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2018年1月16日(火)
南北接近と『新方針』 文政権の真意徹底検証

ゲスト

黒田勝弘
産経新聞ソウル駐在客員論説委員
平井久志
ジャーナリスト 共同通信社客員論説委員・元ソウル支局長
浅羽祐樹
新潟県立大学国際地域学部教授

検証・日韓合意『新方針』 揺らぐ韓国の真意は?
竹内キャスター
「先週、およそ2年ぶりに開催された南北閣僚級会談での合意を受けて、北朝鮮のオリンピック参加を具体的に詰める実務者協議が始まっています。さらに、韓国政府は慰安婦合意をめぐる日韓合意の新方針を発表する等、ここにきて朝鮮半島情勢から目が離せません。そこで韓国と朝鮮半島の専門家を迎え、韓国と北朝鮮、そして、日韓の現在とその先を考えます。先週火曜日、韓国の康京和外相が発表した日韓合意に関する新方針から聞いていきます。新方針の概要がこちら。『財団の基金10億円は韓国政府が充当、日本の拠出金は日本政府と協議』『合意は元慰安婦の意思を反映しておらず、真の解決策ではないが、両国の公式合意だったという事実は否定できない。韓国政府は再交渉を要求しない』『日本の自発的な真の謝罪を期待する』ということですが」
反町キャスター
「浅羽さんから見て、康外務大臣が発表した新方針、『10億円』『慰安婦の意思を反映しておらず、真の解決策ではないけれども再交渉は要求しない』『自発的な真の謝罪を期待する』と、このポイントをどう見ているのですか?」
浅羽教授
「これは国家間合意というのはそれだけ非常に重いと、国内で『ろうそく革命』と、自らはそのように自負するのですが、革命が起きようが何が起きようが、国内事情の変更ぐらいで国家間合意というのは覆らないのだということを、韓国政府としても引き受けざるを得なかったと。今年6月に統一地方選挙がありますし、目立つ元慰安婦、青瓦台に食事会に呼ばれる8名の人とか、本当はそれ以上の元慰安婦が受け取っているのですが、そういう方の声というのは一切出てこないので、目立つ元慰安婦、あるいは挺対協が反対している中で、もっと引っ張られてもおかしくないような国内事情の中、国家間合意を再交渉しない、覆すことはできない。実態、中身の部分でかなり骨抜きにされる部分はあるのですけれども、骨格は残るというぐらい、国家間合意というのは政権を拘束するということが現れた結果だったと思います」
反町キャスター
「それは『真の解決策ではない』『謝罪を期待』と擦ってはいるけれども、芯の部分は何らこれまでのものを変えているものにはなっていない?」
浅羽教授
「いや、えーと、骨格が確実に残るのはここですね。2国間の交渉時に外交的な争点として取り上げることはしない、できない、というのは韓国政府もよくわかっていると。ですので、あくまでも日本の自発的な謝罪を期待するという言い方ですね。ですので、公式な議題には取り上げられないということもよくわかっていると、これがまず1点目。 2点目、第3国に対して、とりわけアメリカに対してですが、非難・批判、いわゆる告げ口外交ということはできないし、やらないということもわかっている、ここは残ったんです」
反町キャスター
「なるほど」
黒田氏
「要するに、文在寅さんは、日本向けといいますか、外にも良い顔をしたいし、それから、国内的にも良い顔をしたいということではないですか。つまり、彼は、選挙の公約で、日韓合意はけしからんと言って…、再交渉論だったわけでしょう」
反町キャスター
「ずっと言っていた、そう」
黒田氏
「それを今回、再交渉はしないと言っているわけですから…」
反町キャスター
「撤退ですよね、これは?公約破棄ですよ」
黒田氏
「うん、それは相当厳しいわけで。彼は日本との関係と言いますか、外交、浅羽さんがおっしゃったように、国際関係等を含めて、破棄とか、再交渉はできないという、そういう外交的配慮をしたわけですよ。ところが、中の、国内的には公約しているわけだし、それから、彼の支持勢力というのは、相当厳しい立場ですから、彼はなだめなければいけないと。だから、玉虫色になって、国内向けには、だから、たとえば、今後とも日本には自発的な本当の謝罪を期待するとか、それから、日本の金は10億円を受け取ったけど、別途にそれを我々の方でカバーすると、そういう国内の非難と言いますか、彼の支持勢力をなだめるための措置をとったということですよ」
反町キャスター
「平井さんは、この3つの新方針のポイントをどう見ているのですか?」
平井氏
「だから、何が言いたいのかがよくわからないということですね」
反町キャスター
「そう、そこですよ」
平井氏
「ええ。だから、どうしたいのかということが…」
反町キャスター
「どうしたいのですか、これ?」
平井氏
「よくわからないですね。だから、国家間の約束は破るわけにはいかないけれど、国内世論、自分の支持勢力のことを考えれば、それをそのまま受け入れることはできないという、そういう矛盾したアレですけれども。韓国は確かに、しかし、世論があの合意に反対する人達が多いというのも、また、それはあまり保守・リベラルを問わず、そういう世論が多いというのもまた現実なので。だから、これからむしろどうするのだろうかと。率直にこの日の発表を聞いた時に、これからどうするのだろうというのは、むしろ率直な感想ですね」
反町キャスター
「この新方針のポイントを見ている限りにおいては、どうするのだ、何にもしないと言っているようにも見えませんか?」
平井氏
「だから、当分、放って置いて…」
黒田氏
「当分、何もしないのでしょう」
反町キャスター
「何もしない?」
平井氏
「ええ…」
黒田氏
「何もしない…」
平井氏
「日本が何かしていること、触れることを期待するというところで止まっているということですよね」
反町キャスター
「でも、期待されても何もやりませんよね、日本政府は?」
平井氏
「たぶん、そうでしょうね」
日本拠出金『10億円』の行方
反町キャスター
「平井さん、充当という言葉が、この前後の説明として、この外務大臣は、何人かの慰安婦の皆さんは既にお見舞金を受け取っているけれども、日本政府からのお金だからと言って、受け取るのを拒否している皆さんもいる。それを韓国政府が10億円を出して、そこから分配する形にすれば、韓国政府のお金だったら皆さん、受け取るでしょうというふうに、大統領の会見で文さんが言ったんですよね?」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「そういうものなのですか?マネーロンダリングみたいに見えちゃうのだけれども」
黒田氏
「…」
反町キャスター
「そういう理屈で韓国の信条というのは…?」
平井氏
「韓国が苦しかったのは、受け取った方と受け取らない方を…」
反町キャスター
「8割、受け取っているではないですか?」
平井氏
「それを、だから、分断しちゃうという、そういう危険性を、おそらく韓国政府は感じたのだと思いますね。それを、だから、充当させてしまえば、自分達のお金で払うということにしてしまえば、その分断を防げると考えたのではないかなという気がしますが。ただ、そうなると、もともとの10億円はどうするのだという問題に突き当たるので」
反町キャスター
「そう、何に使うのですか?」
平井氏
「全然、アイデアはないのではないですか?」
反町キャスター
「浅羽さんは、この10億円の話をどう見ているのですか?」
浅羽教授
「これは日本政府の公金だからこそ意味があると言って受け取った人がいるんですね。今回、その作業部会の報告書が出て、韓国政府が10日ほどヒアリングをしたわけですけれども、そこでもそういう声があったからこそ、逆に破棄・再交渉というのは当事者の意にも反するという声があったぐらいですよ」
反町キャスター
「ほう…」
浅羽教授
「それは日韓合意の核心なわけですね。日本政府としては従前の立場から相当踏み込んだわけですよ。法的賠償という言葉はなくても、実態の部分はかなり踏み込んで、それに基づいて設置された事業で、和解・癒し財団の、何とお金を呼ぶかどうかともかくとして、お見舞金、癒し金が配られたという部分が根幹なので。そこを韓国政府のお金で置き換えると、合意の根幹が覆されたように見えるわけですよね」
反町キャスター
「そうですよね」
浅羽教授
「ですが、韓国としては形式的に、お金を送り返すとそれは明確な破棄になるので、苦しいわけですよ、ここは」
反町キャスター
「日本に文句を言われない形で国内の体裁を取り繕っているという言い方でいいですか?」
浅羽教授
「そうなのですが、それは日本からすると事実上の破棄に映るわけですよね」
『積弊清算』の正体は
反町キャスター
「皆さんから、我々いろいろ聞いて、フリップを用意したのですけれど、『積弊清算』というのですか?これは文大統領の、1つの、キャンペーンポリシーみたいな意味なのですか?どういう言葉なのですか、これは?」
浅羽教授
「積もり積もった悪弊を清算すると、過去を清算する。直近の朴槿恵政権だけでなく、その前の李明博、保守政権9年間に積もり積もった悪弊がある、それを取っ払うのだと。各部局で政策の見直しをされていて、外交部に関して日韓合意が見直しの対象に。ですので、決して狙い撃ちされたわけではなくて、そういう広いプロジェクトの中の一環だったわけです。一部からはこういう保守派に対する政治的な報復であるという声があるのですけれども、まだ6割以上の国民は正当な、一連のろうそく革命後の正当なプロセスが続いていると、政治報復と見る声の方が低いです。個別具体的な政策で文大統領が支持されているというよりかは、コミュニケーションのスタイルが国民に開かれているとか、あるいは朴政権、後半は機能しなかったので政府がとにかくちゃんとまわっているような感じがするという部分で評価されていて、7割を超える高い支持率です。それは彼にとってみれば、政治的な支援でもあるわけです。選挙の年ですので、6月、統一地方選挙なので、本当はもっと引っ張られてもおかしくない時期に、外交で国際合意を破棄しなくても支持基盤からそれほど強いダメージを受けないということを読めるので押し切れた部分はあるんですね。これが既に支持率が下降局面だともっと引きずられていてもおかしくなかったわけですよ」
反町キャスター
「なるほど。と言うことは、要するに、前の保守政権時代の、闇を暴くみたいなニュアンスをやることはわかるのですけれども。そうすると、だんだん日本にも似たようなことがあるなと思いながら聞くことになるのですけれども、それは政治的な実績にはなりませんよね?」
浅羽教授
「ならない、ならないのですが…。まだ、正しているという部分が評価されるんですね。ただ、もう政権2年目、5月に2年目を迎えますので、いくらなんでも個別具体的な彼の業績を出さないといけないだろうというので、政権のドライブ、方向性が多少変わりつつあるんです」
反町キャスター
「でも、7割の支持率のメインエンジンとなるのは、いまだにこの…?」
浅羽教授
「まだ、過去の政権と違うのだという部分で評価されていますよね」
反町キャスター
「平井さん、いかがですか?この積弊清算というのは、これが現在の文政権のメインエンジンなのですか?」
平井氏
「そうですね。選挙の前は、積弊というのが、たとえば、朴槿恵さんの近しい人だけが良い思いをすると、そういう社会の構造みたいなものを正すのだという、ニュアンスも結構強かったんですね。むしろ、この政権が発足して以降、前の政権の不正・腐敗追及という色彩が強くなっていると思いますね。だから、それが現段階では、まだ支持されているというニュアンスははるかに強いと思いますね」
反町キャスター
「うーん、名前出しちゃった方がいいんだろうな、小池都知事を念頭に置きながら聞いているんですよ」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「小池さんは知事になった時に都議会自民党がこれまでやってきたことというのを全てオープンにしますと、情報公開します、彼らがやってきたことは問題があると、さまざまな築地・豊洲の問題も含めて、予算の話も含め、都議会自民党が持っていた150億円だったかな、そういう個別の予算も含めて、あらゆるものを公開していって、それがもしかしたら、まさに積弊清算をやっていたかのように僕には見えますよ。これがいろいろな形において勢いがどこまで持続するかと見ている中で、非常に文大統領の持ちがいい、これはどういうことなのですか?」
平井氏
「たとえば、新しい問題が出てきているというところもありますよね。たとえば、朴槿恵さんの問題で、国家情報院、情報機関のことを改革するのだと言っていて、やっているうちに、情報機関の秘密資金というものが青瓦台の方に上納されていたというようなことが出てきて。そういうことは非常に庶民感覚として、あっ、これはダメだということが非常にわかりやすいわけですね。ですから、朴槿恵さんが使っていた、たとえば、いろいろな経費がそこから、そこでそのお金を使っていて、もう歳費の方はまるで貯金されていたみたいなとか、そういうのは非常に庶民にとってわかりやすいので、それが、問題は、だから、たとえば、国家情報院の改革という問題が、本当は情報機関ならどういうふうにやらなければいけないかということが、現在やっている最中ですけれども、まだそういう、たとえば、秘密資金をつくっていたんだ、みたいなことの暴露の方が国民にウケているという、まだそういうステージですね」
反町キャスター
「黒田さん、保守派は積弊清算をいいようにやられているだけですか、現在は?」
黒田氏
「浅羽さんがおっしゃったけれども、当然スタート直後は、政権スタート直後はそれでいいし、現在、1年足らずですけれども、それだけで2年目もやっちゃうのかということは、これは保守派のみならず、一般の普通の中立的な人達も、新政権とは何だ、何もないのではないかというのが当然出てくるので、これからは随分変わると思います。それから、野党はちょっと力が弱いのだけれども、野党はしきりにそのことを言っていますね。昔話ばかりやっていてどうするのだということですね、何をやりたいのだと」
北朝鮮・平昌五輪参加の狙い
竹内キャスター
「ここからは先週火曜日におよそ2年ぶりに開催された南北閣僚級会談について聞いています。会談後に発表された共同文書で、オリンピック関連については、北朝鮮は平昌冬季オリンピックに、高官級代表団や選手団、応援団、芸術団などを派遣することで合意し、昨日から始まりました実務者協議では、韓国統一省が北朝鮮が140人余りの管弦楽団を韓国に送り、ソウルやオリンピック会場のある江陵市で公演することで南北が合意したと明らかにしました。芸術団のことが先に決まったのはなぜなのですか?」
平井氏
「それは変な話ですね。ですから、全体の代表団の数がまだ、明日議論するわけですけれども、まず芸術団をやろうと北朝鮮が言ってきたのはちょっと普通なら理解できないです。それだけこの芸術団というものを北が重視しているということの反映であるとは思いますね。ですから、今回の、はっきり言って、このオリンピックに参加する目標というものが、選手団がメダルを獲得することはほとんど期待できませんから、数も少ないですから。むしろ韓国の人達の気持ちを、親北朝鮮、我々は同じ民族ですよという、そういう宣伝戦をやりたいということですから。そういう中では、北朝鮮が提案しているいろいろなグループの中で、1番、芸術団がこの重要なポジションを占めますから。だから、北としては、そのことをまず合意をしたいという気持ちはあったのではないのかなという気がします」
反町キャスター
「入場の時に半島旗を持って…」
平井氏
「ええ」
反町キャスター
「合同でという話にもなりつつありますよね?」
平井氏
「はい」
反町キャスター
「北朝鮮側にしたら、これは北朝鮮の国旗ではなくて、半島旗を持って入ることというのは、彼らにとってもプラスになる話なのですか?国をアピールしなくて、統一感をアピールするという、ここはどうなのですか?」
平井氏
「メリットがあると思います。だから、同じ民族ですよと、現在、オリンピック参加の大きな目的は韓国の人達に、私達をとるのですか、アメリカをとるのですかという、1つの問いかけであるわけですから。そういう点では自分達の同一性というものを、できるだけこのオリンピックで韓国の普通の人達に共感してもらいたいという意図はあると思います」
反町キャスター
「黒田さん、いかがですか?」
黒田氏
「統一旗のメリット、効果というのは、北にとって。これは韓国でオリンピックをやるのに韓国の国旗が出ないっちゅうことではないですか?」
反町キャスター
「おぉ…」
黒田氏
「だから、韓国の存在感を後退させると言うのですか、薄める、なきものにするっちゅうみたいなものですから、それは北にとっては大きな意味があるでしょう」
反町キャスター
「なるほど」
黒田氏
「大韓民国よりも、我が民族と言いますか、朝鮮半島だって言っているわけですから、そういう意味は当然あるので」
反町キャスター
「あと、パフォーマンスとか、美女軍団とか、そういう人達がドーンと入って来ることというのは、それも雰囲気づくり1本、そこに狙ってきている?」
黒田氏
「先ほど、平井さんが的確におっしゃったように北は別にスポーツをやりに来るわけではなくて、政治をやりに来るわけですから、政治外交をやりに来るわけですから。もともとスポーツもそう、芸術もそう、全部それは政治の下にあるわけです。最近、ほれ、チャン…」
平井氏
「張雄…」
黒田氏
「張雄という、IOC(国際オリンピック委員会)の北の委員長が、どこか外国で言ったではないですか?この…」
反町キャスター
「政治の上にスポーツがある、でしたか?スポーツの上に政治がある、でしたか?どちらでしたか?」
黒田氏
「そう。もちろん、スポーツの上に政治が…」
反町キャスター
「政治ですよね」
黒田氏
「だから、政治が固まらない限り、スポーツは話ができないっちゅう話ですよ。北はそういうものですから。今回も、特に平井さんがおっしゃったように北朝鮮はメダルの可能性はまったくないわけですから、北の国旗が上がるということはないわけ。とすると、そのことよりも、スポーツよりも政治に徹底するということではないですか?」
反町キャスター
「浅羽さんはどう見ていますか?」
浅羽教授
「1月の金正恩の新年の挨拶で、核のボタンが自分の机の上にあるとか、米朝の間で核抑止が成り立っているという話がまったく1ミリたりとも動いていないのに、何か雪解けで、もう解決に向かっているかのような雰囲気を漂わせるだけで、北にとってみれば非常に得なわけですよ。韓国の世論分断するのもそうですし、核・ミサイルを開発する時間稼ぎもそうですし、日米韓の結束で、韓国を切り崩せると一石三鳥ぐらいのもので、本当に見事なまでの外交攻勢だなと」
国際社会のあるべき対応
反町キャスター
「騙されるなよと、ここでこういう議論が出るぐらいなのに、韓国の人達というのは、そういう危惧と言うか、懸念というのは持たないのですか?」
浅羽教授
「持っているので、文大統領も新年記者会見の中で南北対話は米朝の関係改善、あるいは核・ミサイルの問題の解決につながらないといけないということを言っていますし、韓国は独自で制裁を解除すると、開城だとか、金剛山の要求を北から突きつけられても、毅然として跳ね返すことができるかどうかが問われるわけですが。言葉のうえでは、我々もそういうことはできないというのはよくわかっていると。韓国の国内の保守の懸念は、それでかなり払拭されているのですけれど、米日の懸念の目というのは、それは当然、残るわけですよね。厳密には、北のオリンピックの参加の負担に対して便宜をはかることでさえ、制裁にあたる可能性が十分あるわけで」
反町キャスター
「それは、ありますよね?」
浅羽教授
「ええ」
反町キャスター
「何百人も来て、ソウル、平昌近くの市でコンサートをやります、代表団も来ます、金与正さんでしたっけ、妹さんも来るかもしれないという話になっていますよね?この場合で言うと、本来だったらば、選手団はIOC、国際オリンピック委員会だろうけれども、他の代表団に関しては韓国政府、韓国オリンピック委員会がお金を出す可能性とかもあるわけではないですか、費用負担。そういうものに対しての異論というのはもちろん、韓国にはまったくないわけですよね、平和ムード一色で?」
浅羽教授
「当然、国際的な理解を得ながら一部、期間中解除するのだということを言うわけですね」
反町キャスター
「いかがですか?韓国の中で、まったくそのへんの議論というのは…」
平井氏
「いや、当然やっていますよ」
反町キャスター
「懸念というか、それが本当に良いのかを問い直す姿勢というのは出ているのですか?」
平井氏
「だから、国際世論と衝突しないようにやっていくということは出ているのですけれども。実は文在寅政権がとれる、やり得ることというのは非常に制限されていると思いますね。と言うのは、南北関係の発展というのは、非常に大きな部分は経済関係ですよね。開城工業団地もそうですし、南北の交易もそうですし、金剛山観光にしてもそうですね。だから、南北関係というのは、進展させようと思えば、必ず核・ミサイル問題の制裁とぶつかっちゃうんですよね。だから、あまりに文在寅政権が南北関係の進展ということでできることはそんなに多くはないと。だから、1番その小さな、シビアな面は、先ほど言った、このオリンピックに参加しても、その便宜供与をどういう形でできるのか。お土産を1つも持って帰れないような現在、現実があるわけですよね。だから、非常に、文在寅政権が北に言いなりになっているように見えますけれども、実際にそうしたら文在寅政権に何ができるのかと言えば、そんなに大きなハンドリングの幅というのは、あまりないのではないのかなという気がします。だから、それだけ文在寅政権は非常に舵取りが難しいと思います」
2年ぶり南北会談 『民族団結』に潜むワナ
竹内キャスター
「会談後の共同文書で『南北関係のあらゆる問題は同じ民族同士で対話と交渉を通じて解決する』ということで合意しました。黒田さん、あらゆる問題というのは何を指すのでしょうか?」
黒田氏
「これは同じ民族同士、『キリ』という言葉を使うのですけれども、これは昔から彼らが言っていることであって、韓国向けに。つまり、同じ民族だということを強調して、アメリカを排除しろという意味ではないか、一言ではないか。要するに、アメリカからの切り離しということだと思いますよ」
反町キャスター
「これは北が言うのはわかるのですけれども、南北の共同文書に入ったということは、韓国も是としたということですよね?」
黒田氏
「アメリカから切り離すということを具体的に言われたら反対ですけれども、我々民族のために、民族だけで共同利益を追求するというのは原理原則で、いいことですから。断ることはできないと言って、過去、韓国関係のいろいろな文書に同じことが出ていますから。殊更気にすることはないと思いますね」
反町キャスター
「平井さん、いかがですか?」
平井氏
「南北の立ち位置が一致した部分で、北朝鮮は先ほど、黒田さんがおっしゃったように、我が民族同士という伝統的な対南政策があるわけです。文在寅政権の特徴として、朝鮮半島問題は、我々は主導的役割を果たすのだというのが強いわけです。我々はいつも運転席に座っていなくてはいけない、外国が決めてはいけない。その自分達の想い、問題を我々の主導的役割で解決するのだという路線が、こういう文書で合致したといことです。この文書は北側の発表文書では『我が民族同士の原則で』と、文言が違うんですよ」
反町キャスター
「どういう意味ですか?原則という言葉が入ることで、同じ民族同士となっていますけれども、北朝鮮の文書では自分達の言葉である『我が民族同士の原則で』と、共同報道文なのですけれども、北と南で文書が違うんです。それは逆に言えば、ワーディングが違いますけれども、自分達が中心になってやるという路線で一致する点があるから、この第3項目で、3項目の合意の3つ目ですけれども、こういう合意があったのだと思います」
反町キャスター
「浅羽さん、この表現についてはこういうものだと思いますか?リスクは感じますか?」
浅羽教授
「文政権の外交安保は、コリアファースト、民族の問題は民族でという路線と、圧力・制裁強化の国際協調の狭間に立っているわけですよね。その絶妙なバランスが重要なのですが、現在ちょっとコリアファーストが強く出ている局面ですね。米韓の軍事演習が、オリ・パラ期間は延期となっていますけれど、これは北がある時点で延期ではなく、無限に延長と、ずっと延ばすとか、在韓米軍撤収とか、到底、南が飲めない、南だけで決めてもらっては困る議題を出してきた時に、いや、それは合意したではないか、民族同士で話し合うのだろうと言った時に、国際協調路線からの観点と、いかにそちらの観点から韓国外交は対処するのかと、我々は注視しないといけないわけですね」
反町キャスター
「それは南北がぶつかって、決裂した場合、今回の閣僚級会談で決めた共同文書はお互いに破棄するということになるわけですよね?おそらくは」
浅羽教授
「文言自体はずっとこの文言が入っているので、とりたてて今回という話ではないのですか、核・ミサイルの国際協調路線の方がはるかに重要な局面の時、オリ・パラは無難にこなしたとしても、そのあと到底飲めない問題が出てきた時とか、あるいは核・ミサイルのさらなる挑発があった時に、国際協調路線で韓国もがっつりやれるのかという部分が問われるわけですね」
反町キャスター
「黒田さん、あらゆる問題は、離散家族の話かもしれないし、金剛山の観光の再開かもしれないし、開城の問題かもしれないし、さらにもうちょっと先に行くと、安全保障、核・ミサイルの話かもしれない。あらゆる問題というのはどこまでを意味するのか?北と南であらゆる問題の定義を、平仄を一致させているか、どう見ていますか?」
黒田氏
「お互い自分達に有利に解釈するということだと思います。南北関係という前提がついているわけですから。たとえば、安保問題は南北関係かと、在韓米軍の存在は南北関係かというようになるではないですか。そうすると、韓国は南北関係でないと言うのだけれども、北は我々の脅威になっているから、南北関係だと言って、在韓米軍問題も演習の問題とかを取りあげることはあるわけですよね。それはお互いの玉虫色というのですか」
反町キャスター
「平井さん、あらゆる問題というのは、都合のいいことを含んだ、あらゆる問題という理解でよろしいですか?」
平井氏
「そうだと思います。だから、実際の協議に入ると、これは南北間の問題なのか、国際的な問題なのか、ぶつかる可能性はあると思いますね」
反町キャスター
「それは浅羽さんが言われたみたいに、あらゆる問題なのだから、安全保障の話をしようよと南から言った時に、何を言っているんだよと、これは違うだろうと、お互いに触れたくない話が出た時には拒否する権利も含めた、あらゆる問題?」
平井氏
「だと思いますね。アメリカとどうしても相談しなければいけないという問題もあるわけですから、その問題を南北関係のあらゆるとはちょっと韓国としては言わないと思いますね」
反町キャスター
「黒田さん、こういう合意をやった時に韓国の世論とか、マスコミは、これはあまりにも玉虫色過ぎておかしいのではないかという論調は、メディアには出ないのですか?」
黒田氏
「ないですね」
平井氏
「過去、こういうのをいっぱいやっていますから」
黒田氏
「韓国のだいたいこういう合意文書は合意というのが重要であって中身はあまり問わないね」
平井氏
「ふふっ」
反町キャスター
「えっ?」
黒田氏
「特にメディアは。合意というのは、仲良くなったという印象」
反町キャスター
「韓国は日本に対してはギシギシ詰めるのだけれども、北朝鮮に対してはゆるゆるの合意文書づくりをしていると。こういう理解でよろしいのですか?」
黒田氏
「日本の関係は特殊ですから、日本に対しては厳しいというのがあって、『ウリ民族キリ』ですから、南北関係については、ありますね、情緒的な甘さが。そんな印象を持ちますね。破る時は北が勝手に破りますからね。いつも、これまでほとんど破ってきたわけでしょう。不可侵宣言もそう、非核化合意もそう。全部、勝手に破ってきているわけですから。合意自体が長続きするとは韓国民は経験的に思っていないですね」
反町キャスター
「これは何のために?」
黒田氏
「それは当面のことですよ」
反町キャスター
「その感覚は日本に対しては違うんですよね。慰安婦の話、日韓合意の話は当面と思っていなくて…」
黒田氏
「日本との関係というのは、愛国無罪がそうであって、つまり、日本に対しては法治を守らなくてもいいみたいな情緒があるのではないですか。日本との関係は特殊ですから」
反町キャスター
「文大統領は北との南北協議の内容を10日にはトランプさんに電話で報告しました。習主席には11日に電話で報告しました。日本にはかかってきていないですよ。特殊だから日本にかけないのですか?」
黒田氏
「文在寅さん、本当はやるべきですよね」
反町キャスター
「なぜやらないのですか?」
黒田氏
「うーん、わからないな」
反町キャスター
「南北協議の内容を日本の安倍総理に報告したと言うと青瓦台にとって損なのですか?」
黒田氏
「うーん、どうでしょうね。イメージとして世論向けのイメージだと思いますね。南北関係に日本の、たとえば、何か承認が必要なのかみたいなというのがありますから。我々だけの問題なのだという、そういうのがありますから。ここの心理はわかりません」
浅羽教授
「日本では北朝鮮の問題に関しては、日米韓の安保連携が重要だと嘘でも言うわけですけれども、韓国は米韓の同盟は重要だけれども、米韓日の安保連携が重要だと、ワーディングは言わないです。ですので、韓国防衛は米韓同盟だけでやれていると。実際はグアムからB1Bが飛んでくると、それを空自がエスコートして、防空識別圏の際で韓国空軍に渡したり、あるいはステルス機が岩国から飛んで行ったりして、米日韓の安保連携は実態としてはあるのですけれども、一切、表明しないので、韓国民の9割以上が日本の防衛協力が韓国防衛に役に立っているという認識はなかなか持てないわけですよ。そこの乖離が、日米韓と我々が言う時に、韓国側でも同じくらい韓米日と言っているのだろうという期待があるわけですけれども、言ってくれないですね」
反町キャスター
「逆に言うと、言うことによってデメリットがあるのですか?日本に頼っていると言うと、文政権は支持を減らすのですか?」
浅羽教授
「世論は現在、強力な支持基盤があるので、日本に対して融和的態度を示したといって、跳ね返るような状況ではないのですけれど、安全保障の問題に関しては、誤解を含めて、日本は軍国化しているとか、そういった誤ったイメージが伝わっていますので、知っている人は知っているのですけれども、メディアのレベルで出てこないので、韓米日という言葉が全然知られていないので、あたかも米韓同盟だけでやれるように思っている」
反町キャスター
「それはメディアが日本のイメージを変えたくないと思っている?」
浅羽教授
「メディアもそうですし、韓国政府もブリーフィングをしないですよね」
反町キャスター
「平井さん、おかしいですよね、しょうがないのですか?」
平井氏
「そこは、韓国の歴史認識があとを引いてしまっているのでしょう。植民地支配を受けたという経験をまだ抜け出していないから、日本の軍隊と連携していいのかという、リアルな現在の軍事情勢ではない、意識構造を引きずっているのだと思うのですけれども」
浅羽教授
「ところが、こういう調査結果もあって、現在やっている研究ですけれども、日米韓の安保連携に関して韓国の左派は否定的ですね。でも、その否定的な人達に日米韓で一緒に演習をやっていると、たかだか38秒のビデオ見せると、肯定的に移動するんです。否定的だった人が中立を超えて肯定的に移るんです。それぐらい実態として日米韓の安保連携が進んでいると知れば、ああ、役に立つんだなと認識が変わるんです。ですが、そういう政策広報がされていないので、左派は否定的ですね」
平昌五輪後の半島情勢は 日本と国際社会の対応は
竹内キャスター
「ここからは平昌オリンピック後の朝鮮半島情勢と、今後の日韓関係について聞いていきます。例年ならば2月から4月にかけて『フォール・イーグル』という米韓合同の陸・海・空・海兵隊による大規模な実動演習が行われますが、今年は平昌オリンピックが行われるために延期をしました。3月にも『キー・リゾルブル』というシミュレーション演習がありますが、パラリンピックが行われるため延期される見込みだということです。平井さん、中止ではなく、延期ということはオリンピックが終わったら実施されるということですか?」
平井氏
「現段階では4月下旬くらいから米韓合同軍事演習は始まると見られています。意外だったのは、北朝鮮がオリンピックの参加を決める時に米韓合同軍事演習問題を条件づけてくるのではないか、中止しなければ参加しないとか。そこはやらなかったんですね。 ちょっとわかりにくいところがあって、1つは、普段は3月、4月に演習をやって、5月になると終わるんですね。北朝鮮では5月から6月が田植えシーズンで、軍隊は農村支援にまわるわけですよ。今度4月の下旬から始まると、4月、5月、6月が演習期間になるわけですから、軍隊を農村支援にまわせなくなるんですね。3月、4月にやられるよりもきつくなる。6月は、6月25日、朝鮮戦争が始まった時期ではありますから、北朝鮮の反米期間ですね。ですから、北朝鮮の内部の問題で言えば、2か月遅らされると、逆に迷惑なんですね。3月、4月にやってくれた方がまだマシなぐらいで、おそらくオリンピックの途中でその問題が浮上してくるのか、終わって、せっかく成功したのだから、中止しろと韓国への攻勢を強めてくるのか。そこはちょっと見えませんけれども、とにかくオリンピックが終われば、この合同軍事演習の延期・実施問題が焦点になることは間違いないと思います」
反町キャスター
「再開したら北朝鮮はどうなるのですか?また、核実験やミサイル発射を繰り返すようになるのですか?」
平井氏
「演習の間は、北朝鮮はそういうことをしませんよね」
反町キャスター
「演習のあと?」
平井氏
「やるとすれば。確かに北朝鮮というのは、演習をやられると、1つは軍事的にも圧迫を受けますけれども、経済的な圧迫もすごいですよね。要するに、合同軍事演習に対する軍を動かさなければいけませんから。そうすると、今でさえ足りない石油を使ってしまう。だから、経済的な疲弊が深まりますし、かつ軍隊を農村支援にも振り向けられないという、演習によって軍事的にも、経済的にも圧迫を受けるんですね」
反町キャスター
「では、米韓合同軍事演習をやりました。それに対して、演習終了後、北朝鮮は、我が国は、核兵力は完成していると。しかも、アメリカ側の姑息な挑発には乗らないみたいなことを言って静観する、無視するという選択肢も平壌は持っていますか?」
平井氏
「どうですかね」
反町キャスター
「それは平和攻勢という意味です。それをやられた時に米韓はどう対応できるのか?」
平井氏
「米朝の対話、現在、韓国政権が言っている、南北対話を米朝対話に結びつけるという、そういう回路が見えてくれば、留保することはあり得ると思いますけれど、そうではない場合は、形を変えた…。昨年みたいに毎週ミサイルを撃つということはないと思いますよ。完成段階に来ていますから、残っている技術を習得するための開発実験をやるわけですから回数は減ってくると思いますけれども、たとえば、人工衛星の発射のような、形を変えたやり方で軍事挑発はしてくると、その可能性はあると思いますね」
黒田氏
「今回の南北対話と言いますか、協議の中で、北側が割とはやく軍事当局者会談をやろうと言ったでしょう。それはこの問題と関係していると思います。当然、そこでいったん中断・延期した米韓演習の問題を当然、ここで北側は問題にしたい、どういう流れかはわかりませんけれども、そういう布石はあると思います。アメリカや韓国は当然、再開と言いますか、実施の方向ですけれども、大胆な予測で言えば、南北の現在の対話の流れで、米朝対話というのがそのあとにくる可能性は無きにしも非ず。そうした場合に、それと軍事演習が重なることはできないわけでしょう。大胆に言えば、米朝対話…」
反町キャスター
「米朝対話による今年度の演習中止みたいな…」
黒田氏
「とかね。万分の一か、わからないけれども、あるかもしれない」
浅羽教授
「北のプロパーの専門家ではないので、確固たることは言えないですけれど、国家核戦力の完成段階だと。まだテクニカルな問題があるわけですよね。小型化、多弾頭化をしないとミサイル防衛でやられてしまうという部分をいずれかの段階でやる課題は残っているわけですよね。演習が延期になってオリ・パラは無難に過ごしたとしても、南北軍事会談の中で、このような南が勝手に扱えない議題を取り上げるとか、核・ミサイルの挑発をした時に、トランプ大統領は現在、文大統領の独自路線というのか、南北対話に見出す姿勢を支持していると。アメリカの圧力のおかげで対話に漕ぎ着けたのだと気をよくしていますけれども、違った動きをすると、まったく違った判断をしかねないわけですね。ですので、雰囲気がよくなっているという部分に惑わされることなく、プランBは米朝が対話に乗り出す時もそうですし、軍事行動に出る可能性も含めて、オープン・クエスチョンで残っているので、南北対話で韓国が浮かれるのはともかく、日本はまったく違う立場ですので、注意したいところですよね」
黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員の提言 『韓国人を取り込め』
黒田氏
「韓国人を取り込め、日本と韓国、日韓関係のあり方ですけれども、韓国はイメージとしては反日ですけれども、韓国人は必ずしもそうではなく、日本好きですよ。年間、昨年は700万人以上、日本に来ていますから、だから、韓国人をもう少し日本の方に引きつけるというか、民間、官民、双方で取り込むということですね」
ジャーナリスト 平井久志氏の提言 『”歴史問題”を”部分”として管理』
平井氏
「歴史問題を部分として管理する。日韓関係、慰安婦問題を含めて、歴史問題が日韓関係の全てではないわけで、意見が違うわけですよね。それは解決するのに時間がかかるのですから、それを一部であるという認識をお互いが持つということが大事なのではないかという気がします」
浅羽祐樹 新潟県立大学国際地域学部教授の提言 『留めおく』
浅羽教授
「韓国について堪えきれない思いは様々あると思うんですけれども、ですけど、決して向こう側に追いやらないと。こちら側陣営に留めおくと。こと北朝鮮の問題に関しては安保連携を粛々ととっていくと。留めおくということだと思います」