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2017年10月31日(火)
『イスラム国』崩壊… 恐怖支配後の新章突入

ゲスト

宮家邦彦
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト
吉岡明子
日本エネルギー経済研究所中東研究センター主任研究員

過激派組織『イスラム国』 崩壊の経緯と今後
秋元キャスター
「中東情勢の行方について考えていきます。今月17日、過激派組織イスラム国が首都と称していたシリアのラッカをシリア民主軍が制圧し、イスラム国は事実上、崩壊しました。しかし、世界各地に残るとみられるイスラム国の残党や同調者によるテロの懸念、クルド問題など中東をめぐる問題は山積している状態です。中東情勢の専門家を迎えて、今後の情勢について話を聞いていきます。ちょうど日本人の人質が殺害された頃ですけれども、2015年1月時点のイスラム国支配地域、北海道の面積よりも広い、およそ9万1000キロ平方メートルを支配していたのですが、その後、戦闘でこの勢力圏は徐々に縮小していきまして、今月、ラッカが制圧されて、イスラム国は事実上、崩壊ということになりました。まず黒井さん、急速に勢力を拡大していたイスラム国、いつ頃から弱体に転じたのでしょうか?」
黒井氏
「2015年の1月というのはコバニという町まで攻める、その包囲戦でイスラム国が撃退され、勢いがある程度、ブレーキがかかったんですね。そのあと彼らに主にクルド人の反撃が始まって、クルド人の人達が2015年、2016年を通して、徐々にこのあたり、ずっと制圧していくわけですね」
秋元キャスター
「ええ」
黒井氏
「もともとこのへんはクルド人のエリアですけれど、こういった飛び地みたいな形でなってきて、特に昨年の春先ぐらいから、クルド人とアメリカ主体の有志連合の空爆の非常に大規模な作戦が始まりまして、かなりドーッとクルド・エリアが広がってきたという段階。このあたりに、マンビジュとか、ジャラブラスという町があって、そこの攻防戦があったのですが、このへんをクルド人が獲って、残ったエリアがこのラインだったのですが、このラインを、IS(イスラム国)側がもうダメだということになって、クルド人が獲りに入ったんですね。獲りに入ったのですけれど、そうなるとトルコとの国境を全部、クルド人部隊が制圧しちゃうことになるので、それを阻止しようというので、昨年の春…夏ですね、トルコ軍が介入して、このあたりをトルコのバックにいる反政府軍が押さえるという流れに出て、現在、クルド人の部隊というのはちょうどこの飛び地の部分とラッカの周辺からこの一帯にかけて現在、制圧しているという状況となってきたという段階です」
秋元キャスター
「いろいろな勢力が入り乱れて、結果的にイスラム国が萎んでいったと、そういう形なのですか?」
黒井氏
「そうですね。基本的には軍事力ですよ」
秋元キャスター
「ええ」
黒井氏
「イスラム国というのは、2014年6月になぜ急に強くなったかと言うとモスルというイラクの、モスルを攻撃した際、イラク政府軍が戦わずして逃げちゃったんですね。それで、政府軍の大量の武器を手に入れて、当時、シリアでもってアサド政権に対立するために来ていた外国人の義勇兵を吸収して、一気にブームになって大きな力を得た。ただ、彼らはもともと砂漠の奥と言いますか、辺境のゲリラ部隊の一派ですから、もともとそれほど大きな力を持っているわけではない。ただ、イラク政府軍も弱かったし、当時クルド人も弱かったし、シリアの反体制派も弱かったのである程度、勢いになったのですけれど、そこは米軍のテコ入れ、それから、イラク側に対してはイランのテコ入れもありましたので、それで押されていって軍事的な敗北を喫していった。特に有志連合の空爆とクルド人部隊の連携というものが大きかったと思います。あとはイラク側に関しての、このあたりの国に関しては、吉岡さんからお願いします」
吉岡氏
「南の方からも、イラクの政府軍がドンドン攻めてくる。北からクルドの部隊が攻めてくる、という形で、必ずしも協力した、協調していたわけではないのですけれど、それぞれに米軍が間に入る形で。イラクの場合は、シリアみたいに誰がイラクを治めるのかという内戦状態であったわけではなく、イラクのまがりなりにも政府があって、政府軍があったわけです。それが弱いからISに獲られてしまったと。ですので、イラクの場合ですと本来、強く国を治めていなくてはいけないイラク軍を、米軍、あるいはイランとかが支援してテコ入れすると。同じようにシリアもそうですけれども、地上兵力がないと米軍は空爆するだけですので、イラク軍だけで足りないのであれば、クルドの自治政府の部隊、クルド兵も使おうということで、そちらにも軍事支援をすると。北からと南からそれぞれイスラム国をドンドン追いつめていく、という形で結果的に今年の夏にモスルが落ちて。まだ完全にはクリアになっていないのですけれど、イラクの方もほぼイスラム国の支配領域は面単位で、町単位でと言うのですか、支配しているところはなくなりつつあると、そういう状況ですね」

バクダディ容疑者の生死は?
秋元キャスター
「そうした中でイスラム国に関してロシアの国防省が5月28日のロシア軍の空爆によって最高指導者のバグダディ容疑者が死亡した可能性があると発表しました。7月11日には、イギリスのNGO(非政府組織)、シリア人権監視団体がバグダディ容疑者の死亡を確認した情報があるということを明らかにしています。しかし、アメリカは死亡は確認できていないとしているのですが。さらに9月末にはイスラム国がバグダディ容疑者の音声とみられる録音を公開しているのですけれども。黒井さん、バグダディ容疑者の生死についてはどう見ていますか?」
黒井氏
「この人、何回も死亡説が流れているのですが。9月に音声の、時事的な話を織り込んだ音声が出ているので、生きている可能性が非常に高いだろうなとは思います。思いますけれど、イスラム国というのはトップにそれほどカリスマ性があって成り立っている組織ではないので、バグダディがいようが、いまいが実はあまり関係ないんですね。この人はトップに納まっている飾りと言うほどではないのですけれども、実際に軍事的なものをやる、プロパガンダ戦略を練っているのは、部下達であって、この人はある種の象徴的な存在ということです。彼はカリフ国と名づけているので、カリフというのは、イスラム共同体の長と言いますか、その統括者という意味なのですけれども。その人が誰かいればいいわけですね。この人でなければいけない、この人のカリスマ性でもっている組織ではないです」
秋元キャスター
「バグダディ容疑者が、生きているのか、生きていないのかということがイスラム国が今後どうなるかにそんなに…?」
黒井氏
「それほど関係ないと思います。イスラム国の指導部としては、仮にこの人が亡くなったら、次の人間をカリフとしてもってくるということで。世界中にいるイスラム国のシンパの人達というのは、そういったカリフ国というものに対してやっていこうということを考えていて。別にバグダディのために戦っている、個人崇拝というものではないということですね」
秋元キャスター
「そうすると、何で組織が成り立っているのですか?」
吉岡氏
「それはイデオロギーですよね」
宮家氏
「組織はなくていいですよ」
秋元キャスター
「組織がなくていい?」
宮家氏
「組織がなくていいし、領域がなくてもいいです。イデオロギー、すなわち思想があればいいんです。思想があればテロの理由になるし、それがあればインターネットで同時に世界中に広げることができるわけで。領域がなくても、組織がなくてもテロは生き残る、その典型だと思いますよ。ですから、イスラム国がどうなろうとテロの流れというのは別の理由で続くと思います」

『イスラム国』崩壊… テロ脅威の行方は?
秋元キャスター
「イスラム国には世界110か国から、およそ4万人の外国人戦闘員が集まっていたと推計されているのですけれども。アメリカのシンクタンク、Soufan Centerの報告書によりますと戦闘員の出身地、このようになっていまして、最も多いのはロシアです。戦闘員数3417人そのうち400人が既にロシアに帰国したと見られています。続いて多いのがサウジアラビアで戦闘員数が3244人そのうちの760人が帰国していると。以下、このような数字になっているのですけれども、全部合わせますと、帰国した戦闘員、全部で5600人程度と見られているんですね。宮家さん、この各国の戦闘員数と帰国者数は…」
宮家氏
「これは、帰って来て、お帰りなさいと言って、そのまま住んでいるわけはないから、どこかで隠れているのか、それとも何らかのサーベイランスをちゃんとしっかりと見ているのか、わかりませんけれど、私が読んだ記事よりも意外と帰っている人が多いかな。ただ。ここで帰って来たからと言って、たとえば、イギリスで850人しか行かなくて、400人帰って来た、そうしたら何やっているのだろうと思いますよね。そういう意味では、ちょっとこれだけでは、亡くなった人達もいるでしょうし、私はわかりにくいけれども。ただ、恐ろしい数字ですよ」
黒井氏
「特にヨーロッパの治安当局はこれを1番警戒していまして、帰って来たはいいのだけれども、何か罪状があれば捕まえちゃうし、なかなかそれがなければ監視下に置くということをやって、ある種のスクリーニングみたいなことをやるのですけれども。中の多くは、自分達は何もしていなかったとか、自分達は悔い改めている的なことを言うわけですね。それで何とか逃げようという人は多いみたいです。ただ、そうではない人はもちろんいるし、そういった、悔い改めたみたいなことを言っている人も本心でどうかはわからないですから、そのへんを監視し、治安当局側はかなり警戒を強めていて。しかも、IS側も現在、本国でちょっと弱いですから、とにかくそういったところに来いと言うことはやめて、自分達のところでジハードをやれという言い方にドンドン、シフトして変えていっているので」
秋元キャスター
「戦闘に呼び寄せるのではなくて、自国でがんばってくれと?」
黒井氏
「はい。それはもうだいぶ前からなのですけれども、特に今回に関して現在、彼らは自前の、あまり宣伝する材料がないものですから、勝っていないですから、それも含めて、アピールするメディア部門があるんです、そういったところはしきりとそういったことを呼びかけていて。ヨーロッパの方ではかなりテロの警戒、ただ、実際は、テロが起きるのはだいたいホームグロウンが多いですよね。だから、そういったものも含め、何かそういったつながりができれば、1番怖いということで。フランスはかなり厳しい法律改正をして、戒厳令をその代わりにやめるという話ですけれども、テロ対策を、かなり厳しい法律で治安を見ていこうと動いていますよね」
秋元キャスター
「吉岡さん、この数字をどう見ていますか?」
吉岡氏
「もともとヨーロッパで、いわゆるこういう過激派が活動しやすいのは、言論の自由があるからですね。中東諸国だと、たとえば、政府にとって思わしくない、過激派も含めて、思わしくない言論は全部弾圧というのは、1つの手段としてできるわけですけれど、ヨーロッパとか、アメリカとか、そういったことは当然しませんから。そうすると、言論の自由という中で、過激派の過激な説法が許されてしまったり、見逃されてしまったり、そこを弾圧するのがためらわれたりということが、難しいところですけれども。彼らが勢力を拡大するのに利用されてきたという側面はあるんです。ですから、欧米の方でも難しい判断ではありますけれども、そういう過激な説法を行うような人達をちゃんとマークするという、そうした地道な諜報努力というのは、これまでもそうですけれども、今後もより必要になってくるのだろうとは思いますね」
秋元キャスター
「黒井さん、この帰国した人達というのは、自国の、それぞれの国の中である程度ネットワークみたいなものを築いていくというのはあるのですか?」
黒井氏
「そういう流れというのは、実はあまりわかっていないのですけれども。実際にたとえば、ホームグロウンがあった時に、彼らに影響を与えた人間は誰かと言うと、そういうのに説法師がいるわけですね。いない場合もあるのですけれども、そういったネットワークのどこかに帰って来た人がいるというパターンはあるみたいですが、ただ、その人達が中心になって、いわゆる工作員みたいな形でネットワークをつくって、テロを起こそうというのは、おそらく考えている人はいるとは思うのですけれど、現在のところ、治安当局が何とか抑えている段階かなと思うんですね」
秋元キャスター
「うーん…」
宮家氏
「彼らも帰って来て、私は、イスラム国帰りでございます、イスラム国の代表でございます、ということをしないと思うんですね。1個人として体制なり何なりに不満を持っている人として帰って来て、もうシリアではやれることはやったと、だけど、また違うことを、タイミングを見てやろうと、その間は寝ていると、静かにしていると。しかし、いつの間にかまた状況が変われば、ムクッと起き上がる。その時にホームグロウンと一緒に、もしくはその人達と連携をとりながらということは十分あり得ると思いますね」
秋元キャスター
「アジアにも今後、飛び火していくという可能性はあるのでしょうか?フィリピンで、ミンダナオ島ですね、ISの戦闘員がこう戦闘して、死者も大勢出ているという状況がありますけれども。今後そちらの方に広がっていくというのは?」
黒井氏
「既にあるのですけれども、2000年代のアルカイダの時にもインドネシアとかで大きな事件はありましたが、それはとにかくコアとなる人物がどれだけそこに出てくるかというのによるんですね。もちろん、アジアにもそういうIS帰りの人もいれば、シンパもいますので、その中に1人か2人、3人か4人ぐらい、すごくやる気のある、行動力のある人間が出てくると、そういったことが当然起こり得ると思います」
秋元キャスター
「宮家さん、アジアに広がる状況というのをどう見ていますか?」
宮家氏
「ただ、アジアには大きなイスラムのコミュニティがあるということですよね。フィリピンにもあるし、マレーシアにもあるし、どこで起きると言っている意味ではないですよ。インドネシアにもありますよね。タイにももちろんある。そういった広がりがあるということと、それから、本当に思想ですよね。イスラム教徒が皆、テロリストではないですよ。しかし、イスラム教徒の中で、いわゆるジハーディズム、その聖戦、現状がある意味で不公正であって、不正義であって、イスラム教徒はそれに対して努力をしなければいかん、それをジハードしなければいかん。そのジハードがおそらく曲解されて、テロに転化していった場合には、これはもうどこでも何でも起こり得るわけですよ。ですから、現在、我々、ISのことしか考えていないけれども、つい数年前まではアルカイダというのがあったではないですか?」
秋元キャスター
「ありましたね」
宮家氏
「と言うことは、ISのことを皆、忘れても、それはまたブランドを変えて、やる人間が状況を変えて生き残ろうとすると思います。アルカイダであれば、どちらかと言うと、戦場は外国で、アメリカを狙ったりしましたよね。それに対して、イスラム国の場合はもちろん、外国でもやるのだけれども、領域を獲ろうとした、中東の中に何かものを残そうとした、これも1つの流れですよ。2つの大きな流れがありますから。これがまた形を変えて、外へ出て行く、しかも、これまで誰もやったことのないような方法でやっていくということはこれからも十分考えなければいけない問題だと思います」
秋元キャスター
「なくならないにしても、テロを少なく、少なくと言うのもアレなのかな、どうやったら減らせると見ていますか?」
黒井氏
「これからのテロ、イスラムのテロに関しては治安対策の世界と言いますか。1つにもちろん、そういった啓蒙的な活動も必要なのですけれど、当局側としては、いわゆる犯罪対策として封じ込めていくという。それで、テロで何か大きな事件が起きますけれど、テロで何か社会が変わるなり、社会運動みたいなものが発生するところまで、おそらくは暫くないので、跳ねかえりみたいな人のつながらないような治安対策をしていくしかない。ただ、難しいのは、つながっていなくてもやる人もいるし、ネットワークだけではないので。その他、これまでのいろいろなネットワーク系のテロに比べると、かなり治安対策が難しいのは現実ですよね」
秋元キャスター
「吉岡さん、どう見ていますか?」
吉岡氏
「1つは、イスラム国が今回、シリアとイラクで一時期大きな勢力を築いたことの理由の1つは、シリアは内戦状態にあり、イラクの中央政府も非常に弱い状態で、要するに、そこの軍とか、警察がきちんと守れないから、こういうテロ組織が出てきたわけですよね。同じことは他の地域にも言えて、たとえば、エジプトのシナイ半島、エジプト全体は別にちゃんとエジプト政府はいるわけですけれども、シナイ半島に限って言えば、そこまでエジプト軍がちゃんと治安維持をできていないという状況があります。そうすると、もともとそこにいた過激な人達がイスラム国と合流するような形で、イスラム国ブランド、そこである種、領域統治ではないですけれど、なかなか政府が手出しできないような状況になりつつあるというのがあります。ですから、それは別にエジプトに限らず、中央政府、あるいはそこの行政機関とかがキチッと統治できていないところというのが、まさにテロリストにとって活躍しやすいところになるということは注意すべきかと思いますね」
秋元キャスター
「宮家さん、日本はテロの心配、どれぐらい心配したらいいのでしょう?」
宮家氏
「私はすごく心配しているんですよ。すごく心配している」
秋元キャスター
「ああ…」
宮家氏
「だって、いつも言うのですけど、テロリストというのは白馬にまたがった騎士ではないですよ。正々堂々と戦うのではないんですよ。彼らは卑怯な人間で、最も脆弱なターゲットに対して最も残忍な方法で破壊し殺害しですよ。最大のショック、最大の恐怖とショックを与えることで、政治的な目的を達成しようとする卑怯者ですから。彼らが、我々が万全だと思っているところは狙ってこないですよ。日本の現在の、幸い日本は島国だから、水際もできるし、警察も立派だし、国民の教育水準も高いから、ないと思いますよ。ないとは思うのだけれども、私がもしテロリストだったら、それは、たとえば、東京オリンピック、要するに、インパクトが大きいものは当然、考えますよ、やるかどうかは別として。ですから、これから2020年に向かって考えた場合に日本がまったくそれは関係ない、それは海の向こうの話だと考えるのはちょっとナイーブだと私は思う」

イラク情勢とクルド問題
秋元キャスター
「さあ、イスラム国崩壊後のイラクについて、クルド独立問題が大きな問題となっているのですけれど、クルド人、現在、トルコ・シリア・イラク・イランなどに居住していまして、国家を持たない最大の民族と言われていて、総人口が2000万人から3000万人、イラク人口の、3720万人のうち、489万から652万人と見られているのですけれども。吉岡さん、そもそもクルド人がなぜこのように中東各地に分断されている状況になってしまったのでしょうか?」
吉岡氏
「現在の中東の国境線が引かれたのは全部ではないのですけれども、多くは第1次世界大戦後にオスマン帝国が戦争で敗れて、そのあとにイギリスとか、フランスとかが中心になって引いた国境線が割と元になっているんですね。もちろん、彼らだけではなく、当時のオスマン帝国から、現在のトルコ共和国になって盛り返してきてからも、国境線をちゃんと確定したいというのがありますし、イラクとか、シリアとか、ヨルダンとか、線引きをしていく中で、石油が見つかれば、ここはこちらに入れようになってきます。そうした線引きの中で、このクルド人というのは自分達の国を持てなかったわけです。クルド人の定義もちょっと難しいところではあるのですけれど、クルド語を喋る人達、同じ歴史や文化を持っていると認識をしている人達ですね」
秋元キャスター
「宗教的には?」
吉岡氏
「宗教的にはイスラム教徒が多いです。スンナ派もシーア派もいますし、でも、マイノリティの宗教の人もいますので、必ずしも一様ではないですね。現在、国境線が引かれた結果、彼らはいろいろな国を分断されることになったわけですけれども。線引きが引かれてしまってから100年経っていますので、同じクルド人と言っても、同じクルド人同士の同胞意識みたいなものはあるわけですけれど、実際にクルド人が、イランに住んでいるクルド人も、トルコに住んでいるクルド人も皆、ある種、一体の行動をしているのかと言ったら、そういうことではなくて、イランの中でイラン人としてイラン国内に溶け込んでいる普通のクルド人もいますし、逆にイラクで結構盛んですけれども、クルド人の国を持ちたいと思ってある種、民族活動をしている、民族主義に基づく活動をしている人達もいます。それはクルド人と言っても一様ではないですね」
秋元キャスター
「うーん、そういった結果で各地に分断されているクルド人ですけれど、イラクにおいてはクルド人自治区ということで自治区があるわけなのですが。これはどういった経緯をたどって、自治区という形になったのでしょう?」
吉岡氏
「もともとクルド人が自分達の自治がほしい、将来的な独立国家がほしいというのは1960年ぐらいから結構盛んになってきて。当時は武装闘争、ゲリラ闘争を反政府組織としてやっていたのですけれど。でも、ある時に和平交渉を結んでみたり、それがうまくいかなくてまた戦闘になったり、そういうことを繰り返してくる中で、特にサダム・フセイン政権から結構酷い弾圧を受けたということが、彼らの被害者意識を醸成して、国を持たないと自分達は完全に自由になれないというのが、醸成されてきたというのが1つあります。現在の自治区を持つに至った経緯は、これは棚ぼた的な感じで、湾岸戦争があって、イラクがクウェートを攻め込んだのですけれど、攻め込んだイラクがアメリカを中心とする多国籍軍にクウェートから追い出された、国連の経済制裁を受けてしまったと。イラクという国家が弱体したことによって、当時、フセイン政権は北側のクルド人の反政府勢力が多かったところを1度手放したわけです。統治のコストがかかるということもありますので、公務人にお給料も払わない代わりに統治もしない。と言うことで、そこが事実上の自治区みたいになったというのが現在の始まりです。ですから、スタートは1990年代の初めぐらいですので、25年ぐらい前ですかね。それがイラク戦争を経て、フセイン政権がなくなって、新しいイラクをつくりましょうとなった時に事実上、自治区みたいになっていたクルド人のその場所を正式な自治区として承認し、イラクの一部にしましょうと。一応、建前としては、クルド人は自治区、自治権を持ったわけですから、それをもとにイラクの国家に包摂されたということで、クルド人はクルド人の民族主義の勢力も自分達は自治区という存在を自分達のゴールとして、イラク人として一緒にやっていくのだというのが2003年以降、やっていたわけですね。ただ、それがなかなかうまくいかなかったと。クルド人側にもイラク政府に不満がある、イラク政府としても自分達がちゃんと支配できない自治区に対して不満がある。そういったものがずっと2003年以降も積み重なってきた古くて新しい問題なのですけれど、少数民族問題というのは昔からあるのですけれど、イラクの2003年以降の新しい国を建て直すという中で、この少数民族の問題をどうするかというのが、解決できていないというのが、現状ですね」
秋元キャスター
「クルド人自治区においてはどういう権利が認められているのですか?」
松岡氏
「かなりの権利があります。国家の主権に関するような、国防とか、関税とか、国境管理とか、外交とか、そうした、天然資源とかは中央政府が管轄しています」
秋元キャスター
「それはイラク政府がやっている?」
松岡氏
「そうですね、なっていて、逆にそれ以外は全部あるという感じで、自治区の中には自治政府があり、自治区の議会があり、裁判所があり、警察がいて、軍隊があってと国としての機能はほぼ果たしていると。かつ2003年以降、イラクが非常に不安定で治安も悪いですし、国が安定していないということで、スキを突く形で、自治区の方が主権に関わるところもドンドン自分達が既成事実をつくってきたんですね。自治区の中にある石油資源を自分達で開発をして、輸出するとか。あるいは外交も、バグダッドに各国、大使館を置いていますけれど、アルビルという自治区の中心都市に皆、領事館を置いているわけです。そうすると、領事館の外交官を事実上、大使のような扱いで、総領事を大使のような扱いで、2国間関係ではないですけれども、クルド人自治区とその国との関係を築くとか。そうした主権に関わるところも、かなり積極的に開発していって事実上、国のように振る舞ってきたというのがあります」
秋元キャスター
「それでも独立に向けて動きたいという?」
吉岡氏
「そうですね。主権がイラク国家側にあると、いざという時にイラク政府はいろいろな措置をとることができるわけですね。まさに現在、独立を問う住民投票を行って、反発が強まった結果なのですけれど、たとえば、国際線を止めるとか、あるいはどこまでが自治区の領土かというのも決まっていないので、それもきちんと自分達が、クルド人が歴史的にクルディスタンの一部、クルド人の土地の一部だと思っていたところをちゃんと自治区の中に含めたうえで独立国家になることによって、ある種、普通の国が持っている権利を自分達も普通にほしいと。常に中央政府の意向を気にして、中央政府が賛成しないといろいろ問題が起こるというのではなくて、普通の国が行っているように、外交も国防も石油資源の開発も自分達の手で行いたいというのが基本的な彼らの願いですね」
秋元キャスター
「そういう中でイスラム国の弱体化に伴って、この独立問題というのが浮き彫りになってきたということなのですか?」
吉岡氏
「そうですね。ちょうど2014年にイスラム国が勢力を広げて、モスルを落とした時に、先ほども話がありましたけれども、イラク軍が逃げてしまったんですね。イラク軍が逃げた結果、イスラム国が領土を広げたわけなのですけれども。そこに、イスラム国が来る前の問題として自治区の境界線の話があって、イラク軍がいるところとペシュメルガというクルド人部隊がいるところがミックスしてあったわけですね。でも、そこはどちらのものかまだ決まっていないままずっと10年ぐらい経ってしまったと。でも、イラク軍が逃げてしまったので、これ幸いと、クルド側はそこの土地をとったわけですね。イスラム国との戦いにおいてもクルド勢力としてはペシュメルガが、クルド人が住んでいるところは自分達が前線で戦うと。戦った結果、とり戻した土地はイラク政府に渡すのではなくて、自分達が押さえると。イラク政府も当然ながら戦ってイスラム国を追い出したところはイラク軍が押さえるわけですけれども。そうすると、イスラム国がいなくなったあとというのは、ここまではイラク軍の土地で、ここまではクルド兵、クルド側がとっている土地でという形になってきたわけです。そうすると、クルド人はこれまで自分達が歴史的な土地の一部だと思っていたけれども、自治区の中には入っていなかったという、まさにそこの地図で言うと、薄いピンクのところに相当するところですか」
秋元キャスター
「この部分?」
吉岡氏
「そのへんですか。そのへんのところを自分達がとることができた。そうすると、もう実効支配をしたのだから、いよいよこれでもって独立ができると、彼らは考えたのだと思います」
秋元キャスター
「その独立に向けた動きなのですけれど、先月25日にクルド自治区内でイラクからの独立を問う住民投票が行われまして、投票率がおよそ72%、賛成がおよそ93%ということだったのですけれども。しかし、今月の25日にクルド自治政府はイラク政府に住民投票の結果凍結を提案しました。クルド自治政府トップのバルザニ議長が混乱の責任をとって辞任するという意向を表明したということなのですけれども」
吉岡氏
「緻密にイラク政府側とちゃんと協議をして、こういう形で独立をしましょう、いいですか、いいですよという確認ための住民投票ではなかったわけですね。イラク政府の意向はさて置き、自治区の中だけで自分達は独立するのだと、イラク政府の言うことを気にせずに自分達の独立の決定をできる自由な国になるのだということを煽って、やったわけですから。一般の市民はそんなに詳しい政治状況を知りませんから、割とナイーブに、あっ、いよいよ独立できるのだと思って投票所に行った人もたくさんいますし、あるいは懐疑的に思いつつも、でも、独立したいですか、と聞かれたら、それはいろいろな問題があるかもしれないけれども、したいかと言われれば、もちろん、YESだと言う人は圧倒的なわけですね。ですから、本来ならばきちんと政策として、こういう条件でイラク政府と話し合います、こういう道筋で今後こういう手段をたどって独立国家にいずれたどり着きますというふうな、その政策を問う投票ではなかったわけですね。もちろん、それに反対する人もいて、ちゃんとイラク政府と話し合ってからやった方がいいと、欧米は皆、反対していましたから、住民投票をやるのに。そういうのを踏まえて、そこにそういう意味で、住民投票に反対と言う人はいるのですけれども、主導した勢力が非常に国民の民族感情を煽ったわけですね。でも、それは与党がそれを主導したのですけれど、そこに主導されてしまうとこのやり方ではうまくいかないかもしれないという反対は出しにくいわけですね。独立に反対するのかと言われると、言いにくい」
秋元キャスター
「そうですよね…」
吉岡氏
「と言うのがあって、それもあっての希望を込めた92%だったのかなと思います」
秋元キャスター
「この住民投票、賛成多数を得ていながら、結局、撤回するということになるわけですけれども。これはどう見たらいいのですか?」
吉岡氏
「これは結局たくさんの見間違いがあって。まさに住民投票を主導したクルドの与党の方ですけれども、彼らがいろいろな結果を甘く見積もっていたのだと思うんですね。自分達は92%の人、90%の人が独立したいと言っているのだから、それが民意なのだから、イラク政府もそれを踏まえて話し合いをせざるを得ないだろうとか、あるいはこういう民意があるのだと言ったら、民主主義を重んじる欧米諸国もクルドの味方をしてくれるだろうとか、そうした読みは結局、外れたわけです。だから、アメリカはギリギリまで住民投票をやらないようにと、やれば、混乱の種になるから、もし今とり下げたら、アメリカが仲介して、イラク政府と独立に向けた話し合いの場を設けてあげますということを言っていたのですけれど、いかんせん遅かったんですね。その国民の感情がかなり、国民というか住民の感情をかなり煽ったあとでしたから、住民投票の2日ぐらい前にそのアメリカの最後通告がきたのですけれども、1か月前にきていれば飲んだ可能性はあると思うのですが、直前に言われてももう引き下がれないところまできていましたし、そうした計算ミスが重なった結果、自分達が弱いと思っていたイラク政府が意外と強かったと言いますか、その反発が大きかったんです。かつクルドの中も1枚岩ではないので、その主導していた与党の方としては少々の反発は覚悟のうえだったかもしれないですけれど、どちらかと言うと、そこに賛成していなかった野党側と言いますか、クルドの1部の中でも独立国家にはなりたいとクルディスタンは独立国家になるべきなのだけれど、自分達が目指している国家は現在の与党が1党独裁体制を敷いているような、そういうクルディスタンではないという人達が結構いたんです。そういう人達にとって見れば、独立に賛成か、反対かと言ったら、賛成と言うしかないのだけれど、でも、自分達が求めている国家はこれなのかという不満があり、疑問があり。住民投票をやったあと誰も、周辺国も国際社会も味方してくれない中で、イラク政府とか、イランとか、トルコからドンドン圧力が高まってくるとちょっとイラク政府と話し合った方がいいのではないかと話し合った結果、結局、その足並みが乱れるわけですね。イラク政府の圧力を受けてキルクークを手放してしまうと。ガタガタ、ガタと軍事的にも負けてしまうということになってしまったんですね」
秋元キャスター
「ますます混乱という感じがしますけれども…」
黒井氏
「イラク政府軍の動きが速かったですね」
吉岡氏
「そうですね」
黒井氏
「もうちょっと交渉みたいなもの、圧力をかけてからと思ったら、意外と素早く、国民投票のあと、えーと、住民投票のあとに軍を動かしてキルクークをある種、奪取したわけですね。クルド側も戦争…、1部でちょっと衝突はあったのですけれども、政府と戦争してまでもという、全体的なことだったと思うんですね」
秋元キャスター
「宮家さん、ますます混乱…」
宮家氏
「大失敗ですよ」
秋元キャスター
「そうですよね?」
宮家氏
「大失敗です。バルザニの失敗ですよね。引退するのだから、何を血迷ったのか知らないけれども、これはクルドの歴史に禍根を残す、ヘタするとですよ、これで済めばいいけれども、これで済まない可能性がある。なぜかと言うと、野党与党もあるけれども、実は若いジェネレーションの方がはるかに独立の思考が強いんですよ。あれだけ煽ったでしょう。ですから、これは元に戻らんですよ。イラクはサダム・フセインがいなくなった時からわかっていたことです、これはある意味で、起こることは。それを皆で避けようとしていて、クルドのリーダーシップも皆、シニアの人達は皆、それは大失敗だということをわかっていたにもかかわらず、タラバニという大統領が死んじゃって、それが左右したのかどうかしらないけれども、バルザニが大失敗したということですよ」
秋元キャスター
「今後のイラク情勢というのはますます?」
宮家氏
「これで、タダで済まないですよ、これで収まるはずはありません。この反作用が必ずどこかからくるはずです」

シリア情勢とクルド問題
秋元キャスター
「今回過激派組織イスラム国が首都と位置づけていました、シリア北部のラッカを制圧したのは、アメリカ軍が支援をするクルド人主体の民兵組織、シリア民主軍でした。黒井さん、シリアにも北部にクルド人居住地域があるわけですけれど、シリア国内のクルド問題というのは、これまでどういう状況だったのでしょうか?」
黒井氏
「ですから、内戦の中で、特にアメリカ軍の支援を受けてですね、ISを放逐したいわゆる立役者がクルド人だったものですから、大きな勢力を持って、もちろん、クルドもそれをある種その自治、彼らは独立とまでは言っていないんですけれども、自治を確立するチャンスと見ているわけですね。そういったもので勢いをつけていく。ただ、その問題はやっぱりトルコとの関係で…」
秋元キャスター
「ええ」
黒井氏
「シリアのクルド人が中心になっている民主統一党というのは、トルコのクルド労働者党の分派ですね。もともといわゆる左翼系なのですけれども。そこが中心になって、ISを放逐して、現在、勢いを持っているのですけれども。こちらはトルコ政府とトルコ…クルド、クルド労働者党、PKKが、もう長年にわたるそのテロの応酬と言いますか、対立関係にあって宿敵ですね。それの姉妹組織であるシリアのクルド勢力が力を持つことに対してトルコは看過できない、トルコから見れば。そこが、力を持ってしまえば、いわゆる敵対しているPKKのある種、聖域ができてしまうと、シリアの中にと。これは許さんぞ、ということで、何とか息を止めたいということで、トルコが介入してきていると。ただ、アメリカはもともとNATO(北大西洋条約機構)でトルコの同盟国のはずなのですけれど、イスラム国と戦ううえで、クルド、PYDにかなり頼ったわけですね、ここの軍事部門に協力関係を結んでいますので、トルコとアメリカはちょっと微妙な関係になっていまして。現在トルコはどちらかと言うとロシアと話をつける話の流れになっているのですけれど。そういう意味で、ちょっと複雑な関係になっています。ただ、トルコはおそらく現在トルコもシリアに小さいですけれど部隊を派遣して、最初はアルカイダ系の過激な組織をやっつけるのだみたいな、名目で入ったのですけれども、実際はそこと戦闘をせずにシリアの中のクルド部隊を睨みつける場所に陣取っているわけです。トルコとしては、そこの国境地帯でもって、少なくともユーフラテス川の西側に関しては自分達の力の、息のかかった反体制派でもって押さえたいということでの介入をしているという状況ですね。もっとたくさんあるんですよ。反体制派でも、ただ、大きく分けるとこんな感じになっていて。シリア政府のアサド政権というのは、ロシア・イランが非常に強力に支援しているので現在、軍事的にはかなり優勢にある。大きな主力として出てきたのが、シリア民主軍というISを放逐した部隊ですね、これの主力になっているのがクルド人民防衛隊という、先ほどのPYDの軍事部門ですね。そちらの方が大きな力を持ってきていると。他に、反体制派というのがいくつかありまして、解放委員会、HTSというのはもともとそのアルカイダ系と言われた、反IS、反イスラム国のもう1つのイスラム過激派、ここがシリアの北西部でかなり勢いを持っていると。それから、トルコ系の反政府軍というのは、いわゆる国境地帯にトルコのある種、傭兵部隊みたいな形の部隊がいると、あとその他というのは無数にいるのですけれども。このへんがそれぞれの思惑で戦っていて、なかなかこのあとが見えてこないという状況…」
秋元キャスター
「宮家さん、このシリア国内の勢力図をどう見ていますか?」
宮家氏
「要するに、いろいろ細かいことはあるのだけれども、1番わかりやすい方法は、イラクには中央政府があります」
秋元キャスター
「はい」
宮家氏
「それなりにしっかりとしています」
秋元キャスター
「うん」
宮家氏
「クルドの部分は自治区なのだけれども、最近ちょっと混乱をしているけれども、一応、統治国家としての体は成しているんです。でも、シリアについて言うと残念ながら統治国家の体を成していません、残念ながらバラバラだし、ロシアが介入している。外国が介入するというので、ロシアが介入するということは、これは別にアサドが好きだから介入しているわけではなくて、これはアメリカに対してメッセージを送るためにというか、ロシアの言うことを聞かなかったらメチャクチャになるよというのを見せるためにやっているわけなので。シリアはおそらくイラク以上に解決しないと思う、ロシアがいる限り。ロシアはなぜかというと、シリアの問題を解決する前に、まずは経済制裁解除して、クリミアの事件、あれもチャラねと、こう言っているわけですから。私はシリアの方が深刻な問題、中央政府もダメ、外国が介入し、その解決のメドがまだ見えてこないというのは、シリアの方が深刻だと思う」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言 『・イランを封じる ・ロシアに圧力 ・トランプをおだてる』
黒井氏
「3つ、イランを封じる、ロシアに圧力、トランプをおだてる。イランは、シリアもそうですし、イラクでも、イランが暗躍して物事をグチャグチャにしているということが非常に多いです。ですから、イランをなんとか国際社会の圧力でもって、圧力をかけていく。それから、ロシアに関しては、プーチンさんが軍事力をもって、シリアに介入していますので。ただ、ロシアは経済的に現在、苦境に立っていますから、そういった部分で圧力をかけて、プーチンさんに少し手を引かせるということ。それから、アメリカは暫く何もしないとは思うのですけれども、トランプさんをおだてて、少しでもやってもらうと、彼は批判すると引いちゃうのですけれども、反発するのですけれども、おだてる、ことをしたいなと思います」

吉岡明子 日本エネルギー経済研究所中東研究センター主任研究員の提言 『妥協』
吉岡氏
「妥協と書いたのですけれども。妥協と言うと、言葉が悪いですけれども、歩み寄りと言った方がいいかもしれないですけれど。対IS戦、イスラム国の過激派対策というのは万人の敵ですから非常に合意しやすいわけです。誰にとっても敵ですから、皆が攻撃をすると。ただ、ISがいなくなったあとのイラク、ないしはシリアということを考えると、結局そこには地元の人が残されるわけですね。皆が同じ国家像を持っていないと。どんなイラクにするのか、どんなシリアにするのかもそうですけれども。結局、そこでは誰かがすごくハッピーになるということは結局、誰かに不満が残るわけですね。結局のところ、どこかでお互いその国でやっていく、独立するにしても、しないにしても、ですけれども。クルド問題にしても仮に独立するのであれば、どこを諦めてイラク政府と交渉するのかということも必要ですし、イラク政府もどういう形でクルド人の問題を解決するのかというと、結局そこでお互いに何かを諦めなければいけないこともあるわけですよね。そうした意味では、ポストISというのはまさに国家づくりですから、より政治的な歩み寄りと妥協が必要になってくるのだと思います」

宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の提言 『やれる事は(殆んど)ない!』
宮家氏
「お二人のおっしゃる通りなのだけれども、私は、敢えてやれることはないと。確かに、イランも問題、ロシアも問題、トランプさんをおだてたら最高、妥協ができたら最高、でも、できない、まず第1に。仮にできたとしても、1つの解決というのは、他人にとっては、それは不正義ですよ。その悪循環を断ち切れる自信が私、ないです、これだけ秩序が壊れてしまった以上。ですから、当分いくところまでいく、そのあとでまた考えると。私は、非常にペシミスティックな、悲観的な見方で申し訳ありませんが、長くやり過ぎたせいかもしれません」