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2017年12月18日(月)
2兆円政策を徹底検証 教育無償化『功と罪』

ゲスト

越智隆雄
内閣府副大臣 経済財政政策・金融担当 衆議院議員
宮本太郎
中央大学法学部教授
熊谷亮丸
大和総研常務執行役員 チーフエコノミスト

教育無償化&生産革命の狙い
秋元キャスター
「安倍内閣は今月8日、主要政策をまとめた、2兆円規模の新たな政策、経済政策パッケージを閣議決定しました。大きな柱として打ち出されたのは、教育無償化を中心とする『人づくり革命』と幅広い産業を対象としている『生産性革命』です。この2つの政策で少子高齢化を克服し、持続的な経済成長を成し遂げるとしています。今夜は、この政策パッケージの狙いを徹底検証し、期待される効果と課題を議論していきます。まずこの新たな経済政策の全体像、大きな狙いについて聞いていきたいと思います。安倍総理は、閣議決定されたこの政策について『生産性革命と人づくり革命を車の両輪として少子高齢化という大きな壁に立ち向かうための政策パッケージ』と説明しています。まず越智さん、この2つの革命をパッケージとして打ち出された狙いはどういうところにあるのでしょうか?」
越智議員
「まず、今回のこの新しい経済政策のパッケージでございますけれども、これまで5年間、アベノミクスのもとで経済の再生に努めてきたわけですが、いろいろな数字が好転している部分もあります。この成長軌道を確かにして、持続的な経済成長を成し遂げるためにどうすればいいかと言った時に、少子高齢化への対応だということになります。そのために今回、この2つの、人づくり革命と生産性革命を挙げたわけです。この2つをパッケージにした意味ということでありますが、安倍政権では2015年に『1億総活躍社会』というコンセプトを出しました。このコンセプトは、経済成長した果実を活用して、人口対策、少子化対策と働き手対策に使う、働き手の方が増えてくることで、また経済が良くなる、このサイクルをつくっていくということを2年前に打ち出したわけですね。今回のこの人づくり革命と生産性革命というのは、大きな政策のフレームワークを深掘りする、そういう性格のものと位置づけていて、そういう意味で、パッケージで出したということだと考えています」
反町キャスター
「熊谷さん、今回の生産性革命、人づくり革命、2つの両輪でパッケージだという、まず全体の印象から、どうですか?」
熊谷氏
「アベノミクスは最初、どちらかと言えば成長にウエイトを置いて、そのあとで現在、分配に移ってきているわけですね。ですから、政治的に見れば、少し左にウイングを広げるという、そういう要素もあって、現在、少し分配の方のウエイトを高めて、ただ、これがうまくいけば、成長と分配の好循環は確かに働き始める。この政策自体はいくつかの点で評価できると思っていて。1つは、この資本主義の、ちょっと大げさなことを言うと、過去数百年間ぐらいの歴史ですね、人が大事なのか、お金が大事なのかということで、右にいったり、左にいったりして動いてきた。この第3期というのはグローバル資本主義というのが2000年ぐらいからあって、とにかく株主の短期的な利益だけが重視されている。ただ、これからは、むしろ人が重要な資本主義の時代に入っていくので、そこはまず1つ時代に即しているという」
反町キャスター
「なるほど」
熊谷氏
「もう1つ、いわゆるシルバー民主主義の問題。高齢者の方にお金を使い過ぎているんですね。たとえば、財政支出で見ると、現役世代の5.9倍、高齢者に日本はお金を使っている。OECD(経済協力開発機構)の平均は2倍だということですから、これをもう少し若者・子育て世代、子供に対して移していくということが必要である。もう1つ重要なのは、教育の中で、高等教育ではなくて、どちらかと言えば、就学前の教育とか、幼児の教育にウエイトを置いているというところも、ここも評価できると思っている。これはなぜかと言えば、費用対効果で見た時、明らかに就学前にお金を入れた方が、効率がいいというのがあってですね。諸外国で見ると、1ドル投資をするとそれが将来的に7倍ぐらいになって返ってくる。もしくはOECDの10か国で見ると、教育に投資をした国は、この75年後にその国はGDP(国内総生産)が36%伸びたと、こういう中長期で見ると非常に大きな効果が出るという。そういう意味で、就学前だとか、小さな子供、要するに、人格が形成される前ですね、いわゆる非認知能力などと言われている、やる気だとか、根気、それから、人との関係ですね、それが固まる前の若いところでお金を使うということで、今、申し上げたような点は評価ができる。ただ、敢えて問題点ということで言えば、何をやるかということで言えば、1つは無償化をやるということ、もう1つは待機児童の解消、3つ目は教育の質の改善ですけれども、この最初の無償化というのは需要側の政策、他方で後ろの2つは供給側の政策であって、少し需要の方にウエイトがかかり過ぎているのではないかと。もう少し待機児童の解消だとか、保育・教育の質です、こちらの方にもさらに目配りをする必要があるのではないかなと。そういうことで、プラスの面と若干のその考えるべき点というのがあるのではないか、そう思います」
反町キャスター
「宮本さん、いかがですか?」
宮本教授
「現在、議論になっていることを見ても、要するに、無償化か、待機児童解消かの択一になっていますね」
反町キャスター
「なるほど」
宮本教授
「そうでなくて、たとえば、何でもスウェーデンがいいというわけではないのですけれども、スウェーデンでも1960年代の終わりくらいまで専業主婦と働くお母さんの対立があって、幼稚園と保育所の対立があったんです。これをどうやって解決していったかと言うと、非常に良質な就学前教育を幼保一体化で実現すると。現在、小学校に子供をやったら、かわいそうだからやらないという専業主婦はいないですよね?」
反町キャスター
「うん」
宮本教授
「それと同じような意味で、保育所と言うと、待機児童解消はいいのだけれど、一時預かりとか、どうしても箱ものに収容するみたいな話になっちゃって…」
反町キャスター
「はい」
宮本教授
「保育所にやるのはかわいそうだという意識が、特に専業主婦のお母さん達にあるわけですよね。そうではなく、今度の人づくり革命の幼児教育に関しても、無償化か、待機児童解消かの前に、ともかく小学校に行かせないとかわいそうだと思うくらい、行かせないとかわいそうな、修学前教育をまず実現する。そのことによって先ほど言った、熊谷さんもおっしゃっていた認知的、非認知的能力が育っていって、その1部は必ず生産性の上昇にもつながっていく。そこがどうも待機児童解消と言うと、一時預かり等の、結構お金のかからない安手の方法が優先されてしまっていて、1番大切な、人づくり革命と言うならば、その根本の就学前教育の質確保というところが、2の次、3の次になっている気がします」
反町キャスター
「宮本さんの話いかがですか?」
越智議員
「まず宮本さんと熊谷さんの話をうかがって、基本認識が一緒だと思うところは、幼児教育の大切さですね。それは認知能力に加えて、非認知能力を養うことがとても大切で、海外において、たとえば、フランスとか、イギリスとか、あるいは韓国もそうだと思いますけれども、3~5歳のところは無償化にするという取り組みもされているという意味で、それは共感を、共感と言いますか、同じように考えているなと、政府もそう考えています。ですので、3~5歳については、幼保、両方とも所得制限をつけずに無償化するということにしたということになります」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「この質のところの問題については、幼稚園については、幼稚園の教育要領というのが今年改訂されて、また、来年からそれが実施に移されるわけでありますけれども、その時に幼稚園から小学校へのつなぎの問題とか、あと先ほど、いろいろとご議論があった、教育内容とかの問題について今回改訂をしているというところであります。加えて、今回の政策パッケージの中で、実は幼児教育のあり方についてももっと議論を深めないといけないということを考えていて、実はこういうことも書かれているんです。少子化対策及び乳幼児期の成育の観点から、0~2歳の保育のさらなる支援、あるいは諸外国における義務教育年齢の引き下げや幼児教育無償化等の事例をしっかり検討して、幼児教育のあり方を引き続き検討してかなくてはいけない、ということも盛り込まれております。このへんは文科省や、あるいは場合によっては厚労省が絡む部分ではありますけれども、問題意識は持っていると」

『幼児教育無償化』めぐる課題
秋元キャスター
「さて、新たな経済政策、2兆円政策パッケージの概要を見てみますと、まず教育無償化を年齢ごとに見ていきます。2歳児までは住民税非課税世帯を無償化。3歳から5歳は認可保育所・幼稚園・認定こども園が無償化、子ども・子育て支援制度の対象以外の幼稚園については月額2万5700円まで助成すると。認可外保育所は来年夏まで引き続き検討するということです。私立の高校については、年収590万円未満の世帯を対象に授業料減免などが検討されています。大学・専門学校などの高等教育については、住民税非課税世帯の授業料減免・奨学金の充実、さらに年収370万円未満の世帯についても負担軽減策などを引き続き検討するとなっています。予算の詳細はまだ明らかになっていないのですけれど、各種報道による歳出の規模などを見てみますと、幼児教育・高等教育共に8000億円程度となっていて、私立高校無償化は消費税以外の財源になる見通しです。教育無償化のほか、保育の受け皿整備や、介護の処遇改善を合わせて、総額2兆円規模の政策パッケージということです。財源は消費税の収入1兆7000億円と、企業拠出3000億円ということですけれども。越智さん、年明けには来年度の予算審議が始まりますけれども…」
越智議員
「はい」
秋元キャスター
「来年度の予算に盛り込まれるものと消費税10%に増税してからというもの…どう分かれているのでしょうか?」
越智議員
「全体は2020年度からスタートいたしますが、それより前にスタートするものがあるので、それについて前に予算が必要になってくるということです。大雑把に言えば、上の方については2020年度から、下の処遇改善、受け皿整備、ここは早めに始まる、そういうことであります」
反町キャスター
「なるほど。消費税を2ポイント上げるのは2019年の10月ですよね?」
越智議員
「はい」
反町キャスター
「それまでの間、先行でやるものについて、財源は国債を発行してでもやろうかと、こういう話になるのですか?」
越智議員
「ここについては、待機児童の解消のところの3000億円とありますけれども、これは正確には3400億円ですけれども、ここの大半については企業の拠出金…」
反町キャスター
「なるほど、そっちでいけるんですね?」
越智議員
「…をお願いするということになりますので」
反町キャスター
「熊谷さん、3000億円の財界の負担というのは、総理と経団連の会長が向き合って、よろしくお願いします、はー、みたいな絵面的にはそういうことで、こうやって決まるのかいなみたいな、不思議な感じを持って僕は見ていたのですけれども…」
熊谷氏
「うん」
反町キャスター
「財界はどうなのですか?日本の財界としては、これはしょうがないということなのですか?それとも、団体がいろいろありますけれども、団体によっては濃淡いろいろあるものなのですか?」
熊谷氏
「たとえば、日本商工会議所とかが、若干の疑義を呈していますよね。ですから、たぶん若干の温度差があって、ただ、主として経団連を中心に主流派のところはある程度、受け入れようかなという気持ちなのだと思うんですね。これはなぜそうなっているのかと言えば、安倍政権になってから、非常に経済系と政界が、一定の緊張関係を持ちながら、それでも調和的にやって、たとえば、中国などは完全な重商主義、国と経済界が一体で、世界中のシェアをとっているわけですから。その中では、たとえば、総理が海外でトップセールスをするような、こういう経済界との関係がいいということは、非常に日本経済にとって強みなわけですね。ですから、そこの部分を踏まえ、経済界も応分の負担をしようと、こういうスタンスだと思いますね」
宮本教授
「全額を社会保障にという、この使途をあらためますよというのが、今度の話だったのだけれども。よく見てみると、2%分で5兆円入ってくる、でも、半分は借金返済に使うという話になっちゃっているわけですよね、またね。残った分の1.7兆円を3000億円と合わせて2兆円のパッケージにしていくというのは、これはちょっと話が約束通りではないのではないかなというところです。ともかく有権者が関心を持っている、あるいは納税者がと言うべきですね、関心を持っているのは10%になったと、14兆円ですよね、5%分で。これがどれだけ還元されてくるのかということが、この有権者・納税者の関心でもあるし、それから何よりも日本というのはとにかく税金が安い社会であるにも関わらず、これだけ借金をこさえちゃっていて、しかも、高齢化はここまで酷くなっちゃっている。この危機を脱出するためには、キチッと払った税金がキチッと使われるという信頼、これが1番大切なわけではないですか。何よりもこの消費増税のポイントというのはともかくいただいた分をこれだけ明確に使途を明らかにして、国民が納得する方法で使いますよという、ここにあったと思うのだけれども、今度は14兆円と2兆円が切り離されちゃって、2兆円の中にも3000億円とか入ってきちゃって、ちょっとわけわからなくなっていると。僕はここがちょっと残念と言うか、国民との契約だったのではないかなという、その契約の中身が何か非常にわかりにくくなってしまっているというのが非常に残念なところですね」
秋元キャスター
「さあ、この2兆円の政策パッケージを詳しく中身を見ていきたいと思います。まず幼児教育の無償化についてですけれど、無償化される対象について、0歳から2歳児には住民税非課税世帯のみ無償化ということですので所得制限があります。3歳から5歳については、通っている施設によって差がつく形となっています。越智さん、なぜ一律無償化ということにならなかったのか、ここはどうなのでしょうか?」
越智議員
「1つ、3~5歳のところについては、年齢で考えると、幼児教育の中でとても大切な時期であると。フランスやイギリスや韓国においても無償化が行われているというところであります。もう1つは待機児童の問題で考えると、ここは待機児童があるのですけれども、少ないところでありまして…」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「全国で3000人ぐらいだと思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「ですので、ここについては多くの皆様に恩恵を受けていただけるというようなところだということであります。0~2歳については、ここは待機児童が多いわけですよ。全国で1万9000人ぐらいいるわけであります」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「ですから、ここについては所得制限をかけることで無償化も進めますけれど、そういう意味では、3~5歳とは違う形で、今回、政策づくりをさせていただいたと」
反町キャスター
「宮本さん、おそらくこの表で言うと、上から3つ目の0歳から5歳児の認可外保育所というのが1番、困っている人?」
宮本教授
「うん、そう」
反町キャスター
「それぞれの世帯で言うと、1番、困っているところが後まわしになっているようにも見えます。どう感じますか?」
宮本教授
「その通りだと思いますね。つまり、現在、保育の必要性を自治体が認定するわけですよね。これはポイントを出すわけですけれども、どれだけ長い時間働けているか、フルタイムの人達はポイントで有利になっていくわけですよ。ところが、非正規、パートタイム、あまり経済的に恵まれていない人達は労働時間がどうしても長くならないので、ポイントが出なくて、認可外という、どちらかと言うとお高くつく保育所を使わなければいけないばかりか、今度もその無償化の対象から、検討中ということではありますけれど、どうなるのかわからないということになると、格差がむしろ広がってしまうのではないのだろうかという…」
反町キャスター
「それはどういう意味ですか?」
宮本教授
「つまり、ただでさえ認可外保育所に行かざるを得なくて、結構高い料金を払っている、しかも、今度の無償化の対象から万が一外れることになると、その格差が…」
反町キャスター
「さらに?」
宮本教授
「広がってしまっちゃうではないですか」
反町キャスター
「なるほど」
宮本教授
「その点は懸念されるところですよね」
越智議員
「どういう施設が対象として適切なのか、ということを考えていって、予算としては8000億円程度と言っていますけれども、これは毎年、毎年、予算要求をしてとっていく話なので」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「予算ありきで決まっているわけでないので。かつその認可外のところがどのぐらいあるかというところですけれども、現在、手元には3歳から5歳という数字がありますが、これでいくと全体で幼稚園・保育園を含めて、305万人利用されているのですけど、認可外の保育所を使われているところが10万人の方。ですから、0歳から2歳のところはちょっと数字が今、手元にないのですけれども、いずれにせよ、そういうオーダーでありますので。そういう中で、8000億円程度の中で予算が組まれていくということになります」
反町キャスター
「宮本さん、このへんの話というと政治力が絡んでくると思うんですよ」
宮本教授
「うん」
反町キャスター
「8000億円がどう分配されるか?保育園の後ろには、ちゃんとしたその系の議員の方がいらっしゃって、役所もある、幼稚園の後ろには、そういう役所と議員がいると…」
宮本教授
「うん」
反町キャスター
「認可外の保育所というのを支える議員とか、議連、役所はあるのですか?」
宮本教授
「個別にはあると思いますが、議連という形では…」
反町キャスター
「すぐパワーの話になっちゃうのだけれど」
宮本教授
「…ないですよね。だから、そこが余計に心配なところで」
反町キャスター
「そう」
宮本教授
「保育族とか、幼稚園族のパワーはすごく強大なんですよ。業界の圧力が強大なだけに、この新制度というのも実は民主党の政権の時に、業界団体が弱気になっている時にできちゃった制度ですよね」
反町キャスター
「なるほど」
宮本教授
「そういう背景もありますので。業界団体の意向が最優先されるということを避けてほしいなという気持ちはありますよね」
反町キャスター
「答えにくいですよね?大丈夫です、やりますとしか、答えようがないですよね?」
越智議員
「でも、これはピュアに政策として何が適切かということで決めていきたいと」

生産性UP&経済再生の道筋
秋元キャスター
「ここからはもう1つの政策の柱であります『生産性革命』について聞いていきます。その内容はこちらですけれど、今回の政策で目指す3 つの目標というのがあります。まず日本全体の労働生産性を現状の0.9%から2 %へと伸ばしていき、同時に企業の設備投資を10%アップ、来年度以降の賃上げ率を3%以上にという目標です。具体的な政策としては設備投資や賃上げを実施した企業への優遇税制、2020年までを集中投資期間と位置づけたうえで、人工知能・AI技術の開発・導入などを推進するというものですけど。まず熊谷さん、この政策でこの目標を達成できるかどうか、現状を踏まえたうえでいかがでしょう?」
熊谷氏
「今回の税制改革は、一定の効果はあると思うのですけれども、それだけでは、この生産性の2%上昇というのはちょっと難しいのではないかなと、そう思います。これはなぜかと言うと、生産性が低迷しているルート構図ですね、根本の原因、5WHYと言って、5個、WHYを繰り返して、いわゆるトヨタ方式で、最終的な原因が何かというのを考えてみると、税制だけの問題ではないと思うんですね」
反町キャスター
「うん」
熊谷氏
「1つは、現在、賃金の動きを見ると、非正規の賃金は実はドンドン上がっている。ところが、正規の賃金が全然上がっていなくて。これはなぜ上がらないかと言うと、解雇規制の問題ですね」
反町キャスター
「うん」
熊谷氏
「要するに、景気の良い時に賃金を上げてしまうと、リーマン・ショックみたいなことが起きた時に、賃金を下げることができないし、人を切ることができないので…」
反町キャスター
「そうですよね」
熊谷氏
「この解雇規制のとこまで踏み込んでいくということが、これが生産性を上げるためのカギである。いわゆる、攻めのリストラという、企業が潰れる直前までリストラができないのではなくて、景気が良い時に、社会的に伸びている分野に人を移して生産性を上げられるということがポイントである」
反町キャスター
「うん」
熊谷氏
「もう1つは、いわゆる供給過剰の問題。企業が多すぎて、お互いに叩き合っているから、ドンドン、デフレになっていって価格が下がってしまうという、そちらの企業サイドのところもまだ再編しないといけないということがあると」
反町キャスター
「うん」
熊谷氏
「もう1つ大きいのは、経済の7割を占めているサービス業、ここがアメリカの半分の労働生産性しかないと、ここが非常に大きな問題であって。これはなぜそうなっているかと言うと、日本のサービス業が世界一のサービスを提供しているのですけれども、価格の設定がマズいですね。ちゃんとした価格をとっていない。たとえば、1泊2食付で、日本ぐらいの国で泊まれる国なんていうのは他にないですね。明らかに安すぎる」
反町キャスター
「あっ、そうなのですか…」
熊谷氏
「それから、たとえば、ファーストフードなんかも昔、スマイルはゼロ円だったわけで、これはおかしいですね。サービスをしたらちゃんとお金をとらなくてはいけない」
反町キャスター
「えっ?」
熊谷氏
「ええ、ここは、日本の奥ゆかしいビジネスモデルですね」
反町キャスター
「はい」
熊谷氏
「ここは抜本的に変えて、世界一のサービスを提供しているのだから、ちゃんとお金をとっていくという、ある意味でビジネスモデルに関わる問題である」
反町キャスター
「熊谷さんが言われたような解雇規制の話とか、企業の、敢えて言えば淘汰です、それとか、サービス業の生産性の向上、それは、つまり、価格に乗せろという話とか、いわば誰かが痛い思いをする話というのがないとダメなんだよという、別に痛い思いをしたくて言っているわけではないのだけれども、そういう意味で言っているように聞こえるのですけれども、いかがですか?」
熊谷氏
「そうですね。税制というのは、あくまで経済政策の一部であって、背中を押す一定の効果はある。おそらく29%台から25%に一定の賃上げをすると法人税が下がりますけれども、おそらくこれは、かなりの企業がそこまで下がる可能性というのがある。それから、20%に下がるところも数パーセントの企業が出てきますので一定の効果はあるけど、おっしゃったように、根本の原因のところを変えない限りはなかなか本格的には戻らないということだと思います」
越智議員
「まず1つ目ですけれども、生産性を上げるという意味で…」
反町キャスター
「そこです」
越智議員
「現在やらなければいけない時期だし、絶好のタイミングだと思っています。これはなぜかと言うと、GDP(国内総生産)ギャップが昨年の末ぐらいから、プラスに転じてきていると。それから、需要が供給よりも、現在、上まわっている状態なので、実際の成長率の方が潜在成長率よりも高い状況です。ですから、現在は需要も大切ですけれど、供給力を上げる時期でありますので。そういう意味で、生産性を上げるには、必要だし、絶好のチャンスだとまず思っている、これが1つ目です。2つ目は…」
反町キャスター
「そこは事実関係としてよろしいですか?GDPギャップは完全に需要が供給を超えている…」
熊谷氏
「うん、そうですね、景気は着実に良くなっていると」
反町キャスター
「はい、どうぞ続けてください…」
越智議員
「政府は、そういう意味では、生産性にちょっと舵を切り出して、供給サイド、サプライ・サイドに舵を切り出しているということです」
反町キャスター
「はい」
越智議員
「で、2つ目の点は、その設備投資や所得拡大促進税制というのが、意味があるのかどうかですけれども、私は意味があると思います。所得拡大促進税制というのは平成25年から導入されているものでありますけれども、実際に使っているところもそれなりにあってたぶん兆円単位で増えている、その分の減税効果は出ていると思っています。この最大の命題は、まず大上段に振りかぶりますけれども、世界的にはディストラクティブな、破壊的なイノベーションが起きていて、それが経済を牽引していっているわけですけれど、日本はそれに対し世界標準のそういったイノベーションのエコシステムをつくらなければならないというのが、基本的な問題意識です。それで、IoT(モノのインターネット)ですとか、ロボットですとか、AI(人工知能)とか、さまざまなものを使ったイノベーション、あと日本の強みはリアルデータ、たとえば、建設現場のデータとか、あるいは医療現場のデータとか、いろいろなデータが、ある意味、集めようと思うと集めやすいところなので」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「そういうものを1つの礎にしてまったく新しい付加価値をつくるべく、革新的な生産性向上をはかっていきたい、これが目標観です。そういう中で先ほど、熊谷さんのお話をうかがって、大変共感する部分があるわけですけれど、解雇の話がございました」
反町キャスター
「はい、解雇規制の話です」
越智議員
「その裏側にあるのは、企業の事業再編なわけですけれども、日本企業と欧米の企業を比べた時に、過去何年間、たとえば、5年間のうちに入れ替えた事業の割合というのは、日本は圧倒的に少ないわけです。海外は多いわけですね」
反町キャスター
「はい」
越智議員
「ですから、日本の場合は、従業員の皆さんを中で、社内で再教育して…」
反町キャスター
「そうですね」
越智議員
「…新しい事業に行っていただくと、それは、解雇はしないわけですね。ですから、ここをどう考えるか。事業再編ができるところは生産性、利益率が上がるわけです。逆にできないところは、生産性が低いままになっちゃうと。ここをどう考えるかというのが1つであります。解雇の話を考えると、転職市場というか、労働市場を厚くしないと」
反町キャスター
「なるほど」
越智議員
「現在のように二十数歳である会社に入りました、基本的に六十数歳まで働きます、転職はしません、というのが、もし昭和型のモデルだとすると、解雇になった瞬間に行くところがなくなっちゃうわけで、それはここ平成になって、21世紀になってだいぶ変わってまいりましたけれども。そこで人生100年時代の議論ともつながってくるのですけれども、人生100年時代になったら、学習をして、1つの会社で働いて、老後を過ごすということは成り立たないだろうと。逆に、元気でいるうちはいくらでも働く、転職もする、その間に学び直す、あるいは一時期、冒険に行く、いろいろな生活を組み合わせて、1つの人生にするのではないか?流動性を高めるわけですよね。そういうことも先々考えつつ、現在、足元では、たとえば、転職しやすいように、副業しやすいように、兼業をしやすいように、短時間勤務がしやすいように、あるいはフリーランスの人達の所得税制も変えて」
反町キャスター
「そうですね」
越智議員
「やりやすいようにということで。雇用、労働市場の流動性を高めていくことと、解雇の話や事業再編の話というのはセットで出てくると思うので。これは熊谷さんのご指摘もその通りだと思いますけれども、ちょっと時間がかかるかもしれませんけれども、現在、それにアクセルを思い切り踏んで進めているところだというのが、現状だと思っています」

誰が負う?改革の『痛み』
反町キャスター
「転職市場を厚くしないといけないという話もありましたけれど、解雇規制の問題だとか、転職市場の話とか、企業の再編、業界の再編というのは、これは痛みもリスクも当然伴わなければ、僕は嘘だと思うのですけれども。やった時に結果、敗者となる人、ないしは淘汰の対象となる人、淘汰の対象となる企業が、安心して次のところにまた行けるような、その制度、セーフティネットみたいなものですよ、そこはどうですか?そういう議論というのが欠けているのではないかなと僕は…、行け行けと言っているだけであって、転んだ時は大丈夫だよという話があまり感じられないのですが、そこはいかがですか?」
越智議員
「ここについては、労働市場の厚みを増さないといけないという話です」
反町キャスター
「はい」
越智議員
「1つは、リカレント教育というのは、そういう意味で、次の職場に向けて準備できると…」
反町キャスター
「いや、僕が言っているのはセーフティネットの話ですよ。リカレントと言うと、次に向けての教育の話で。転んだ時に救ってくれる網というのはどうですか?それは現状であるというので、これでいいというのは…、宮本さん、どう見ていますか?」
宮本教授
「現在、失業なき労働移動論というのが言われていて…」
反町キャスター
「そう」
宮本教授
「これまでは雇用調整助成金と言って、雇用を景気が悪い時も確保した企業に対して助成金を出していた。これは後ろ向きなので、労働移動支援助成金と言って、ドンドン人を移り変わらせていく企業、それが、たとえば、人材派遣会社なんかで次の就職先、これを現在、反町さんがおっしゃった、ひょっとしたらセーフティネットになるかもしれないのだけれど、現状は、それはセーフティネットになっていないと思っていて。結局、現在の日本の労働契約法でも、従業員がうんと言わなければ解雇できないわけです。そんなに解雇規制が緩いわけではないわけですよ、日本も。だから、どういうふうに労働移動支援助成金が使われているかと言うと、人材派遣会社が研修の名のもとに、お前はこの会社にいてはダメだよと、もう別なところに移りなさい。移る先がもっと生産性が高いところでその能力が発揮できるところならいいのですけれども、結果的にはより処遇が悪い、たとえば、介護関係なんかに押し出してしまって、その企業の中で本当に生産性を高めていくための、そのコストになっているかと言うと違う。安易に、誰を研修の対象にするかというのも、結局その職場の中でリストを人材派遣会社との間でつくるわけですけれども、お調子ものというか、本当に陰でガンガン働いている人よりは、割とこう…」
反町キャスター
「胸が痛くなる…」
宮本教授
「…割と協調性がないとかいうところで、5時に帰っちゃうとかですね」
反町キャスター
「うん」
宮本教授
「だから、その部分、熊谷さんの意見にほとんど賛成なのですけれども、でも、日本の労働評価の仕組みとかを見ていると、やっているフリをしている人の方が評価が上がっていくみたいな、そういう土壌が現在のままで、生産性革命と言っていると、正直者が損をするような気がするんですよね」

持続的成長と財政健全化
秋元キャスター
「さて、安倍政権は再来年に予定されています消費税10%の引き上げによる税収を、経済政策と財政健全化に半分ずつ使うとしているのですが。安倍総理は先の国会でも『消費税による財源を子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランス良く充当することで財政健全化も確実に実現していく』と言っています。熊谷さん、この政策パッケージで本当に経済再生と財政健全化、バランス良くできるのでしょうか?」
熊谷氏
「今回、5.6兆円、消費増税によって税収が上がって、半分を教育などに充当して、残りの半分を財政再建に充てるということなので、その意味では、他の野党などは全額を教育に充てるというような、そういう政策もあったわけなので、これと比べれば、比較的バランスが良いというか、財政に対しては一定の責任を持っているということがあると。ただ、問題は、お金に色はないということですから、どこかで歳出を1.7兆円カットしない限りは、これは言ってみれば、実質的には教育国債を出すのと同じ」
反町キャスター
「おお、なるほど…」
熊谷氏
「どこかで歳出を減らさないと、言ってみれば、教育国債を出すのと同じことになってしまうということなので。私は、財政の規律はしっかりと守るべきだという考え方です。現在の日本の社会保障は、非常に厳しい状況だということがあって。縦軸が福祉、上に行くほど福祉レベルが高くなって、横軸が負担、右の方に行くほど負担が大きくなる。当然、右上がりの、こういう均衡線が引けて、この天の川のようなところに、いろいろな国が並んでいる。要するに、福祉レベルが低ければ負担も低いし、福祉レベルが高ければ負担も高いと、そういう関係です」
反町キャスター
「なるほど」
熊谷氏
「日本がどういう動きをしていたかと言うと、1980年ここにあったものが、1990年はここにきた。2015年、一気に上に上がって、このまま改革をしないと、2060年は完全にこの天の川から外れた、こういう外れ地のところにきてしまう。要するに、福祉レベルは非常に高いにも関わらず、負担のレベルは低いか中ぐらいのところということなので、その意味では、受益と負担が全然見合っていないわけですね。要は、子や孫の世代にツケを先送りしているわけですから。おそらく日本が目指すべき国民的な考え方は、中福祉中負担という、おそらくこのあたりだと思うのですけれども、ここに向けて、改革を進めていくことが必要である」
反町キャスター
「右斜め下に降りるということは社会保障を削って増税するということではないですか?」
熊谷氏
「残念ながら、現在受益と負担が見合っていないので、全体としてはそうせざるを得ない。ただ、日本の問題は、本当に困っている人のところにきめ細かくお金がいっていないということが問題になっているんですね」
反町キャスター
「うん、ああ…」
熊谷氏
「世代で輪切りにするのではなくて、ある程度、資産だとか、所得がある人には我慢をしてもらうとかですね。それから、今度年金の所得に対して一定の課税が始まったわけですが、対象はこれ0.5%しかないわけです、腰が引けている。ですから、そのあたりを含めて、シルバー民主主義を是正する。要するに、お年寄りから、とりわけ余裕のあるお年寄りから、要するに、子育て世代、若年層、子供達、ここにお金を移すということが非常に重要であると思います」
宮本教授
「熊谷さんがおっしゃったこと、よくわかるのですけれど、日本が福祉レベルが高すぎると言うのは、やや違和感もあって…」
反町キャスター
「税収と比較した場合ですよね?」
宮本教授
「そう、だから…」
反町キャスター
「絶対的な福祉レベルはいろいろ議論の余地がある?」
宮本教授
「たとえば、高齢化率と支出を相関させると、日本は高齢化の割合からすると、他の国に比べて支出が少なすぎるわけですよ」
反町キャスター
「そういう言い方もあるのですか」
宮本教授
「つまり、これは高齢化率に引っ張られている。質的・レベル的に非常に高くなっていると解釈するのは、ちょっとまた異論もあるのではないかなと思っていまして。つまり、高齢化率を考えると、実際、日本の社会保障支出は現在、GDP比で見ていくと、イギリスを抜いちゃっているんです、オランダも抜いちゃっているんですよ。それは本当に贅沢をしていると言うよりは高齢化の度合いがちょっと際立っているという現実があるわけで。私は中福祉中負担でもいいと思うのだけれども、現在の高齢化の現状を考えた中福祉にしていくと負担はもっと上げていかなければいけないのではないか」
反町キャスター
「負担を上げるということになるわけですね?」
宮本教授
「ええ、そのためにも信頼が大切ではないかなと思いますね」
熊谷氏
「ただ、現実問題として、要するに、この中心のところから離れている国はなかなか立ち行かないという問題があると思うんですね。ですから、それは1つには、高齢化に歯止めをかけるというやり方があるし、そうでなければ、少なくとも裕福なお年寄りには一定程度ガマンをしてもらって、それで現役世代に対して5.9倍ですね、支出が高齢者に対して払われているわけですから、これを、OECD(経済協力開発機構)平均の2倍とは言わないまでも、5.9倍は高すぎると。ここは是正する必要があると思いますね」
宮本教授
「それは私も賛成です」
反町キャスター
「なるほど」
宮本教授
「つまり、世代間の支え合いではなくて…」
反町キャスター
「世代間格差の是正ですよね?」
宮本教授
「世代の中での再分配というのをキチッとやって、裕福なお年寄りには負担を願うというのは、それは私も賛成です」
反町キャスター
「越智さん、いかがですか?」
越智議員
「そうですね、高齢者に対する支出を抑えるというところですけれども、そういう意味では、これまで社会保障費の自然増が毎年1兆円程度だと言われていたわけですけれども、ここ3年で、毎年だいたい5000億円ぐらいに抑えた。そういう意味では、社会保障制度改革というのは現在まだ一生懸命進めていると、ただ、まだ増えているわけです。一方で、今回の政策パッケージでは全世代型ということで、現役世代に対する投資と支援というのを今回明確にしたので。そういう意味では、パラダイムが今回の政策パッケージで舵が切られたと考えています」

熊谷亮丸 大和総研常務執行役員の提言 『痛みを伴う改革』
熊谷氏
「国民にとって耳の痛いことを、これを正面から言っていくこと。社会保障制度の改革だとか、いわゆる岩盤規制と言われる、農業・医療・介護・労働等の既得権が強いところまでさらに踏み込んでいく、ここがポイントだと思います」

宮本太郎 中央大学法学部教授の提言 『まず社会の持続可能性を』
宮本教授
「財政の持続可能性か、社会の持続可能性か。財政の持続可能性も大事ですが、帳尻を合わせても、皆が子供を産み育て、その社会が続いていかなければ、早晩もたないわけですよね。そのためにも、社会の持続可能性、特に信頼、収めた税金がちゃんと循環して戻ってくるという、その確信をつくっていくことが大事だと思います」

越智隆雄 内閣府副大臣の提言 『誰もが生きがいを感じ 能力を存分に発揮できる社会』
越智議員
「私は、誰もが生きがいを感じ、能力を存分に発揮できる社会と書きました。経済が良くなって、そこで産まれた果実が活用されて、少子化対策、人口対策、また、働き手対策に使われて、そのことによってまた経済が良くなってくという、好循環をつくっていく。その中で、数多の年代の人達が教育を受けられる、あるいは学び直し、働き直しができる、そういう社会をつくっていくことで持続可能な成長が実現できると思っています」