プライムニュース 毎週月曜~金曜よる8:00~9:55(生放送)

テキストアーカイブ

2017年5月16日(火)
憲法9条を徹底検証! 改正のあるべき姿とは

ゲスト

西修
駒澤大学名誉教授
井上達夫
東京大学大学院法学政治学研究科教授

20年に施行』『自衛隊明記』 安倍首相が『改憲方針』表明
秋元キャスター
「今月3日の憲法記念日に、安倍総理がビデオメッセージで憲法9条の改正方針を示したことによって改憲議論が活発化しています。今夜は憲法学と、法の理念・理想・本質などを考察する法哲学、それぞれの第一人者をゲストに迎え、あらためて憲法9条の内容を検証し、9条改正のあり方について徹底議論します。安倍総理は憲法9条に関し、3日の憲法記念日にこのようなことを話しました。『2020年を新しい憲法が施行される年にしたい』『憲法9条1項、2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込む』ということですけれど。西さん、安倍総理のこういった発言をした狙い、意図、どのように見ていますか?」
西名誉教授
「しびれを切らしたと。私自身も憲法審査会にかなり期待をしてきたのですけれども、憲法審査会が発足してから既に10年ぐらい経つわけですよ。結局、審議が全然進展していないと。それは私から見ると、審議を遅らせるような、意識的にやっていると。憲法調査会の時代とは違うわけですよね、憲法審査会というのはあくまで憲法改正原案をお示しすると。それにもかかわらず、もう10年間ぐらい何もしてこなかったというような意味において、しびれを切らして、2020年という、そういう時期を設定して、なんとかやってもらいたいと、そういう一石を投じたと私は思います」
反町キャスター
「2020年という線の引き方、これはどう感じますか?」
西名誉教授
「私は2020年ではなくて2019年でもいいと思います」
反町キャスター
「前倒しする分にはいい?」
西名誉教授
「前倒しする分には。と言うのは、これまで2000年に憲法調査会ができたんです、2005年に報告書ができたんです、そのあと憲法審査会ができて、10年間経っているんです。だから、もう議論は尽くされているんです。論議はもう出ているんです。だから、その論議を、あとはそれをどう整理するかということで、それを整理すればいいわけですから、だから、2020年でなくても、2019年でも私はいいように思うんですね。ただ、2020年というのは1つの区切りだから、そこのところへ持っていったということかと思います」
反町キャスター
「2020年というところを新憲法で迎えたいという総理の時間の切り方、違和感がありますか?」
井上教授
「その前提になっているのは、もう安保法制、解釈改憲、通しちゃったから、はっきり言って、政治的に実は上げちゃったんですよ」
反町キャスター
「憲法改正、終わっている?」
井上教授
「いや、彼にとって。自衛隊、集団的自衛権、OKにしたわけだから。だから、政治的に必要だったと言うよりは、彼は歴史に名を残したいのでしょう。だから、自分の任期中と言うことですよ、要はね。たまたまそれがオリンピックの2020年になったのかもしれないけれど。僕はいい面を言うと、先ほど、国会、憲法審査会でそのあと進まないと、本当に僕は論議が尽くされたかどうかちょっと疑問なのだけれど、憲法審査会がちゃんと動いてないと。それにしびれを切らしたかどうかはわかりませんけれども、結果的に安倍さんがこういう発言をしたが故に停滞していた憲法論議がまた再燃したと。私はいいことだと思わないですよ。安倍さんが何かやるとちょっと護憲派は受動的に対応すると、与党の方も何か対応すると。本当によくはないのだけれど、私達、特に憲法9条問題は現在、非常に重要な、特に北朝鮮情勢で。議論しなければいけない、停滞していたのを安倍さんが少し動かしたというのはいいと思います。にもかかわらず、中身の評価はあとでやりますけれど、彼が言う自衛隊の憲法上の位置づけを明確にするという狙いから言うと、全然明確になっていないと思います」
反町キャスター
「それは1項、2項を残して3項を…」
井上教授
「はい。現在と同じような曖昧な状態に自衛隊を置くだけであるというようには思っています。だから、本当に自衛隊の憲法上の位置づけをしたければ、あとで中身の議論をしますが、かなり論争的な問題に入って時間をかけて論議しなければ無理ですね」
秋元キャスター
「今回、安倍総理が改憲に言及した憲法9条の条文を確認しますと日本国憲法第9条1項は『日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』、第2項は『前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない』と、こういった内容です。西さん、安倍総理が現行の条文を残したまま自衛隊の条文を追加する考えは、いかがですか?」
西名誉教授
「自衛隊というものが憲法に位置づけられていないですね。要するに、集団の安全保障装置としての自衛隊、こういうものは憲法で位置づけられていないというのは、私の場合、世界の憲法をいろいろとやっていますけれども、一方では平和を謳い、他方においては平和をどうやって維持するかという、安全保障措置ですね。安全保障組織というものが憲法で置かなければならない。ただ、その場合、軍隊というのはまだちょっと抵抗感があるかもしれない。だから、とにかく自衛隊というものを憲法で位置づける、これがむしろ優先事項として考えたのではないかなと、私はそんなふうに思います」
反町キャスター
「井上さんの立場からすると自衛隊というのは1項、2項の9条において違憲なのですか?」
井上教授
「違憲です。これはどう読んでも違憲としか読めない。にもかかわらず、護憲派も含めて、事実上容認してきた。護憲派の中の、私が言う原理主義的護憲派は自衛隊と安保の存在そのものが違憲だというのは、憲法学者ならいまだに過半数です。しかし現在、護憲派の中にも修正主義的護憲派と私は呼んでいますけれども、昔の内閣法制局や自民党保守本流と同じく、専守防衛ないし個別的自衛権のアレだったら合憲だって解釈改憲してしまっているんですよね。ですから、それを、その曖昧さはなぜあるかと言うと、要は、戦力に匹敵する世界有数の武装組織である自衛隊を、戦力ではないけれども、実力組織だとか言って容認してきたでしょう、これは曖昧にしているわけですよ。だから、国際法上、交戦法規が適用される、PKO(国連平和維持活動)にしろ、なんにしろ、今や国連は平和維持ではないですから、停戦合意がないところでも入って、自衛隊もそこに参加しているでしょう。でも、戦力ではないという嘘がまかり通っているから、自衛隊としてやるべきことができないですよ。ちょっと戦力と一体化しないとか、嘘が…。現在、明らかにする必要があるのは、本当に自衛隊、日本が国際的な安全保障体制に協力するために自衛隊を送り込むのだったら、自衛隊が武装組織であり、戦力であることをちゃんと認めなければいけない。その時、2項を残しながら、3項でくっつけるという時、2項は、戦力は一切持たないとはっきり言っているわけだから、それは変えない。3項で自衛隊を認めると言ったら相変わらず現在と同じです。自衛隊は戦力ではない、戦力ではないけれど、実力組織だと、そうすると相変わらず現在みたいな曖昧な状態に自衛隊を置き続けると。これだと何ら憲法上、自衛隊の位置を明確にしたことにならない」

憲法9条改正のあり方 憲法学者・西修氏私案
秋元キャスター
「この憲法9条改正について、どうしていったらいいのか。安倍総理は憲法9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むと表明されましたけれども、ここからは西さん、井上さん、それぞれがどのようにこの憲法9条改正案について考えているかというのをそれぞれ聞いていきます。まず西さんの改正案について、こちらです。現行の条文は残したまま、第9条2という形で、その1『日本国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、自衛隊を保持する』、2が『自衛隊の最高の指揮監督権は、内閣総理大臣に属し、自衛隊の行動については、政治統制の原則が確保されなければならない』、3が
「自衛隊の編成及び行動は、法律でこれを定める」
と、こういった形で現行の条文を残したまま、その下に9条2という形で、この3つを足すという案だということですが。西さん、この形にされた意図は?」
西名誉教授
「第9条を残して、第9条の2にした。なぜ第9条の2にしたかと言うと、第9条は70年間、第9条として存在してきたわけですよ。それはそれで置いといて、第9条の2ではきちんと自衛隊を位置づけるんだという、そういう形式的な第9条と第9条の2を分けるということですね。それは形式的ですけれども、たとえば、アメリカは、原典は残して憲法改正条項というものを付け加えていく、こういうこともありますので。将来的には第9条、それから、第9条の2を変えてもいいですよ、でも、とりあえずは第9条を残して第9条の2というものを付け加えた。第9条の2で、自衛隊の存在を位置づけるということであれば、実は内容的に、第9条の1項は、現在の自衛隊法3条にだいたい規定があるわけですよ、それをもってして現在の自衛隊の任務を定めたということ。それから、政治統制の原則、これは絶対に必要なものなので、自衛隊の最高の指揮官として内閣総理大臣に属し、自衛隊の行動については政治統制の原則が確保されなければならないと」
反町キャスター
「この中の部分というのは、自衛隊の明文化だけかなと。この間の総理の話ですと、自衛隊の存在を明文化するという話だけかと思っていたのですけれども、西さん、この中で言うと、政治統制とか、編成及び行動は法律でこれを定めるというような、その中身の部分にも踏み込まれているのですけれども…」
西名誉教授
「これは書かないと、第3項だけで自衛隊を持つということであれば、そうすると、自衛隊はどんなふうに暴走していくかとか、自衛隊に対するコントロールは絶対必要です、政治統制が必要です。だから、第1項、第2項、第3項だけでは不足と思ったものですから、第9条内で一応自衛隊は置きましょう、自衛隊を置くとすれば、最低この3項は必要ですよと。これは第9条からずっというと5項、6項ぐらいになっちゃいますからね。だから、第9条は第9条として70年間、それでもうやってきた、これは置いといて、敢えて自衛隊の存在を第9条の2で置いたというのが私の趣旨です」
反町キャスター
「現行憲法の9条の1項、2項の部分における、特に2項の中における、戦力を保持しないとか、交戦権を、これを認めないというのがありますよね。それと9条の2というのは、まったく矛盾する部分はないということでよろしいのですか?」
西名誉教授
「あとで第9条の解釈について、後ほど申し上げたいと思うのですけれども。前項の目的を達するため、本来的には陸海空軍その他の戦力を持ち得るんです、私の解釈は。そういう中で、自衛隊の存在と自衛隊のいわば統制というものをここで敢えて書いたということです」
反町キャスター
「今回の自衛隊のこれを認める部分は暫定的なイメージですか?」
西名誉教授
「うん、だから、将来はどうなるかわかりませんけれど、とにかく自衛隊ができてからずっときたわけですよ。自衛隊がきたということであれば、その自衛隊というものの存在を前提として、憲法に位置づけるということですね。しかし、これでも将来は不足であるということであれば、これはまた将来、皆で考えていけばいいと私は思います」
井上教授
「僕は安倍さんのおっしゃったことも、今日、西さんのこの案も、現状に対する改革になっていないと思うんです。現在、何が問題かと言うと、自衛隊が戦力ではないなんていう欺瞞が、実力組織だといった欺瞞があるから、いろんな問題が起こるけど、要は、安全保障の政策を巡るいろいろな状況が逼迫した議論、自衛隊にどこまでやらせるとか、そう言った時、安全保障政策の実質的論議ではなく、憲法解釈論に逸らされちゃうわけですよ。これも同じく、自衛隊は軍隊だとか、戦力だとか、はっきり認めてないから、これを設けたところで現在と同じ、安全保障政策の実質は棚上げされて、また、憲法解釈論で揉める、国会が。こういう状況が何も変わらない。それから、もう1つ、戦力であるということをしっかり認めたら、戦力を統制する規範を憲法の中に入れられるわけですよ。1つ、西さんのこの案の中で入っているのが、2項、9条の2の…」
反町キャスター
「政治統制?」
井上教授
「これを敢えて西さんは政治統制と、文民統制という言葉は使わない。文民と言っちゃうと自衛隊は軍隊ということに含意するから。少なくとも、でも、これが入っているだけで僕はましだと思うのだけれども、これではまったく足りないわけで。何が重要かと言うと、国会事前承認、最低限。現在は安保法制でいくつかの類型を挙げて国会事前承認が常に必要だ、原則で例外もある、必要ないのもいろいろあると、これは問題だと言われているけれども、1番の問題は国会の事前承認が法律事項だと。法律で定められているから、通常の法律はいくらでも変えられちゃうんですよね。となると、北朝鮮情勢で何か本当に緊迫した状況になったら、現在の安倍さんよりももっとタカ派的な政権が生まれるかもしれない。そうすると、国会の統制はほとんどなし崩しになることだって法律だから変えられちゃうんですよ」
反町キャスター
「憲法で謳うべきだという意味ですか?」
井上教授
「そういう時の政権、多数を獲った政権が変えてはいけないものは、憲法で定めなければいけないですよ。その時、なぜ事前承認だと言うけれども、事後承認では意味ないです。武力衝突が本当に発生したあと、国会で承認を得られませんでしたからと撤退できっこないですよ。事後承認は国会承認なしというのとほとんど同じ。だから、これを入れなければ、これから本当に武力衝突の危険がかなりリアルなものとしてあるので」
反町キャスター
「事前承認はもちろん、あったらいいと思いますけれども」
井上教授
「それは僕の案の時にちょっと説明しますね」
反町キャスター
「ミサイルが発射してから7分で日本に届くわけですよ」
井上教授
「違う、違う。事前承認というのは、そういう先制攻撃のリスクがある時に、先制攻撃が発生した場合には、これこれこういう軍事行動を起こすことを政府に授権するということですよ」
反町キャスター
「授権なのですか?」
井上教授
「授権するための事前承認です。だから、事前なのよ。攻撃されてから、さあやるという話しではないです」
西名誉教授
「現在でも自衛隊法76条で一応、防衛出動で、これは国会の事前承認は当然のこととして認められているわけです。ただ、治安出動とか、いろいろなこともあります。そんなこともいろいろあって、これはまず政治統制ということをきちんとしておくことによって、そういう国会の事前承認を含め、きちんと政治統制の中で行われるのだと。これをいちいち憲法で規定するもの…、たとえば、宣戦布告の場合は国会の事前承認…、こういう規定もあります。ただ、現在、戦争という概念は法哲学で、国際法ではないですよ。だから、宣戦布告と言っても果たしてどこまで意味があるのかと。だから、そういう意味で、いろいろな対応がありますから、まず政治統制をきちんとやりながら、そうしてより細かいことは法律で定めていくということの方がむしろ私は現実的ではないかなと」
秋元キャスター
「さて、憲法9条について、この条文をどう読み解くのかということについて。西さんは9条誕生の経緯を見るべきだと主張されているんですね。そのポイントが、1つ目がマッカーサーノート、2つ目がGHQ・ケーディス民政局次長による修正、3つ目が芦田修正、4つ目が極東委員会による憲法第66条2項の追加ということなのですが」
西名誉教授
「66条からちょっと説明させていただきたいと思います。これは『内閣総理大臣そのほかの国務大臣は文民でなければならない』と、これが憲法の条文ですね。それを一般に読めば、総理大臣その他の国務大臣が文民でなければならないということは日本に文民でない人が存在しなければ、この条文の意味がないですよね。非文民というのは何だろうか、非文民というのは国際社会では軍人です。なんだ憲法に軍人の存在というものが予定されているのかと私の疑問は実はそこから始まったんです。そこでなぜこれがきたかと言うと、実は極東委員会がグッとこれを推してきたんですよ。極東委員会というのは、その時、11か国でしたけれども、マッカーサーの上にきて、極東委員会の同意がなければ、憲法が容認されなかったんです、帝国憲法改正が承認されなかったんです。そこで私は、極東委員会の審議をかなり詳しく調べたんです。そうしたら、そこで芦田修正というのがくるんです。なんか順番がちょっとアレして…」
反町キャスター
「遡っていますね」
西名誉教授
「芦田修正というのはどういうことなのかと言うと、芦田均さん、時の内閣の憲法改正小委員会委員長で、あとで総理大臣になりますけれども、要するに、第2項に先ほどの『前項の目的を達するため』、これを入れたんです」
反町キャスター
「前項の目的を達するため、ここの部分ですね」
西名誉教授
「この部分は、日本ではあまり議論されなかったのですけれども、極東委員会でこれはすごく議論されたんです。私はかなりそれ調べました。そうしたら結論的には、この前項の目的を達するためということによって、すなわち第1項の目的というのは国権の発動たる戦争とか、武力による威嚇又は武力の行使は『国際紛争を解決する手段として』ということなので、全面放棄ではないです。まずそういう目的のために、ひと言で言えば、上の方は侵略戦争ですよ。これは1928年の不戦条約でこれがもうあったんです、その国際合意は、国際紛争を解決する手段というのは、これはあくまでこれは侵略戦争なのだと、侵略戦争を放棄する目的のために陸海空軍その他の戦力を持たないということで、逆に言えば、自衛のための戦力は持てるということです。これが芦田修正、それが日本では議論されませんでしたけれども、極東委員会では熱い議論になったんです」
反町キャスター
「極東委員会では芦田修正を見て、最終的に日本はもう1度軍事力を、戦力を持つのではないかという、自衛の名のもとに…」
西名誉教授
「常識はこれが入ったことによって、自衛のための軍隊、戦力は持てると、こういう議論までありました。自衛のためになら将官が持てるということがありました。そうすると明治憲法体制のように、陸軍大臣、空軍大臣が、まさに陸軍大将、陸軍中将になると、要するに、現役の武官になる。武官がコントロールしたミリタリーコントロールの結果、明治憲法は非常に大きな問題が起きたわけですよ。これは絶対に阻止しなければならないというので、極東委員会が。芦田修正の自衛のためなら軍隊を持つということがもっと議論されるかと思ったら、そこは議論されていないです…」
反町キャスター
「西さん、自衛のための戦力は認めると言うと、過去における侵略戦争と呼ばれるものも名義上・建前上、ないしは仕かけた側の理屈とすれば、皆自衛戦争ではないですか?」
西名誉教授
「それはいろいろあります。だから、それは1928年の不戦条約で、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄は合意を受けたわけですから。そこでミリタリーコントロールになるから、絶対にこれはシビリアンコントロールでなければならないというので、これが入ってきたんです。これはかなり強引に入ってきたんです。実はこれが入ってきた背景を政府は知らなかったんです。政府は知らなかった」
反町キャスター
「時の日本政府は知らない間に66条2項が入ってきた?」
西名誉教授
「とにかくどうしてもやれということで、その時の政府は、文民は過去において職業軍人の経歴を持たないという解釈をしていたのです。それが貴族院で、当時の東大の英米教授で非常に有名な高柳賢三という人は、そういうものではない、そこで文民というものを、シビリアンですね、シビリアンを日本語で訳さないといけないというので文民が入ってきたんです。だから、全体的に見るとシビリアンコントロールが必要だと言って、これが入ってきた、その背景には芦田修正があったと、自衛隊のための軍隊を持てるのだ、シビリアンコントロールしなければならない。これが入ってきた経緯を実は内閣もよく知らなかったんです。だから、私はそこに憲法成立過程の非常に大きな歪さがあり、それを文民条項は文民条項、9条は9条で分離して解釈していったと、ここに現在の9条の混迷の原因がある。だから、この不可分の関係に本来ならなければいけない、ここが解釈の混迷になっていた非常に大きな原因だと。そこで私の解釈から言うと、これが入った以上は非文民が存在するでしょうと、非文民というのはすなわち軍人だと、そういうことが前提とされている、憲法上はどうかと、自衛のための戦力の中に当然それは入ってくるのだ、自衛のための軍隊持てるのだと私はそういう解釈です。だから、私の解釈が本来、浸透すれば、敢えて憲法改正も本来は必要ないです」
反町キャスター
「必要ないということになりますよね」
西名誉教授
「そうです、必要はないのだけれども、現在の憲法はアメリカの戦力とか、極東委員会によって、外部の圧力によって、制定されたことは事実です。ですから、我々自身の手で9条を含めて、もう1回考えてみようということになってくるわけ」
井上教授
「9条の1項だけだったら、西さんがおっしゃったように、パリ不戦条約の精神だから自衛のための交戦権まで否定していないと読めたとしても、2項で明確に『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない』と言っているのに、66条の2項で文民という言葉を使ったから非文民があるはずだというのは、これは解釈としてはまったくおかしくて。唯一、整合的な解釈は、実は2つあり得るのだけれど、1つは先ほどもちょっと出たけれども、そこで狙いをしているのは過去の旧陸軍とか、海軍とか、日本の帝国軍の関係者達を排除するというのが1つね」
反町キャスター
「旧軍人というのは文民ではないのですか?」
井上教授
「…のを排除するという意図が1つあるのだろうという、解釈としてね。それから、もう1つは、先ほど言った、将来的には日本も戦力を持つかもしれないと極東委員会が考えていたとしたら、現在は戦力がない、しかし、9条2項を改正して、将来、戦力を持ったとしたことを予想して、文民でなければいけないという話もあるんですね。これは、このこと、だから、66条2項だけで、戦後憲法9条2項のもとで、戦力のあるいは軍隊の存在を認めたと解釈するのはどう見たって無理ですよ」
西名誉教授
「そのために、『前項の目的を達するため』というのがあって、これが日本では議論されなかったけれども、前項の目的を達するためというということがあって実際の問題としてこれが入ってきたわけですよ」

憲法9条改正のあり方 法哲学者・井上達夫氏私案
秋元キャスター
「さあ、ここからは井上さんの9条改正案を聞いていきますけれども」
井上教授
「ちょっとこれだけ言っておきたいのですけれども、僕は護憲派が憲法を裏切ってきていると言っているんですよ。原理主義的護憲派は自衛隊と安保の存在そのものが違憲だと言っておきながら、専守防衛、個別自衛権の枠ならば政治的に容認すると。政治的に容認するのだったら憲法改正でそれを明言するような、護憲的改憲を発議すればいいじゃんと言うと、それはしない、違憲のまま凍結しろと。これが護憲かと言うんですね。最近の、しかし、護憲派の中には、私の言う修正主義的護憲派で、かつての内閣法制局、自民党保守本流の見解と同じく、個別的自衛権、専守防衛ならば合憲ですと解釈しようと。これは特に西さんとあまり変わらないのだけれどね。そういう人達というのは、しかし、僕からすれば明らかな解釈改憲で、安倍政権が集団的自衛権を解釈改憲したけしからんと言っておきながら、自分達は既にあからさまな解釈改憲、自衛隊、世界有数の武装組織・自衛隊は戦力ではないとか、世界最強の戦力であるアメリカと一緒に戦う防衛戦争は交戦権の行使ではないとか、こんな嘘に基づく解釈改憲やってきたんですよ。それでも、僕はさらに絶望的なのは彼らがそういう欺瞞にふけるのは9条があるから戦力が縛られていると言っているんですよ。もう1つは、9条があるから日本は平和国家だった、これがもっと酷い欺瞞。9条があるから日本は平和国家だったという方から言うと、1つは、これは2つ意味があって、日本は攻撃されなかったという。1つは、日本は侵略戦争に加担しなかったと。最初について言えば、日本が攻撃されなかったのは9条のおかげではないですよ、9条を無視して存在した自衛隊と日米安保のおかげですから。日本は侵略に加担しなかった、あるいは海外における武力行使に加担しなかったというのも、これは嘘です。日米安保のもとで、要するに、アメリカは、僕はすごく旨い汁をすっていると思うけれども、アメリカの世界戦略の海外拠点、最大にして大々的な海外拠点が日本にあるわけですよ。朝鮮戦争の時だって、こちらからマッカーサーも行きましたし、隣の民族は民族同士が争う大戦争をやらされて、しかし、その時、日本は朝鮮特需で潤って、焼け跡の戦後経済が復興したわけでしょう、それを喜んでいるわけですよ。それから、ベトナム戦争の時は日本の在留米軍基地からドンドン行っているわけです。僕は本当に、ホーチミンにそういう軍事技術力なかったけれども、彼らが日本の沖縄基地にミサイルを飛ばせる能力がもしあったとしたら、もしあったとしても、国際法上正当な防衛行為ですから。だって、日本が兵站を提供するということはアメリカの戦力と一体化しているのですから、国際法上、これは。それだけアメリカがやってきたさまざまな海外での武力行使や侵略戦争に、日本は幇助犯として加担してきた。なのに、日本は平和国家だからノーベル平和賞を9条になんていう欺瞞的なことを言っているのはおかしいというのが1つ。それから、もう1つ、9条があるから戦力が縛られているというのは嘘ですよ。9条があるから戦力がない建前になっているから。文民統制規範だって文民条項だけではダメですよ、軍隊の最高指揮命令権は文民である首相に属する、と言わなければ。でも、軍隊がないことになっているから、そういう意味での文民統制もない、それから、国会事前承認すらないと。しかも、自衛隊は海外で多国籍軍等の活動をやると、地位協定を結んで治外法権で、現地での武器使用行為の結果、民間人を巻き込みにしたとしても現地法で裁かれないわけ。他の国の軍はその代わり軍法会議で裁かれるけれども、日本はそれがないから、そうすると自衛隊員は武器を使いたくても、もし使ってそれを誤射しちゃった場合、法的空白状態にあるから使えないという、これも危ないわけですよね。こういう戦力統制規範を本当は憲法に入れなければいけないのに、9条があるから戦力がない建前になっているがために憲法で定められない。その結果として戦力・自衛隊及び日米安保という軍事態勢が、憲法の外で次々と肥大化していくと。自衛隊が今やジブチに常駐基地を持っているんですよ、あれは民主党政権の時ですよ。南スーダンに最初、派遣したのも民主党政権ですよ。その後、自民党政権に移りましたから。安倍政権を憲法破壊勢力だって言っている人達が、既にそういうことを平気でやっているわけですよ。だから、この欺瞞、本当に危ないと思っているんですね。日本は戦力を持つということを自覚して、だから、それを濫用されないように、その時の選挙で勝った連中に勝手に濫用されないような、できないような、戦力統制規範を憲法に盛り込みなさいと、こうしないと危ない。よく護憲派は、安倍政権の人達をいつか来た道を行くと言っているけれども、いつか来た道を一緒に行っているのキミ達だよと。自衛隊は戦力ではないとか、世界最強の戦力であるアメリカと一緒に戦うのは交戦権の行使ではないとか、よく例で言うのだけれども、戦前の日本軍は大本営発表の嘘を言ったでしょう、その大本営発表の嘘も顔負けの嘘です、これは。それから、もう1つ戦前の、満州で陸軍の跳ね返り分子が次々、既成事実をつくっていくんですよ。最初は天皇が田中義一を叱責してやったのだけれども、ちょっとやり過ぎたと言われたとか、でも、時の内閣は、それは不愉快だけれども、事実は事実としてこれを認めると、事実として認める以上は予算を出すと言って、既成事実を次々追認してきた。だから、現在、日本で起こっていることはそれだと。次々、自衛隊が海外で行動していく」
反町キャスター
「現在の自衛隊を関東軍と同じレベルで扱うのですか?」
井上教授
「要するに、既成事実は次々、進行しているということ。その既成事実を最初は反対してもすぐ忘れて、国民はすぐそれを自明の前提にしてしまう。もちろん、関東軍の時よりは緩やかですよ」
反町キャスター
「はるかにコントロールが効いている?」
井上教授
「緩やかだけれども、自衛隊と日米安保という日本の軍事体制が、憲法の外で少しずつ既成事実を積み上げて肥大化していくことに対して、国民は慣れていくんですね。既成事実追認能力の高さ、これも欺瞞からきていると思うんですね。なぜこの9条削除論を言ったかというと、ある意味では象徴的ですよね。9条に…」
反町キャスター
「9条を全部とってしまうのですか?」
井上教授
「そう、2項削除論ではダメです。なぜかと言うと、1項だけ残していると1項の解釈で自衛権のための武力行使は認められるという解釈も解釈だから、そうすると、自衛権は、個別的自衛権なのか、集団的自衛権なのか、また論争が起こるわけです。9条1項がなくても、侵略戦争の違法化は現在の国際法の確立された原則ですから。憲法に条約順守義務と確立された国際法の順守義務がちゃんと書いてある。前文にも書いてあるから、これがなくても侵略戦争してはいけないのは当たり前ですよ」
反町キャスター
「西さん、9条削除論、これに対する感想を聞きたいです」
西名誉教授
「いや、それより前に、9条は削除するのだけれども、政治統制ですか、戦略統制規範は憲法に入れるのですか?」
井上教授
「入れます」
西名誉教授
「どんなふうに入れるのですか?」
反町キャスター
「では、いっちゃいましょう」
井上教授
「どういうことかと言うと、戦力を持つか否かも含めて、これは法律事項ですよ。もし戦力を持つならば、これこれこういう戦力統制規範に服さないといけないということを憲法に入れるわけ。これをおかしいという人がいるのだけれども、内閣法制局の元長官の坂田さんかな、僕のアレに対して親亀子亀がひっくり返ったなんて言ったけれども、これはナンセンス。憲法というのは基本的に授権の体制ですから、アメリカ合衆国憲法はそうなっているんですよ。連邦議会の権限の中に陸軍を設置することと。設置しなければいけない、陸軍がそうなると言ってない、議会が立法によってそれを設置する権限を授権されているとしか言っていないですよね」

憲法から9条を削除せよ』 法哲学者・井上達夫氏提言
反町キャスター
「具体的な戦力統制規範とはどういう意味なのですか?」
井上教授
「文民統制は最低ですね。それから、国会の事前承認も言いました。ちょっとその前に僕の9条削除論について誤解があるので、井上は9条削除して終わりだと、だから、戦力を憲法の外に置くのだって言われるのだけれど、逆で、9条削除論は他の改憲論者よりももっと詳細な改憲提案をしているんですよ。9条を削除することによってさまざまな戦力統制規範を入れると。これはまとめただけだけれども、このページ映していただける?」
反町キャスター
「小さくてわからない…」
井上氏
「いや、わからなくていいのだけれど、これは小林よりのりさんとの対談の議論の中で、アメンドメント方式という、1ページにわたっていろいろ細かく書いてあるんですね。これは実はいろいろあるのだけれども、この修正1条、修正2条、修正3条と、緊急の必要性と、それから、実現可能性の高いものから先にやると。3段階の構成ですけれどね。そのうえでちょっと言うと、最低限必要なのは、このシビリアンコントロールと開戦決定の国会事前承認だけれども、ここに触れてないけれども、ここに書いてあるのは、先ほど言った軍法会議の設置。自衛隊が海外に派兵された時にこれがないと本当に自衛隊の海外における武力行使が法的空白状態に置かれちゃいますから。そのためには特別裁判所の禁止という憲法の規定があるんですよ、これを変えなければダメです、だから、それも含んでいるんです。それは修正1条で最低限入れなさいと。次にできれば入れた方がいいのが、反対が多いかもしれないけれども、これは必要だねというのは沖縄への本土住民のタダ乗り問題。0.6%の面積比の沖縄に75%の米軍専用基地があるという、そうすると、本土住民は事あれば沖縄は危ないかもしれないけれども、我々はとなんとなくとなっちゃって、無責任になる。現在、95条に特定の地方自治体に適用される法律は、地方自治体の住民の住民投票で必ず支持を得なければいけないとあるんですね。護憲派の中にはそれを使って沖縄の住民投票をやろうとしたけれども、それは政府がムリだと、だって、あれは特別の、沖縄にだけ適用される法律でやっているわけではないから。だとしたら、95条2項というのを設けて、日米同盟、その他外国との軍事同盟により外国の基地を設置される自治体については住民投票の支持が必要だということを盛り込めというわけです、憲法の中に。これは僕の第2弾」
反町キャスター
「それは県単位ですか?住民投票は?」
井上教授
「住民だけ、地方自治体。県単位でいいでしょう。それは、詳細はあとで。要は、沖縄に対するタダ乗りという。先ほど、他が全部、ウチは嫌だというなったら、いいではないですか。そうすると、外国基地は置けないという話になるから。だから、無責任なタダ乗りは許さないという意味ですよ」
反町キャスター
「無責任なタダ乗りというのは沖縄だけに負担を負わせる他の40いくつの都道府県に対する意味ですよね?」
井上教授
「はい。これは抵抗が少しある、最初の。だから、僕は修正1案でなく、修正2案と言って、修正2条…」
反町キャスター
「第2段階?」
井上教授
「でも、これだけ沖縄に基地負担というのはおかしいねという人はいるわけ。小林よしのりさんも僕とその点はすごく一致したわけだから。右の人達というか、保守の人達もいるわけで、いずれはあるから。1番、僕の主張の中で論争的なのが徴兵制。しかし、これは良心的兵役拒否権をセットにしているということですね。これは修正3条。これは今言っても実現可能性は少ないけれども、ゆくゆく日本人が成熟すればわかる。そのために言っておくと、なぜ言うかというと、専制国家のもとにおける徴兵制は最悪ですよ。戦前も徴兵制だったけれど、戦前は大正デモクラシーあったけれど、その後民主制が崩壊していきますから、反戦運動ができっこなくなっちゃうわけです、政党も解散させられて大政翼賛会の選挙になりますから、だから、アレも専制的な体制になっているわけですが、そうすると、徴兵制というのは最悪になるわけですね。しかし、民主国家で徴兵制は何かと言うと、これはよく言われているけれども、経済的徴兵ですね。アメリカの場合もプアホワイトと黒人とか、それから、最近はシングルマザーでも軍隊に行く人がいますから。ところが、ベトナム戦争の時、徴兵制だったんです、最初は予備兵役に行っている人が多かったから、あまり反戦運動が盛り上がらなかったけれど、ドンドン泥沼戦になって予備兵役にいた白人中産階級の子弟がドンドン戦争に行く。そうすると、マジョリティーがこの戦争はやるに値するのかと真面目に考えだすんです。反戦運動が国民的規模で盛り上がったんですね。ところが、2003年のイラク侵攻の時、もう徴兵制がない。国会議員の中で反対したのは1人だけだったかな、オバマ。マイケル・ムーアの『華氏911』という映画の中で、キャピトル・ヒルにいる国会議員に全部質問していくんですよ。あなたの家族をイラクに送っていますか、と言ったら、イエスと言ったのたったの1人でしたね。そうすると、国民は、マジョリティーは自分達を安全地帯に置いて、一握りの被差別少数者をドンドン送って、行け、行け、ゴーゴーという無責任な好戦感情に駆られやすいし、自分はそんなに好戦感情がないという人も、政府の危険な軍事行動に対して無関心になってしまう。だから、徴兵制を見たら怖いと思うかもしれないけれども、民主国家のもとで、国民が戦力を持つことを選択したならば、自分達の戦力を自分達が狂って濫用しないように、あるいは政府が危険な形で濫用することを無関心で放置しないように、無責任な戦力行使があったら、そのツケは負わなければいけないのは自分達、自分達の子供だよということが1番、戦力統制のインセンティブを国民に与える。実際、日本と同じようにファシズムとか、軍国主義と言われたドイツは、1950年代以降、徴兵制を敷いています。と同時に、良心的兵役拒否権、ただ代替役務があります、代替役務は、ドイツはツィヴィルディーンストと言って市民的奉仕。ドイツはそれで過去の克服をやっている人達が徴兵制をちゃんとやってきたわけですよね。ところが、これが東西冷戦対立の時には危機感もあったから、徴兵制に応じる人が一定数あったのだけれども、市民的奉仕が割と軽すぎたから、海外でボランティアをやっているだけでいいとなって。東西冷戦が終わって、東西ドイツが融合したら、もう徴兵に応じない子が随分出てきたと。そうすると、ドイツが実は危険な軍事行動に走り始めたんですよ。その例がユーゴ紛争、コソボ紛争の時のユーゴ空爆。NATO(北大西洋条約機構)が国連の承認を得ないで、安保理の承認を得ないで勝手にやったんですよ。これにドイツは陸海空軍、全部参戦しました、それに対し世論の反発は少なかった。結局、徴兵制が有名無実化しながら、2012年で停止しました、でも、停止で廃止ではありません、憲法上まだある、いつでも復活できる」
西名誉教授
「ちょっとお話し中、すみません。先生は9条を削除するけれども、これは憲法の中に条文として入れるということですね」
井上教授
「9条があるから戦力がないことになっていますので」
西名誉教授
「9条がなく、具体的な条文はまだ先生、ちょっと出されていない。だいたいこれは入れるということですね?」
井上教授
「入れるけれど、言ったように、徴兵制と良心的兵役拒否権を、しかも、良心的兵役拒否権は軽いものではなくて重い代替役務。たとえば、韓国は徴兵制で…」
反町キャスター
「ちょっと待って。西さん、いろいろ聞きたいのだけれども、1つだけ、徴兵制を導入すること、どう感じますか?」
西名誉教授
「現在、徴兵制は昔みたいに、行けー、撃てー、というような形の軍事組織ではないですよね。ですから、徴兵制については、私は敢えて必要ないのではないかと。もし敢えてこれに関連しようとすれば、たとえば、国防の責務、皆で国防をやっていくのだというようなことは必要かもしれませんけれど、現在、徴兵制というのはちょっと時代遅れではないかなと思います。たとえば、ドイツは徴兵制があるけれども、あるいはイタリアも、現在、実際にとっていません。だから、そういう意味において、国民に、徴兵制と言いますか、軍事意識を持たせるという意味では、意味があるのかもしれませんけれども、実際問題として、世界では徴兵制というのはとっていない。ただ、政府で言えば、ご存知のように、13条と18条で一応は政府は徴兵制はとらないと、こういうことにはなっています」
井上教授
「徴兵制は、軍事的な技術として必要なわけではないですよ、なくてもいいのだけれども。軍事力の濫用を国民がさせない、そういうチェックをするための政治的制度だと思うんですね。たとえば、陪審員制度は、ドックビルという有名なフランスの政治学者はアメリカの陪審員制度は法律的制度ではなく、政治的制度だと。単に正しい事実認定をやるということで言えば、職業裁判官に任せたらいいのかもしれないけれど、そうではなくて、事実と証拠と論理のうえに基づいて、裁判権の行使という公権力の行使を国民が自分達で担って、責任ある権力行使をやる、こういう訓練を積むことが民主主義の発展に必要だということですね。そういう意味で、軍事力というものを持っている以上、国民がそれを自ら市民の軍隊にして、それを監視するのだという意識がないとダメなので。そのためには常時は要りませんよ、いったんやって、訓練したら予備兵役登録でもいいわけだけれども、現在のスイスの徴兵制だって基本的にはそうですから。でも、自分達の軍隊なのだという意識を持たないと、かえって志願兵制だと、先ほど、言ったプアホワイトが行くだけでなく、すごい軍事オタクが行っちゃったら危ないかもしれませんよね、そういった問題があるんです。もう1つ、僕が西さんよりもすごくタカ派のように思われるかもしれないけれども、護憲派の代表である樋口陽一さんだとか、伊藤真さんも、もし戦力を持つならば、徴兵制だと言っているんですよ、彼らは。ところが、彼らの言っている意味は僕とまったく違う、ある意味、欺瞞的で、だから、9条を変えたら怖いだろう、徴兵制だぞ、となるんですよ。でも、実際には自衛隊、安保がある、この既成事実は認知しているわけですよ。戦力を持っておきながら、それを志願兵でやっておきながら、徴兵制というのはリップサービスで、レトリックで言っているけれども、本気になって戦力をコントロールするための徴兵制という意識ではなく、国民に、9条を改正しちゃ怖いぞという脅しに過ぎない。それはちょっと僕とは違うということを言いたいですね」
反町キャスター
「西さん、いかがですか?」
西名誉教授
「国民の国防意識を高めるということで徴兵制という考え方は存在すると思いますけれども、現実問題として、徴兵制を、たとえば、日本でやるとしても、これはほとんど不可能だと思うし、それであれば先ほど言いましたように、国民の国防に対する責任とか、そういった面で、これは変えていくことができる…」
反町キャスター
「具体的にどういう?」
西名誉教授
「国民の国防に関する責務とか、そんな形で、たとえば、国民保護法がありますよね」
反町キャスター
「有事法制における主権制限みたいな…」
西名誉教授
「そうそう。役務の協力とか、主権制限、そういうことはあり得ます。徴兵制ということが国民の国防意識を高める唯一の方法とは私は考えません。それが私は正直言って、現代の兵器から見てこれは非現実的ではないかと思います。それから、もう1つ、外国軍事基地設置の際の住民投票、これは、国防は住民投票の対象にならないと思います。これは国防政策、国家の政策なんですね。住民投票とは住民の中の具体的な利益の問題とか、住民のいったいどうすればいいのかということで、たとえば、原発でもこれは否決されています。だから、外国軍事基地の際の住民投票というのは現実問題としてどうなのだろうかというように、現実性からして、いかがなものかなと思います」

西修 駒澤大学名誉教授の提言 『窮状打開』
西名誉教授
「窮状打開ということで、私の場合は興奮してくると、ちょっとダウンするためにジョークをやることがありますけれども、要するに、窮状は国家の困窮状態ですよ、それは9条をきちんといじることによって窮状を打開できるのではないかということを申し上げたいと思います」

井上達夫 東京大学大学院法学政治学研究科教授の提言 『戦力統制規範は憲法で。安全保障政策は実質的議論を』
井上教授
「先ほど、言ったように、9条があるから戦力がないという建前に憲法はなっているから、戦力統制規範を憲法に入れられない。その結果、憲法の外で日本の軍事体制がドンドン肥大化している、既成事実の積み重ね、これは非常に危ない。他方、9条があるが故に安全保障政策、集団的自衛権がどこまでだとか、個別的自衛権に留まるかとか、国連中心の集団安全保障体制でいいのかとか、こういう実質的な安全保障政策の議論が進まない、全部、憲法解釈の問題になってしまう。この2つの面で、先生の言葉を使うと、この窮状を救うためには9条を削除するしかないという」