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2017年12月25日(月)
激変の国際情勢を解く 独善か覇権か米中思惑

ゲスト

田中均
元外務審議官 日本総研国際戦略研究所理事長
藤崎一郎
前駐米日本大使
宮本雄二
元駐中日本大使 宮本アジア研究所代表

激動の国際情勢を読む 『トランプ外交』とは?
秋元キャスター
「今夜は混迷する国際情勢をどう見通し、日本の針路をどう進めるべきか、アメリカ・中国・朝鮮半島情勢に詳しい外務省の同期でいらした三方を迎えて、世界情勢の分析と、今後の日本外交のあり方について、じっくり話を聞いていきます。まずは、アメリカ第一主義を掲げるトランプ大統領の外交について話を聞きます。今年1月に就任して以来のトランプ大統領の、この1年の外交の動きを振り返っていきます。まず大統領に就任しました1月ですけれど、TPP交渉からの離脱を表明しました。4月、習近平国家主席との米中首脳会談の最中にシリアへ巡航ミサイルを発射しています。6月は地球温暖化対策の国際的枠組みのパリ協定からの離脱を表明しています。8月、カナダ・メキシコとの北米自由貿易協定、NAFTAの再交渉を表明しています。11月に、日本を皮切りにアジア歴訪を行いました。12月、エルサレムをイスラエルの首都と認めることを正式に発表と、こういった流れだったわけですが」
反町キャスター
「田中さん、いかがですか?エルサレム首都認定、どう見ていますか?」
田中氏
「私は、自分のいわゆる岩盤支持者と言われる人達、トランプさんがやっていることというのは全て、他のヤツもそうですけれども、選挙公約を守るということが最大のポイントではないかと思うんですよね。だけど、要するに、そのプロセスの中で、我々が心配しなければいけないのは、アメリカの権威というのがすごく落ちているわけですよね。とりわけこの安保理の…、ではなくて総会の決議ですね、決議の時に賛成する国に対しては支援を止めるかもしれないよということを言うわけですね」
反町キャスター
「ヘイリー大使…」
田中氏
「これは、要するに、アメリカという国が、まさにそういう力づくで言うことを聞かせようという姿勢を示すという意味で、国際社会におけるアメリカの指導力、権威というのは相当、傷がついたのではないかと思うんですよね」
反町キャスター
「はい」
田中氏
「だから、なぜなのかよくわかりませんよね。単に、私は、選挙公約を実施するということに過ぎないのではないかと思います」
反町キャスター
「アメリカの経済支援や諸々のこれまでの国際協力、アメリカの与える形の国際協力を盾にとったというのか、それを武器にした他国に対する圧力のかけ方とか、こういうのは、藤崎さん、昔からよくあった話なのですか?今回の国連におけるアメリカの外交というのは、かなり特殊なものだと見たらいいのですか?」
藤崎氏
「うん、ここまでのヤツは特殊だと思いますね」
反町キャスター
「特殊?」
藤崎氏
「ただ、1つだけ、これまでの、とおっしゃったから、少し歴史を考えると、たとえば、ニクソンは、それまで中国の代表権というのは台湾だとアメリカは言っていて、日本もそれに付き合ってきた。イギリスやフランスは北京だと言っていたのに。そうしたら、ある日突然、キッシンジャーさんが北京に現れ、ニクソンが北京に現れました。あとから田中総理が一生懸命、田中さんと大平さんがつないだから、日本はなんとか保ちましたが、ビックリするようなことを実は日米関係では1番アレが大きかったと思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「それから、少し考えると、クリントンさんの時、クリントン大統領の時に、北朝鮮が悪さをしたものですから、北朝鮮に軽水炉という原子炉をやろうと、日本が30%、韓国が70%出してやろうというのをアメリカが交渉して、進めていたら、途中でブッシュさんがそんなのナシだということになりましたね。それから、ブッシュさんはイラク戦争をやった。あとからオバマさんは、あれは間違いだったと、アフガンをやらなければいけない。これに国際社会はずっと付き合ってきているんですね。日本だけではなくて、皆、正直言えば。ただ、こんな形で、アメリカが国連でこういうやり方をやったことはあまりないと思いますけれど。実はアメリカが、いろいろ政策が大統領のたびに変わる時に、それに対して国際社会は適応してきたのは事実です。ただ、やり方がまったく、こういう言い方でとか、そういうのではないですけれども。ただ、そのことは頭の片隅に置かないと。今回、初めて、アメリカがこんなふうに大きく変わっているのだというわけではない。皆、そこにうまく適合してきたのが実際だと私は思います」
反町キャスター
「昔からアメリカはわがままだった?わがままと言うのも…、わがままですわね?」
藤崎氏
「いや、わがままというか、その時の政権は政策が違うというのを打ち出して、前の政権とは、かなり政策を変えてきた。たとえば、共にミサイル防御網を置くぞということをブッシュさんが言っていたら、東欧の国は受け入れていたら、オバマさんはそれをやめと、ポーランドとチェコだったと思いますけれども、そういうことが起きたり、それはいろいろな国は皆、影響はある程度受けてきたことは事実ですね」
反町キャスター
「なるほど」
秋元キャスター
「でも、結構、言い方が荒っぽい…?」
藤崎氏
「こういう言い方は確かに、これはちょっと失礼だと思いますね」
秋元キャスター
「こういう言い方になってしまったのはなぜなのですか?トランプ政権の特徴なのですか?」
藤崎氏
「うん、こんな言い方がいいかどうかは知りませんけれど、トランプさんという人のことを、場合によって周りの人も少し忖度し過ぎているのかもしれませんね」
反町キャスター
「これくらい言わないと大統領が喜んでくれない?」
藤崎氏
「…それはわかりません」
反町キャスター
「過去においても、そういう政策の変化というのがあるとすれば、現在の話は政権の変化に伴う基本政策の変化ということだとすれば、確かにこのエルサレムの首都認定に関しても、これまで歴代の大統領が先送りしてきたものを、俺はちゃんとやるんだよという、前政権の否定、前政権と現在の政権の違いを際立たせるための、いわゆる国内的な政治テクニックに我々国際社会が翻弄されている、という見方になるのですか?」
藤崎氏
「そうですね。おそらくトランプさんの政権、政策は3つに分けていいと思うんですね。1つは安全保障政策。これは北朝鮮に対してしっかり立っていると、日本とも協力していくという、これは評価できる部分ですね。それから、もう1つは、現在ある枠組み、これを揺さぶるか、あるいはそのうえに我々がつくろうとしていたものを、やめたと言い出すと。パリ協定とか、TPPというのは、現在あるものではなくて、これから2階をつくろうとしていた、住みやすくするために、それをやめと言いだしたわけです。だけど、1階の方は影響がないですね、現在、住んでいる環境には。ところが、このエルサレム決議とか、あるいはWTO(世界貿易機関)とか、貿易体制ですね、こういうものを揺さぶり始めると、現在ある体制に揺さぶりがかかるものですから、これは各国とも困った。だから、日本だって、今回はアメリカの政策には賛成しませんでしたね」
反町キャスター
「そうですね、撤回決議に賛成しましたね」
藤崎氏
「撤回決議に賛成した。これは、私は日本としてきちんとした対応をしたと思います」
反町キャスター
「なるほど」
秋元キャスター
「そういうトランプ政権を、国際社会、特に中国から見て、どう見えているのかということですけれども。4月の首脳会談、米中首脳会談では『貿易不均衡の是正のため”100日計画”の合意』ということで合意しています。その中で中国側からは、アメリカ産の牛肉の輸入を開始する、アメリカ金融機関に債権の引き受け・決済業務の免許を付与するなどが発表されました。11月の米中首脳会談では『28兆円の商談の合意』というのがありまして、また、中国側からは旅客機300機の購入ですとか、携帯電話向けの半導体の購入、アラスカの天然ガスの共同開発などが発表されています。ビジネスでアメリカをグッと引き寄せているようにも見えるのですけれども、宮本さん、こうした中国の戦略から見て、習近平国家主席は交渉相手としてのトランプ大統領をどう見ていると思いますか?」
宮本氏
「中国にとって、アメリカに早々に、表舞台から退かれると困るんですよ」
反町キャスター
「えっ?」
宮本氏
「すなわち自分達がそれにとって代わる準備ができていませんから。世界全体の平和と安定がなければ、中国の経済の発展もないわけですから、アメリカはアメリカなりの力強い役割を発揮してもらうことが、現在の中国にとっては利益ですね。従って、そういうアメリカを期待している面は間違いなくあるんです。そういうアメリカと、トランプ大統領というのはちょっとまた違いまして。トランプ大統領は、中国にとって1番嫌なのは相手を予測できないということですよ。計算できない相手はすごく嫌がるんですね」
反町キャスター
「中国は?」
宮本氏
「中国は。臨機応変の対応は、こんなことを言うとちょっと中国の人に悪いけど、上手ではないですよ。事前に十分準備した対応というのは、なかなか良い手を打ってくるのですけれども、臨機応変というのはあまり上手ではないですね。そうすると、トランプさんの関係は常に臨機応変にならなければいけませんので、そういう意味では、トランプさんの対応をちょっと嫌がっていると思います。ただ、先ほど言いましたようにアメリカがそういう重要な役割を演じているからアメリカだし、そのアメリカとの関係を安定させないと中国の対外関係もうまくいかないし、アメリカとの関係がうまくいかなかったら、国内で批判されるんですね」
反町キャスター
「あっ、そうなのですか?」
宮本氏
「アメリカに強い姿勢をとらないと批判される場合もあるし、アメリカとうまくいかないということでまた批判される。批判する人はグループが変わってくるのですけど」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「いずれにしてもアメリカとうまくいかなかったら、何をやっているのだと批判する声は急に大きくなるんですね。従って、誰がアメリカの大統領であろうと習近平さんは、これは仲良くするしかないですね。それが、そこで言われた大きな貿易問題も含めた、米中の合意になってくるということだと思います」

自制か対抗か『北』の今後
秋元キャスター
「続いて、北朝鮮問題との向き合いについて話を聞いていきます。まず北朝鮮ですけれど、先月29日に新型のICBM(大陸間弾道ミサイル)『火星15型』を発射していますけれど。この発射を受けて国連の安全保障理事会が先週23日、アメリカ主導で新たな制裁決議を、中国・ロシアを含む全会一致で採択しました。その内容がこちらです。宮本さん、今年9月に採択された決議に比べて厳しい内容になったにもかかわらず全会一致となったということなのですが、その背景をどう見ていますか?」
宮本氏
「それは、1つは間違いなく前回の決議の中でも、次回、北朝鮮が国連決議に違反をするような事態に対しては、国連安全保障理事会は厳格に対応する、というのを入れてあるんです」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「従って、そのあとミサイルの発射実験をやりましたから、今回、厳しい対応をするというのは、そういう意味では筋が通っているんですね。合わせて中国も、ロシアも、それなりの努力を北朝鮮との間でして、おそらく北の反応が彼らの想定からしても厳しいものであった。要するに、近づいてこないということがはっきりしたということで、この時点において、もう1回、制裁を強化するということしかないだろうということですね。制裁を強化する最終目標は対話ですけれども、そのプロセスについて、中国・ロシア及びそれ以外の国というのは違うのですが、しかしながらこの段階でそういうことをとるしか他に良い手はないということで、中露も私は同意したのだと思います」

北の『生命線』中国の思惑
反町キャスター
「宮本さん、その意味で言うと今回の経済制裁というのは厳しくなっただけあって効果はあると見ていますか?」
宮本氏
「これは、私は、中国が、よく言われますけれども、これまでもちゃんと制裁をやってこなかったし、これからもやらないだろうということですがね。これは習近平さんが関心を持つ事項に、北朝鮮の末端での措置も含めてのものになってしまったんですね」
反町キャスター
「えっ、どういう意味ですか、それは?」
宮本氏
「すなわち末端でどういうことを中国がちゃんとやっているのか、やっていないのかと、この問題が習近平さんの関心事項になったんですよ。理由は簡単です。トランプさんからしょっちゅう電話があって、おい、習近平、あれはどうなっているのだ?とか、お前のところ、ちょっとやっていないのではないか?というのが、首脳同士の話題に上がるようになると首脳はそこまで把握しておらねばいけませんし。そうすると、安保理の決議は厳格に履行するというのが、中国が公に表明した立場ですから、それと違うことが現場で行われているというのを習近平さんは見逃すわけにはいかなくなるんですね」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「習近平さんがちゃんと見ているということで、やっと現場が真面目に動き出すというのが中国です」
反町キャスター
「ほう。それは、トランプさんが、米中電話会談とか、そんなに頻繁にあるのか僕は知りませんけれども、時々、トランプ大統領が連絡…」
宮本氏
「あれは対中外交では、この電話というのが非常に重要です」
反町キャスター
「中国から見て、これまでの他のアメリカ大統領、歴代の大統領というのは時々、そういう人もいたのですか?」
宮本氏
「いや…」
反町キャスター
「しょっちゅう電話を北京にかけてきて、あれはどうなっているの?と、これはどうなっているの?…」
宮本氏
「北朝鮮の制裁に関してはなかったと思いますよ」
反町キャスター
「ああ、他の件ではあったかもしれない?」
宮本氏
「6者協議のあたりの時にはあったかもしれませんけれども」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「普通は、これまで私は聞いていません」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「ええ」
反町キャスター
「田中さん、いかがですか?米中のこの関係をどう見ていますか?」
田中氏
「私は、この北朝鮮問題自身が新しい水域に入ったと思うんです。本当に新しい水域に入ったと。いくつか理由があって、1つは、要するに、安保理の決議そのものが、これまでにはなかったような極めて強硬な措置を含んでいる。特に石油とか、そういう分野において、お金の流れもそうですが、それから労働ビザもそうですけれど。それで、なおかつ今後また核実験とか、ミサイルの実験をやればさらに強化するぞということを言っているわけですね、明確に。だから、これは一方通行の世界に入っちゃった。安保理の制裁というのは、今後ますます強化されていくだろうという意味で、新しい水域に入った。2つ目は、アメリカの軍事的な圧力というのは、相当高まっていると思います。現在の米韓の合同軍事演習とか、それから、たとえば、アメリカの軍事的圧力のかけ方というのは現実に政府当局の人が、アメリカの在ソウルの企業に対して、アメリカ企業に対し、もう引き上げた方がいいよというような趣旨のことも言っているという話になっているわけです」
反町キャスター
「なるほど、ほう…」
田中氏
「ですから、ある意味、こういうものというのは、アメリカの軍事的な圧力が、クレディブル、すなわち信用性がなければ意味がなくなるわけです。だから、アメリカが、トランプ大統領が現在、一生懸命やっているのは、アメリカの軍事圧力というのは、単に軍事圧力ではないよと、いざとなったら引き金を引くぞということを、相手に信用させる、そのための努力をしているということで。これももう新しい段階に入っている。それから、3つ目は、お話がありましたように、中国の関係ですね。たとえば、中国の、中国サイドの側には朝鮮自治区がある。この朝鮮自治区に5つ難民収容所をつくるという話が世の中に出ているんですね。これはどういうことかと。他にも出ているのですが、中国、あるいは中朝の間に、中国とアメリカの間で、もしも有事になった時、もしも、あるいは北朝鮮が崩壊した時にどうするかということを私は相当話していると思う」
反町キャスター
「米中の間で?」
田中氏
「中国と、米中の間で。だから、それが北朝鮮に対しては相当強い圧力になっていると思います。どうも、中国もアプローチが変わってきたと。だから、ある意味、中国がアプローチを変えるということを北朝鮮に知らしめるということは、すごく大事なことですよね。まさに全体の圧力が必要になっているとあって。私が思うのは、これは相当、エスカレートしていくと思う、全てのことが。だけど…」
反町キャスター
「それは軍事的な圧力も、経済的な圧力も?」
田中氏
「軍事的、経済的な圧力も。だけど、そのままいくと、まさに暴発する可能性があるので、これは寸止めの世界ですよね」
反町キャスター
「それは誰が止めるのですか?」
田中氏
「いや、だから、そこは対話とか、交渉のためのきっかけづくりを誰かやらないといけない」
反町キャスター
「誰がやるのですか?」
田中氏
「いや、これはこれまで、たとえば、カーターさんが平壌に行くとか、あるいはキッシンジャーさんがどこかベルリンかなんかで密かにやるとか、相当高いランクの人達が一定のきっかけをつくった。要するに、北朝鮮という国はメンツの国だから、実は日朝だって、なぜ小泉さんが行かなくてはいけなかったかというと、メンツの国だから」
反町キャスター
「なるほど」
田中氏
「彼らのメンツを立てることもやらないと、現実にものが動かないわけですね。だから、そういうきっかけづくりというのをどこかでしないと、一方的に、圧力、圧力ということで、もう一方的な領域に入っちゃう前にそういう道も開いていかなければいけない。それが現在だとは思いませんよ。だって、この冬を超えて本当に制裁が効いてくるという時期になって、そういう流れに入っていくのではないかなと私は思うし。そのきっかけのつくり方とか、具体的な話し合いの仕方とかというのは、アメリカや、中国や、日本は、きちんと考えてくれているのではないかと、考えていてほしいと思いますよ」
反町キャスター
「藤崎さん、田中さんから特使の話が出ました」
藤崎氏
「はい」
反町キャスター
「これまでの特使と言うと、カーター元大統領とか、オルブライトさんとか、皆、民主党政権の人ですよね?」
藤崎氏
「ええ、そうですね」
反町キャスター
「共和党のトランプ政権で特使になり得る人と言ったら、ブッシュさんなんて悪の枢軸と言った人を平壌に送るわけにはいきませんよね?」
藤崎氏
「そうですね」
反町キャスター
「誰か現在、共和党政権で送れる人がいるのですか?」
藤崎氏
「これまでの安全保障補佐官の人とか、何人かいるだろうと思いますけれども。確かに今すぐ、そういう状況になるのかどうかはよくわかりませんね、まだ、特使を送るような…」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「国連の事務次長も行きましたし…」
反町キャスター
「そうです」
藤崎氏
「いろいろなエレメントがあると思いますが。1つだけ、その関係で申し上げたいのは、アメリカが現在、『テーブルの上に全てある』とか、武力をチラつかせると、これは何となく我々は当たり前のように思っちゃうのですけれども、実はそうではないですね。何かと言うと、1998年にテポドン1というのが初めて日本の上を飛んだんですよ。この3週間後にアメリカが何をしたかご存知ですか?」
反町キャスター
「いえ、覚えていませんけれども…」
藤崎氏
「30万トンの食糧援助を北朝鮮にやったんですよ」
反町キャスター
「はぁ…」
藤崎氏
「人道的援助ですけれども」
反町キャスター
「それはテポドン1の発射とリンクさせた?」
藤崎氏
「いえ、関係なく。私どもから見ると、キューバがフロリダの上を、ミサイルを飛ばしたあとに日本がキューバに食糧援助をやったらどんなことになるかと思うぐらい、それは私どもからすればちょっとビックリしたことだったのですけれど。アメリカはなぜやったかと言うと、ミサイルが、核もそんなにアメリカにとってまだ脅威ではなかった、届くようなものではなかったんですね。現在だんだん長くなってきて、本当にアメリカも真剣にならざるを得なくなってきた、核も開発してきたから。そこで若干、逆説的ですが、デカップリングと言って、サンフランシスコを火の玉にしてまで、日本をやってくれないだろうなんて議論がありますけれども、むしろ現在、カップリングしていきているんですね、アメリカの安全保障と日本が」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「もし短い時には、日本だけやられていたかもしれないけれど、現在はアメリカに届くようになってきたので、アメリカが真剣になってきた。もう日本とアメリカの安全保障が一体になってきたので、ある意味では、日本の抑止力は逆説的かもしれないけれど、向上してきているんですよ。だから、この時には、とにかく圧力を表立ってかけること、制裁と、もう1つは、軍事的な側面と両方でかけていって、相手が本当に出てくるようなタイミングにもっていかなければいけない。相手はもともとやりたがっていないわけです。それをやりたがっていると思っていたのは間違いで、相手は、アメリカからの安全保障をほしがっているわけではないのですから、そんなものはアテにならない。カダフィの例を見たって、サダム・フセイン…。ですから、相手は早く開発したいと思っているだけですから。それをストップさせるためにはギリギリのところまで追い込まなければいけないというのが、今度の安保理決議であり、軍事的な作戦をずっと続けて。かつ、田中さんが言われた米中の話というのは、12月12日にNATO(北大西洋条約機構)で、ティラーソン国務長官がそういうことを中国と話し合っているということを言って、12月17日のニューヨーク・タイムズにもかなり大きく出たのですけれど、中国とアメリカが少し話し始めているよということをアメリカ側から出しているんですね。北朝鮮に対するメッセージだと思います。そんな感じがちょっとあるのではないでしょうかね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「本当に機が熟した時に、今、言ったような特使みたいな話が出てくる。あまり早く出しちゃうと、また、安心しちゃいますから。そこのところはチキンゲームのような要素があるのではないかなという気がしますね」

北朝鮮有事近し? 米中シナリオと日本の選択肢
秋元キャスター
「トランプ大統領は先週18日にアメリカの今後の外交・安全保障の基礎となる国家安全保障戦略というのを発表しています。要旨がこちらです。『北朝鮮のような"ならず者国家"の脅威に対抗する』『軍事力を再建し"力による平和"を維持する』と、『同盟国が共通の脅威に対してより大きな責任をとることを期待する』という内容があるのですけれども。藤崎さん、特に2つ目、『軍事力を再建し"力による平和"を維持する』と、アメリカの北朝鮮に対する武力行使の可能性をどう見ていますか?」
藤崎氏
「これはまさに排除されないということで、どの程度かと言ったら、私は極めて小さいと思います。グラム議員は30%ぐらいあるというようなことを言ったというような報道もありましたし、それは何パーセントなんて、こういうものは測れませんよね。そういうのは20%なのか、40%なのか、30%なのか、わかりませんけれど、可能性は常にあるということはあるし、それは言っていくことが大事だと思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「しかし、私は、そんなにそれがすごく大きいものだとは思いません。ただ、何パーセントかは、私も数字的にはちょっと測ることは無理ですね」
反町キャスター
「ただ、藤崎さん、たとえば、グラム上院議員がアメリカ上院における非常に有力な国会議員で…」
藤崎氏
「そうですね」
反町キャスター
「安全保障関係の非常に専門性の高い人だという前提があるにしても、個人的な情報だけで30%という数字は言えないですよね? 言うとすれば、ペンタゴンか、どこかからキチッとレクを受けて、どうなのだと聞いた時に、国防総省の方から、現在の状況においては30%ですというレクを受けていなければ、キチッとしたデータに基づいた分析を聞いたあとではなければ、この数字は出てこないのではないですか?つまり、アメリカ政府として考えているものをグラム上院議員の口を使って言わせている、それが北に対してブラフをはかっている、こういう見方は穿っていますか?」
藤崎氏
「それはそうでもないと思います。ただ、本当に聞いたかどうかはわかりませんよ、しかし、ある程度は、それを言って、相手に、いや、ほとんどないのだと思ったら、ますますドンドンやりますから、あるかもしれないと相手が思ってもらうことが大事ですよね。それがある意味でブレーキになりますよね、核やミサイルの実験や開発の。その点はその通りだと思います。ただ、数字について何パーセントかというのはなかなか、いろいろな状況の変化がありますから、わかりません。ただ、今回の、先ほど、お話になっていた安保理決議なんてかなり強力なものですね。ですから、こういうものが効いてくれば、こちらの方はむしろ低くなっていってもいいかもしれない」
反町キャスター
「オバマ大統領の時に、北朝鮮問題を『戦略的忍耐』と言いましたよね?」
藤崎氏
「はい」
反町キャスター
「藤崎さんは、あの時代の『戦略的忍耐』という、オバマ政権の政策を評価されますか?」
藤崎氏
「いや、しませんね」
反町キャスター
「しない?」
藤崎氏
「あの…」
反町キャスター
「では、現在のトランプさんはどうなのだ、ここはどうなのですか?」
藤崎氏
「結局、オバマ政権の時に金正恩さんが出てきちゃったと。金正恩さんの政策はだいぶ前と違って、とにかくドンドン自分がミサイルを開発し、核を開発していくことが自分の安全保障だと。そんな6者協議とか、なんとか、交渉するのではなくて、とにかく早く、早くそれをやるという中で、それをやめたら交渉してやるよと言ったって向こうには意味がなかった。だから、ドンドンそれをいいことにやっていっちゃったということで。ある意味では、利用されちゃった面があるのだろうと思いますね。ですから、ある意味では、トランプ政権がこの戦略的忍耐というのは間違いだったということを言っているのは、私は正しいということになると思います」
反町キャスター
「それは正しい?」
藤崎氏
「待って、向こうから来る人ではないということを見抜けなかった。それはある意味では、政権だけではなくて、多くの専門家がそういうことを言っていたわけです。北朝鮮は早くアメリカと交渉したがっているのだと。こういうことをやってアメリカの注目を引きつけて、交渉に出てこさせて、そこでアメリカから安全保障の約束をとりつけたい、平和条約をとりつけたいということを言って。この人達は自分がした約束も破る人達ですから、簡単に。そんな人の約束なんか、信用して自分の持っている兵器をそんな簡単に捨てるはずがないわけですね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「それは捨てさせるためには、イランが長い間、制裁を受けて、もうどうしようもなくなって合意に、核合意にいきましたね」
反町キャスター
「いきました」
藤崎氏
「それまで、90%まで濃縮できるのを、もう3.96%ぐらいまでにとどめるとか、そういうことにして今回、合意をしたわけですよね。それは圧力に応じ、屈したわけで。今回もそういう形でやっていかなければいけないのだろうというのが基本だと思います」
反町キャスター
「約束を守る、守らない、の話で言うと、これは、約束とは言わないのだけれども、ティラーソン国務長官の発言がブレていますよね?」
藤崎氏
「そうですね」
反町キャスター
「この12日のワシントンでの講演では『前提条件なしでいつでも対話を始める用意がある』と。僕らもニュースでやりましたよ、おお、アメリカはついに来たかと思ったら、その3日後に『対話を始める前には北朝鮮は挑発行動を停止する必要がある』と。このアメリカのブレというのは、藤崎さんが見ると、これはティラーソン国務長官の資質の問題なのか、国務省とホワイトハウスの問題なのか、何が原因でこんなに発言が…?国務長官ですよ、こんなブレブレに、3日の間にコロコロ変わる国務長官の発言をどう見ているのですか?」
藤崎氏
「これはちょっと驚きましたよね、私も正直言って。12日、NATOの会議かなにかで講演した時に、いつでも対話を、前提条件なしでと言って。今度は安保理では、自分の言ったのは、自分は、前提条件は受け入れないということを言ったのだというような話で。どうもどうしてもつながりませんよね」
反町キャスター
「つながらないです」
藤崎氏
「あれはホワイトハウスからどうも否定されてなったという解説が、いろいろ皆さん、されていたけれども…」
反町キャスター
「しています」
藤崎氏
「その通りだと私は思いましたね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「ですから、これは先ほどの30%もそうなのですけれども、外交においてあまり発言し過ぎると、表で、それはある意味では、公開外交は大事ですよ、メッセージを発信していくうえで。しかし、明らかなことを言い過ぎないで、もう少し具体的なことを伝えていくと」
反町キャスター
「この話にしてもそうなのですけれど、表でやりとりする言葉が大きくブレるというのは、つまり、水面下のチャンネル、パイプがまったく機能していないから、表でいろいろなアドバルーンを上げたり、下げたりして、それで相手の反応を見ざるを得ないという、ある意味、表芸だけの外交をやっているように見えるのですけれど、そこはいかがですか?」
田中氏
「このティラーソンという人、いわゆる外交・安全保障の分野で役割を果たした人ではないわけですよね。石油会社の社長さんですから。トランプさんだって公職にいたことがない。現在、何をやっているのかというと、何をやっているのかというのは失礼な言い方だけれども…」
反町キャスター
「フフフ…」
田中氏
「国務省の、たとえば、最もその内容を熟知した責任者というのは局長ですよ。だって、ようやく局長が指名された、この数日前に。それまでずっといないですよ、代行しか」
反町キャスター
「なるほど」
田中氏
「だから、ある意味、私が1番危惧するのは、こういうティラーソンさんとか、トランプさんがツイッターで言う時、国務省なり、国防省なり、NSC(国家安全保障会議)というものが本当に詰めた議論がされていないから、こういう1人1人の人が勝手に発言するということになってしまうのではないかと。とりわけ北朝鮮のような安全保障問題をやる時に、そういう表の世界で発言することっちゅうのは、北朝鮮は表の世界の発言を聞いているわけだから、ある意味、非常に危ないことだと思う。だから、それはアメリカと北朝鮮との間で、いったい意図は何なのかということをキチッとコミュニケートしておかないといけないし。たぶんそういう水面下のチャンネルは、これまであったと思うんです、現在はないのではないかなという気がしてなりません」
反町キャスター
「宮本さん、アメリカと北朝鮮の間でこういう、表での言葉の殴り合いみたいなものが続いているのを、中国はこれだったらまだ大丈夫だなと見るのか、これは危ないぞと見るか、中国は北朝鮮と間違いなく水面下のパイプがありますよね、その中国から見た時に、この米朝の表での言葉の殴り合いをどう評価するか?これは危ないと見るのか、ないしはこれが続く限りはまだしばらく俺らは大丈夫だと見るのか?」
宮本氏
「いや、北朝鮮との水面下の良いパイプはもう現在、途切れていると思いますよ」
反町キャスター
「ほう?」
宮本氏
「従って、表のパイプ、すなわち大使館を通じるとか、この前の、共産党の対外関係の責任者が北朝鮮に特使で行きましたでしょう?」
反町キャスター
「行きました、宋濤さん…」
宮本氏
「そう。ああいう、あれも表ですよね、ああいうチャンネルしか現在ないということですね。従って、アメリカとの関係をちゃんとつないであげるという、そういう状況にない。従って、中国としては、北に対する影響力にも限界があると。当然、アメリカに対する影響力にも限界がある。すると、自分達がどうしようもないところで、北で戦争が起こるかもしれない、そういう可能性が急速に高まっていると彼らが判断しているんですよ」
反町キャスター
「ほう…」
宮本氏
「従って、先ほど、田中さんも言及した、ああいう難民キャンプをつくるとか、あれは本当にやっていると思いますよ。それと防空演習をやるとか。それは、北に送って、俺達はここまで、ここまで最悪の事態を考えてやっているぞ、というメッセージですが、同時に万が一起こった時、それに対する対応をしなければ、しとかなければいかんということで。実は北朝鮮、朝鮮半島情勢をめぐって相当厳しい状況になっていて、中国としてはとりわけ難民の発生とか、それからそのあとの再建の話、いずれにしても膨大な資金を要求される。そのあとの問題がどうなるかと言った時に果たしてアメリカがどこまで責任を持つかと、これも実は心配しているんですね」
反町キャスター
「そこの話ですよ。危機管理というのか、有事が発生したあとの落とし込みというのか、どうやって事態を鎮静化するかに向けたシナリオの調整というのが米中間で行われていなければ怖いし、行われていて日本が外されていたら、それもまた怖いし、皆、怖い話ばかりなのだけれども…」
宮本氏
「暫く前に、相当程度、セカンドトラックの、ワン・アンド・ハーフと言われた、そのあたりのレベルでは相当やっていたんですね」
反町キャスター
「米中で?」
宮本氏
「米中で。しかしながら、それが一時期止まっていて、それがどうも再開されている気配がありますよ」
反町キャスター
「あっ、そうですか?」
宮本氏
「ええ。政府レベルでどれくらいやったかは別問題ですけれども、いずれにしても米中の間でそれをやらなければいかんという雰囲気が高まってきているんですね」
反町キャスター
「なるほど」
宮本氏
「私は日本もこういう時にリーダーシップを発揮し、とりわけ日米韓、それから日米韓中、最後はロシアも入れて、こういうところで、全体のシナリオ、それをレビューして、どうやるかということを国際社会として努力する。本当はアメリカにやってほしいし、中国にもやってほしいのだけれども…」
反町キャスター
「でも、それは表でできる話なのですか?」
宮本氏
「いや、表ではない」
反町キャスター
「日米中韓が、皆で寄って集まって北朝鮮の今後について…」
宮本氏
「だから、それは全部もう…」
反町キャスター
「できないですよね?」
宮本氏
「全部、内々の外交になりますけれども」
反町キャスター
「もしかして米中の会話に、日本も、オブザーバー、ないしは財布と言われるかもしれないけれども…そういう立場で会話に参加している可能性というのはないのですか?」
宮本氏
「いや、これが参加していれば私は非常に嬉しいですね」

米中関係の将来像 激突か?共生か?
秋元キャスター
「今後の米中関係についても見ていきます。まず、こちらですが、11月の米中首脳会談で、習近平国家主席はこのように発言しています。『太平洋は十分に広い。米中両国を包み込める』ということで、米中で太平洋を2分割しようともとれる発言ですね。一方、アメリカのトランプ政権は今月18日に発表しました国家安全保障戦略で、中国・ロシアに対しては『中国やロシアはアメリカの国益と対極にある世界をつくろうとする"修正主義勢力"だ』としていて、中国を敵視している内容にしています」
藤崎氏
「現在のトランプさんは民主主義とか、人権というのをあまり振りかざさないで、各国自由にやってくれと、アメリカ・ファーストという議論をされますけれども。先ほどのお話のように、アメリカは政権が代わると変わっていくわけですよね。振り子のように戻っていくだろうと、いずれ。民主主義・人権というのがアメリカの1番の強みだということをまた言い出す大統領・政権が出てくるかもしれない。もしそうだとするとはっきり言って、誰も中国の社会を自分の国の社会のモデルとしたいという国はいないわけですね。皆アメリカ型の自由な社会、人権・民主主義というような、完全ではないけれど、そちらを目指している国の方が世界の大勢で…」
反町キャスター
「ただ、発展途上国とか、開発独裁の国というのは…」
藤崎氏
「そうですね」
反町キャスター
「…独裁者にとっては1番おいしいパターンではないのですか?」
藤崎氏
「そうですね。おっしゃる通りで。一定期間、まさに開発するための期間はそうですよね。しかし、長期的に中国みたいな国をつくりたいだろうかと?もし言論の自由も十分にないような。そうではなくて、こうやって好きに言ったりできる、自分の国のことも批判できるような、そういうリーダーも批判できるような国が良いと皆、思っていますから。なかなか本当の意味で中国がアメリカを凌駕すると、経済ではかなり追いつくかもしれないけれど、全体的に世界のリーダーに、アメリカにとって代わるような時代が来るとは思えないと。アメリカも現在のアメリカでずっといるとは思えないと。もう1回、力をとり戻すのではないだろうかと。それはモラルの力をとり戻すのではないだろうかと」
反町キャスター
「トランプ政権が?」
藤崎氏
「いや、トランプ政権ではなくて」
反町キャスター
「ではないですよね?別の政権がきたときにモラルをとり戻すという意味ですよね?」
藤崎氏
「そうです、ええ。ただ、別にトランプ政権を批判しているわけではないのですけれども。それは各国、それぞれが選んだ政権で、これも現在でも39%支持が昨日の時点でありますから、それだけの政権ですけれども、戻るのではないだろうかと。それで1つだけ我々が注意しなければならないのは、これはこんなこと言ったらアレですけれども、トランプさんについては見ていて批判があるかもしれないけれども、日本の、たとえば、総理大臣を各国の人が批判すると、我々は何だと思いますよね。私がアメリカにいた時、日本の総理大臣のことを『ルーピー』ということを言って、覚えておられるか、昔。それはけしからんと思いましたよ。ですから、それは、政策は批判していい…」
反町キャスター
「それは当たっているから怒っちゃった?」
藤崎氏
「政策は批判していいけれども、人柄とか、そういうものは注意してやるべきだなとは思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
藤崎氏
「はい」
秋元キャスター
「田中さん、どう見ていますか?」
田中氏
「私は、中国も、アメリカも、単独で生きているわけではないから、周りの国々、日本も含めて、いったいどういう対処をするかによって、中国自身も変わっていくと思うんですよね。我々は、中国が非常に社会主義的で、外に対しては拡張主義になるのはどうしても止めなければいかんと思っているわけですよね。だけど、これを止められるのは、アメリカだけですよね、残念だけれども。だから、アメリカという国を建設的な役割を果たしてもらえるようにしていく日本の役割というのは当然、あるわけで。そういうことをやっていかければいかんと思うんですね。だから、中国の将来というのは我々次第の面があるということ」
反町キャスター
「ほう」
田中氏
「これまでも中国は変わってきているんですよ、外向きに。南シナ海だってより柔軟になってきたわけだし。それから、もう1つは、中国の国内の問題ですね。たとえば、中国というのは、習近平さんは質も良くしなければいかんと言っているわけです。それで現在、何が起こっているかっちゅうと、たとえば、スマホ決済、圧倒的に増えているわけ。スマホ決済というのはその情報が全部、当局ににぎられるわけです。だから、中国はドンドン管理社会になっている。それで、個人の自由というのも制限されだしている。これが果たして中国が豊かになっていった時に、これでもつかということですよね。個人の自由を求める気持ちというのは大きくなっていくから。私はどこかで調整せざるを得ないと思うんですよね。だから、そういう外との関係、並びに国内との関係でこれからの5年、10年の間に中国自身も変わっていかざるを得ないのではないかと思うし、我々も、アメリカもそういう方向に向けてそれなりの役割を果たさなければいかんと思いますね」
反町キャスター
「田中さん、その歪な形で拡大をする中国と…」
田中氏
「うん」

米中関係の行方と日本外交の戦略
反町キャスター
「これまで通り民主主義のフラッグシップとしてがんばろうとし続けるアメリカとの間で、日本というのはこれまでと同じポジションでいいのですか?中国は大きくなるのだから、もうちょっと中国に寄った方がいいよという、こういう議論に対してどう感じますか?」
田中氏
「僕は、寄った、寄らないということではなく、現実に世の中を見た時に、安全保障面で中国を抑止できるのは日米安保体制だけしかない。アメリカが、現在のアメリカだと、日本に対してより大きな役割を求めてくる、日本は大きな役割を果たすべき、それは日米安保体制の中でやっていくべきだと思うのだけれども。他の国も全て安保と、それから経済貿易関係というのは両立させているんですよ。だって、日本だって今やアメリカとの貿易の割合というのは全貿易の僅か15%だけれど、中国は25%ですよ。だから、最大の貿易相手国になっているし。これからもそうだし、投資も増えてくるでしょう。だから、中国との間では、たとえば、自由貿易協定とか、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)というのが中国も入った形でやろうとしていますけれども、そういう形でこの地域にとり込んでいくという努力をしないといけないし、何も安全保障で、中国を良くしていくことが必要だから中国と経済的な関係については冷やしていくのだということはあり得ないですよ、もう」
反町キャスター
「なるほど」
田中氏
「だから、私は現在、日中関係というのはようやく明るい兆しが見えだしている。非常に結構なことだと。だけど、何をやらなければいけないかっちゅうと、この間、私、中国に行って言われたのだけど、中国の発展は日本の利益だという1つのステートメントがほしいと言うわけですね。何とはなしに日本は中国を牽制するのが日本の外交の基本だというような雰囲気が伝わってくると言うんですね。間違いなく私も思いますよ。中国の発展は日本の利益ですよ、日本の発展は中国の利益ですよ、そういうベースをつくらないといけないと思いますよ」
宮本氏
「世の中が急速に変わっていて、多極化、いわゆる極がたくさん出てくるという、そういう局面に確実に入りつつあると。アメリカは極めて重要ですよ、これからも重要な国であり続けますよ。しかし、世界は全体としてそちらの方向に向かっているのだという意識で、日本はこれからのこの地域、世界を眺めていきませんと日本の長期的な外交政策は成り立たないと思うんですね。そうだとすると、アメリカとの関係は間違いなく重要にしていきますけれども、中国にどういう役割を演じさせるのが日本にとって1番よいのかという視点から、逆に日本が中国に、あるいはヨーロッパ・アメリカに働きかけて、ASEAN(東南アジア諸国連合)にも働きかけて、中国を1つの方向に導いていく、そういう戦略もほしいですね。結果として1番よい結果になったという、こういうのをやってみたいではないですか?私はやりたいと思いますね、そういう外交を」

宮本雄二 元駐中日本大使の提言 『多極化世界を生き抜け!』
宮本氏
「多極化の世界を生き抜けと言いました。1極でも、2極でも、無極、要するに、誰も無責任な無極でもなく、多極化、それが向かっている先だと思うので。そこで知恵を出して日本がそういう意味での主体的な外交をやって日本が生き抜ける空間を広げていくと、そういう時代に大きく日本は1歩踏み出しているのだということを自覚した外交を、少し気配はあるので歓迎していますが、是非やっていただきたいと思います」

藤崎一郎 前駐米日本大使の提言 『ぶれずに泰然と』
藤崎氏
「ぶれずに泰然と。現在の外交は北朝鮮に対する外交も、米中印その他のアジアやヨーロッパとの関係も、極めて良い関係を築き上げてきていると思うので、この路線をきちんとブレないで、泰然と進めていくということが大事だと思います」

田中均 元外務審議官の提言 『賢』
田中氏
「もうアメリカと協調していればいいという時代は終わったので、とにかく賢く生きてほしい、賢い外交をしてほしい、いろいろ考慮をしていく必要はあると思うのですけれど。ある意味、適切な距離をアメリカとは保つ人も出てくるでしょう。だけど、日本の国益は何かというのをもう1回きちんと吟味して、それに合った賢い外交をしてほしいと思いますね」