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2017年11月21日(火)
異次元緩和いつまで? 針路と『出口戦略』は

ゲスト

大塚拓
自由民主党衆議院議員 前財務副大臣
木内登英
前日銀政策委員会審議委員
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト
武者陵司
武者リサーチ代表

前日銀政策委・審議委員に聞く 『異次元緩和』評価と効果
秋元キャスター
「日本銀行が異次元緩和に踏み出してから4年半余りですけれど、世界の主要国が金融引き締めに舵を切る中、2%の物価上昇目標が達成されていない日本は先月31日の日銀金融政策決定会合で大規模緩和の維持が決定されました。今夜はアベノミクスの第1の矢、大胆な金融緩和、金融政策を検証し、今後の進路と出口戦略について考えていきます。日銀が異次元緩和に踏み出してから、4年半余りが過ぎました。第2次安倍内閣が発足しました2012年12月26日当時の経済状況はどういう状況だったのかを見てみますと、日経平均株価は1万0230円36銭、円相場は85円36銭、有効求人倍率が0.83倍、消費者物価指数が-0.2%、こういう状況だったのですけれど、2012年12月当時、木内さんは日本銀行審議委員会の審議委員をされていましたけれども、当時の日銀はこの経済状況にどのようなスタンスで臨まれていたのでしょうか?」
木内氏
「十分強い経済ではなかったですね。特に私が注目したいのは、景気の水準と言いますか、たとえば、失業率が、完全失業率よりも高い状況、有効求人倍率が1に達していない状況、こういう時は金融政策を通じて需要を押し上げるということが期待されますので、金融政策自体は、追加緩和自体はたぶん妥当であっただろうというふうに思います。しかしながら、そういう状況は意外と早く解消されまして、2013年の終わり頃から2014年あたりには失業率もだいぶ下がって、いわゆる需給ギャップと言うのか、受容と供給のバランスは概ね正常なところにいきましたので。私は、そこでもう金融政策の役割は比較的早く終わったのではないかなと思いますし。それ以降ずっと続けて追加緩和をする中で、効果と副作用のバランスがだいぶ悪くなってしまったということもありまして自分としては、2015年の4月から、それは正常化を提案するということをやってきたわけであります」
反町キャスター
「当時としては2012年12月、この時に1万円を超えていましたけど…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「総選挙の頃で、これはいよいよ野党が逆転するぞというところからの期待値で、ウワーッと株価が上がっていったではないですか?」
木内氏
「そうですね」
反町キャスター
「あの状況というのは、日銀にいた立場から見ると…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「市場は、安倍さんに何を期待しているのか?それに日銀はどう噛んでいくべきなのか?どんな思いで見ていたのですか?」
木内氏
「それ以降の、経済環境の改善ですとか、株価の上昇とか、円安というのは、私にはかなりの部分が世界経済の回復に助けられているのではないかなと思いますね」
反町キャスター
「ほう」
木内氏
「ただ、そうは言っても、アベノミクスに対する期待とか、金融緩和、効果…、影響はなかったと言うと、そういうわけではないのですけれども…」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「いわゆる触媒と言いますか、いい環境下でマーケットのプライスが動くような触媒の役割を果たしたのかなと。ただ、たぶん世界経済の環境が悪ければ、いったん株高・円安になっても、また、たぶん戻ってしまったと。そういう意味で言うと、アベノミクス、それから、いわゆる日本銀行の積極的な金融緩和というのは、ある意味、運がよくて…」
反町キャスター
「フフフ…」
木内氏
「世界経済の回復、世界経済のボトムは2009年の初め頃ですけれども、2012年から2013年にかけて力が、回復力が強くなったんですね、そこにかなり助けられているということを割り引いて、少し政策の評価をしなくてはいけないのではないかなと思います」
反町キャスター
「武者さん、木内さんの話で、アベノミクスは運がよかった…」
武者氏
「はい」
反町キャスター
「ここはどうですか?」
武者氏
「私は、それにはだいぶ異論がありますね。むしろ安倍さんがほぼほぼ四面楚歌に近い、ほとんど皆が反対する中でこの大胆な金融政策…」
反町キャスター
「そうですね」
武者氏
「アベノミクスを打ち出したんですね。ほとんど8割、9割の学者やエコノミスト、あるいはメディアは、安倍さんの大胆な金融政策に対して、これは錬金術だとか、モラルハザードだという非常に厳しい批判を、これはもう右から左まで皆、言ったんです」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「よくもこういう政策を打ち出したなと、あれだけ四面楚歌の中で。ただ、私は、この政策は日本にとって必須だと当時から、以前から考えていましたので…」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「安倍さんがよくそういう、私が思う最も適切な政策を打ち出したということで、ちょっと驚いた次第ですね」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「重要なことは、一般の経済学者やエコノミストがどのように考えているかは別ですけれども、日本というのは、不必要な、言ってみれば、麻痺にかかった経済が20年にわたって続いたんですね。GDP(国内総生産)が名目で500兆円というのが、もう20年ぐらいにわたって…」
反町キャスター
「続いています」
武者氏
「日本だけが成長しない。株価はと言えば、全ての国が史上最高値を更新する中で、日本だけが大幅に低迷をしている。また、リーマン・ショックが終わったあとも、日本の株価は2012年11月の、安倍さんが登場するまで日経平均は8000円、8000円ですね」
反町キャスター
「そうですね」
武者氏
「しかし、その時点でアメリカやヨーロッパの株は2倍以上になって、リーマン・ショックの前の水準を超えているんです。つまり、日本は本当にダメな国で、ダメな経済なのか、あるいは政策が適切ではなくて、そのように著しく立ち遅れたのかという認識の問題だと思いますが。私はダメではなく、いろいろ政策的な問題、あるいは時には不運も重なって、このように不必要な、いわば立ち遅れということが経済と市場の面で起こったと思うんですね。これを何によって立て直すか。これは私は、安倍政権が打ち出したリフレ政策だと思います」
反町キャスター
「うん」
武者氏
「従って、その後、想定通り、株価が上昇し、経済は力強く拡大し、企業収益は順調に向上し、失業率も著しく低下をする、と言うように、これは少し前からは想定できないような多くの成果を実現しているわけですね。従って、安倍政権、むしろ安倍首相のイニシアティブが現在の日本経済の著しい立ち直りをもたらしたという点で、これは正当に評価するべきだろうと思います」
反町キャスター
「なるほど。木内さんと武者さんのお話をうかがっていると、2012年当初、安倍政権発足当時に金融緩和という手を打ったこと自体は、たぶんお二人とも、そこは入り口論としては間違っていなかったということは一致していると、共通していると思ってよろしいのですよね?」
木内氏
「武者さんのお話をお聞きしてですね、ちょっと自分の認識と少しズレているかなと思ったのは、たぶん、アベノミクスが、安倍政権が始まった時には、その政策はかなり支持されていたような印象がありますね。で、日本銀行に対する金融緩和も…」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「ですから、その前の自民党の総裁選の時にも物価目標、インフレ目標を掲げて、日本銀行に積極的な緩和を迫ったということ自体が支持されたので、自民党が大勝したと思うので。一部では慎重な意見があったかもしれませんけれども、あの政策自体はたぶん支持されていたと、私はいいと思ってないですけれど、ただ、支持されていたと思ったんです。ただ、その背景には、この長いデフレの原因が日本銀行にあって、本当は日本銀行で…」
反町キャスター
「あの頃、日銀はなんか悪者…」
木内氏
「…悪者だったんですよね」
反町キャスター
「だったんですよね?はい」
木内氏
「ですから、日本銀行は、本当は力があるのだけれども、非常に慎重すぎて場合によってはデフレをつくっているのではないかと言われて。その日本銀行をある種、政府の力もあって変えさせてやるのだ、そうしたら一般の人は喜ぶということだと思うんですね。いわゆるそれによってデフレ脱却ができるのではないか?」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「ですから、最初はたぶん支持されたのだと思いますね」
秋元キャスター
「さあ、続いて安倍総理の第1の矢です。大胆な金融政策を実行すべく、2013年3月に白川日銀総裁から代わった黒田総裁が、この後ろにありますけれども、いわゆる異次元の金融緩和を次々と打ち出していくわけですが。最初ですね、2013年の4月、『量的・質的金融緩和』導入決定とありますけれども、その内容が、物価安定の目標は2%、達成期間が2年、マネタリーベース2倍に、国債保有額・平均残存期間2倍以上にということですけれども。木内さん、この2、2、2、2という具体的な数値について、これをどう感じましたか?」
木内氏
「うーん、この『2』にそんな大きな意味はないと思うのですけれども」
反町キャスター
「ほう」
木内氏
「ただ、前の体制の時には政策がわかりにくい、メッセージ性が弱いということをよく言われましたので、それが、いわゆる黒田体制になってから、非常にわかりやすいメッセージが最初に出てきたということで、非常に新鮮なイメージを持たれたのではないかなと。それ自体が、多少の効果はあったかもしれないなと思いますけれども。そういう期待をコントロールするというのは、一瞬は効果があっても、ずっと長続きするものではないので。そういった戦略というのはごく初期の戦略としては、いい面はあっても、それをずっと長く続けていっても、たぶん効果はないということだと思うんです」
反町キャスター
「実際、その旗を立てて…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「実現できていないわけではないですか?」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「実現できていないことを考えた時にこの時、2、2、2、2といったことというのは…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「どう感じますか?」
木内氏
「特に2年で達成するというところですよね…」
反町キャスター
「そこです、はい」
木内氏
「2%を2年で達成すると。現在、物価はエネルギーとかを除くとほぼ0ですよね」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「2019年度に2%って現在、見通しはなっていますけれども、誰も達成するとは思っていないということで。ですから、そこは実力以上のものを言ってしまった。もちろん、その時点で金融政策の効果はどれだけあるかというのは誰もわからなかったと思いますが、でも、強気の情報発信をすることによって、期待を動かせるという発想があったんですね。ただ、それも先ほど言いましたけれども、初期段階ではそうかもしれませんけれども、2%の達成がドンドン、ドンドン、後ズレしている中で、2%です、できるだけ早期にと言うのは、もはや期待に働きかけることができないのでどこかで戦略を変えるべきだったと思いますね。初期の期待に強く働きかけるというところから、もう少し現実的な政策に移行すべきだったと思いますし、私は、それは2014年あたりのどこかにあったと思うのですが」
反町キャスター
「チャンスが?」
木内氏
「ええ」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「むしろそこまでにある程度得られていた効果で本当は満足すべきだったところを、2014年の10月にもう1回アクセルを踏んだと。そこがやや節目と言いますか、ターニング・ポイントになっちゃったのではないかなとは思います」
反町キャスター
「武者さん、いかがですか?2、2、2、2が並んでいる、いわゆる僕ら的に言うと数値目標を組み込んだ日銀の目標設定…」
武者氏
「はい…」
反町キャスター
「これは、どう評価されるのですか?」
武者氏
「端的に言って、黒田さんの覚悟を表明したということですよね」
反町キャスター
「ああ、はい…」
武者氏
「不退転の決意を表明したと、だから、ついてこい、という話だと思いますね。そういう形でメッセージを出して、市場心理を変えようとした。と言うことが、禁じ手であるとか、あるいは本来の金融政策としては適切ではないという見方もありますね」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「私はそうではないと思います。確かに表面的には非常に、ある意味で、旗を振ったわけですね。しかし、その旗を振る目的は何かと言うと、デフレ脱却ですね」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「おそらく、白川さんまでの日銀は、デフレ脱却という戦略目標を明確に掲げていなかったと思います。時にはデフレの方がひょっとするとまだいいのではないかというぐらいの感覚をお持ちですよね。しかし、デフレが端的に言って諸悪の根源である。これを退治することで、日本経済の抜本的な転換をはかるのだ、これがアベノミクスであり、黒田さんの強い決意ですね。ここに出ている量的金融緩和の具体的な目標というのはそのための戦術です。従って、その戦略目標、デフレ脱却ということが必要であるのか、そうではないのかという点に関して、おそらく当時の日銀も、あるいは一般のアカデミズムやメディアもコンセンサスはないんですよ。従って、戦術が善い悪いという、戦術論になっているんですね、2%達成できない、あるいはできたという。しかし、重要なことはデフレをやめさせるのだと、これが諸悪の根源だというところに軸を置いたというのは、これはコペルニクス的転換と言っていいほどの、それまでの日銀から大きく離れた動きです。その戦略性について十分な議論がなされないままに、やや水掛け論的な議論が金融界でずっと続いているというところに…」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「私は議論の混迷の原因を見ますね」
反町キャスター
「今の話は、要するに、黒田バズーカの1発目の、2、2、2、2という数値目標を設定したこと…」
大塚議員
「ええ」
反町キャスター
「これを我々はどう受け止めたらいいかっていう話なのですけれども、どう感じますか?」
大塚議員
「これは当時の世の中の雰囲気を思い出していただければ…」
反町キャスター
「はい」
大塚議員
「ずっとデフレも続き、経済もどこまで悪くなっていくかわからないと、皆、日本経済が縮小していくしかない、そういう頭に思いがこびりついている中でこの2年というところが議論になっていますけれど、2年も含め、わかりやすい数字目標も示しながら、力強く日銀総裁がリーダーシップをふるったということで。これは相当、世の中のムードというのは変わったと思います。実際に2%、2年という目標を立てたわけですけれども、もうあと1歩というぐらいまではいったんですよね、当時も…」
反町キャスター
「瞬間ですね…」
大塚議員
「そう」
反町キャスター
「1.5か、1.6ぐらいまでいきましたよね?」
大塚議員
「そうです。このままいけばいくのではないかというぐらいの雰囲気はあったと思うのですけれども」
反町キャスター
「はい」
大塚議員
「これは、総合の指数で見るとそうだったのですけれども、残念ながら、そのあと原油が大幅に下落をして、総合の指数で見るとちょっと落ちていったと」
反町キャスター
「はい」
大塚議員
「ただ、経済全体で見れば、確かに消費増税もありましたけれども、いわゆるコアコアの指数、エネルギーと生鮮を除くところで見れば、暫くまだモーメンタムが維持されていたんですね」
反町キャスター
「うん」
大塚議員
「そういう中で狙ったところは間違っていなかったなという判断があり。ただ、いろいろな外的な計算できない、原油市場の価格動向などそういうこともあって、ただ、狙った通りの方向には動いているので、2弾、3弾と、こういう判断になっていったのだと思いますけれども。少なくとも第1弾の時点で、この2、2、2、2というわかりやすい指標も含めて、力強いリーダーシップを示したので、初めて日本の経済のマインドがそこで変わったのではないかなと思います」
反町キャスター
「その後の、株価が順調に上がり続けていることとか、経済の失業率やなんやらが改善していることを考えると、この2、2、2,2という黒田さんのメッセージというのは実現・達成はされていないとは言え、市場からお前は嘘つきだというような拒否をされているとは思わない?」
大塚議員
「ええ。実際、経済に何が起きているのかを見れば、この雇用情勢を見ても、これは統計を取り始めて1番良いぐらいになっている、GDPも順調に拡大をしてきている。こういう成果がしっかり上がってきていますので」
反町キャスター
「はい」
大塚議員
「ただ、唯一、問題なのは物価のところがなかなか厳しいと」
反町キャスター
「そうですね」
大塚議員
「これは企業のしぶといデフレマインドというのもあると思いますし、その間、いろいろ先ほどのデフレもありましたし、チャイナ・ショックもあったし、ブレグジッドもあった、いろいろなこともある中で、2%は達成していないかもしれないけれど、しかし、狙ったところに向けてしっかり動いていく…」
反町キャスター
「なるほど」
大塚議員
「その構図、モーメンタムというものは維持をされているということだろうと思いますので。それをたぶん市場の皆さんも、理解されている方はあまり批判をされない、この方向でいいのではないかと思っているということなのかなと思っています」
反町キャスター
「木内さん、よくマーケットとの対話とか…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「僕らも、この番組とかで時々、言うのですけれども…」
木内氏
「はい」
反町キャスター
「その意味で言うと、黒田総裁は2、2、2、2という旗を掲げてですね、マーケットとの対話、行って来いの対話になっているのか、一方的な宣言だったのかは別ですけれども、少なくともスタートにおいて、キチッとしたコミュニケーションはとれて、それをマーケットが評価して、現在もそれなりの評価を得ているからこそ、日本の経済の成長だという、この見方というのはちょっと違うのですか?」
木内氏
「対象はマーケットだけではないですね」
反町キャスター
「はい、はい」
木内氏
「一般の商社だったり、企業だったりのインフレ期待を変えるっていうのがあったわけで」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「金融政策の目的は株を上げることじゃないわけですから…」
反町キャスター
「その通りです」
木内氏
「最終的には、物価目標を達成することも実は最終目的ではなくて、実はそれは中間目的です。最終的な目的は日本銀行法によれば、国民経済の健全なる、健全な発展に資すると出ていまして、安定した経済と国民生活の安定というか、それが最終目的なので」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「それに資するためにはどうすればいいかと。たとえば、物価が上がること自体が、それにマイナスであれば、そこは上げない方がいいわけですね」
反町キャスター
「そうですね」
木内氏
「現在、2%物価が上がってほしいと思っている人がいったいどれだけだろうかということですよね。2%上がったら、では、もっと経済が良くなるのかと。でも、賃金が上がらない中で2%物価が上がったら、これは、消費は大変なことになりますよね」
反町キャスター
「そうですね」
木内氏
「ですから、本当に重要なのは何かということを考えないといけないのですが。現在、失業の心配もない中で経済に満足している人もいるかもしれませんけれども、依然として満足していないという人もいるというのは、つまり、何かと言うと、先行きの生活がドンドン良くなっていくという展望が持てないということだと思うんですね。物価が上がらないということではなくて、生活の水準が着実に上がっていくか…」
反町キャスター
「将来不安ですね?」
木内氏
「ええ。それは何かと言うと、それは実質の賃金というのか、購買力が高まっていくという機会がないわけで、購買力を決めるのは何かというと、生産性の上昇値ということですね、経済の潜在力ですね。一時的に需要が押し上がるとか、物価が上がるということではなくて、経済の潜在力が十分ではないので、経済に皆満足してないわけですから、それを上げなくてはいけないということですね。それは誰がやるのかと言ったら、それは企業であり、政府の成長戦略なので、そこをもっとやらなくてはいけなかったということだと思うんですよね」
武者氏
「確かに木内さんがおっしゃったように、日銀は物価というよりはもっと重要な、国民経済の安定的発展に資するというような、大目標があるんですよね」
反町キャスター
「うん」
武者氏
「ですから、そこに最も重要な使命があると思います。では、現在の日本の問題はいったいどこにあるか?木内さんは確かに生産性が伸びていない、需要がない、国民が皆、良くなると思っていないということを挙げられました。その通りです。しかし、それはいったいなぜなのかということを日銀はもっと深く考えるべきだと思うんですね」
反町キャスター
「うん」
武者氏
「最大の日本の問題は、私は貯蓄過剰だと思うんですね」
反町キャスター
「うん」
武者氏
「企業も、家計も、とてつもなく大きな金を貯め込んでいるんです。かつては不良債権の処理のために、貯金を少しする必要があった。不良債権の処理が終わってもなお、ドンドン、ドンドン貯蓄を増やしている。それが異常な低金利の原因ですよ。では、貯蓄は何か、貯蓄は端的に言って、もらった、手にしている購買力の先送り、これが貯蓄ですよね」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「従って、このように貯蓄があれば、誰かが購買力の先買いをして、借金をして、投資をしないと、バランスが悪いですね。ところが、日本の経済は皆が貯蓄をするという形で購買力の先送りをする、需要が悪くなる、その結果としてますますデフレ的な環境が起きる。貯蓄というのはデフレによって加速されるわけですよね。つまり、デフレはお金を持っているだけで、ドンドン貨幣価値が上がります」
反町キャスター
「得をしますよね?」
武者氏
「従って、デフレは、いわばお金をドンドン、貯める方向に人々を誘導する。と同時に、貯められたお金が世の中にまわらずに、キャッシュイズキングで、寝ていればいいんです。下手して、株を買ったりしてリスクをとるよりは、そのままキャッシュで置いておいた方がいい。となると、猛烈な国民の将来の購買力が、実は寝たまま放置されているというのが日本ですね」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「このお金で異常な低金利が続き、このお金で国民の金融資産7割が有効に活用されずに現金預金で寝ている。これはまさしく金融市場がまったく機能していないという現実ですね。果たして日銀はこのような現実を、自らの問題としてどう解決するかという、その認識を持っていたかどうか?私は持っているとは到底思えないですよね」
反町キャスター
「では、木内さん、現在の状況、デフレ下における経済状況でどういう舵をとるべきなのかといった議論、武者さんが言われたような議論というのは日銀の中でどういったように議論されていたのですか?」
木内氏
「どういう議論かは詳細には申し上げられませんけれども…」
反町キャスター
「大つかみで…」
木内氏
「大つかみで言うと、両方あったということですね」
反町キャスター
「両方あった?」
木内氏
「簡単に言うと、物価を上げいく、人によってはマネーを供給することによって物価を上げていくというのがいいのだという意見と…」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「もうちょっと構造的に良くなっていかなくてはいけないのではないかと、金融政策がいくらがんばっても、生産性も上がらないし、企業のイノベーションも起らないし、あるいは人口も減っていくという中では、いわゆる成長期待が下がるわけです。実はそれも低金利の原因になっているわけですから…」
反町キャスター
「そうですね」
木内氏
「いわゆるマネー重視派、物価重視派と、構造派と一応分かれているということだと思いますね」
反町キャスター
「構造派というのは、日銀の政策としてそこに手を突っ込む余力や選択肢というのはどういうものがあるのですか?」
木内氏
「基本的には、金融政策は主役ではないわけですよね、構造改革ですから」
反町キャスター
「ですよね?そうすると、そちらの政策を採るということは、日銀は、この日本の景気、デフレからの脱却に対しては、傍観者であるべきだという議論が主流になったと、こういう理解でいいのですか?」
木内氏
「えっと、そういうことでは必ずしもないのですが…」
反町キャスター
「違う?」
木内氏
「最終の目的は政府も日本銀行も共有していて、国民経済の、経済の発展と生活の安定です。それに対して、それぞれが自分の守備範囲でできることをやりましょうと、これが本当は共同声明の趣旨だったと思うんですね。その時の金融政策は何をやるのかというと物価を上げることではなくて、物価が、安定した状態から比べて下ブレしていたら、そこを修正してあげる。需要を調整することによって本当のインフレ・ターゲッティングですね。ところが、2%というのは、皆が、居心地がいい数字なのかと言うと、たぶんそうは思えないですよね」
反町キャスター
「なぜ2になったのか、他の国も皆、2だったからみたいな話を聞いたのですが、あれは嘘ですか?」
木内氏
「まず根拠はなかったと思いますね」
反町キャスター
「ハハハ…」
木内氏
「敢えて言うと、国際基準という言い方があるのですが…」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「アメリカ、ヨーロッパは2%近いインフレ目標であると。それさえも現在、達成できていないわけです。日本は主要国と比較をすると、たとえば、1980年以降で言いますと、だいたい2%ぐらい低い国ですね。欧米よりももともとインフレ率が低い国で、それはバブルの時でも変わらないし、デフレ、1990年代末以降は一応、デフレと言われたのですが、その時だけ、日本だけすごく下ブレたかと言うとそんなことはなくて、だいたい平行してきていて…」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「グローバルにインフレ率が少し下がっていく中で、1番下を走った日本が、少しマイナスに入っていったというのが、状況ですね。ですから、もともと低い、それから、それはある種の個性であるということだと思うんですね」
反町キャスター
「個性?」
木内氏
「国によって、安定した物価の状態というのは違うので…」
武者氏
「それは違うのではないですかね?」
反町キャスター
「デフレが個性と聞こえます」
木内氏
「いえ、違います。物価が安定をしているという状況ですね、日本は比較的低い水準で物価が安定していくので、それを無理やり上げたら企業が賃金を上げないわけですから…」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「生活は貧しくなるわけですね。ですから、そういう物価の安定と言いますけど、企業・家計が持っている物価の安定というのはどのくらいなのだろうというのを考えて、消費者物価指数の上昇率に置き換えてつくるのが本来のインフレ・ターゲッティング」

あるべき『出口戦略』とは
秋元キャスター
「木内さん、世界の主要国が金融引き締めに舵を切る中、日本だけ緩和を継続していて、これはどう見ていますか?」
木内氏
「いろいろな評価にもよると思うのですが、たとえば、国債の買い入れのペースで言うと、昨年の9月のイールドカーブ・コントロールの時から、だいぶ下がっているんですね。それ以前は80兆のペースで買い入れていまして、イールドカーブ・コントロールを導入してから、1年間で平均すると年間60兆ペースに下がりまして…」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「この数か月間は50兆ぐらいに下がりまして、ごくごく足元だと40兆台ぐらいにまで下がってきました。私は、実は2014年の4月に45兆というのを提案しまして、ずっと退任までやっていたので、だいぶ近づいてきたなと。これは一種の正常化だと思うんですね」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「国債を買うことによる副作用、たとえば、流動性がすごく下がってしまう、買える限界まで勝った時に流動性がすごく下がるというのはすごく価格の変動が大きくなる。国債の金利というのは、いろいろな金融資産を、株も含めて、決めているベースになっているものですから、それがガタガタした時にはかなり市場が混乱する可能性がある。そういう意味では、ステルスとも言われるんですが、事実上の正常化には、ある程度、踏み出していると思います」
反町キャスター
「あっ、やっているという認識でいいのですか?」
木内氏
「ええ、私はそう思いますが。それは正式にはもちろん、言っていないです」
反町キャスター
「はい」
木内氏
「言っていないですけれど、事実上の正常化がもしかしたら日本銀行の職員主導で進んでいる可能性があるとは思っています」
反町キャスター
「それを表立って言わないで、ステルスでやる狙いというのは何かあるのですか?」
木内氏
「えっと…」
反町キャスター
「それは総裁がそう言っていないから…、そういう意味ではないの?」
木内氏
「まず国債の買い入れ額については、目標からもう外れているので、金融、金利目標を達成するために結果として決まっていますというような、一応、建前ですね。ただ、国債の買い入れというのはいろいろな副作用もいっぱい生むので、そういうのも意識して、事実上、抑えてきているという解釈の方が妥当かなと私はまず思っています。ただ、正常化ですと言ったら、2%の物価目標があるわけです。2%…、たとえば、マイナス金利とか、長期金利もそうですし、それから、ETF(上場投資信託)の買い入れとかもそうですが、これは2%の物価安定目標を達成し持続させるためにやっていますという説明で、実際の物価はエネルギーを除くとプラスの0.2で全然遠いわけですから、全然目標を達成しないのに正常化なのか、説明にならないですね。なので、マイナス金利を解除するとか、長期金利を上げるとか、ETFの買い入れを減らすというはっきりした正常化は、これは2%の物価目標の位置づけを変えないとできない」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「しかし、国債については昨年の9月に目標から一応外しているので、その中で、事実上の正常化を進めていると。ただ、市場は必ずしもそこまでは読んでいないので、話は戻りますと、アメリカ、ヨーロッパと比べると遅れていますということになるわけですね。経済については、日本の景気の水準の方が高いので、本当は日本の方が早めに正常化していってもおかしくないところなのですが、遅れていると。金融政策は、各国の経済のためにやっているので、別にずれること自体は、問題はないわけですけれど、でも、景気の強さからすると日本がたぶん強いということと、結果的にすごくずれてしまった時には、為替の動きがかなり激しくなる可能性がありまして。たとえば、金利差がドンドン開いてきますと、日本の市場で、低い金利で調達して海外で投資するという、2000年代半ばにもありましたけれども、そういうキャリートレードというのがドンドン高まりますね。そういう中で日本銀行もより明確なはっきりした正常化に踏み切った時に、資金がグワーッと逆流してしまうということになった時には、急激な円高になるリスクがあると思うんですねで、そこを考えるとドンドン政策が内外でずれているというのは、非常により本格的な正常化を将来すごく難しくしてしまうということが考えなくてはいけないとは思います」
反町キャスター
「武者さん、いかがですか?日本1国緩和になるのではないかという懸念というのは、我々はどう見たらいいのですか?」
武者氏
「1つは、日銀の量的金融緩和が主要国の中で1番遅れたわけです。アメリカから4年ぐらい遅れているわけです」
反町キャスター
「はい…」
武者氏
「従って、その影響も1番遅れているという意味で出口が遅れているというのは、これは当然と言えば当然ですね」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「それから、もう1つは、QE(量的緩和)とはそもそも何かということを考える必要があると思うんです。つまり、果たして出口というものがあるのかと」
反町キャスター
「えっ?」
武者氏
「ずっとQEが続くということですね。それはなぜかと言うと今や金融というのは銀行システムによってのみ成り立っているわけではないですよね。しかし、日銀の金融政策というのは全て銀行を通した金融政策ですね。つまり、銀行に日銀が貸すお金の金利を調節することで、その先の、いわば信用量をコントロールする、これが伝統的な金融政策です」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「しかし、そのようなものがもう使えなくなった。1つはゼロ金利になったということもありますが、それ以上に金融の中身がガラッと変わったわけですね。現在では銀行システムによる金融よりは、直接金融市場によって資金が調達されるということが起こりました。従って、たとえばリーマン・ショックは、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)前議長は『21世紀の取り付け』と言ったのですけれど、それは何かと言うと、皆、証券を持っていたら、証券が紙くずになるので、紙くずになる前に証券を売ろう、これが取り付けだと。昔の取り付けは銀行にお金を預けていて、銀行が潰れたら返ってこない、だから、銀行に行って、お金を引き出そう、どちらも非常に人々のパニック的な異常心理が金融システムを破壊するということですけれども、もう以前と現在とは危機の様相も違いますし、信用をつくり出していくチャンネルもだいぶ変わっているんです。つまり、現在の金融、特にアメリカなどは、最も主要なパイプラインは、銀行システムでなく、直接金融市場です。この直接金融でリーマン・ショックのように資産価格が暴落して金融が働かなくなると何が必要かと言うと、銀行が見せ金を店頭に並べて預金者を安心させたごとく、投資家を安心させる必要がある。それが日銀、あるいはFRBの量的金融緩和だと思うんですね」
反町キャスター
「はい」
武者氏
「つまり、金融市場を安定させるため資産価格の暴落を中央銀行の関与によって回避する、あるいは直接資産価格に影響を及ぼす。これは国債、あるいは住宅ローン債権、さらには株式など、全般的な資産価格に影響を及ぼします。つまり、信用総量を銀行システムから直接金融システムを通してコントロールするように変わる時に、直接金融市場の価格に影響を及ぼすためにはバランスシートがすごく大きくないと、これは難しいですね」
反町キャスター
「うん」
武者氏
「従って、ドンドン、バランスシートを膨らませて、たとえば、長期金利に影響を及ぼすというようなことをやっているわけです。このような金融システムの変化というのは、これはもう不可逆的なものですから…」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「中央銀行が銀行の背中を押すだけで金融調節ができるという時代ではなくて、その資産価格に影響を及ぼすと。バーナンキ前FRB議長は、これを『リスクプレミアムをマネージする』と言ったのですけれども、そのようにして直接金融市場に影響力を及ぼすのが量的金融緩和の本質的な、私は特徴だと思うんですね」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「と言うことであるとすれば、この量的金融緩和というのは、もはや完全になくなることはないと。おそらく今後の金融調節の手段として、ずっと続いていくと思います。何か危機的な時代が起これば、またこれが出てくるということもあり得るというふうに考えると、その出口、そういうように単純に考えるというのもあまり現実的ではないなと。たとえば、かつて金本位制がありました、金本位制をやめました、いわば不換紙幣が発行された。この時に、当初はいずれ金本位に戻ると皆、思っていた。ところが、何の価値もないお札が流通するというのが新しいレジームなったわけです。と言うように、量的金融緩和というのもレジームが変わったという側面もあるわけです。そういう観点から、そのレジーム変化をきちんと議論をできる土台が、当時の日銀の金融政策の決定会合の中に、あったかどうかと言うと、たぶんそうではなかっただろうと思います。そうするとかなり強引な結論誘導ということも…」
反町キャスター
「必要だった?」
武者氏
「必要だった。あるいはそうせざるを得なかったということもあったのではないかと、私は推測しますね」
反町キャスター
「金融緩和によって時間を買うのだ、買った時間によって何ができたのか?その時間にやるべきだった成長戦略というのは現在、どういう状況にあるのかということを今日は最後に皆さんに聞いていきたいのですけれど、大塚さん、どう感じますか?」
大塚議員
「えっと、金融緩和によって時間を買うということであれば、この間の成果はどうだったかということで言えば、これだけドラスティックに雇用情勢が改善してきた…」
反町キャスター
「なるほど」
大塚議員
「と言う意味で、買った時間の価値はもちろんあったというふうに思います」
反町キャスター
「うん」
大塚議員
「それと同時に、本質的に潜在成長率をグッと上げていくために必要な政策、規制改革、あるいは科学技術イノベーションといった政策、これは時間軸がもう少し長い時間かかっていくものですから…」
反町キャスター
「そうですね」
大塚議員
「既に仕込んでいる弾も、たとえば、電力・ガス自由化とか…」
反町キャスター
「はい…」
大塚議員
「コーポレート・ガバナンス改革とか、いろいろな弾は既に仕込まれているのもあります。あるいは科学技術イノベーションもハイリスクなものにちゃんとお金がいくように少しずつ変えていると、こういうのもありますが。これが、効果が出てくるまで、しっかり腰を据えて、現在の『3本の矢』の枠組みを堅持していくということ。それから、まだまだ足りない部分があるというご指摘も多々あろうと思いますし、まだできていない部分についてもしっかりこれから、この間にやっていくということによって、私は、日本経済、しっかり再生していけると思っています」
反町キャスター
「武者さん、いかがですか?」
武者氏
「この間の政策の最も大きな成果は企業収益の劇的な改善だと思うんですね」
反町キャスター
「なるほど」
武者氏
「経済の本質は企業がいかに富をつくるかです。この点でデフレ下の日本は非常に大きな困難に陥っていたんですね。ところが、この間の円高から円安への大転換、それから、株価の上昇などによるさまざまなポジティブな好循環が起こり、現在では企業収益は史上最高です。つまり、ダムで言えば、上流の水が満々と蓄えられている状態。しかし、依然として下流はまだ枯れ野原である…」
反町キャスター
「来ていない…」
武者氏
「しかし、いずれこのダムに蓄えられた水が下流に流れていくという、まさしくその大きな転換点にあり得ると思うんです。おそらく株価が相当上昇していくというようなことも通して、この下流が潤っていくという時代に入っていくでしょう。と言うことで、現時点で、結論を急ぐと言うよりは、おそらくこの量的金融緩和は2年、3年先に、ああ、すごく大きな効果をもたらしたということになると思います。ただ、日本の大きな問題は、企業が稼ぐ力があるのに、それが全体に波及しないというところにあります。その1つの大きな問題は雇用と、労働と、それから、資本との間に非常に大きな障壁があって、人も金も最適な配分がなされていない。つまり、人と金を、いわば飼い殺しにした状態にあるわけですね。ですから、いくら実力があっても、それが全体に波及しない、ここを変えるのが最も重要な成長戦略ですね。安倍政権はそこのところを意識しているとは思います。従って、私は十分とは言えないけれども、望ましい方向に向かって進んでいると思います」
反町キャスター
「木内さん、いかがですか?」
木内氏
「キャッチフレーズ的に言うと、私はインフレ期待を高めるよりも、成長期待を高める方が、ずっと人々の幸せにつながるのではないかなと思っています」
反町キャスター
「なるほど」
木内氏
「成長期待を高めるのは、実際の生産性が高まるとか、人口が増えて、潜在成長率が高まるということがないといけないわけで、それはちょっと金融政策の守備範囲ではないとは思うんです。政府がそういう潜在力を高めるような政策をやっていないかと言うと、そんなことはないわけで、ずっとやってきているのですが、それが本当に効果があるのであれば、表れているはずだと。確かに、構造改革というのは効果が表れるまでに時間がかかるので、と言うのは、それは確かなのですけれども、でも、その政策がすごく信頼されていれば、たとえば、5年先、10年先に生産性が増えます、あるいは人口が増えますと思えば、企業が現在から投資を増やすそうと…」
反町キャスター
「増やしますよね」
木内氏
「あるいは賃金を増やすわけですよね。そうすると、投資を増やすことによって、実際資本が蓄積されていって、潜在成長率が高まる形で、実現は前倒しできるんですね。そういう意味で、インフレ期待を高めるよりは、非常に信頼性の高い政策を打ち出して、成長期待を高める方がずっといいのだと。ですから、政策は、構造改革もやっているわけですが、ちょっとそこまでいっていないということで。問題としてはちょっとテーマが変わり過ぎるのかなと、なかなか企業が追いつくまでに…」
反町キャスター
「テーマが変わり過ぎるとは何ですか?たとえば、地方創生の次に1億総活躍と言ったりする…」
木内氏
「そのあと…」
反町キャスター
「あの旗の話?」
木内氏
「そうですね。それと、もう1つは、その中に、たとえば、『働き方改革』の中でも残業時間を減らしましょう、あるいは同一労働同一賃金、これは労働市場の環境を良くする、左寄りの政策なのか、それとも、それを通じて生産性を上げるのか、両方がどうもミックスになっているので、企業の方がどこに焦点を絞ってやっていいかわからないと…」
反町キャスター
「ほう…」
木内氏
「こういうところが、問題があるので。ちょっと良い政策もしていると思うのですが、それがちゃんと根づくような工夫と持続性、企業とのコミュニケーションをやっていく必要があって。それをやれば、結局、成長期待が高まるので、それによって投資も増える、また、賃金も上がってくるというのが、良い循環につながってくるのではないかなと思います」

武者陵司 武者リサーチ代表の提言 『創造性』
武者氏
「さまざまな観点があると思いますが、私は創造性、これを挙げたいと思います。経済は劇的に変わっているんですね。ロボット・AI(人口知能)化によって非常に人が余っている、あるいは我々の仕事がロボットでなくなってしまうかもしれない。他方で企業がドンドン儲かる、金利が下がる、このような新しい環境の下で、金融政策は昔と同じでいいわけがないですね、創造性が必要だと思います」

木内登英 前日銀政策委員会審議委員の提言 『1日でも早く正常化』
木内氏
「1日でも早く金融政策の正常化。金融政策は効果だけ追い求めていってはダメで、副作用とのバランスを考えなくてはいけないのですが。私は2014年ぐらいで副作用の方が上まわったと思っていますので正常化に向かう方がトータルで見ると国民にとってプラスだと思っています」

大塚拓 自由民主党衆議院議員の提言 『ブレない』
大塚議員
「2%の物価上昇、なかなか達成されないということではありますけれど、そこに向けていろいろ雇用もだいぶ改善してきて、あるいは生産性の改善余地というのもまだまだあるのだと言われていますけれども。だんだん状況がもう一息というところまできていると思いますので、ここで右往左往せずにもちろん、状況に合わせた少し修正は必要かもしれませんけれども、目的はブレないでしっかりとやっていくということが最後ゴールにたどりつくために必要かなと思っています」