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2018年1月19日(金)
加藤勝信厚労相に問う 『働き方改革』の狙い

ゲスト

加藤勝信
厚生労働大臣兼働き方改革担当大臣
山田久
日本総研調査部理事 主席研究員
常見陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

加藤勝信厚労相に問う 『働き方改革』狙いと課題
竹内キャスター
「安倍総理は、週明けに召集される通常国会を『働き方改革国会』と銘打ち、法案成立に向け強い決意を示しています。そこで働き方改革の狙いと課題についてじっくりと聞いていきます。安倍総理は今月4日の年頭会見で、働き方改革について『70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する。今月召集する通常国会は、働き方改革国会だ』と意気込みを語りました。加藤さん、政府は、現在の日本の雇用制度の問題点をどのように考えているのでしょうか?」
加藤厚労相
「1つは過労死に代表されるような行き過ぎた長時間労働によってお亡くなりになる、あるいは自ら命を絶たれる、こういったことを根絶をしていかなければいけない。それから、非正規で働く方の処遇、ヨーロッパと比べてみても、フルタイムで働く方と比べて明らかに格差がある。そういったことを1つ1つ解消していくということがまず1つあります。そのうえでもう1つは現在、日本の置かれている立場として、ここにきて雇用情勢、あるいは企業の収益、随分改善されてきましたけれども、少子高齢化というものにどう取り組んでいくか、大きな課題、選挙では『国難』と申し上げましたが、これを克服していくためには今いる、それぞれ皆さん方がその状況の中において十二分に力を発揮していただく、思いを発揮していただける、こういう状況をつくっていくためにも長時間労働を是正したり、あるいは不合理な非正規と正規の格差を是正したり、あるいは柔軟な働き方をしやすいような環境をつくっていくと。そういった状況をつくることによってそれぞれの事情に応じて、自分の働き方を選択していけるようになってくると、現在、高齢者や女性においても働きたいという希望を持っておられる方もいます、ですから、当面、働き手の改革・確保にもつながります。それから、もう1つは、日本の生産性が低いという、こういう課題もあります。これも長時間労働の是正や同一労働・同一賃金、これらを通じ、この生産性の向上といったものにつなげていきたいと思っています」

残業の上限規制
竹内キャスター
「働き方改革の主な内容を見ていきます。『残業、時間外労働の上限規制』、『高度プロフェッショナル制度の創設』、『裁量労働制の拡大』、『同一労働・同一賃金』となっていますが。まずはこの残業の上限規制、この上限規制の狙いはずばり、加藤さん?」
加藤厚労相
「過労死とか、過労自殺、そういった悲劇を二度と繰り返してはいけない。特に、非常に長く残業をされている方がおられるわけでありますから、そこをしっかり是正していく必要がある。そういう事態を起こさないようにしていくと。それから、もう1つは、特にフルタイムで働きたくても、こんなに長く働くのでは、とてもフルタイムで働けない。ですから、子育てしながらも、朝の9時から夜の11時まででは、とてもではないけれども、男性も女性もできない、こういった問題もある。男性が家事を少し協力しようと思っても、なかなかできないと。そういった意味で、そのワークライフバランスというものをつくりあげていく。こういった意味からも、この長時間労働の是正というのは、しっかりやっていく必要があると思います」
反町キャスター
「上限の話ですけれど、労働時間の。我々の方でこういうのを用意したのですけれども、残業、つまり、時間外労働に対する枠組みとしては、現行法制、法制というか、1998年の労働省の告示なので、法律的なしっかりしたものではなく、告示というレベルの話だと思うのですけれど、原則として月45時間、年360時間以内であると。これは労使協定を結んだ場合はそうなのだけれども、さらにさまざまな協定があれば、事実上これは青天井と言うか、無制限であるというのが実態だと我々は理解しています。それに対して、今度出てくるであろう、労働基準法の改正案については特別な事情がある場合、年720時間以内ならいいよ、これが事実上の上限になるわけですね。原則である月45時間の残業を上まわる回数は年6回まで、6か月までという意味になると思うのですけれども。休日労働を含み、1つの月では100時間未満でなくてはいけない、100時間を超えてはいけない。休日労働を含む2か月から6か月平均で80時間以内であると。こういう、時間に関してさまざまな条件が盛り込まれる方向であると我々は理解しているのですけれど。時間から入っていくのが、今回の残業に関しては1つの柱になっていくという理解でよろしいのですか?」
加藤厚労相
「まさに、ずっと告示でやってきたんですね。要するに、法律に落とし込めなかったんです。だから、告示という形をとってきたと。それを今回…」
反町キャスター
「告示というのは、罰則とか、そういうのはないのですか?」
加藤厚労相
「もちろん、ありません。それに沿うように、労働基準監督署がいろいろとケア・指導等、実施をしますが、しかし、あくまでも告示は告示ということでありますから。今回それを法律にして、それを超えるような場合には罰則規定もつくったという、そこは非常に画期的だと思います。ただ、一部の方はこれをめ一杯やることを推進する法案ではないかとおっしゃる方がいるのですが…」
反町キャスター
「連合の人とか、言いますよね?」
加藤厚労相
「それはそういうことではなくて、これ以上やってはダメですよという上限をかけ、さらにこの法律の中に、これをさらにお互い努力をして減らしていきましょうと、そういう指導も厚労省はやっていきますよという根拠規定も置く、こういうことになっているわけでありますから。トータルとして長時間労働を是正していく、縮減していくと、こういうことにつながっていくと思います」
反町キャスター
「常見さん、この時間に関してはまずどう感じますか?」
常見氏
「おっしゃる通り、これを、だから、100時間の労働を、いわゆる促すのではないか、みたいな、むしろ、いわゆる過労死ラインのお墨付きというような声があると思うのですけれど…」
反町キャスター
「過労死ラインは一応、80と言われていますよね?」
常見氏
「80ですよね、そうそう、そうそう…」
加藤厚労相
「単月100、複数月で80…」
常見氏
「うんうん。と言うことで、でも一応、過労死ラインに近いのではないかという批判があって、まずそのリスクがあることを、そうではないと、そうだという話ではなく、そのリスクがあることをまず認識すべきだと思うんですよね、政府の人も、ということだと思います。さらに、ちょっともう1つだけ言わせていただくと、この法案が、この法案が…の背景には36協定が無力だったと言われていたのですけれど、36協定にはそれなりに抑止力はあるわけですよ。と言うことなのですけれど、結局、でも、労使の関係で、いわゆる労働者の方が弱くて、実際のJILPTなどの調査によると4割ぐらいが違法な結び方をさせられているみたいなことがあって。非常に、あと無茶苦茶な36協定、昨年の2月頃の赤旗がスッパ抜いていたのですけれども、いわゆる大手さんを中心に滅茶苦茶な100時間を超える36協定を結んでいたみたいな時代もあったというのも事実ですね。問題はこれある意味、いわゆる規制がかかったということは画期的な一歩のようで…」
反町キャスター
「100時間であっても、その規制には意味がある?」
常見氏
「あるかないかで言うと、意味があります。だって、百何十時間という無茶苦茶な、いわゆる36協定がまかり通っていたから。ただし、これは、まずその100時間というラインで十分なのかということ、さらには何年かけて見直すのか。今回も1部の業種が外されていますね、いわゆる運輸業ですとか、建築ですとか外されている、それを今後どうしていくのかという議論。でも、最大の問題は、変な話なのですけれども、これは実は私、厚労省の方からブリーフィングを受けたのですけれども、これに付随して、たとえば、健康管理の努力とか、いろいろなものが一緒に通るんです、全然、報道されていないけれども。それは画期的なのだけれども、問題はそこまでやられた時に、さあ、守るのでしょうと言われた時に、現場レベルであたふたするというのが、これまた現実で。これは結果として、大変失礼な言い方だけれども、政府としては悪気がないはずですよ。だって、これで長時間労働をなくし、いわゆる現場の人が死ぬ社会をなくすと言っているんだから。ただし、これによって、サービス残業が誘発されてしまうことを大変危惧しています」
反町キャスター
「山田さん、いかがですか?数字、上限を設定したこと、僕らも確かに80時間が過労死ラインと言われる中で、80時間を超えるものを100時間未満ということで1か月ぐらい認めたのだろうと、では、6か月までは過労死ラインギリギリまで働いていい、年の半分、過労死ラインギリギリまでいいと、これは我々はどう見たらいいのか。これを線として、良い線引けたなと見るべきなのか、現状を見た時にこの線がギリギリなのか、どう見ていますか?」
山田氏
「悪い言い方をすると中途半端だなという印象ですね。ただ、いろいろ事情を考えると、ある意味、とりあえずはこのあたりから始めざるを得なかったという事情もあるのも事実だと思います。働くサイドから見たら当然、これはすごいリスク、これ以上超えると本当に過労死になっていく確率が高くなっていきますので。これ以上は絶対認められない。ただ、一方で、残念ながら日本の社会というのは、実態はこれを超えた労働がずっと長くしてきたのが実態ですので。これを一気に減らすということが本当にすぐにできるのか。先ほど、常見さんもおっしゃったようにあまりに強制的にやったら、形はつくるのだけど、風呂敷残業とか、見えない…」
反町キャスター
「風呂敷残業とは、持って帰るという意味?」
山田氏
「そうですね…、サービス残業とか…」
常見氏
「…そうですね」
山田氏
「そういうところを誘発しかねない部分もあるわけです。ですから、結論的には、これはこれ以上やっていると、これまでいっぱい問題が起こったので、ここで始めないとダメなのですけれども、一方で、なぜ長時間労働だったのかということを、しっかり原因を究明していって、そこの対応をもっとしっかり見ていかないとダメだと思うんですね」
反町キャスター
「話を聞いていると、ただ単に100時間未満は1か月で、あと6か月で80時間どうのこうの…。まず時間の枠から入ることに対しての批判に聞こえるんですよ」
山田氏
「うん」
反町キャスター
「時間で切るのではなくて、なぜ100を超えるような労働時間というのが日本全国津々浦々にあったのかという、その構造的な問題に対する検証・対策が入っていないだろうと、そういう意味ですよね?」
山田氏
「十分ちょっとそこはできていないのではないかなと思います。ただ、ここから入らざるを得ないですよ」
反町キャスター
「時間から入らないといけないのですか?」
山田氏
「時間、実態で言えばそうなのですけれども。ただ、ここで全て放置してしまいますと、先ほど、常見さんもおっしゃったような問題が出てくるので。たとえば、日本がなぜ長時間労働だったのか。これはミクロというのか、そういう社会、働くことが善だという考えだとか、現在はだいぶ変わっているのですけれども、30年前というのは男性だけが働いて、女性は家庭にいたわけですね」
反町キャスター
「そうですよね」
山田氏
「男性はある意味、働くことだけを考えていればよかった、女性はそうではなかった。ある意味、そういう意味で、そういう前提で社会が成り立ってきたわけですけれど、現在はそうではなくなってきているわけですね。家事とか、いろいろなこともやりながら、長いこと働くと昔よりずっとストレスは溜まっていきますから。そういう背景的なものというのもあるわけですよね。それから、もう1つ、ここは非常に難しいのですけれども、日本の人材育成のあり方というのが残念ながらOJT(オンザジョブトレーニング)というのが中心にきたものですから、現場でまず働くということが、特に若い人達にとっては、人材育成と表裏一体で進んできた面があったんですね」
反町キャスター
「なるほど」
山田氏
「ただ、これは問題ですけれど、だからと言って、実は意識的にちゃんと教育するのではなくて、俺達が若い時は仕事を教わることもなく、仕事のやり方を盗め、みたいなやり方をしたのだからと押しつけて、そうするといろいろな問題が起こるわけです。それは良くないのですけれど、そうは言うものの、実はヨーロッパなんかは人材育成の仕組みを別に、たとえば、学校の中につくるとか、いろいろな整備をしているんです。その結果、労働時間が短くても人材育成ができるという仕組みができあがっているのですけれども。日本はそういうところはまだ十分議論が進んでいない中で…」
反町キャスター
「OJTというのは、オン・ザ・ジョブ・トレーニング…」
山田氏
「そういうことですよね、そう言われる、はい…」
反町キャスター
「職場で働きながら学習しようと、そういう意味ですよね?」
山田氏
「はい、そういう意味です。だから、これは必要です。必要なのだけれど、まだ、たとえば、先ほど申し上げたような人材育成のあり方、あるいは男女が共に分業、日本というのは男性は現在、若い人は少し変わっているかもしれませんけれど、一定以上の年齢の人は家事をやらない、育児しないという人が多いわけですね。だから、そういう家庭のあり方の問題とか、いろいろな付随したところを、全般的に継続して見直していかないと、うまくいかないと言うんですね、こういう問題」
反町キャスター
「加藤さん、今の話、2つありました。まず、ザクッとした話で言うと、数字そのものについて決め方・内容、中途半端ではないかという山田さんの話、そこからの感想、いかがですか?」
加藤厚労相
「いずれにしても、なぜ決まらなかったかと。こういった労働関係に関する政策は労働政策審議会というところで、労使同数で決めてくるという歴史があるんです。その中で常になかなか意見の一致を見ず、いわば課題の先送りがなされてきたと。それで答えが出ないので、そこで働き方改革実現会議というのをつくって、総理が座長になり、そこには経団連のトップと連合のトップに来ていただいて、トップで決めていきましょうということで、今回こうした形のもの、数字が出てきたと」
反町キャスター
「数字はギリギリだったということ、双方が歩み寄れる?」
加藤厚労相
「現在の段階ではもともと大臣告示というのがありましたから、これを1つモデルとしてやってきたという歴史がありますので、それをベースにつくってきたということですね」
反町キャスター
「その数字というのは先ほど、加藤さんもこれを、100を既得権みたいな、ここまでいっていいんだよというのではなくて、さらにこれを減らしていくことが目的だと言いました。それはこの法律の中にここまでいいと言いながらも、でも、そうでなくて減らしていくんだよという、そこの付則と言うか、内容的な方向性というのは、どの程度の強制力をもって盛り込まれていくことになるのですか?」
加藤厚労相
「強制力というか、基本的には、これがベースですけれども…」
反町キャスター
「ですよね?」
加藤厚労相
「ちゃんと行政指導できるという根拠規定を法律に明確に書いて、企業から見て、これは行き過ぎ、行き過ぎている決め方ではないかというのは、少し是正し、あるいは労使で議論してくださいと、こういった話ができる、こういう規定をしっかり設ける」
反町キャスター
「たとえば、プログラム法みたいになって、5年後には80にしますとか、そういう数値目標を設定している形にはなっていないのですよね?」
加藤厚労相
「そうではなくて」
反町キャスター
「そこまでは、今回はできなかったということになるのですか?」
加藤厚労相
「ちょっと誤解があるのですけれども、これは皆、ここになるわけではないです。現在だって、100…、ここまでいっていない、もっと低いところで…」
反町キャスター
「あります」
加藤厚労相
「特別条項を結んでいる企業もたくさんあるのですから。そこをここまで上げようということを言っているわけではなくて…」
反町キャスター
「もちろん、はい」
加藤厚労相
「ですから、それからさらにもう少し下げていくと。そういったことをそれぞれが、労使含めて、議論はしっかりやってくださいなということを。それから、実態を見ながら、もっとこういうことができるのではないですかといった指導をしっかりやっていく。先ほど申し上げた、根拠規定を今回、法律の中に盛り込むと、こういうことですね」
反町キャスター
「もう1つ、構造的な背景ですけれども。家庭における男が働く、女が家を守る、みたいなことも含めての構造的な背景からの分析、ないしはそこに手を入れるというのも、そうすると今度、ほとんど働き方とか、家庭の価値観に手を入れていくことに、法律の手を入れていくことになるかもしれないのですけれども、それが根本的なものだとした場合には、そこには今回、手を入れることはするのですか、しないのですか?」
加藤厚労相
「ですから、これは総理もおっしゃっているのですけれど、この働き方改革、あるいは働き方というのは、それぞれの人の生き方であり、あるいは企業の文化でもあります。そこで今回のところに抵触する部分を直していくということはまさに文化を変えていくということですから、なかなか一朝一夕にスコーンと変えるわけには、なかなかいかない。常に継続的な努力をそれぞれがしていかなければ、そうした方向は見いだせないのだろうと思いますが。ただ、現在ありがたいことに、これだけ雇用情勢が厳しい中で人材を確保しようとして、現在、企業は多大な努力をしているわけですね。そういう時にこそ、まさに働きやすい環境をつくっている企業ですか、そうでないですか。そういったことの峻別がより行われやすい環境にあると思います」
竹内キャスター
「厚生労働省が2016年に発表した『過労死等防止対策白書』によりますと残業が発生する理由で1番多いのが、『顧客からの不規則な要望に対応する必要があるため』、次いで『業務量が多いため』、3番目が『仕事の繁閑の差が大きいため』となっています。こちらは企業側のデータですが、労働者側の調査でも同じような結果が出ています。加藤さん、顧客からの不規則な要望に対応することが残業につながっているという、この現状をどう見ていますか?」
加藤厚労相
「ですから、そこにもありますように残業を減らしていこうとすれば、そういった顧客との関係の業務量をどうコントロールしていくかということが1つ。それから、業務量が多いと、これは相対的な問題ですから、人手が少ないということもあるのだと思います。そうすると、人手の確保というのをどうしていくのか。それから、もう1つは、労働生産性というのが結構ムダと言うとアレですけれど、ちょっとやりようで、たとえば、会議がすごく多くて、これを短縮するとか、あるいは会議に10人集まらなくても、3人でやればいいでしょうと、たとえば、そういうようなことも含めて、いろいろ改善する余地はあるのかなと。ただ、1番上の問題についても、その会社だけではどうしようもない問題ですから、事業主団体にそうした長時間労働の削減に対する要請を行って、いろいろな対応について中小企業庁とも検討会を立ち上げて、そうした商慣習、こういった問題にどう対応していくのか。また、そういう中で中小企業をどう支援していくか。こういった検討をしっかりやらせていただいているところであります」
反町キャスター
「もともとのここにある、『不規則な要望に対応する必要があるため』という、この最初の部分…」
山田氏
「はい」
反町キャスター
「中小企業やら何やら、さまざま日本における例があるかもしれません。日本の労働慣行というのか、ビジネスのルールみたいな、そこから直していかないといけないという、こういう理解でよろしいのですか?」
山田氏
「生産の効率、要は、何かやった時に、専門用語で言うと、実質の生産性とか、物的生産性というものなのですけれども、非常に物量がすごくその効率的にされるという問題と。もう1つは、付加価値生産性というのですけれども、これは儲けですね、収益が上がるかどうか。だから、これはちょっと違うんです。何が違うかというと、間に入っているのは価格の問題ですね。だから、日本は、物的生産性は高いですね。すごく効率的にいろいろなことをやって、モノをたくさんつくるのですけれど、価格が上がらないですね。そうすると、価格が上がらないと、企業というのは儲けがいるものですから、ドンドン、たくさんつくっていかないとダメです。たくさんつくろうと思うと業務量が増えますから、労働時間が長くなるわけです。ところが、ある意味、逆の、典型的な違いで言いますと、ドイツとか、ヨーロッパというのは、これは価格…、ドイツは現在、少し変わっているのですけれども、従来は出店時間の規制というのがあるんですね、現在でも基本はあります、ローカルルールで変えることができるのですけれど。要は、物量自体を、物量というか、業務量自体をもう最初から決めてしまうんですね。その代わり、価格を上げていくという、そちらの方のやり方をやったのがヨーロッパ。だから、日本はおそらくそちらの方向に変えていかないと。だから、儲からないのは、やめていくと。逆に言うと、儲かるものを増やしていって、付加価値生産性を上げないと、市場経済ですから、企業が存続しないと、結局、賃金も減ってきますし、経済が悪くなってしまうわけですね。後ほど、残業代の話がもしかしたら出るかもしれませんけれども、そういうのも含めますと、利益を上げないとダメです。その時の利益の上げ方が、いわゆる薄利多売になっているんです、日本は。そこを変えていくという…」
反町キャスター
「いかがですか?」
加藤厚労相
「いかに付加価値を上げていくか。先ほどのお話であれば、一生懸命働く人は努力をして、1時間に10個つくるものを12個つくりましたと、価格が変わらなければ、2割、労働性が上がっていますが、実はこの間、価格が3割下がったら、結果的に見たら、売上が下がっちゃうんですね。だから、そこへどうしていくか。これはまさに経営だろうと思います」
反町キャスター
「それは経営の問題ですか?それとも、たとえば、中小企業ならパーツサプライヤーがあまりにも多すぎて、その部分での淘汰と言っていいのでしょうか、そういったものがないがゆえに、日本の経済的な環境がそうなっているという理解ですか?」
加藤厚労相
「淘汰する、しないというのは、ちょっと言葉が強いと思いますけれども。ただ、それは市場の中で、おのずから適切な状況になっていく、これが市場経済ですから。市場がそうやって動くようにしていく必要があると思うんですね」
反町キャスター
「残業時間に関して言うと、1人1人の残業時間を減らすということは、つまり、雇用者を増やす、労働者を増やす、雇用期間を増やすと、そういう理解になるのですか?それとも、単に生産性を上げる、10個だったのを12個にしよう、それはどういうバランスで考えているのですか?」
加藤厚労相
「そこは、いろいろ判断があると思いますけれども、たとえば、ここの仕事は日本ではやめてしまうと。より付加価値の高い方へシフトしていくという判断もあると思いますし、そこはちょっと経営の、まさにいろいろな判断なのだろうと思いますけれど。ただ、そうした経営の判断と、それぞれ現場における努力と、これが相まって初めて生産性が上がっていくのだろうと思います」
反町キャスター
「山田さん、企業の判断だという、人を増やすのか、ないしは生産する品目をシフトするのかと、この話だと思うのですけれども。労働時間の残業を減らすことによって、雇用が増えるということに必ずしもならない?そう思った方がいいのですか?」
山田氏
「逆に言うと、現在、人手不足で、人を増やせないという問題もあるんですね」
反町キャスター
「ああ、なるほど」
山田氏
「だから、それよりは…、まさに先ほどのお話の繰り返しになるのですけれども、1人あたりの生み出す量を増やすというよりは価格を上げることも含めて、儲けを増やしていくという、そのためにビジネスのあり方を変える…」
反町キャスター
「それはなぜできないのですか?日本にどういう問題があるから値段が上がらないか、なぜコストがちゃんと価格に転嫁されないのかと、これはたぶん働き方改革とまた違う話だけれども…」
山田氏
「ええ」
常見氏
「うん、うん…」
反町キャスター
「簡単に言うと、何が問題で、そこで詰まっているのですか?」
山田氏
「簡単にはなかなか言えないのですけれども、現象的に言うと、デフレというのは日本だけです、実は。一時的になりそうなところもあったけれども。これはいろいろな要因がありまして、反町さんがおっしゃったような、日本は企業の数が多すぎ…、多いですね。だから、もうちょっとそこはお互いにもっと得意分野に、お互いに特化していって、分業していくということを考えていかないと…」
反町キャスター
「これからは?」
山田氏
「…ダメだと思います」
反町キャスター
「大和総研からこういう試算が出ているんです。大和総研の調査によりますと、残業規制を行うことによって所定外給与、つまり、残業代が最大8.5兆円減少するという試算が出ています。これは労働者がもらう給与全体の3%に相当するという話です。山田さんはこの大和総研の見立て、働き方改革を厳密に適用することによって労働者報酬が3%減るんだよ、8.5兆円減るんだよという、この見立てをどう感じていますか?」
山田氏
「私は直接、どういう試算をしたのか聞いていないのでわからないのですけれど。おそらく機械的に単純に、やると、こういう結果も出てくるのだろうなと思います。でも、実際、経済というのはいろいろ動いているわけで、個別の企業の中では、単純に残業を減らしても、実はその中で、一方で生産性が上がっているのであれば、賃金を増やすという企業が出てくるわけで。おそらく現実にはここまでは…」
反町キャスター
「減らない?」
山田氏
「減らない。むしろ重要なのは、非常に単純化して言いますと、まさにこういう行動をする企業と、生産性が上がった分はちゃんと賃金に還元して、実際給料は減らない、残業代は減らないという、2つのパターンがあるのだと思うんですね。結局これがもともと、現在、目指しているのはそういう後者の、還元していく企業を増やしていこうということであって。逆に言うと、そうでなければ、やる意味がないということですね」
反町キャスター
「こうなっちゃう企業は淘汰されていくのだよというデータぐらいに思った方がいい?要するに、働き方改革で労働時間が短縮され、残業しなくなったら、その分、給料が減るんだよというようなところは…?」
山田氏
「淘汰というか、そういう企業が多いと、たぶん…」
反町キャスター
「ダメですよね?」
山田氏
「逆になっちゃうんですね、やろうとしていることが。だから、まさにこういうことを機械的にやるのではなくて、まさに現在、春闘ということで、労使の議論というのは単純に残業が減ったから残業代を減らすということではなくて、生産性を上げていって、しっかり増やすということを議論するという。これ適用まではまだ1年以上ありますから。そういうことが大事だと思うんですね」
反町キャスター
「常見さん、いかがですか?」
常見氏
「これは大事な踏み絵だと思っていまして。敢えてこういう言い方をしますが、何をこれぐらいで驚いているのですかという話ですよ」
反町キャスター
「ほう」
常見氏
「国を挙げて、そこで、いわゆる長時間労働をドンドン減らしていきましょうと言ったわけでしょう?」
反町キャスター
「はい」
常見氏
「だから、それは、たとえば、現在、残業しなかったことに対して手当てを出す会社が出てきていたりとか。僕の友人の教育ジャーナリスト・おおたとしまさ君という人が、一緒に今回、『働き方改革の不都合な真実』という本を出したのですけれども、そこで彼がずっと警鐘を乱打していたのは、こういうことで。働き方改革はこのままだと、ゆとり教育の二の舞になるということです。どういうことかと言う、ゆとり教育だって受験勉強ガチガチ詰め込みはダメだよね、これからは創造性が必要ですと。創造性が必要ですと、20年、30年ぐらいこの国は言っているのですけれども。いわゆる創造性が必要です、だから、ゆとり教育ですみたいなことを言ったのだけれども、いわゆるOECD(経済協力開発機構)の教育の国際比較のデータ、PISA(学習到達度調査)の点数が下がったと。あの点数もいろいろ怪しいのだけれども、都市国家が強かったりとか、だけど、その時にダメだと言って揺り戻しになったではないですか。ゆとり教育のどこが悪かったのかよくわからない状態になった。こういうことはわかっていたのでしょうという話ですよ」
反町キャスター
「うん」
常見氏
「それでもやるんだよねと。国を挙げた最大のチャレンジだから、これぐらい血が流れるでしょうという話だと思うんですよね」
反町キャスター
「2点、まずこの試算については、加藤さんはどう感じますか?」
加藤厚労相
「これはあくまでも1つの試算でありますし。経済界も、これは所定外…、要するに、生産性を上げて、所定外給与を、減りますね、その分、残業が減りますから、しかし、その分を労働者に還元をしていく。直接賃金を上げるというやり方もあるのかもしれない。あるいはさまざまな技能をブラッシュアップする教育にかけるとか。いずれにしても、そういう形で対応していくということを経済界のトップの方も言っておられますから。我々は先ほど、山田さんがおっしゃった後者の事例、生産性の向上を通じて、これを労働者の賃金に提供してもらう、こういう方向で進んでいかないと」
反町キャスター
「いかないと?」
加藤厚労相
「いかないと、逆に言うと、その分だけ雇用者報酬が減るということは消費も減りますし、景気にも決してプラスにはならないだろうと思います」
反町キャスター
「あともう1つ、常見さんの言われた、ゆとり教育と同じ顛末をたどるのではないかという、この指摘はいかがですか?」
加藤厚労相
「ゆとり教育に関して、どう評価するかというのはいろいろあるので置いておいても…」
常見氏
「…ゆとり教育ですら見直しが起こりましたよねという話を言っています」
加藤厚労相
「ここで言っているのは、働かなくていいなんていう議論をしているわけではないです。よりうまく効率的に働いていきましょうと」
反町キャスター
「日本人は働き方が緩い?この言い方が非常に微妙で自分に返ってくるので何とも言えないけれども…」
加藤厚労相
「働く人の問題というよりも、結果的にそういったことによってつくられている企業の、あるいは職場の雰囲気があるではないですか。なかなか帰りにくいとか、誰かが一生懸命やっているから自分の仕事は終わったけれども…。たた、現在かなり自分の仕事はこれだと言って、終わったら、すみません、で帰っている人がだんだん増えてきているようにも思います」
反町キャスター
「なるほど」
常見氏
「うん、うん、うん…」
加藤厚労相
「そういったことを1つ1つやっていくということが大事だろうなと思います」
反町キャスター
「一方で、先週、当番組に迎えた甘利さん、前の大臣です、甘利さんが番組中に、こういうことを話したんですよ。日本経済のリスク、安倍政権下における経済減速のリスクとしては『労基署不況』だと言いました。これは、つまり、現在ここで議論されているような働き方改革を労働時間の短縮ということを厳密にギチギチやっていった時、日本経済全体がシュリンクするのではないか?労働者の気持ちも萎えるし、経済全体のアウトプットも小っちゃくなっていくのではないかというこの話。『労基署不況』という言葉について、語感が非常に強いのですけれども、どう感じますか?」
加藤厚労相
「どういう趣旨でおっしゃったのかよくわかりませんが。労基署としては現行の制度においても、またこれが改革し成立すれば、その制度が適切に運用されていくように、必要な監督指導を行っていくというのは、当然の仕事でありますから。現在でも、いろいろなところに監督指導等々、行っているわけですね。その結果として、たとえば、この働き方改革をする時にどういうやり方でして、どうなっていくのかと、道筋というのですか、それがないまま、たとえば、働いている人も、お前、早く帰れと、その代わりにこれは明日までにやっとけよと、こういうことであってはダメなのだと思いますが。ただ、今回の働き方改革をきっかけとして、先ほどから申し上げているようにいろいろな見直しをしていただく。生産性を上げていっていただく。あるいは企業の中において本当にどこに働く人や資本を配分していくのかとか、そういったことをしっかりと議論していただくことによって成長というのを促していきたい」

『高度プロフェッショナル制度』
竹内キャスター
「『高度プロフェッショナル制度』とは専門職で年収の高い人を労働時間の規制の対象から外す新たな仕組みとして、年収1075万円以上のアナリストなどの専門職などを対象に残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が一切支払われなくなるという制度です。加藤さん、この制度を創設する狙いとしては?」
加藤厚労相
「高度な専門的な知識を有しているということと従事した時間と成果、この関係にあまり関連性が通常高くない、こういった範囲の中で、といったものを対象としていくということで。具体的には省令で対象業務を決めていこうと思うのですけれど。この働き方の中において、もうここは任してくれと。昼とか、夜とか、日曜日とか、もう自分の自由に仕事をさせてほしいという声もあるわけですから。これを全員にやろうと言っているわけではなくて、そういう働き方をしたい人にはいろいろ健康確保措置とか、それはしっかりやるうえにおいて、そういう選択肢を用意していくことが必要なのではないかということで、前回も法律を出していたのですが、これは解散になって廃案になったので、それも今回取り入れて一緒に提出することになっています」
竹内キャスター
「この1075万円というのは、この数字は何か理由があるのですか?」
加藤厚労相
「『支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上まわる』と、これは法律要綱、これから法律にしなければいけませんから、そこにはしっかり規定をさせていただているところであります」
山田氏
「いわゆる労働サイドから見るとかなり否定的な意見が多いのですけど。たぶん実はそのものとは少し違うのですけれど、最初にホワイトカラーエグゼンプションという議論があったんですね」
反町キャスター
「ありました」
山田氏
「その延長線上の中で引き継げてしまうので、かなり否定的な話になっているのだと思うんです。ただ、現実には今回は、かなりそこも要件を厳しく詰めていっているんですね。そういう意味では、おそらく現実的には問題のない状況に私はなっていると思います。それから、もうちょっと言いますと、アメリカで言うと、エグゼンプションというのは確かにあるので、ただ、やや特殊な国という部分があるんですね。でも、ヨーロッパに、似たような実は制度があるんですね。これは運用ですけれど、本当に、いわゆる労働者、管理・監督者の直前ぐらいの非常にそのスキルの高い人に関しては、これはいわゆる労働協約という、法律ではないのですけれど、ややこういう、そういう人に対しては特別に労働時間の対象外と。本当にプロで、自分でコントロールできる人達というのは、自由に仕事をした方が効率的で、その方が本人達も納得するんですね。今回も、割合で言うと本当に1%とか、2%の世界ですね。だから、そういう意味では、グローバルに見ても実は、客観的に見ていくと、そんなにこれはおかしな制度ではないと。むしろグローバルに見た時には入っても普通なのではないか。ただ、過去の経緯があるものですから何となくそこと結び付けてしまうと。逆に言うと、今回つくったものをなし崩し的に、ドンドン広げていくということはやめていかないとダメだなということだと思いますね」
竹内キャスター
「常見さんはどう見ていますか?」
常見氏
「これは何のために通すのだろう、ぐらいの、対象者が少ないんですよ。年収1000万円超の方のうち役員以外の方の、3%ということで。極めて適用される人がとても少ないのだけれども、うがった見方をすると、これは日本の労働法制における大きな風穴だなということですね」
反町キャスター
「なるほど、それは小っちゃいアリの一穴だけれども、広がっていくのではないかという意味で言っている?」
常見氏
「そう。もちろん、実は値段が下がっていくのではないかと言うけれど、今回の法案の出し方は善くも悪くも一括で出すから、であるがゆえに、今後は判断を変えるのではなくて、法律を変えないとこの額は下がれない」
反町キャスター
「そうですね」
常見氏
「法改正をしないといけないという、そういうカードを自民党は切ってきたのだけれども。一方で、本当はハッピーシナリオで言うと、たとえば、経理の人は、年収400万円、500万円の経理の人は決算シーズン以外は暇だということで、今日は2、3時間しか働かないぞということ、いや、働かないぞ、くらいのことを考える世界観というのも本当はあるのではないかと思うんです。と言うことで、今回の非常に中途半端感を感じる高度プロフェッショナル制度について、本音を是非お聞かせいただきたいのですけれども」
反町キャスター
「いかがですか?」
加藤厚労相
「確かに期待をしている経済界にいろいろな見方はあるのだろうと思いますけれども。たとえば、ラインで昇進していく人達は管理職ということになりますけれども、ラインではなくて、スタッフ専門職という形で伸びていく方も今いらっしゃるわけですね。そういった方々から見ると…」
常見氏
「うん」
加藤厚労相
「自分はラインには入っていない、でも、ある種の専門性を持っていると。それを自分なりにやっていきたい。だから、そういうニーズというのは、私はあるのだと思いますよ。実際そういう声も聞こえてくるので。つまり、そういったものをそれぞれが選択できるようにして。今回、だから、私達も申し上げているのは、こうさせるというのではなくて、これも相当、先ほどの労使がどこまで働いて議論しているかというのがあるのですが、労使委員会でキチッと決議をして、具体的に、という、いろいろな手続きが決められていて、それに則ってやっていく。加えて、健康確保措置として前回法案を出した以上にさらに充実をはからせていただいているので。そういう中で柔軟な働き方ができるようにしていく。そうでないと、たとえば、そういう人は他の働き方が、何があるかと言うと、完全に外にスピンアウトしてしまって、請負みたいな形で働くというやり方もないことはないと思います。ただ、それよりこの規制の中で健康確保措置とかがあって、こういう働き方ができるというのは、私は1つの選択肢だろうと思います」
反町キャスター
「日本の企業は先ほど、ライン職とスタッフ職と言いましたけれども、スタッフ職における高度プロフェッショナル制度というのは、そんなに広がっているものですか?ないしは今度、高度プロフェッショナル制度ということを導入することによって、スタッフ職のそういう裁量労働を広げたいという促進する制度的な意味があるのか?既にあるところに法的な追いつきを狙っているのか、これから進めていきたいと思っているのか、誘導的な意味なのか、追っ付け的な意味なのか、どちらなのですか?」
加藤厚労相
「まず1つは、こういう働き方は現在ありませんから、これを新たにつくるということはその通りであります。しかも、一方、そういう働き方をやりたい、あと業種によっても違うのだろうと思いますけれど、その産業によっても、そういった中で、そういった企業側も、それから働き手のニーズも合致したら、そうした、先ほども申し上げた手続きを踏んで、しかも、本人がやりますよということを文書で確定してという手続きをきちんと踏んでもらうと、こういうことになります」
反町キャスター
「それは多様化の推進薬、推進剤、促進剤になるのではないかとう意味を持って、今回の制度導入があるわけですね?」
加藤厚労相
「そうですね。ですから、最初から申し上げているように、それぞれの事情や思いに応じて選択できる、多様な働き方をつくっていくというトータルの中の位置づけですね」

『同一労働・同一賃金』
竹内キャスター
「ここからは同一労働・同一賃金について聞いていきます。山田さん、この同一労働・同一賃金というのはどのような仕組みになるのでしょうか?」
山田氏
「同じような仕事をしていれば、同じような賃金をつけろという考え方ですね。これは、もともとはヨーロッパを中心にこういう考え方があって、就社か、就職かという話がありましたけれども、ヨーロッパは、いわゆる就職型ですね。最初に仕事が決まっていて、そこに人がついていくようなことがあります。賃金もやや専門的になりますけれど、産業別の組合というのが、使用者の団体と交渉していって、どういう職種でどのぐらいの技能レベルがあればいくらだという賃金を、これは最低レベルをちょっと決めてしまうんですね。そうすると、どこの企業で勤めていても、若干差はあるのですけれど、だいたい同じようになってくると。それから、非正規と言われる、日本でいう非正規とはちょっと違うのですけども、いわゆる組合員ではない人達にも適用するようなルールができあがっているんです。ですから、実際は格差があるのですけれど、結構、格差はもともと小さい。それと、そういう仕組みがあるので、客観的な仕組みがあるのですが名前の通り実現するんです。それを入れようということですけれども。日本は、ちょっと困るのはそういう賃金の決め方をしていないですよね、個別の企業で決めています。しかも、正社員と、いわゆる非正規の方というのは、正社員というのは、いわゆる年功賃金的なものが残っていて、非正規の方はその時、スポット、スポットで決められますから、かなりこれしんどいですね。ですから、今回は差があるのは、ある程度これは仕方ないのだけれど、ちゃんと説明できるような差にしてくださいと。説明できない差は認めませんよと。そういう、ちゃんとその理由があって、正規の人と非正規の人の差が、たとえば、技能のレベルが違うということで説明がつくのであれば…」
反町キャスター
「でも、それは同一労働・同一賃金と言いながら、賃金格差の説明を求める、これは矛盾と言ってはいけないのですか?まわりくどいなと…」
山田氏
「そうですね。実態的には非正規の方の処遇を上げていくということに近いと思います。でも、それを1つの考え方として、同一労働・同一賃金、ヨーロッパを参考に入れようとしているということですね。ただ、ちょっとそこはヨーロッパとは仕組みが違うので、日本の…」
反町キャスター
「労働組合の話やら何やら、先ほどの話ですよね?」
山田氏
「はい」
反町キャスター
「常見さん、いかがですか?同一労働・同一賃金、期待感はありますか?それとも、リスクを感じますか?」
常見氏
「同一労働とは何か、ということの議論が十分ではないような気がするんです。いわゆるヨーロッパ型だったら、もっと言うと、同一価値労働・同一賃金。ジェンダーの差だとか、そういったものとか、現在、諸々あるので、同じような価値のものは同じ賃金にすべきではないかという考え方もある。結構、気になるのは、実は職務内容によって、同一賃金にしようと言っているようで、実は職務の結果ではないかということがあると。逆に言うと、そこで、しかも、もう1つあるのが、これは同一労働・同一賃金は、非正規の格差、非正規の方と正規の方の格差是正の文脈だけでやる話なのかなということがあって。政府から出てくるのは非正規と、正規雇用との格差是正のための、しかも、非合理的な格差是正のための同一労働・同一賃金と言っていると、この条件づけが大変気になっていますね。この同一労働・同一賃金は各政党、皆、言っているんですよ、実は。ほとんどの政党が、マニフェストを読み比べると言っていると。だけど、その意味の違いがあるのではないかなということで。だから、今後、まさに財界にしろ、経済界にしろ、政界にしろ、ここにどこまで踏み込んでいくのかということが大変気になっていますね」
反町キャスター
「いかがですか、指摘がさまざまいろいろ出ましたけれども?」
加藤厚労相
「もともと、だから、国会でも同一労働・同一賃金を入れるべきではないかという質問に、非常に慎重な答えをしてきたんです、実際は。しかし、今、お話があるように、ヨーロッパでの実態を見ると、必ずしも職務だけではなく、労働の質とか、勤続年数とか、さまざまなことを配慮してやっている。そうすると、そういうことを考えれば、我が国の雇用実態に配慮をして、それから、大事なのはこの2人を比較するのではなく、この処遇、基本給を払う、ボーナスを払うなりすると、この処遇がいったいどういう形で払われているのか。払われている根拠からした時に、非正規と正規ということが反映するのか、しないのか。そういうのを1個1個見ていくということです。それをガイドライン案ということでお示しさせていただきましたので。大事なことは1つ1つの処遇ごとに、そうすると、何が起こるかと言うと、現在、決めている賃金体系の合理性も当然問われていくということなので…」
反町キャスター
「そうですよね」
加藤厚労相
「それぞれ能力と現在の職務はどういう関係になっているのか。それと賃金とがどうなっているのか。これは別に正規、非正規という問題だけではなくて、正規における体系自体もどうなっているのか。こういったことも明確にしていかないと…」
反町キャスター
「そこまで政府は踏み込むのですか?」
加藤厚労相
「いや、ですから、そこは、しろとは言いませんが。しかし、そういうことをしていかないとなかなか合理的かどうかということの説明というのは難しいのではないかと」
反町キャスター
「踏み込むのですか?これを、ガイドラインを示すということは、それから外れている企業は、外れていると社会的な圧力も受けることになりますよ?」
加藤厚労相
「外れているというのは、要するに、今、申し上げたのは1つのきちんとした説明をしてくれ、これは自分の、自分の体系だけではなくて、たとえば、非正規で、私が非正規なら、隣の正規の人はどういう処遇なのかという説明をする義務を今度の法案の中で設けていますから、そうやってきちんと比較をしていただいて、これがどうなのか。この処遇、この処遇、トータルではなくて、この処遇はどうなのか?」
反町キャスター
「同じ仕事をやっているシステムエンジニアがいるとします。この会社の業績はすごく良いのだけれども、この会社の業績はあまり良くない時、これは給与格差というのは出るのですか、出ないのですか?」
加藤厚労相
「ですから、その時にその会社はどういうことをベースにしてお金を払っているのですかと。たとえば、基本給なんて、どこまでが職務給でどこまでが職能給とか、いろいろあると思うんですね。そのやり方については、私達は別にこうだと言うつもりはありません。ですから、ここが職務給でお払いになっていると言うのであれば職務が一緒なら一緒になるでしょうと。しかし、そうでない考え方に則ってやっているのなら、それはそれとして説明がつけば…」
反町キャスター
「そうすると、同一労働・同一賃金と言いながらも、違いがあることも容認する法体系になっているはずですよね?当たり前ですけれども」
加藤厚労相
「ですから、違いがあるのは実態に違いがあるわけですから。違いがあれば、何がしかにそこに差があっても、その合理的範囲であれば、それは当然許容されるということになるわけ」

加藤勝信 厚生労働大臣兼働き方改革担当大臣の提言 『自分らしい働き方を』
加藤厚労相
「多様で柔軟な働き方が提供されることによって、それぞれの方々の状況に応じて、また、その思いに応じて、働き方をこれ選択できる、あるいは人生を設計できる、まさに自分らしくやっていける。これは、自分の人生を描けるということは非常に大きなことだと思いますし、これから特にAI(人工知能)が入ってきたり、いろいろ変動をしていくことも想定されますから、より自らの人生を自分でつくっていけるという、こういう環境をしっかりつくることが結果的に豊かな社会、あるいは先が見える社会につながっていくのだろうと思います」

山田久 日本総研調査部理事 主席研究員の提言 『政労使協議』
山田氏
「私は、政労使協議と書いているのですけれど。私は労使自治という話をずっとしていたのですけれども、残念ながらうまく機能していない。そういうことで政府が現在、いろいろルールをつくろうとしているのですけれども、完全に政府が決めるわけにはいかないですね。今あくまで出発点であって、政府はいわばコーディネーターというのですか、ファシリテーターとして進めていって、労使で話し合っていくという、そういう意味での政労使での協議ということで、継続して働き方ということを変えていくということが大事だと思います」

常見陽平 千葉商科大学国際教養学部専任講師の提言 『会社に殺されない社会へ 自分革命』
常見氏
「会社に殺されない社会へ、自分革命ということですね。今回法案が、いわゆる自民1強、野党多弱なので、通っちゃうのですけれども、たぶん、ですけれども、ここでもまだ、この法案が通ったからと言って危険なわけです。ちょうどこの番組の前に、NHKで過労死した佐戸未和さんの親御さんからメールが来て、いわゆる裁量労働制は怖いということで、しかも、NHKの上司には、亡くなった時の説明で、裁量労働制で、言ってみれば個人事業主みたいなものだからみたいな、あたかも自己管理していないかのようなことを言われたと。だから、現在の会社と社会って怖いんです。ますますこの法案が怖くなる可能性はあります、いろいろ配慮はしているのだけれども。そんな時に、革命ということを政府が言う国というのは幼稚だと思っていて、これは自分達で革命を起こさないと、と言うことで、いかに働かないかということを労働者皆で考えようということを言いたいと思います」