかなかったら、アメリカは戻れない。私は、アメリカは戻ってくれると期待しています」

日本農業への影響&対応策
竹内キャスター
「アメリカを含むTPP参加12か国で合意された日本の農産物の関税に関する重要5項目はTPP11でも継承することになっています。その内容をあらためて見ていきます。コメの関税は維持、輸入額はアメリカ離脱によって7万トンはなくなり、オーストラリアの8400トンのみです。麦は維持されます。小麦に関してはアメリカ・オーストラリア、カナダにそれぞれ輸入枠が割り当てられます。しかし、アメリカ分の15万トンは離脱によりなくなることになります。牛肉は段階的に削減、豚肉も段階的に一部撤廃ですね。乳製品、バター・脱脂粉乳は関税が維持されます。ただ、生乳換算で7万トンの輸入枠が設けられます。チーズは段階的に一部撤廃。甘味資源・作物は一部を除き関税が維持されると、こういった内容になっているんですよね」
反町キャスター
「鈴木さん、重要5項目の決着というか、スキーム、枠組みですよね…」
鈴木教授
「はい」
反町キャスター
「これは日本の農業に対する影響というのは、どう見ていますか?」
鈴木教授
「私は、最終的にTPP12の時以上の、国内農業への影響が出る可能性があると」
反町キャスター
「えっ?だって、現在のままだったらアメリカからのコメ7万トンとか、小麦15万トンとか、そういうものが来ないわけだから日本の農業のダメージは少なくすむという、そういう話ではないのですか?」
鈴木教授
「うん、そうですね…」
反町キャスター
「あっ、ニヤッと笑っているということは、お前、わかっていないなと思って…」
鈴木教授
「いやいや、すみません。アメリカも含めて、合意した内容をアメリカ抜きで提供しているわけですよね。だから、コメについてはアメリカが特定されていますから抜けますけれど、たとえば、生乳換算で7万トンという枠は、アメリカを含め、この大枠でこれだけ日本が輸入すると決めましたので、アメリカが抜ければ、そこでオーストラリアとか、ニュージーランドがこれを使えるということですね。そうすると、アメリカとしては、これは黙っていられないということになりますね、自分の分もほしいと。そうすると、TPPに戻りたいというよりも、現在アメリカの農業団体が言っているのは、TPPは不十分だったのだと。要は、特にアメリカのコメ団体の主張なんかを聞いていますと、要はTPPができなくなった時に怒りました、7万トンできなくなる、だけども、すぐに切り替えて、TPPの墓というのを石でつくって、TPP享年何歳と、TPPはもう終わりと。要は、TPPそのものが不十分だったのだから2国間でもっと10万トン要求しようとか、それをやってくれと彼らは主張しているわけですね。そうすると、コメも含めて、こういうものが成立をするとアメリカがTPPではなくて2国間で、TPPで決まった以上のものを自分にやってくれということが生じたとすれば、そうすると、トータルで日本の受け入れなければいけない輸入はもっと増えるという可能性も考えなければいけないというのが私の推測です、心配です」
反町キャスター
「西川さん、鈴木さんの言う前提というのは、つまり、日本がアメリカとの2国間協議に応じるかどうか?」
西川氏
「これは過去に苦い経験をしていますから、日本ではそう簡単に2国間の交渉をやろうという空気にはなりません」
反町キャスター
「なるほど」
西川氏
「それから、TPPでアメリカが不満を持っているということは、それだけ日本の主張が通ったから、相手方としてはもっととるべきだったという不満につながっているんですね」
反町キャスター
「なるほど」
西川氏
「だから、私ども日本としてはよくやったと、こう思っているんです。アメリカは、それは数字を良いのをほしいということは、これは限度がありませんから、どうぞご希望くださいと。しかし、その間にアメリカ抜きでTPP11が進み、参加したいという気持ちがある国々が地域を含めてありますから。それから、日本は日EUも交渉妥結になっていますから。そうすると、ドンドン、アメリカというのは、経済連携から外れていって、それでアメリカはやっていけるのでしょうかと。こう思いますね」
反町キャスター
「TPPやFTAといった大きな、マルチの、メガの通商交渉というものが、日本の国内農業にどう影響するかという話をちょっと聞いていきたいと思います。こちらにまとめました。日欧EPAとTPPの影響、2017年、昨年末に農水省が発表したものですけれど、経済効果、日欧EPAは5.2兆円のプラス、TPP11は7.8兆円だと、雇用創出効果もそれぞれこんなにありますよと。一方、日本の農林水産物の生産減少額、これは日欧EPAによって600億円から1100億円、TPP11は900億円から1500億円減少するのではないかという試算が出ているのですけれども。これは農水省的に言うと、ここに書かれているように、国内対策により国内生産量が維持されるものと見込むということですけれども。鈴木さんから聞いていこうかな、どうですか、この農水省の試算、どう感じますか?」
鈴木教授
「過小評価と言いうか、農水省の言っていることをご紹介いただきましたけど、要は、影響がないように対策するから影響がないと言っていることとほぼ、同値になっている」
反町キャスター
「まあ、そうですね」
鈴木教授
「ええ。ですので、そういう意味では、金額が小さくなるということですね。たとえば、TPP11でも、酪農で言うと、乳価は最大キロ8円下がると農水省も言っているのですが、キロ8円、乳価が下がったら、これは酪農生産には相当減少が生じる可能性があるわけですけれども、生産量も所得も変わらないということになっているわけですね。では、どうすればそうなるのかということ…」
反町キャスター
「そう、どういうことなのですか、それは?」
鈴木教授
「そうすると、その8円の差額分を政府が補填してくれるのか、あるいはそのコストを下げる対策によって8円分だけコストが下がるのか、そういうことを前提にしていると考えざるを得ないわけです」
反町キャスター
「なるほど」
鈴木教授
「であれば、その具体的な根拠を示していただかないと、これを、なるほどな、というふうに思うことはできないと。そこの根拠が重要なのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「西川さん、いかがですか?『国内対策により引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む』。鈴木さんの質問に対してどのような答えがあるのですか?」
西川氏
「だいたい酪農団体は、今年の予算編成も、非常に評価高く発言をしています。ですから、今、言ったような話にはなっていない、こう思います。酪農関係で乳価の問題で問題になったのは加工乳になんとかもっていきたい、その時に補助金を出さないと飲用乳との差がある。その金額と、ユニバーサルサービスで僻地・辺地から集めてきますね、その集める時の調整金の問題と、合計では決まっていますけれど、どういう配分をするかというのが、非常に関心が高かったですけれども、現在の乳価に対して異論はありません。さらに、酪農団体に頑張ってもらいたいのは、乳価交渉を政府の補助金が決まったあとにやるんですよ。政府の補助金がこれだけあるのだから、あなた方はこれで我慢しろという交渉になっちゃうんですね。だから、先にこれだけほしいとこういう交渉をやってほしいですね。酪農家をもっと強くしたい、これが、我々がやってきた農政です」
反町キャスター
「菅原さん、いかがですか?このTPP、EPAの日本経済、特に農林水産業に対するマイナスファクター、どう見ていますか?」
菅原氏
「こういう試算というのは、一定の前提を置いて、特定のモデルを使って行うということですので、この試算の冒頭にも書いてあるのですけれども、1つのある種、目安として見るというぐらいのもので、これが実際に実現するためには、さまざまな課題を克服していかなければいけないということだと思うんですね」
反町キャスター
「なるほど」
菅原氏
「この農林水産物の生産減少額につきましてはまさに、ご指摘があったように、対策を打つので国内生産量が維持されるものと見込むというところが生産者の方から見れば、本当なのという不安になるということなのだと思います。要は、EPAを結ぶわけですから、当然、輸入品が入ってくれば…」
反町キャスター
「入ってきますよね?」
菅原氏
「それは競争が大変になるので、生産量が減るのではないかと思うのは当然ですし、また、輸出が増えるのだったら国内生産量も増えるのではないか、もちろん、それが輸出になるわけですけれど、それに触発される形で国内の生産量・消費量も増えるということも考えられるわけですけれども。そういったことを一切なしに、国内生産量が一定であるということですので、本当なのという疑問を生産者の方が抱かれるというのは、ある意味、自然なのかなと思いますので。先ほど、鈴木先生からご指摘があったように、しっかりと、これはこういう対策で、それはこういう効果を持っているから国内生産量が維持されるんだよということを、丁寧に説明していくということが必要になるということだと思います」
反町キャスター
「そこは確かに西川さん、まさに菅原さんが言う通りですよ。輸出するのだったら増えるだろうと、入ってくるのだったら減るだろうと。でも、変わらないと、これはいったいどういう意味なのかなという…?」
西川氏
「日本の農業というのは、儲けようという精神がこれまで足りなかったんですね。農協法8条に、農協は営利を目的とした事業をやってはならないと書いてあった」
反町キャスター
「はあ…」
西川氏
「ですから、儲けるな、損するな、できたんです。私は、これはおかしいと、8条を廃止しようと。これは廃止になりました。農協はどうぞスケールメリットを使いながら儲けてくださいと、それを農家に還元してください。農家も売る努力をしましょう、農協も売る努力をしましょう、関係の皆さんも売る努力をしましょうというのが今やっと農業が元気になってきたと、こういう状況だと思います」
反町キャスター
「なるほど。そうすると、たとえば、ここに国内生産量と書いてあるのですけれども、量ではなくて生産額、金額だったら、僕はまだわかるんですよ。量、トンなのですか、それとも円なのですか?」
西川氏
「うん、まだこれは、影響は出ていませんから、影響出ていませんね。しかし、農業の総産出額は非常に順調に回復しています。昨年のヤツは9兆3000億円ぐらい、9兆円を超えてきているんですよ。やる気になってきて、売る気になってきた。それが非常に良いスパイラルになっています」
反町キャスター
「なるほど」
西川氏
「さらに、日本は、農地というのは、国土の12%ですよ。山が66%、両方足して8割あるんですね。しかし、農村の人口はドンドン減る。それは作物をつくれないから減るんです。では、売れるようにやろうよと。これが現在、大きな輸出をやっていると、こういうことですね」

『攻めの農業』の具体策
竹内キャスター
「TPP11や日欧EPAは、日本の農業を輸出産業にするチャンスでもあるとして安倍政権は成長戦略の中で『攻めの農林水産業』を掲げ、輸出拡大を進めています。安倍政権発足後、農林水産物・食品の輸出額は4年連続で増加していまして、2016年には7502億円に達しまして、2019年には1兆円を目指すとしています」
鈴木教授
「日本は輸出に対して、もっと国家戦略を持ってやらないと他の国と全然違うんですよね」
反町キャスター
「たとえば?」
鈴木教授
「アメリカは、お米を1俵4000円で農家に輸出してくださいと、その代わり、農家の皆さんには1俵1万2000円は必要だから、その差額を全部、政府が出しますから…」
反町キャスター
「なるほど」
西川氏
「できないね…」
鈴木教授
「ドンドン、つくって…」
西川氏
「輸出補助金だからできないね」
反町キャスター
「輸出補助金ですよね?」
西川氏
「それはできない」
鈴木教授
「いや、実質、輸出補助金なのですけれども、不足払い制度だという、国内法だという名目で…」
反町キャスター
「建つけは、向こうの法律の?」
鈴木教授
「ええ。そういうものを持って、多い年には穀物3品目だけで、輸出向けの、不足払い全体は国内も、ですけれど、その輸出向けの差額補填部分で1兆円も使っている年もあると。そのぐらいの徹底した世界戦略で安く穀物を販売して、それで1番安い武器だと食物は、それで世界をコントロールするぐらいの、戦略を持っているわけです。日本は、輸出補助金は既にゼロだったから、そういう国は使っちゃいけないと言われて、何も使っていないということですね。もっと言えば、アメリカは生産者の皆さんからチェックオフと言って拠出金を集めて、それで輸出振興をするわけですよ。たとえば、アメリカの牛肉が日本で販売促進、アレで100億を使ったとすると、連邦政府が同じ100億を出してくれるんですよ。2分の1補償で、徹底した販売促進も隠れた輸出補助金としてやっているわけですよね。そういう戦略を持って、国家的に輸出を振興している国と、補助金ゼロで、美味しいけれども高いものを売らなければいけないと。向こうは安いものをさらに1兆円も使って売ってくるようなことを、隠れた輸出補助金という形でやっていると。この差を考えて、もっと日本も…」
反町キャスター
「それは、そういう補助金…、補助金ですわな、農業に対する補助金の制度というものを日本もつけないといけないという意味で言っているんですね?」
鈴木教授
「ええ、工夫してやるべきであると…」
反町キャスター
「菅原さん、いかがですか?」
菅原氏
「明確にWTO(世界貿易機関)協定違反になるようなものは、日本はできない…」
反町キャスター
「できないですね」
菅原氏
「…ということだと思うのですけれども。ただ、国内農業を改革していく段階で、さまざまな形で財政措置が必要だということはあると思いますので。チェックオフ制度というのは、日本でも導入ということが検討されているということでしょうし、さまざま、これは政府も、さらに生産者も、また農協のような団体も、やれることというのは本当に経済連携から始まって、さらに現在進んでいるような大規模集約化だとか、あとは小規模でも安心・安全だとか、地理的表示制度を使った付加価値を高めていくとか、できることは本当にいくらでもあるということだと思いますので。そういったものをやっていけば、国内農業が強くなると。その結果、輸出産業化というのも…」
反町キャスター
「強くなると言っても、別に体制が強化されるとか、生産性が高まるという意味ではないですね?いわばゲタを履くことによって対外的な価格競争力がつくだけであって、農業の本質的な体質強化にはつながらない話ですよね?」
菅原氏
「そうなってしまうとダメだということだと思います」
反町キャスター
「西川さん、どうですか?」
西川氏
「いや、そうだと、その通りだと思いますよ。私は日本の農業、本当に価格競争力を持った産業にしたい。そのためには現在、余っているんですよ、耕作放棄地。ここを、売り場所さえ決まれば、地方でモノをつくってくれると、モノをつくってもらいましょうと、各国へ売りましょうと、これが本来の私はあるべき姿だと思います。ですから、ゲタは履かせるわけにはいきません。これはWTO違反ですから。そういう中で競争力を持てる、そういうことはできますから、こんなに元気が良くなって、若い人の就労がすごく増えてきた、これが現在の日本の農業の変わりだした農業ですよ。だから、これを本当に農家の所得増につながるように我々は努力をしていきたいと、こう思います」


後編

『3月署名式開催』合意の背景
竹内キャスター
「TPP11発行までのスケジュールを見ていきたいと思います。合意した協定文を各国が翻訳し国内法などとの整合性をチェックしたうえで、3月8日、チリで署名することになりました。その後、日本は通常国会で承認を得る方針で、6か国以上が早期に国内承認を終えれば、2019年に発効が可能となります。甘利さん、TPP11、発効の意義をどのように考えていますか?」
甘利議員
「TPPは今考える世界最高の洗練された市場経済ルールです。WTOにもない、日EUにもない、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)にもない、公正などこからも文句がつけようのない、公正、それから、予見可能性の高い、投資・通商ルールです。これを11か国で発効したということ、それから、参加国を増やしていくということはこれが世界ルールになるんです。世界の、公正で、最もアップデートされた、貿易投資ルールを日本が主体的につくることができた。これは歴史的な偉業ですよ」
反町キャスター
「それは日本経済に対してプラスになっていくのですか?」
甘利議員
「これから、これからね…」
反町キャスター
「やせ我慢している部分はないのですか?こんな趣旨の質問ですけれど」
甘利議員
「いえ、たとえば、中国は中国式ルールでアジア市場をずっとつくっていこうとしているわけですね。たとえば、中国市場に投資をする場合では、合弁会社をつくった場合、相手の技術を全部移転することを条件に投資を認めるとか。あるいは電子商取引を行う場合には、サーバー、コンピューターを、市場の、投資国のそこに置きなさいとか。あるいは知財の取り締まりでもTPPほどきつくやらない、あるいはソフトのプログラム、設計図は投資をしていく時には開示をせよ、こういうことを決めているわけです。こんなのその市場のルールから言ったら、投資を受け入れられる国にとって圧倒的に有利です。しかも、国営企業に、国営企業と他の民間企業とのイコールフッティングをはかるということをしないわけです。国営企業を有利にする。だから、国際入札案件が出たら国営企業がダンピングの受注もできると。こんな不公正なルールで、皆が戦えと言ったって、これは無理ですよ。TPPではちゃんと国有企業の規律もきちんとして、だから、国有企業と他の私企業が同じ案件で戦う時にはイコールフッティング、競争条件を整えよとしてある。技術移転を強要してはならない、パフォーマンス要求してはいけない、ソフトプログラムの設計図、虎の子の開示を強要してはいけない、違法な輸出補助金をつけてはいけない。公正でイコールフッティングのルール、これのルールがTPPでできたということは、次は、RCEPはTPP準拠というふうにもっていけるわけですから。そうすると、RCEP、アジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス6か国がそういうアップデートされた近代的ルール、公正、透明なルールで競争が行われる。世界にとってとっても良いことです。それの基本が、基礎ができたということですから」

日本の経済効果は…
反町キャスター
「菅原さん、RCEPの話が出たのですけれども、RCEPというのはもうちょっと、ここにあるのですけれど、韓国・中国・日本、現在のTPPに入っていない韓国とか、中国とかも含めた、アジアにおいてもっと広い意味での経済連携を目指そうという動きですよね。甘利さんが現在、話していた、TPPの基準をもってRCEPに臨んでいけるかどうかという、ここのところをどう見ていますか?」
菅原氏
「RCEPは東アジアの地域包括的経済連携ということで、ASEANの10か国とか、日中韓…」
反町キャスター
「はい。出ました…」
菅原氏
「…が入っている大きなメガFTAなわけですけれど。交渉は現在、難航しているわけですね。今年がかなり重要な年になるということになると思うのですけれども。こういった交渉をやっている中で、アジア太平洋地域にいったいどんなルールをつくりあげていくのかということがある種、競争状況になっているわけですよね。TPPがあって、RCEPがあって、おそらくアメリカも、これから2国間でやると言っていますから、アメリカ・ベトナムとか、アメリカ・マレーシアといったような2国間協定というのをやっていこうということですから、アメリカとしてもアジア太平洋のルールを2国間協定でつくりあげていこうとすると。そういったルールを、どんなルールをつくるのかという競争状況にある中で、最初にこのTPPが11か国でできあがったと。しかも、その内容というのが、甘利先生からご説明があったように非常に高水準で日本にとっても望ましいものになっているということですので。これがあると、ないとでは大違いですね。なければ、RCEPは、どんなルールにしようかという時に、なかなか日本が望んでいるような高い水準の自由化とか、ルールというのがASEANの1部の国や、インドや中国といった国も入っていますから、なかなかそこで合意できないということだと思うのですけれども。TPPがあれば、TPPの拡大ということも言われていますように、アジアの1部の国は、TPPでもいいと、そちらが魅力的ならそちらにも入るという姿勢をとってくれるのであればRCEPそのもののルール自体も底上げが可能になっていくということだと思うので。これはなければできないことが、かなりできるようになるということだと思うんですね」
反町キャスター
「ただ、菅原さん、現在、TPPの市場開放度とか、透明性、経済ルールの話を聞いていく中で、アメリカはもう既に現在は入っていないではないですか?」
菅原氏
「はい」
反町キャスター
「RCEPにおいても、中国という世界2番目の大国を、それをどういうふうにとり込むのかと言うと、TPPというアメリカも飲まないような透明性の高いものをRCEPに持ってきた時に、では、中国はそれを受け入れるのかどうか?TPPの市場開放度は93%とか、94%とか、そのぐらいですか?」
菅原氏
「えっと、TPPは日本が95%ということですが、他の国はほぼ100%という…」
反町キャスター
「100%…。たとえば、中国が多国間経済連携とかで言っているのは、70%とか、そのくらいではないですか、市場開放度は?」
菅原氏
「そうですね。ものによりますけれど、もうちょっと高いものもありますけれど」
反町キャスター
「70%、80%の市場開放度で、それで経済連携をやろうとしている中国は、TPPの水準にこられるかどうか?そこはどう見ていますか?」
菅原氏
「TPPの自由化水準とか、ルールそのものをRCEPでまったく同じものをつくるというのはなかなか難しいと思うんですね。ただ、TPPがなければ、そもそも土台となるものがないわけですから、そうすると、土台になるのは、基本的にWTOルールになるわけですよね。とは言え、WTOルールは20年前につくられたものですから、そこからやるのは相当難しいと思うんです。ですから、TPPがあれば、ある1部はTPPマイナスかもしれないけれども、WTOから見れば相当プラスになる、高い水準の自由化とルールというのはつくりあげていくということは可能だと思いますね」

参加国増加の可能性
反町キャスター
「甘利さん、話を聞いていると、では、中国を入れるために多少、TPPより下げた形でRCEPの開放度のルールをつくるとします。そうすると、一方で、日本はアメリカとのTPP…、アメリカが入ってきた場合ですよ、TPPの開放度は高いものがあるわけではないですか。日本は中国に対して緩く、アメリカに対して高くという、こういう通商政策というのはとり得るのですか?」
甘利議員
「TPPを、アジア、ASEANが何か国も入っていますよね、これからまだ入りたいという国がありますからドンドン拡大しています。そうすると、こちらの水準、それからRCEPの中国が主張している水準、こっちがこっちと同じにさせることはできないにしても、こっちにできるだけ近づけていこうよと。ルールもより透明なルールにしていく、公正なルールにしていくと。それから、自由化度合いも、TPPとRCEPの基準の間ぐらいまでは引き上げようよという、交渉ができるわけですよ」
反町キャスター
「なるほど」
甘利議員
「こっちの国にシンガポールとか、マレーシアとか、ベトナムとか、ブルネイとか、いるわけですから、日本もいるし、これに韓国も入りたいとTPP12の時に、言ってきましたし、インドネシアもそういう意向とか、タイは副首相が私のところまで来ましたし、台湾はできるだけ早く入らせてくれと言ってきた、フィリピンもそういう主張をしていましたよ。11になった時に今現在、まったくあの時と一緒かと言うと、まだどうか確認できていませんけれども、少なくともこれが時流だっていう勢いが出てきていますから、それに参加すると、その国が多ければ多いほど皆がこのルールでいくのだから、これよりも上げようよということになりますよ」
反町キャスター
「なるほど」
甘利議員
「そうしたら、こちらに近くできるわけです、自由化度合いもそうだし、それから、投資や通商の公正な透明なルール、どうもこれを見て、恣意的だよねと、ね?発案国に有利なようにできちゃっているではないということを少しずつ払拭できていきますよ。そうすれば、それがだんだん、だんだん世界標準になっていきますから」

米国の通商戦略 日本の対応のあり方
竹内キャスター
「トランプ政権の主な通商政策ですが、2017年1月、ちょうど1年前の1月23日に、トランプ大統領がTPP離脱の大統領令に署名をしました。昨年の8月、アメリカ、カナダ、メキシコによるNAFTA、北米自由貿易協定の再交渉を開始し、今年の1月1日、米韓FTAの再交渉を開始しました。甘利さん、トランプ政権の通商政策はどのように受け止めていますか?この2国間を重視するというのはなぜなのでしょうか?」
甘利議員
「これはトランプ大統領の自分のビジネスの歴史でバイでやった方が手っとり早く、早くとれるものはとれるという、自分のビジネス哲学をそのまま政治に持ち込んだということですよね。マルチでやるとややこしいと。1対1でやれば、特にアメリカの方が、力が強いわけですから押し倒せると、こっちの方が多くとれるではないかという感じなのですけれど。でも、通商交渉はとった分だけ損するっちゅうんじゃなく、皆win-winで初めて通商交渉ですよ。力強いものはより多く得するというのだったら誰も乗ってきませんから。しかも、関税のやりとり、2国間の場合だけのものはともかく、ルールというのは2国間だけで、このスパゲッティ症候群みたいなルールはありませんから、全部通して共通にやるというのがルールですから。ルールはマルチでないと良いのができないです。そこの感覚が、彼のビジネス哲学の中に入ってないのだと思います」
反町キャスター
「入ってないって何か絶望的ですよね?入れようがないのですか?これから注射するというわけには?」
甘利議員
「いや、おそらくトランプさん限りは、彼は彼流のやり方が1番良いのだと」
反町キャスター
「なるほど」
甘利議員
「ちゃんと歴訪して、日本からも約束とったではないか、中国からもとったぞと、ボーイング500機とか、そういう話になっちゃうわけですよ」
反町キャスター
「なるほど。菅原さん、そうした中、今度、日米経済対話、ドンドン進んでいきますよね。次官級の協議も始まるということなのですけれども。では、甘利さんが言われたようなトランプ哲学をベースにした時に日米経済対話、アメリカは日本に何を求めてくると思いますか?」
菅原氏
「明日から課長級の会合が行われると聞いていますけれども。まずは牛肉の問題とか、自動車の問題とか、そういったところを、これまでも言ってきていますから、そういった個別の要求というのが出てくるということだと思うんですね。日米FTAというのが将来的に出てくるだろうと思っていますけれども、前回、第2回目が秋に行われた時には、日本政府はその時は日米FTAということは出なかったと言っていますけれども、ハガティ大使は日米FTAについてもということをおっしゃっていましたので。実際にロス商務長官とか、ライトハイザー代表はもう日米FTAにも言及をされていますので、いつ出てきてもおかしくない状況にはあるということだと思うのですが。先ほど、あったように、現在はNAFTAとか、米韓FTAの見直しだとか、あと対中交渉、そういったものがありますので、それらに比べると優先度は低いと見られていますので暫くまだ日米FTAが本格化、向こうが本格的に要求してくるまでには時間があるという見方が大勢を占めているのかなと思います」
反町キャスター
「それは他の案件が片づいたらくるぞと見ていいと、そういうことです?」
菅原氏
「先ほど、甘利先生からあったようにトランプ大統領は本当に2国間のディールで、まさにビジネスの考え方で、しかも、ゼロサムで、という考え方の方ですから。そういった中で、この相互主義、レスプロシティーというのを強く言って、レスプロシティーという内容は、要するに、貿易が均衡するという考え方で、赤字が負けで黒字が勝ちだという考え方ですから。そういった意味で言うと、アメリカの貿易赤字の中で中国に次いで赤字額が大きいのは日本なわけですから、日本が放って置かれるはずないということですので、いずれ非常に厳しい対日要求がくるというのは覚悟しておいた方がいいということだと思います」
反町キャスター
「この国と我々はどう向き合っていったらいいのですか?」
甘利議員
「現状は、首脳間のうーん、なんと言うか、ケミストリーの…」
反町キャスター
「それはたぶんOKなはずで…」
甘利議員
「いや、これは最高なわけです。これで何とかハンドリングしているわけです」
反町キャスター
「なるほど」
甘利議員
「ただ、トランプさんも、日本も個別で何かいくつかやってよと、これだけの人間関係があるのだから、そこは配慮してよという話で、具体的に牛肉のセーフガードをどうかしてくれとか、あるいは政府調達でアメリカから買うものがいくらでもあるだろうというようなことで、何項目か形にしてくれという話だと思うんです。日米のFTA、全体をシステマティックに動かすなんていうのは、現在のUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)では人員が割けません。NAFTAで手一杯です、もう人がいません。商務省だってほとんど、長官がいて、あと下に誰がいるのだというような状況ですから。役所としてポリティカル・アポインティで入ってくる人数の半分も決まっていないのですから、だから、できないんですよ。だから、せいぜいUSTRが組織的に機能するのでしょうけれども、それがNAFTAで手一杯、そのあとは米韓が待っている。中国との約束事も、中国にはもう宿題を出していますから、その1次回答しかまだきていませんから。そういうことがありますから全体的に、FTAという全体図で交渉するというのは当分無理だと思うんです。ただ、当分無理だから、何とかしのぎ切れるかと言うと、それはトランプさんにしてみれば、日本もこれだけの2人の関係なのだから、何か成果を出してよという要求は強くなると思うんですね。だから、個別・単品の案件で具体的な成果を出してくれという要求は強くなると思いますよ」

甘利明 元経済再生・TPP担当大臣の提言 『日本主導で公正な市場ルールを!』
甘利議員
「日本主導で公正な市場ルールを。日本の存在感が通商・投資市場でこれだけ存在感が高まったというのはないと思うんですよね。いつも誰かがつくったルールに日本は合わせよう、従おうと。日本がルールを提案して、日本がルールを構築していくという、おそらく歴史上ないぐらいのチャンスになっているのではないかと思うんです。そのスタート、土台はできましたから、これを広げていくということが大事ですね」

菅原淳一 みずほ総合研究所政策調査部主席研究員の提言 『空白を埋める』
菅原氏
「空白を埋めると書いたのですけれども。意味は、甘利先生と同じで、現在アメリカが、このTPPから離脱したということで、多国間主義から抜け出して、アジア太平洋に空白ができるのではないかと。その空白を誰が埋めるのかということで、中国ではないかとか、そういった話が出ているのですけれども。通商について言えば、まさに今回のTPP11の合意を主導したように、日本がこの空白を現在埋めつつあるということですので。安倍総理、昨日の演説で『自由貿易の騎手になる』とおっしゃっていましたけど、まさに日本がそういった役割を担うべきだということだと思います」
反町キャスター
「それは日本の国益になるんですよね?」
菅原氏
「もちろん、はい」