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2017年7月21日(金)
『ヒアリ』SHOCK 防除の第一人者が警告

ゲスト

鴨下一郎
元環境大臣 自由民主党衆議院議員
五箇公一
国立環境研究所生物・生態系環境研究センター室長
香坂玲
東北大学大学院環境科学研究科教授

駆除『最前線』と生態
松村キャスター
「強い毒性を持つ南米原産の外来生物ヒアリが5月に国内で初めて発見され、もうすぐ2か月です。その後も日本各地で確認され、最悪の外来生物とも言われるヒアリを根絶しようと、防除が進められています。そこでヒアリ対策の最前線を検証すると共に生態系や環境に大きな影響を与える侵略的外来生物のリスクと対策、共存の可能性について聞いていきます。まずはヒアリの主な発見場所ということで、強い毒を持つ南米原産のアリ・ヒアリですが、5月26日に兵庫県尼崎市で発見されて以降、先月、神戸港、名古屋港、大阪港などで発見され、今月に入って東京の大井ふ頭、横浜の本牧ふ頭で発見されています、関東圏でも発見されました。その多くは外国から運ばれたコンテナの内部やその周辺で見つかっています。また、大阪港などでは女王アリも発見されているということです。日本でも相次いでヒアリが発見されています。五箇さん、日本への侵入というのは予測されていましたでしょうか?」
五箇氏
「はい、結構前から、我々、外来種を扱う研究者の間では特にこのヒアリというのはいずれ日本に来るだろうということは、もう10年以上前から予想はされていたんですね。その背景としては、特にグローバリゼーションが進行するという中で21世紀に入ってから、このヒアリというのがアジア太平洋地域に急速に分布を広げて、わずか5年ぐらいの間に、中国南部まで来てしまったということで。中国南部に入ったということは、貿易相手国として非常に大きい中国に入っている、しかも、中国南部というのが1番、農産物であるとか、いろいろな工業産物の輸出港になっていますから。いずれ日本に来るというのは時間の問題と考えている中で、警戒してはいたんですね、我々としても。そういった中で今回見つかって、それが次々とこういったいわゆる国際港湾都市で見つかっていると」
反町キャスター
「もともとヒアリというのは南米原産と言われていますけれども、今の話を聞いていると、南米原産のヒアリが中国から入って来たという見方をされているのですか?」
五箇氏
「結局、中国から入って来ているコンテナの中から実際に見つかっているということなので、日本に入って来ているものはほとんどアジアから、アジアの侵入地から持ち出されているであろうと考えられる。もちろん、正直なところ、ヒアリ自体はオセアニアから東南アジア、それから、中国南部、台湾といったアジア地域にかなり広がっているので、いろいろなバイパスを経て、どういうルートで入って来るかというのは、トレースはいろいろと今後も調査していかないとわからないところはありますが、概ね現時点では中国から運ばれているタンカー及びコンテナから見つかって、それが置かれたコンテナヤード、あるいはそれが運ばれた先でヒアリが発見されているということから、中国の、いわゆる広東省ですね。そういったところから運び出される荷物が現在1番マークされるべき荷物だと考えられています」
反町キャスター
「主な発見場所で、たとえば、東京、横浜、名古屋、大阪となると国内においても北限というのがあるのですか?」
五箇氏
「実際、侵入が何回もこういった形で繰り返される中、現在のところまだ野外で巣が見つかっていないという状況を考えると、日本の気候自体は彼らにとってはちょっとまだハードで定着できないかもしれないということも言われています。と言うのも、このヒアリ自体は熱帯地域に主に生息域をもっているので、現実は分布を広げているところも、主に熱帯・亜熱帯地域が中心ですね。だから、日本に来て定着するとすれば、そういった中で彼らが生き残れる環境を、彼らがどう見つけるか。つまり、日本自体も今日みたいに暑い日もあるように温暖化の問題であったり、都市化によるヒートアイランド、それから、そういった都市や宅地を造成するという中で、要は、環境がドンドンかく乱されていて、言ってみれば、従来の日本の自然ではないという条件の中では意外と冬でも、冬を越せるという暖かい空間が、要は、たとえば、アスファルトの割れ目の中であったりとか、そういった中で、地熱がある程度暖かい。要は、都市であれば電気…、いわゆる配電線が張り巡らされているのと同時に、下水道ですね、そういったところで暖かい空間があれば彼らが生き残れるエリアというのは提供される」
松村キャスター
「こちら五箇さんが描かれたヒアリのイラストです。ヒアリの原産地は南米で体長は2.5mmから6mmほど、背中に2つのこぶ状のものがありまして、お尻に毒針があって、人や家畜を刺すこともあります。このヒアリ、どれぐらい危険なものなのでしょうか?」
五箇氏
「要は、ハチと同じで毒針を、アリというのは針を持っています、特にヒアリはその毒針が非常に毒性が強いと、人間の場合は刺されるとすごい痛みが、まず走ると。僕自身も刺されたことがあるのですけれども、フロリダに調査に行った時に、20か所ぐらい腕を刺されたことがありまして…」
反町キャスター
「死には至っていないからここにいらっしゃるのですけれども…」
松村キャスター
「でも、痛いですよね?」
五箇氏
「すごく痛かったですね。当たった瞬間に針出して刺してくるので、本当に火の粉を散らしたような火傷を、本当に火傷をしたような痛さが走る、まさに文字通りヒアリという痛さで。僕の場合は、幸い体質的に問題なかったので、痛いで済んだわけですが、これがアナフィラキシーショックという症状が出るというのが…」
反町キャスター
「それは体質的なものですか?」
五箇氏
「体質ですね。アレルギー体質、要は、昆虫が持っている毒素とかタンパクに対して異常に反応するという体質の人っていうのが何パーセントかいるんです。そういった人が刺されると、たった1匹、2匹でも場合によっては全身症状が生じ、要は、全身蕁麻疹が走ったり、あるいは呼吸困難に陥ったり、場合によっては心不全を起こして死に至るというケースはあるんですね。もちろん、現在はそういった抗アレルギー薬というのもありますから、アナフィラキシーが出てすぐにきちんとそういった対症療法を受ければ、死に至ることはありません。だから、現代に入って、そういったアリとか、あるいはハチに刺されて死ぬケースというのは非常に少なくなっていると。ただ、ここで忘れてはいけないのが、死者数自体は確かに台湾や中国でもゼロだけれども、かつてアメリカでは死者が出ているという事例があるんですね。それは、アメリカ合衆国自体はヒアリの侵入の歴史が長くて、当初はそういった外来種という概念もなければ、そういったアナフィラキシーに対する対応法という部分も十分普及していなかったということもあって、実際問題100人という数字は大げさと言われていますが」
反町キャスター
「関係者が1回発表しましたよね?」
五箇氏
「ええ、ただ、根拠がないというだけで、実は過大評価なのか、過小評価なのかもわからないですよね、現実は」
香坂教授
「…」
反町キャスター
「実数はわからないのですか?現在、アメリカで何人亡くなっているという被害実態は」
五箇氏
「最近ですと、2016年に1名亡くなっているというのはわかっています。だから、確実に刺されて放置すれば死ぬという毒性を持っている。たとえば、日本でもスズメバチに刺されて死ぬケースというのが、20人から30人ぐらい出ていますね」
香坂教授
「年間20人、そうですね」
五箇氏
「それはほとんどが実は林業従事者です、ほとんどが。なぜかと言ったら林業で、林の中で1人で作業していて、アナフィラキシーになっても気づかれずに亡くなってしまうというケースがある。だから、町の中で刺されても大概の人はちゃんと病院に行けるから死に至らないということなので。だから、ヒアリのケースも同じで、台湾や、中国でも、ヒアリというアリの存在というのは知られており、刺されれば痛いし、それで病院に行くということがちゃんとできるから死者がゼロになっているということは、反面、日本でもそういった教育をキチッとしておけば心配はない。ただし、必要なのは知っておくということになります」
香坂教授
「あと…、どうぞ、すみません」
五箇氏
「だから、皆さんに知っていただきたいのはヒアリというアリにもし刺されれば、すごく痛いです。だから、アリに刺されて痛かったらまずヒアリを疑うと。そうなった時、1人ぼっちにならないということが大事です。要は、必ず周りに人がいるというところで、何かあれば助けを呼べるということ、状態にしておく。ヒアリの場合、アナフィラキシーが出るのは10分から20分で出ますから、割と早く出ます。10分、20分経っても、何ともなければ、自分は大丈夫だと思って…」
反町キャスター
「どうなると、アナフィラキシーショックなのですか?」
五箇氏
「まず動悸が速くなったり、すごく全身に蕁麻疹が出てきたり、明らかに異常が生じます。それで眩暈を感じるとか、そういった全身症状が出てくるという。間違いなく変だと思った時にはすぐに救急車を呼んでいただいて、病院に行っていただくということが大事ですね」
松村キャスター
「ここからは現在、環境省が行っているヒアリの対策を見ていきます。環境省は今後、調査範囲を68の港に拡大する予定で、既に主要港湾7か所での緊急調査は終了しているということです。こうした港の調査に伴いまして、ベイト剤と呼ばれる殺虫成分入りの餌の設置が検討されましたが、これは中止されました。その代わりに捕獲用の罠、これを設置することが現在、検討されているということです。この変更というのは、五箇さんの指摘があったからということですが、ベイト剤は置かない方がいいということですか?」
五箇氏
「正確に言うと、ベイト剤が効力を発揮するのは巣がある時に、その巣に持ち帰らせることで、その巣の生産を抑えるという効力ですね。要は、まだいるか、いないかがわからないところに予防剤として置いてしまうと、結果的にそこに住んでいる在来のアリや、あるいは在来の虫、昆虫類、そういったものに対して、それが毒性を示してしまうと、そこが砂漠化してしまうと、何もいなくなってしまう、むしろ空き地ができてしまって、かえって外来種が入りやすくなるということが起こり得ると。なおかつ薬自体も無料ではありません、お金がかかることですから、そういったムダ打ちをするのではなく、ヒアリがいるとわかっているところに集中投下をするといった、効率的な防除をする、しなくてはならないと。そのためには、いわゆる捕獲用罠は、捕獲して減らすための罠ではなくて、そこにいるアリが何かというのを調べるために罠を仕かけて、そこを通っていくアリを捕まえ、そこにヒアリが混じっていないかどうかを確認するということです。そこでヒアリが1匹でも引っ掛かれば、そこに巣があるかもしれないということで集中的に調査をして、それでヒアリの集団が存在するとわかれば、そこにしっかりベイト剤を置いて、囲んで、そこに餌を持ち帰らせて、そこにいる幼虫、あるいは女王アリといったものにその餌を与えることで巣を崩壊させるということが必要ですね。肝心なのは、アリというのは生命体としては社会性昆虫として、いわゆるコロニーで生きているんです。我々が目にしているのは働きアリと言って、女王が生産して、そういった幼虫や卵を世話するために、餌を獲ってきたりするために働いているアリ達です。それをいくら叩いても、巣の中で生産が続いている限りはいつまで経ってもヒアリというのは生まれ続け、侵略を続けることになるから、叩くべきは巣の中ですね。その時にベイト剤というものが活躍するということで、最初から予防薬として置いてしまうとなると結構、それはかなりの量の薬を必要とすると同時にかなりムダに在来の生き物に対して悪影響を及ぼす可能性がある。だから、むしろサーベイランス、調査という網、調査の目をもっと細かくして、ヒアリがいるというのを、いかに早く検出するかということが大事になります」
香坂教授
「モニタリングを息長くやらなければいけない、長期戦になるんです。だから、ある意味ドンと落として、一時的に殺すということではなくて、長期的な視点からモニタリングですとか、息の長い取り組みというものが非常に大事になって、正しく恐れて息を長く対策を打っていくということが大事なのではないかなと思うんですね」
反町キャスター
「1週間、10日のオペレーションではないですね?どのくらいのスパンで見た方がいいのですか?罠をかけて、存在を確認したうえで、絞り込んでエリアを確定したところでベイト剤みたいな」
五箇氏
「基本的に見つかった場合、我々が先行事例としてやっているのはアルゼンチンアリと呼ばれる南米原産のアリの、これは毒を持っていなくて、人に被害は及ぼさないのですが、増殖力自体はヒアリ以上と言われているアリが既に日本に侵入し、分布を広げていて、東京や、それこそ横浜…」
香坂教授
「大田区とかですね」
反町キャスター
「いたのですか?」
香坂教授
「家をやっぱり傷めてしまうので」
反町キャスター
「白アリみたいな感じ?」
五箇氏
「いや、すごく増殖率が強いので、まず在来のアリを全部駆逐してしまうと同時に、家の中まで入って来て、人の家の食べ物を食べると同時に、人の布団の中にまで巣をつくるという、要は、不快害虫として非常に大きな問題なので」
反町キャスター
「すごいですね」
香坂教授
「そういうのが知れちゃうと、不動産価値にも影響しかねないですね。なので、皆さん、あまり言いたがらなくなってしまうとか、そういうちょっと風評被害的な…」
反町キャスター
「それはいつ頃の話ですか?」
五箇氏
「それが、侵入が確認されたのが1993年で、広島県の廿日市で見つかったんです。そのあと、先ほど言ったように、東京とか、横浜とか、いろいろな国際港、もうヒアリと同じように国際港湾都市を中心に分布が、侵入地が広がって…」
香坂教授
「西日本中心ですよね」
五箇氏
「いや、違います。現在、東京とかにも行っていて」
香坂教授
「東京にも来ていますけれども」
五箇氏
「それを特定外来生物に指定されたということで、国立環境研究所の方では2011年から防除のマニュアルをつくることを目的として、防除試験を東京都の大田区でやった結果、3年間で根絶が世界で初めて成功したと」
反町キャスター
「それは全国で?」
五箇氏
「いや、大田区というエリアでまず根絶しました。要は、そういった形で1つの集団を根絶できたというのは世界でも稀だったんですね。非常に悲しいことに、その根絶宣言をプレスリリースで出した日に、ヒアリの侵入が確認されて、我々の成果はほとんどが見えなくなってしまった」
反町キャスター
「次のお客さんが来ちゃった?」
五箇氏
「ただ、実は我々がアルゼンチンアリでそれを一生懸命やっていたというのは、リハーサルだったんです。要は、ヒアリが来た時にすぐにでも迎え撃てるように、まずはアルゼンチンアリを駆除できるようにしておこうということで、それで完成しています、だから、その手法自体は」
反町キャスター
「マニュアルというか、手法自体は確立しているんですね?」
五箇氏
「できています、マニュアル…、それは、それにかかる年月は3年ぐらいかかるんです」
反町キャスター
「3年?」
五箇氏
「うん」
香坂教授
「ニュージーランドの場合5年、モニタリングをしっかりしたとか、そういうケースもありますので」
五箇氏
「ちなみに、ニュージーランドがヒアリで一応、唯一成功している。そのニュージーランドもアルゼンチンアリの根絶には失敗しているんです。だから、その意味では、我々の方が現在、アルゼンチンアリをきちんと抑えられるということは、ヒアリも早く見つけられれば、必ず根絶はできると」

駆除『最前線』と対策
松村キャスター
「ここからは各国のヒアリへの対策を見ていきます。1930年代に初めてヒアリがアメリカで確認されましたが、駆除などの対策費として年間およそ7800億円を費やしているとの調査もあります。現在では生息域がアメリカ南部全域に拡大してしまっています。2001年に初めてヒアリが発見されたオーストラリアでは、15年間で270億円をかけていますが、現在のところまだ根絶はできていないという状況です。一方、同じく2001年にヒアリが発見されたニュージーランドでは対策費として、およそ3年間でおよそ1億2000万円をかけて、こちらは2003年に根絶に成功しています。五箇さん、費用と効果、これが比例していないようにも見えるのですけれども…」
五箇氏
「特にアメリカのケースというのは非常に不幸なことに、侵入した年代が早くて、1930年から1940年ぐらいから入っちゃっていて、当時は外来種という概念もそんなにはしっかりしていない中で多くの国民がヒアリに対し、それほど警戒していなかったのですね。だから、放置された期間が長く、すごく分布が広がってしまって、なおかつ人口密度が低いから、結局、被害に遭いだした時には、もう手遅れになるぐらい広がってしまっていたと。実際、僕もフロリダに行きましたけれど、マイアミビーチにまでヒアリがいると、あの白い砂のビーチに」
反町キャスター
「えっ?」
五箇氏
「その中で皆、ビーチバレーをしているからアメリカ人はタフだなと思いましたね。それぐらいの、たぶんもう抑えが効かないという状態になっているから、いくらお金をかけても抑えが効かないという」
反町キャスター
「それでも7800億円もかけているということは、危険性は認識しているんですよね?」
五箇氏
「亡くなっている方もおられますし、非常に痛いという意味で、少なくとも自分の家の庭とか、あるいは畑からは排除しなくてはならないわけですから」
反町キャスター
「では、これはもしかしたら政府単位とか、州政府、そういうレベルではなくて、個人的にウチの畑におけるヒアリ対策?」
五箇氏
「ええ、そういうものの全てになりますね。だから、そういった意味で、広がってしまうと、それだけの費用をかけてもギリギリ被害を、要は、人間の被害という部分を防げるか防げないかという。現実それでも、現在でも被害が出ていることを考えると、どれだけ広がってしまうと抑えが効かないかということがよくわかると思います」
香坂教授
「あとそれぞれの国は農業をかなり大規模にされている国というのもありますし、オーストラリアやニュージーランドも農業大国であるという、ちょっと日本と、日本も農業、非常に盛んなのですけれど、ちょっとそういう国の事情も若干違うのかなという気はします」
反町キャスター
「なるほど。そういう意味で言うと、日本でやる場合には、こういった国々を見ると、どういった対抗策と言うか、費用規模とかは?」
五箇氏
「まだ日本は、だから、全然、侵入というか、まだ巣1つも見つかっていない状況ですから。現実は水際対策及び発見された個体ですね、そういった部分に対する駆除という部分の費用になりますから、桁違いに現在のところは低い金額になると思います」
反町キャスター
「現在だったら安く済む?」
五箇氏
「安く済みます。ただ、それを継続せざるを得ないですね。常に毎年毎年、毎月毎月、たくさんの荷物が入って来る中で、常にそうやって発見しては抑えるということをずっと続けなければいけないわけですから、そういった意味では、通算の予算額はかなりの金額になってくると思います」
香坂教授
「侵略的外来種の対策除去もあれですけれども、予防こそが1番費用対効果がいい。水際が1番、結局、費用対効果がいい。あとで根絶するとか、後手にまわると非常にコスト的にもかさむケースが多いということは一般的によく言われます」
反町キャスター
「たとえば、ヒアリに絞った予防とかではなくて、侵略的外来種はあとでやりますけれども、いろいろな、何が来るかわからないものに非常に広く網をかけて、港やら、空港やら、外からものが入って来るであろう場所に網をかけてというのは、これも待ちの姿勢としては非常に広くて、この費用と人手と時間たるやすごい金額にならないのですか?」
香坂教授
「でも、それは便利さの反面と言いますか、いろいろなものを我々、輸入して、いろいろな人が行き来するということ、どうしても付随して発生するリスクの部分という面もあると思います」
反町キャスター
「鴨下さん、どうですか?待ちの広さ、お金がかかるのではないかなと」
鴨下議員
「でも、非意図的に入って来るものについては、そういうサーベイランスするしかないわけでありますから。だから、そういう専門家をそれぞれの水際に置きながら、いざ入ってきた時にはそこで局所的にピンポイントでやってつけていく、こういうようなことをずっと続けないといけないわけでありまして」
五箇氏
「本当おっしゃる通りで、モグラ叩きに近しいものがあると思いますね。現状、日本の経済状況を考えるとインポートですね、輸入品に非常に大きく依存して生きている以上はこういった外来種が常に、ヒアリに限らず、新手の外来種が常に入って来るという状況が続く以上は、入って来てちょっとでも見つかれば、それを叩く、また、同じように繰り返して、入って来るとそれをまた叩くと。要は、見つけては叩くの繰り返しをせざるを得なくて、そのためには、見つける方法と叩く方法というのをあらかじめしっかり準備しておくことが大事になってくるということですね」
反町キャスター
「日本政府は環境省の仕事なのですか?農水省の仕事なのですか?」
鴨下議員
「本来は、環境省はサーベイランスをやっているわけですけれど。ただ、今回、ヒアリの件については昨日、関係閣僚会議を開いて、結構、画期的な話でして。ああいうような形で、外来生物で人、あるいは社会に害をなすようなものについては、こうやろうという、対応を考え始めたという意味では、政府を挙げて始めたというのは非常に意義があると思います。ただ、五箇さんがおっしゃっているように、それをずっとやり続けないといけないという、こういう辛さは、これはグローバル化の社会の中では、致し方がない話でありますから、そういう努力をしていくことに尽きると」
五箇氏
「ニュージーランドでは巣穴が見つかった場合は、巣穴を中心として、徹底的に調査して、巣を中心として1km半径のあたりに働きアリがウロウロするだろうということで、その周辺に10mのグリッドをつくって、網目状に、そこにベイト剤を1個、1個置いていく。かなり網の目上にベイト剤を仕かけて、確実に巣の中に毒餌を持ち帰らせるという。さらに、彼らは羽アリをつくって、女王アリが飛んでいくので、その外側5kmの範囲で、外側の円にも非常線を張って、適宜、ベイト剤を空中からばら撒いておくと。なおかつ1km範囲内に置いてあるものは一切持ち出しを禁止するという形で、完全に非常線を張る形で、巣というものを撲滅すると」
反町キャスター
「ニュージーランドは」
五箇氏
「そう」
反町キャスター
「日本でそういうやり方ができますか?」
五箇氏
「向こうだと牧草地とか、広い平原だから、こういう形で空中散布も含め、できるので、我々がやったアルゼンチンアリもそうですが、日本の場合、まず定着するとしたら、街の中とか、あるいは家の中、公園と、市街地のところで、さすがにこういったドローンとか、セスナ機を飛ばして薬をまくというわけにはいきませんので、地道に街の中で、薬を置ける場所をきちんと計算して、しっかり薬を配置すると。それでその周辺の中にいる、巣を確実に叩いていくことが大事になってくる」
反町キャスター
「ものすごく手間がかかりますね」
香坂教授
「ただ、街中だと、道路とか、川とか、そういったもので切れるケースもあります。都市部の中だと1回道路で切れているので、この円が切れるケースが」
反町キャスター
「ただ、港ではコンクリートの割れ目にいたと言われる…」
五箇氏
「だから、そのケースから見ると、意外と、巣穴というのは土がなくても、彼らはそういった空間を使ってもうまくやれると。アルゼンチンアリも、そういったアリだったのですけれども、街中のコンクリートの隙間とかを利用して…。ヒアリもそういった生き方をするとすれば、うまく街の中で空間配置ですね、彼らがどういった範囲で動いているかと、要は働きアリの動く範囲を特定することで、そこに薬を置いて、確実に持ち帰らせるということを…。それで結果として2年から3年かけて、じっくりと毎月、毎月、薬を置き変えるという形をとって」
反町キャスター
「現在、発見された場所全部に、このオペレーションをやっていく?」
五箇氏
「現在の段階では巣が見つかっているわけではないので、これはあくまでも巣が見つかった時のオペレーションとなります。皆さん、今の段階は、上陸している現場を我々が押えているに過ぎなくて、巣をつくって、定着している現場を押えていないですね。だから、そういった意味では、ニュージーランドの作戦以前」
反町キャスター
「700匹もいて、巣になっていないのですか?」
五箇氏
「ひょっとしたらそこで生産を開始していたかもしれないと。だから、その部分に関しては、見えるアリは全部、殺虫剤で殺したうえで、その周囲にはベイト剤を置いて、封じ込めをやっているという状態になります。ただ、今後の動向です。それが地下にどうつながっていくか。どこかから出てくるかもしれない。要は、彼らは地下に王国をつくり、地下道をつくって、違うところにも巣穴をつくる。そういったケースがないかを十分に周囲をモニタリングし、港の外にいつの間にかそういった巣穴ができているかも知れないということも想定して、監視は強化していく必要がある」
香坂教授
「モニタリングが大事ということと、先ほど、五箇さんが書いてくれた、網の目も強弱をつけられることもあるかもしれないと。どれだけの密度でやるかということで、餌の量をどれだけやるかという」
反町キャスター
「そのエリアにいる他のアリもドンドン死んでいくわけではないですか?多様化から見た場合、こういうやり方は仕方ないなと割り切るしかないと感じますか?」
香坂教授
「発見されて、巣があってという状況と、普段の生態系をどうしていくのかという議論ですね。その中のバランスで侵略的なリスクが高い場面にあっては、そういった対処法も、見つかった場合ですね、1つの方法としてやるということになる」
五箇氏
「ご指摘は、アルゼンチンアリを防除する時に同じ議論があって、当然、置いたところは日本のアリも、あるいはアリと関係のない、ダンゴムシとか、徘徊性の昆虫も死ぬであろうと心配されるのですけれども、我々が試験をしていく中で、アルゼンチンアリというアリの在来種に対するインパクトが薬のインパクトよりも大きいから、まずはアルゼンチンアリを減らすことの方が生態系の回復にはプラスになって、なおかつ我々はちゃんと計算してアルゼンチンアリの数に合わせて薬を置いていくから、だんだん減ってくれば、薬の量も減らしていく。そうすると、ドンドン外から日本のアリも増えてきて、そうすると、多勢に無勢になってくると、日本のアリが増えてくると今度はアルゼンチンアリが押えられて、最終的にアルゼンチンアリが絶滅するという」
香坂教授
「そういうエビデンスに基づいた対処を1つしていくという」
反町キャスター
「そういう、ここは押す場面だ、効果が出てきたら引く場面だという…」
香坂教授
「メディアの注目度というところだけではなく、実際の状況との関係性の中で決めていくというところが。なので、注目が集まっているので、その年だけ対策費がドンとついて、ワッとやるのではなく、息の長い取り組みを、目立たないかもしれないけれど、やっていくということと、見つかった時はこういった対策を集中する部分は集中してやるということが大事なのかなと思います」
鴨下議員
「話を聞いていて、役所の対策とは違って、直線的でない考え方なので、私はちょっと安心したのですけれど。そうやって生態系などを守りながら、なおかつそこだけにある程度集中的にやると、セレクティブにやっつけていくという、五箇さんの話を聞いていて、なるほど、こういうふうにやっていけば、副作用は出ますね、副作用を最小限にして、なおかつ目的をキチッと達すると。アルゼンチンアリの駆逐という話は非常に知見を積み重ねたという」
五箇氏
「我々としては、確信というか、自信があるんですね。アルゼンチンアリでできあがったマニュアルがあるから、正直なところ、万が一でもヒアリが定着すれば、確実に押さえ込めるという自信というか、確信はあります。もちろん、同じアリではないので、改善点はあるとは思いますが、鴨下さんがおっしゃられたように、柔軟にその場その場に応じてうまく薬の配置を変えていくことをやっていくのは、我々、研究者としての経験と知見が大事になってくると」

『侵略的外来生物』と『生態系』
松村キャスター
「ここから日本から世界に広まってしまった生物について見ていきます。まずコイですけれど、世界の侵略的外来生物ワースト100にも選ばれ、特にコイを食べる習慣のないアメリカでは在来種を脅かすほどの繁殖力だと言います。ワカメ、クズも同様にアメリカでは異常繁殖しているということです。香坂さん、海外では日本から広まった生物ですけれども、どのような被害を与えているのですか?」
香坂教授
「ワカメは、モノを運んでいく船のバラスト水で拡がってしまったと言われています。ヨーロッパでも、オーストラリアでも、アメリカでも拡がってしまい、向こうでつくっている貝、養殖でも少し悪影響を出している状況があります」
反町キャスター
「食べないのですか?」
香坂教授
「向こうの人はあまり食べる習慣がなく、ウニとか天敵がいない状況だと拡がってしまうと。クズも北米で山を覆ってしまうぐらい繁殖してしまう状況が発生しています。ですので、一方的に日本だけが被害者ということではなく、お互いモノが行き来している中でこういうものが発生している。ちなみに、バラスト水については、そういうものを防止していきましょうと、影響を抑えていきましょうという条約が1年半ほど前にスタートはしている状況になります」
反町キャスター
「コイはどういう迷惑をかけているのですか?」
香坂教授
「現地のそこにいる魚の食べている餌を奪ってしまう状況です」
反町キャスター
「日本からの侵略的外来生物の輸出?はだいたいこのぐらいのものだと見ていますか?」
五箇氏
「これは代表的なものですよね。あと最近、我々の研究の中で新しく見つかったものとしてはカエルツボカビという両生類に特有の病原体ですね。これは1980年代以降、世界中にパンデミック(流行病)している。世界中の固有の両生類がバタバタと絶滅していて大きな問題になっているんですよね。日本でも2006年にそれが侵入してきたと一時期、大騒ぎになった」
反町キャスター
「侵入してきた?」
五箇氏
「と思って、調べたら、我々の方で。そうしたら、日本にもたくさんカエルツボカビが存在していて、日本のカエルはタフで、平気で。遺伝子を調べると、日本のカエルツボカビがどうやら、カエルツボカビは日本が起源だったらしいということがわかったと」
反町キャスター
「それは証明されたのですか?」
五箇氏
「論文にして出しています」
反町キャスター
「それは皆さんに迷惑をかけていることになりますよね?」
五箇氏
「そういうことになります。日本のカエルツボカビが実は世界に伝播して、抵抗性のない、免疫のないカエル達が死んでいるという」
反町キャスター
「伝染経路は明らかになっているのですか?」
五箇氏
「調べて見ると、かつて日本がウシガエルを1950年代から1980年代ぐらいまで実はウシガエルを大量に養殖して、余った分を欧米に輸出していたという時代があったんですね、食用ガエル。その過程でどうやら感染したウシガエルが世界中にばら撒かれて、持ち出されたであろうと。あるいはペットとして、日本の両生類は人気があって、欧米に輸出されているということもあって、そういう両生類自体も国際トレードに乗って、実はこの菌も世界中に拡がっていったらしいということが、我々の方で類推をしているところです」
反町キャスター
「香坂さん、こういう話は、たとえば、我々が、中国や南米諸国になぜヒアリを出すのだと文句は言えないですよね?」
香坂教授
「加害、被害という関係にはならなくてお互い情報と経験をしっかり共有していって知見を共有していきましょうと。対策がうまくいったケースのノウハウを共有するということが、国際的な場面では特に重要になるのかなと思いますね。ネットワークとか、情報をデータベースで共有しましょうとか、そういうのは条約というレベルでも、科学者のネットワークのレベルでも両方でやっています」
五箇氏
「今回のヒアリのケースでも、たとえば、中国や台湾で大発生して、そういったところからコンテナで運ばれているのがわかっているならば、中国や台湾の方での防除といったものも力を入れなければいけないでしょうし、そうなってくると、日本で一生懸命堰き止めていても蛇口がいつまでも開きっ放しではいけないわけですから、そこは日中韓、アジア全体でヒアリというものへの対策を共同でやっていくと。お互いに防除して、あるいは輸出入するものの管理をどうするかを考えなければいけない。でも、経済摩擦になるわけですよね。出す時に検査するのもいちいち面倒くさいことですし、入ってくるものを検査するのもいちいち面倒くさいことですし、自由貿易という中ではできるだけ早くモノを動かさなければいけない流れの方があまりにも強いから、この体制というものは理想ではあるけれども、実現するには相当の粘り強い交渉と理解が必要になってくる」
香坂教授
「あと技術的にバラスト水も対応できる国が限られてくるので、そういう条約とか、枠組みができるのだけれども、専門家がいないといか、機器が追いつかないとか、そういう中で、連携して、うまく協調してやっていくということが大事で、そこは病気と一緒だと思いますね」
反町キャスター
「政府として取り組めることには限界あるかなと思ったのですが」
鴨下議員
「たとえば、2国間とか、マルチで、ヒアリについては協力しましょう。その代わりに、こちらからもそれなりに援助を出しますと、こういうことである程度はできるのでしょうけれども、香坂さんがおっしゃるように、バラスト水の処理みたいに、できない国の時はそういう国からのモノは入れられないとか、船はつけられない、そういうようなことが非関税障壁のようになりかねない。だから、そこのところは難しい部分があるかもわからないけれども、特に被害を及ぼすようなものについては、出す国、入れる国、こういう中での話し合いというのはこれからより重要になってくるのでしょうね」

鴨下一郎 元環境大臣の提言 『早期対応』
鴨下議員
「グローバル社会ですから、必ずしも全てを水際で防ぐというわけにはいきません。ですから、早期発見、早期治療のようなもので、できるだけ早期に見つけて、かつ対応をきちんとすると、こういうことに尽きるのだろうと思います」

五箇公一 国立環境研究所生物・生態系環境研究センター室長の提言 『地産地消』
五箇氏
「長期的な将来像を視野に入れると、温暖化の問題も含めて、こういった生物と野生の劣化、外来種の移送という部分は、全てグローバリゼーションという流れの中で問題点が現在噴出しているということを考えると、ここは1つ、自国の経済、あるいはそれぞれの地域の経済といったものに立脚した形でのローカリーゼーション。そういった流れにもっていかないと。実際のところは種が増えればいいということではなく、地域固有の生き物がその地域の環境に根差して生きているという、それが世界中に広がることで生物多様性があるわけですから、言ってみれば、経済も、自然も、社会も地域というものを大事にしていくと。そういった中で消費活動も地産地消の方向へ向かっていただくというのが実は将来的には生き物も含めて、我々の生活を守るうえでも大事になってくるのではないかなと思います」

香坂玲 東北大学大学院環境科学研究科教授の提言 『予防』
香坂教授
「1番費用対効果がいいのが予防であるということで、水際で全てはできないかもしれないのですが、そこを目指していくというのがヒアリについては大事かなと思います」