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2017年5月19日(金)
大詰め与野党の攻防戦 テロ等準備罪の功と罪

ゲスト

古川俊治
自由民主党法務部会長
階猛
民進党共謀罪対策本部長代行
落合洋司
元東京地検公安部検事 弁護士
福田充
日本大学危機管理学部教授

攻防『テロ等準備罪』 審議は尽くされたのか?
松村キャスター
「今国会、最大の焦点とも言われるテロ等準備罪をめぐる主な出来事をまとめました。今年1月の通常国会開幕直後の予算委員会で金田法務大臣に対して、当時まだ審議入り前だったテロ等準備罪の質問が相次いだことを受け、金田法務大臣が2月6日に法案提出後に官僚が答弁できる法務委員会で議論すべきだという文書を作成し、報道各社に配布しました。野党が質問封じだと激しく反発、7日には撤回、謝罪をしています。その翌日、衆議院予算委員会で階猛議員の質問に対し、金田法務大臣が『私の頭脳で対応できなくてすみません』と答弁。これを問題視した野党4党が辞任を要求しました。先月26日には今村前復興大臣の失言問題で衆院法務委員会が開催見送りとなりました。今月17日に野党4党が金田法務大臣の不信任案を衆議院に提出、18日に否決されています。今日ですが、衆院法務委員会で自民、公明、維新の賛成多数により可決されました」
反町キャスター
「今回通ったのは自公のもともと出したものに維新の修正を飲み込んで、自公維新で出ていますよね。維新の修正の内容というのは、委員会の質疑の中で出てきたものなのですか?いきなり修正案がポンと出てきた感じ、維新が何回か質問して金田さんがそれに対して真摯に答え、事務方もそれに対して真摯に答えて、自公維新、理事間協議が行われて、修正案がまとまったというプロセスにはなっていませんよね?」
古川議員
「そうですね」
反町キャスター
「これを形骸化と呼ばずして何なのだと、ここはどうですか?」
古川議員
「他の法案でも、あります。それは民進党さんも入れて、国会の中の30時間ではなくて、もっと広い時間、いろんなのを皆、持っていますから、それについて意見を戦わせたうえで、なるべく充実したところで、国会で審議しようと、それをやっているわけですよ。とてもではないですけれども、何にもないところで、あそこで議論では足りないですよ、時間が」
反町キャスター
「階さん、そこはどうなのですか?自公維新が修正協議を別のところでやっているということを知るとか、情報が入ってくるわけではないですか。そこに自らも加わるという選択肢、加わりたいという意向みたいなものを与野党間でやらないものなのですか?」
階議員
「私どもも対案というか、対案ではなく、代わりの案ですから、代案ですけれど、あとで中身は説明しようと思いますが、そういうものを持っていたんですね。声をかけてくれれば当然協議はしたつもりですよ。ところが、我々の方には声がかかってこなかったということです」
反町キャスター
「そこは既にこの法案が委員会にかかる時点で、今日の決着というのは想定されていたものだったのではないですか?最後はこれしかないよねと」
古川議員
「それは野党さんがどういう態度で臨んでいただけるかですね。それはそうで、我々としては、どの法案も同じように真摯に議論を尽くさなければいけないのは当然のことですから。出てくる問題点であれば、それは問題点があるようなものはしっかり議論しなくてはいけないですから。なるべくいい方向を出していくと。付帯決議という方法もありますから。それが基本的な与野党のスタンスだと思っていますよ」
反町キャスター
「その意味で言うと、民進党が、野党側が中身というよりも金田さんの資質にグッと重きを置いている、それが民進党として対世論ということで、そういう戦略 をとるということは自民党にしてもよかった?中身の話になってしまうと、修正協議とか、付帯決議とか、はっきり言って国会をまわすうえで面倒くさいことになるではないですか。言ってくれている限りにおいてはありがたくて、時間になったらパチンという、こういうことだったのではないですか?」
古川議員
「付帯決議は、いくらでも政府にやれということです、我々も受け入れらないこともいっぱいあるんですよ。これはある意味で参議院は正常化、最後までいきましょうと。しっかり議論して、反対討論をしてもらって、付帯決議と、こういう手続きがあると建設的だと思いますけれども。是非期待しています」
反町キャスター
「それは参議院の審議においてという意味ですよね?」
古川議員
「と言うことです」

実際に『テロ』を防げるか?
松村キャスター
「ここからは組織犯罪処罰法の改正で本当にテロが防げるのかを聞いていきます。この法案の中で新たに新設されるのがテロ等準備罪です。構成要件は、法律の適用対象となるのは組織的犯罪集団で、重大犯罪を計画、準備した段階で処罰対象となります。その対象となる犯罪は、テロ実行や資金源など277に定められました。福田さん、危機管理の専門家から見て、このテロ等準備罪をどう評価されますか?」
福田教授
「組織犯罪処罰法の改正案としては、組織犯罪には網羅的にカバーできていると思います。277に絞られましたけれども、それでも広範囲に網羅されていますので、非常に評価できると思うんです。ただ、テロ等準備罪に関して言いますと、次善の策、長期的戦略に立てば、まず第1歩だという印象を持っています。僕自身はテロ等準備罪も、この組織犯罪処罰法改正案も賛成なのですけれど、本来的には危機管理やテロ対策という観点から言いますと、テロ対策基本法的な大きな枠組みが必要で、そこでテロとは何かという定義があり、テロ組織とは何かというテロ組織指定があると。そういったものが積み重なっていって、それに該当するものが網羅されていくというのが、本来の欧米のやり方ではそうですよね。たとえば、アメリカのパトリオット法とか、イギリスの2006年テロリズム法、そういったものはかなり基本法的な法体系になっています。それをいきなり現在の、日本文化の中でやるのはかなり難しいと。と言うのは、テロ対策の研究は歴史があまりないんです、日本国内では。オウム真理教の話もあとで出てくると思いますけれど、あのオウム地下鉄サリン事件でさえテロリズムという報道はしなかったし、テロリズムの枠組みでは処罰ができなかったんです。ですから、そういう研究もまだ蓄積がないし、政策的な蓄積もない、その中でいきなりテロ対策基本法というより、今ある法律の中で、組織犯罪処罰法の改正案の中で準備としてやる。テロ等準備罪としても段階的にこれを構築していくのは、段階的な積み上げ式としては第1歩としてあるべきアプローチだと思っています。ただ、根本的な問題は残っていまして、組織犯罪対策という枠組みとテロ対策という枠組みは重なっている部分もあるのですけれども、部分的に異なる部分があるんですね」
反町キャスター
「具体的にどういうことですか?」
福田教授
「たとえば、組織犯罪対策というと、テロ組織に限定していませんよね。当然、マフィアも含まれるし、暴力団も、反社会的勢力もそうですね、含まれます。それがテロリズムと合うかどうかというのは政治的な概念として違う部分があるし、活動も違う部分がある。その葛藤が国連とか、国際社会の中でもあるんですよね。それが日本社会の中にも持ち込まれていて、さらには日本の中で組織犯罪対策と言われると、テロと違う文脈でずっと語られていた、歴史的な経緯があるので、そこに引きずられ、テロと違うではないかという批判があるのはある種、仕方がないのですけれども、でも、国際的には2015年の国連事務総長の報告書にもありますけれど、テロ対策と組織犯罪対策は重なっている部分が多く、引き離せないのだと。これはタッグで進めていかないといけないというのは国際的な状況でありますから、日本もそういう進め方をするというのは、僕は賛成です」
反町キャスター
「この法律が通れば、オリンピックは安心か、そこはどうなのですか?」
福田教授
「テロ対策の研究の文脈で言いますと、テロ対策というのはすごく広いですね。それを水際で、出入国管理もありますし、もしくはテロ組織のマネーロンダリングの対策もあります。リクルートを防ぐということもあります、それは人身売買も関連してきますね。少年兵というか、ボコ・ハラムは子供を誘拐して少年兵に仕立てて、使っている。薬物を売ることによってお金を得るとかですね。そういうことをテロ組織が行って、テロ活動の周辺的行為として、これらがテロに結びついているという意味では、幅広いテロ組織の活動の中にそれらはテロの研究の中では含まれているとみなされていると。その中で、先ほど、申し上げたような、アメリカのパトリオット法もそうですけれど、網羅している、カバーしている部分というのは、だいたい包括的にカバーしきれているのではないかなと思っています。ただ、時代が変わるとか、新しいテロの形ですとか、進化していけば、新しく漏れてくるものが出てくると思いますので。常に時代の変化と共に洗い直していかなければいけないと思います」
反町キャスター
「アメリカのパトリオット法とか、イギリスの対テロ法というのは日本のテロ等準備罪の細かく277とか、300とか、項目を全部中に包含している法律なのですか、それともフワッとした危険なものはダメなのだよというみたいな、細目としてはその場その場で、その場の警察の判断、司法の判断によってやるものだと。法律の建てつけが変わってくるではないですか?」
福田教授
「変わってきます」
反町キャスター
「アメリカ、イギリスの法律というのはどういう法律なのですか?」
福田教授
「イギリスの2006年のテロリズム法は包括的なテロ対策基本法ですから、包括的にこういう項目について規制するということが記されています。だけども、アメリカのパトリオット法というのは9.11が起きたあと、そういったアメリカ国内で発生するようなテロ対策を、DHSをつくりましたけれども、国土安全保障省。その中で、国土安全保障省がどうやって監視し、防ぐかということをかなり網羅的に項目として組み入れていますので、パトリオット法は包括的です」
反町キャスター
「包括的と網羅的という言葉を使いましたが…」
福田教授
「パトリオット法はだいぶ細かく書いています。イギリスの2006年テロリズム法はもうちょっとフワッとしている」
反町キャスター
「それはどういうことなのですか。細かく書かない方が取り締る側からすれば、やりやすい?」
福田教授
「そうなんです。ネガティブにとるか、ポジティブにとるか、その違いなんです。イギリスは不文律の歴史がありますし、かつ法律に書いてないことができるということがイギリスの法文化です。あまり細かく規定しなくても、イギリスの方はテロ対策が進んでいますし、運用でかなり自由にできる部分もありますので、細かく網羅性がなくてもいいという部分があります」
反町キャスター
「日本の場合は、フワッとしたものでやれるような風土では…」
福田教授
「やれないと思います」
反町キャスター
「風土ではないから、細かく並べないといけないよと。ただし、細かくやればやるほど、事実上の細目以外の部分は何だと、その議論になっていくと…」
福田教授
「なっていきますね」
反町キャスター
「結局、穴があるのか、ないのかの議論になっていくという追っかけこからは逃れられない?」
福田教授
「逃れられないと思いますね。日本は細かい項目からボトムアップ的に積み上げていくというアプローチをとっていると思います。それがテロ対策の基本法を上から、トップダウンでつくるのとは違うアプローチだと思うのですけれども、それは現在、日本でテロ対策基本法をトップダウンでつくれるだけの研究とか、政治的な土壌がまだないのは仕方がないと思っています」
反町キャスター
「テロとは何だという話がないから、事象で潰していくしかないというのが日本の法制度の現状だと、こういうことでよろしいですか?」
福田教授
「そう思いますね」
反町キャスター
「落合さん、オウムを担当された立場から、テロ等準備罪ができたら、オウム事件というのは未然に防げるのかどうか、ここはどうですか?」
落合氏
「結論から言うと、残念ながら未然には防げていなかったと思いますね」
反町キャスター
「この法律ができてもダメ?」
落合氏
「ダメというか、残念ながら防止はできなかった。と言うのは、松本サリン事件にしても、地下鉄サリン事件にしても、結局、事前に警察当局は情報をまったくつかんでいなかったわけですし、松本サリン事件の場合は、最初は無関係な人を犯人扱いして疑っていたと。地下鉄サリンのあとも、私は当時、公安部にいましたけれど、オウムが疑わしいという話は出ていましたけれど、誰がどう動いてやったのかということについては共犯者の1人が自白をするということが起きるまではまったくわからなかったわけですね。それだけ難しいわけで。事前の摘発というのは。そういったところをあまり考えず、この法律があればテロが防げるのだという形でキャンペーン的に語られているということは残念ですし、逆にテロ対策というものを、踏み込んでやっていくということを阻害することにつながりかねない。法律があればという語られ方をするから。おそらく福田先生がおっしゃるように、これがあるからいいのだということではなく、もっとやらなければいけないことがいっぱいあると思うんです」
福田教授
「インテリジェンスと組み合わせないとまったく意味がない思います」
落合氏
「そのあたりの問題意識が希薄な状態で推移しているというのがありますので、テロ対策という観点で見た場合にも実効性の点で、私自身、実務的な観点で疑問を持つと同時に、今後のテロ対策というのが発展していくことに、ブレーキとまで言いませんけど、問題意識を深めない方向に働くような気がして、逆に気になって…」
反町キャスター
「インテリジェンスが足りないよねと、では情報収集に向けた対策を強化しないとねと、次のステップにいくのではなく、ここができたから、もういいや、と思考停止になってしまってダメになると、こういう話ですか?」
落合氏
「そういうおそれがあるということですね」

『パレルモ条約』締結への道
松村キャスター
「パレルモ条約の正式名称は、国際組織犯罪防止条約と言います。政府は、東京オリンピック・パラリンピックに向けて条約締結を目指しているということですが、187の国や地域が現在締結しています。目的は国際的な組織犯罪防止への協力。これが締結されますと、犯罪人の引渡し、捜査、訴追、司法手続きなどの捜査協力などもできるということです。条件が共謀罪、または参加罪を設けるという話が出ています。この条約を締結することによって、捜査の情報が入ってくるなどのメリットあるということですが、具体的には?」
古川議員
「たとえば、テロで捜査をした記録などはもらえるんですよ、直接。だから、マネーロンダリングしても、そういう資金源などの記録…」
反町キャスター
「これは入らないと?」
古川議員
「これに入らないと、外交ルートを通じてやらなければいけませんし、時間もかかるし、担保できてないです、それは。それは非常に有用ですし、たとえば、組織にすれば、あと犯罪人の引渡しもあります。たとえば、犯罪人も逃げてしまっている人をもう1回連れてきて、お金を返してと。たとえば。そういうこともできるようになるから、処罰して。それに我が国が入れていないということは威信にも関わる。日本がテロの準備の行為の、ある意味、穴になってしまうんです。そこで行われて、海外でやると。あり得ますから。入ることはある意味で日本の国益にも非常に重要だと。威信にも関わる」
福田教授
「そもそもの問題は今回の法案の改正が、目的が多層的であるということです。3つあると思います。それはTOC、パレルモ条約に加盟するためという大義名分が1つ。もう1つは2020年の東京オリンピックに向けてテロ対策を強化しなくてはいけないという目的が1つ。3つ目は危機管理上、テロ対策というのは2種類あります。それはテロを未然に防止するための危機管理、リスクマネジメントですね。2つ目はテロが起きたあとの被害を低減するためのクライシスマネジメント。両方とも危機管理なのですけれども、僕達が考えないといけないのはテロを起こしてはいけない。未然に防ぐという軸があるんですね。そこで共謀とか、準備段階で処罰しなくてはいけないということが、イギリスやアメリカではできる。だけど、それは日本ではできないのだということをどうすればいいのかということをずっと僕達は考えてきたし、政府も考えてきたと。この3つの軸があって、それを一気に解決したいという想いがこれにこもっているから、僕自身はテロ等準備罪という名前でも277の項目は十分、テロ対策の研究の中では、これはテロ対策の重要な項目としてあげられているものなので、グローバルに見ると、これはテロ対策だよということは、専門家なら見てわかるものがちゃんと入っているんですよね。そういう意味では、テロ対策をカバーしたい、パレルモ条約もクリアしたい、予防もしたい、共謀罪という、3つの目的がわかりづらくさせているのですけれども、それをちゃんと理解されるように議論しないといけないし、説明しなくてはいけないと、僕自身も責任を感じているところです」
松村キャスター
「しかし、締結するには共謀罪または参加罪を設けることが必要。共謀罪というのは重要な犯罪の実行に合意すると処罰されるというもの、参加罪は犯罪組織への参加を処罰するというものですが、どちらかを設ける必要があるんですね。古川さん、今回のテロ等準備罪を設けることでこの基準は満たされると思っていいのですか?」
古川議員
「そうですね。今回のをつくることによって、その基準は満たすことになると思います」
階議員
「共謀罪または参加罪のうち共謀罪を今回やるわけですよ。テロ等準備罪という言葉が1人歩きをしていますけれども、共謀罪ですよね。共謀罪というのは犯罪の合意を処罰するものです。犯罪の合意を処罰するというところは、いかにも言論の自由や表現の自由を萎縮させるので、プラスアルファで今回の政府案は準備行為というものを要求したんです。私は、この準備行為というところをもうちょっと歩み寄ってもらって、予備行為と。予備行為というのは現在の刑法でもさまざまなものがありまして、予備罪とそれに関わる準備罪、これで50近くあります。それから、共謀罪は現在の刑法でも少ないですけれども、あるんです。重要な法律について。共謀罪と陰謀罪も20ぐらいある、合計すると70ぐらいあるんですね。277まではいかないですけれども、既に70ある。70あるものにプラスアルファしていくことによって、現行法の体系を大きく変えなくてもTOC条約には加盟できるのではないか、こういうこと考えています」
反町キャスター
「新たに法律をつくらなくてもいい?」
階議員
「新たに法律をつくるとすれば、現在の予備で何が欠けているのかということで、我々検討しました。過去の法務省の意見などを見ますと、2つ、とりあえず欠けているものがあると。それが組織的詐欺、組織的な人身売買、この2つについて手当をしましょうということで、私達からは法案を国会に出しています」
反町キャスター
「その法案はいつ出しているのですか?」
階議員
「連休の合間に出しています」
反町キャスター
「そうすると、それが民進党の対案で、277のような大きなものでなくても、マイナーチェンジでキチッとパレルモ条約に加われるはずだというのが建てつけですね」
階議員
「そうです」
反町キャスター
「この件についてはどうですか?」
古川議員
「先ほど、言われた予備というのには判例がありまして、重要な意義を持っていて、かつ客観的に相当に危険な段階にこないと該当しないということですね。今回のTOC条約が要求しているような合意罪というのは、オプションとして本当は合意罪ですけれど、国内法が要求する場合には、我々の法案では実行準備行為が必要で、合意を促進するような行為がつけてもいいと、要件に。そうすると、より限定的になるわけですね。今回我々は実行準備行為をつけたわけですけど、TOC条約でも、要するに、合意を容易にするような行為が可能なオプションというのは、客観的にその合意があらわれるような段階であって、予備ではダメですよね。予備は相当に客観的に危険な状態でないといけないと。ところが、合意を推進するというのは、言ってみれば、もうちょっと前の段階で処罰できないと、このTOC条約の要件を満たさないと」
反町キャスター
「民進党の提案では…」
古川議員
「入れない」
階議員
「今の点について、まさに今日も法務委員会で議論をしていたんですね。なぜ予備だとダメなのかと。条約上は未遂、既遂ではない別な犯罪を設けなさいと言っていますけれども、予備はダメだとは言っていないですね。条約の解説する立法ガイドというのがあるんですね。その立法ガイドに基づいて、各国において法的な措置をとりなさいというものなのですけれど、立法ガイドによると、国内の法的伝統、原則及び基本的な法と適合したものになることを確保しなくてはいけないとか、犯罪の規定は締約国の国内法に委ねられ、必要な行為が犯罪化される限り、本条約とまったく同じ方法で規定される必要はないと、こういったことが書かれています。こういったことも合わせて考えれば、必ずしも予備ではダメだということにはならないと思っていまして、この議論をやっていくことによって、妥協点を見出していけるのではないかなと」

『人権侵害』はないのか?
松村キャスター
「今回審議で多くの時間が割かれたのが、捜査対象に一般人が入るのかどうかでした。安倍総理は4月19日、衆院法務委員会で『対象は重大犯罪を目的とする、組織的犯罪集団に限定されていて、一般の人が対象になることはあり得ない』と発言しています。一方、盛山法務副大臣は4月28日に『何らかの嫌疑がある段階で一般人ではない』と発言しています。この法案における一般人の定義が気になるのですけれども」
古川議員
「一般人の定義の仕方なので、どう考えるかなので、答弁に出ている一般人も文脈上のことなので、定義をどうこうしようという話はしませんけれども。先ほど、落合先生から出て、オウム真理教という宗教団体があって、途中から組織的な殺人をやると、一部の人達がそうなってしまったんですね、そういう集団に。明確な指揮命令系統があって、役割分担が決まっていると、定義にあてはまりますから、今回。そうなった場合に、あの中でも自白をしたお医者さんも入っていたわけですね。お医者さんはもともとそういった団体の、組織的犯罪集団の人ではないですから、一般人だったわけですよ。そういう意味では、犯罪の分担の構成員に入ってしまえば、犯罪組織の、それは一般人ではなくなるというか、もともと一般人であったとしても組織犯罪の構成員になってしまえば、該当する場合があります」
階議員
「昔、小泉総理が、自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だと言っているのと似たような話で、答えになっていないですよね。一般人でも何らかの嫌疑があれば、捜査対象になり、一般人ではなくなると。それでは、どういう場合に嫌疑が生じるのだということについて、まずはっきりさせてほしいですね。嫌疑があるかないかは捜査機関が決めることですから、捜査機関の一存で嫌疑が生じ、一般人でなくなるということですから、一般人も当然対象になり得るだろうと、嫌疑がいつ生じるか、どのような場合に生じるかをはっきりさせない限りですね。そこがちゃんと答えてほしいところですけれども、明確な答えがないということです」
落合氏
「専門的な話になってしまいますけれど、実体法と手続法に我々はそれを分けて考えますが、たとえば、刑法とか、今回テロ等準備罪、こういうことをやったらこういう刑罰になりますよというが決まっているのが実体法と言われている。手続法というのは、刑事訴訟法とか、そういう手続きを定めている。テロ等準備罪を見た場合に、確かに組織的犯罪集団でこういう犯罪をしてという、そこに一般人が入ってくることはないですよね、それは。そこに入ってしまっている以上、一般人ではないですね。ただ、手続き的な面で見ると捜査対象として捜査はやってみなければわからないわけで、非常に怪しいなという人を調べていった場合に、その中に最終的に組織的犯罪集団に入っている人もいて、それだけではなくて、一般人も入っているということは十分あり得ることですよね。初めからわかっている人はやりませんから。そういう意味では、一般人が捜査対象になってくるということは、状況によりますけれども、十分にあり得ることですよ。そのあたりの議論がごちゃごちゃになってされているので、非常にわかりにくくなっている」
反町キャスター
「本音と建前が混在しているという見方はアリですか?」
落合氏
「本音と建前というか…」
反町キャスター
「一般人も含めて、広くスクリーニングしないと誰が本当に悪い奴かがわからないというのが本音だとすれば、建前的に言うと、我々は悪い人しか捜査しないのだよという…」
落合氏
「そういうことですね、結局は」
階議員
「そうです」
反町キャスター
「両方とも正しいという…」
落合氏
「正しいというよりも切り口が違うのではないですかね、見方というか」
階議員
「処罰対象になるのは組織的犯罪集団の構成員ということですから、ここは一般人とは言えないかもしれないですね。一般人ではないと言えるかもしれませんけれども、他方で、落合先生が言ったように、監視とか、捜査の対象としてはもっと幅広く、対象にしないと、犯人は見つけられないはずですから。そういう意味では、捜査・監視の対象には一般人はなり得るというのが正しい考え方だと思います」
反町キャスター
「総理の発言、『一般の人が対象になることはあり得ない』というのは、建前過ぎる?」
古川議員
「今回、実体法は変えるんですよ、だけど、手続法は一切いじっていないですね。手続法、刑事訴訟法を含めた、捜査方法はまったく変えていないです。と言うことは、現在と同じような体系で捜査しなければいけないので、だから、今よりも何か特別にこの法律ができたからと言って、捜査方法において違いが出ることはないと。現状が一般人を監視下においていますかと言えば、そうお考えなのかどうかですよね。現在、警察や検察の実態が」
階議員
「公安警察はおいています」
古川議員
「これは、たとえば、国会の周りではデモをやられていますよね、皆さんね。金曜の夜は必ずやるんですよ。私は外を歩く時にバッジを外していたりするので、そこを歩いていると職務質問をされるんですね。それは今でもあるわけです。そういうレベルを監視されていると言えば、それを言うのだったら今と変わらないです。これができたからと言って特別に何か監視社会になるのかと言うとまったく。手続法は変えていませんから。方法は変わらないですね」
反町キャスター
「総理が、安全運転の答弁をされたのだと思うのですけれども、本音のレベルで、必要に応じて、必要な範囲で調べて、そのうえで怪しい人が出てきたらグッと入っていく、これが捜査ですと言えば、これで終わる話ですよね?」
福田教授
「そうです。階先生がおっしゃっていることも、古川先生がおっしゃっていることも全部、正しくて。監視とか、インテリジェンスというのは基本的には2段階あって、幅広いインテリジェンス、監視というのは全部に網を広げるんですよね、だから、ビッグデータは分析されるわけですし、ツイッターとか、ソーシャルメディアは全体的にカバーされて、監視するわけですよ。それは一般人も含まれています。だけど、特定にこの人物は怪しいということで通信傍受を強化するとか、そういうような特定された容疑者というか、そういう監視対象者になることが一般人の中でごく稀であるというか、容疑が固まってきて、監視対象になるという段階があるわけでありますので、あまりごちゃごちゃにして議論することではないと思います」
階議員
「そこを正直に言ってほしいんですよね。金田大臣は明確に言わないわけですよ」
反町キャスター
「金田法務大臣が『花見であればビールや弁当を持っているのに対し、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳を持っているという外形的事情があり得る』と委員会でこういう話をされました。これではないでしょうという部分ですよね?」
階議員
「これがまったく当てはまらなくて、そもそもその対象者を見張っていないと、何を持っているかというのはわからないわけで、見張るためにはその前段階から監視しているわけですよ、この人が怪しいと思ったら。その前の段階から始まっていますし、監視された対象者が下見なのか、花見なのかというのは、持ち物ではなく、目的によって判断されるということなので、目的を知るためにさらに深く対象者のSNSとか、メールとか、そういったやり取りなども見なくてはいけなくて、こんな外形的な事情はまったく意味をなさないですね」
反町キャスター
「古川さん、これはなかなか弁護できないですよね?」
古川議員
「これは実行準備行為がどういうものかということを説明したものですよね。だから、実行準備行為はそもそも基本的な計画があったうえで、それと別個の行為で計画を進めると、客観的にわかるような行為のことを言っていると、こういう説明になってしまったのですけれど、その時は。ただ、先ほど、落合先生がおっしゃったように、これまで予備罪が一応あるわけですけれども、そういうのでこれまでわかったことというのも、他の犯罪がわかって、そこから辿ってみたら偶然それがわかりましたよという形になっているので、ずっとあるものを追って予備罪なんてほとんどないわけですよ。だから、今回これが出たからと言って、監視して、それでここで準備行為がどうこうということは、普通はなりませんよね。だいたい警察の人だって、他の捜査だってありますから、人員は限られています。だから、合理的な嫌疑というものがなければ、任意捜査だってやらないですよ。と言うことになると、今と実態がそんなに変わらないということは言えますね」

古川俊治 自由民主党法務部会長の提言 『外国当局との協力 出入国管理強化 情報収集分析』
古川議員
「まずTOC条約に入って、外国との捜査共助を活用して、捜査の外交における捜査の記録をもらってくると。それから、出入国管理、これをどうやっていくかもう少し考えなければいけないところがありますね。現在のままだと水際対策ということについては非常に弱くなっていますので、他国の例を参考に強化する必要があると思っています。もう1つが情報。先ほど、おっしゃったように、現在のようななかなか情報が集まらない問題がありますから、一般の皆さんに疑義があるような事態があったら情報をくださいということを広くお願いをするということをやっていかなければいけないと思います」

階猛 民進党共謀罪対策本部長代行の提言 『・水際対策 ・本来のテロ条約加盟』
階議員
「水際対策をあげていますけれども、具体的に私どもとしては航空保安法という法案を国会に出しています。これは現在、民間の航空会社に基本的に委ねられている飛行機に乗る時のセキュリティのチェックを国が主体的にやっていこうというものです。それからもう1つは、テロ関連の条約のうち、現在、日本が加盟しているのは13あるのですが、それ以外に5つぐらい、航空機の関連であったり、海の関連であったり、こういったものについても迅速に加盟していくと。TOC条約も入るべきですけれど、テロという観点から言うと、この5条約についても早急に対応すべきだと考えています」

落合洋司 元東京地検公安部検事の提言 『実効性ある対策を』
落合氏
「テロ対策ということであれば、実効性ある対策というのを講じてもらう必要があるだろう。この法律ができたからテロ対策ができますというようなところでとどまってほしくはないということが1点。あと共謀罪というものに対して非常に不安を持っている人がかなり多いという現実がありますので、運用については慎重にやってもらいたいと、特に捜査当局に対しては望みたいと思っています」

福田充 日本大学危機管理学部教授の提言 『インテリジェンスの強化と権力監視のバランス』
福田教授
「インテリジェンスの強化と権力監視のバランスということなのですけれども、この法案ができたからと言って、テロ対策の実効力が増すというわけではないと思います。未然に防ぐためのインテリジェンス、情報収集・分析が強化されないといけません。逆にそれが強くなり過ぎると、監視活動が強化されて権力の暴走が始まるかもしれないという不安を止めるためには権力監視というもののシビリアンコントロールですね。それをいかにバランスをとっていくかというのが重要になってくると思います」