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2017年10月2日(月)
民進・希望『合流』か 与野党が『政策論戦』

ゲスト

櫻井よしこ
ジャーナリスト 国家基本問題研究所理事長
井上達夫
東京大学大学院法学政治学研究科教授

櫻井よしこ×井上達夫 民進・枝野『リベラル派』結集へ
秋元キャスター
「先週木曜日、衆議院が解散し、事実上の選挙戦がスタートしました。自民党では今日、総選挙に向けた公約が決定し、憲法改正については自衛隊明記が盛り込まれることとなりました。一方、今回の選挙で野党再編の台風の目となっています希望の党ですけれども、公認候補について安全保障政策や憲法改正に対する姿勢で選別する方針を掲げたことで混迷を極めています。今夜は、憲法改正と安全保障の観点から総選挙で問われる争点について議論します。今日、民進党の枝野さんが新党の結成を表明しました。希望の党とは理念・政策が異なる、だから、新党結成だということなのですが、櫻井さん、枝野さんのこの動き、どのように見ていましたか?」
櫻井氏
「私、民進党の状況を見ると、これはいろいろありましたけれども、良い方向へいくのではないかと思うんです。枝野さんもおっしゃっていたけれども、理念というものを曲げられない、この方達は護憲だし、どちらかと言うと左翼と言うか、今日はその左翼とか、右翼の話を井上さんともするのでしょうけれども」
反町キャスター
「どうぞ…」
櫻井氏
「するのでしょうけれども、あの左の方達と、民進党は右の方達と、本当に同居していたわけですよね。水と油のような人達が一緒になっていて、常にどちらが主導権をとるかということでせめぎ合ってきて、ドンドン民進党は非現実的な方向へいっていたのですけれども、ここではっきり2つに分かれれば、私は全体のためにはいいと思うんです」
反町キャスター
「枝野さんは、これまで民主党や民進党で行われた憲法論をブラッシュアップすると今日、会見で言いましたよ」
櫻井氏
「うん」
反町キャスター
「これまでの民主党や民進党の中には何があったかと言うと、保守系の議員もいれば、リベラル系の議員もいて、その中でバランスをとるということで、たとえば、憲法についてはそれなりのバランスをとった党の決定…」
櫻井氏
「うん」
反町キャスター
「つまり、傍から見れば何も決められないということになるのだけれど、彼らは彼らなりにバランスをとった、保守系議員とリベラル議員のバランスをとったものが党の方針になってきました」
櫻井氏
「うん」
反町キャスター
「今度のこの立憲民主党というのは、保守系はいない、非常にある意味においては、考え方として固まりやすい党になると思うのですけれども。結果、この党がどういう憲法に対する姿勢を強く打ち出してくるのか?社民党や共産党とほぼ変わらないような政治手段になるのかどうか?そのへんはどう見ていますか?」
櫻井氏
「人が変われば、政策も変わりますので。護憲政党の方に近づくのだろうと私は思います。この方達の立候補を待って、共産党も協力しますよということで間口を開けて待っているわけでしょう。それとここで共産党と社民党はいくつかの選挙区で協力態勢を組むことにしましたよね」
反町キャスター
「しました」
櫻井氏
「オール野党を諦めてね。そこに枝野さん達が協力関係を築けるところは築いていくのだろうと思いますね。するとどうしてもペースは共産党ペースにならざるを得ないですよ」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「だって、組織力にしても、何にしても、共産党がダントツですからね。だから、私はかなり旗幟鮮明にそちらの方へいかれるのではないのかなという感じはいたします」

総選挙『小池旋風』と各党の理念
秋元キャスター
「小池百合子東京都知事が先週月曜日に希望の党を旗揚げし、自ら代表に就任することを宣言してから、選挙戦を睨んだ政治情勢が大きく動いているわけですが、その小池代表、民進党出身者の選別の基準について、このように話しました。『安全保障・憲法観といった根幹部分で一致していくことが、政党を構成する構成員として必要最低限のこと。一致しない場合は排除いたします』ということなのですが。そもそも小池さんが、この安全保障・憲法観が一致しない場合、排除するという選別の基準を設けたことが民進党の割れるきっかけになったわけです。櫻井さん、この点については?」
櫻井氏
「前原さんと小池さんがどういう話をしたのかがそもそもわからないですよね」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「だって、前原さんは本当にネギカモを背負って、行っちゃったわけですよね。こういうことを言われるということは、彼は考えていなかったのでしょうし、枝野さんのお話なんかを聞いても、どうしても説明してほしいと言ったら、なかなか前原さんに会えなかったとか、前原さん、説明することができなかったから会わなかったのでしょうね。だから、それは小池さんにうまくこう謀られたなという感じはしますね。ただ、小池さんにしても、民進党を全部抱え込んで、また、枝野さん達とか、いろいろな方達を抱え込んでいくのは嫌だったのでしょうね」
反町キャスター
「はい」
櫻井氏
「彼女はもうスパッ、スパッ、スパッと切りますから、他人の思惑であるとか、そういったことを一切考えないと言ってもいいような人ですからね。自分の目的に従って、自分の目的がここ、現在これを達成するのだということを設定して、それに向かって突き進む人ですから。1年3か月、都庁で職員の方達が知事としての小池さんを見て評価をしているんですね。これは新聞に出ているのですけれども。すごく評価が低い。半分以上の人、6割近くの人だったかな、この人はもう落第だという評価ですね。それから、豊洲と築地の政策については、もう本当に7割、8割の方達がこれは絶対反対だということで、評価していないと。彼女は石原慎太郎さんとか、いろいろな方々を随分論断しましたけれど、石原慎太郎さん達の方がよほど職員から高い評価を得ているというのがありますね。だから、近くで彼女を見る人の多くが彼女を評価していないですよ」
反町キャスター
「井上さん、いかがですか?排除という言葉、どう感じますか?」
井上教授
「彼女は言葉遣いがうまいはずなのに。日本人が1番嫌う言葉を使ったよね」
反町キャスター
「ああ…」
井上教授
「あれは本当に挑発的で、本当に自分の抱擁する、寛容な改革保守という言葉を使っているけれども、逆でしょう」
反町キャスター
「うん」
井上教授
「だから、イメージ操作もなっていないなという気がする。それから、先ほど、職員の評判が良いか悪いかというのは、有権者の評価とはまた別なのだけれども…」
反町キャスター
「有権者の評価は高いですよね?」
井上教授
「有権者の評価についても、私は彼女が石原さんとか、その時代の、都の官僚達の意思決定の不明瞭さだとか、それを叩く時、攻撃する時はすごく支持を受けたと思うのだけれども、それに代わって自分が決めなければいけないという時に、ずっと優柔不断だったでしょう。いろいろ専門家を集めて、彼らの聞いてるからと言っておきながら、なかなか総合的に勘案するのはわかるけれど、これこれこういう状況を満たしたら豊洲だと、こういう条件を満たされなかったら築地だということを、事前に少なくとも政治家としては明示しなければいけないけれど、そういうコミットメントを一切しない。コミットすると、あとで叩かれるのが怖かったのではないかな。だから、最終的に足して2で割るような、ちょっとわけのわからない折衷案に終わっちゃっているから、僕はああいうことを有権者の、少なくとも都民から見れば、彼女が強力なリーダーシップを発揮してくれる人だという期待があったけれども、意外と決定能力がないなと、優柔不断なところがあるなという印象がちょっと出てきたのではないかなと」
櫻井氏
「排除という言葉を使ったところに、たとえば、強いリーダーシップが、私にはあるのよというところをもしかして見せたかったのかもしれないですね」
井上教授
「なるほどね」
櫻井氏
「ええ。この国の根幹を成す政策について、私は絶対に譲らないわよということで、排除しますとおっしゃったのかもしれないとちょっと感じますね。それから、言葉の使い方が、相手を攻撃する時はすごく鋭いですよ。自民党の都連なんかブラックボックスだとおっしゃる。でも、ブラックボックスは小池さんなんですよね。だって、その党首になる、代表になるということを決めた時も、細野さんとか、若狭さん、全然知らなかったわけでしょう。若狭さんなんか目が虚ろになっていたではないですか。だから、本当にご自分で全部決めちゃう。独断専行、ブラックボックスは小池さんだと思いますね」

総選挙『小池旋風』で改憲勢力は…
反町キャスター
「総選挙の1つの見方として、改憲勢力か、護憲勢力か、その話はもうやめましょうという政治家の方が何人か、当番組に来たゲストの中で言う方もいたのですけれども。ただ、全体を見てみると、自民・公明・維新・希望、このへんの人達は目指すところは違うとは言え、憲法改正を頭からまるっきり拒否するという感じではない情勢ができてきたように見えます。ここで今回の選挙というか、民進党分裂も含めてですが、改憲勢力というものが量として大きくなるのではないかという、この見方についてどう感じるのか?井上さん、どう見ていますか?」
井上教授
「それは、改憲勢力の中身ですよね」
反町キャスター
「そこです」
井上教授
「何を変えるか。この間の参院選で改憲勢力が衆参両院で3分の2になったと言うけれども、報道検証機構をやっている楊井さんという人が言っていることだけれども、公明党は加憲論という形で、かつては改憲勢力に入れられなかったのが公明党を改憲勢力に入れた結果として、こうなっている話です。今回の安倍改憲案だって、結局、公明党に遠慮をして9条2項は改憲しないですよ。残しているんですよ」
反町キャスター
「はい」
井上教授
「そのうえで、自衛隊明記の3項とか、あるいは9条の2とか、やろうとしているわけで。これが仮にうまくいってもこれを改憲と呼ぶのかどうか。むしろ本当の改憲勢力であれば、これは不満だという人達は多いかもしれないし」
反町キャスター
「本当のバキバキの改憲派…」
井上教授
「そうそう、それは先ほど言った希望の党がもっと明確な改憲案を出すとか、枝野新党が護憲的改憲論を明確に出すかという、それと、また、ちょっと雰囲気は違ってきますけれども、このへんのことをしなければ。それから、もう1つ、世論調査を見ていると、何が重要なイシューかという中で、圧倒的に経済政策、財政・社会保障で憲法問題についてはあまり重要ではないという、10%ぐらい…」
反町キャスター
「低いですよね」
井上教授
「そういう感じですよね。今そんなことをやっている場合かというのが、雰囲気が国民の中に…、私は、それは実は悲しいことだと思うんです、北朝鮮問題がこれだけ逼迫しているのだから、自衛隊をちゃんと軍隊として明記し、承認しなさいと、そうでなければいけないということは、あとで申しますけれども。いや、しかし、今のこの選挙の結果、改憲論が進むかどうかと言うと、私は必ずしもそうならない。しかも、すぐそれを、そういう世論の動向を自民党がすぐ受けて、ちょっとこれは現在、押さない方がいいかなみたいな、腰砕けになる可能性もあるのではないかなと思っていますね」
反町キャスター
「櫻井さん、いかがですか?改憲勢力が大きくなるような選挙になるのかどうか?」
櫻井氏
「あの、これはもう今まで憲法改正に向かう道筋っていうのは、本当に足踏みしてきたわけでしょう、何十年も。そして、一足飛びに、私が考える改憲のところにいくことは政治的現実から見るとムリなわけですよ。もうそれ、ドンドン、私も思いますよ、自民党が投げた改憲案は、中途半端だと。皆、思っていますよ、もう安倍総理がおっしゃった時から、もうすごくショックでしたけどね」
井上教授
「うん、うん…」
櫻井氏
「だけども、政治家は結果を出さなくてはいけないと。政治家は評論家であってはならないし、研究者であってはならないのだと安倍さんはおっしゃったですよね」
反町キャスター
「はい」
櫻井氏
「私はその意味、よくわかるんですね。だから、おっしゃったように、公明党をどうやって動かすのですかと。加憲の公明党を、憲法9条2項削除なんて言ったら、もう絶対についてこないです。だから、とにかくあのクセ球を投げてここに至りました。反町さんがおっしゃったように、4つの党が少なくとも改憲政党という枠に入るようになった。これはこれまでにないことですよね」
反町キャスター
「はい」
櫻井氏
「1歩1歩進んでいくという意味では、これはいいことだと思っているんですよ。だけれど、この選挙戦の中で、もしくは選挙のあとに具体的にどのように改憲しましょうかということを、議論を積み重ねていくことが国民の理解を深めることになると思いますね。なぜ世論がついてこなかったのかと言えば、憲法改正と言うと何か悪いことを企んでいるようなイメージを持たれて、支持率が下がるとか、バッシングを受けるとか、酷い目に政治家達は遭ってきたし、私も酷い目に遭ってきましたよ。だから、その話をする、いろいろ、こうでしょう、ああでしょう、北朝鮮はこうです、中国の危機はここまできていますよと、アメリカがドンドン離れていきますよということをきちんと具体的に言って、理解してもらうことが大事で。その作業がこれからもっと続くのだろう、始まるのだろうと思います。その意味で、私は、これは前向きに捉えていきたいと思っています」
反町キャスター
「解散を発表する総理会見の時、憲法のことを口にされるかと思ったら、しませんでしたよ」
櫻井氏
「ええ」
反町キャスター
「マニフェストが今日、発表されましたけれども」
櫻井氏
「はい」
反町キャスター
「その何本かの柱のうちの1つであって、順番も1番かと言えば、1番ではないし、説明も最後にちょこっとあるだけです」
櫻井氏
「はい」
反町キャスター
「どうですか?自民党の憲法改正に対する姿勢は?」
櫻井氏
「怖い、怖いと思いながら…、これを言ったらどうかな?怖いなと思いながら出しているのではないですか?」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「安倍さんの心理状況から、知りませんよ、ご本人に聞いたわけではありませんから、ただ、想像ですけれど、だって、6割あった支持がボーンと3割まで下がっちゃった」
反町キャスター
「あれは憲法のせいではないでしょう?」
櫻井氏
「いや、憲法のせいではない。メディアが加計問題とか、森友問題を本当に捏造して、偏って報道したことが理由なのですが。でも、評価されるご自身としては6割が3割になっちゃった、もう自民党の中でも安倍の時代は終わったみたいな話が出ている時に、これまでの自分の思いをワーッとそこに込めて、憲法改正を第1項目に挙げるということはなかなかこう様子を見るのではないですか」
秋元キャスター
「保守系の方達から見た場合に9条からでないとダメなのですか?その他の部分から徐々にという方法はないのですか?」
櫻井氏
「1番いいのはその状況を見て、1番、現在、必要なのは、私は9条の改正だと思っているんです。ですから、これを言ってほしいと思うし、日本国の目標としてここを掲げなければ、日本は危ないところに落ち込んでしまうと思いますから、9条が大事だと思いますけれども。でも、それだけにこだわる気も私にもないですよ。憲法というものをなぜ現在、変えなければいけないのかということについて国民の議論を深めることはとっても大事で。そのことを理解してもらえれば、本当に目からウロコという感じで、ああそうかと思って、憲法についての新しい考え方を持ってくださるようになると、私は信じているのですけれど」
秋元キャスター
「そうした中、希望の党をめぐる動きを見ていきたいのですけれども。希望の党・小池代表ですけれども、先月28日に行った会見で憲法改正についてこのように発言しています。『常に9条に的が絞られ、そこで神学論争が何十年と続いてきた』『たとえば、8章の地方に関する部分などが極めて手薄』だと。『9条のイエスorノーだけでなく、より多くを健全に議論していく素地が必要』と『護憲そのもの、憲法改正そのものが目的化することはあってはならない』ということですけれども。9条だけでなく、幅広く議論をしていくということを、小池さんは訴えていらっしゃるのですけれど、これはいかがですか、櫻井さん?」
櫻井氏
「これはすごくイージーな、安易な言い方ですよ。だって、幅広くやる、どこをやるのですか?百何十項目を」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「家族をやるのですか?税をやるのですか?地方自治やるのですか?いろいろなところがありますよね。だから、政治家としては優先順位をつけなければいけないですよ。ちゃんとそこで決めなければいけないですよね」
反町キャスター
「ああ…」
櫻井氏
「だから、それが彼女はできていない」
反町キャスター
「なるほど。これは先ほど、井上さんも、小池さんは豊洲・築地の時にも決めきれなかったという話をされましたけれど、今回の憲法改正についての小池さんの発言もそう感じているのですか?」
井上教授
「だから、たとえば、9条をどう変えたいのかも触れていないでしょう」
反町キャスター
「うん」
井上教授
「安倍的改憲案にいくのか、9条2項の明文改正に踏み込むのか。しかも、ただ、自衛権という曖昧な言葉がつくのではなくて、集団的自衛権も含めてとはっきり言うのかとかね。そういうことを何も言っていないから、ちょっとわからないですよね。ただ、絞らなければいけないと櫻井さんはおっしゃったけれども、2012年の自民党の党として論議した憲法改正は全面改正案ですよ。あれこそ絞り切れていないわけですよ」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「それから、今回の安倍さんに、教育無償化だとか、他も憲法改正を進めると言っているけれども、あれも余計なもの。あれは別に憲法を変えなくたってできることを入れているところがあってね」
反町キャスター
「それは自民党…」
櫻井氏
「それは、でも、政治的な配慮があるのではないですか?」
井上教授
「それから、緊急事態法案、これは1番ちょっと危ないところで…」
反町キャスター
「有事の際の、衆議院の任期延長の話ですね?」
井上教授
「それだけに限定するなら簡単、簡単なのだけれども…」
反町キャスター
「そうではなくて?」
井上教授
「それが膨らむ可能性があるという形で。9条よりもかえって反発を喰らうかもしれないというようなことですね」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「それから、私は9条問題について、櫻井さんと同じく国難突破と安倍さんが言う以上は、曖昧にしてはいけないと思うのだけれども、それだったら、こんな2項を残したままというのはダメですよ。なぜかと言うと、私が削除論をずっと言っている理由は、安全保障についての実質論議、これだけ国際情勢が変わってきて逼迫している中で、日本の安全保障はどうあるべきか。アメリカだってそう簡単に頼れないではないかとか、こういう実質的議論をしようと思って、なかなかできないのは、それはいつも9条2項があるからですね。この2項が戦力の保有・行使を一切認めないと言っていて、交戦権は行使しないと言っちゃっているから、この解釈論だけになっちゃうんです。これを絶つことが重要なわけで。だから、2項を温存しちゃったら、実は意味がないというか。だから、そのことを安倍さんが本当にここでこうはっきりさせたいと思うのだったら、それをして。これは私のもっと大きな話にしなければいけないから…」
櫻井氏
「今の論点すごく大事だと思うんですよ。何を語るにしても9条2項があるために、本当に現実論として語り得ないわけです。『前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』と、そこでピリオドがついて『国の交戦権は、これを認めない』。で、いろいろな解釈がありますけれども、その第1項の、いわゆる侵略戦争をしませんと言っていることを、その前項の目的を達成するために、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しないというのは、芦田修正案ではないけれど、逃げる道を屁理屈で考えようと思ったら考えられるのだと思うのですが。そこのあとにピリオドがついて『国の交戦権は、これを認めない』となっているでしょう。これは単独の独立した文章ではないですか。これは法理論から考えて、これは『前項の目的を達成するため』はここにかからないわけですね。そうすると、『国の交戦権は、これを認めない』は、単独で立っているわけですよ。日本国は国民の命に対して責任がありますよね、国土に対しても責任があるのですけれど、国の交戦権を認めないと憲法に書いてある国はおそらく世界広しとは言え、日本だけです」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「国は国民を守るために戦うことを禁じられている。戦いませんということを言っている。この憲法がいかに異常であるかということをまず国民の皆さんに知ってほしいと思うんですよ。なんとなく9条2項は『陸海空軍その他の戦力は…』の文章のところに注目がいきがちですけれど、国の交戦権はこれを認めないというのは凄まじいことですよ」
反町キャスター
「『国の交戦権は、これを認めない』というこの文章…」
井上教授
「うん」
反町キャスター
「これは異常なのですか?」
井上教授
「それだけではなく『前項の目的を達成するため』というのは『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』にかかっているから、芦田修正でと言うけれども、芦田修正はスジ悪ですよ」
反町キャスター
「スジ悪…」
井上教授
「うん。だって、小委員会で出たあれで、本会議ででやっていないし、その時、吉田さんは野中さんの質問に対し、自衛のための軍隊は持たない趣旨だってはっきり言っているわけだから。芦田小委員会の芦田さんが仮にそういうことを思ったとしても、そういうことを政権者意思として見なすのは、これは法の支配に反するんですよね。秘密法の禁止という。だから、これまでの内閣、安倍さんが変えようとした内閣法制局ですら、それは採っていないですよ」
櫻井氏
「そう、日本国政府は、それは採っていないのよ」
井上教授
「芦田修正ではなく、専守防衛・個別的自衛権の枠だったら集団的自衛権行使に及ばないのだったら、自衛隊は戦力ではない、実力組織だということで誤魔化してきたわけですよね」
反町キャスター
「うん。そうすると…」
井上教授
「交戦権はもちろん、おっしゃる通り」
反町キャスター
「交戦権もそうだし、この戦力という言葉の使い方も、これもおかしい?」
井上教授
「そうです」
反町キャスター
「そういうことになりますよね?」
井上教授
「戦力ではない実力だと言っちゃうと、要するに、警察のようになると。そうすると、ネガティブリストだとか、ポジティブリストだとか、1度ことが起こって防衛出動が起こったら、自衛隊は自分が攻撃された時だけやるというわけにはいかないですよ。本当に軍隊として行動しなければいけないのに、それを相変わらず、9条2項を残しているというのは、本当にこれは問題ですよ。危機感が本当にあるのかなと、実は疑問なの。現在の護憲派が平和ボケと言われているけれども、実は安倍政権とそれを支持する勢力も、そういうことにはならないだろうと、どこかでタカをくくっていないかという」

憲法9条めぐる議論の行方
櫻井氏
「5月3日の安倍提案を受けて随分悩みました。私、『美しい日本の憲法をつくる国民の会』の憲法改正のプロモーションビデオをやってくださいと言われて、若い人達が来たんですよ。自分達の世代になぜ憲法改正が必要かと言ってくれというので、来てね。いや、もう悩みまして、ちょっと私、そういう気分ではないのだと。9条1項、2項をそのままにして自衛隊を書き込むなんていう矛盾した球を投げられて、お腹の中は煮えくり返っているのだから、それは今ちょっとできないと言ったら。若い人達ですよ、20代の、いや、それでも自分達は考えたいのだと言うので。いや、悪いけれど、30分、時間を私にくださいと言って、私1人になって、どういうふうにしようかと悩みながら考え、それでこういうふうな考えで、憲法改正をしていきましょうというメッセージを言ったのですが、そのくらい悩ましい球を投げられているわけですよね」
反町キャスター
「安倍さんから?」
櫻井氏
「ええ。でも、それはよく考えると公明党をとにかく巻き込まなければ3分の2が獲れない。教育の無償化を言うことによって維新をこちら側に引きつけるという意味で、3分の2をきちんと確保しようという戦術ですよね。そのようなステップを踏んで、100点満点ではないけれども、5点しかとれないかもしれないけれども、ここは1歩進みましょうという、そういうことなのだと思うんです。であるなら、まったく5点もとらないで、0点のままでいいのと。石破さんがおっしゃるように、石破さんは正論をおっしゃっていますよ、なかなか立派な正論を。いや、石破さんがおっしゃるような正論をずっと言い続けることは、私だってちゃんとできますよ」
反町キャスター
「ちゃんとできますよ…」
櫻井氏
「ちゃんとできますけれども、でも、それをずっと言い続けて、やっていって、どこにいくのだろう。どこにもいかないで、ここにじっと同じところにいるだけで。これではダメだと思いますよね。しかも、国際情勢がすごく厳しい。これは本当に平和で何も問題がない状況だったら、じっとしている余裕はあるのですけれど、現在その余裕は本当にないと思いますので。だから、私はやりましょうと言っているんですよ」
反町キャスター
「井上さん、櫻井さんの話、つまり、この安倍さんの憲法改正、総裁としての私案ですよ。これは100点ではないけれども、櫻井さんは5点と言っていましたが、5点ですよね、たぶん。段階的には進むのだから、評価しようではないかと?」
井上教授
「うん」
反町キャスター
「こういう判断についてはどう考えますか?」
井上教授
「いや、この前、2回出させていただいた時に、西修さん、それから、百地さん、同じようなご意見、彼らは5点よりももうちょっと高いと思ったかもしれないけれども。私はその時に言ったのですが、妥協は当然と思っていますけれど、しかし、それが実質的な意味のある進歩を少しでももたらしていればいい。私は5点にすらなっていないと思う。要するに、2項を残すということは、相変わらず自衛隊は戦力ではない、軍隊でないという欺瞞を、これまで解釈で誤魔化してきた欺瞞を憲法明文でやっちゃうわけだから、これは本当に国難突破から言ったら問題だし。かつ、それでもいったんやれば、それをステップにして、ステップ、ジャンプ、ホップ…忘れちゃったけれども、進むならいいけれども、それは政治的な戦略論として非常に甘いわけで。私自身、憲法改正は1回だけではない、1度やってもまたやり返せばいいという立場だけれども、1つの憲法改正プロセス、これは国民との間のすごく政治的エネルギーを動員するわけですよ。1度やったら、また、次まで10年、20年かかるかもしれない。だから、こんな中途半端なことをやっちゃったら、あっ、これで当分安心したという、一応の満腹感と言うかな、それを与えちゃって次の創憲政治、憲法をつくる政治を巻き起こすにはもうちょっと時間がなければいけない。現在みたいな情勢が逼迫している時に果たしていいことかどうかと」
櫻井氏
「現在…」
井上教授
「…もっと本質を突いた改憲を現在、やらなければ、次はないと思いますね」
反町キャスター
「櫻井さん、反対しにくいのではないですか?そうだと言いたいけれど、どうですか?」
櫻井氏
「今度、選挙でしょう。選挙で改憲勢力がおそらく増えるでしょう、先ほどから話が出ているようにね」
反町キャスター
「広い意味の?」
櫻井氏
「広い意味、広い意味の。皆、バラバラのことですけれども、改憲という大きな流れの中に皆、乗るでしょう。その中で当然こうやって、現在ここで、平場でやっている議論が出てくるわけですよ。おかしいではないの、この2項を残して、というのは。その時になぜ2項を残したか、公明党への配慮ですよね、公明党に代わる改憲勢力が力強く生まれる可能性だってあるわけですよ」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「そうした時に安倍さんは、公明党さん、悪いけれどもうちょっと踏み込みますよと、悪いけどついてきてね、もう僕のところには3分の2あるのよ、あなたもついてきてねということを言える立場に立てるやもしれない」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「これはわかりません、選挙結果で。わかりませんけれども、このように議論をすることで、磨かれていくんですね。だって、これまで安倍さんが何も球を投げなかった時に、憲法審査会はまるで死んだように眠っていたではないですか、何年間も、何年間も、何年間も。自民党も野党もやろうとしなかった。私、皆さんに言いましたよ、憲法審査会というのはこういう時に憲法、その論文を考えるのではないのですかと。何にもやらない。お勉強ばっかりしている。だから、私はこの球を投げた、クセ球の効果は出ていると評価しないとやっていられないでしょう」
井上教授
「だから、安倍改憲は、中身は評価しないのだけれども、改憲案を安倍さんが言ったことが憲法論議をもう1度もたらしたということは意味があって。それは逆に言うと、いわゆる護憲派というのがもっと言うと罪ですよね。彼らは、憲法論議は安倍さんのような右の方から攻勢がきた時に、ただ受動的に応じるだけで、自分達から対抗的な改憲論議を巻き起こさないですよ。先ほど、言った、専守防衛・個別的自衛権の枠内ならOKと言っているのだけれど、そのための自衛隊・安保ですら9条2項に反しているわけだから。護憲的改憲という自分達の対抗的な憲法改正論議を本当はぶつければ、もっと…」
反町キャスター
「護憲的改憲は、つまり、完全に現在の自衛隊を違法ならしむるような憲法改正とか、そういう意味ですか?」
井上教授
「いや。個別的自衛権、少なくとも。専守防衛は盾か矛かとあとで…なるけど、すみません、個別的自衛権の枠ならばOKだとうことを9条2項に明記する改憲ですね」
反町キャスター
「9条について、以前も井上さんに出演いただいた時に聞いた部分であるのですけれども。井上さんの9条に関する姿勢。戦力統制憲法規範というものをしっかり盛り込むべきだという前提の話なのですが、事実上、憲法9条をまず削除したうえで文民統制、シビリアンコントロールというものと議会統制、開戦決定の国会事前承認みたいなものをちゃんと盛り込むべきであると。その他いろいろなこういうルール、徴兵制という非常にショッキングな文言もあるのですけれど、そういったものを、9条を削除したうえで、憲法、日本の制度としてこれをビルドインしていくことが日本にとって大切だ、井上さん、ちょっと説明いただけますか?」
井上教授
「簡単に言うのは難しいのですけれども、要するに、9条が戦力を縛っていると言うのはまったく嘘ですよね。9条があるから日本国憲法は戦力統制規範を持てない。戦力統制規範というのは、1番はそこに書いてある、文民統制とか、議会統制ですが。要するに、戦力の組織編制、行使の手続き、こういったものを戦力の濫用をさせないように明確に定めるルールですね。これが私の戦力統制規範。それに対して、安全保障政策は別ですよ、それはまたあとで言いますが。しかし、戦力統制規範について言うと、9条があるから戦力は存在しない建前になっているので、憲法が存在しないと言っているものを統制する規範を憲法が持つなんて矛盾でしょう?」
櫻井氏
「うん」
井上教授
「だから、持てないですよ。首相文民条項があるのだけれど、あれが文民統制だと言う人がいるのだけれど、まったく違います。あれが文民統制になるためには、軍隊の最高指揮命令権は文民である首相に属するという規定があって初めて文民統制になるけれども、そんなことは言えないわけですよ、軍隊がないことになっているから」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「それから、議会の承認だって、安保法制の中に一定の場合だけ限定されているけれど、いくらでも変えられるということが言われているけれども、これは根本的な問題は、法律事項だから、北朝鮮問題がもっと逼迫して、現在の安倍政権よりもっとタカ派的なのになったらほとんど国会を無視してガンガンやることだってあり得るので。そうさせないために、憲法の中で、時々の選挙の勝利者が勝手に変えられないように議会統制規範も明定する必要があるんです。さらにこういうことを言うだけではダメで文民が一応、好戦感情に駆られるというのは2003年のイラクの例もあるから、逆に徴兵制があったからベトナム戦争は反戦運動が国民レベルに向かったとか。私は徴兵制を、良心的兵役拒否権を留保にしたうえでやるべきだと。これはドイツがずっとやっていたことですよ、2012年、現在は停止していますけれど、廃止はしていませんから。そういったことも言っていますけれども、ただ、この立場は段階的で、最低限文民統制、議会統制、あとのアレはすごく反発を食うだろうから、そこは選択的にやっていきます」
反町キャスター
「いずれにしても、9条を削除したうえで、この2つのスタビライザーというか、安全装置をキチッとはめ込むと?」
井上教授
「はい。あともともと保守の方から9条2項削除論というのはあったんですよ。これは問題…、2項を削除したうえで、こういう文民…、戦力統制規範を入れるという話にはなっていなかったことと。私が9条1項を残しておくのはマズいと思うのは、パリ不戦条約のアレと同じだから、基本的に自衛のための戦力は放棄しないのだと、国益追求手段としての戦力の行使だけだと言っているけど、それはそういう解釈があるだけで、あそこには戦争放棄という言葉あるわけね。もし1項だけでも残しちゃったら、護憲派は、今度、2項ではなくて1項をベースにして、憲法解釈論議で、神学論争でなんだかんだやる可能性があるんです。あれを削除しても前文があるし、現行の国際法上は侵略戦争が完全に違法化されています、国連もそうだし。憲法の中に国際条約及び確立した国際法はこれを遵守するとはっきり書いてあるから、1項がなくたって大丈夫なんですよ、前文はあるから。むしろ1項があることによって、また安全保障論議が解釈論、憲法解釈論に巻き込まれるという問題があるので。そういう意味で、私、敢えて9条を削除。それから、9条が日本を平和国家にしてきたというのは嘘だという、この幻想がずっと広がっているのに対して、ある種ショック療法ですけど、それをやることによって、そうではないのだよとわかってほしいという…」
反町キャスター
「すっきりした話に僕らには聞こえる部分があるんですよ」
櫻井氏
「ええ」
反町キャスター
「どう感じますか?」
櫻井氏
「極めて面白いと思いますね。2項削除…、9条1項、2項ともにこの1項を残すことの問題点というのは確かにずっと指摘されてきたのですけれど、この1項があっても大丈夫なのだと解釈する向きがあったわけですね。だけれど、1番すっきりするのは、これ1項、2項ともにないことですよ」
反町キャスター
「なるほど」
櫻井氏
「そこにこの文民統制と議会統制を入れて、国軍を持つということ、侵略戦争はしないけれども、きちんと国土・国民を守るための国防力を持つと決めればいいのだと思いますね。だけれども、このようなことで、これは理想の案ですけれども、ここを見ると徴兵制まで入っている時に、これを国民に見せた時にどうなるかというのはよほど議論をしないと、ならないだろうとは思いますが。でも、ここに書いてあることは全然変なことではないですよ。他のまともな国では当たり前のことだと思いますね」
反町キャスター
「それは、井上さん?」
井上教授
「だから、おっしゃったように、原理的に考えるなら、ここまでいかなければいけないと思っているけれども、それを一挙に普通の有権者に理解しろと難しいから。私、これは自分の最善案を言っているだけであって、次善、三善まで書いたものの中でいろいろ言ってきたわけですね。それは原理論と言うよりは最低限、戦力として自衛隊を認知して、それをコントロールするということの憲法改正をなるべく受け入れられやすいようにするという観点からの次善、三善なのだけれど。そういう意味では、護憲的改憲論は護憲派だって本音に合致しているのだから、いわゆる右の改憲案だけではなく、広い支持を得られるんですよ、とりあえずは。それから、これはもっと実は右がやるのだったら、ここまでやれと言うのは、要するに、集団的自衛権を明記し、これも認めるといいのだけど、これだと護憲派は反発するだろうから、それはせいぜい三善だろうと…」
櫻井氏
「ただ、集団的自衛権とか、個別的自衛権ということを細かく分けて…」
井上教授
「うん」
櫻井氏
「議論することが本当にいいことなのかどうなのか?国際社会では集団的、個別的と分けてあまり議論していないですよ」
井上教授
「いや、議論して、するのはおかしいのだけれども、戦後、日本の政治では、実は自民党保守本流もその路線できたんですよ」
櫻井氏
「うん」
井上教授
「専守防衛は憲法上の制約だから。それは何のためかと言うと、アメリカから圧力をかけられた時に、大人の政治的交渉力で対抗できなかったから、お前達落ち着けと」
櫻井氏
「ええ」
井上教授
「憲法があるではないかという、9条カードを切ることによって、自分達の政治的交渉力の欠損を補ってきたんですよね」
櫻井氏
「うん」
井上教授
「これが、だから、保守本流の自民党の知恵だったのだけれど、それは悲しい知恵ですよ」
櫻井氏
「うん」
井上教授
「私はそうしちゃいけないと思うけれど、しかし、日本で憲法がこういうふうに歪められてきたのは、個別的自衛権とか、こういういわゆる神学論争というものが幅を利かせちゃったのは、そういう事情があったわけで、それは護憲派というよりは保守本流の自民党…」
反町キャスター
「自民党の責任ですか?」
井上教授
「非常に大きな責任があると思います」
櫻井氏
「うん」
反町キャスター
「櫻井さん、自民党が政権維持のために、アメリカからの防衛拡大圧力を弾き返すために9条が盾になっていた、この部分はいかがですか?」
櫻井氏
「うん。その論理かどうかはわかりませんけれど、憲法が一言も改正されることなく今日に至っているのは自民党の責任だと思います。私、自民党の方々に、あなた方は憲法改正、自主憲法制定という理念を掲げて立党したにも関わらず、ずっとやっていないではないかということはよく言います。だから、自民党もおかしいし、でも、周りも全部おかしいし、日本全体がおかしいですよ。全体がおかしいと言ったら誰も責任をとらないことになるのですけれども、1番力を持っていた自民党がもっと憲法改正ということに踏み切らなければいけないのですけれども。だけれども、岸信介さんがそれをやろうとして、あのような国会を囲まれて倒れました、退陣しました。池田勇人さんがなりました、池田さんは何をしたかと、経済成長を言ったわけですよ。池田さん以降は憲法は怖いから、安保は怖いから、触らないできて、国民が喜ぶ経済成長、経済に特化したわけです。そうやって日本は経済大国への道を歩んだのですけれども、これを支えたのも国民、これに応じたのは自民党、そして社会党はそれに目を光らせていたという、そういう構図ではないですか」

『憲法改正』と『国民の意識』
秋元キャスター
「我々国民が憲法とどう向き合うべきかを聞いていきます。今年5月に憲法記念日のあとに行われた世論調査の結果を見てみますと、現行の憲法は現在の時代に合っていると思いますかという問いにたいして『思う』が31.4%、『思わない』が59.1%、『わからない、どちらともいえない』が9.5%でした。現行憲法を改正することに賛成ですかという問いに『賛成』が49.8%、『反対』が44.0%、『わからない、どちらともいえない』が6.2%という結果なのですが、時代に合っているとは思わないと答える人が6割近くいる一方で、憲法改正について賛成と答えた人はおよそ5割ということです。井上さん、この数字をどう見ますか?」
井上教授
「これは質問が変で、『憲法は』ではなくて『9条は』と聞いたら、また違ってくるでしょう」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「そう。それから、この時代に合っていないのが、9条だと前提したとして、思わないが6割なのだけれども、改正賛成が5割弱だと。私はこう読んでいる。つまり、9条改正にためらっている」
反町キャスター
「はい」
井上教授
「時代に合わないけれども、これは大切な何かで、廃止してはダメだと、そういうためらいを表現していると護憲派は少なくとも解釈したがるかもしれないけれども。私はもっと国民はシニカルになっていると思う」
反町キャスター
「はい」
井上教授
「なぜかと言うと、昨年の5月の半ばぐらいに、AERAがやったわけではないけれど、AERA誌上でずっと憲法改正の国民投票をちゃんとやるべきだと言っている今井一さんが、自分が独自にやったアンケートを示したんですよ。それは通常の9条賛成…、改正かどうかではなく、その前に戦力としての自衛隊を認めますか、自衛戦争を認めますかと聞いたわけ」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「それは、過半数は認めると言ったわけ、男性の方が多いけれども。しかし、問題は認めると言った人達だったら当然9条は改正すべきでしょう。2項が邪魔なのだから。2項と矛盾しないというのは、自衛隊は戦力ではないと嘘でもってきたのだから。自衛隊は戦力だ、自衛戦争、つまり、交戦権を認めると言っちゃったら2項を改正しなければいけないでしょ。ところが、その人達の中で2項を改正すべきだと言ったのはわずか4分の1」
反町キャスター
「なるほど。どう見るのですか、その現象?」
井上教授
「この事態は、結局9条なんかあってもなくても同じだと。安保法制は…」
反町キャスター
「空文化が進んでいるということ?」
井上教授
「そう。こんなあってもなくても同じようなものを変えるのに政治エネルギーを無駄にするな、みたいな、そういうシニカルな層が結構あるのではないかと。つまり、これは日本の立憲主義に対する危機ですよ。憲法なんかどうでもいいみたいな」
反町キャスター
「どうでもいいっちゅう…」
井上教授
「この状況をもたらしてきたことに護憲派の責任及び護憲派と同じように解釈改憲で誤魔化そうとしてきた安倍政権のこれまでのやり方に大きな責任があると思いますね」
反町キャスター
「なるほど」
井上教授
「私は、そういうシニカルに見ています」
反町キャスター
「櫻井さん、この世論調査をどう見ていますか?」
櫻井氏
「同じAERAの同じあれで…」
井上教授
「あっ、インタビューしているんですね」
櫻井氏
「そう。戦力を認めない、自衛戦争の時に、あなた、どうしますかと、日本が戦わなければ、どうするのですかというところに対して、まずは話し合いなさいというのがありました。それから、アメリカに守ってもらえばいいというのがあるんですよ。だから、これまでの戦後の歴史の中で、皆、政治家が話し合いです、話し合いですと、北朝鮮に対しても言っていた。話し合えばいいのではないのと、日本はなんとなく話し合いできたのだからと、すごく平和ボケですよね。それから、アメリカに守ってもらえればいいという答えがかなりあるわけです。アメリカに守ってもらうというのが染みついてしまっていて、国家というものは国家が国民の命を守るのだ、国にとっての最大の責任は国民を守ることなのだという、この原理原則を、国家の何たるかというのを日本人は意識しないできた。それだけアメリカに守られてきた。でも、この時代がもう終わりつつあるんですよということをもっと言わないといけないと思います。だから、この方達は現実を見なくても済む、幸せな生活をずっと続けてきた人達なわけ。この幸せを続けるためにも現実を見ましょうねともっていかないといけないと思います」
反町キャスター
「そうすると、このままいくと、気がつかないうちに日本の安全が…」
櫻井氏
「ええ」
反町キャスター
「破壊されるという、その事態に向かっている?」
櫻井氏
「これはこのままいけば、このままいけば、その通りになると思いますよ」

ジャーナリスト 櫻井よしこ氏の提言 『現実と具体論』
櫻井氏
「現実と具体論。これまで本当に理念と言いますか、抽象的な議論ばかりして、平和のためには9条は要るのだ、などという議論が多かったのですけど。具体的に平和を求める日本民族の仲間が北朝鮮に囚われている時に自衛隊はそこに行って本当に助け出すことができるのでしょうかというように、1つ1つ、個別・具体論を材料にして話すことによって考えていったらいいと思いますね」

井上達夫 東京大学大学院法学政治学研究科教授の提言 『九条論議は政争の具ではなく政争のルールの問題である!』
井上教授
「9条論議は政争の具ではなく、政争のルールの問題であると書いているんですね。特定の自分達の好きな安全保障観を政治的に押しつけるために、憲法を適当に解釈改憲したり、濫用しちゃうと、こういうのは右・左問わず、これまで見られたんですよね。私は、憲法はフェアな政治的競争のルールでなければいけないと。そこに勝手に自分達の政治的立場を盛り込んで、自分達の立場を変えられないようにするのは、お互い、日本は右も左もやってきたんです。だから、本格的な安全保障論議も真面目に行われない、実質的な論議も行われないという、こういう状況になっていると思います」