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2017年6月6日(火)
『暴走』北朝鮮の脅威 圧力と対話…米中思惑

ゲスト

手嶋龍一
外交ジャーナリスト 作家
武貞秀士
拓殖大学海外事情研究所特任教授
朱建榮
東洋学園大学教授

国連安保理が制裁決議 北朝鮮『一歩も引かない』
秋元キャスター
「イタリアで開かれたG7サミットで各国首脳が新たな段階の脅威として北朝鮮に全ての核・ミサイル計画の完全な放棄を求める中、北朝鮮は3 週連続で弾道ミサイルを発射しました。緊張が続く北朝鮮情勢を受けて、北朝鮮・中国・アメリカの専門家の皆さんを迎えて、北朝鮮に対する包囲網の実態や今後の展開について議論します。まずは北朝鮮のここ最近の動き、あらためて見てみますと北朝鮮、国際社会の警告を無視するように、4月以降だけでも6発の弾道ミサイルを発射しています。今年4月以降、アメリカが原子力空母カール・ビンソンを朝鮮半島周辺に展開して圧力を強めてからも、北朝鮮は挑発行為を止める気配はなく、5月には3週連続で弾道ミサイルを発射しています。まずは武貞さん、毎週のように弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の狙い、どういったところにあるのでしょうか?」
武貞特任教授
「弾道ミサイルを発射する中身も相当、少しずつ技術の改良が見られて、正確さを増しているということにも出ていますけれども、核保有国であり、航空母艦をこの海域に派遣する能力のあるアメリカと四つに組んで、航空母艦も撃沈する能力がありますよということを世界に発信する。また、その先にはワシントン、ニューヨークにも核弾頭を撃ち込む能力がありますよということをアメリカに知らせる。と言うことで、核を打ち合ったらお互いに損しますねと。アメリカは中立化して軍事介入なんかやめなさいよ、朝鮮半島に。米朝は仲良くなれるんですよ、韓国統一は金正恩さんに任せてくださいと。アメリカに発信しながら、そういう状態ができるまで弾道ミサイルの改善を繰り返していって、最後はズバリ、統一朝鮮というものを目指している。そのための1つ1つのプロセスが、この弾道ミサイルの発射ですね」
反町キャスター
「よく核・ミサイル開発の背景として、現状の固定化を目指しているのではないかという話も昔はありました。武貞さんの話というのは北主導の半島統一が目的だという話ですよね。それは、つまり、北朝鮮はアメリカからも攻められない、38度線を国境線として確定する、南北の間での平和条約を締結する、停戦協定ではなくて、お互いに国として認めあう…そういうレベルではないのですか?国としての目標は、アメリカを中立化させて、力による半島の統一を果たす、そこが目標なのですか?」
武貞特任教授
「そこが目標であり、その目標を下ろしたことは、1948年9月9日の建国の時以来1度もないですよ。それは金日成の時からそうだし、労働党規約にもそう書いてあるし、朝鮮民主主義人民共和国憲法にも朝鮮半島の統一というものを目指すということをちゃんと書いてあるわけですよね」
朱教授
「北朝鮮のミサイル発射というのは最近の一連の動きで追い詰められている部分、それを見逃してはならないと思うんですね。最近、北朝鮮は、現在、我々が置かれている情勢は50年以来、最も厳しい情勢だと言っているんですね。その背景には米中、もちろん、他の国も含め、北朝鮮に対して初めて連携プレーをしたということです。そういう意味で、北朝鮮の一連の発射というのを強みで見るのか、弱さの逆の投げ石なのかという。北朝鮮は建国以来ずっと統一しようと、核を持って、ロサンゼルス、ワシントンまで我々はいつでもやれるよと。そのような話を額面通りに受け止めて、だから、怖い怖いと、それこそ北朝鮮が1番、聞きたい話ではないかなと思うんですね。最近の北朝鮮の動きで見ると、虚勢を張っているようで、しかし、核実験をやっているのか、4月にはやろうとしたのですけれども、米中の協力で最終的にはやれなかった。ICBM(大陸間弾道ミサイル)、それはやろうとしているのですけれど、実際の実験は日本を越えて2000km、3000kmまで飛べているのか。そこは限度を超えるとアメリカが怖いから、中国も裏で絶対ダメと言っているから。ですから、結局は許容された範囲の中でオレが強いのだというようなところを1つは見せること。第2に現在の北朝鮮が置かれているのが、大国同士が、日本を含め、一緒に協力しようとしている。北朝鮮がいっぱいいろいろな手を使って、その協力体制を打破しようとする、撹乱しようとする。もちろん、その間におそらくそのうち交渉のテーブルにつかざるを得ないと思うのですけれども、それまでに一定の技術を、精度を上げ、今後のいろいろな交渉に備え、バーゲニングのカードをもっと持つと」
さらなる軍事的挑発は?
反町キャスター
「核実験をやっていないですよ、北朝鮮は暫く。それは朱さんの話を聞いていると、中国やアメリカの圧力に北朝鮮が屈しているから。やったら、レッドラインを越えるかもしれないと思っているから核実験をやっていない。ここはどうなのですか?」
武貞特任教授
「そんなに周囲に配慮をする人達であれば、これまでのことは全部起きていませんよ。核実験を5回やりました、6回目をなぜやらないか、パキスタンも5回やって核弾頭をつくっちゃったんですよね。ズバリつくっちゃったから6回目、あまり騒がしくする必要もないだろう、米朝の協議だって必要だねと。核弾頭の材料だってもったいないねということもあるだろうと思いますが、実際にその中を私は見たことがありませんけど。5回の核実験、他の国だって核弾頭を持っていますよね。それほど過小評価するということは、私は北朝鮮問題の本質を見誤ることになる。最近の中国は、国家としても大失敗しているんですよ、北朝鮮政策。主体的に自分達のつくったミサイルが成功裏に発射されたと言って、中国もビックリ仰天、違う形の、弾頭のところに水平翼をつけた航空母艦を撃破するミサイル。これはだいたいうまく飛んだみたいですけど。中国が持っていないようなミサイルまで、つくり始めた。実は技術的には中国の手のひらに乗りきらないレベルに少しずついきつつあると。これはアメリカもわかったんですよ、中国は影響力を完全に行使できないねということもトランプさんわかったから、2隻の航空母艦をずっと外に出して。今度は米朝、丁々発止、直接協議してもいいかなと。ロシアの近くにもミサイル飛んだでしょう、ロシアだって責任あるのではないですかともトランプさんは言い始めた。中国はアテにならないねという言葉にも象徴されているように中国は北朝鮮を過小評価し過ぎて、北朝鮮問題をここまで大きくしてしまった責任は重大だと思いますよ」
北朝鮮対応『100日猶予を』 習主席が米に提案
手嶋氏
「朱建榮さんの話は大変、中国の情報というものが非常に正確に、ご本人の言葉として語られているのですけれども。当局の論理というのが、非常によく出ていると拝見しました。つまり、米中首脳会談の際には、全体として、もし中国がちゃんとした北朝鮮説得の行動をとらなければ単独でもアメリカ側は行動する用意がある。その後、空母機動部隊を出してそれを一応見せるということになったのに対して、中国は、ここ非常に重要、後にようやく核心に触れる情報ですけれども、それについては100日間、まず伝家の宝刀を抜くのを待ってくれと非常に具体的に…」
反町キャスター
「4月の6日の時点で、100日間ですか?」
手嶋氏
「ええ。その際にそれを示唆したとも言われていますね。そうすると、ちょうど7月が限度ということになりますけれど。現在、国連の決議も含めて説得工作をというのは、少なくともそれが本当に効き目があるかどうかというのはよく検証しなければいけませんが。少なくとも朱建榮さんのお話で言うと、中国はそれなりにがんばってやっている。現に結果的には核実験もやっていませんし、ICBMもやっていない。しかも、この5月の14日のミサイル発射というのは象徴的ですよね。本来ならば、中距離の新型のミサイルですから、3000kmから5000kmと言うのですから…」
反町キャスター
「水平距離で?」
手嶋氏
「はい。グアム島から、太平洋地域のまさに要、パールハーバーも十分射程ですけれど、それをせずにロフテッド軌道で直接上げてロシア沖にというところですね。一種の自制がかかっている。全体としてはアメリカと北朝鮮の間で阿吽の呼吸で一種のゲームのルールが、つまり、成立し始めていると見ていいのだと思います」
反町キャスター
「朱さん、100日計画はあったのですか?」
朱教授
「中国からはっきりと100日計画とか、アメリカに申し込んだことはあり得ないと思います。ただ、その前後、3月後半にティラーソン国務長官が訪中して、いろいろ話をする中で、昨年3月の国連安保理の北朝鮮に対する制裁決議、その中に北朝鮮の航空燃油の禁輸ということも含まれている。そういうようなものは、我々中国は実はかなり厳しくやっていて、おそらくこれから3か月ぐらいで航空燃油というのが切れるのではないかと」
反町キャスター
「北朝鮮の在庫がなくなる?」
朱教授
「北朝鮮の在庫が。その間に、交渉に追い込むということが大事だというようなところでですね。それが合わせてほぼ100日というような話が、100日計画の話になっているのですけれども。明らかに4月の段階で米中の協力というのは核実験の阻止。それは全ての情報が示したように、4月15日前後と25日前後に2回にわたって核実験やろうとした。プルトニウムは持ち込んだ。その時に、我々の番組でまさに明日やるのかどうかということで、したわけですね。それは核実験、既に準備したというのは間違いないです。でなければ、ここでの話自体、意味がなかったわけですね。しかし、中国は絶対ダメと。その時に米中の協力で、アメリカは片方、空母の出動とかで圧力を加え、中国は裏でですね…。それを香港紙がいろいろ情報も伝えてきたのですけれど、その間に中国は北朝鮮に対して、6回目の核実験、それをやるなら中国は国連安保理のさらに厳しい包括的な経済制裁措置に賛成すると。即日に石油などの供給をストップすると。全ての経済貿易協議でストップをすると。北朝鮮からの大使召還もあり得るというような話をしたと、香港紙が報道したんですね。少なくとも4月の段階で北朝鮮が核実験をやろうとした、2回ともやれなかった。それで北朝鮮が頭にきて、5月初めになると歴史上、文化大革命以降、初めて中国の名指し批判をしたわけですね。この中央通信の中国批判というのは、我々は北朝鮮、怒ったよというような話で終わったのですけれど。どうも中国側は北朝鮮がそこに重大なメッセージを込めて、中国にすごく怒ったということを見ているわけです、それが第1。その中に中国という表現ではなく、中国大陸はこうだ、というような表現を使うということは、それは実は我々は台湾カードを使いかねないというようなところで、中国への脅し。それを中国の政府系の学者がフィナンシャル・タイムズに寄稿して、北朝鮮がそのような3つの対中、脅しをかけてきたと。2番目は、難民カード。第3に我々はアメリカと交渉すると、中国と完全に縁を切ると。そのようなところまで脅しをかけてきた。その間にどうも安倍首相とトランプ大統領との間でいろいろ電話会談などをしたのですけれど、アメリカ側の情報で、安倍さんから中国、本当にどうやっているのと、トランプさんに聞いたのに対して、最近、これまで汗を流して真剣にやっている、もうちょっと見守ろうではないかと。その意味で、100日というのは、その間に米中が協力してやるということは間違いないと思います」
反町キャスター
「この4月6日から100日と言うと、7月の上旬までですよね?」
朱教授
「まさに北朝鮮がそれで、おそらくタイムリミットを意識しているので、最近、これまでにないようなミサイル実験をバンバンとやっているわけですね」
反町キャスター
「それは、それだけ北朝鮮が追い込まれている?焦っている?」
朱教授
「その通り」
中韓関係は悪化?
反町キャスター
「先月3日の朝鮮中央通信で『中国は中朝関係の根本を否定して親善の伝統を抹殺しようとしている。命同然の核と引き換えにしてまで懇願しない』のだと朝鮮中央通信が言って。翌日、今度は環球時報、これは政府系の極めて色合いの強い新聞ですよね、『北朝鮮との口げんかに付き合うつもりはない。新たな核実験をすれば中国は前例のない厳しい措置をとる』と、こういう話になって。このやりとりの中で、朝鮮中央通信の中に、先ほど言われた、中国を大陸と呼ぶとか、難民の可能性を考えないと中国は困るぞと、これは説明していただきたいのですけれども、北朝鮮が中国に対する脅しとして、脅しと言うか悪口として、中国を大陸と呼ぶというのは、これはどういう意味なのですか?」
朱教授
「これまで中国のアキレス腱の1つはどこかの国が台湾と関係を持つことですね。持つと中国は抗議し、いろいろやるわけですけれど。北朝鮮もこれを対中カードの1つとして、かつて1992年、中韓国交樹立の時に我々も台湾と関係を持っていいのかと、それに対して鄧小平さんは、いや、そんなこと、絶対ダメというようなところで、北朝鮮に警告をしたことがあるんですね」
反町キャスター
「北朝鮮が大陸という言葉を使うということは、我々は台湾と国交関係を模索するかもしれないぞ、いいのだなという、そういう北京に対する脅しなのですか?」
朱教授
「その通りです」
反町キャスター
「武貞さん、それでいいのですか?」
武貞特任教授
「いや、その通りだと思います。だから、トランプさんも台湾問題…」
反町キャスター
「2つの中国の話をしましたね」
武貞特任教授
「それ言った途端に、中国が非常に過敏に反応したのもそうですね。1番のアキレス腱」
反町キャスター
「でも、トランプ大統領が2つの中国と言うのと、平壌が大陸と言うのとでは中国の受け止め方が全然違うのでは?はっきり言ってしまえば、トランプ大統領に言われれば、うん?と思うかもしれないけれど、平壌に言われたら何だよと、こういう…」
武貞特任教授
「中国の問題として平壌に言われたって大して痛くもないよという気持ちは、中国はあるのでしょうけれども、気分は悪いでしょうね。先ほどのこのフリップにも書かれている文言だけ見れば、すごい罵詈雑言を言い合って、名指しで。今回の国連安保理でのロシア・中国が賛成したことについても、北朝鮮の反発は中国を名指しにした反論をしていますよね。これは言葉だけですよね。それから、環球時報で書く、これは一種の宣伝で、これを言っておかないと、韓国とか、日本とか、アメリカが気持ちが穏やかではないから、こういう罵詈雑言も盛り込んでいるけれども。しっかりと北朝鮮を包み込んで、中国の北朝鮮に対する今年の輸出、1月から4月までの輸出は31%余り増えているんです、昨年よりね。びっくりでしょう。北朝鮮から中国への石炭の輸出もある程度続いていて、金額は、量は半減したのだけれど、金額はほぼ同じ金額を北朝鮮は中国から石炭を売ってもらっている。トータルで中国・北朝鮮の貿易は1月から4月までの間、トータルで16%増しになっているんです。しっかりと貿易では北朝鮮の面倒を見ているという事実の方が大事で。どこか中国の学者が北朝鮮の悪口を言ったとか、環球時報が北朝鮮との口げんかに付き合うつもりはないと言ったというところは問題の本質ではないです」
反町キャスター
「でも、米中首脳会談で100日計画が始まったのは4月以降です。4月までの間に、いわば駆け込みで…」
朱教授
「そうです。6月4日に国連がレポートを公表しました。4月以降、北朝鮮の中国への石炭の輸出はゼロです」
反町キャスター
「ゼロ?」
朱教授
「はい。これは国連の報告で言っています。ですから、それより前、中国は正式に3月の後半からそれを実施するまでの話はその時の追い込みで、旧正月などはあったのですけれども。だから、そこの部分で、最近の北朝鮮の中国に対する反応というのは、ただ1新聞の口先の話ではなく、ここ最近の国連安保理の決議に対して、これも初めて米中が結託し、それをつくったという、名指しで批判したわけですから。そういう中で結局、トランプ大統領も含め、皆それを見抜けなくて、武貞さんだけが見抜けて、中国は実際に何もやっていないと、100日の話も含め、皆、嘘だという話になっちゃいますけれども」
武貞特任教授
「いや、4月までの貿易については、4月30日までの貿易であって、4月最初からのいろいろなやりとりのあと、1か月続いたあとの貿易の統計であるということが1つと。もう1つは、辺境貿易は必ずしも中国税関総省の統計に出てこないものがあると。これは皆、知っているわけです。それと今回非常に迅速に国連安保理で制裁を決めました。でも、文言を見て私はびっくり仰天したのだけれど、これまでのところにプラスアルファちょっと付け足しただけで、4つの団体と14人の個人の名前を盛り込んで、ロシアの機関も入れたと言いますけれど、その程度でお茶を濁したから、ロシアと中国は賛成と言ったんですよね。昨年9月9日の核実験のあとは、11月まで2か月かかってようやく制裁決議が通ったのを、今度は簡単に通ったのは、あまりにも緩い制裁の内容だったから、中国・ロシア、これなら賛成よと。これであれば北朝鮮との定期航路も続けられるねと。鴨緑江の川底を流れている原油パイプラインで毎年ずっと流し続けているのを、これからも流し続けられるねという安心感を持ったんです。むしろ大事なことは今回、国連安保理の決議の中で重要なキーワードが入らなかった。原油をストップする。これをしたら本気で中国が北朝鮮に対する制裁をする気持ちになったねということを皆、議論していた。ところが、文言を見たら一言も入ってない。そこに問題の本質があるとみなければならないですよ」
反町キャスター
「止めているのですか、出しているのですか、どちらですか?」
朱教授
「石油が、言ってみれば最後のカードです。それを出した瞬間で、それは北朝鮮の混乱も含めて、崩壊を含めて、そういうことを想定して対応しないといけません。そういうようなことを、日本を含め、アメリカを含めて、想定しているのか。そこはこれから100日計画が続いている間に、米日中露を含めて、今回もう1つ、制裁の内容をつけ加えたもので、協力、一応体制を示したというところに意義があるんですよ」
対北 米中連携の行方
反町キャスター
「手嶋さんから見て、先ほど、朱さんが言われた、石油というのは最後の手段なのだと言われた。と言うことは、最後のところにおいてキュッと締めるかというところ、米中の間でどうなったら締めるかという合意にまで至ってないと見ていますか?」
手嶋氏
「まだ完全には至ってないですね。ただし、国連決議でもしそうしたとしても、バックドアがありますし。ですから、完全に止まるかどうかはまったくわかりませんよね。そこは、だって、北朝鮮が生き延びるための最後の、ということになりますし、現にいざというような時に航空燃料をなくしてはということになりますから。ここのところの全貌は、日本は日本として独自に認定しなければいけないのだけれど、悲しいかな全部が貰いの情報ですよ」
朱教授
「石油というのは、本当に主要なパイプラインを止めたら、他にちょっと船で運んだり、トラックで運んだり、それは正直に言って、焼け石に水で、とって代わることはできないですよ。ですから、それは重要な意味がある。そういうところが、現在の時点でそのまま止めると混乱だけで。ですから、まずは6回目の核実験を止めたあと、次は米中協力で入りたいのは、交渉のテーブルに乗せて、北朝鮮の核は除去。その代わり、北朝鮮はいろいろ条件を出すわけですから。ですから、交渉のテーブルに北朝鮮の核をはっきり対象とする交渉に、それへ北朝鮮を引き出すために、これは最後のカードになるんですね」
反町キャスター
「中国はパイプラインのバルブを締めるかどうかということと、核実験というのを北朝鮮に突きつけていると見ていいのですか?次やったらバルブ締めるぞと言っているのですか?」
朱教授
「2003年、6者協議の時に、北朝鮮は全然応じようとしなかった。中国は当時、正式には技術的な原因により3日間止められた、止まったんです。それで北朝鮮が、原油供給…、それでまもなく6者協議が始まったんです。ですから、そこの部分ではっきり言って、それが重要ということは間違いないです。それにとって代わるものはありません。多少はアレをやっている。しかし、中国にとってもう1つの問題は、中国の石油は、大慶油田からのは、それは重油で、それを1週間以上、本当に止めてしまったら、パイプラインが固まって使えなくなるんですね。そういう意味で、これも最後のカードとして、本当に止めるなら、もちろん、1週間以上も覚悟して。ですから、そこの部分を今回、各国の協力で北朝鮮を、核の廃絶を目指す交渉のテーブルに引き出すため。中国はこれを裏でやると共に、あとで話に出てきますけれど、アメリカ側は中国側と協力したうえで、北朝鮮には、38度線を越えない、体制は転覆しない。言ってみれば、北朝鮮が核さえ放棄すれば他をやると、こういう交渉のテーブルも用意しているというところで始まっていると思います」
手嶋氏
「朱建榮さんのお話で大変重要な点が欠落しているんですね。ICBM、大陸間弾道弾の話は1回もしていませんね。中国の論理ではそうなのだと思います。アメリカと中国のやりとりの中では、もう1つ、大陸間弾道弾と核実験、時にこの順番が違うんですね。それは中国にとって当然そうですよね。大陸間弾道弾は意味がありませんもの。ただし、米中間の協議の中では、ICBMと核実験、これはと言っているので。そこは明らかに中国にとっては体温差がありますよね。そこのところも、朱建榮さんのお話、とても正確です」
反町キャスター
「そうすると、朱さん、中国は核実験のためならばバルブを締めるかもしれないけれど、ICBMのために締めることはないと、こういう話になっちゃうんですよ」
朱教授
「基本的にこの両者を対立させる必要はないと思います。究極的に、北朝鮮が核をなくしたら、ICBMにどれぐらいの役割あるの。ですから、あくまでもそこのところは現在、最終によるものは核というところですね。朝鮮半島で非核というところがようやく、もちろん、すぐに、簡単にはできませんけれども、それを止める方向性が出てきた。当面は、中国は確かに核ということを優先し、アメリカは両方主張しているんですけれど、これは矛盾しないと思います」
武貞特任教授
「でも、そんなに北朝鮮の核兵器開発に反対しているのにどうして北朝鮮にミサイルの移動式発射台をプレゼントするのですか、中国は?」
反町キャスター
「車輛ですね」
武貞特任教授
「なぜですか…大量破壊兵器とワンセットだよ」
手嶋氏
「それと、核弾頭のことを現在、言われましたけれども…」
朱教授
「これは北朝鮮が中国からの密輸ということをいっぱいやっていますから。これはその後、中国政府が出したものではないとはっきりと…」
武貞特任教授
「それほど税関はザルなのですか?そんなことはないですよ」
反町キャスター
「タイヤが16個だか、20個ぐらいある長いヤツですよね?」
武貞特任教授
「そんなものを密輸…」
手嶋氏
「この中で生物化学兵器のことも平壌は明らかに言っていますね。弾頭にということ。ですから、核が廃棄されればいいと言うのは中国の論理ではいいのですけれども、アメリカの論理や世界の論理ではそうですかということにはならなくてICBM廃棄と…」
朱教授
「もちろん、おっしゃることはよくわかります。基本的には一致するということですね」
反町キャスター
「武貞さん、アメリカはICBMと核の両方、特にICBMは本当に困る、届いたら困る、中国は中距離でも短距離でも届いちゃうのだから、核さえ止めてくれればいいという部分がもしあるとした時に。北朝鮮の戦略、作戦として、米中からの圧力を受けている限りにおいては、それぞれ狙っているものにずれがあるというところが北朝鮮の攻め口になっていくのですか?」
武貞特任教授
「中国と北朝鮮の言葉のやりとりは、非常にこれまでなかったものが出てきています。名指しで批判する。しかし、核兵器についても頭から中国は反対していないという安心感が北朝鮮にはあるのでしょうね。中国の近くに東倉里というミサイル発射台をつくったのは、あれも中国の防空識別圏のすぐ外側近くにつくって、それはアメリカがそれを爆撃しようとしたら、中国と一戦交えざるを得ない、アメリカが。わざわざ中国に温かく見守ってもらえるところに北朝鮮がつくったというのも非常に象徴的ですけれども。中国は…」
反町キャスター
「そこにつくったということはアメリカからの空爆を防ぐためなのですか?」
武貞特任教授
「そうです。だから、中国の言葉が出てくるのは、そうですよ。それから、非常に国際社会の心配をバックに中国は努力していると朱建榮さんが1時間半にわたって一生懸命、強調したのは、わかりますよ。それはわかりますけれども。実態は、北朝鮮に核兵器を放棄してもらったら、それは嬉しいけれど、放棄しないとわかったあとはそれを使わないでねということ、朝鮮半島で戦争は起こさないでねということが第1。その次に、ああ北朝鮮、核開発しちゃったね、ということで、韓国と日本が核武装するような波及の仕方、核ドミノを防ぐための外交努力が大事だと中国は考え始めた。この2つに集中していれば、金正恩さんの核弾頭はまあいいや、というのが本音です。それを言っちゃったら大変だから、いろいろな記事を環球時報で書かなければいけないし、国連安保理でも、心配だ、制裁に賛成と言いますよ、それは。それが外交ではないですか。非常に中国は奥の深い国ですよ、だから」
反町キャスター
「北京は核ドミノにならなければ、北が核を持つことを容認するのですかと、こういう意見ですよ」
朱教授
「いや、それはあり得ないということ。ちょうど5月、最近です、6月5日に香港紙の新しいスクープで、この5月中旬に中国共産党中央政治局常務委員会が行った会議で、1つのコンセンサスに達した。『北朝鮮が中国からの再三なる助言や警告を無視してさらに核実験やミサイルを発射するということで、既に中国外交にとって一段と重い政治的重荷になっている。中国側はその重荷を下ろす決意というのをここでする』と」
反町キャスター
「どういう意味ですか?北朝鮮という重荷を下ろすというのは?」
朱教授
「核とミサイル、この2つが重荷で。ですから、そういうところで、武貞さんが中国はいかに悪いかというのは、北朝鮮が1番聞きたい話。米中、日本が喧嘩する。これまで常にそれをやってきたから。ですから、そういうような中で、北朝鮮がまさに1950年以来、最も厳しい環境と自ら認めている。米中など各国が協力して、そこがいかに協力をして、その次に北朝鮮の核をなくす、そのテーブルに乗せるかと。それは中国の国境近くに北朝鮮が核の実験場をつくるというのは、中国が容認するためという私は解釈、本当に考え方、全然違うと思うんです。中国から見れば、北朝鮮というヤツはわざと中国を戦争に巻き込むために、中国の国境近くに、たとえば、戦闘機の収納庫。たとえば、こちらが中国側、ここに山があって、北朝鮮の飛行機収納庫の出口は中国側に向いているんです。そうすると、彼らは出撃できるのですけれども、アメリカがそれを叩くなら中国の上空に行かないと叩けない。となると、中国と戦争になる。そういう意味で、中国を使って彼らのサバイバル、生き残りを賭けているわけですね。ですから、そういうようなことにこれまでの中国にもいろいろ不満はあったのですけれども、今回、トランプ氏もそれに対してしっかりやろうと、中国も北朝鮮のところでこれを解決し、一方、中国もしたたかな国で、北朝鮮の問題の米中協力によって中米関係もまた別のところでも得がある。そういう意味で、真剣にやっているのは間違いないですね」
中朝関係は悪化?
反町キャスター
「朱さん、よくこれまでこの番組でもやってきた中で言うと、中国は北朝鮮の崩壊は望んでいないと。なぜならばアメリカ軍が川を挟んで中国軍と直接向き合うような形は絶対にしたくないから、北朝鮮という国は残したいのではないかなという話が、僕らもよくそうやって聞いてきたのですけれども。今日、ここまでの話を聞いていると、中国は北朝鮮に対して、どのくらい重要性があるのか。そこまでして維持したいと思っているのか、それぐらいだったら外して、南主導の統一国家ができて、その国からアメリカ軍がいなくなるのだったら、その国でいいよとまで思っているかどうか。中国が目指している朝鮮半島の将来像、こういうところを目指しているのだというのはあるのですか?」
朱教授
「習近平政権より前は、おそらく従来の冷戦時代の発想で、アメリカに対して、北朝鮮という緩衝地帯は残したいという考えが主だったということはほぼ間違いないですが。ここ数年、中国の中でもいろいろ論争があって、最近の動きで見ると、まず一昨年になったのですけれども、9月3日、北京での抗日戦争70周年の記念式典に、朴槿恵大統領が行って、朴槿恵さんが来たということも中国に最大限に誠意を示すという意味で、もてなすだけではなく、その直後に帰る特別機の中で朴槿恵氏は韓国人の記者に言ったんです。それは習近平主席が自分に対して、万が一、北朝鮮の情勢が大混乱で収集がつかないという状況になれば、我々は韓国による朝鮮民族による統一というところは支持すると。その話を、韓国では耳うち外交と呼んで、要するに、それを朴槿恵氏が記者達に言ったのですけれども、習近平さんから正式な会談記録がない、本人の耳うちをしたというところを、朴槿恵さんはリークしたんです。ですから、そこの部分、中国はおそらくいろいろなシナリオは用意したと思うのですけれども、万が一、北朝鮮の崩壊、その時どうするか、中国に友好的な韓国、もちろん、米軍は38度線を越えない、北上させないというようなところで、シナリオはあると思うんですね。最近のこの動きで見ると、中国は核という毒の歯を抜いた北朝鮮、改革、開放政策をやらざるを得ない、そのような体制であれば、北朝鮮、それは残してもいいと、そのようなところを目標に。この両方を持っているのではないかなと思います」
手嶋氏
「アメリカ側から言いますと、東アジアの戦略正面というのは従来2つと言われていましたけれども。現に熱戦の火が噴いた朝鮮半島と台湾海峡というのですが。今や台湾海峡に対するまなざしと朝鮮半島のまなざしというのは、日本の方々にはちょっと違和感があると思うのですけれども、天と地ほどかけ離れていると。なぜかと言うと、先ほどのお話でありましたように、アメリカとしては、中国もそうですけれども、朝鮮半島を舞台に米中が相闘うなどというシナリオを考える人は誰もいないですね、ということになる。しかし、もし台湾海峡で事が起これば、米中の対決という、大きな、グローバルな戦争の唯一のシナリオということになりますから。従って、日米安保は2つの有事に対する備えと言われていますけれども、圧倒的にアメリカの安全保障のプレーヤー達は、台湾海峡の有事の方にということになりますね。従って、朝鮮半島のところは、事は起こってもらいたくないということになっていますから、ここのところ現に一応の構えは示すし、勝手なことというのはこれまではそうですけれども、台湾海峡の有事というのはどれほどに重要なのか。従って、先ほど、大切なお話がありましたけれども、北朝鮮の側も台湾カードをちょっと使うということになりますよね。従来で言うと、トランプ大統領、次期大統領の時にFOXニュースを含めて、テレビを含めて、保守派のメディアにインタビューを受けて、1つの中国ということになぜ我々が捉われなければいけないのかという発言をすると。中国側も一応、台湾寄りの発言と見えるのですけれども、台湾も青ざめるんですね。それほど微妙という。日米首脳会談の直前にあらたな電話会談でということになりました。しかし、正確には習近平政権が言っている1つの中国政策、ワン・チャイナ・ポリシーを尊重すると言ったのではないですね。ちゃんと我々の1つの中国は。中国の1つの中国とアメリカの中国は、1つの中国政策が違いますから。それを、しかし、中国がそれでもいいと、ワン・チャイナということさえ言ってくれればと。大変重要なところです。それほどに台湾海峡は重要ということになりますから。所詮のところ、朝鮮半島有事というのはアメリカ側にとっては大変、優先順位が低い。ただし、トランプ政権は少し、まさに方向を変えて強気にと。しかし、ずっと見ていくと、前に戻りつつあるということになりますよね。ここは少し心配で、もう少し関与を強めてほしいと思います」
反町キャスター
「そうすると、空母部隊2つ引いていますよね。これは良いサインなのですか?悪いサインなのですか?」
手嶋氏
「日本にとっては悪いサインですね。あらゆる選択肢をと言って、北朝鮮はそれを見ているから、ああやっぱりやるつもりはないのだと。ICBMまでいくかどうかはわかりませんが、少なくとも日本周辺のところには、さらに、ということになりますし。それが間違って飛んで来る可能性もありますから。決して過小評価はできないのだと思います」
秋元キャスター
「実際にやるつもりは本当にあるのですか、アメリカは?」
手嶋氏
「日本に対してですか?」
秋元キャスター
「北朝鮮に対してということです」
手嶋氏
「やるつもりがないということがわかってしまうと、オバマ政権と同じつもりということになってしまいますから。僕らも伝家の宝刀を抜けとそそのかしているわけではありませんけれど、少なくとも懐には伝家の宝刀が入っているという態度は示してほしいと。これをやらなかったツケがまさに現在にまわっている」
在日米軍以外も攻撃示唆
秋元キャスター
「ここまで北朝鮮情勢をさまざま聞いてきましたけれど。こうした状況の中で、日本の政治、政府はどういうことができるのか、どうするべきなのかということなのですが。手嶋さん、いかがですか?」
手嶋氏
「これはやや悲観的にならざるを得ないのですが。主役は先ほどの米中首脳会談も含めて、米中ということになりつつある。それは、僕らは認めませんけれども、超大国アメリカと、新興の大国の中国が、まさに東アジアの問題でも二分して協議をするなどということになっては困りますね。日本が埋没するわけにはいかないということになりますから。日本はアメリカを説得し、関係国を糾合し、日露の間はまだ他のところよりもいいということになりますから、朝鮮半島情勢でも主導権を握るという努力はしていかなければいけない。6か国協議というのはブッシュ共和党政権の時に出てきたのですが、明らかに最大の問題点は6か国の協議の中で日米同盟が下位に立って、6か国協議の枠組みが当時の瞬間風速では上位に。こんなことは日本の国益に反する、という教訓もありますから、日本はどんなに辛くても外交的な主導権を取り続けなければいけないと思います」
秋元キャスター
「武貞さん、いかがですか?」
武貞特任教授
「外交、防衛、2つの分野でやるべきことたくさんあると思いますね。外交の分野では、ロシアの北朝鮮に対する影響力は決して小さくはない。100億ドルの借金棒引きにし、いろいろやってきているわけですね。資源も北朝鮮の資源を輸入しています。と言うことで、日露関係、少しは指導者同士のコミュニケーションがうまくいっているわけですから、ロシアに対してもう少し北朝鮮に対する影響力を行使して、日本の安全に深く関わっている北朝鮮の核問題についてロシアは役割を果たしてくださいと日露関係を活用して北朝鮮を説得してもらう。ロシアを入れなければならない、外交的な枠組みの1つ。防衛の面では5月、ミサイルを発射するために特徴的なのは日本もやがて照準が合うだろう、これまでは在日米軍と言っていたのが、ワシントンと言っていたのが、日本と言い始めた。日本の安全に直接関わりますよという発信を平壌がし始めた限りは日本も敵基地攻撃能力をしっかり持って、2000kmぐらい飛ぶ巡航ミサイルを開発すればいいですよ。航空母艦、つくりましょうよ。弾道ミサイル、いいではないですか、持ちましょうよ、ということによって、中国は、日本の軍国主義の復活と言うかもしれませんけれども、それは中国が北朝鮮を説得できなかったことのコストだと思って我慢してもらわざるを得ない。防衛問題でも異次元の努力をするということで、やるべきことはたくさんありますよ」
朱建榮 東洋学園大学教授の提言 『関係諸国協力の好機』
朱教授
「関係諸国協力の1つの好機だと思うんですね。北朝鮮は最近50年で1番厳しい環境だと。実際に関係諸国は、北の核開発というのは最大の問題だと、現在協力し始めた。その機運を絶対に見逃さずに、ただ、日本と中国というところで喧嘩するという話、実際には北朝鮮が望むもの。いかに大同団結して最優先課題に共同で取り組むかが最重要だと思います」
武貞秀士 拓殖大学海外事情研究所特任教授の提言 『力と対話』
武貞特任教授
「対話と圧力、圧力と対話、いろいろな言葉を聞いてきましたけれども、ミサイルの発射は続き、核実験も続いてきた。むしろ異次元の発想でやっていかなければならない。日本は防衛装備の大幅な異次元の発想の転換をして、攻撃する能力を持つことによって、日本を攻撃するのは損になりますよという力を身に着けた防衛力を持つということと、日中対話はとても大事だと思います。対話も並行して進めていきましょう」
外交ジャーナリスト 手嶋龍一氏の提言 『トランプ大統領は東アジアに回帰せよ!!』
手嶋氏
「トランプ大統領は現在、ロシアゲート事件で苦境にありますけれども、今こそ東アジアに回帰し、そこに時間とエネルギーを費やすのだと。そのことによって北の核・ミサイルの開発を阻止するという決意を是非示していただきたいと思います」