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2017年7月13日(木)
文在寅政権の『命運』 外交デビューの成績は

ゲスト

武貞秀士
拓殖大学海外事情研究所特任教授
手嶋龍一
外交ジャーナリスト 作家
李泳采
恵泉女学園大学人間社会学部准教授

『対北朝鮮』圧力か?対話か?
秋元キャスター
「昨日から3夜連続で首脳達の命運をテーマにお送りしていますけれど、2日目の今夜は、本格的な外交デビューを果たした韓国の文在寅大統領の命運を考えます。日米韓首脳会談では北朝鮮への圧力強化、一方、中国やロシアとの首脳会談では対話による解決と、発言が揺れています。文在寅大統領の真意はどこにあるのか、じっくりと話を聞いていきます。韓国の文在寅大統領ですけれども、6月に就任後初の外遊となりました米韓首脳会談、先週のG20に合わせて各国首脳との会談を行いました。それらの中で各国首脳と北朝鮮への対応についてどのような合意を行ったのか、まず実質的な外交デビューとなりました6月の米韓首脳会談では、北朝鮮に対して圧力を強化しつつ、正しい環境の下ならば対話が可能だとの立場を維持することで合意をしています。中国・習近平国家主席との会談では、制裁と圧力で挑発を抑えつつ、対話を通じた平和的解決に誘導するため両国の協力を強化することを確認しています。同じ日に行われました、日米韓の首脳会談では、圧力を強化することで合意。翌日の日韓首脳会談でも日米韓で連携して北朝鮮への圧力を強化することで一致しています。一方、ロシアのプーチン大統領との会談では、北朝鮮を対話の場に戻すため協力関係強化ということで一致しています。李さん、どう見ていますか?」
李准教授
「韓国は昨年10月、朴槿恵大統領の弾劾以降、約6か月ぐらい国の外交が空白状態だったわけですね。それを就任して2か月以内に、日米韓、中国、ロシアの外交まで一応、回復したということで、文在寅大統領自身が非常に満足度が高いというような表現をしていました。しかし、今回の会談を見ると、実はICBM(弾道弾ミサイル)発射直後だったので、文在寅さんはもっと対話路線を積極的にアピールしたい場だったのですが。非常に制限されてしまい、日米韓の間では軍事的挑発に対しては圧力強化をするという、そういう路線を打ち出したのですが、ロシアと中国に対しては、その圧力強化だけでは、ロシアと中国を説得するのには、少し足りなかった、という認識を持っていると思います。今後の課題はどういう形で、アメリカ、日米韓の間では北朝鮮に圧力強化をしながらも、どういう形で、ロシアと中国に対して、また、北朝鮮に協力してもらうか、そういう課題が1つあります。そのロシアに対してちょっと特徴があったのが、対話の場に戻すということでロシアに非常に北朝鮮に対して圧力をかけてほしいという期待が高いことが、今回、会談でもあったと思います。他の国に比べて現在非常にロシアカードが有効だというようなイメージが1つありました。しかし、国務会議で文在寅大統領自身が、韓国外交がどれほど弱いのかを実感したという発言もしていました。対話を呼びかける、しかし、圧力にまた参加しなければいけない。しかし、そういうような周辺の強大国を説得する韓国自身の外交力が弱いという、そういう立場で。今回は関係回復というレベルでは満足なのですが、今後、これを本当に実現できるかということに関しては、大統領自身が国民に対して高い理想をあげるというよりは現在、我々が直面している課題がとても激しい、あるいは険しい、こういう立場にあるということもわかってほしいというようなメッセージだったと思います」
反町キャスター
「こちらの人には対話、こちらの人には圧力、2枚舌でないのか、ダブルスタンダードではないかという、そういう批判はないのですか、大統領に対して?」
李准教授
「国民の中では、これまでは保守政権の中で、いかにも、たとえば、軍事圧力が多かったし、経済制裁をやってしまったし、金剛山とか、開城も全部止まっていたと。だから、非常に危機感が高い中で、対話という、この方法もあるのになぜ保守政権はこれまで使わなかったということで、実は対話路線に関する支持は非常に高いと思います」
反町キャスター
「なるほど。これは矛盾とか、そういうことになってはいなくて、両方やるものだと、皆さん、韓国の国民は支持していると、こういう理解でいいですか?」
李准教授
「文在寅大統領もそれを言っていますね。並行するということで、対話と圧力を…」
秋元キャスター
「手嶋さん、どう見ていますか?」
手嶋氏
「対北朝鮮包囲網にほころびが生じていると言えると思います。そのほころびを生じさせてしまっている、言ってみれば主役は残念ながら韓国、新しい文在寅政権だと言わざるを得ないのだと思いますね。私ども東アジアの情勢を見ている立場から言うと、実は本音がよく出ているように思われます。この中で、実は韓国の文在寅政権がこうありたいと思っているのが、このロシアとの関係でよく出ているんですね。まさに、北朝鮮を対話の場に引き戻したいと、そのための協力関係を。国際社会が本来、核とミサイルに対して厳しい包囲網を敷かなければいけないという時にこんなことを言ってしまえば、当然のことながら、その包囲網にほころびが生じますよね。その役割を残念ながら、果たしてしまっているということだと思います」
反町キャスター
「なるほど。武貞さん、いかがですか?韓国の文政権が北朝鮮包囲網を乱しているという…」
武貞特任教授
「手嶋さんの説明は、韓国に非常に厳しすぎるなと思いましたよね。中国もロシアも、ほころびをつくった張本人だと思いますよね。中国はドンドン輸出を北朝鮮に対して増やしていますし。1兆円に上る、北朝鮮のロシアに対する債務を借金棒引きだと言って、大盤振る舞いで鉄道を改修したり、あるいは定期航路をウラジオストクと羅津港の間に開始をしたり、電力も北朝鮮東北部に供給するという約束までしているロシア。これはもう自国の利益を至上主義で、それで北朝鮮を実は水面下では支えている。国連の安保理でも最も厳しい姿勢で、北朝鮮に対する制裁案に割って入って、これダメだと、今、言いだしているのはロシアですよね。ロシア・中国は実質的なところで制裁を加えながらの北朝鮮包囲網の足並みを乱した国ですよね。北朝鮮に対してこれから良い関係を築いていこうという、政権の目玉にしている文在寅さんは、ロシア・中国の路線に乗っかろうと。まだ、5月10日に始まったばかりの政権ですから、中国・ロシアと一緒にやっていけそうだな、直接会って話してみよう、ドイツに行って話をしようと言って、この表に出ている結果になった。文在寅さんは遅れて出てきた登場人物であって、中国・ロシア、ほころびをつくった先行者ですね。と言うことで、中国・ロシア・韓国は相当、北朝鮮認識に現在、共有する部分が出てきている。でも、それでは危ないと…」
反町キャスター
「6か国協議で北朝鮮を除いた5か国、日米韓中露の中で言うと、強硬派というのが日米だけで、韓中露というのが対話重視路線になっていると見ていますか?」
手嶋氏
「いや、そこは違うんです。実はもっと厳しく言いますと、6か国協議のメンバーの中で現在、最強硬派というのは、実は安倍政権ということに、アメリカもそこから劣後し始めていると。今、武貞さんは、韓国に厳し過ぎるとおっしゃったかもしれませんが、ピンポイントではそう見えるかもしれませんけれども、少しここ2、3か月の情勢を見ていけば明らかで。4月の上旬に注目の米中首脳会談がフロリダで行われましたよね。その時にはまさにいったん、シリアに対して伝家の宝刀を抜いてみせて、それを大きな背景として中国に毅然とした態度を示してくださいと言うのに対し、その時点では中国の習金平国家主席は、中国と北朝鮮と歴史的な経緯は大変あるので難しいと、でも、やってみますと、ただし100日ほど猶予をくださいというような約束、これは事実その通りだと思いますね。その段階では、中国も実際に水面下で相当、それはやや中国に好意的に解釈しますと、核実験は思いとどまったということになりますよね。しかし、そのあと5月14日に中距離ミサイルを、ジュライ・フォース、つまり、独立記念日に照準を合わせて、ICBMの発射実験に成功したと言っていますよね。その点、以後、中国は結果的に見れば、中国の対北朝鮮説得工作というのはうまくこない。それに対して、トランプ政権も苛立ちを募らせているということになりますよね。この点で中国は4月上旬の間から見ると、明らかに情勢を見ながら、どうして後退をしているのかと言うと、1つは、アメリカ自身が…。この番組でも何回も触れましたけれども、一時は朝鮮半島に2個機動部隊、あっという間にいなくなってしまう、安倍政権にとっては同盟国ですから言えないですけれど、まさに拍子抜けというようなこと。周りを見まわすと、こんな強硬路線をとっているのは日本だけ。日本が別に悪いわけではありませんよね。本来、核・ミサイルについては、毅然とした姿勢をとるべきだけれども。まさに、他の、6か国協議のオリジナルメンバーの中でそういう姿勢に踏みとどまっているのは日本だけということになってしまった。4月の上旬と現在の時点を比べて、そういう情勢をつくりだす1つの役割を、残念ながら韓国の新政権も果たしているということを申し上げたんです。文在寅政権の、外交政策には一種の大きなリスクがあるんですね。明確な協議・相談もなしに南北首脳会談というのがあり得るかもしれないと。それは、そう申し上げる背景の1つは、実は2002年の小泉内閣、小泉総理の電撃的な訪朝、あの時に私、ホワイトハウスにいたのですけれども、明確な内報、内々に知らせるということはなくて、当時、小泉・ブッシュ関係、非常に良かったんですが一時、緊張が走るというようなことがありましたので、まさに何でもありということなので。私は、ちゃんとした協議をすべきだと思うのですけれども、本当にするのかどうかということになると、すべきではあるけれども、しない可能性も若干、危険ではあるけれども、あると言わざるを得ないかと…」
反町キャスター
「小泉・ブッシュの信頼と言うか、仲が良かったわけではないですか。その仲が良かった状況下において、事前の簡単な通報だけでポンと行ってしまった訪朝、その後の日米間の関係の修復プロセスというのを見た立場からすると、文在寅・トランプの関係というのは、小泉・ブッシュに比べて極めて希薄ですよ。その希薄な首脳間の関係性において、黙ってとは言いません、ほぼほぼ黙って南北首脳会談を開いた時にアメリカが韓国に対して何らかの、見える形かどうかは別ですけれども、報復措置・対抗措置を…」
手嶋氏
「そうですね。米韓の安全保障体制というものに一種の空洞ができるということになってしまいます」
反町キャスター
「その部分というのは当然、アメリカは通報があった時点で、そのリスクも踏まえて、平壌ないしは板門店に行くんだねという話になりますよね?」
手嶋氏
「従って、やめるように説得すると思います。しかし、電撃的にやってしまえば、これはわかりませんね」
反町キャスター
「李さん、いかがですか?そういうリスクを踏み越えてでも、文在寅という人はやるのですか?」
李准教授
「南北首脳会談は韓国大統領が使える最高権力の中の、1つのメリットある政策です。これで全てが決まると言っても過言ではないので、国益から見れば、南北首脳会談は実現したいでしょう。しかし、アメリカともちろん、事前に相談し、もしできなかった場合ということもあるので、私はもちろん、水面下で進めていて、でも、決まったら前日とかには通知をしないといけないとは思います。ただ、トランプ政権にとって、南北首脳会談が進んで、北朝鮮が交渉のテーブルに出て、アメリカと交渉することがデメリットかと言うと、そうではないので。アメリカという国は、国際世論もうかがっていますので、今回、ドイツとか、ベルリンでの、文在寅さんの大きな外交というものは、ヨーロッパの国々に対して韓国の対話路線を説得してアピールしたと。だから、そうすると、南北首脳会談に関して、ドイツをはじめ、多くの国が支持をした場合に、アメリカが一方的にそれ反対できるのかと」
反町キャスター
「ヨーロッパでそういうことを言って、はっきり言って、各国から批判されるような内容ではないです。是非、進めてもらいたいという。いわば建前を話されたわけですから。それをもって当事者であり、韓国に何十万人というアメリカ人がいて、彼らの命や在韓米軍の命に対する責任を持っているアメリカ大統領をスキップして、南北で首脳会談をやることと、当事国ではなくて、遠くにいて建前論を聞いてそうですねと言うヨーロッパの国際世論と同じに考えるわけは、まさか、ないですよね?」
李准教授
「アメリカを同盟として見なさないで、一方的に韓国が進めることではないんです。たとえば、ベルリンでの演説も基本的には、間接的には韓国が南北首脳間を含めて、対話路線を全面的に進めますという宣言でもありますので。これはもうアメリカでもある程度、韓国が南北首脳会談を進めていくだろうとは想定内のことであり、必ずしも急激に、電撃に、韓国がこれまでの制裁から抜け、南北首脳会談をするという極端的な話ではないと思うんですね」
反町キャスター
「平壌は現在、アメリカしか見ていないでしょう?」
武貞特任教授
「うん」
反町キャスター
「アメリカしか見ていない平壌に対して、韓国の大統領が、話し合おう、話し合おうと来て、真面目に受け止めますか?」
武貞特任教授
「歓迎すると思います。ただね…」
反町キャスター
「それは、ツールとして歓迎するのであって、話し合いのコンテンツがそこにあるとは思わないでしょう?この人と話したところで決着に進むのですか?この人をたぶらかして、とは言いませんよ、この人をある程度マニピュレイトしたうえで、では、アメリカにどう言わせようかと、パペットにすると、そういうことではないのですか?」
武貞特任教授
「最終目標は在韓米軍を撤収して、米朝の不可侵協定を結んで、ワシントン・ニューヨークを脅かすICBMを持ってしまえば、朝鮮半島に軍事介入をアメリカは諦めるだろうということで、アメリカが1番のカギだと考えて、アメリカを現在、見ているわけですけれども、その過程で北朝鮮のその先にある最終目標はアメリカは中間駅、最終目標は韓国を消滅させて、大韓民国の存在をなくして、朝鮮民主主義人民共和国が朝鮮半島全体の支配者になることですよ。そのプロセスで在韓米軍いてもらっては困る、軍事介入するようなことがあっても困る、アメリカがミサイルを飛ばしてもらっても困る。自分がワシントンにミサイルを飛ばすよと言ったら、アメリカがミサイル飛ばさなくなるだろうという計算がある。その先にあるものは、韓国を統一することですよね。統一する時に必要なことは、労せずして統一したいわけであって、その過程で必要なのは、南北の融和のプロセス。北朝鮮の人に任せても大丈夫ね、ミサイル持っているから、長いものに巻かれろという気持ちになってしまう韓国人が大勢いることになるけれど、それでも、話し合いのプロセスの経験から、大丈夫ね、金正恩委員長は、と思うプロセスが北朝鮮には必要だ。南北の対話はとても大事ですよ、北朝鮮にとってはね」
反町キャスター
「北朝鮮にしてみたら究極の目標について次の最初のステップというのは米韓の離反で、米韓の間に楔を打ち込むことを第1目標としているとすれば、まず南北会談ということ、北朝鮮はOKなわけですよね?」
武貞特任教授
「現在もう米韓の離反、始まっていますよ。たとえば、THAADの配備。文在寅さんは、これは追加4台、動かすのは待ったと言って、それと並行して韓国の市民はソウルのアメリカ大使館に人間の鎖だと言って取り巻いて、アメリカ大使館は人が出入りできないようになっちゃって、困ってしまって、アメリカ大使館がこういうことはやめてほしい、警備の担当者もちゃんとやってくれと韓国政府に抗議しましたよね。それぐらいアメリカとの同盟関係、あるいはアメリカの軍事装備に対して反対をすれば、韓国はこの地域のいろいろな問題のイニシアチブを握れるという世論が少しずつ韓国の中に出てきている。その流れに乗ってアメリカとの相談なく、南北の対話のプロセスを今始めれば、きっとうまくいくと、北朝鮮は応じてくれると。でも、球を投げても、北朝鮮の方からはあまり返ってこないですよ。いろいろな提案しても、北朝鮮は、批判を続けている。理由は、文在寅政権は2000年6月15日の金大中大統領・金正日総書記の南北共同宣言をつくったブレーンがザーッとほとんどが今、文在寅政権を支えているわけですよね。最終目標は南北の融和というところにある限り、北朝鮮がいろいろハードルを上げ、条件をいろいろ出しても、文在寅政権は、ハイ、ハイ、わかりましたと言って応えてくれるだろう。たとえば、開城工業団地再開も5万4000人の賃金を大幅値上げしてくれと北が言ったら、最終的にOKと言って、文在寅さんは応えてくれるだろうということで、ハードルを上げて、上げて、それもきっと飲むだろうと思っているから北朝鮮は対話に応じていないわけですね。だから、今、北朝鮮の韓国に対する姿勢というものを読み間違ってはダメですよ。その先にあるのは、非常に北朝鮮に対して大盤振る舞いする文在寅政権、韓国、南北の融和が急速に始まり、アメリカは置いてけぼりになって、南北首脳会談が行われる。その後ろを支えているロシアと中国は、ニコニコして、南北の融和を眺めていると。ハッと気がついたらトランプさんは非常に孤独感に悩まされ、日本は何をしたらいいかわからない。こういう構図がもう目の前に見えているではないですか」

『南北融和』ベルリン演説
秋元キャスター
「ベルリンで演説を行った文大統領ですけれども…」
反町キャスター
「演説の内容、僕らがピックアップした部分で言うと、関連国が参加する平和協定を締結すべきだ。北朝鮮の崩壊を望んでいないのだと。吸収する形での統一も推進しないのだと。こういう発言をあの場で言った文大統領の狙い、どう感じますか?」
手嶋氏
「これはドイツでしかできないですよね。ワシントンだともっと厳しいことを言わざるを得ない、日本ではまた別となりますから、まさしく文在寅大統領にとっては大変、安心なところで、僕はドイツで特派員もしていましたので、その間の感触がよくわかるのですけれども、ドイツははるか東アジアのことですから、どうぞ対話、一般的には心に染み入るようなアピールで結構ですと、ずっと言ってきているんですね。これは今回の演説を見てみますと、しかし、ちょっと待ってくださいよ、と言わざるを得ないですよね。北朝鮮が核挑発を完全にやめ、朝鮮半島が非核化すれば、2国間並びに多国間の対話に向かうだろうと、一般論でこう言っているわけですね。その点で、核挑発を完全にやめればと言っていますよね。注目していただきたいのですけれども、核の凍結とすら言っていないですよね…」
反町キャスター
「つまり、さらにハードルを下げている?」
手嶋氏
「核は持っていてもいいのだと、それを物騒なことに使わなければ、というふうに言っているのですから、これは限りなく北の論理に近いということになりますね。現在、世界はまさしく核、大陸間弾道弾の廃棄を強く求めていて、しかも、国連決議に違反した一連の振る舞いということになりますから、どんな国も、ドイツすら、容認するわけにはいかないということになりますし、ただ、ドイツの方々は、特にドイツのジャーナリストがこれを聞いても見逃しますよ、関心がないのですから。核挑発をというのは是非やめて、少なくとも、100歩譲っても、核の凍結をすれば、と言うべきなのだと思います」
反町キャスター
「これはこれまでの文大統領の発言の中でも最も低いハードルのように見えるのですけれども…」
手嶋氏
「そうですね。低いだけではなくて、世界に、とりわけ平壌に誤ったメッセージを発しているということになります。まさに自分達の核、ミサイルの、特に大陸間弾道弾の開発は容認されていて、これを使って挑発をしなければいいのだと言っていますよね。こんなことは到底、容認できませんね」
秋元キャスター
「朝鮮半島が非核化すればということも言っているのですけれど、挑発をやめることイコール非核化ということになるのですか?」
手嶋氏
「これは武貞先生に、是非、譲りたいと思うのですが。韓国には一応、核はないと言っているのですが、有事の時の持ち込みというのはまさに言外にありますよね、在韓米軍に、ということですけれども、これも含め、北朝鮮を全部、非核化する。それは原理的には必ずしも悪いことではないのですけれども、北朝鮮は非核化しなければいけませんけれど、北の論理は韓国も含めた朝鮮半島の非核化、これは先生が一貫しておっしゃっているところなのですが、それはその通り。これを危険なシグナルだと思います」
武貞特任教授
「付言して申し上げますと、このベルリンでの演説ですけれども、全文を読みましたけれども、日本語にもなっていますけれども、北朝鮮の公式立場・主張の香りが漂ってくるんですね、行間から。いくつかご指摘になりましたけれども、もう少し別の観点から言いますと、平和協定を締結すべきだという部分ですけれども、平和協定の締結というのは、繰り返し北朝鮮が主張してきたことで、今、休戦協定のままだと、平和協定を結びましょうと。平和協定を結ぶ前に、その障害となっているのは休戦状態を維持している装置であって、在韓米軍は要らないねと。在北朝鮮中国軍いない、在北朝鮮ロシア軍いない。休戦協定のままでいるのはやめましょうねという時に、在韓米軍だけが突出しているではないの、これは撤退してねという時に使うわけです、平和協定を締結しましょうというのは。それから、完全な非核化、これも非核化というのは、実は何十年間、北朝鮮が公式の主張として言ってきたことで、在韓米軍、核を隠しているね、あるいは撤去したと1990年代の初めに言ったとしても、B-1、B-2飛んで来るね、韓国に、グアムから。B-52も飛ばしているねと。核を落とす装置外したと言って、すぐつけられるではないの。アメリカが不可侵協定を結んでくれて、核は持っていないことを証明させてくれと。証明するために、北が検証を韓国に行ってしてもよいと言ったことまであるんですよ。核を絶対に使わない、朝鮮半島の非核化というものをしっかり保証してもらうために不可侵協定を米朝で結ばなければならないという時に非核化ということを北朝鮮、主張してきたわけですよね。そういった言葉を、いとも簡単にベルリンの演説の中で、平和協定締結と完全な非核化、これをはっきり述べた。それに加えて、少し詳しいところで述べたところで、文在寅大統領は、北朝鮮の核の完全な廃棄、平和体制の構築というところと、付け加えて、すぐそのあとの文章で、北朝鮮の安全保障、経済的な心配事を解消してあげましょうと、アメリカと北朝鮮の関係及び日本と北朝鮮の関係の改善など朝鮮半島と北東アジアの懸案を包括的に解決していきましょうという時に、北朝鮮のいろいろな安全保障上の心配も解消してあげることを考えましょうと、そこまで提案しているわけですよね。根本的な南北の対立、この地域の不安定の原因である北朝鮮の大量破壊兵器開発と、国際社会の心配を横に次から次へと発射してくるミサイルについて何も言及しないで、この演説の中で平和協定の締結、非核化、北朝鮮の体制の不安の解消ということを入れてしまう感情を見ていると、どうも北朝鮮の香りがプンプンしてくるんですね、文在寅さん」
李准教授
「文在寅さんの南北統一、経済協力、平和協定締結は既に廬武鉉大統領時代に首脳会談の時にある程度アピールされ、アメリカにも承認されている内容で、進んでいる内容なわけです。必ずしも今、文在寅さんの構想が新しいのではないです」
手嶋氏
「でも、当時は核も持っておらず、大陸間弾道弾も持っていないですよ。当時と現在とでは客観情勢が全然違うんですよ」
李准教授
「しかし、2006年以降、実際、保守政権に代わって、約8年間、10年間、逆に核がもっと進んでしまったから、言ってみれば、2000年クリントン政権から、2006年の間に6者会談があった時期の方が、核がコントロールできたし。しかし、だから、アメリカのクリントン大統領時代から、今のアメリカの政策の関係者達も前半は非常に良くて成果が出たのに、ブッシュ政権に代わってアメリカの戦略が何もできなかったのではないかということの指摘だと思います。だから、もう1回、その時代に戻して、でも、失敗であれば、結局、北朝鮮が自ら選択肢を捨ててしまったことになるので。しかし、アメリカの立場ではそれが動けない。だから、文在寅政権が必ずしも北朝鮮に融和政策だけでなく、現在の立場でもう1回、この6か国プロセスに戻し、北朝鮮ともう1回、戻して交渉してみましょうという提案が、なぜそれが非現実的なのか…」
手嶋氏
「6か国協議を開催するためにはまず北朝鮮に少なくとも、ニュアンスは違いますけれども、凍結を約束させなければいけないと。そういうことをやっているのかどうかということになると、まったくやっていないので。今のままだと、他の国、ロシアですらなかなかすぐには6か国協議の開催に踏み切れないかもしれないと。文在寅政権の役割が大きいので、つまり、過去のアメリカの政権や保守政権のせいにするわけにはまったくいかないと思います」
李准教授
「でも、リングの主人公が代わって、ボクシングの選手が代わったらスタイルは変えるべきで。それに合わせて新しいゲームルールでやってみることが、もう1つの新しい変化ではないでしょうか」
手嶋氏
「それはゲームのルールが新しく、若干、あらためても必ずしも反対はしませんけれども、大きな原則、北朝鮮に核とミサイルの開発をやめさせるという大きなルールがリングですね。そのリングを取り払うわけにはいかないということですよ」

日韓合意と慰安婦問題
秋元キャスター
「ここから日韓関係について聞いていきます。日韓関係の障害になっていました、いわゆる従軍慰安婦問題を、最終的かつ不可逆的に解決するために、2015年に両政府で交わされた日韓合意ですけど、これについて文大統領は先週7日に行われました日韓首脳会談でこのように発言しています。『(日韓合意については)韓国国民の大多数が受け入れていない現実を認めながら、日韓両国がともに努力し、賢く解決しなければならない。慰安婦問題が両国関係発展の障害になってはいけない』と発言しています。しかし、韓国国内ではまたこれと矛盾するかのような動きがいくつか見られていて、釜山市が日本総領事館前の慰安婦像を公共造形物として条例化するですとか、鄭鉉栢女性家族相が慰安婦博物館の建設を表明、さらに慰安婦問題関連の資料をユネスコの世界の記憶に登録申請するということも表明しています。武貞さん、この2つの動き、どちらが韓国の本音だと見たらいいのでしょうか?」
武貞特任教授
「2つの動きというのは…」
秋元キャスター
「こういった流れと、こちらの障害になってはいけないという…」
武貞特任教授
「両方が韓国の本音で、矛盾しあっていないと思いますね。と言うのは、2015年12月に尹炳世外相と岸田外相がソウルで会談をし、慰安婦の合意が決まりました。あとは国内手続きに入ったわけです、韓国の方で。尹炳世さんも、岸田さんも不可逆的な解決を見た。これは蒸し返しませんということですね。今出ていました文在寅大統領の言葉、受け入れていない現実を認めながら、韓国民の情緒というものがあるんですということをおっしゃって、共に努力して賢く解決していかなければならないという言葉自体が蒸し返しですよ、間違いなく。蒸し返しちゃっているんです、約束とは違うんですよね。ところがもう1つ、ですから、今の慰安婦の合意は尊重して再交渉するとおっしゃっていない、これは正しいと思いますね。つまり、これは既に国際的な約束であり、国内的には前の大統領・朴槿恵さん、尹炳世外相も、元慰安婦のところへ行って、日韓でせっかく合意したことだから受け入れてくださいと寄り添って語りかけた。国内的手続きを、国内の政治のプロセスで始めていたものですね。これは単なる架空の約束ではなく、国内政治のプロセスに入っていたということを今無効にすることは韓国としてもできないということを読み取った文在寅大統領は、もう1つ別の韓国民の情緒というものに合った交渉を、元慰安婦の方々が満足する形で、韓国世論が納得する形で合意をもう1つつくりましょうと、これが発想ですよね。それに合わせて…」
反町キャスター
「それはこれまで言ったことはないですよね?文大統領が、たとえば、この間、二階さんが行った時とかに言っていたら、これ大騒ぎになりますよ」
武貞特任教授
「文在寅大統領は言っておられないかもしれませんけど、その周辺のいろいろなメディアとかの報道の中には、いや、今の合意を再交渉しようということじゃなくて、もう1つ別のものを日本と話し合うということでいいではないかと。これはもう韓国の決まった政策ですよ、だって…」
反町キャスター
「ちょ、ちょっと待って。李さん、どうなのですか、そこのところ?要するに、たとえば、この間、二階さんが文大統領と会った時にも、二階さんの感触としては文大統領から日韓合意の再協議ということは向こうから何も言ってこなかった。だから、これはこのままいくのだと。政治家の感覚としてウチの番組でもそういう話をされましたよ。そこで僕ら的には、日韓合意はそのまま維持されるのだと思っているのだけれども、現在の武貞さんの話、日韓合意は維持しながらも、そのうえに別の日韓合意、新日韓合意をつくって、また別のタガをかけようという、この話は韓国の中で出ているのですか?」
李准教授
「それはまだ韓国内も出てないし、文政権でもそこまでは何も言っていないと思います。主には、再交渉は、あるいは白紙化はしないということで、一応、全面に打ち出してないだけなのですが、文在寅政権の1つの戦略としては合意文を認めない、基本的には合意されていることにはしないわけですね。朴槿恵政権が合意した内容に対して…」
反町キャスター
「だって、署名したじゃない?」
李准教授
「その署名の過程に関してプロセスを踏んでいます。1つの大事なのは、国民の中の情緒ということを言っているのは、韓国としてはこの問題は合意文とは別に未解決状態だということを維持したいということだと思います」
反町キャスター
「えっ?」
李准教授
「完全解決ではない。だから、不可逆的な言葉に限って、韓国として、これは完全解決されてない、もう1つの、当事者をどうするのかということに関しては、賢く解決しなければいけないという、そういう立場です。だから、再交渉とか、合意の前に韓国の国民の世論を何とか説得しなければいけない課題に立っているのが文在寅さんの立場ですね」
反町キャスター
「国内問題ですよね?」
李准教授
「…国内。でも、先ほどのとちょっと画面で一連の動きですが、これは文在寅政権が、慰安婦問題を全面にしているというよりは慰安婦博物館の建設を表明したのは、鄭鉉栢という女性長官ですよね。女性長官は慰安婦の当事者達にこう言いました、日本との再交渉は難しいですと。だから、その難しい状況の中で最大限、政府ができるものは、慰安婦博物館をソウルにつくって、当事者達の声を私達が国民に反映し、その歴史を残すことを政府がやるのが最大ですという。釜山のこの条例化も釜山の慰安婦像条例化というよりは、慰安婦、いわゆる少女像などに関してさまざまな慰安婦の制度措置があるんです。もっと年金を上げるとか、そういうことを含めた中で、一部入っているのが、公共物化の条例化を含めた包括的な内容になるわけですね。だから、必ずしも現在韓国で慰安婦問題を全面に出すという動きはないのですが、部分的に、文在寅政権になったので、これまで慰安婦問題に関して朴槿恵政権時代の不信感があったものを1つ1つ整理していく過程の中で出ているものだと思います」
反町キャスター
「要するに、韓国国内で処理すべき話?結果、日本に対して新たな要求は出てくるのですか?」
李准教授
「まだ、その要求ではないです。韓国国内の中で、国民と行政の間にこれまでいくつかまとまってなかったものが、朴槿恵政権の時に止まっているものを現在、1つずつ整理…」
反町キャスター
「でも、先ほど、未解決の問題であるのだということを確認したいのだという話、言いましたよね?」
李准教授
「基本的には…」
反町キャスター
「それは、要するに、両方が合意しないと、未解決だと。日本は未解決だと絶対言わないと思いますよ」
李准教授
「韓国はそれは未解決状態だという認識になっています」
武貞特任教授
「もう1つの合意を必要としますね、と言っていたのと同じ意味ではないですか?」
反町キャスター
「武貞さんと李さんの話を聞いていると、新たに合意をつくるのか、未解決であることを承認するのか、みたいな、どう見ますか?」
手嶋氏
「いえ、どちらもいけないのだと思いますね。それは文在寅政権のために、名誉のために、威信のために、そういうことはやめた方がいいと申し上げなければいけません。日韓合意というのはちゃんと正式な手続きを経て合意をされたということになりますよね。国際社会もこれを認めているということなので。そういう国際約束というのは、たとえ、政権が違っても、代わっても受け継ぐということになりますし。ソ連邦が崩壊をしても、主要な条約というのは全部受け継いだんですね。それはまさに国際的な、まさにあるべき常識と言うか、あるべき姿勢ということになりますから、それを引き継いで、あと戻りをさせない。文在寅大統領自らが言っているように、慰安婦問題というものを日韓関係発展の障害にしてはならないということをはっきり言っているわけですから、文在寅大統領としてはまず韓国国内を自らの政治的威信を賭けてちゃんと説得をする、それをされるべきだと思います」

武貞秀士 拓殖大学海外事情研究所特任教授の提言 『あいうえお』
武貞特任教授
「『かきくけこ』ではなく『あいうえお』です。文在寅政権が慰安婦合意についてしっかり守ってほしいと思っていますし、そうではどうもないようだということで非常に心配をしています。南北の大胆な関係改善もどうも考えておられるようですけれど、相当にこの東アジアの国際関係の構図が変わりそうな、その中心にいるのが文在寅政権。だから、文在寅政権、問答無用と言っているわけにはいかない。我々と相当異質な政権であるが故に、文在寅政権に、我々も寄り添って、聞くべきことは聞いて、日本も波長を合わせて戦略的外交を韓国に対して展開するべき、そういう時期ですね。国会でしっかりとそういうことを議論してほしいということで。あいうえおの、あ=あきれた提案にも一応聞いてみましょう、い=意地悪な団体の話も1つ聞いてみましょうか、う=上から目線の人、この人達も問答無用と言うんじゃないと、え=偉そうな表現を使った発言、これにもちょっと我慢しましょうと、お=おかしなそういった表現、あるいは日本に対する政策も一応聞いて日本の国家の国益を考えた政策を展開しましょう。これが『あいうえお』です」
反町キャスター
「我慢しろということですね?要するに」
武貞特任教授
「いや、違います。それを引き取って、今度は日本が新しい提案を出して、しっかりと守ってもらう戦略を立てろということですよね」

李泳采 恵泉女学園大学人間社会学部准教授の提言 『先易後難』
李准教授
「日本にはあまり例えがないかもしれませんが、今回G20会談で文在寅さんは歴史的な民主主義によって当選されたという、大変な人気ある首脳として迎えられました。そういう民主主義を学べということです。そういう意味では、実は文在寅大統領は非常にリアリズムで、国民が選択した信頼できる指導者として韓国社会に登場しています。彼に対する期待も非常に高いです。必ずしも親北朝鮮、反日ではありません。金大中大統領時代の21世紀パートナーシップ、いわゆる経済・歴史問題を分けて交流した私達の経験があります。その時代に、難しい時代に何より1番やりやすいところから、1つ1つ問題を解決して、必ずしも慰安婦・歴史問題を入り口にしなくても日韓関係は改善できるところが結構多くあります。まずできるところから、日韓関係を改善していきたいです」

外交ジャーナリスト 手嶋龍一の提言 『北の核ミサイルに毅然たれ!』
手嶋氏
「私の提言は、誠にシンプルです。日本政府が文在寅政権に対して、北朝鮮の核・ミサイルの開発には一貫して毅然とした態度で臨むべきだということです」