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2017年8月8日(火)
北朝鮮『制裁』包囲網 米中の本音と次の一手

ゲスト

岡本行夫
外交評論家 マサチューセッツ工科大学シニアフェロー
武貞秀士
拓殖大学海外事情研究所特任教授
ケビン・メア
元アメリカ国務省日本部長
呉軍華
日本総合研究所理事

北朝鮮『制裁』包囲網 ICBM&核実験の行方
秋元キャスター
「先月28日深夜の北朝鮮による2回目のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を受けて、今日までフィリピンで開かれていましたASEAN(東南アジア諸国連合)の国際会議の場では北朝鮮への批判が各国から相次ぎました。北朝鮮に対する制裁包囲網と、アメリカ・中国の2つの大国をはじめ、各国の思惑について議論していきます。北朝鮮による2回目のICBM発射を受け、国際的な批判が高まっていく中、北朝鮮への国際的な包囲網づくりが進められています。第1ラウンドとして、ニューヨークで今月の5日に開かれた国連安保理では、北朝鮮に対する新たな制裁決議が、中国・ロシアも賛成し、全会一致で採択をされました。その骨子がこちらです。まずこれが1番大きいのですけれども、石炭、鉄・鉄鉱石、鉛、海産物の輸出全面禁止、これについては北朝鮮の貿易取引の9割を占める中国をはじめ、各国がこれを完全に履行すれば、北朝鮮の年間輸出収入の3分の1に相当します10億ドル、日本円でおよそ1100億円の減収効果があると推計されています。その他にも、北朝鮮労働者の国外での新規雇用禁止、北朝鮮との合弁事業の設立及び追加投資の禁止、4団体・9個人を制裁対象に追加指定、こういった内容になりました。まずは岡本さん、この新たな制裁決議の内容をどう評価されますか?」
岡本氏
「非常に厳しいですね。これを各国が守れば、相当な打撃にはなるでしょう」
秋元キャスター
「これが守られた場合、北朝鮮のミサイル開発・核実験を止めるだけの力になるのでしょうか?」
岡本氏
「それはならないでしょう」
秋元キャスター
「守られてもならない?」
岡本氏
「だって、北朝鮮は他にもいろいろ外貨収入の道はあるし。それから、労働者の新規雇用の禁止にしたって現在、既にどれぐらい出ているのかな、10万人ぐらい出ているでしょう、その人達が送金するお金も1000億円ぐらいと、こう言われています。それから、武器も売るわ、偽物は売るわ、いろいろなアンダーグラウンドの商売はするわ、だから、完全に北朝鮮及び周辺にある中国の会社も含めて、金融を世界経済から隔絶するという、それぐらいのことをやらなければ、北朝鮮はどこかからお金を見つけてくるでしょう」
秋元キャスター
「武貞さん、北朝鮮は今回の制裁をどう受け止めているのでしょうか?」
武貞特任教授
「非常に反発をしているわけですね。また、中国・ロシアがこの制裁案に賛成をしたということも少々衝撃を受けただろうと思います。ただ、中国と北朝鮮の外相同士の会談で、両方満面の笑みで、あまり深刻な雰囲気がなかったんですね。どうも何か北朝鮮も、中国も、ロシアも、この制裁案を受けて、ARF(ASEAN地域フォーラム)での場ですけれど、これが決定的な北朝鮮に対する兵糧攻めになったとは理解していないような気がしますよね。抜け道はたくさんあるということは、北朝鮮もロシアも中国も十分知っていると」
反町キャスター
「呉さんはアメリカと中国との関係が御専門と理解したうえで聞きますが、この制裁決議というものに関して、中国はどのくらい真剣に履行するつもりがあるのか?どんな感じで見ています?」
呉氏
「私は中国政府の人間ではないので、どれぐらい履行するつもりかはわかりませんけれども。まず今回の制裁決議、過去最大と言われていますけれども、先ほど、岡本さんがおっしゃられたのですけれども、内容的に従来と比べると一段と厳しくなっている。この意味で、大きな成果、中国・ロシアも入っているし。でも、見方によっては、大きな妥協案でもあるのではないかなと思うんですね。いわゆるある意味では、中国もロシアも非常に嫌がっている、このセカンダリーサンクション、2次制裁はなかったし、石油の禁輸もなかったと。しかも、これもかねてから中国も主張してきて、この国際社会…、全体でやっていくというのもそのままになっている。ですから、見方によっては大きな妥協案でもあるのではないかなという感じもしないわけでもないですね」
反町キャスター
「5日、『中国もロシアも我々と一緒に投票した。北朝鮮に対する非常に大きな財政的打撃になる!』と。ビックリマークは僕らがつけたのではなく、ツイッターについていたものです」
呉氏
「なるほど…」
反町キャスター
「メアさん、どうなのですか?トランプ大統領のこの喜びようというのは、このまま真面目に受け止めてよろしいのですか?アメリカは本当に諸手を挙げて、今回の北朝鮮に対する制裁強化、やったと、皆、喜んでいるのですか?」
メア氏
「重要な発展ですけれども、まだまだ十分ではないと思います。制裁措置も段階的に厳しくなると、段階的に慣れることになるから、この制裁措置だけで北朝鮮が核兵器とミサイルを放棄することには期待できないと思います」
反町キャスター
「岡本さん、トランプ大統領の…、これだけ見ると無邪気さにも見えるのだけれども、トランプ大統領の素直さ、無邪気さをどう感じていますか?」
岡本氏
「最近、トランプ大統領、誇れることが何もないでしょう、外に向かって。国内はもうメチャクチャだし、外交もうまくいっていないし。だから、国連の制裁決議に中国とロシアが参加したというのは、これは大きな成果だって、何か1つぐらいは良いことを、良いツイッターを出したいと思ったのではないですか?」
武貞特任教授
「そうでしょう、俺が勝ったって言いたいのでしょう」
反町キャスター
「武貞さん、中国からの石油、石油ですよ、石油の重要性というのは、これが本当のまさにライフラインだと思っていいのですか?」
武貞特任教授
「非常に重要ですね。中国の学者と議論していた時に、年間110万トンの原油が北朝鮮に中国からいっていると言っていました。記録・統計上は、50万トン、60万トンぐらいですけれど、どうも40万トン、50万トンぐらいは鴨緑江の川底のパイプラインを通じていっていると見ていいと、私は計算したのですけれども。それは止めようがないですね。それを止めるバルブを止めると、中の成分が詰まっちゃって使えなくなるということもあって、物理的にも流し続けなければならない、政治経済的にも流し続けたい原油パイプラインですね。これは止めることはまったくないと思います。もし止めた場合、どうなるか?ベルリン大空輸作戦みたいに、プーチン大統領がしゃしゃり出てきて…」
反町キャスター
「えー?そんなのをやります?」
武貞特任教授
「天然ガスと石油の大供給作戦を始める可能性が大だと思いますよね。現在もウラジオストクには北朝鮮からの小型タンカーが以前よりもたくさん集まっているという話がありますし。プーチン大統領にとっては、49年間、羅津港第3埠頭を租借して、全面的にロシア人以外、立ち入り禁止にして使っているんです。49年間、長期構想で朝鮮半島の北半分をうまく使って沿海州の開発につなげようと考えている、あそこの大統領は、中国がちょっと北朝鮮を懲らしめようという政策に出た時にどうするか、それはチャンスだと、中国引きつつあるねと、ロシアがさらに影響力を強化するチャンスだねと考えるのが常識的なプーチンさんの発想でしょうね」
秋元キャスター
「先月28日深夜の北朝鮮によるICBM発射を受けて、30日、アメリカのヘイリー国連大使は『中国は重要な措置に踏み切るかどうかを決断すべきだ。話し合いの時間は終わった』と声明を出しました。今月1日、アメリカ共和党のグラム上院議員は『トランプ大統領は、北朝鮮のICBMがアメリカを標的にし続けるなら米朝戦争になると語った』とテレビ番組で明かしました。さらに、その翌日にはアメリカ国務省が北朝鮮にいるアメリカ人に8月中に国外退去するよう呼びかけをしています」
反町キャスター
「岡本さん、今回のこのアメリカの動き、ヘイリー国連大使やらグラムさんやら、その他、トランプ大統領自身もいろいろなことを言ったり、ティラーソンさんがいろいろなことを言ったりしていますけれど、要するに、アメリカが本気であるということを国際世論にアピールして、結果、今回の国連制裁に向けて中露を動かす1つのエネルギーになった、こんな見方でよろしいのですか?」
岡本氏
「そうでしょうね。しかし、北朝鮮は何をやってもやめないと思います。それは最終的にアメリカ大陸をほぼ全部カバーできるような長距離ICBM、それに積載する小型化した核弾頭を持つまでは絶対にやめないでしょう。その過程で制裁をドンドンかけなければいけない、国際的に北朝鮮を孤立させなければいけない、糧道を絶たなければいけない、ありとあらゆることを、それはやるのは当然ですけれども、それでも最終的には核武装をした、ICBMを持った北朝鮮というのが存在するという現実に我々は直面せざるを得なくなると思いますね」
反町キャスター
「今はまだワシントン・ニューヨークまで届くもの、ミサイル、それに載せる核弾頭も含めて、トータルパッケージとして完成したというところまではいっていないという前提に立った場合に、その完成を目指しているという岡本さんの話ですよね。完成させることが北朝鮮の安全保障に結びつくと北の人達は思っているわけですよね?アメリカから見た時に、これが完成した時というのは攻撃する時ではないのですか?」
岡本氏
「それはやらないでしょう」
反町キャスター
「やらない?」
岡本氏
「だって、まずアメリカが軍事攻撃をする、攻撃するのは通常兵器ですよね、ミサイルにしたって核ミサイルを撃ち込むわけではないから。それに対して北朝鮮が核による報復をするということは、これはあり得ないでしょう。基本は、それは金正恩さんという人は、冷酷な、衝動的な、非常に不安定な独裁者ではあるけれども、しかし、気が狂っているわけではないということですよね。だから、彼は、核攻撃はしない、報復はしないでしょう。その代わり通常兵力はありますから、それは38度線沿いに1000基近いロケット砲が、これは射程が40km、50kmあってソウルまでカバーできますから、ずらりと並んでいる。それから、スカッドミサイルだってあるわけですね、これは通常弾頭がもちろん、つくわけですね。これは北朝鮮がミサイル攻撃をする時は、効き目の程は別にしてTHAADとか、GBIとか、いろいろあるでしょう。しかし、通常の火力による北朝鮮から韓国への攻撃というのは、これは防ぎようがないですね、阻止しようがない。そうなったらソウルは、だって人口1000万人いるわけですからね、それはとんでもない数の死傷者が出てくる、それはアメリカ人も含めて。ですから、それは、アメリカはそれは知っているでしょう。だから、攻撃をすることはないと思いますよ。アメリカが攻撃をするつもりがないということは北朝鮮も知っているんです、だからこそ余計、彼らは長距離ミサイルの完成を急ぐでしょう。それを持っちゃったあと彼らの言う強盛大国、堂々たる核武装国家としてアメリカと交渉する方がずっと自分達は有利だと思っているわけで」
メア氏
「岡本さんがおっしゃったように、北朝鮮は絶対、核兵器・ミサイルプログラムを放棄しないと思います。金正恩の考え方は絶対に必要であると、自分の政権を守るため。でも、アメリカが絶対、先制攻撃しないという思い込みもちょっと間違っていると思います。可能性がないわけないですから。でも、おっしゃったように大変なことになる。ソウルが、ソウルに住んでいる市民がまず南の方へ避難しないと被害がすごく多いです。どういう軍事的シナリオであっても。でも、アメリカと日本と他の国が考える必要があることは、北朝鮮みたいな、金正恩みたいな独裁者が核兵器を持つと非常に危ないことです。使うかどうかという問題もあるし、テロ組織に売るかどうかということも考える必要がある。北朝鮮が使ったら自分の国が破壊されるとよくわかっているし、でも、売ったら、IS(イスラム国)みたいなテロ組織に売ったら、絶対使うんです、そのテロ組織。そのことの問題も視野に入れる必要がある、それをアメリカ政府も考えています。だから、ある段階で、本当に核兵器をミサイルに搭載できる小型化の技術も達成したら、大気圏再突入技術達成したかもしれないと考えると、今この問題を解決するか、待つのだったらもっと大変な解決になるから、どちらがいいかを判断しないと、非常に難しい判断ですけれども。どういうシナリオがあっても、岡本先生がおっしゃったように被害者が多いです。でも、それを防ぐために、どうぞ持っていいとは言えないです、アメリカ政府は。核兵器を持っていいと認めるということはできないです」
秋元キャスター
「そうした中、北朝鮮の反応ですけれども。国連安保理の制裁決議採択は、特大のテロ犯罪だ、国力を総動員して、物理的行使を伴う戦略的措置を講じる。我々の主権や生存権を守るため、わが軍と人民の正義の行動が続くことになるだろう、と声明を発表しているんですけれども」
武貞特任教授
「この報道官の声明で、私はやっぱりなと思ったのは1番下の正義の行動が続くことになるだろうということですね。アメリカも9.11、世界同時多発テロの時に、自衛権の発動だということでアフガンに対しても攻撃をすることは、これは正義の攻撃なのだという、正義という言葉をアメリカも使ったこと、これを十分意識し始めた北朝鮮はよく使うんです。自衛権を発動するために核兵器を炸裂させるということは、これは正義なのだ、他の国も言っているでしょう、アメリカも、と言わんばかりに、この正義のためにという言葉を使うということで。アメリカに対して特にメッセージを送ろうとする時に、北朝鮮が、彼らが言うところでは、持つに至った核兵器、これは自衛権を行使するためにいつでも使いますよという時に言い続けている。これはアメリカをなんとか交渉の場に引き出すために、核兵器、いつかは炸裂しますよ、というニュアンスを含めているんですね。彼らが1番言いたかったのは、1番下のその行の文章でしょうね」
反町キャスター
「その意味で言うと、そういう交渉術がアメリカと米朝交渉をやる1番の近道だと当然、信じているわけですよね?」
武貞特任教授
「そうです。戦略的、つまり、中枢部、これはハワイとか、ロサンゼルスではなくて、ワシントンD.C.にICBMの弾頭をつけたものが炸裂しますよと脅かしながら、アメリカは核戦争、両方やめようねと言い出す条件をつくって米朝関係正常化、在韓米軍撤退、米朝不可侵協定締結をやろうということで。核戦争をやめるための文章づくりとICBMづくりをせっせとやっているということで。北朝鮮にとっては、戦争はなんとか避けたいというのは大命題であることは間違いなく、これは金日成の時代、1950年、これで軍事力を使ったら統一のチャンスだと思って、酷い目に遭ったわけですね、国連軍が反撃をして。アメリカとなんとか戦争をせずに、韓国を獲る方法は唯一の手段がICBMだと気づいたわけですよ。だから、彼らは公式報道の中で、核兵器、究極的兵器という言葉を使っていますよ。なんのことない国家の至上命題である朝鮮半島の北朝鮮主導の統一という究極命題の手段が核兵器だとはっきり言っているわけですよね」
反町キャスター
「でも、使わない前提ですよね?」
武貞特任教授
「使わない前提だけれども、使わない前提のものですねとカテゴリーに入れるわけにいかないのは使えますよ、使えますよと言って、本当は使いたくないのだけど、使いますよ、使いますよとアメリカに言ったらワシントンD.C.が焼け野原になると困るなと思ったアメリカが、特にトランプさんは、朝鮮半島の警察官なんてやめた、アメリカファーストだと言いだしそうな大統領ですよね、我々から見てもね。そうすれば、これは思い通りのシナリオができあがると思って、対米政策上、最終段階にきたなと非常に楽観的になった金正恩委員長がミサイル発射の回数を増やしているというのは、この6か月の展開ですね」
反町キャスター
「メアさん、北朝鮮のアメリカに対する考え方ですよ、つくってやるぞと言えば、交渉に応じてくる、交渉に応じてきて、在韓米軍の撤退とか、いろいろやったあと、そのあとゆっくり韓国を料理してやろうというのが北の思惑だとした場合に、そこまでちゃんと見通せるわけではないですか、北が何を考えているかということは。それに対してアメリカはどう対応しようとするのか?」
メア氏
「でも、アメリカの歴史を考える必要があると思います。アメリカを威嚇すると、アメリカが交渉に入って、平和的に解決できるわけがないです。アメリカの歴史を考える必要、何回も他の国々が、アメリカが内向きになったから、弱くなっているから、首脳が弱いから、アメリカを威嚇してもいいと間違った経験も何回もあった。イラク戦争もそうだったし…」
反町キャスター
「第2次世界大戦だって、そうですよ…」
メア氏
「そうでしょう。朝鮮戦争もそうだった。だから、金正恩がそう考えているかもしれない、でも、大間違いです、大変なことになる、北朝鮮。だから、アメリカを攻撃する前に、アメリカは何か対応します、と考えるべき」
秋元キャスター
「ここからは先週土曜日から今日まで4日間、フィリピンのマニラで開かれましたASEAN関連外相会議について聞いていきます。このASEAN外相会議には、アジア太平洋地域の安全保障をめぐる27の国と地域・機関による国際会議であるASEAN地域フォーラムがあります。主な参加国としてASEAN加盟国と日本・アメリカ・中国・ロシア・EU(欧州連合)・北朝鮮などという国々が参加しています。ARFが昨日閉幕しているのですけれども、北朝鮮に国連安保理決議を即座に完全に遵守するよう求めるとみられる議長声明がまだ出されていないですね。岡本さん、昨日閉幕しているにもかかわらず、議長声明がまだ出ていないというのはどういう状況だと思いますか?」
岡本氏
「中国とロシアというのはもともと制裁に熱心ではない。アメリカに義理立てをする必要はないと思っていますから、ですから、どの文言でもめているかはわかりませんが。将来の国連制裁決議の行方を暗示するような出来事ですね」
反町キャスター
「国連制裁決議案ができました。ASEANの地域における外相会議でも、これを守ろうという文言が議長声明に入るか、入らないかで状況が違ってくると見ていいのですか?」
岡本氏
「違いますね。ASEANの中でもインドネシアとか、タイとか、マレーシアというのは北朝鮮と国交も持っているし、大使館もおいているし、それから、日常的な付き合い、ビジネスのあるところですから、そういったところの全部パイプが閉められるということになると、これは相当な影響がASEAN諸国側に出てきます。でも、これ(議長声明が出ないの)は南シナ海問題で決着がつかないのではなくて、北朝鮮の制裁問題で?」
反町キャスター
「どこで引っかかっているかはまだわからないです」
岡本氏
「南シナ海問題で決着していないのかもしれません。そちらの可能性が大きいと思います」
反町キャスター
「武貞さん、北朝鮮はARF、ASEAN地域フォーラムに外務大臣が行くではないですか。北朝鮮が敢えて国際会議に出る狙い、メリットをどう見ていますか?」
武貞特任教授
「ASEAN地域フォーラム、ARFというのは北朝鮮が正式メンバーとして参加している数少ない枠組みですから、北朝鮮にしてみれば自分の立場を宣伝するまたとない機会ですから、メンバーシップとしてもこれからも継続したいと思っているでしょうね。今回のこの場を利用して7月28日のミサイル発射のあと、国連の制裁も決まった国際社会に自分の正義の核兵器プロジェクトを説明したいというところでまたとないいい機会が訪れたということで、外相がフィリピンまで行ったということで、北朝鮮としてはPRの場として活用したいでしょうね。現在、北朝鮮が重視しているのは、外国人の観光客の誘致とか、バラエティに富んだ観光のいろいろな商品を開発しようとか、平壌の街ではいろいろな種類のビールが飲めますというのを外国にアピールしたりするということで、外国に対して、我々は意外に思うのですけれども、イメージの改善ということに一生懸命に努力しているんですね。これはおそらく金正恩委員長の指示ということもあるのでしょうけれども、言い換えれば、外交の舞台で北朝鮮の立場を、これは正義の意識でやっているのだということを宣伝したいということで、意気揚々と外相は出て行ったと思いますよ」
秋元キャスター
「中国のスタンスですけれども、ARFの席上でこういうやり取りがありました。アメリカのティラーソン国務長官は『(北朝鮮の問題をめぐり)交渉のための時間はない。あるのは圧力をかけるための時間だ』と発言しています。一方、王毅外相は『北朝鮮が核・ミサイル開発を停止し、同時にアメリカと韓国も大規模軍事演習を停止する案で解決をはかるべきだ』と呼びかけています。呉さん、中国の北朝鮮に対する安保理決議を履行させる意欲、本気度をどう見たらいいのでしょうか?」
呉氏
「中国としてはおそらく基本的なスタンスは変わっていないと思うんです。先ほど、アメリカの話がいろいろありましたけれど、メアさんが歴史的にアメリカに脅しをかけていい結果がないよと。歴史的に核を持つ相手がいなかったんです。これが1つあって…」
反町キャスター
「米ソの冷戦の時は?」
呉氏
「米ソの冷戦はお互いに持っていることでやらないことになったのですけれども。だから、私は基本的になぜここまでなったかと、制裁も今回で8回目ですね、その中で、過去最大、過去最大と。なぜできなかったかということを実は考えなければいけないですね。そう考えると、北朝鮮とアメリカの間である種の非対称的な関係があるのではないかと。もちろん、パワーとしては北朝鮮が圧倒的に小さいのですが、経済から政治、軍事、にもかかわらず制裁がドンドン厳しくなることは、逆に脅威がドンドン大きくなっていることの言い返しですね。だから、ある意味では、北朝鮮は思う存分にやってきたと。なぜここまでなったかと考えると、最終的に軍事的手段を使うと、交渉のための時間はないとなっているかもしれないけれども。結局、こういう独裁国家と民主主義国家の大きな違いがあるんですね。独裁者は人の命の大切さを感じない人が多いですね。民主国家としては選ばれた人が大統領になるから、どうしても犠牲を払いたくない。そこは足元を見られていると思うんですね、北朝鮮に。ですから、何がなんでも絶対に最後まで(核・ミサイル開発を)やると思うんです。こういう非対称的な関係で、ある意味、アメリカも今年だけでもすごく脅しをかけていたんですね。手段はテーブルの上にあるのだと。やれることの最後は軍事行動だけですね、実際。しかも、私はすごく驚いたのですけれども、ティラーソンさんが先週ですか、4つのアプローチを話したんですね。北朝鮮レジームチェンジはしないとか、北朝鮮体制の崩壊は望まないとか、軍事境界線の…、ある意味、中国の立場。中国が1番嫌がっているのは軍事境界線を越えてくること。従来の発想で考えれば、金正恩さんはレジームチェンジを1番嫌がっている。それもしないと。そこまで言って、これ以上、譲歩できるものはないのではないかなという感じですね。ですから、先ほど、トランプ大統領のツイッター、ある意味、彼はこれ以上言えることはないと思うんです」
反町キャスター
「それはアメリカが絶対に勝てないという話になります。勝つ、負けるというよりも、北朝鮮を止められないし、最終的には北朝鮮が望むような話し合いの場に出ざるを得ない?アメリカは」
呉氏
「最終的にその可能性があるのではないかなと思うんですね」

河野太郎×王毅 日中外相の『欧州』
秋元キャスター
「昨日、ASEAN関連外相会議で、外務大臣に就任したばかりの河野外務大臣が中国の王毅外相と会談をしました」
反町キャスター
「初会談のその前に、河野さんは東アジア首脳会議の外相会議において演説をしています。ポイントは4つ。南シナ海における中国に対する厳しい批判のトーンを展開した演説となりました。南シナ海における急進かつ大規模な拠点構築が継続していることに深い懸念を示しました。力を背景に現状変更を試みる、あらゆる一方的な行動に対して強く反対すると主張しました。アメリカによる航行の自由作戦への支持を表明し、フィリピンと中国の問題、南シナ海の島々をめぐる仲裁裁判所の判断は最終的、かつ当事国に対して法的拘束力があると主張しました。この河野さんの演説のあとに王毅さんと河野さんの初めての外相会談が行われたわけですけれども、ポイントとして、王毅さんは『あなたのお父さん(河野洋平元外相)は正直な政治家で中国を含む、周辺国との友好関係を望む外交官だった。今回あなたは国際的なデビューを果たし、発言した。だが、率直に言って失望した。完全に米国があなたに与えた任務のような感じがした。今日は良い機会なので、直接あなたの考え方を聞きたい』と問いかけました。それに対して河野さんは『親というのはありがたいものだなとあらためて思った。中国には大国としての振る舞い方というのをやはり身につけていただく必要がある』とここまで言った頭のやり取りだったわけですが。もう1つ言うと王毅さんは紙を読んでいます。それに対して河野さんは目を見ながら、自分の言葉で喋っていた。これをどう見たらいいのか?」
岡本氏
「彼はあれだけ言おうとして用意してきたわけですよね、王毅さんの方は。それだけ酷いことを言っているわけですよ、王毅さんは。河野さん大変すばらしい外務大臣になると思いますよ。外務省も非常に歓迎していますし、何事にも意見をお持ちの人だから、だんだん中国に対する基本的なスタンスというのを身につけて、その中で中国に対してちょうどいい塩梅の応答をされるようになっていくと思いますけれども、第1ラウンドは王毅さんの方が1枚上手な感じがしましたね」
反町キャスター
「外交上の礼儀からすると初お手合わせで、冒頭、初手王毅さんで用意した原稿でここまで批判する、これは非礼とか、そういう話ではなくて、外交上一発目をぶち込むというのはあることなのですか?」
岡本氏
「あまりありませんね。王毅外相だからでしょう。前段で河野さんは大変立派なことを演説の中で言いましたよ。特に最後はよく言ったと思いますよ。仲裁裁判所の判断は法的な拘束力があるというのは皆、ASEAN諸国は恐れていて、フィリピンですら、当事国ですら言えないんですね。それをスバッと河野さんが言った。それは、王毅外相は堪えたと思いますよ。だからと言って、あれは、王毅さんは個人攻撃ですよね。言うべきではないと思いますね」
反町キャスター
「格みたいな話で、王毅さんというのは外務大臣、外交部長ということになるのですけれども、本当に日本の外務大臣と同じような権限があるかと言うと、そうではないという人もいますよね。本当に中国の外交を仕切っているのは楊潔篪さん、そういう人がやっているのであって、王毅さんと言うのは、日本の外務省で言えば、事務方の外務省の審議官、局長ぐらいの権限しかないのだよと。要するに、北京を見ながらしか、モノが言えないという厳しい評価をする人もいます。王毅さんを、バランス的に、どう見たらいいのですか?」
岡本氏
「駐日大使の時はバランスのとれた人だったから、突然に変になってしまうわけはないので自分でもわかっているのでしょうけれど、日本に対する厳しいパフォーマンスを見せ続けてきた、それは自分の中に沁み込んでしまっているんでしょう。おっしゃったように、それは楊潔篪国務委員ですよ。その前の唐家璇さん、王毅外相はそこの地位に昇りたいのでしょう。彼は外交官出身ですし、共産党の中で彼の後ろ盾になってくれる強力な人はいなかったから、基本的にテクノクラートだから、しかし、党の知遇を得て、中で実力を、現在の楊潔篪委員のようにもっていくためには、こうやって日本に対して厳しいことを俺は言うのだよというのを見せ続けなければいけないでしょうね」
呉氏
「このアプローチは中国の文化、あるいは中国の現実を反映していると思います。似たようなアプローチが2009年、国際金融危機直後の、アメリカ、ワシントンで開かれた米中戦略対話の時に、当時の王岐山さん、中国の代表です、がガイトナー議長に対して、もちろん、中身は違うけれども、お父さんの話を持ち出して、という話があったんですね。と言うことは、文化から考えると年上を尊重する文化、儒教文化でその時も王岐山さんがガイトナーさんのお父さんと同じジェネレーションだった。今の王毅さんの話も、日本の将来はあなた達の世代次第だよと、ジェネレーションとして上にした。これは文化的に若い人が年上に逆らえないという文化的な面があるんですね。もう1つは現実、たとえば、王岐山さんも、王毅さんも30代から仕事をして、現在、ある意味では、20年から30年の間で、その間に、中国の国力はすごく上がってきたんです。たとえば、王毅さんが日本に駐在していた時の米中のパワーバランス、日中のバランス、急激に変わったんです。こういうのが心理的なインパクトが大きいと思うんです。これも反映されているのではないかなと思うんですね」

東アジア情勢の今後 『日米2プラス2』の行方
秋元キャスター
「昨日、河野外務大臣は、日米の外務防衛担当閣僚による安全保障協議委員会、2プラス2を17日にワシントンで開くことでティラーソン国務長官と一致したということを明らかにしました。日本側からは河野外務大臣と小野寺防衛大臣、アメリカ側からはティラーソン国務長官とマティス国防長官が参加する日米2プラス2の開催ですが、これはトランプ政権になって初めてのことになるわけですが、日米間で最優先で話し合うべきことはどんなことがありますか?」
岡本氏
「北朝鮮問題ですよね。それから、日米安保でしょうね。アジア情勢の安定化も、話すことはいくらでもありますよ」
反町キャスター
「話し合いのまとまり方、たとえば、ティラーソンさんやマティスさんと話が一致したところで、それはトランプ大統領に対するグリップになるのかどうか?」
岡本氏
「まず日本側は久々ですよね。こうやって両大臣を安心して見ていられるのは。これまで防衛大臣は存在しなかったようなものですからね。向こうが確かにトランプ大統領との関係で、ティラーソン国務長官が北朝鮮の体制変革を求めないとか、いろいろ4条件を言っていますよね。北朝鮮に対してもちろん、メッセージを送っているわけですけれど、トランプ大統領に対するメッセージでもあると思うんです。だって、トランプ大統領は酷いことを言っているわけですから、いざとなったら軍事攻撃があるかもしれないよと。数千人が死んだって皆、アメリカから離れているところで起こることではないか。要するに、同盟国政策の基本を壊すようなことを言っているわけでしょう。それを後ろから羽交い絞めにして、大統領、そんなことを言ってはいけません、大統領、軍事行動をしてはいけませんというようなことを言っているのはティラーソンさんとマティスさんという何年ぶりかに出てきたような逸材ですよ、あの2人は。それで日本側の2人と、ここで、閣僚レベルで4人のチームワークがガッチリとできたら、それはトランプ大統領とて無視できないと思いますね。そういう意味で、これは非常に大事だ思います」
反町キャスター
「南シナ海の話はあまり話し合われないと思った方がいいですか?」
岡本氏
「いや、中国、ロシアとか、皆、出るのではないですか。外交安全保障全般ですからね」
反町キャスター
「南シナ海の問題に関してもトランプ大統領がどういう腹を持ちながらやっていくのかということも、経済とのバーターみたいなものを心配するのですけれど、その点についてもティラーソンさん、マティスさんの2人が日本との合意事項をもって、トランプ大統領に対して、ここのバーターはないんですよと、こんな話になっていくと思っていいのですか?」
岡本氏
「そういう話もあるでしょう。とにかくティラーソンさんとマティスさんというのは、アメリカ外交の良心の碇というか、アンカーですよね。そこがぶれないでやっていくと。それは当然、経済の話も入ってくると思いますね」

呉軍華 日本総合研究所理事の提言 『非対称的関係からの脱出』
呉氏
「日本外交というか、いわゆる西側世界、日米を中心とする、がどうやって現在の、政治システムとしての民主主義、グローバリゼーション、閉塞感から脱して、非対称的な関係、北朝鮮をはじめとする、強権国家との非対称的関係から脱出するのが、大きな課題というか、しなければいけないところがあります」

ケビン・メア 元アメリカ国務省日本部長の提言 『力』
メア氏
「私の提言は力という言葉を使っています。外交が成功するために、強い基盤から外交をしなければならないという意味は、北朝鮮の脅威と中国の脅威に対処するために外交も考えて、日本は自分の抑止力を向上させなければならない。具体的にはミサイル防衛とか、敵基地攻撃能力を導入するとか、できるだけ早く自分の抑止力を向上させなければならない。そうしないと外交がうまくいかない」

武貞秀士 拓殖大学海外事情研究所特任教授の提言 『戦略』
武貞特任教授
「北朝鮮問題に関連してですけれども、日本外交は戦略的な発想で防衛・外交をやっていかなければならないと思います。国連で制裁決議が決まった、非常に厳しい内容ですけれども、実はいろいろな抜け道があるということはわかっているわけですね。中国、ロシア、東南アジアの国々も一致して制裁を強化しようというわけではない。それがARFの声明がまとまらないということにもなっているわけですね。と言うことで、メアさんがおっしゃったように、力を持ちながら、敵基地攻撃能力も持って、北朝鮮との対話も選択肢に入れて、核兵器をはやく手放していただいて、東アジアの安定というものを我々は実現すべく、日本外交が戦略的発想を持ちたい、というのが私の提言です」

岡本行夫 マサチューセッツ工科大学シニアフェローの提言 『河野 小野寺を前面に立て堂々たる外交を』
岡本氏
「河野さん、小野寺さん、非常に良いコンビですね。国際会議で同席したこともありますけれども、ズバッと入っていきますよ。その2人を日本外交の前面に立てて、顔のある外交を日本はやっていくべきだと思います」
反町キャスター
「これまでやってきた安倍外交とはちょっとペースをチェンジした方がいいのではないかという話にも聞こえます。そういう意味でもあるのですか?総理が先頭になって走っていくのではなくて、この2人が前に出た方がいい、そういう意味でもあるのですか?」
岡本氏
「それもあります。つまり、若い、新しい世代、次から次へと日本でもこういう人材が揃ってきているのだと見せるうえでも、インパクトがあると思います」