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2017年5月30日(火)
急展開『ロシア疑惑』 情報戦と米政権の命運

ゲスト

名越健郎
拓殖大学海外事情研究所教授
黒井文太郎
軍事ジャーナリスト
前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部教授

トランプ周辺のロシア接触
秋元キャスター
「アメリカのトランプ大統領就任から4 か月ですが、政権とロシアとの不透明な関係をめぐる疑惑・ロシアゲートが拡大の様相を見せています。アメリカ政治やロシア情勢に詳しい専門家の皆さんを迎えて、ロシアゲートについて検証し、米露関係の行方と日本外交のあり方について検証していきます。トランプ政権とロシアの不透明な関係をめぐるロシアゲートですけれども。まず大統領周辺の人物とロシアとの接触で浮上している疑惑について見ていきたいと思います。まずこちらですが、今月の18日に交代が決定しましたキスリャク駐米ロシア大使との接触が主に今回問題視されているのですが、まずセッションズ司法長官は昨年7月と9月の2回、このキスリャク氏と接触をしていて、申告する義務があるにもかかわらず申告をしていませんでした。2月に辞任しましたフリン前大統領補佐官は政権発足前にキスリャク氏と対露制裁に関して協議を行ったことを隠蔽していたとされています。フリン氏はロシア政府系メディアから受け取った報酬について、虚偽の報告をしていたとも報じられています。クシュナー大統領上級顧問ですけれども、トランプ氏の大統領当選後の昨年12月、フリン氏と共にこのキスリャク氏と会談をした際にトランプ陣営との間に機密通信ルートを設置することを提案したとされています。トランプ氏周辺、かなり密にロシアと接触をはかっていたようですけれども。まずは前嶋さん、このトランプ陣営の思惑をどう見ていますか?」
前嶋教授
「たぶんロシア側が何らかの形で接近してきたのではないかなと予想されますよね。ロシアとして見れば昨年の選挙戦でヒラリー・クリントンさんに勝たせるのは嫌だと、ならばトランプさんに、敵の敵は味方なので、応援しようという流れがあったのではないかなという予想ができますよね。トランプ陣営としては、選挙の時は陣営という言葉を使いましたが、猫の手でも借りたい、だから、ロシアが応援してくれたら乗るよというシナリオがあったのかもしれません。ただ、このシナリオ、もちろん、まだ明らかでないのですけれど。状況証拠からどうも怪しいよなというのが現在の段階だと思いますね」
反町キャスター
「名越さん、いかがですか?ロシアから積極的に仕掛けていったと見ていますか?」
名越教授
「それもあるんですけれども、トランプさんも1990年頃からよくモスクワに行っていたんですね。ビジネス関係をロシアの新興財閥とかなり結んでいましたから、思い入れがあったと思うんです。トランプさんはオバマさんとは違う外交をやりたいと、それから、プーチン大統領とケミストリーが合うと思ったんです。つまり、2人ともグローバル化に反対していますね、自国ファースト、アメリカファースト、ロシアファースト。そのへんから選挙中からエールの交換があったのですから。だから、両方とも近づいたような気もしますけれど」

トランプ『司法妨害』疑惑
反町キャスター
「アメリカの問題、トランプ周辺の現在の雰囲気、どう見ていますか?」
黒井氏
「結局、トランプ陣営がロシアの情報機関に騙されたんですね。取っ掛かりは、おそらくキーマンは前の選対の本部長だったマナフォート氏だったと思うのですけれども。彼は8年、9年ぐらい前からロシア、プーチンの側近の新興財閥と非常にズブズブの関係があってウクライナあたりで政商的な動きをしていたということで。彼が選対本部に入ったということが、ロシアがこれは使えると踏んだと思うんですね。そこからいろいろな工作があって、フリン氏みたいな人間に接触し、取り込んでいったのですけれども。要は、騙されたということは、いわゆる刑事責任になるかどうかというと、なかなかそこを責めていくのは難しい。トランプさんがわかっていて、そういった国家的な反逆みたいなことをやったのかどうなのか、民主党のメールのハッキングをトランプ氏側から何か頼むとか、そういったことがあれば、いろいろ問題になりますけれども、そこはなかなか難しいと。おそらく騙されただけの可能性が高いということであれば、ただ、それは政治的にはマイナスですから、それを隠そうとしたわけですね、トランプ氏側のいろいろな人達が何とか自分達が生き残るためにですね。ですから、隠そうとしたところを、反対勢力は司法妨害というところで違法性を突いていけば弾劾に持っていけるというのが現在の段階で。本当は司法妨害というのは本筋ではない、今回の問題の。どれだけトランプ政権という新しいアメリカの政権がロシアの情報機関に浸食されていたかというのが本筋なのですけれども、ただ現在、政治闘争になっていますから、妨害のところに焦点が移っているのかなと思うんですね」
反町キャスター
「政権発足前から浸食されていたという意味になりますよね?」
黒井氏
「そうですね。もちろん、いわゆる予備選から本選に入る時、そのあたり、情報だと、昨年の春先ぐらいから、そういったロシア情報機関が、たとえば、アメリカ側を盗聴していて、フリン氏とマナフォート氏を盗ったから大丈夫だよというようなことをロシアの担当当局が喋っていたという情報もリークされていますが、本格的にいけると思ったのは、キーマンを篭絡していると自信があったからだと思います」

トランプ『情報漏洩』疑惑
秋元キャスター
「さて、一連のロシアゲートで、トランプ大統領には情報漏洩に関する疑惑も持ち上がっているんですね。今月10日、トランプ大統領がロシアのラブロフ外相と会談をした際に過激派組織イスラム国に関する機密情報を漏らしたことを複数の政府高官が明らかにしたと15日、アメリカのメディアが伝えました。ワシントン・ポスト電子版によりますと機密情報とはパソコン端末を使った航空機内でのテロに関する内容、脅威に関する情報を探知したイスラム国支配地域の都市名ということですが。これらの情報は閣僚の一部しか知らないトップシークレット、最高機密を超えるコードワード、機密中の機密だとされ、情報提供源はイスラエルだと報じられています。トランプ大統領はツイッターでこの情報を伝えたことは事実上認めているのですけれども。前嶋さん、この情報漏洩というもの、大統領は罪には問われないですよね?」
前嶋教授
「これは微妙なところですよね。要するに、大統領がもし弾劾とかにかかっていくならば、憲法を読んでいくと、収賄とか、国家に対する反逆とか、そう言うとこれは国家に対する反逆におそらくはまってくるかもしれませんけれども。外交上の戦略としてそう伝えた方がいいと思ったって強弁すれば、このまま逃げ切れるような気もしますね。ここは結構、立件が難しいのではないですかね、このあたりは」
反町キャスター
「名越さん、トランプ大統領からラブロフ外務大臣への情報提供ですよね、いわば。どのように見ていますか?」
名越教授
「イスラエルの新聞が書いているのは、トランプ大統領は、ロシアに弱みを握られていると。つまり、昨年11月の大統領選挙のあとに怪文書が流れたんですね。つまり、トランプさんが2013年、モスクワにミス・ユニバースの世界大会を組織するために行った時にロシアの情報機関のハニートラップに引っかかったと。そこで弱みを握られているという文書が流れて、それは、イギリス情報機関のMI6の幹部が書いたのですけれど、情報提供したと言われているロシアの情報機関高官が最近、怪死しているんですね。不審な死を遂げている。だから、いろいろとロシアのハッカー攻撃についても、それをアメリカの情報機関が報告書にしたんですね。その後ロシア情報機関のサイバー攻撃担当の幹部6人が解任されたり、死んだりしているんです。だから、いろいろ謎の動きがあるのですけど、そこのところは確認できないです」
反町キャスター
「その人を消さなくてはいけなかった理由というのは、お前、なぜ喋るのだと、喋らないでそっとしておけばクレムリンとホワイトハウスの間だけで握れる情報を、お前が喋って面白おかしく人にリークしたなと。お前は情報マンとしてはダメだから死んでくれと、こういう話ですか」
名越教授
「そこのところわからないですけれど、ロシアとしては暗黙の警告をトランプ政権にできたわけです。そういう情報を持っているよというのを、本当かどうかはわからないですけれど。それを使おうとするうちにトランプ政権はロシアゲートが足枷になって、米露関係がうまくいっていない。だから、これは裏目に出たと思います、ロシアにとって」
反町キャスター
「そうすると、女性のスキャンダルも、今回の諸々の、ロシアゲートと呼ばれるものというものも、ロシアからしてみたら実は困ったこと。本当だったら、表になっていなければ、チラチラと水面下で、プライベートなところで見せることによって、お前、これを知っているんだけれど、聞いてくれよな、制裁解除してくれよというところで使う、みたいなね…」
名越教授
「たとえば、フリン大統領補佐官が就任した時に、CNNが報道していたのは、ロシアの当局者が我々のエージェントというか、仲間がホワイトハウスに入ってくれたと、それ自慢したとCNNが言っているんですね。これもリーク情報ですけれど。しかし、そのフリンさんも2月に解任されたんですね、だから、使い道がなくなった。だから、ロシアの報道機関も、トランプさんが当選以降、プーチン大統領以上にトランプさんを賞賛する異例の報道をしていたんですね、国営テレビなんかは。それがフリンさんの解任後は、ピッタリ止まったんですよね。だから、苦々しくロシアゲートの捜査を見ているという感じですね」
黒井氏
「大統領は、これは前嶋先生がご専門ですけれども、機密情報を開示する権限を持っていますね。ですから、そこは違法になるかどうかというのはなかなか微妙なところだと思うんです。ただ、そういったことを漏洩するのは、基本的にサード・パーティー・ルールというものがありまして、第3国から得た情報は漏らさないという取り決めがあるんですね。これを言ってしまうということであれば、他の国は機密情報をもうアメリカに伝えなくなるということになりますね。そうすると、国益、国家の安全保障に非常に深刻に害をもたらしたということになりますので、そこを突かれると、トランプさんはかなり厳しいのではないかなと思うんですね」
反町キャスター
「たとえば、どこの国から得た情報かと、イスラエルから得られた情報だって話もある中で、トランプ大統領がラブロフさんに、シリアがこういうことになっているのだよと言うと、それはラブロフさんがまたいろんなところにその情報を流し、結局そこに潜らせているイスラエルのエージェントが見つけられて、潰される…」
黒井氏
「ですから、そういった危険なところに情報を流さないと。別にラブロフさん、ロシアだけではなくて、たとえば、同盟国にすら話してはいけないんですね、そういったOKを取らないと。こういったルールがインテリジェンスの世界にはあるのですけれど。それが機能しないということであれば、誰も協力しないということになりますね」

情報リークなぜ続く?
秋元キャスター
「ロシアゲートは、前嶋さん、政権内、政府内からの情報のリーク合戦という形にもなっていますけれども。このリーク合戦になっているという状況、どういう背景があると見ていますか?」
前嶋教授
「まず毎日毎日、本当にすごいものが出てくるんですね。これはトランプさんが就任して任命する人が4000人ぐらい、もちろん、任命が遅れているのでまだ残っている、オバマ政権から残っている人がいて、その人達が漏らしていると、これが1つあります。あと政権が交代して任命しない人も、いろいろな人がいっぱいいるんですね。アメリカ、どうしても我々、全部代わるように思うのですが、そんなことはなくて、代わる人はパーセントとしては多くないですね。で、考えると、いろいろなところで、トランプさんに任せておいたら、アメリカががどうかなっちゃう、あるいは自分達の省庁を守る、自分達の外交、あるいは外交に限らず、政策だったら自分達の政策を守るために、トランプさんに対して裏切るということは、それがこの動きだと思います。毎日出てきますものね」
反町キャスター
「まだ政権発足100日です。100日で、たとえば、国務省やペンタゴンが、この人を支えてもオレ達滅びちゃうから、この人切っちゃうものねという話ですか?」
前嶋教授
「100日だからだと思うんですよね。要するに、最初だから、まだ任命してない部分はオバマさんが任命した人が残っていたりするんです、ここが怪しい。あともう少し経ったら、トランプさんがまとめると思うんですね。トランプさんの中でトランプさんが運営する行政的なネットワークができていくのですが、まだできていない。しかも、官僚そのものを少なくしていこうという動き、例のバノンさんの動きがあって、ワシントンをぶっ潰す、というやつですよね。それがあるので、いろいろな意味でトランプさんという存在は、中で働く人にとってみれば、自分達に対する戦いでもあるわけですね。自分達に対して、自分達をぶっ潰してくるわけですもの。だから、これではまずいということで動いているところがありますよね」
反町キャスター
「たとえば、政治任命と呼ばれる、3000人とか、4000人とか言われる人達が、まだ半分だか、4割しか決まっていないと言われる中で、そうした人達がドンドン決まっていくと、現在みたいな内部からのリークというのは止まるだろうと見ていますか?」
前嶋教授
「多少減っていくのだと思うんですよね。ただ、実はトランプさんが遅いと、確かに遅いのですけれども、たとえば、2001年に、G・W・ブッシュさんが就任した時もナイン・イレブン(9・11)まで揉めていて、ナイン・イレブン以降に、ワッと決まったんですね。そう考えていくと、まだとんでもなく遅くはないです、遅いですけれど。と言うことで、ただ、要するに、まだ半年、1年、いろいろと混乱すると。いずれトランプ派が増えていったとしても、まだまだギクシャクしていくであろうと、こう考えられますよね」

米大統領選『サイバー攻撃』
秋元キャスター
「トランプ政権とロシアの不透明な関係をめぐる疑惑・ロシアゲート。そもそもの始まりは、昨年のアメリカ大統領選でロシアが行ったとされている、民主党へのサイバー攻撃でした。オバマ政権の下、CIA(中央情報局)、FBI(連邦捜査局)などの情報機関を統括する国家情報長官室が、ロシアの関与を認定する報告書を発表したのですがロシア政府はこれを否定しています。ロシアが行ったとされるサイバー攻撃ですけれど、2015年6月からおよそ1年間、民主党全国委員会、DNCがサイバー攻撃を受け、大量のメールが盗まれました。昨年の7月、大統領候補者が決まる民主党全国大会前日に、内部告発サイト・ウィキリークスを通じて、この盗まれたメールおよそ2万通が公開されたというものですが。黒井さん、ロシアのどういったグループが関与しているとされているのでしょうか?」
黒井氏
「民主党の方がセキュリティの会社に依頼して、調べてもらったということですけれども、2つのグループがこうした工作に関わっていたと。ロシアのハッカー集団であるファンシーベア、もう1つは、コージーベアと名乗るグループがそういった情報を盗って、そういったものを流していたということですけれども。ファンシーベアの方はですね…、これはサイバー戦の特徴ですけれど、ロシア政府のものだという確証、確たる証拠がないというところがあります。ただ、いわゆるセキュリティの専門家の間では、これは間違いないだろうと言われているのですけれど。ファンシーベアの方はGRUという軍の情報機関、コージーベアの方は連邦保安局、もともとKGBから分かれた組織ですね。コージーベアの方が多少テクニックが上らしいのですけれども。やり方としては、ファンシーベアの方は関係者が来るような偽サイト、関係サイトの偽物バージョン、我々もよくそういった詐欺サイトというのがありますけれども、そういったものをつくって、そこに来る関係者からいろいろなキーワード、パスワードを打ち込ませて、認証を盗ってしまうと、そこから入っていくということですね。コージーベアの方はどちらかと言うと典型的な標的型メール、狙った人に対して偽のメールを打ち込んで、アクセスを誘発して、中に入っていくようなことをやりますね。そういったもので、共に、別個らしいのですけれども、民主党の中に入っていって、いろいろなものを盗っていったということが言われていますね」
反町キャスター
「ヒラリー叩きということであれば、民主党のメールを盗っていくのは、これはわかるのですけれども。こちらのトランプさんに関する資料を盗ったというのは、これはロシアが盗るだけではなくて、盗ったものを、たとえば、トランプさんにフィードバックして、民主党はあなたのこういうところを持っているよというところまでやったかどうか?ここはどう伝わっているのですか?」
黒井氏
「おそらくトランプさんの1番弱みを握っているのは、民主党だということで、そこをロシア側も知りたいわけです、トランプさんを狙うために。弱点を知るということで使っていたのではないかなと思いますね。ただ、トランプさんだけではなくて、民主党のクリントンさんの弱点というものも探しますし、ただ、クリントンさんの弱点はあまり民主党の中に報告書がないですから。どちらかと言うと、共和党の対立候補に対する資料というものが武器になるということが言えると思いますね」
反町キャスター
「もしかしたらロシアのハッカー集団も、トランプさんに関する資料を盗ったとは言え、それをトランプさんに渡すのではなくて、もしトランプさんが大統領になった時のために手元に置いておく可能性もありますよね?」
黒井氏
「もちろん、それを、だから、トランプさんに渡すということはしてないと思います。だから、それを使って、トランプさんの弱点、弱点と言いますか、ここを攻めたら彼のところに食い込めるというようなことはあったと思うんですね」
反町キャスター
「名越さん、ロシアがアメリカの民主党本部に対して、全国委員会に対して、ハッカー攻撃をかけていた。この目的、動機をどう見ていますか?」
名越教授
「ロシア人はソフト開発とか、基礎科学の能力が非常に高いですね、数学も。だから、こういうソフト開発…、モノづくりはダメなのですけれども。こういうハッカー攻撃とか、非常に技術力が高いと思いますね。ロシア外交というのはある意味で、外交は戦争の延長であると、クラウゼヴィッツ型の理論を信奉する人達だから、使えるものは何でもやろうと。サイバー攻撃を禁止する国際条約ないわけですから、利用できるものは何でもやると。背景には、ロシアの経済力というのはアメリカの7%ですね。中国の12%、日本の30%です。世界で現在13位、韓国に次ぐんです」
反町キャスター
「韓国よりロシアの方がGDP(国内総生産)は小さい?」
名越教授
「そうです。現在、通貨が下がっていることもあるのですけれども。だから、その程度の国力で国際秩序に挑戦するのだ、だから、あらゆる資源を活用して対抗しないとダメですね。その点でプーチン大統領はすごいなと思うんです」
反町キャスター
「そうすると、正面装備とか、潜水艦とか、ミサイルとかではなくて、このサイバー軍によって、ロシアはアメリカの7%の国力で渡り合っているどころか、かの国の大統領選挙の結果まで左右しているという、こういう理解でいいのですか?」
名越教授
「結果まで左右していますかね。全体投票では、ヒラリー・クリントン候補の方が300万票多かったです。アメリカのおかしな選挙制度のためにこういう結果になったのですけれども。開票に介入というのはとてもできないと思うのですが、どうですか?」
黒井氏
「要するに、これは前嶋先生にお聞きしたいのですけれども、投票行動で、実際の調査では、ヒラリーさんをやめてトランプさんにいこうかと決めた人は少ないらしいのですけれども。ただ、州によって、ロシア側というのは、そういう投票者名簿を盗って、有効にSNSとかに宣伝文を送りつけるという…」
反町キャスター
「そこまでやるのですか?パーソナルに個人向けにアンチ・ヒラリー・キャンペーンのメールを送りつけるのですか?」
黒井氏
「そこの分析によっては、いわゆるトランプさんはもともと支持してないけれど、クリントンさんも嫌だなというので、行かない人が増えたということになったという分析をしているレポートを見たことがありますね」
前嶋教授
「黒井さんがおっしゃられたのですけれども、メールの話もありますけれども、世の中、勝手にフィードしてくれるフェイスブックがありますので、バノンさんはそれを望んでいるんですよね。ちょうどヒラリーさんの悪口を望んでいる層に、勝手にフェイスブックがフィードしていて、それが世界に、世界と言うか、アメリカに流れて。だから、主戦場はフェイスブックだとバノンさんが言ったことがあるのですが。そのロシアの動きとトランプ陣営がテクノロジーで出会ってしまったということだと思うんですよね」
反町キャスター
「そうすると、前嶋さんはロシアのハッカー軍団とトランプ陣営が意図的にコラボレーションしていたと見ていますか?それとも偶然の一致だったのですか?」
前嶋教授
「現在のところ偶然の一致としか言いようがないですが。意図的にやっているかどうかが今後の大きな争点ですよね」

サイバー攻撃で情報収集? ロシアが仕掛ける情報戦
秋元キャスター
「サイバー攻撃で得た情報をロシアはどのように拡散していくのですか」
黒井氏
「サイバー攻撃となっていますけれども、要するに、それよりも心理工作、情報戦、宣伝戦ですね。それに対してサイバー攻撃を利用すると、そういうテクニックを使うということです。これはプーチン政権が、ウクライナ紛争の時にハイブリッド戦争というものを始めたと安全保障の専門家筋では言われていますけれど、それは軍を動かすと同時に情報を使って自分達に有利なようにもっていくと。当時、たとえば、ウクライナでデモが起きた背景にはネオナチがいると、ネオナチの背後にはCIAがいたのだというような、フェイクニュースを流すと。そういったもので、自分達の有利な方向に国際世論をもっていって、やりやすいようにすると。それをハイブリッド戦争と呼んでいたのですけれども、その延長戦が大統領選、アメリカの大統領選であろうなと思うんですね。流れをちょっと説明しますと、いろいろな調査でもってだんだんわかってきたことなのですけれど。最初にサイバー攻撃による情報収集をします、それを自分達で流すよりもさらに効果を高めるためにウィキリークスに流すんですね。ウィキリークスに流すことで信用度をある程度高めるということで、それで終わらないですね。それを使って、ボットという自動的にいろいろなネタを飛ばすものがあるのですけれども、それでSNS、ツイッターとか、フェイスブックに、ウィキリークスによるとということで情報を流すんです、それにフェイクニュースを入れるんですね。ですから、たとえば、ヒラリー・クリントンさんがIS(イスラム国)に協力しているとか、そういった情報を入れ、それはウィキリークスに出ていたのだという話をやるわけですね。それがあっという間に拡散すると。それを今度はロシアのメディア、ロシア・トゥデイとスプートニクが有名ですけれども、スプートニクは明らかに一目見て、宣伝サイトとわかるのですが、ロシア・トゥデイは割と洗練されたニュースサイトみたいな体をしているので、ロシア・トゥデイあたりがそういったものをフィードバックして、こういった情報がありますよと流すんですね。そうすると、今度はトロール工作というのですけれども、トロールというのはネタの書き込み、荒らし、ネット上でよく荒らしという言葉を使うのですけれども、そういったものを引用して、たとえば、メディアのコメント覧とか、大きなSNS上のコミュニティであるところに、いろいろな噂を流していく。これはロシアが正しいのだと、アメリカの方がいけないのだというような話を書いていくと、こういう工作を組織的にやっていると。アメリカやイギリスのメディアが、1つの例としてサンクトペテルブルクにある看板を掲げてない会社というのを取材して、今でもあるらしくて日本のメディアも日経新聞が取材しているのですけれど。だいたい300から400人ぐらいそういった職員がいて、そういったネットに噂を書き込んでいくという、ロシア語だったり、英語だったりというのをやっていて、結構、手が込んでいて、たとえば、これはロシアが正しいのだとか、ウクライナとか、シリア情報に対してやるんです、そうすると、いや、そんなことないだろうと、それも自分で書き込むんです。そうすると、いや、でもこんな情報があるよというようなのを、URLを貼り付け、そのURLがロシア・トゥデイだったりするわけです。そうすると、その次に、なんだ証拠があるのだというので、それを前提として世論をつくっていく、ネット世論を。そういった工作をする専門の会社がメディアで暴露されているのですけれども、そういったこともやる、結構、手が込んでいるのですけれども。自作自演です。そうすると、これをブライトバートとか、他にもいくつかあるのですけれど、いわゆるオルト・ライトの人達と非常に親和性が高いです。要は、オバマ政権はダメだというようなことなので、彼らがまた掲載していくということで、まわしていく、と言うことが積もり積もって主要メディアにも載っかっちゃうというようなところまでいっちゃうわけですね」
反町キャスター
「最初のサイバー攻撃の情報収集、これはもしかしてなくても、完全にでっちあげのものをウィキリークスに載っけちゃうことはさすがにしないのですか?」
黒井氏
「ウィキリークスに載せたのはサイバーですね。ただ、こういったハイブリッド戦、宣伝工作というのはロシアも冷戦時代から得意分野で、冷静時代、たとえば、ユダヤ陰謀論であるとか、アメリカの軍産複合体みたいな噂というのは、昔はリベラル派の人達を中心に陰謀論が随分流れたのですけれども、それをロシア崩壊後に出てきた資料を分析するとKGBが大元で仕掛けていたんです。そういったのが得意分野ですから、そういったものをまた復活させているという、いわばある種、心理作戦ということですね」
反町キャスター
「それはまさにKGB出身の人が大統領である、現在、ロシアにおいては外交の手法としてはこれをやるべきだということに当然なっていっている…」
黒井氏
「そうですね。それが確かに効果を得ていますから、特に最近はブライトバートもそうですし、フランスのルペン陣営、ヨーロッパでも右翼の人達、それは現在の体制に対しての反感と言いますか、反対派ということ。ロシアの情報工作が冷戦時代はリベラル派だったのに最近は右になっていると、そうして右の人達がドンドン結びついて、しかも、それだけではなくて、それとは別にさらにロシアや、あとルペン氏にお金を提供するように、個別の工作という両方を使って、ヨーロッパとアメリカの世論をロシアに都合がいいようにもっていこうという工作を結構、大々的にやっています」
反町キャスター
「名越さん、ロシアの情報工作、情報戦についてはどう感じますか?」
名越教授
「帝政時代から続いているDNAですけれども」
反町キャスター
「帝政時代?どういうことですか、それは?」
名越教授
「それはロシアの秘密警察、それから、情報機関、帝政時代から強力ですよ。そういう遺産があるわけです。ただ現在日本に対してロシアはサイバー攻撃やっていないですよ。それから、スプートニクという日本語のメディアは公正で結構、面白いんですよ、非常にレベル高いと思うんですよ。と言うことは、ロシアは安倍政権、支持しているから。つまり、昨年12月の、山口県の温泉旅館で、プーチン大統領が安倍政権の長期化を祈って乾杯の音頭を取ったわけですから、日本では安倍政権がいいわけですよ。フランスとか、ドイツで現在やっていますけれども、極右を勝たせたいと。しかし、うまくいっていないですよね。オランダでも極右が負けたし、フランスでもマクロンが大統領になったんですよね。ロシアはずっとマクロン陣営にサイバー攻撃とか、フェイクニュースを流していたのだけれども。ドイツも今年の総選挙では9月、メルケル首相の与党が勝ちそうですよね。そうなると、ロシアの工作というのはやっている割に全然成果が上がっていないではないかと。アメリカもそうですよね。米露関係もこれで当分、改善の見通しはないですから。さらにアメリカで反露感情が高まっている。だから、結果的に裏目に出ているのではないかと思うんですね」
反町キャスター
「黒井さんはロシアの情報戦、裏目に出ていると見ていますか?」
黒井氏
「もちろん、大筋のところで、なんとかヨーロッパの選挙民が踏ん張ってくれたということだと思うのですけれど。ただ、まったくそういうことがないかと言うと、たとえば、極右的な人達は現在でもルペングループは残っていますのでね、今回、マクロン氏がこけてしまえばどうなるかわからないということで。ロシアの情報戦は、ハイブリッド戦争は近視眼的ではなく、割と長期戦も見据えていますので。今のところ、名越先生がおっしゃるように、裏目に出ている部分も大きいのですけれども、これは結構、偶然も重なったところがありますから、あまり甘くは見てはいけないなと思うんですね」
秋元キャスター
「国を挙げたプロパガンダみたいなことに情報を受け取る側が踊らされないためには何を指標にしたらいいのですか?」
黒井氏
「ですから、それは本当に根拠があるのかどうかということが1番大事で。いろいろな情報が流れますけれども、いわゆるクロスチェックと言いますか、この情報というのはどこから出ているのだって手繰っていくとロシア・トゥデイとかが出てきちゃうわけです。その場合は、それだけだったら、全部否定しなくてもいいのですけれども、引いて見るということが必要ですよね」

今後の国際情勢 米・中・露と日本
秋元キャスター
「ロシアの対外情報戦などについて聞いてきましたけれども。ロシアはウクライナ問題などで外交的に孤立している状況が続いていますが、今後のこのロシアをめぐる国際情勢、どのようになっていくと見ていますか?」
名越教授
「プーチン大統領、今年2回、中国に行くんですね。安倍総理は2回ロシアに行きますけれど、プーチン大統領は日本に来ないですね。来年、大統領選挙までは来ないです。要するに、ロシアがこういう孤立の中で再び北京に靡こうとしているかもしれないですね。今年5回、中露首脳会談をやるんですね。ただ、一方、4月の米中首脳会談、これが結構うまくいったんですね。安定軌道に乗っていますし、2人、トランプ・習近平が互いに信頼し合っています。そうなると、ロシアがむしろ孤立するかもしれない。アメリカのシリア攻撃も中国は理解を示したのですからね。そういう中で、7月の初めに米露首脳会談、トランプ・プーチン初会談が開かれるんです、これが注目点ですね。ただ、ロシアゲートが足枷になるから、トランプさんとしては米露関係改善はなかなか難しいと思うんですよね。その中でロシアがこれからどういう外交を展開するのかと。来年3月の大統領選挙というのが1つの拘束要因になりますから。だから、このロシアの動向、確かに注目すべきですけれども、あまりおどろおどろしく考えない方がいいような気がしますね」
反町キャスター
「十分おどろおどろしい話を聞いてきたような気がするのですけれど…淡々と見てればいいのですか?日本に災いはきませんか?」
名越教授
「安倍総理の対露外交、今のところ、領土問題、進展ないですよね。これは来年、大統領選挙が終わると、来年の選挙というのはプーチン大統領にとって生涯最後の選挙です。それをクリアするとフリーハンドができると、だから、日本政府もそこを期待しているかもしれないです。ただ、その場合でも国後・択捉の返還というのはあり得ないと思うんですよね。そうなると、日本としてはちょっとアメリカもこういう状況だから、立ち止まって外交を再検討してみる必要があるのではないかと思うんですね。日本外交に欠けているのは日中の対話ですよね。これはこれから北朝鮮問題で中国の役割というのは非常に重要ですから、ここで日中関係改善、これは重要になってくると思うんですね」
反町キャスター
「黒井さん、ロシアをめぐる今後の国際情勢をどう見ていますか?」
黒井氏
「今日、アメリカのマケイン上院議員が『世界の脅威はISよりもむしろプーチンだ』ということを言ったのですけれども。海外、ヨーロッパやアメリカに対する情報戦、それから、ウクライナやシリアに対しての侵略行為、そういったものを含めて、ロシアは現在のところ、なぜかまだ引く気がないですよね。名越先生おっしゃったように、ロシアは経済がガタガタ状態で、そこまで実際に、サイバー戦はともかく、軍事行動はいつまでも続けられる状況にないのですけれども。ただ、ロシアはプーチンさん個人がどう考えるかによるので、ちょっと読めないところがあるんです。だから、プーチンさんがあくまでも自分のマッチョ思考でロシア人の誇り、虐げられていたロシアが再びというところで、どこまでがんばるかというのは、彼本人しか決められない。彼が決めれば、それに対してロシアが動いていくということですから。強硬でもって対外的にこれからもコミットしていくのか、どこかで縮小みたいな引きを考えているのかというのは、プーチンさんにしかわからないですね」
反町キャスター
「前嶋さん、いかがですか?」
前嶋教授
「ちょっと考え方を変えて、もしプーチンさんだったら、たぶん日本とロシアの関係と、アメリカとロシアの関係は反比例だと思うんですね。要するに、トランプさんが使えなかったら日本を大切にすると、逆に、トランプさんが使えると日本に冷たくしていいと。要するに、日本というのは、G7の中で唯一ロシアが頼れるというか、話ができるところであって。それがトランプさんにいくのか、アメリカが出てくるかどうかだったのですが、アメリカがどうもロシアとうまくいきそうにないと。考えていくと、日本としてもなかなか微妙ですよね。米露関係がどう動いていくのかというのが、反比例がもし日本の形だったとするならば、果たして米露関係が良かったら日本はどうなるのか、北方領土どうなるのかという問題があると思うんですよね」
反町キャスター
「名越さん、米露関係と日露関係というのがゼロサムの、どちらかが上がればどちらかが下がる関係だったら。日本の政府関係者とかにこの話をしますと、だいたい皆さん否定しますよ。いや、米露は米露でやってもらって、我々はアジアの関係なのだから日露はやるんだよ、それは影響されないと言いますけれど。影響すると思いますか?しないと思いますか?」
名越教授
「オバマ大統領は安倍総理にちょっかいを出してきたわけですね、プーチンを呼ぶなと言ったり。しかし、トランプ大統領になって、2月の首脳会談の時に、安倍総理、帰ってからテレビに出て発言をしていたですよね、ロシアとの平和条約交渉をすることでトランプ大統領のお墨付きを得たと」
反町キャスター
「ここで言ったんです」
名越教授
「ここで言った…これから共同歩調でできると安倍総理は考えているのだろうけれども、ただ、ロシアの領土問題というのは別のラインで動いていますから。昨年12月の訪日の時も非常に厳しかったですよね。帰属問題でほとんど進展、むしろ後退だったですよね。だから、こういう中で日露を個別に進めようとしてもなかなか難しいと思いますよ」
反町キャスター
「それは日露関係と言うのは米露関係と関係するのですか?」
名越教授
「あまり関係しないと思いますね」
反町キャスター
「ただ、単体で考えても厳しい。そういう意味で言っている?」
名越教授
「そういうことですね」
反町キャスター
「日本はロシアとどうお付き合いしていけばいいのですか?」
名越教授
「来年…」
反町キャスター
「大統領選挙まではとりあえず、あまり期待しない方がいい?」
名越教授
「期待しない方がいいですよね」
反町キャスター
「終わったあとも動くと思わない?」
名越教授
「動くと思わないようなところもあって。安倍総理が、だから、平和条約交渉を悲願としていますから、これからも続けると思うのですけれども、ちょっとここは立ち止まって、再検討して。たとえば、日中関係を改善すると、ロシアに対するカードになると思うんですよね。北朝鮮問題でも日中関係というのはこれから重要になってきますから」
反町キャスター
「現在の安倍官邸は中国との関係改善に動いている気はしませんか?狙っているような?」
名越教授
「狙っているような感じもありますね。向こうがあまり乗ってこないですよね。ただ、中国と敵対して、対決しても消耗するだけですよね。東南アジアもついてこないですよね。だから、これから北朝鮮問題が日本の安全保障、1番重要なわけですけれど、北朝鮮に影響力が行使できるの中国だけですからね。日中のパイプがないというのは非常に深刻だと思いますよね」

名越健郎 拓殖大学海外事情研究所教授の提言 『"日中友好"外交』
名越教授
「日本にとって中国とロシアの連携というのは脅威ですからね。ロシアの中に中国と同盟関係を結ぶべきではないかと、そういう議論も出ているんですね。日中関係を強化したら、それを阻止することもできると。日本の外交、選択肢が広がると思うんですね。ロシアに対するプレッシャーになる。それは韓国、北朝鮮にもなると思うんですね、日中友好を進めると。それから、中国は反日外交をやっているからなかなか難しいと思うのですけれども、安倍総理はプーチンさん、トランプさん、エルドアン大統領、ああいうやや奇怪なリーダーとうまくやっていけますから、そのへんを期待したいですね」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏の提言 『ロシア・メディアは宣伝機関と心得よ』
黒井氏
「ロシア・メディアは宣伝機関と心得よということです。今日、お話に出ましたけれど、これは日本というより、我々1人1人が、特に我々メディアに携わる者がそうなのですけれども、非常にロシア・メディアに対しては甘いなという印象を持っていますね。たとえば、我々も北朝鮮や中国のメディアをそのまま受け取らないではないですか、何か思惑あるのだろうということですけれど。ロシアに対して割と無防備に引用しちゃうことが多いのですけれども、ロシアは現在、政府メディア、2つある、スプートニクとRTだけではなくて、国営テレビを含めて、全部統制していますから、そこに出てくる情報は基本的には宣伝機関。今日、マクロンさんがフランス・パリでプーチンさんとお会いしましたね。宣伝機関だということをはっきり言っていますね。そういったことを考えていきたいなと思うんですよね」

前嶋和弘 上智大学総合グローバル学部教授の提言 『次の一手』
前嶋教授
「次の一手とは何かを考えようと。バカバカしいこと書いたのですけれども。これはどういうことかと言うと、ロシアはたぶんトランプさんよりもプーチンさんが1歩も2歩も先に行っている。ロシアの1歩はトランプ政権の2歩、3歩先かもしれない。いろいろなことが次にどう出てくるのか、次がどう出てきたら我々はどう動いていくかを見ていかないといけない。ですので、逆に言うと、アメリカを見るとアメリカのトランプさんがツイッターで飛ばしたとするなら、この1歩と、プーチンさんの1歩は結構、違うのではないか、一手は違うのではないか、こんなふうに思うんですよね。次を見る感じです」