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2017年6月28日(水)
甘利明前担当相に問う 実感なき『景気拡大』

ゲスト

早川英男
富士通総研エグゼクティブ・フェロー
中原圭介
経営アドバイザー 経済アナリスト
甘利明
前経済再生担当大臣 自由民主党衆議院議員(後半)


前編

戦後3番目の長さに… 『景気拡大』の実態
秋元キャスター
「今日のテーマは実感なき景気拡大です。内閣府の有識者研究会は今月15日、現在の景気拡大が戦後3 番目の長さに達したとの見方を示しました。しかし、その実感となると疑問符がつきます。なぜ好景気を実感できないのか、その背景にある問題と、日本経済の今後を考えていきます。内閣府はおよそ2年ぶりに有識者による景気動向指数研究会を開き、第2次安倍政権が発足した2012年の12月からの景気動向を検討したところ、現在の景気拡大が、4年3か月続いたバブル景気を抜いて、戦後3番目の長さに達したとの見方を示しました。ただ、過去のバブル景気とか、2002年2月から6年1か月続きました、いざなみ景気に比べますと上昇率が低く、しかも、2014年に消費税が8%になった時に、景気が少し落ち込んでいるようにも見えるのですけれども。早川さん、本当に景気拡大と言っていいのでしょうか?」
早川氏
「そこに出ている景気動向指数にある通り、一貫して上がっているというよりは、フラフラして、なんとか持ちこたえている程度ではありますけれども、一応、景気は上昇局面にあるということは間違いないと思いますね」
秋元キャスター
「上昇していれば、拡大という形に…」
早川氏
「その言葉の使い方はいろいろありまして、日銀は普段、どういう言い方をしていたかと言うと、基本的には、要するに、日本経済がGDP(国内総生産)ギャップがゼロのへんを中心に、ゼロまで戻っていくのを回復と呼んで、ゼロを超えて上回っていくのを拡大という言い方をしていましたので。彼らの言葉の使い方をすると、拡大、現在、拡大局面に入ったんだよと。これが、要するに、景気ないし、あるいはマクロ経済政策の目標が1番は何かと言うと、基本的には雇用だと思っているもので、これはそれこそ内閣官房の浜田先生でも、この点に関しては完全にいつも一致するのですけれども」
反町キャスター
「ついては…」
早川氏
「ついては、完全にするので…、こういう大きい軸で考える限り、雇用は崩れていない、良くなり続けていますので、はい」
秋元キャスター
「中原さん、現在の景気をどう認識されていますか?」
中原氏
「GDPと雇用で、内閣府は判断したのかなと思っています」
反町キャスター
「それは線だけ見ていると上がったり、下がったりしている部分もあるのですけれども…」
中原氏
「はい」
反町キャスター
「そこの部分ではなくて、GDPはそこそこ、そんな大きな伸びではないけれども、成長している…」
中原氏
「低成長であるけれども、連続して増加しているということと、失業率が継続的に低下傾向にある、あるいは有効求人倍率も上がっているっていうことで、そう判断しているとは思います。ただ、2000年以降、それは日本に限らずアメリカやヨーロッパも同じ傾向ですけれども、GDPが増えているからと言って、国民生活が豊かになっているわけではないですね」
反町キャスター
「どういうことですか?」
中原氏
「これは2000年以前と2000年以降というのは、経済を分析した時に、分けて考えているのですけれども」
反町キャスター
「2000年、はい」
中原氏
「厳密に言うと、2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟して、資本主義社会に取り込まれたと。当時の中国の人口が13億人近くいたわけですけれど、その13億人近くの人口、これは労働力が安くて、教育水準が高いですよ。これが取り込まれたことによって、世界経済にとっては良かったんですよ、それは世界全体の平均成長率が引き上げられたと。それから、世界の最貧困層と言われる人々の人口が2000年から2015年の間に10億人以上減ったと、これは1つのメリットだと思うんですね。ただ、その副作用が大きかったなと。その副作用というのは先進国と言われる国々の人々のこれまで良質な雇用と言われていた、そういった雇用が失われたということ。あと中国が豊かになるにつれて資源を爆買いするようになって、エネルギー価格が高騰してしまったと。それによって、先進国の人々の実質的な所得も下がってしまったという、デメリットがあったわけです」
反町キャスター
「先ほどの雇用の件について、中原さん、失業率3%を割るような、ほぼ完全雇用ですよ、日本は。これをもって、日本の経済は順調なのだ、好景気なのだ、拡大なのだと、こう思っていいのですか?」
中原氏
「10年前とか、20年前であれば失業率が低下することより景気が良くなっていると判断したと思います。しかし、現在、日本は2009年からですか、人口が減っていまして、特に2012年から団塊世代の大量退職時期を迎えて、労働力人口が、確か2013年は1.5%、2014年も1.5%はいっていると思うんですよ。その次の年が1.0%ですか。ですから、総人口というのは0.2ポイント、0.2%ぐらいしか減っていないです。ですから、人手不足になるのは当たり前ですね。ですから、景気が良かろうが、悪かろうが、2012年以降に失業率が下がるというのは、これは最初からわかっていたことですね」
反町キャスター
「経済の善し悪しではなくて、人口動態上、人口構成上、そうなるのは当たり前だと、そういうことですか?」
中原氏
「そうです」
反町キャスター
「たとえば、政府なんかも失業率は事実上、完全雇用です、これは日本経済がうまくいっている証拠です、アベノミクスの勝利ですと、こう言うのは間違いですか?」
中原氏
「まあ…」
反町キャスター
「間違いと断言するのはちょっと微妙なのですけれども…」
中原氏
「大方、間違っているのではないかなと」
反町キャスター
「大方、間違っている…」
中原氏
「はい」
早川氏
「現在、起こっていることというのは、まさに人口が減る経済での景気循環なんです。先ほども、まさに中原さんがおっしゃったのは正しくて、基本的に雇用がドンドン良くなっていくのは働く人が減っていくからです。ですから、こういう状態だと多少景気が減速しても簡単に雇用は崩れないですよ」
反町キャスター
「あらっ、なるほど」
早川氏
「ですから、たとえば、実際問題として失業率とか、有効求人倍率に着目するのであれば、そろそろ8年この方、ずっと一貫して改善なんですよ。基本的には働く人が減っていく経済になっている。だから、雇用は悪化しないので多少、景気が減速しても、消費税があっても、別に景気後退にはならないという意味で、長い景気拡大になるわけですね」
反町キャスター
「それは景気後退にならないから、拡大になると…」
早川氏
「そうです、はい」
反町キャスター
「それは2択なのですか?」
早川氏
「先ほどの景気動向指数は2択です」
反町キャスター
「では、後退しなければ拡大なのですか?」
早川氏
「その通りです」
反町キャスター
「拡大か、後退かの、その指標、主には先ほど言われた、GDPと雇用…」
早川氏
「いや、これは一応、数字のつくり方としては、鉱工業生産を中心とするもので景気動向指数は構成されていますので、いろいろなものが入っていますけれど。いずれにしても、そういう話なので、ですから、人口が減っていく、働き手が減っていく経済だと、そう簡単には景気が悪くならない。だからこそ2000年を超えてから戦後1番長いやつと3番目に長いやつが現在、全部、2000年後でしょう?」
反町キャスター
「そうすると、たとえば、この表の中にあるバブル景気の頃、1980年代の頃と現在の景気、同じ景気拡大でも全然違う?」
早川氏
「意味が違います」
反町キャスター
「違いますよね?」
早川氏
「逆に言うと、実感がないのはなぜかと言うと、先ほど言ったように、景気減速したって雇用は崩れないので、一応、景気が悪くならないわけですけれども、逆に言えば、働き手が減っていく経済なのだから、よほど生産性を上げない限り成長しないわけなので。生活水準は上がらないので、逆に言えば、実感ない景気回復が当たり前になるわけですよ。だから、長くて実感がないのが…」
反町キャスター
「それは拡大と言っても生活は良くならないよと宣言されているようなもので…」
早川氏
「景気動向指数の拡大とか、なんとかと、正しくは上昇局面、下降局面ですけど。下降局面でなければ上昇しているというだけのことですから」
反町キャスター
「そこで簡単に喜ぶなという結論になっちゃう?」
早川氏
「もちろん」
反町キャスター
「エッ?」
秋元キャスター
「この景気動向指数をもって実感できる、できないというリンク…」
早川氏
「実感なんて、そもそもこれ、実感をはかっていませんから」

実感なき『景気拡大』 『上がらない賃金』
秋元キャスター
「さて、景気の拡大が続く中、国民はなかなかその実感がないわけですけれども、その理由の1つと言われているのが、上がらない賃金です。働き盛りで子育て世代と言われる40代の正社員・正職員の1月あたりの賃金を、アベノミクスが始まる前の2012年と2016年で比較してみました。残業などの手当てを除いて、所得税控除前の賃金では、40代前半で34万9100円から34万4600円と、4500円のマイナスとなっています。40代後半は38万5900円から37万8900円と、7000円のマイナスとなっています。早川さん、景気拡大して人手も不足していても、賃金が下がってしまう、これはなぜでしょう?」
早川氏
「第1に、賃金について言うと、正社員とパート・アルバイトを分けて考えた方がよくて、実は、パート・アルバイトの時給はこのところ前年比2.5%ぐらい上がっているので、そういう意味では、パート・アルバイトの世界に関して言うとちゃんと人手不足を反映して、きっちり上がっている。上がっていないのは正社員。正社員が上がってないという、この根本的な問題、ちょっとそこはいったん置いておいて。たまたま40代の話が出てきたので、これについてご説明すると、別に正社員だって皆、落ちているわけではない、40代が落ちているんですね。なので、40代が落ちているかと言うと、これは有名な、いわゆる氷河期世代問題ですよ。氷河期世代というのはご承知のように卒業した時、不況で、希望した就職先に入れなかったわけです。しばしば非正規になったり、あるいは非正規にならないまでも結構、中小企業とかに就職した人が多いわけです。そうすると、日本の仕かけだと、たまたま卒業した年が不況の年だと、その影響がずっと残っちゃうんです」
反町キャスター
「うーん…」
秋元キャスター
「なぜなのですか?」
早川氏
「なぜかと言うと、第1に最初に入った会社が比較的、中小企業だったりすると給料の水準は低いです。しかも特徴は、20代ぐらいだと大企業だろうが、中小企業だろうが、非正規だろうが、すごい差ではないですよ。でも、大企業というのはカーブで、年功序列で上がっていく一方で、中小企業とか、非正規はフラットなので…、なのです。その結果として年を経て、だんだん所得格差が開いていくんですよ。その問題をちょうど40代ぐらいが、いわゆる氷河期世代、彼らは、だから、5年前の同じ40代の人達とは違うような会社に勤めているし、仮に非正規がどこかでうまく就職できたにしても当然遅れていますから、その分だけ勤続年数が短かったりして上がらない。まさに氷河期世代の後遺症です」
反町キャスター
「なるほど。企業にしてみても、企業の中における人口ピラミッドを、それなりに整えようと努力するではないですか。そうすると、ある一定のところで雇用者が見つからずに、そこがキュッと締められていたら、中途採用で埋めて肉付けをしようという…」
早川氏
「それはやっていますよ。やってはいますけれども、繰り返しになるけれども、あとから入れると、勤続年数短いですから、どうしても残っちゃうんですよ」
反町キャスター
「なるほど」
秋元キャスター
「ちなみに、他の世代だと…」
早川氏
「基本的にはほとんど上がっていないぐらいの…」
反町キャスター
「あっ、それでも?」
早川氏
「ええ」
反町キャスター
「伸びてはいないということですね?」
早川氏
「はい。こういうふうに落ちているのは氷河期世代です」
反町キャスター
「なるほど」
早川氏
「むしろ正社員が全般に上がっていないのは、この氷河期世代のとはまた別問題であって、なぜパートやアルバイトは上がっているのに、正社員は上がらないのかということなのだけれども…」
反町キャスター
「そこ」
早川氏
「そこは基本的に、もう僕は日本の正社員という働き方に無理がきているのに、労使ともにそれにしがみついているからではないかと基本的に思っています」
反町キャスター
「どういうことですか?」
早川氏
「たとえば、今月来春の新卒採用が始まりました。6月1日から内々定がいっぱい出ていると言われています。だけど、この子達が65歳まで勤めるとしたら、この人達は何年までいると思いますか?2060年ぐらいまでいるんですよ」
反町キャスター
「なるほど」
早川氏
「2060年には、日本の人口は3割減っているし、おそらく人工知能によって働き方は完璧に変わっているでしょうね」
反町キャスター
「でしょうね」
早川氏
「本当に、あなた方、企業の人達、この子達を65歳まで雇い続ける自信があるのですか?私達が卒業する頃は、要するに、定年は55歳だったし、10年短かったし、あの頃はおそらく多くの企業が自分の会社の10年先とかぐらいまではだいたい見えていた。ところが、現在はよほど立派な会社でも10年先なんてわからないと思うんですよ。にもかかわらず、要するに、とにかく65歳まで面倒みます、みたいな、本当に空手形だと思うのだけれども、そういうことをやって。そうすると、そういう人を雇って、本当に賃金を上げていくのは相当、無謀なことであって…」
反町キャスター
「だから、賃金が上がらないのですか?」
早川氏
「おっしゃる通り」
反町キャスター
「中原さん、いかがですか?」
中原氏
「労組側は雇用の安定の方に重きを置いているんですね。要するに、賃上げよりも雇用の確保です。そこに40代が出ていますけれども、全体としては若干、下がっているのかなと思うんですよ、2000年以降で見ると。下がっている中で、敢えて1 つ付け加えるとすれば、なぜ上がらなかったのかという理由ですね。2000年以降に原油価格をはじめ、エネルギー資源価格がものすごく高騰したわけですね。2000年代頭というのは、原油価格、WTIの価格で20ドルなかったんですよね。それが現在、2008年には147ドルまでつけたわけですよね。要するに、原油が上がれば、他のエネルギー資源価格も上がってくるわけですよ。日本の企業はその時どのように対処したかと言うと、要するに、製品価格に転嫁しなかったんですよ、競争に負けてしまうから。その代わりに正社員、あるいは労働者の賃金を上げることを抑えたんです」
反町キャスター
「いや、でも、中原さん、円安の恩恵は企業も内部留保とかよく言われて、300兆円とか、言われているではないですか」
中原氏
「はい」
反町キャスター
「その話が現在ここで全然出てこない。賃上げの材料としては、だから、どこかの政党が内部留保課税だとか言っているような話も耳障りはよくて、要するに、企業は儲かっているのに、労働分配率が低くて、賃金にまわしていないということだったら、それは絞って出すべきだろう、だから、賃金が上がらないのだよという企業の儲かり具合と賃上げのギャップというのは、それはないのですか?」
中原氏
「ギャップは大きいですね」
反町キャスター
「なぜ企業は賃金にまわさないのですか?」
中原氏
「それは企業の経営側の立場からするとリーマンショックでわかったんですよね。資金調達にすごく苦労したんですよ。要するに、危機が来れば、銀行はあてにならないと。あとは雇用の確保ですよね。要するに、日本の企業はアメリカの企業と比較して、まったく経営の現場の判断が違うんですよ。たとえば、アメリカの企業であれば、ちょっと業績が悪くなりました、大企業であれば1万人リストラ、2万人リストラ、ザラです。大幅な賃上げ、2割、3割の賃金カット、当たり前です。でも、日本の企業はそれをしないですよね」
反町キャスター
「なるほど」
中原氏
「ですから、そういった危機が訪れた時のために、安易にクビを切らないために、お金を蓄えているという面も…」
反町キャスター
「何だろう、そう言われちゃうと…。要するに、大企業の経営者の人達は、いざ来るかもしれない不景気の時のために、我々のために、貯金をしているのだよという、そう思っちゃっていいのですか、というとなにかちょっと…」
中原氏
「保険ですよね。私達の雇用の保険だと思っていただければ」
反町キャスター
「そうですか?それでいいのですか?」
早川氏
「基本的にはそう理解しています。ただ、本当によく考えてほしいのだけれども、1社1社で全部、保険を、保険金を、全部、貯蓄して積み立てる必要があるのですかと…」
反町キャスター
「それは保険の理論ですね」
早川氏
「本来であれば、たとえば、北欧の社会ってどうなっているかと言うと、基本的に雇用調整はあるんですよ。その代わり、もし雇用を失ったら、政府が再訓練でも何でも、ふんだんにある社会保障基金から出して、再訓練させて、それで新しい職に就いていく。これが、例のフレキシキュリティという考え方であって。要するに、日本はとにかく会社ごとに全部やると。そうすると、全ての会社が何か悪いことがあった時のために貯金するということになるので…」
反町キャスター
「将来不安を持っている年寄りが貯金しているのと同じ…」
早川氏
「同じ考え。だから、まさに日本全体で見ると、どの企業も貯金している、どの企業も賃金上げしない」
反町キャスター
「それはダメっしょ?」
早川氏
「ダメでしょう。だから、先ほどから言っているように、全て、要するに、無理なのだから、四十何年間も1つの会社でずっと勤めていくのは。でも、それを前提にした仕かけを企業も崩そうとしないし、労働組合も崩そうとしないとすれば、このやり方しかない。だからこそ、別に労働組合、要求していないのだもの」
反町キャスター
「なるほどね」
中原氏
「要するに、家計の貯蓄と同じです。生活防衛。個々の家計から見れば、それは正しい選択ですよ。でも、これが全体として見た時に誤りになってしまう。いわゆる合成の誤謬というやつですよね」


後編

『伸び悩む消費』
秋元キャスター
「好景気を実感できない理由のもう1つ、消費が伸びないという現状があるわけです。夏のボーナスの時期ですけれども、消費者庁が、夏のボーナスの使い方についてモニター調査をしたところ、1番多かったのが貯蓄43.3%、2番目に旅行、ローンの支払いと続きまして、家電やパソコンの購入が10.3%、その他商品の購入が8.7%、買い物はちょっと順位が低くなっているわけですが、中原さん、この節約志向の要因は?」
中原氏
「全世代を通して言えることは将来不安ですね、老後の不安。特に20代、30代、あるいは私の世代もそうですけれども、年金が本当に、国が言っているように貰えるとは思っていないです。特に若い人になればなるほど。なぜ貯蓄するのと聞きますよね、大概返ってくるのは、老後が不安だから。ですから、若い人々が本当にかわいそうでしょうがないなという、そういう回答をする。ですから、賃金が上がらないこともあるけれども、国の年金制度自体が信用されてないという、これが大きな問題なのかなと」
反町キャスター
「甘利さん、いかがですか?この貯蓄43.3%というこの状況。なかなか賃上げで上げても、上がった分が貯蓄にまわるのでは経済はまわりませんよね。こういう状況をどう感じていますか?」
甘利議員
「当然、将来に備えて貯蓄するのでしょうね。日本の社会保障が心配、誰も将来、心配しないほど確保できるかと言ったって、それは財政的な問題があるわけですね。よその国で未来永劫に渡って、リタイアしたあと何の心配もなくできる社会保障体制ができている国があるか、ありませんよ。そうではなくて、昔だって、現在よりも状況、経済状況が悪い中で、不安を持っていなかったというのは将来に向かって日本経済がちゃんと拡大していくという、夢が描けたからですよ。現在、大事なのは日本経済がこういうところを強くして、世界経済に伍して、あるいは闘い勝ち抜いて、伸びていくのだというプランをしっかりと示すことですよ。そうすれば、将来に渡って政府が現在、一生懸命、賃上げをやっているけれども、政府がしなくても、自動的に賃金の見通しは立ってくる。そういう将来に向けて夢が描けるということが不安を解消していくわけですから、それをしっかりつくっていくことですよ」
反町キャスター
「先ほど、甘利さん来られる前に高齢者の将来不安でタンス預金や貯蓄率が高いという話と、それと企業の内部留保、300兆円と言われていますけれども、円安によってのさまざまな利益があっても、それを、労働分配率を高めて賃金にまわすことよりも、いろいろな形で企業のまわりに、身のまわりにつけておこうという、企業内部留保の高さというのは結局メンタリティーとして同じなのではないか。将来が不安だから、生活者は、要するに、貯蓄するし、企業は内部留保をする、日本全体が守りの雰囲気に入っているのではないか。これから純回転に戻すのはどうしたらいいかという話もあったのですが、いかがですか?」
甘利議員
「いや、その通りだと思いますよ。企業も、内部留保をどうしてチャレンジに使わないのですか。これは守りの姿勢に入っているからですよ。賃上げ、その余力はあるけれども、このまま日本経済が順調にいかない時にどうするのがいいのかと、過去の経験値から言って、貯えを持っていた方がいいとどうしても働くんですね。日本の企業経営者もチャレンジ精神がないです。これからこういう分野で世界一になってやるというようなことが、人が出てきて、ドンドンそういう新しいイノベーションが起きてくるような状況にしなければいけない。それを現在アベノミクスではずっとつくり続けているわけですよ。だから、イノベーションというのが、どこから起きるかと言ったら、基礎研究と実用化が接触するところから発生していくわけですね。そうすると、大学と企業、市場に近いところをどうやって結節点を持っていくかということで、ドイツ方式に倣って産業技術総合研究所とか、理研とか、物財機構、つまり、これはなぜこういうところを介しているかと言うと、学術とビジネスと両方がわかるところが結節点にならなければいけないです。産総研というのは大学と企業が共同研究でやっていますから、両方の感覚がわかると。大学にはビジネスの感覚がない、企業には学術の感覚がない、それを結びつけて上流と下流を最短距離で結びつけることによってイノベーションが起きるわけですから、その仕組みを現在、つくっているわけです」
反町キャスター
「甘利さんの言われた守りの姿勢と言うか、守りの文化、雰囲気を打破するために現在こういう政策をうっているという話。効果があると思います?それとも、この守りの感覚を破るために、どういう政策がいいのか?」
早川氏
「2点申し上げると、1つはおっしゃったような新しいイノベーションが始まったので、皆にできるだけ挑戦してもらえるような環境をつくっていくというのは当然、大切なことだと思いますので、それは是非とも、まだ政府のやることはたくさんあると思う、やっていただく。ただ、一方で、先ほども申し上げたと思うのだけれども、日本の企業の働き方というのが新しいイノベーションの時代に合っていないのではないかと。要するに、ちょっと前までは、たとえば、半導体とか、液晶パネルの開発というのも、あれは基本的にインハウスのR&Dですよ。会社の中で開発チームをつくって新製品を開発し、それを生産ラインに乗せていくという、これだったら日本企業、比較的、現在でもできるんです。ところが、現在、何が起こっているのかと言うと、いわゆるオープンイノベーションと呼ばれて、要するに、イノベーションが企業の中ではなくて、企業の壁を越えて、国境を越えて、起こっていくという形になっている時に、これが日本企業はできないんです。要するに、なぜかと言うと、日本企業の人達はずっと同じ会社の中にべっとり生きていくと…」
反町キャスター
「それはもうダメなの?ダメなのですか?」
早川氏
「ダメだと思いますね。むしろ基本的には新しいイノベーションにつなげていくのは、実は働き方改革なのだと思っていますよ」

アベノミクスの方向性 日銀の金融政策のリスク
秋元キャスター
「ここからは景気拡大の一方で言われている、日本経済の懸念について聞いていきます。まず物価上昇率2%の達成を目指して金融緩和を続ける、日銀の金融政策のあり方についてですけれど、今月15日、自民党の国会議員が集まり、財政・金融・社会保障制度に関する勉強会が開かれました。この会は野田毅前税制調査会長が会長を務めていて、会長代行を元総務会長の野田聖子さんと前防衛大臣の中谷元さんが務めています。日銀の大規模な金融緩和政策を終わらせる出口戦略や、消費税率の引き上げなどについて話し合っていくということなのですけれど。早川さん、講師として、この勉強会に招かれたそうですけれども、具体的にどういう議論がそこで行われたのですか?」
早川氏
「私が話したことは、だいたいいつも同じことを話していて。基本的に、日銀の金融緩和でどういうことがうまくいって、どういうことがうまくいかなかったのか。あとで、短期決戦のつもりだったのがうまくいかなくって暫くちょっと迷走したのだけれども、昨年の、いわゆる総括的検証というのを踏まえて、ある種、持久戦の体制を整えたので、安心感は出てきた。けれども、まだまだこれで終わりではなく、課題はいくつもありますと。もちろん、言うまでもなく、1つは、先ほど出てきた、まだ2%はそんなに近くはないと思いますけれども、出口戦略の問題があるし。それから、もう1つ、気になっているのは、日銀が長期間に渡って、ずっと国債を買い続ける、あるいは長期金利をゼロにするという状態の下で、言ってみれば、別に消費税を上げなくても、景気対策をやっても、金利が上がる心配はないので、別にそんなに財政健全化を急いでやらなくてもいいのではないかという雰囲気が政府にも、あるいは一般国民にも生まれていく可能性があって、それが気になりますねということを私は申し上げて。先生方のお話は金融政策プロパーに関するご質問とか、ご議論はそんなに多くなくて、基本的に日本の財政はこのままで大丈夫なのだろうかというような、不安なり、そういうことの議論が多かったように思います」
反町キャスター
「国債を買い続ける金融政策を続けていけば消費税を上げなくても済むのではないかという、この議論というのは、早川さんは、そこはそうなのだよという説明をされたのか、いや、結果、リスクがあるのだよと。ここはどう?」
早川氏
「要するに、日銀が、たとえば、未来永劫、2%の物価を達成できないと言うのであれば、それは未来永劫、続くわけですけれども、そんなことはないと思っていますので。1番の問題なのは、2%の物価目標を達成しましたと、そうなれば当然、日銀は長期国債をずっと買い続けるということにはならないわけで、その時に、要するに、金融市場の人々が日本の財政は大丈夫なのだと信じてくれているか、いや、危ないぞと思うかによって決まると。要するに、日銀が買わなくなった時に、日本は大丈夫だって、金融市場の人が信じてくれれば、誰かが買ってくれることによって、一応、金利は現在よりは上がりますよ、現在よりも上がります。でも、とんでもないことにならない。けれども、日本は危ないと思えば、それは思い切り金利が上がってしまう可能性がある。そのためには、たとえば、最低限もう2回、先送ってしまった消費増税というのを2019年10月ぐらいにはやらないと。日銀の2%が2019年10月よりも前か後か知りませんけれども、要するに、2%が達成されるとか、2%に近づいてきた時に、政府はまた先送っていましたということになったら、それは相当、危険なことになると思うということですね」
反町キャスター
「中原さん、いかがですか?早川さんの話、どう感じますか?」
早川氏
「国債を現在の規模で買い続けるというのは不可能ですね。ですから、どこかで区切らないとならないわけですよね。その時に目標が達成できてなかった時に何が起こるのかというのは、これは歴史的な経済実験ですから、答えがまったく見えないですよね」
反町キャスター
「見えない中で、どうするのかという。当面とりあえず買い続けるしかないと皆、思っている部分があるわけではないですか。その見切りと言うか、実験だからうまくいくかもしれないよということで買い続けることのリスクというのは、我々、どう理解したらいいのか、わからないですよ。どう見ているのですか?」
中原氏
「もし、それが悪い方向に行った時は、要するに、インフレが起こりますよね。それは相応のインフレが起こると思うのですけれど、それは国民の金融資産の減少という、そういった危険性にはなると思います」
反町キャスター
「甘利さん、手仕舞いの仕方、よくこれは議論になるのですけれども、僕らに対してとか、有権者に対してどう説明されているのですか?」
甘利議員
「手仕舞いの議論というのはどこの国だって本来の目的が果たせた、あるいは果たせる見通しが出てきた時に起きてくるんですよ。まだ不安定で、いつデフレに戻るかわからないという時に、手仕舞いをどうしようかと言うこと自体が時期尚早だと私は思うんです。ただ、金融緩和は何のためにやっているかというのは、デフレの脱却ですよね。デフレを脱却しないといろいろな政策を打っても正常に働かないと。だから、日本の経済を正常な状態に戻して、その中で、いろいろな成長戦略なり、なんなりを打っていって、理想的な成長軌道に乗せようと現在しているわけですね。その入口のところで、金融緩和をしているわけです。ただ、一義的には日銀の仕事ですけれども、全部100%任せたままで、あとは知らないふりではないです。政府とも連動して効果的な策を打っていくということですから、これは日銀1人の責任ではないですから、日銀の政策と合わせて政府が適宜適切な策を打っていく。これがもう少しで効いてくると思うんです。だから、そこまで手仕舞いの話は、今の議論ではないと思います」

消費税増税の行方
秋元キャスター
「さて、景気拡大の一方で、日本経済の大きな課題の1つが消費税増税です。2019年10月には昨年先送りしました、消費税10%への増税が待っているわけですけれども。中原さん、個人消費が伸び悩んでいる中で、2年後に消費税10%に上げられると考えますか?」
中原氏
「私は不可能だと思います。と言うのも、アメリカ経済にちょっとおかしな変調が出てきていまして、これまで自動車と住宅で一生懸命、経済を牽引してきたわけですね。アメリカの景気が思うように、思ったより長く景気拡大が続いているのは、原油安ですよ。原油安によって、国民の実質的な所得が2015年は5.2%上がったんです。これは統計開始史上初めて、最高ですよ。その年、何があったかと言うと、原油価格が大きく下落したんですよね。それによってアメリカは卸売物価指数が-0.9%、消費者物価指数も0.1%しか伸びなかった。要するに、デフレだったんですよね。要するに、デフレの結果、実質的な所得が上がって設備投資とか、輸出はされなかったのだけれども、個人消費が3%以上伸びているという状況だったんですよね」
反町キャスター
「はい」
中原氏
「それが、自動車が今年に入って売れなくなってきている。住宅も、過去の住宅バブル時と比べると、まだ住宅販売件数は伸びしろがあるように見えるのですけれども、ところが、住宅価格を見ると、住宅バブル期のピークの時に近づいちゃっているんですね。ですから、アメリカで、金利がですよ、このままFRB(連邦準備制度)が利上げを続けるとすれば、現在アメリカで住宅を買っているのは、実は投資家ですよ…」
反町キャスター
「なるほど」
中原氏
「アメリカ国債を買うよりも利回りがとれるんです。この利回りが減ってしまうので、投資家が今度、住宅を買い控えるようになる。そうすると、自動車と住宅、両方がおかしくなってくるという。もう1つ心配なのは中国ですね。中国は今年の秋に、共産党大会がありますから…」
反町キャスター
「あります」
中原氏
「習近平国家主席が自分の権力基盤を固めるために無理やり公共投資を増やしているんですね。この反動がおそらく来年、出るだろうと」
反町キャスター
「なるほど」
中原氏
「あとは自動車です。自動車の販売も現在、自動車減税を継続することによって、需要の先食いが起こっているんですね。ですから、おそらく来年は、自動車減税が打ち切られるので、今年の末に打ち切られますので、自動車市場もおかしくなってくる。中国で自動車の雇用というのはだいたい4500万人ぐらいいるんですよね。そこから悪影響が公共投資とともに広がってくるということで、中国もちょっと来年、心配だぞと。そうすると、これは世界的に、期間はわからないですけれども、同時不況という状況が…」
反町キャスター
「2018年の話?」
中原氏
「早ければ2018年にやってくるのではないかなと」
早川氏
「アメリカについて言うと、景気減速は十分あると思うけれども、特に車は、明らかに一時期、伸び過ぎましたから調整局面に入っていると思いますが。住宅は別にまだそんなにレベルとしてすごく高い水準ではないので、前に起こったようなことがアメリカで起こる可能性は低いと思う。アメリカに敢えて言うと、ちょっと株が高過ぎます」
反町キャスター
「そうすると、最初の質問、2019年10月の消費税引き上げをやれるか、やれないか、どう見ていますか?」
早川氏
「第一にやるべきだし、やると」
反町キャスター
「いかがですか?消費税を上げるべきだという人と上げられないだろうという話…」
甘利議員
「消費税の話です、これは非常に、これから難しい判断を迫られると思いますけれども、結論から言えば、政府の見解としては、消費税を上げられるような経済環境をつくりますということしかないと思います。消費税を引き上げると、それと前後して財政再建目標ですからプライマリーバランスの目標があるわけです。つまり、歳出はガンガン絞ります、税金は上げます、景気は大丈夫?ということが言われるわけです。ですから、その中でどういうハンドリングをしていくかということです。たとえば、現在、財務省がやっているやり方というのは年度予算を理想的な形、財政再建上ですよ、ガチンガチンに絞ると、そうすると、息もできなくなっちゃうではないかということになるので、補正をつくると。補正には寛大なんです、財務省。ですから…」
反町キャスター
「不思議ですよね」
甘利議員
「1回限り。そうすると、年度をまたいで長くやっていくような政策というのはとれないです。それから、どうしてもこれに合うように、無理やりに予算をつくります。そうすると、年度予算、本予算に比べて、補正のような予算の質というか、生産性が悪いですよ。これをどうしますかということを考えなければいけない。やるのだったら、この部分を年度予算にしっかり組み込んで、もっと生産性の高い、成長に資する予算をつくることが本当ではないのという議論もしなければいけないと思うんです。そうやっていく中で財政再建の目標を2つ掲げました。プライマリーバランスを黒字化していく目標と、債務残高対GDP費、つまり、経済の規模と債務の規模を管理していくというやり方。どの国も財政再建を本格的にやっていく時には、規模の管理の方をとっていくんです」
反町キャスター
「プライマリーバランスはちょっと…」
甘利議員
「いや、そこまで言っていないですよ。だから、2つ並べてどういう方法がいいですかねと、消費税を上げる環境をどうやってつくれるのですかねという選択を並べているのだと思いますよ」
反町キャスター
「そこの部分というのが、これから政府が迷うところ?」
甘利議員
「苦労するところですね」
反町キャスター
「要するに、次の2ポイントを上げるということは、日本経済にとってさらに足を引っ張ることになりますよね?」
甘利議員
「なかなか。だって、5%から8%に上げた時に消費が戻らないで相当なボディーブローが効いていますよ。過去の消費税引き上げは短期的に下がるけれど、すぐ戻るんですよ。これが戻らない。ようやく耐久消費財が戻ってきた、この時の駆け込み需要が、ようやくですよ、今。何年かかるのという話ですから。相当、経済にボディーブローで効いてくるということを組み込んで、しかし、なかなか簡単にもう1回延期しますという具合にはいかないですよ。だから、これを引き上げることができるような経済環境を死に物狂いでつくるということですよ」

経営アドバイザー 中原圭介氏の提言 『地道に成長産業の育成を』
中原氏
「地道に成長産業の育成を。日本は現在、自動車産業が非常に堅調ですけれども、農業、医療、観光などの規制を緩和すれば、まだまだ成長できる産業があると思います。ですから、こういった産業を育成して、日本の経済成長を高めていただきたいと思います」

早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェローの提言 『日本的雇用を変える』
早川氏
「日本的雇用を変えると書きました。前にも1度ここで同じことを書いたのではないかという気がしますけれども、今日も縷々お話しましたようにいろいろな問題を解決していくためには日本の働き方、雇用を変えていくのが1番の基礎になると思います」

甘利明 前経済再生担当大臣の提言 『一に賃上げ 二に賃上げ』
甘利議員
「一に賃上げ、二に賃上げ。経済循環、回復するまで、官製春闘をやるぞと」
反町キャスター
「労働組合の尻を叩くとか、そういう問題でもないのですか?労働組合、がんばれという。政府・自民党が労働組合、がんばれと。でも、甘利さんは労働大臣を務めて、労働組合と親和性が高い与党の政治家の1人と僕らは見ているのですけれど。労働組合の尻を叩いて、でも、自民党の政治家がストやれと言うわけにはいきませんよね?」
甘利議員
「いや、経営側と気持ちを通ずることができる人が、何のためにやるかということをきっちり説くべきですよ。それを続けるべきだと思います。あなた方のためにやるのですよ、ということですよ」