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2017年8月4日(金)
慰安婦問題と文大統領 日韓合意破棄の現実味

ゲスト

陳昌洙
「和解・癒やし財団」理事
木村幹
神戸大学大学院国際協力研究科教授

『財団理事』に問う慰安婦問題 日韓合意『破棄』の現実味
松村キャスター
「慰安婦問題をめぐる日韓合意が揺らいでいます。2015年末に両国で、最終的かつ不可逆的とする強い表現で合意が確認されましたが、韓国の国内では批判が収まらず日韓合意の再交渉を選挙の公約で掲げていた文在寅政権は合意を検証する作業部会を設置しました。日韓合意を受けて設立された元慰安婦を支援する『和解・癒やし財団』も存続の意義を問われています。そこで『和解・癒やし財団』の理事と韓国政治に詳しい専門家をゲストに慰安婦合意の行方について聞いていきます」
松村キャスター
「日韓合意の発表から、これまでの経緯を見ていきます。まず昨年までの経緯ですけれども、慰安婦問題について2015年12月28日に日韓合意を交わし、これが最終的かつ不可逆的な解決であることを両国で確認しました。日韓合意を受けて昨年7月、元慰安婦の支援のための『和解・癒やし財団』が発足、日本政府は韓国側に10億円の資金を拠出することを閣議決定し、送金しました。その後、財団が元慰安婦の方への支援金に添えるため、安倍総理からのお詫びの手紙を要請しましたが、安倍総理は10月3日の衆議院予算委員会で『手紙を出すことは毛頭考えていない』と応じない考えを示しました。12月には大学生や市民団体が日本総領事館前に慰安婦像を設置し、31日に除幕式を行いました。陳さん、この流れを見ていきますと、日韓合意を受けてうまくいっていた流れが、12月には変わってしまったように見えますけれども、どう見ていますか?」
陳氏
「12月は弾劾のことで韓国政治が本当に混乱しているところだったんです。だから、政府が市民団体について抑える力もあまりないところだったんですね。だから、そのことを念頭に置いて考えてみると、2015年12月28日に日韓の合意をしたんですね。そのことから、韓国の世論は賛成が多かったわけですね。そのことで日韓関係はうまくいくように見えたわけですね。そのあとに韓国政府がやることもあるし、日本政府がやることもあるわけですね、両方あるわけなのですけれども。韓国政府も朴槿恵大統領が積極的に慰安婦のハルモニと会って、説明したりするパフォーマンスが必要だったわけですが、それをやらなかったということがまずあったわけですね。だから、市民団体から見ると、せっかくやっているのに被害者のハルモニ達に説明をしていなかった。それとそのあとに、韓国政府がこの合意に基づいて、これから何をするのかということをあまり積極的に話をしなかったということが、まずあるんですね。それで世論が変わりつつあったわけです、その時から。そのことがあって安倍総理のお詫びの手紙について、だから、財団側が日本側もやることがあるでしょうと、そのことでハルモニ達に、被害者に、1億ウォンずつを渡す時にお詫びの手紙ぐらいは必要だと、それを送ってくださいと言ったならば、安倍さんが10月に『毛頭考えていない』と」
反町キャスター
「はい、それは委員会の発言、覚えています」
陳氏
「そのことがあって世論が急転したわけですね。なぜかと言ったら、安倍さんは、もちろん、書類では謝罪をするのだという話をしているのですが、本音ではそういう気持ちになっていないのだと皆、受け止めたわけ。だから、韓国世論は、本当に安倍さんの発言が合意を守る側について衝撃を与えたわけですね」
反町キャスター
「なるほど」
陳氏
「そのことから、市民団体がもちろん、市民団体はその前から少女像を建てようとしたわけですね、それを安倍総理の発言があってから、抑える力がだんだんなくなるわけです。抑える力がある側は、日韓の合意を賛成する人で、安倍さんも謝罪をしているのだということを売り物にしたわけです。でも結局、安倍さんは謝罪をしていないのではないかという世論が変わっている中で、市民団体の力、市民団体が主張している、日本側は謝罪をしていないのだという声がだんだん強くなって、それを抑えることができなくなったということが事実だと思います」
反町キャスター
「日韓合意のところにも安倍総理は日本の総理としてあらためて心からお詫びと反省の気持ちを表明すると、岸田さんと尹炳世さん、外務大臣の合意の中にここまで書いてあるのだけれども、これでは足りないのですか?」
陳氏
「だから、それを覆す発言があったと思うわけです」
反町キャスター
「たとえば、簡単にワープロ打ちして、紙にプリントして、そこに安倍さんの手書きのサインがあればよかった、そういう話ですか?」
陳氏
「だから、簡単に…。心を込めて謝罪の手紙を書くということくらいはやるのではないですかと皆、思ったわけ、期待を持って。日本政府が…」
反町キャスター
「そうなると、だんだん条件がエスカレートしてきて、手書きではないとダメだよとか、ワープロではダメだよとか…」
陳氏
「ワープロか、手書きかそんなことはなくて、財団側に10億円を拠出し、そのあとに、ハルモニ、被害者に1億ウォンずつ渡す時に、渡す時に何も書いてないという、日本政府が何も書いてない、1億ウォンだけ渡すということは、それはおかしいのではないかという問題提起があったわけで、財団の中で。だから、それは交通事故に遭っても、そのぐらいは、話し合いに会いにきたりとかはするのではないですか、普通。それで保険金でそれで決着ついても、その話…、挨拶しに来るのではないですか、交通事故でも」
反町キャスター
「非常に情緒的な話のような気がする。木村さん、どう思います?」
木村教授
「陳さんの立場からするとそうなるんですよね。結局、慰安婦合意というのは、日韓両国政府がもちろん、結んだものなわけですけれども、言葉は悪いですが、どちらの政府も少し後ろ向きっていうか、もともとそうですね。特に朴槿恵政権はさまざまな理由から結ばされたという雰囲気がどこかにあって、朴槿恵さん自身ももともと世論との意思疎通にいろいろ問題を抱えていた大統領だったわけですし、積極的にアピールをしなかったと。そうすると、できた財団なり、財団ができるまでに関わった人というのは、いや、そんなことはありませんよと、日本政府は河野談話よりもさらに上乗せして、責任を認める形で謝罪をしているんですよ、ということを宣伝してきたわけですけれど、変な話、日本政府にも、韓国政府からもアシストがなくて、孤立したみたいな状況になったことは事実だと思うんです。ですから、陳さんのような財団の理事として活動している人達からすると、どちらかから協力のアシストがほしかったという言い方になるのだと思うんです。ただし、これは同時に大事なのは、韓国の中では、今、陳さんが、合意が結ばれた時に賛成が多かったという言い方をしていたわけですけれども、これは瞬間風速なんですよね。直後の時には確かに多かったのですけれども、2週間もすると反対の方が多くなったんですよね。当然、バックラッシュがすごく強力にあったわけですよ。そのバックラッシュの中で、ドンドンと、心からのお詫びの言葉ではなかったのではないかということを言う人が出てくるわけですよね。そこに誰もブレーキをかけることができなかったと言えば、できなかったと。ただ、日本政府からすると岸田さんが安倍さんの言葉を代読しましたし、安倍さんご自身が電話をかけて朴槿恵さんと話をしたわけですから、やったという話になったわけですが。そこから先が、韓国側からするとほしかったということだと思うんですよね」
反町キャスター
「木村さん、この日韓合意の建てつけから見た時に、日本側には『和解・癒やし財団』の要望に応じてお詫びの手紙を出す義務があったと思いますか?」
木村教授
「義務はないですね。もちろん、何をしないといけないということが決まっているわけではありませんから。義務はなくても、ただ、合意なのでアシストしてほしいということはあるんですよね。骨子のところにも少しあるのですけれど、たとえば、全ての慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復のため事業を行うということを合意しているわけですね。これは日韓両国の間の合意ですから、韓国側としては、日本側もお金を出すだけではなく何かしてくれるのではないかと。もっと言えば、アジア女性基金の時に、総理の手紙というのは村山さんなり、小渕さんなりが付けましたから、ですから、そこまではやってくれるのではないかという期待があったのは事実ですね」
反町キャスター
「陳さんは『和解・癒やし財団』の理事でいらっしゃる。まだ辞めていないですね?」
陳氏
「辞めてないですよ」
反町キャスター
「『和解・癒やし財団』から日本側に対してお詫びの手紙を出してくださいという要請はしたんですよね?」
陳氏
「したんです」
反町キャスター
「日本政府のどこに?外務省に?」
陳氏
「それは『和解・癒やし財団』というものが日韓の合意に基づいて、韓国政府が理事をお願いをして、それで理事になったんですね。それで財団が発足したのですから、この意味で、韓国政府にまず要請をするわけ」
反町キャスター
「韓国政府に要請をする?」
陳氏
「そうです」
反町キャスター
「それで、韓国政府が日本政府に言う?」
陳氏
「日本政府に言っているんです」
反町キャスター
「韓国政府には言ったんですよね、もちろん?」
陳氏
「言ったんです」
反町キャスター
「それで韓国政府が日本政府に言っているんですよね?」
陳氏
「…、言っている、もちろん。だから、なぜかと言うと、理事の中では韓国の外交部の局長、それと女性家族府の局長が入っているんですね。彼らも理事です、一緒に理事ですね。だから、彼らに理事会を開く時に、これは日本政府に話をして、こういうことを維持するためには、このぐらい最小限の措置は必要だという話をし、局長さんに話をすると、その局長さんが日本の外務省の局長と協議をする時に、一緒にそういう財団側は要求があるということをすると、外務省の局長が安倍さんにこのことがあるのだと、そういうプロセスになっているんですね」
反町キャスター
「そうすると、木村さん、話を聞いていると韓国政府には言った、韓国政府から日本へ、韓国外務省から日本外務省へ話は伝わっていると、そうすると、日本側、官邸ないし総理、外務省のレベルかもしれない、どこかのレベルで弾いて断わった、こういう経緯になるわけですよね?」
木村教授
「断ったことは間違いないですよね、それに関しては」
反町キャスター
「日韓合意というのは、陳さん御存知のように、あれができた時には日本の中の保守派からは、安倍さん、なぜ合意をするのだという声も中にはありましたよ。なぜそんなに譲歩するのだと。10億円というお金はいったい何なのだと。もう終わったのだろう、どうしてそんなことするのだという声が保守派の一部のタカ派の皆さんから、安倍総理に対してそういう声も挙がりましたよ。安倍さんはそういう人達の声に対しても配慮しなくてはいけない立場であって…」
陳氏
「そうですね」
反町キャスター
「それで、なおかつお詫びの手紙を出してくれと言われることに関してはこの人達が僕の後ろにもいるからこれはもうできないよという判断、わかりますよね?」
陳氏
「わかりますよ、それは理解します。安倍さんの立場を知っている、わかっているのですけれども。でも、大きく考えてみると、全体的に考えてみると、歴史認識、過去について、過去史について、政府が関与してそれでいいのかという問題があるんです。その大きな意味では、それが本当に解決できるかということがあるんですね。でも、韓国側がなぜそういう歴史認識、今の慰安婦のことについてやらなければならないのか言ったら、憲法裁判所で、これは政府がやることをやってくださいと…」
反町キャスター
「2009年でしたか?」
陳氏
「うん、2009年」
木村教授
「2011年ですか…」
陳氏
「2011年ですね。2011年のことを、裁判の判決があったわけですね。そこから韓国政府は外交交渉しなければならないことになっているわけですね。だから、その意味で…」
反町キャスター
「朴槿恵政権だってあまりしっかり後フォローを国内でやっていなかったって、先ほど、自身が言っていたではないですか?」
陳氏
「そうですね、だから、朴槿恵政権も…」
反町キャスター
「だから、朴政権にしてもかなり無理をした合意だったわけですね?」
陳氏
「無理をしているんです。それは確かに…」
反町キャスター
「両方がちょっと無理し過ぎたと、こういう感じ?」
木村教授
「無理し過ぎたというよりも、状況認識、韓国側は日本側の状況の理解が間違っていたと思っているんです…」
反町キャスター
「日本側が間違っていた?」
木村教授
「いや、違う。日本側への理解を韓国側が間違っていたという、誤解していたということですね。これは河野談話からアジア女性基金の時のレッスンというのが韓国側にはあったわけですね。先ほどの手紙も実はアジア女性基金が念頭に置かれているわけです。あの時に何があったかと言うと河野談話は、実は当時の韓国政府が要求したのは真相究明だけで、ですから、強制連行を認めてくださいということを言って、河野談話が出たわけですね。実は、ただ、韓国側から期待があったのは、もう少し日本は何かしてくれるのではないだろうかという期待があって、村山政権になったあと、実際にアジア女性基金ができたわけですよね。韓国ははねたんですけれども、最終的には、でも、日本側はこちらが頼めば何かやってくれるというレッスンになったわけです。たとえば、文在寅さんが大統領になられたから、韓国の国内の世論が反対しているからということを言われます。これも同じロジックですよね。韓国はすごく困っているから、その状況を汲んで、日本側も協力してくださいよということを、だから、この合意の背景にその雰囲気は確実にありましたし、今もある。これまで日本側はそれである程度動いてきたんですよ」
反町キャスター
「過去においてね?」
木村教授
「過去において動いてきたんですね。だけど、日本の世論もそうですし、官邸の雰囲気も、外務省の雰囲気も、現在そういう雰囲気ではないですよね。そこのところの、韓国側の日本への、どのレベルとは言いませんけれど、韓国政府の中で日本に対する少し、大き過ぎた期待、幻想みたいなものがあったわけですよ」
反町キャスター
「安倍さんは、それは絶対に断ち切りたくて、何か追加注文すれば、応えてくれるのではないかという韓国側の持つ日本に対する幻想を断ち切りたいから毛頭考えていないと、委員会における総理答弁で、毛頭なんてつけるのは珍しいぐらいきつい表現ですよ」
陳氏
「今の話を韓国の国民がどう考えているかと言うと、日本側から見ると、韓国が甘えていると見えるのですけれど、韓国の政府の考えはだいたい歴史問題とか、過去の問題を解決するということになると、日韓関係はそれ以外では障害がないんだと思っているわけ…」
反町キャスター
「どういうこと?」
陳氏
「だから、日韓の問題というのは、歴史問題で揉めていて、他のところで進展ないわけなんですね」
反町キャスター
「なるほど、その中のだけの問題になっている…」
陳氏
「だから、それだけの問題ですから、その中の1番大きな問題が慰安婦の問題なんですね。その問題をある程度、妥協して、その問題について両国民が納得できる措置を取ったならば、これから日韓関係は本当に発展するのだと思っているんですね。日韓関係の発展というのは北朝鮮との関係にもあるし、北東アジアの秩序の中で日韓はどう協力するかという問題にもなるわけ」
反町キャスター
「アジア女性基金の時も、取りまとめに立った側の人達を僕達も番組でゲストとして話を聞いて、その時も、韓国側はこれだけを飲んでください、そうしたら終わりですからと言ったと皆、言っているではないですか?飲んだ結果どうなったと言うと、これではダメだと、次の手を考えてくれと、そういう意味ですよね?」
木村教授
「だから、要するに、日韓関係が重要だから、日本側も配慮してくれるだろうというロジックですよ。要するに、北朝鮮の問題、中国の問題、さまざまな問題で、重要だという話が出てくるのですけれども、日本側はその前提さえ怪しくなっているわけですよね。北朝鮮問題で日韓がどう協働するかという話に関して。ですから、官邸は動かないですし、外務省も消極的だったりするわけです。その温度差はすごくあると思うんですね。韓国は日本にとっても重要でしょうと韓国側は言うのですけれども、そうですかという日本が実はいるわけで」
陳氏
「今の段階は、官邸とか、日本政府は冷たいことになっているですけれども」
反町キャスター
「韓国の人達は現在の安倍政権は韓国に冷たいと思っているのですか?」
陳氏
「冷たいです」
反町キャスター
「冷たいの?」
陳氏
「冷たいですよ」
反町キャスター
「だって、ほら、これは冷たいの?」
陳氏
「この次の話ですから。そのことはあるのですけれども、最近のことで日本政府も、日本の国民も、歴史問題については何とかしなければならないという気持ちは日本の中でもあったわけですね」
反町キャスター
「今でもあると思いますよ?」
陳氏
「今でもあるのではないですか。だから、その意味で、韓国政府も、ある程度、日本の中の雰囲気も考えて、一緒に協力してやりましょうということを、廬武鉉さんの時は言っているわけで、だから、一緒にやりましょうという雰囲気は前からあるし、現在もあるわけですね。それを一緒にやりましょうということについては日本の政府はあまり応えていないと…」
反町キャスター
「一緒にやろうという気持ちがあれば、手紙の1枚ぐらい出してもいいのではないかという」
陳氏
「そう、そうです」
木村教授
「その気持ちがないことこそが大きな変化ですよね」
松村キャスター
「昨年12月31日に慰安婦像の除幕式がありまして、日本政府は領事館前の慰安婦像設置の対抗措置として今年1 月6日、長嶺安政駐韓大使と森本康敬在釜山総領事の一時帰国を発表しました。5月には日韓合意の再交渉を選挙中の公約として掲げていた文在寅氏が大統領に就任します。7月の7日には、日韓合意に批判的な鄭女性家族相が『和解・癒やし財団』事業を原点から再検討すると発言しました。7月27日、金兌玄理事長が辞任しました。金理事長はなぜ辞任することになったのですか?」
陳氏
「ホームページに書かれているのですけれども、2つ理由があるんです。金兌玄理事長は1年目を経て、この『和解・癒やし財団』が成果を出しているのだと。成果が、生存者は36人、遺族の69人について、お金を渡しているわけです。1年目を区切りをしたいと、だから、区切りをつけたいと思って、理事長はこれまで慰安婦のハルモニと会って、説明をしたり。理事はあまりしていないです。理事長が財団の職員達と行って、被害者のハルモニと会って、事情を聞いて、そのあとにお金を渡すという活動をしているわけですから、韓国の国内の非難は80%以上が理事長について非難をしているわけですよ。だから、1年間、大変な仕事を、本当に辛い気持ちになったと思いますけれども。1年の間に自分がやりたいことは全部やったと。これからはもちろん、残されている仕事があるのですけれども、理事長としてはこのぐらいで区切りをつけたいと思っていることが1つの理由です。2番目の理由は、先ほどから私が言っているように、韓国政府も、日本政府もあまりにも支援してくれないということがあって、だから、そのことについても世の中にその話をしたいと、だから、日韓が協力して、日韓の政府が協力して、この問題を解決してくださいと。そのためには財団が活動をするために韓国政府に予算を組んでくれるようにお願いをするし、日本政府については10億円でもう終わりということになさらないにようにして…」
反町キャスター
「それは追加拠出という意味ですか?」
陳氏
「はい。もうちょっと協力して、一緒にこの問題を解決しましょうということが、理事長の2つの理由ですね。その理由で辞任をしたと」
反町キャスター
「どこかの報道で、理事長も辞任したし、お金も止まってしまったから、財団は事実上、解散だと。『和解・癒やし財団』解散へという記事がドンと出ました。これは正しいのですか?間違っているのですか?」
陳氏
「それは誤報です。なぜかと言うと、『和解・癒やし財団』が廃止ということになると、理事が辞めなければならない。現在、8人が理事になっているんです。現在の段階で仕事をやっているわけです。仕事というのは遺族にお金を渡すということもやっているし、終わる段階では記念事業、追悼施設をつくるかどうかがまだ残っているし、現在やっているところですね。だから、理事長が個人的にいろいろな圧力を受け、個人的にお辞めになったわけですけれども、でも、財団側はまだやっているわけです。だから、定款に理事は5人から15人までと書いているわけです。やっている仕事はそのまま続いているし、運営費用については予算が政府からカットされているのですけれども、財団側は、これは韓国政府が出すべきだということを長官にも話をしているし、そのことについては検討委員会をこれからやるわけですから、その検討委員会は今年中には終わるのだと思います。そうすると、その段階で予算のことについてもお話が出るのだと思います」
松村キャスター
「『和解・癒やし財団』では元慰安婦とその遺族にお金を受け取るかを直接、確認し、受け取る意志を示した場合は、元慰安婦に対して1人あたり1000万円、遺族については1人あたり200万円を、日本政府が拠出した10億円から支給することにしています。これまで47人いる元慰安婦の方のうち、受け取る意志を示したのが36人、そのうち35人は支給が開始されています。亡くなられた199人の遺族について、受け取る意志を示したのは65人となっています。現在も意思確認を続けているということですか?」
陳氏
「はい。そうですね。だから、生存者については、11人の中で2人は行方不明ですね。残りの9人が反対している方ですが、もちろん、その中でも説明をしたりして、これから何人が受け取るかはわかりませんが、厳しい状況にあることは間違いないです。生存者については。でも、遺族については65人がもらいたいという話をしていて、これからも100人ぐらいは遺族にお金を渡すということができるのではないかと思っています」
反町キャスター
「プラス100人ですか、合計100人になるのですか?」
陳氏
「合計」
反町キャスター
「あと30人ぐらいはと」
陳氏
「そう。だから、なぜそうなるかと言ったなら、亡くなった方の中で自分が慰安婦だという話を遺族に話をせずに亡くなった方が多いですよ。それは話ができない状況でですね。亡くなった方が多いわけですから、遺族も知らない人が結構、いるわけですね」
反町キャスター
「そういったところに理事として行って、説明するわけですか?」
陳氏
「そうですね。知らない家族についてどう説明するかということも工夫しなければならないですよ」
反町キャスター
「どう説明するのですか?」
陳氏
「だから、直接訪問し、話をして、どういう経緯でこういうことになるのだという話をするのですけれども、現在の段階では65人ですから、まだそこまでいっていないです。だから、それを調べるためには親戚の名簿が必要です。その親戚の名簿を財団側が勝手に見ることはできません。なぜかと言うと、それは個人の情報になるわけですから。それは警察の支援がないとできないわけですね。だから、これまでは警察がそれを調べてみて、その結果を財団側に、この人がたぶんそういうことになるのだということを教えてくれるわけですから、その意味で、韓国政府の支援が必要ですね。だから、現在の段階では遺族を見つけ、その人達に癒し金を渡すというのは難しいところが結構あるわけですね」
反町キャスター
「慰安婦の皆さん、90歳以上ですよね。ポンとお金を渡されても、どうしようもないですよね?」
陳氏
「ハルモニの意見というのはだいたい自分をこれまでケアをしている人に渡したいというケースが結構多いですね。それと医療ということについては韓国政府もやっていることです。中には挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)にこれまでお世話になったから…」
反町キャスター
「もらったお金を挺対協に渡している人もいるの?」
陳氏
「いるんですよ。なぜかと言うと、これまで慰安婦のハルモニの苦しみをわかっていて、それをケアしている人達が挺対協だったわけです。それは事実ですから。だから、市民団体がこれまで誰も気を使っていなかったハルモニ達をある程度ケアしていたということは、慰安婦のハルモニから見るとありがたいことですからね。もちろん、自分の子供がいれば、子供に渡したいということはまずあって、子供がいない方も結構いますからね、これまでケアしている市民団体に渡したいという人もいるわけですね」
反町キャスター
「本人がかつて自分が従軍慰安婦だったことを家族に対して公表しないといけない」
陳氏
「生存者はだいたい公表されているわけですね」
反町キャスター
「その人達は世間に知られることを覚悟のうえで1000万円をもらうわけですね?」
陳氏
「1000万円をもらっているわけですね」
反町キャスター
「厳しいですよね?」
陳氏
「厳しいですよ」
木村教授
「必ずしもそうではないと思うんですね。元慰安婦の方のインタビューを何回かしているのですけれども、たとえば、我々がインタビューをする時でも、日本人が行く、あるいは財団の人が行くと言うだけで、家族に言っていたとしても、近所の人は知らないこともあるわけですよね。行くとわかってしまうではないですか。ですから、場所1つでも配慮しなければいけないというところはあるんですね。ですから、家族でも知っている人もいるけど、知らなかった人もいるというケースがすごく多い。それぐらいナイーブな問題ですし、最近の話ではないのですが、慰安婦とカミングアウトした結果として、それを知らなかった旦那さんから離婚されたというケースもあったりして、かなり神経質な問題であるのは事実です」
反町キャスター
「挺対協にお金を渡すというのは…」
木村教授
「まず挺対協と関係の深い慰安婦の方というのは、それほど多いわけではありません。たとえば、看板代わりに出てくる人は数名しかいませんし、もっと言えば、たとえば、ナヌムの家というシェアハウスとか、もっと違うところと関係を持っているんです。慰安婦としてカミングアウトした時の、かなり貧しい生活をしていた人が多かったので、その時に助けてもらった恩義というのは子供であったり、旦那さんであったり、シェアハウスであったり、市民団体であったりするのは事実ですね」
陳氏
「ハルモニ達が皆、挺対協にお金を渡すということではなくて、その気持ちがあるのだということですね。これまで面倒を見てくれた市民団体についてありがたいと思って、その人達に全部渡すことではないですが、一定の金額を渡したいという方もいらっしゃることは間違いないですね」
木村教授
「なんとなく日本でテレビを観ていると、慰安婦の人達は、運動団体とひっついて、ああいう人達ばっかりだと見えるのですけれども、実はあれは極めて少数ですね。ほとんどの人がカミングアウトすることが大変ですし、最大の配慮というのは家族に対する配慮ですよ。いろいろな人が韓国にもいますから、元慰安婦の子供であるということが明らかになると、それに対していろいろなことを言う人が絶対に出てきますね。それがあるので、カミングアウトしたくないというのが大多数で、団体に助けてもらったとか、挺対協にある時は協力したのだけれども、途中から意見対立して、全然違うところへ行ってしまったといういろいろな人がいるわけです。大事なことというのは結構なお歳の人達なので、自分でお金を使うという話ではない。もっと言えば、自分が生きてきた証、お世話になった人へ恩返しするためにお金がほしいと、だいたい皆さん、そういう言い方をするんですね。それが誰なのかというのは様々で、シェアハウスの人もいれば、場合によっては、日本人に助けてもらった人もいるんですよね。千差万別です。逆に数は少ないけれども、挺対協の運動に一生懸命に参加して、その中で自分の人生のアイデンティティと言いますか、みつかった人はそこのところにお金を出すというのは止められないですよね。そこの部分は10億円を出して、お金を渡したわけですから、使い方も含めて、元慰安婦、遺族の人にお任せするという形にしかならないと思います」

日韓関係のあるべき姿
反町キャスター
「昨日内閣改造をやりました。河野太郎さんが外務大臣になったんです。それに対し韓国の聯合ニュース、『父親からの影響などは今後、両国の慰安婦問題をめぐる議論で肯定的に作用するとの期待はある』と。国内において河野外務大臣にこういう論評をする社は1社もないと思いますよ。なぜ聯合ニュースはこういう論評をして、河野大臣への期待度を上げるのか?」
木村教授
「これが今の韓国の軽さです。変な話、取材不足と言ってもいいぐらいですよね。河野太郎さんという人は善くも悪くも大変個性的な人で、自分の意見のある人ですよね。ですから、親父がこうだったから、あなたもこうですねと言うと1番嫌がるタイプの人ですけれども、そのことさえ知らない。それでも何となく河野洋平の息子だから、うまいこと使えるのではないかということでポンと聯合ニュースが出してしまうと、この軽さが1番怖いんですよ」
反町キャスター
「聯合ニュースがこのクオリティかと思うと心配になってくるんですよ」
陳氏
「これは聯合ニュースが勉強不足、取材不足というのは間違いないと思うんですね。日本の共同通信とかと比べてみると、各社がこのまま記事にするとかはないんですよ。韓国のマスコミというのは、朝鮮日報、東亜日報、中央日報というのは、日本で特派員を抱えていて、日本についてよく知っているんですね。だから、これがこのまま韓国のマスコミが使うということはないと思います」

陳昌洙 『和解・癒やし財団』理事の提言 『国内政治・協力』
陳教授
「日韓関係は、今は国内政治にいろいろ影響されて、世論の出方によって政策が変わるとなっているわけですね。もちろん、国内世論に影響されない政権はないのだと思いますけれど、日韓関係を戦略的に考えるべきだと思っているわけですね。その意味で、協力して得るもの、利益になるものは何かということをもうちょっと真剣に考えてほしいと思っているんです」

木村幹 神戸大学大学院国際協力研究科教授の提言 『信頼回復』
木村教授
「日韓関係の1つの問題というか、重要な部分というのは日本側に韓国に対する信頼感がなくなってしまっているんですよね。韓国はゴールポストを動かすというような言葉で表現される形になっている。その意味で、日韓関係というのは日韓で協力して何かできるのだという実績を残して、国民の信頼を回復していくことをやらない限りは慰安婦問題ももちろん、そうですし、他の問題に関しても動かすことは難しいのだろうなと思います」