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2017年7月26日(水)
検証…世論とメディア 支持率続落への影響度

ゲスト

佐々木毅
元東京大学総長
曽根泰教
慶應義塾大学教授
芹川洋一
日本経済新聞社論説主幹

政治報道の過去・現在・未来 『政治ブーム』とメディア
秋元キャスター
「今日は政治報道のあり方から、世論とメディアの関係について考えていきます。森友学園、加計学園の問題への対応や稲田防衛大臣の日報問題などをめぐって、安倍内閣の支持率は落ち続けています。大きく動く世論にメディアはどのように関わり、どのような責任を果たしていくべきなのか。専門家の皆さんと共に考えていきます。さて、加計学園問題への対応などをめぐって、政治に対する世論が大きく動いていますけれども、過去にも世論が大きく動いたことというのがあります。ここ30年ほどを振り返ってみますと、こういったことがありました。芹川さん、こうしたブーム、新聞とか、テレビですね、メディアの報道がどの程度、影響したと考えますか?」
芹川氏
「この問題は、実は歴史を遡ると、明治時代からそうですよ。つまり、明治時代の自由民権運動というのは新聞ですね。大正デモクラシーというのは雑誌です、中央公論ですね、吉野作造の論文とか。昭和初期になりますと、近衛ですね、近衛さんというのは、ラジオをうまく使うわけですよ。当時はヒットラーもそうですね、ラジオとか、映画とか、そういうのを使って、ブームを起こすんですね。ですから、ある意味で民主主義の歴史というのは、メディアと共にあるというところがあると思うんですね。ですから、その時々のリーダーというのは、いかにその時のメディアをうまく使うかと、だから、自由民権であり、大正デモクラシーであり、近衛さんもそうですけれど、戦後は出てきましたけれど、主にテレビですよね、テレビをうまく使って、そういうブームを起こしたということだと思うんですよね。ですから、そういう非常に長い歴史で考えておいた方がいいと思いますし、おっしゃるように今日の問題としましては、アベノミクスなり、小池さんの話もそうですけれども、極めて大きい影響を及ぼしているのはテレビだと思っているんですよね。メディアというのは、事実の報道という役割がありますね、それと権力のチェックというのがあると思いますけれども、先ほど申しましたように、実はメディアが、そういう政治を動かしてきているという、メディアによって政治が動いてきたという、そこをメディアにいる人間も自覚しないといけないのではないかと」
反町キャスター
「では、政治をメディアが動かすということが善いのか悪いのか?これはおかしいと思ったから、問題提起をされたのかなと思うのですけれども、そこはいかがですか?」
芹川氏
「それは善い悪いではないと思いますね。実際問題としてそういうのが起こっているわけですよ。それで、善い時もあるし、悪い時もあるわけですから。だから、それはどちらと言うことはなかなか言えないとは思いますけれども、ただ、どちらかと言うと、悪い方が多いですよね。あまり善くないケースが多いですね。とりわけワイドショー政治と言われるのがね、善い方向に動いているかと言うと、どうなのですか、空気をつくるということでしょうけれども、ちょっとどうかなと思うことは多々ありますよね」
秋元キャスター
「メディアが政治をつくっているという自覚を持っていない状態だと悪い方向へいっちゃうと、そういうことですか?」
芹川氏
「と言いたいですね。そういう感じがしますね。ですから、我々はそういう存在であるということを知ったうえで、報道にあたっていく必要があるのではないかと思うんです」
反町キャスター
「曽根さん、いかがですか?力を持ち過ぎかどうか、この議論になると思うんですよ、おそらく。たとえば、メディアの影響力がもしあるとすれば、その影響力というのは何によってもたらされているのか?法律とか、誰かの合意によって、もたらされているわけではないですね。平たく言えば、市場メカニズムでもあるわけですよ、見たくなければ見なければいい、読みたくなければ買わなければいいという話になるのだけれども、だけど、そうしたことを踏まえたうえでテレビ・新聞とかの影響力の根源は?自分でやっていてもわからない部分はあるんですよ。どう感じますか?」
曽根教授
「民主主義の前提である国民が、政治家とか、政党に直接、接触しているかと言うと、ほとんどの人は接触していないわけですね。何を通じて理解しているかというと、メディア、基本的にはメディアですね。そのメディアというのは新聞の人も、テレビの人も、SNSの人もいる。だから、国民の関心の度合いにどう応えているかがメディアの役割だと思います。その時にどのぐらい事実を伝えるのか、芹川さんがおっしゃった、それもありますけれども、だけど、報道の方針、報道姿勢というのがあるわけですね。それが買いだったり、売りだったり、先物だったり、時には空売りをしたり。だから、買っていく報道もあるわけですね」
反町キャスター
「ありますよ」
曽根教授
「だから、一方方向ではないと思うんです。仕かける人もいるし、それはダメだと否定する人もいる。だけど、ある時には湧き上がって、株価が高騰するのと同じように1つのブームができる、だけれど、それはいつか落ちる、無理やり落とす人もいるわけですよね」
反町キャスター
「いますね」
曽根教授
「市場原理と一緒ではありませんけれど、流れは非常に似ているところがある。それを見たうえで、国民の方は買いに乗る人もいるわけですよね。だけど、失望する場合もあるわけで。その中で特に政治家・政党は波に乗りたいと思っているわけですね、風に乗りたいと思っている。自分達は風をつくりたいと思っている。つくれる時ばかりではないですよね、いつも仕かけていって失敗するケースの方がたぶん多い。だけど、そういう思惑同士のぶつかり合いをメディアがたぶん上手に報道してくれている時もあるけど、いや、ちょっとそれはいき過ぎではないのという時もあるわけでね。では、いき過ぎと誰が判断するか?それはわかりません」
反町キャスター
「いかがですか?いき過ぎかどうか誰が判断するのかわからないという」
芹川氏
「そうですね、やっている本人達もわかっていないと思います、そこは。だから、勢いみたいなものがありますよね。丸山真男ではありませんけれど、『つぎつぎになりゆくいきほひ』みたいな、日本社会というのはそういうのがありますよね。もう1つは、空気というのがあると思うんですよね、この空気感みたいなのが。それは、山本七平さんではありませんけれども、日本は空気の支配というのがありますよね。安倍さんは第1次内閣の時、KYと呼ばれた、空気読めないと言われましたけれど。空気をどうつくるかという、メディアが、空気が善いか悪いかというのはともかくとしまして、そういうものが我々にあるんでしょうね。だから、その空気をつくっていくということと、その空気が善い空気なのか、まずい空気なのかということを考えながら、だから、ちょっとこれはまずいなと思うものは少し引くとか、そういうことをする必要があるのではないかという気がします」

メディアを利用する政治
秋元キャスター
「政治とメディアの関係について、世論の支持を得たい政権はメディアを利用することになります。政権とメディアとの関係が大きく変わったのは小泉政権からでした。記者が総理大臣を囲んで取材をする、いわゆるぶら下がりというのを1日に2回行うようになりまして、総理大臣の生の声がテレビに頻繁に登場するようになりました。小泉元総理は、また、『自民党をぶっ壊す』ですとか、『改革なくして成長なし』といった、短いフレーズを多用するワンフレーズ・ポリティクスと言われる政治手法で、高い支持率を維持したわけですけれども」
反町キャスター
「小泉政権におけるメディアと官邸の関係、どう見ていますか?」
佐々木氏
「私は、メディアは、1つは伝達機能を果たしたと、しかも、それが支持率その他という形で返ってくるという意味で、双方が満足するゲーム環境がある程度続いたのではないかと思っています。逆に言うと、小泉政権というものの基盤が、小泉さんに対する支持率以外にはなかったと、派閥なわけでもないし、自民党内にもいろいろあったという意味では、本人が前に出ていくしか政権基盤を強化する方法がなかったという点が、それまでの自民党政権と違っていたのではないかと。そのことを1番よく自覚していて、必死の綱渡りをされたのではないかと。それが、たまたまなのかどうかはわかりませんけれど、彼だからこそできたと。そういう意味では、政権の成り立ちと基盤というものとメディア戦略というもの、世論対策というものにきっちり対応関係があったのではないかと思っています」
反町キャスター
「なるほど。佐々木さんね、よくこういう話になると、なんちゃら劇場と言うではないですか、小池劇場もそうだし、小泉劇場もそうだし。劇場と名前がつく時は、だいたいメディアが政治の主役に踊らされている、僕らが振り回されているイメージの場合が多いと思うのですけれども、劇場型政治と言う時にメディアというのは明らかに振り回されている存在に見えますか?次は小泉さん、何を言うのだろうと思い追っかけて行って、ちょっと餌をもらってワッと流して、それで支持率がゴンと上がる、みたいなね」
佐々木氏
「そういう面が目立つとは言わないけれども、そういう位置どりかなと。ですから、それに対抗して新しい波を起こすとか、そういう機能はどこへいったのだろうかと。最初のところのセッションのテーマとはだいぶ違うメディアの機能みたいなものは見えるという感じは否めないとは思いますね」
反町キャスター
「芹川さん、いかがですか?小泉さんとメディアの関係?」
芹川氏
「それはテレビの、ワイドショーは非常に、ワイドショー政治と言われましたけれども、小泉さんを消費したわけでしょう」
反町キャスター
「消費…」
芹川氏
「消費したんですよ。それで視聴率も獲れたと、だから、ワイドショー、テレビのビジネスモデルは視聴率ですから、視聴率が獲れなくなれば、すぐ捨てるというかね…」
反町キャスター
「おっしゃる通りです」
芹川氏
「だから、獲れるような、そういう環境をつくってくれたと。善悪2元論的な、そういう抵抗勢力だとか、そういうのがありますし。あとは非常にうまいのが、感動した、とか、何かわけのわからんことをワーッと言うわけですよね、それでワーッと皆、盛り上がるという。このうまさは、先ほども出ましたけれども、瞬間芸ですよね、一発芸とは言いませんけれども、瞬間芸的な芸風というのは凄いなと思いましたね」
反町キャスター
「特にこの場合、テレビですけれども、テレビはそういう時に報道番組として、僕ら的にはワイドショーなどの情報系の番組とニュースなどの報道系の番組を分ける傾向があるのですけれど、たぶん観ている側にしたら全部一緒ですよ、テレビはそこの部分で踏みとどまるべきだったのですか?小泉劇場に没入せずに…」
芹川氏
「いや、それは無理でしょう。無理ですよね。それは、情報系番組は面白ければいいわけですから、面白ければいいというのは失礼かもしれませんが、それは面白いに越したことはないわけですから、そこでいきますよね。それで言葉もうまいのは、小泉さんは15秒でしょう、ワンフレーズ。つまり、CMと同じように、何度も使えるわけですよ。新聞にとっては見出しですよ、十数文字とか、これで言ってくれるわけですよ、これ何度も使えるわけですよ。これはうまさがあって、だから、使えるわけですよ、何度も何度も。そういうところがあったと思うんですね。だから、でも、私はあまり実は評価していないですね、この人を。ですから、評価していないというのは、いろいろなことをやりましたけれども、このメディアに関する部分で言うと、本来、政治というのは、もっと丁寧に、いろいろな利害が対立するものを丁寧に説明をして、問題点を明らかにし、お互いに調整しながら、合意を形成していくというのが政治だと思うんです。メディアはそういう役割の中にいなければいけないと思うのですけれども、小泉さんはポン、ポン、ポンと発することによって敵と味方を峻別して、もうこちらだという、こちらは切り捨てってやるわけでしょう。そうすると、非常に乱暴な政治になったのではないかという気がします」
反町キャスター
「それはもしかしたら、メディアと小泉総理との蜜月関係がもしそこにあったとすれば、日本の政治にとって不幸な時代の始まりだったと聞こえます」
芹川氏
「だから、共謀共同正犯みたいなものでしょう、そういうことで言うと、それは」

政治家の質とメディアの責任
秋元キャスター
「ここからは、政治ブームがもたらす副作用について聞いていきます。選挙で大きな風が吹きますと〇〇チルドレンという大量の新人議員が一気に当選することになりますね。たとえば、2005年の郵政選挙で誕生した83人の自民党の新人議員は小泉チルドレンと呼ばれました。さらに2009年の総選挙で143人の民主党新人議員が当選した時は小沢チルドレン、2012年の総選挙で119人の自民党議員が初当選した時には安倍チルドレン、今年7月、東京都議会議員選挙では都民ファーストの会が55議席を獲得しまして、そのうちの39人が新人議員で小池チルドレンと呼ばれました」
反町キャスター
「郵政選挙における小泉さんの圧勝とか、そのあとの政権交代における小沢さんのところの圧勝というのは、メディアの果たした役割というのは小泉チルドレンの時だったらば、要するに、郵政選挙ということでワーッと関心が集まる、そうすると、そこの部分をメディアが集中的に報道することによって、結果的に小泉チルドレンが大量に誕生したのかどうか?そのあとの政権交代に関わる部分で言うと、時の与党に対する、もしかしたらこれは過剰かどうかも含め、過剰とも言えるかもしれない、メディアの与党攻撃が結果的に振り子を大きく振らせ過ぎたのではないかと、ここはいかがですか?」
佐々木氏
「振り子の問題は毎回、毎回、振れ過ぎていて、困ったなと言って、有権者もどうかなと次の日には反省しているという具合ではないかと思うんですね」
反町キャスター
「そういう意味で言うと、日本の有権者というのは毎回、毎回、反省をしながら、大きくスイングしていると見ていますか?」
佐々木氏
「それなりにそういう感じを私は受けていますけれども。ですから、もっと言えば、振れないように投票行動すればよさそうなものだけど、そこまではまだいろいろなことが、考え方が向かっていないし、ついつい盛り上がった振り子に一種のさらに大きく乗ろうという形が、有権者の全てとは言わないけれども…」
反町キャスター
「バンドワゴンですね?」
佐々木氏
「バンドワゴンですね。バンドワゴンが、なにしろ空気を読む国民ですので、バンドワゴン効果というのもなかなか急に消えるという感じも僕はしないので、そういうこととして振り子が大きく振れる。最初の時は新制度でも極端ではなかったんです、橋本さんと小沢さんの、新進党と自民党がやった時はあまり振れなくて」
反町キャスター
「そうでしたね」
佐々木氏
「ところが、そのあとからどちらかと言うと、振れが大きくなったということは否めないところがあって。ですから、全体としてどう総括したらいいかということは、ちょっと今、自信を持ってこうだとは言い切れない感じがしています」
反町キャスター
「芹川さん、いかがですか?」
芹川氏
「佐々木先生がちょっとおっしゃいましたけれど、先ほども私が申し上げました、空気ですよね。メディアというのは空気をつくるわけでしょう。そういうある種、社会のそういうものを醸成しているわけですよね。その空気をつくっていくことによって、1つの流れを、方向をグッと突っ走らせてしまうところがあるわけですね。ですから、我々の役まわりというのは本来、空気をつくるのだけれど、その空気にちょっと待ったをかける…」
反町キャスター
「そこです」
芹川氏
「そこですね。だから、これは先生がおっしゃっている、輿論(よろん)と世論(せろん)というやつですね。世論というやつが空気だと、輿論というのが責任ある言説によって、できあがるものが輿論、本来の輿論であると、難しい字ですね。現在のは世論ですよね。我々は、いわゆる本当の、輿論をつくる、そういう世論ではなくて、そういう役回りを果たさなくてはいけないということを考えながらやっていくと。もちろん、世の中の流れがこうだ、今こういう傾向があるということを我々は報じなければいけませんけど、その時にある程度、ブレーキをかけるようなものを我々の中に持っておかなければならないということではないかと。言うのは簡単ですけれども、それがお互いに、新聞もそうですし、テレビもそうですし、そういうようなことが必要な気がしますね」
反町キャスター
「たとえば、森友、加計の報道に関して、皆が、疑惑が深まるばっかりだとワイドショーもやる中で、ちょっと待ってくださいよと、この問題は政権を徹底的に批判するほどの材料のものですか、もっと他にやるべきことはないのですか?たとえば、この問題について野党はどう言っているのですか?この問題について国会でどういう審議が行われているのですか?行うべきなのですか?と、それがもしかしたら待ったをかけるということだとすれば、これをやるのは難しいですよね?」
芹川氏
「難しいですね」
反町キャスター
「流れができちゃうと、メディアもある意味で、恥ずかしい部分もあるけれど、バンドワゴンではないですか、他社も皆、報道している中で、その中で1社だけちょっと待て、と言える、ここの部分というのはどう感じますか?」
芹川氏
「だから、それを、よく言われますけれども、沈黙の螺旋モデルというのがあるんですよ」
反町キャスター
「何ですか、それは?」
芹川氏
「エリザベート・ノエレ・ノイマンという、ドイツの社会学者が、ナチスの研究ですけれども、ある集団の中で自分の声は多数派だと、大きいと思っていたら、その人達がドンドン大きい声になっていって、それが多数を占め、逆に自分の意見が弱いと思ったらドンドン黙ってしまう、ダンマリを決め込んでしまうと。世の中、大きい方でグッと固まっていくという。だから、小っちゃい方は小っちゃい方でドンドン小さくなってしまうという、沈黙の螺旋という。それが空気をつくるメカニズムだと思うんですよ。おそらく、先ほどもありましたけれども、政治改革の時は熱病と言われましたけれども、たぶん沈黙の螺旋モデル的なものになると思うんですね。それを、待ったをかけるような、そういう言説、報道をどうするかということを、それは我々、自戒を込めてですけれど、そういうことを今、反町さんがおっしゃったような、大変だけれど、どこかで言わなければいけない」
反町キャスター
「曽根さん、どうしたらいいのですか?」
曽根教授
「それは難しいですね。制度で対処するという方法は、比例復活、この部分をどのくらい重複立候補をやめて、惜敗率で復活というのはやめるというのは、これは1つの方法です。地方ではかなりそれで小選挙区で生き残っている人の方が次も勝つんですね、これが1つ。それから、政党が新人教育をどうやるか、これも仕組みの問題で、今1つ、私が注目しているのがフランスのマクロンさんです。新人が半数ぐらい当選しているわけですね。制度が違うのに、要するに、新人があれほど当選して、この人達、今後どうなるのだろうかと。ひょっとしたら、フランスはうまくそこを乗り越えていく、何か手法を見つけることができるのか、これが1つですね。それで、先ほどからの、待ったをかけるというのは誰がかければいいのか、ですよね。本来であれば、マスメディアの役割もあるし、有識者というか、我々評論家達の仕事でもある。ただ、待ったをかけることを、たとえば、書いて、新聞に載せてくれるかというとたぶん載せないでしょうね。ここが難しい」
反町キャスター
「載せないですかね?」
芹川氏
「いや、載せますよ。それは載せますよ」
反町キャスター
「スペースの問題もあるかもしれないですよね?
芹川氏
「だから、扱いとか、それは…。どれだけバランスをとるかというのが我々ありますから。載せると思います。まったく全部捨てるという、たぶんそれはないと思います。一部あるかな、どうかわかりませんけれども」
反町キャスター
「佐々木さん、メディアにおける自制とか、待った、という言葉、期待される部分もありますか?それともメディアは極端なこと言っちゃうとあくまでビジネスなのだから、待ったというのはメディアには無いんだよという感じで見ていますか?」
佐々木氏
「ますます重要になってくるのではないか」
反町キャスター
「どういう意味ですか、それは?」
佐々木氏
「違うメディアがたくさん出てきますから、ネット含め。だから、いろいろなメディアがあるということを知り、かつ、それらに少なくともある種のバランス感覚を持って対応するというのが、これからの有権者の重要な責務ではないかと思います。ですから、新聞なり、テレビ、これまでのメディアが、一斉に1つの色に染まる必要はないのだけれども、全部ブレーキになる必要はないけれども、少なくともそういうメディアの多元性というものを気づかせてくれる役割をもっと自覚的に果たさないと、却ってネット時代は危ないのではないかという感じを持っています。ただ、それをどういう形でやるのかというのは、経営者も含めて、これまでとは違ったダイメンジョンで考える必要があるという話につながるのではないかと思います」

『世論』とメディア
秋元キャスター
「メディアが世論を把握するために使うのが、世論調査ですけれども、新聞各社が調査しました直近の安倍内閣の支持率です。朝日が33%、毎日が26%、読売が36%、日経が39%、産経が34.7%となっているのですが。芹川さん、毎日と日経で支持率が13ポイントも違うわけなのですが、こんなにも違うと、どちらが本当の世論なのかなとわからなくなるのですけれども、この世論調査の差はなぜ生まれるのでしょうか?」
芹川氏
「日経の場合は2度聞くんですよ。2度と言いますか、まず支持しますかと、支持・不支持を聞きます、言えない、わからないというのが出てきます、言えない、わからないという人に、強いて言えば、と言いますか、お気持ちに近いのはどちらですかと聞くわけです。ですから、数字が高くなるんですね、2度聞きするんですよ。毎日新聞は、それに対しまして、確か3択ですよ。3択というのは支持・不支持と、それともう1つ、関心がないというのが確か入っているはずです。ですから、第3の選択肢がありますから、そちらに入っていく人が多いので、だから、39%と26%という、こういう大きな差が出ているのだと思いますね。それがたぶん1番、大きい理由として、それだと思います」
反町キャスター
「ただ、不支持の方が、毎日と日経で比較するなら56%と52%ですよね。2度聞きするのであれば、支持が増える可能性もあるけれど、不支持が大きくなる可能性もあって、ここの部分、読者層にもよるのかな。別に日経が自分の読者層にだけ世論調査をかけるわけではないというのはわかっていますけれども、世論調査をかける時には、日本経済新聞ですけれども、と言って、それに答える人の気持ち、ないしは日経では答えないよという人もいるかもしれない。朝日新聞ですと言われた時に、朝日かよ、と切っちゃう人もいれば、朝日、そう何?という人も。受ける時点で既にベースラインが違うのではないかという見方、ここはいかがですか?」
芹川氏
「そういう面は否定できないと思いますね。そこは、ですから、ある種、読者と言いますか、読者調査に近い、ないしはその新聞社に対する親近感と言いますか、嫌悪感というのが出てくるというのがあると思います。ですから、逆に、ちょっと別な言い方をしますと、世論調査は横で比較するのではなく、トレンドを見なければいけないですね。だから、過去に比べてどうかと。おそらく毎日も日経も10ポイントぐらい下がっているわけですよ。ですから、そこの、たとえば、朝日新聞なら朝日新聞の過去に比較してどうか、日経、毎日はどうかと、そういう見方をした方がいいのだと思います。それとおっしゃる通り、そういった点はややあると思います」
反町キャスター
「芹川さん、メディアはこのように、毎月のように世論調査をかけます。各社、皆、細かく出します。その世論調査が政策の選定とか、決定のプロセスにおいて何らかの影響を及ぼしているのかどうか?そこはどう見ていますか?」
芹川氏
「それは及ぼしているのではないでしょうか。と言うのは、我々の調査だけではなく、それは内閣府とか、官邸はやっていますね。彼らは彼らで独自の調査をしていますので、そこはある種、世論がどうかというのをチェックしながら、やっている。その数字は表に出しませんよね。だから、そういうところは、おっしゃったように、党の場合は党が別に選挙をやっていますよね、それは。だから、彼らが世論というのを見ているというのは間違いないと思いますし、新聞社がやる調査の中にも、データとして出てくるのがありますので、そういうのを見ている。よく昔、言われましたけど、現在やっておられませんけれども、『新報道2001』の世論調査をやっておられましたね」
反町キャスター
「首都圏500…」
芹川氏
「それが、官邸では、先行指標だと言って、彼らは、昔は朝、月曜の朝ですね、会議をやっていました。官房長官・副長官の。現在はやっていませんけれども、その時、何のデータで見ていたかと言うと、『新報道2001』のデータを見て、現在の動向をチェックしていたというのがありますから。非常に気にしながらやっているというのは間違いないと思います」
反町キャスター
「過去の古い政治家に比べると、現在の、政治家の方が、世論を気にする、政策決定において、それは強まっていると感じますか?」
芹川氏
「それは、昔、自民党は派閥の時代ですから、派閥の合従連衡で決まっていますよね、選挙は。現在は小選挙区ですから、ポル・ポリティクスと言われるように世論調査政治ですから、だから、その動向によって、リーダーも代わるわけでしょう。ですから、派閥の善し悪しは別としましても、派閥の時代から世論調査の時代みたいになってきているというところがあるのではないですか」
反町キャスター
「曽根さん、いかがですか?世論調査が政策決定に影響をもたらすこの状況をどう感じていますか?」
曽根教授
「うん、世論調査を見ていると、理屈が通れば消費税増税を認めるという世論調査の動向は見てとれるんですよ。それを育てる政治家は非常に少ないですね。なぜかと言うと、選挙が近づくと、消費税、嫌だっていう世論がまた増えるんですよ。そちらに乗るんですね。だから、世論の見方ですけれども、これは訴え方、あるいは説明の仕方で、国民を引きつける理屈づけをして、政策を打ち出せるという方にいくのかなと思っても、そちらにいかない、これを繰り返していますよね」
反町キャスター
「佐々木さん、政治が世論を見ながらやっていることについてはどう感じていますか?」
佐々木氏
「これは解散の頻度とか、選挙の頻度という問題とも絡んでいると思いますね。日本は非常によく選挙をやる国で、やらなくてもいい選挙までやっているのではないかと疑うような時もあるくらい総選挙をやるんですよね。むしろ安定した立法期、政策を実行する時期は4年なら4年という形でフィックスし、それで世論調査は最後の半年くらいで世論調査、そこで勝負をかける。つまり、それまでは、要するに仕事の期間、それから、選挙の期間が半年なり9か月なりあるというように、時間のとり方の問題が、私は非常に重要ではないかと。それが非常に、いつ常在戦場でいつ解散あるかわからないみたいな話ばっかりやっているようでは、どうしても世論調査の目先の話に引きずられてしまうのは当たり前ではないでしょうか。だから、それは制度上できないわけでもないし、政治的にできるかどうかはともかくとして、その時間の確保。だから、非常に日本は選挙を気にしないで政策をやれる時間が少ないように、少ないように、自分達がしてしまっているという問題を1度、政治の方に投げ返すべきだろうなと思います。そうすると、少し距離を置いて、世論調査から、距離を置いて政策遂行できる時期が、たとえば、2年半あるというようなスタイルの政治にもっていくのが大事ではないかなというのが私の意見です」
反町キャスター
「それは、つまり、総理の解散権の制限ですよね?」
佐々木氏
「事実上の制限、そう。だから、不信任案が出て、可決されたような時は解散をしてもいいのだけれども、いわゆる七条解散と称するものを、しょっちゅう天から降ってくるような気分では落ち着いた立法作業というものがなかなかできにくいということをもっと考えるべきではないかと、そう考えています」
反町キャスター
「芹川さん、世論形成におけるメディアの役割は、新聞の果たしている役割とテレビの果たしている役割、あるいは雑誌があるのかもしれないし、現在はネット、SNSも出てきました。それぞれメディアによって、媒体によって、世論形成に対する影響力、影響の仕方は違うのですか?」
芹川氏
「それは違うのではないですかね。ですから、新聞があって、雑誌、週刊誌と、おっしゃったように、テレビ、放送があって、ネットがあるという。だから、違っていて、その違いがあることがたぶん民主主義にとっては善いことであると言いますか、多元的な、言論多元性ですよね。だから、新聞はここまでしか書けないよ、書かないよというのがあって、週刊誌はもっとそこは書きますよと、テレビは映像ですね、音声と、それを中心に流しますよとなって、ネットはネットの言論空間というのは自由に、いろいろな意味で、自由な、ちょっといろいろ問題のあるのもありますけれど、そういうのが発せられているということで。そこでお互いのチェックが働いているのではないですかね。新聞は新聞、雑誌は雑誌、テレビは…、横のチェックも働きますし、つまり、この4層の間のチェックも働いているわけですから、そういうチェックが働いているということは決して悪いことではないと思いますね」

メディア・リテラシー
秋元キャスター
「マルチメディアの中で、受け手側に求められるものはどういったことがあるのかを聞いていきます。曽根さん、いかがですか?」
曽根教授
「根拠のない発信・ニュース、それ見抜く方法が必要ですよね」
反町キャスター
「どうすればいいのですか?」
曽根教授
「たとえば、世論調査と言うけれども、何パーセント賛成、何パーセント反対と言うけれども、新橋の駅前100人に聞きましたと、これでいいのですか、あるいはどこかの言論機関が調査しましたと、どういう手法ですか、ちょっとだけ見たらわかりますよ。サンプルいくつですか、手法は何ですかと。そのリテラシー、つまり、世論調査にしろ、あるいは何かを主張するにしろ、根拠はどこかにないとおかしいですね。数字の根拠とか、あるいは政策の根拠とか、それをチェックする癖をつける必要がある。難しいですけれど、だけど、疑うというのは本当かどうかを疑うというよりも、出所をもう少し気にした方がいいと思う」
反町キャスター
「アメリカのトランプ大統領が当選した背景に、SNSないしはブライトバードニュースみたいな、やや荒っぽく見えるメディアが世の中のトレンドをつくったのではないかという見立てがあります。その点についてはどう感じていますか?」
曽根教授
「それはいろいろな調査、ケンブリッジ・アナリティカみたいなところが仕組んだものというのが結構あります。ビッグデータ解析、クラウド解析、それから、SNSを解析、たとえば、フェイスブックの、いいね、というのをどのくらいの頻度で反応をしているかなんていうこともうまくつかみながら予測するという。メディアを使う方はすごく発達しているわけですね。だから、逆に言うと、それに乗っちゃったら、もういいように踊らされてしまう。だから、リテラシーというのは、つまり、昔は新聞の読み方だったのですが、現在はSNSの使い方、これが重要ですよ」
秋元キャスター
「佐々木さん、いかがですか?」
佐々木氏
「1つのメディアだけに依存しない、いろいろなメディアというものと付き合うように心がけるということが大変必要だろうと思います。昨年あたりから、先進国の民主制がいろいろな形で変調をきたしています。その意味で、日本は大丈夫だ、という意見はあるけれども、わかりません。1つは、メディア環境が大きく変わったということが1つのファクターであることも事実であろうと思いますし、それから、これからAI(人工知能)とか、いろいろな形で産業構造も変わってくると思いますので、大きな変化の時代に遭遇するという中で、非常に誰にしろ判断が難しい時代に入っていくということですね。そういう時代にはしばしば流行しやすいのが、複雑な問題を単純化して、1点に向けて多くの人を動員していくというのが流行りやすいので、これには注意しなければいかん、と思っています。そのためには少々世の中というのは面倒くさくても、複雑なものであるからして、いろいろなメディアにアンテナを張って、いろいろな情報をとろうという心がけを持つというのは、国民・有権者としてリテラシーを結果的に高めるための前提条件がそれではないかと。ですから、現在、諸外国で起こっていることはこういった表現が適切かはどうかわかりませんけれども、反面教師にして、我々日本のデモクラシーはそうならないのだという強い気持ちを持って、これから取り組んでいくという姿勢が期待されるのではないかと思っています」
反町キャスター
「その意味で言うと、新聞だったら読みたいところを読むと言いながらも他の記事も目に入ります、テレビのニュースは全体の中でプログラムが決まっていて、社会ネタも、経済ネタも、政治ネタも、スポーツネタもあります、皆、見させられるわけです。ネットは自分でクリックして見たいものを選ぶ、レストランで言うと、バイキングみたいなもので、好きなものだけ食べる状況になるわけではないですか。言われたような、踏みとどまるとか、いろいろなものを見ようとする負担を、これから有権者がやらなくてはいけない中で、ネットの世界というのはそれに逆行している、自分のほしいものだけ手に入れる、そこはいかがですか?」
佐々木氏
「その可能性が社会の分極化という問題との関連で強調され、指摘されることはご案内の通りでありまして、それは大いに説得性のある話だろうと思っています。ですから、いろいろなメディアの多元性に注目するというのは、それにネットに対して距離を置くということを裏側から言えば、そういう多元性という話になるのだろうと思います。そこを、どこまで多くの人達が心がけられるかというのが、リテラシーの、いわば培養液になるわけでありまして。そうならないとドンドン巻き込まれていってしまって、さらにもっと過激な話が増幅されてくるということは、どうしても、民主的社会を運営していくうえでは避けなければいけない大きな問題ではないかと、そういう点で先ほど申し上げたようなことを申したわけであります」
反町キャスター
「芹川さん、いかがですか?受け手に求められる姿勢は」
芹川氏
「そうですね、両先生のお話で尽きていると思いますけれども、癖と言いますか、メディアの癖みたいなものを、知ってもらいないなということがありますね。今、媒体が、メディアが4つというお話をして、それぞれがどういう機能を果たしているか、どういう特徴があるのかということ。比較ですよね、今度は同じメディアの中でも比較をするという。なかなかそれは難しいと思いますけれど、癖をちょっと考えていただいて、比較してもらって、そのうえでよく自分で考えるということです。ですから、絶対視はしない方がいいと思いますね、それぞれ何か特色がありますけれども、自分がその中にいて言うのも変なのですけれども、だから、お互い相対化して見ていくみたいなところを、これも本当に自戒を込めてですけれども、そういうところも必要な気がします」
反町キャスター
「裏返すと中立公平なメディアはないと言っているように聞こえます」
芹川氏
「うん、弊社は中立公平でやっていますよ。皆、そうやってやっているわけですけれども、それは、ですから、ポジショニングがそれぞれありますから、ポジショニングの中で考えていくということだと思います」

佐々木毅 元東京大学総長の提言 『メディアの多元性』
佐々木氏
「これは政治報道の現状に鑑みて、いろいろなメディアを逍遥するということの重要性と、それがポリティカル・リテラシーの向上につながるという意味で提言させていただきました」

曽根泰教 慶應義塾大学教授の提言 『Post-Truth 時代で生き残るメディア』
曽根教授
「ポスト・トゥルース時代、フェイクニュースがはびこっている時代に、読者に代わって、視聴者に代わって、取材をして、裏をとってくれる既存メディア、私は期待しているんです。だから、裏をとって根拠があると、月並みな議論になっちゃうけれども、月並みな議論が、尖がった主張もしてほしい」

芹川洋一 日本経済新聞社論説主幹の提言 『中和性』
芹川氏
「私は中和性という、これは石橋湛山が2・26事件のあとに、東洋経済の社説で、社説の言葉ですけれども。彼ら、彼らと言うか、当時のメディアが2・26事件の、何かのきっかけをつくっていたのではないかということを反省していましてね。言論機関というものの任務は何かと言うと、極端な議論に対して、中和性と言いますか、与えて、健全な世論と言いますか、そういうものが何処らへんにあるのかということを示していくのだということを言っていますけれど。私は当事者としまして中和性を与えるような、そういうことが政治報道において必要ではないかなと思っています」